【0008】
アクリル樹脂粒子はそれ自体が粘着性を有することが必要なため、構成単量体として2−エチルヘキシルアクリレートを含む必要があり、90重量%以上含むことが好ましい。また、ケイ素基含有アクリル系単量体を含むことにより、再剥離時を向上させることができるため、0.1〜5重量%含むことが好ましい。
ケイ素基含有アクリル系単量体の具体例としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのいわゆるシランカップリング剤が挙げられるが、シロキサン構造を有するものでもよい。
【0011】
重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの水性ラジカル重合開始剤またはこれらの混合物を用いることができる。重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対して通常は0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
また、還元剤の存在下で重合開始剤を用いることにより、レドックス系を形成することができる。そのような還元剤としては亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩などのアルカリ金属塩やアンモニウム塩、L−アスコルビン酸、酒石酸などのカルボン酸類が挙げられる。還元剤の使用量は単量体100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部である。
【実施例】
【0017】
アクリル樹脂粒子の調製
反応器にイオン交換水200部、アニオン性界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、部分けん化ポリビニルアルコール(けん化度87〜89mol/%、重合度
2400)1部を仕込み、加熱下で十分に攪拌することにより均一に溶解させ、水溶液を調製した。
次に別の容器に2−エチルヘキシルアクリルレート93部、アクリロニトリル5部、メタクリル酸1.5部、ケイ素基含有アクリル系単量体である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部、重合開始剤であるナイパーBW(日油社製、過酸化ベンゾイル、商品名)0.6部を仕込み、十分に攪拌することにより混合液を調製した。この混合液を前記水溶液に添加し、攪拌機を用いて攪拌速度300rpmにて10分間で分散させ、温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却機を取り付け、窒素置換、昇温を開始した。65〜70℃で反応が開始し、激しく発熱した。これを冷却して70℃に保持し3時間反応を行った。反応後、40℃まで冷却し、アルカリ増粘剤、アンモニア水を順に添加することにより、粘度700mPa・s、pH8.0、平均粒子径が30μmであるアクリル樹脂粒子分散液1を得た。
【0018】
また、界面活性剤およびポリビニルアルコールの添加量と、混合液の分散条件を表1のように変更した他はアクリル樹脂粒子分散液1と同様に行い、それぞれ平均粒子径が異なるアクリル樹脂粒子分散液2〜4を得た。
【0019】
【表1】
【0020】
さらに、アクリル樹脂粒子分散液1の調製において、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代えてエチレングリコールジメタクリレート0.5部を添加した他はアクリル樹脂粒子分散液1の調製と同様に行い、平均粒子径が30μmであるアクリル樹脂粒子分散液5を得た。
【0021】
アクリル樹脂エマルジョンの調製
反応器にイオン交換水40部、リン酸2アンモニウム 0.2部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム 0.07部を仕込み、温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却機を取り付け、攪拌しながら窒素置換、昇温を開始した。
次に別の容器にイオン交換水26部、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩0.8部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム2部、アクリルアミド0.7部を仕込み充分攪拌することにより水溶液を調整した。
別の容器に2−エチルヘキシルアクリレート 45.4部、ブチルアクリレート 45.4部、酢酸ビニル 5部, 2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1.5部、アクリル酸2部、ドデシルメルカプタン0.03部を仕込んで単量体溶液を調製し、先に調整しておいた水溶液を添加して攪拌し乳化モノマー液を調整した。
また、過硫酸アンモニウム0.5部をイオン交換水5部に溶解させ、重合開始剤溶液を調整した。
反応器に前記乳化モノマー液の3.7%を添加し、10分後に前記重合開始剤溶液の12%を添加し、発熱開始から30分間種重合を行った。次いで反応系中を80℃±3℃に保ちながら残りの乳化モノマー液、重合開始剤溶液をそれぞれ4時間かけて滴下し、滴下終了後さらに80℃±3℃で2時間を維持させた。重合終了後、40℃まで冷却し、消泡剤、防腐剤を添加しアクリル樹脂エマルジョン1を得た。
【0022】
粘着剤組成物の調製
固形分を基準として、前記アクリル樹脂エマルジョン1 100部に対して、アクリル樹脂粒子1 100部およびカルボジイミド系架橋剤であるカルボジライト(日清紡ケミカル社製、商品名)0.5部を混合することにより、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0023】
評価方法
コート紙上に各粘着剤組成物を乾燥後の膜厚が10μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、110℃雰囲気下で1分間乾燥後に別のコート紙を貼り合わせた。ローラーで2往復することにより圧締し、23℃雰囲気下で24時間放置することにより、幅が
25mmである試験体を作製した。
試験体を180°方向に引張り速度300mm/分で剥離し、接着強度を測定した。接着強度が1N/25mm以上であるものを○、1N/25mm未満であるものを×と評価した。
なお、剥離時に被着材が破壊したかを確認して剥離性を評価した。被着材が破壊しなかったものを○、被着材が破壊したものを×と評価した。
また、剥離後の被着材に粘着剤が付着しているかどうかを確認し、糊残りを確認した。粘着剤が付着していないものを○、粘着剤が付着しているものを×と評価した。
【0024】
前記試験体をさらに40℃雰囲気下で7日間放置した後に同様に接着強度を測定した。40℃雰囲気下で7日間放置前の接着強度と比較して、接着強度の増加が20%以下であるものを○、20%を超えるものを×と評価した。
【0025】
【表2】
【0026】
実施例の各粘着剤組成物においては、十分な接着強度を有しており、剥離性も良好であり、高温下に曝された場合であっても剥離性は維持されていた。一方、比較例の各粘着剤組成物においては、いずれかの性能が不十分であった。