(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材は、セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類、細骨材、アルカリ金属炭酸塩、遅延剤及び減水剤を含有し、水との混練直後から10分後までのJ
10漏斗流下時間が7〜15秒であり、且つ、材齢30分における圧縮強度が3N/mm
2以上であることを特徴とする。ここで、J
10漏斗流下時間とは、JSCE−F 541−1999「充てんモルタルの流動性試験方法」に準じ、JSCE−1986「PCグラウト試験方法」「第1章 コンシステンシー試験方法」に規定されるJ漏斗(上端内径70mm,下端内径10mm,高さ420mmで、その下部に内径10mm,長さ30mmの流出管を有するもの)を用いて測定した流下時間をいう。J
10漏斗流下時間が7秒未満場合は、材料分離が起こる虞があり、ブリーディングが起こり易く、セメント系グラウト材の硬化体の上部に隙間が発生し易い。また、水との混練直後から10分後までのJ
10漏斗流下時間が15秒を超える場合(粘性が高い場合)は、流動性不足のため、グラウト材の充填時に隙間なく不織布製容器内に充填できない虞がある、つまり、充填時に隙間ができる虞がある。高さの10倍以上の長さ及び幅の不織布製扁形容器内に充填する場合であっても、隙間なく充填でき且つブリーディングが起こり難く、その硬化体の上部に隙間がより発生し難いことから、水との混練直後から10分後までのJ
10漏斗流下時間が7.5〜13秒であることが好ましく、7.5〜12.5秒であることがより好ましい。なお、10分後のJ
10漏斗流下時間とは、セメントの水和開始10分後に測定したJ
10漏斗流下時間のことである。
【0008】
本発明における材齢30分における圧縮強度は、セメントの水和開始30分後(材齢30分)における圧縮強度のことで、土木学会基準JSCE−G 505−1999「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法」に準じて求めることができる。この材齢30分における圧縮強度が3N/mm
2以上あると、ブリーディング水が発生する前に硬化するので、硬化後にセメント系グラウト材の硬化体の上部に隙間が発生しない。材齢30分における圧縮強度が3N/mm
2未満の場合は、ブリーディング水が発生する虞があり、ブリーディング水が発生すると硬化後にセメント系グラウト材の硬化体の上部に隙間が生じる虞が高い。本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材の材齢30分における圧縮強度が18N/mm
2を超える場合は、10分後のJ
10漏斗流下時間が測定できない又は15秒を超える虞が高い。10分後のJ
10漏斗流下時間が7〜15秒の範囲内の値となるようにし易いことから、本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材の材齢30分における圧縮強度が3〜18N/mm
2であることが好ましく、3〜15N/mm
2であることがより好ましい。最も好ましい材齢30分における圧縮強度は、3〜11N/mm
2である。
【0009】
本発明で用いるセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、並びにこれらポルトランドセメント又はエコセメントに、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム又は石灰石微粉末等を混合した各種混合セメント等が挙げられ、これらを一種単独で又は二種以上併用して用いることが好ましい。ここで云うセメントは、カルシウムアルミネート類等の急硬成分を主体とするセメント、例えばアルミナセメント並びに太平洋セメント社製「スーパージェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメントは含まれず、これらはカルシウムアルミネート類に含まれる。可使時間が長く且つ初期の強度発現が高いことから、セメントとして普通ポルトランドセメント又は早強ポルトランドセメント或いは普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントを混合したものが好ましい。本発明におけるセメントの含有量は、セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類の合計100質量部中、セメント65〜80質量部とすることが、良好な流動性が得られ易く且つ初期強度発現性に優れることから好ましい。
【0010】
本発明で用いるカルシウムアルミネート類としては、CaOをC、Al
2O
3をA、Na
2OをN、及びFe
2O
3をFとして表したとき、C
3A、C
2A、C
12A
7、C
5A
3、CA、C
3A
5、又はCA
2等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、C
2AF及びC
4AF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したC
3A
3・CaF
2やC
11A
7・CaF
2等と表示されるカルシウムフロロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート、C
8NA
3やC
3N
2A
5等と表示されるカルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、アルミナセメント、太平洋セメント社製「スーパージェットセメント」(商品名)や住友大阪セメント社製「ジェットセメント」(商品名)等の超速硬セメント、並びにC
3A
3・CaSO
4等と表示されるカルシウムサルホアルミネートを総称するものであり、これらにNa,K,Li,Ti,Fe,Mg,Cr,P,F,S等の微量元素(酸化物等含む。)が固溶しているものを含むものである。このカルシウムアルミネート類は、結晶質のもの、非結晶質のもの及び非晶質と結晶質が混在したもののいずれも使用可能であり、前記カルシウムアルミネート類のうち一種又は二種以上を使用することが可能である。本発明で使用するカルシウムアルミネート類としては、カルシウムアルミネートが好ましく、アルミナセメントがより好ましい。カルシウムアルミネート類は、本発明において含有することで、初期強度が向上するとともに凝結を促進する。本発明におけるカルシウムアルミネート類の含有量は、優れた流動性及び可使時間が得られ、且つ優れた速硬性が得られることから、セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類の合計100質量部中10〜25質量部が好ましく、より好ましくは、12〜23質量部とする。
【0011】
本発明で用いる石膏類としては、無水石膏、二水石膏又は半水石膏を主成分とする粉末であれば特に限定されないが、強度増進作用の観点からII型無水石膏を主成分とするものが好ましい。石膏は、セメント中のアルミネート相及びカルシウムアルミネート類等と反応しエトリンガイト(3CaO・Al
2O
3・3CaSO
4・32H
2O)を生成させ、これにより速硬性が得られ初期強度が得られるとともに、グラウト材硬化体の収縮を抑制することができる。使用する石膏の粉末度はブレーン法による比表面積で3000cm
2/g以上のものが、反応活性が得られるので好ましい。より好ましくは粉末度が6000cm
2/g以上の石膏類が良い。粉末度の上限は特に制限されないが、粉末度を高めるコストが嵩む割にはその効果が鈍化することから概ね15000cm
2/g以下が適当である。本発明における石膏類の含有量は、セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類の合計100質量部中5〜20質量部が好ましく、より好ましくは、7〜18質量部とする。
【0012】
本発明で用いるアルカリ金属炭酸塩は、本発明で使用するアルカリ金属炭酸塩は、特に限定されるものではない。例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。初期凝結の促進効果ならびにコスト面を考慮すると、好ましくは、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムがよい。本発明におけるアルカリ金属炭酸塩の使用量は、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対して0.2〜1.0質量部とすることが好ましい。0.3〜0.8質量部が好ましく、0.4〜0.7質量部がより好ましく、0.4〜0.6質量部が最も好ましい。0.2質量部未満では初期凝結の促進に効果が低くなる虞があり、1.0質量部を超えると流動性を悪くする虞がある。
【0013】
本発明で使用する遅延剤は、特に限定されるものではない。その具体例としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、及びコハク酸等のオキシカルボン酸、或いはこれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、及びアルミニウム塩などの塩が好ましく、これらの一種又は二種以上が使用可能である。本発明における遅延剤使用量は、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対して、0.05〜0.2質量部とすることが好ましい。0.06〜0.12質量部がより好ましく、0.06〜0.1質量部が更に好ましい。0.05質量部未満では可使時間の確保が困難になる虞があり、0.2質量部を超えると強度発現性が悪くなる虞がある。
【0014】
本発明で使用する減水剤とは、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤及び流動化剤等のセメント分散剤のことであり、これらの一種又は二種以上を用いることが出来る。具体的には、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸塩系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤、メラミンスルホン酸塩系減水剤等が好ましい例として挙げられる。本発明における減水剤の使用量は、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対して0.15〜0.4質量部とすることが好ましい。0.17〜0.3質量部がより好ましく、0.2〜0.27質量部が更に好ましい。0.15質量部未満では流動性が充分でない場合があり、0.4質量部を超えると材料分離を起こす場合がある。
【0015】
本発明で使用する細骨材の材質としては、特に限定されず、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石粉等の石粉、スラグ細骨材、再生細骨材等が好ましい例として挙げられる。また、本発明で使用する細骨材の最大粒径は、小間隙に充填するために、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、1.5mm以下が更に好ましい。本発明における細骨材の使用量は、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対して3〜15質量部とすることが好ましく、5〜12質量部とすることがより好ましく、5〜10質量部が更に好ましい。3質量部未満では可使時間の確保が困難になる虞があり、15質量部を超えると高い流動性を確保しながら材料分離を抑えることが困難な場合がある。
【0016】
本発明において水の使用量は、水結合材比で30〜50%、即ち、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対して水30〜50質量部とすることが好ましい。より好ましくは水結合材比で32〜40%、更に好ましくは34〜38%とする。水と水以外の材料を混練し本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材を製造するときは、モルタルミキサやコンクリートミキサ等のミキサで混練し製造することが好ましい。用いることのできるミキサとしては連続式ミキサでもバッチ式ミキサでも良く、例えばパン型コンクリートミキサ、パグミル型コンクリートミキサ、重力式コンクリートミキサ、グラウトミキサ、ハンドミキサ、オムニミキサ、左官ミキサ等が挙げられる。
【0017】
本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材には、本発明の効果を実質損なわない限り、上記成分以外の混和材料を含有するものであってもよい。このような混和材料としては、例えば、カルシウムアルミネート類以外の急結剤(材)又は急硬剤(材)、アルカリ金属炭酸塩以外の凝結促進剤、防水材、防錆剤、顔料、繊維、増粘剤、石灰系膨張材、収縮低減剤、防水剤(材)、結合剤の一部として用いるセメント用ポリマー、消泡剤、撥水剤、白華防止剤、発泡剤、消石灰、高炉スラグ粉末、シリカフュームや火山灰等のポゾラン、空気連行剤(AE剤)、表面硬化剤等が好ましいものとして挙げられる。本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材には、石灰系膨張材、発泡剤、収縮低減剤及び消泡剤から選ばれる一種又は二種以上の混和材料を併用することがより好ましい。
【0018】
本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材は、モルタルからなるセメント系グラウト材に含有する増粘剤を、その添加により粘度が増加する量で含有しない方が好ましい。増粘剤の種類は限定されないが、例えばヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルエチルセルロース(HEEC)等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)やヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のヒドロキシアルキルセルロース等の水溶性セルロース;アルギン酸、β−1,3グルカン、プルラン、ウェランガム等の多糖類;アクリル樹脂やポリビニルアルコール等のポリビニル化合物;メチルスターチ、エチルスターチ、プロピルスターチ、メチルプロピルスターチ等のアルキルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ又はヒドロキシプロピルスターチ等のヒドロキシアルキルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルスターチ等のヒドロキシアルキルアルキルスターチ等スターチエーテル等が挙げられる。グラウト材が高い流動性が有りながら材料分離が起こり難く且つ高い初期強度を得易いことから、本発明に用いる増粘剤としては水溶性セルロース、スターチエーテル及び/又は粘土鉱物が好ましい。本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材における増粘剤の配合割合は、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対し、0.01質量部未満とすることが好ましく、0.001質量部未満とすることがより好ましく、増粘剤を含有しないことが最も好ましい。この範囲では、増粘剤を混和したことによる増粘効果が得られ難く又は得られず、水との混練直後から10分後までのJ
10漏斗流下時間を7〜15秒にし易く且つそのときの水量を少なくできることから、ブリーディングをより起こし難い。
【0019】
本発明のセメント系低粘性速硬グラウト材に用いる石灰系膨張材としては、含まれる酸化カルシウムの水和生成物、即ち、水酸化カルシウムの結晶生成により膨張する膨張性物質を主成分とする材料を云い、例えば、石灰系コンクリート用膨張材,硬焼生石灰等が挙げられる。本発明に用いる石灰系膨張材の粉末度は、JIS R 5201−1997に規定される比表面積試験により測定したブレーン比表面積の値が、2000〜6000cm
2/gの範囲のものが好ましい。2000cm
2/g未満では、低温で用いると硬化時に未水和の酸化カルシウムが多く残るため後に遅れて水和した酸化カルシウムの膨張圧により硬化体の長期強度が低くなる虞があり、6000cm
2/g以上では膨張性を得るためにより多い量の膨張性物質が必要となるため硬化時の温度が高くなる虞がある。本発明における石灰系膨張材の配合割合は、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対し、3〜15質量部とすることが好ましい。この範囲では、石灰系膨張材を混和した効果(収縮抑制効果)が得られ且つ高い流動性及び高い長期強度が得られ易い。
【0020】
本発明に用いる発泡剤としては、過酸化物質、アルミニウム粉末から選ばれる一種又は二種以上を用いることが好ましく、過酸化物質が安定して硬化時の沈下を抑制できることからより好ましい。本発明で使用する過酸化物質は、特に限定されるものではない。例えば、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、及び過炭酸アンモニウム等が挙げられ、これらの一種又は二種以上が使用可能である。本発明において過酸化物質を用いる場合の使用量は、硬化時の沈下を抑制でき且つ高い初期強度が得られ易いことから、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対して、0.03〜0.1質量部が好ましく、0.04〜0.09質量部がより好ましく、0.04〜0.06質量部がさらに好ましい。また、発泡剤としてアルミニウム粉末を用いる場合の使用量は、硬化時の沈下を抑制でき且つ高い初期強度が得られ易いことから、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対して、0.003〜0.01質量部が好ましい。
【0021】
本発明に用いる消泡剤としては、その種類は限定されないが、例えば、市販のセメント用消泡剤、市販のセメントモルタル用消泡剤又は市販のコンクリート用消泡剤の他、他用途の鉱物油系、エーテル系、シリコーン系等の消泡剤、トリブチルフォスフェート、ポリジメチルシロキサン又はポリオキシアルキレンアルキルエーテル系非イオン界面活性剤が好適な例として挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。また、本発明に用いる消泡剤としては、液体のものでも粉末状のものでもよい。粉末状の消泡剤としては、液体消泡剤を、シリカ粉末等の無機質粉末に担持させて粉末状にしたものも用いることができる。本発明における消泡剤の配合割合は、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対し0.01〜0.1質量部とすることが、高い強度が得易いことから好ましい。0.01質量部未満では消泡効果がほとんど得られない。
【0022】
本発明に用いる収縮低減剤としては、種類は特に限定されず、市販のモルタル用、コンクリート用又はセメント用の収縮低減剤を好適に用いることができる。本発明において収縮低減剤の配合割合は、結合材(セメント、カルシウムアルミネート及び石膏類)100質量部に対し0.5〜5質量部とすることが、硬化後の収縮をより小さくできる。0.5質量部未満では収縮低減効果がほとんど得られない。5質量部を超えると強度が低下する虞がある。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例に基づいて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
以下に示す材料を使用し、セメント、カルシウムアルミネート、石膏類からなる結合材100質量部を表1となるように配合設計した。その結合材100質量部に対して、細骨材6質量部、過酸化物質0.06質量部,アルカリ金属炭酸塩0.4質量部(炭酸リチウム0.2質量部、炭酸ナトリウム0.2質量部)、遅延剤0.06質量部、減水剤0.25質量部になるように配合設計したプレミックスモルタルを作製した。作製したプレミックスモルタルを20kg秤とり、26L金属製円筒容器に秤とった水6.8Lに加え、直ちにハンドミキサで60秒間混練することでグラウト材を製造した。
<使用材料>
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製);セメント
CA:アルミナセメント(市販品);カルシウムアルミネート類
CS:無水石膏(市販品);石膏類
PC:過炭酸ナトリウム(市販品);過酸化物質
NC:炭酸ナトリウム(市販品);アルカリ金属炭酸塩
LC:炭酸リチウム(市販品);アルカリ金属炭酸塩
JS:クエン酸(市販品);遅延剤
AD:ナフタレンスルホン酸系高性能減水剤(市販品);減水剤
AN:ポリエーテル系消泡剤(市販品);消泡剤
S:珪砂(市販品);細骨材
【0025】
【表1】
【0026】
作製したグラウト材の品質評価試験として、以下に示す通り、流動性試験、圧縮強度試験、初期膨張率試験、充填性試験、耐ブリーディング性試験及び外観評価試験を行った。これらの結果及び評価を表2に示した。
【0027】
<品質評価試験方法>
・流動性試験
土木学会基準JSCE−F 541−1999「充填モルタルの流動性試験方法」に準じてJSCE−1986「PCグラウト試験方法」「第1章 コンシステンシー試験方法」に規定されるJ漏斗(J
10漏斗)を用いて,混練直後及び混練開始から10分後の流下時間(J
10漏斗流下時間、以下単に「流下時間」ということがある)を測定した。混練直後の流下時間が7〜13秒且つ混練開始から10分後の流下時間が7〜15秒の範囲に入るものを「最良(◎)」、混練直後及び混練開始から10分後の流下時間が最良の範囲ではないが何れも7〜15秒の範囲に入るものを「良好(○)」、混練直後の流下時間が7〜15秒且つ混練開始から10分後の流下時間が15秒を超えるが測定できるものを「やや不良(△)」、これら以外のもの(◎、○、△の何れにも当てはまらないもの)を「不良(×)」であると、流動性の評価および可使時間の評価を行った。
・圧縮強度試験
土木学会基準JSCE−G 505−1999「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法」に準じ、材齢30分における圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径50mm,高さ100mmとした。
・初期膨張率試験
混練後直ちに直径50mm,高さ100mmの円筒型枠に作製したセメント系グラウト材を投入後、上面を平らに成形した。そのグラウト材上面に直径40mm,厚さ1.5mmの円盤状プラスチック板を置き、非接触センサーにて成形直後から24時間後までの長さ変化測定を行い、材齢5分と材齢24時間の測定値を読み取り、材齢5分の初期膨張量(硬化前の膨張量)に対し材齢24時間の初期膨張量(硬化後の膨張量)が大きいものを「良好(○)」,小さいものを「不良(×)」と評価した。実施例に当たるグラウト材、即ち、初期膨張性の評価が「良好(○) 」のグラウト材は、その材齢5分の膨張量(EX
5m)及び材齢24時間の膨張量(EX
24h)(何れも単位はmm)から次式(1)で求まる初期膨張率が、何れも0%よりも大きく且つ1%未満であったことから、過膨張による強度低下の虞もないものであった。
初期膨張率(%)=(EX
24h−EX
5m)÷100(mm)×100(%) …(1)
・充填性試験
長さ(奥行)80cm×幅40cm×高さ1cmの隙間を有する扁平な長方形の箱型の型枠を用い、型枠の内部空間(隙間)に不織布製長方形袋からなる容器を設置した。その不織布製容器は、グラウト材を充填して膨らませると型枠の内側全体に密着する寸法である。不織布製容器にはグラウト材投入用ホース及び排出用ホースが設けられており、各々のホースは、内径が5cm、ホースの長さが2mである。混練し作製した直後のグラウト材を投入用ホースの投入口から流し込み,排出用ホースの排出口まで充填できれば充填性が「良好(○)」、それ以外のものは「不良(×)」と評価した。
・材料不分離性試験(耐ブリーディング性試験)
上記充填性試験を実施したときに、不織布製容器から絞り出された水を集め、集まった水の質量が不織布製容器に充填したグラウト材の質量の2%以下の場合を材料不分離性(耐ブリーディング性)が「良好(○)」と評価し、2%を超える場合を材料不分離性(耐ブリーディング性)が「不良(×)」と評価した。
・外観評価試験
上記充填性試験と同様に不織布製容器に排出用ホースからグラウト材が排出されるまで作製したグラウト材を充填し、投入用ホース及び排出用ホースを止め、そのままの状態で静置し、翌日、型枠上面とグラウト材を充填した不織布製容器との隙間の有無を目視で確認した。このとき用いた箱型型枠の上側の板として透明なアクリル樹脂版を用いた。アクリル樹脂製型枠上板の下面とグラウト材を充填した不織布製容器との隙間が確認されなかったものを隙間抑制性「良好(○)」、アクリル樹脂製型枠上板の下面とグラウト材を充填した不織布製容器との間に隙間が確認されたものを隙間抑制性「不良(×)」と判断した。
【0028】
【表2】
【0029】
本発明の実施例に相当するセメント系グラウト材(配合No.A−1、A−2、A−5、A−6、A−9及びA−10)は、何れも低粘性(J
10漏斗流下時間が15秒以下)で可使時間が10分以上確保できるため、高さ方向1cmの隙間に配置した不織布製容器への充填が良好に行え、ブリーディングの発生(材料分離)が抑制され、且つ硬化体の上面に隙間が生じ難かった。それに対し、それに対し、配合No.A−4及びA−7のセメント系グラウト材は、混練開始から10分後の流動性が不良で、流下時間が測定できず、可使時間の確保ができずに、充填性が不良であった。また、配合No.A−3、A−8、A−11のグラウト材は短時間強度(材齢30分における圧縮強度)が低く、ブリーディングが発生するため、隙間抑制性が「不良(×)」であった。また、配合No.A−12のセメント系グラウト材は、粘度が高く(流下時間が長く)充填性が不良であり、短時間強度が低いため、硬化体の上面に隙間が生じた。
【0030】
[実施例2]
表3に示す配合割合でセメント系グラウト材を作製し、実施例1と同様に、作製したグラウト材の品質評価試験を行った。その評価および結果を実施例1における配合No.A−1の結果とともに表4に示した。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
本発明の実施例に当たる配合No.B−1〜10は、何れも低粘性(J
10漏斗流下時間が15秒以下)で可使時間が10分以上確保できるため、高さ方向1cmの隙間に配置した不織布製容器への充填が良好に行え、ブリーディングの発生(材料分離)が抑制され、且つ硬化体の上面に隙間が生じ難かった。