【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム『多様化・個別化社会イノベーションデザイン拠点』委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の基礎となった知見)
ユーザ(例えば、高齢者)の動作を支援するシステムとして、電動車椅子に備えられた3つのアクチュエータによって、電動車椅子の着座部の傾動動作と、背もたれ部の傾動動作と、背もたれ部の伸縮動作とを自動で個別に操作できるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
特許文献1に開示されている技術は、電動車椅子に備えられた操作スイッチおよび操作レバーを用いて電動車椅子のリクライニング動作を制御して、電動車椅子をノーマルポジションからスタンドアップポジションへ移行可能である。しかしながら、ユーザが着座状態から立ち上がり状態までの全てを電動車椅子によって支援されるため、ユーザが自らの筋力を使って立ち上がり動作を行なうことがない。そのため、特許文献1の電動車椅子の支援動作を利用し続けることで、ユーザの筋力は低下し続けてしまう。
【0013】
また、先行文献1に開示されている技術は、操作スイッチおよび操作レバーをユーザが自ら操作して電動車椅子に立ち上がりまでのリクライニング動作を実行させるものである。このような構成では、ユーザは着座部と背もたれ部の動作に従って強制的に着座状態から立ち上がり状態へ移行させられるため、例えば、身体機能の衰えているユーザにとって、自らの身体操作が装置に支配されることで恐怖心を感じてしまう。
【0014】
そこで、発明者らは、生活支援システムの機能向上のための検討を行い、以下の改善策を提案するに至った。
【0015】
生活支援システムの一態様は、ユーザが着座する座面の座面移動を行う自動昇降型椅子と、ユーザの手または腕によってかかる荷重を検知する荷重検知装置と、ユーザによる立ち上がり支援指示を受け付ける指示入力部と、を備え、前記自動昇降型椅子は、前記座面移動を制御して、前記自動昇降型椅子に着座しているユーザの立ち上がりに対する支援動作を実行する支援制御装置と、を備え、前記支援制御装置は、前記支援指示に応じて、座面位置を着座位置から第1座面位置へ移動させる第1支援動作を実行し、前記荷重の検知に応じて、前記座面位置を前記第1座面位置から第2座面位置へ移動させる第2支援動作を実行する、ものである。
【0016】
上記態様によると、支援制御装置は、指示入力部に入力された支援指示に応じて、自動昇降型椅子の座面位置を着座位置から第1座面位置へ移動する第1支援動作を実行し、荷重検知装置の荷重の検知に応じて、座面位置を第1座面位置から第2座面位置へ移動させる第2支援動作を実行する。
【0017】
ここでは、例えば、ユーザが自発的に立ち上がろうと荷重検知装置に手または腕によって荷重を掛けて立ち上がり動作を自発的に行なった場合に、自動昇降型椅子の支援制御装置は第2支援動作を実行する。そのため、少なくとも、立ち上がり動作の開始時には、自らの筋力を使うため、自動昇降型椅子の動作のみに自らの立ち上がり動作を任せることがない。本態様の生活支援システムの利用によって、ユーザの立ち上がり動作の支援と、ユーザの筋力低下の抑制が可能となる。
【0018】
また、立ち上がり支援指示が入力されると、自動昇降型椅子の支援制御装置は、例えば、ユーザの身体を起こすための第1支援動作を実行する。その後、ユーザの手または腕によって荷重検知装置に荷重がかけられると、例えば、ユーザの身体を、身体を起こした状態から立ち上がり状態へ移行させる第2支援動作が実行される。そのため、ユーザが立ち上がりの意思を生活支援システムへ伝えた上で、尚且つ、荷重検知装置に自身の体重を掛ける動作を実行すると、自動昇降型椅子による立ち上がり支援動作が実行される。そのため、自らの身体操作が生活支援システムに支配されることが無いので、ユーザの精神的な負担を軽減可能である。さらに、第2支援動作が実行される際には、ユーザは荷重検知装置に体重の一部をかけた状態である。そのため、自動昇降型椅子が動作することで体勢が崩れ易くなる身体を自ら支えることができ、この点からもユーザの精神的な負担を軽減可能となる。以上のことから、本態様においては、ユーザが心と体の準備ができた段階で、自動昇降型椅子が立ち上がり動作をするため、ユーザの安心感を生むことが可能である。
【0019】
上記態様において、例えば、前記荷重検知装置は、ネットワークを介して前記自動昇降型椅子と接続される自律移動型ロボットであり、前記自律移動型ロボットは、本体部と、前記本体部に設けられ、ユーザが把持可能なハンドル部と、前記ユーザの手または腕によってかかる荷重として、前記ハンドル部にかかる荷重を検知する第1荷重検知部と、前記指示入力部と、を備える、ようにしてもよい。
【0020】
上記態様において、例えば、前記自律移動型ロボットは、さらに、前記ネットワークを介して、前記立ち上がり支援指示を受け付けた旨を表す受付情報、および前記荷重を検知した旨を表す荷重検知情報の各々を前記自動昇降型椅子へ送信する第1通信部を備え、前記自動昇降型椅子は、さらに、前記ネットワークを介して、前記受付情報、および前記荷重検知情報を受信する第2通信部を備え、前記支援制御装置は、前記第2通信部によって前記受付情報を受信した場合、前記第1支援動作を実行し、前記第2通信部によって前記荷重検知情報を受信した場合、前記第2支援動作を実行するとしてもよい。
【0021】
上記態様において、例えば、前記自動昇降型椅子は、さらに、前記座面にかかる荷重を検知する第2荷重検知部を備え、前記支援制御装置は、前記荷重検知情報を受信した場合であって、且つ前記座面にかかる荷重が減少したことを検知した場合に、前記第2支援動作を実行するとしてもよい。
【0022】
上記態様によると、自動昇降型椅子は、第1荷重検知部の荷重検知情報と、第2荷重検知部の荷重検知情報とを用いて、第2支援動作を実行する。これによって、ユーザの体重または重心が、自動昇降型椅子から前記自律移動型ロボットの方へと移動していることをより確実に検知して第2支援動作を実施することができる。よって、第2支援動作の確実性を高めることができる。
【0023】
上記態様において、例えば、前記自律移動型ロボットは、さらに、前記本体部を自立させた状態にて移動させる移動装置と、前記移動装置の動作を制御する移動制御部と、を備え、前記移動制御部は、前記指示入力部を介して、前記立ち上がり支援指示を受け付けた場合、前記移動装置の動作を制御して前記自律移動型ロボットを前記自動昇降型椅子の前方近傍の支援位置へ移動させるとしてもよい。
【0024】
上記態様によると、自律移動型ロボットが支援指示を受け付けた場合、自律移動型ロボットの移動制御部は、移動装置を介して自律移動型ロボットが自動昇降型椅子の前方へ移動するように制御する。これにより、立ち上がろうとするユーザが、自律移動型ロボットのハンドルを把持しやすくすることができる。
【0025】
上記態様において、例えば、前記着座位置は、少なくとも、前記座面の前後方向が水平面に対して前記自動昇降型椅子の後方へ傾斜している座面位置であるとしてもよい。
【0026】
上記態様によると、自動昇降型椅子の着座位置は、座面の前後方向が水平面に対して、自動昇降型椅子の後方へ傾斜している。これによって、自動昇降型椅子におけるリクライニングの角度がより深い姿勢をとることができるため、ユーザの快適性を向上させることができる。
【0027】
上記態様において、例えば、前記支援動作は、少なくとも、前記座面の前後方向と鉛直方向とがなす角の角度である座面角度を変位させる動作を含み、前記第1支援動作は、前記着座位置に対応する定常座面角度から、前記第1座面位置に対応する第1座面角度へ、前記座面角度を変位させる動作であり、前記第2支援動作は、前記第1座面角度から前記第2座面位置に対応する第2座面角度へ、前記座面角度を変位させる動作であり、第1座面角度は、定常座面角度と第2座面角度との間の角度であるとしてもよい。
【0028】
上記態様によると、2段階の動作で椅子の角度を変位させることができたため、ユーザに安心感を持たせた座面制御を実現することができる。
【0029】
また、座面角度は、定常座面角度、第1座面角度及び第2座面角度の順に、段階的に少なくとも2段階で変位させることができるため、ユーザの安心感を生むことができる。
【0030】
上記態様において、例えば、前記自動昇降型椅子は、さらに、前記ユーザの足を置くフットレストおよび前記ユーザの脚をガイドするレッグレストの少なくとも一方を備え、前記着座位置は、前記フットレストおよび前記レッグレストの少なくとも一方を利用した前記ユーザの膝関節の角度が90度よりも大きくなる座面位置であるとしてもよい。
【0031】
上記態様によると、自動昇降型椅子は、フットレストおよびレッグレストの少なくとも一方を備えており、着座位置をユーザの膝関節の角度が90度よりも大きくなる座面位置としている。これによって、ユーザは着座している状態において、非常にリラックスした姿勢を保つことを可能にする。
【0032】
上記態様において、例えば、前記支援動作は、少なくとも、前記自動昇降型椅子の前後方向に前記座面を変位させる動作を含み、前記第1支援動作は、前記着座位置から、前記着座位置よりも前記自動昇降型椅子の前方である前記第1座面位置へ、前記座面位置を変位させる動作であるとしてもよい。
【0033】
上記態様において、例えば、前記自動昇降型椅子は、さらに、前記自動昇降型椅子に着座しているユーザのバイタル情報を検知するバイタル情報検知部と、前記バイタル情報に基づいて前記ユーザの覚醒度を判定する覚醒度判定部と、を備え、前記支援制御装置は、前記覚醒度に応じて、前記座面移動の速度を制御するとしてもよい。
【0034】
上記態様によると、自動昇降型椅子は、着座している前記ユーザの覚醒度を判定し、覚醒度に応じて、座面移動の速度を制御する。これによって、自動昇降型椅子は、ユーザにとってより安全に立ち上がり動作を実行することができる。
【0035】
上記態様において、例えば、前記自動昇降型椅子は、さらに、前記自動昇降型椅子に着座しているユーザのバイタル情報を検知するバイタル情報検知部と、前記バイタル情報に基づいて前記ユーザの疲労度を判定する疲労度判定部と、を備え、前記支援制御装置は、前記疲労度に応じて、前記座面移動の速度を制御するとしてもよい。
【0036】
上記態様によると、自動昇降型椅子は、着座している前記ユーザの疲労度を判定し、疲労度に応じて、座面移動の速度を制御する。これによって、自動昇降型椅子は、ユーザにとってより安全に立ち上がり動作を実行することができる。
【0037】
上記態様において、例えば、前記支援制御装置は、前記覚醒度が閾値未満である場合、第1座面移動速度で前記第1支援動作を実行し、前記覚醒度が前記閾値以上である場合、第2座面移動速度で前記第2支援動作を実行し、前記第1座面移動速度は、前記第2座面移動速度よりも遅い速度であるとしてもよい。
【0038】
上記態様において、例えば、前記支援制御装置は、前記バイタル情報の強度が所定の値以上である場合に、前記受付情報を受信せずとも前記第1支援動作の実行を開始するとしてもよい。
【0039】
上記態様によると、ユーザのバイタル情報が大きく(すなわち、ユーザが自動昇降型椅子から立ち上がる準備ができている)時には、受付情報の有無によらず第1支援動作を実行する。これにより、ユーザにとって適切なタイミングで立ち上がり動作を開始することができる。
【0040】
上記態様において、例えば、前記自動昇降型椅子は、さらに、音声出力部を備え、
前記音声出力部は、前記覚醒度が所定の値よりも低い場合であって、且つ前記第1支援動作が実行されている場合、前記ユーザの覚醒を促す音声を出力するとしてもよい。
【0041】
上記態様によると、ユーザの覚醒度が十分でなく、かつ、第1支援動作が始まっている場合には、音声によりユーザに覚醒を促せるため、安全性を高めることができる。
【0042】
上記態様において、例えば、前記自動昇降型椅子は、さらに、所定の座面移動速度で前記第1支援動作を完了させるまでに要する動作時間を取得する動作時間取得部を備え、前記移動制御部は、前記支援位置までの移動経路、および移動時間を算出し、前記第1通信部は、前記ネットワークを介して、前記移動時間を示す移動時間情報を前記自動昇降型椅子へ送信し、前記支援制御装置は、前記第2通信部を介して前記移動時間情報を受信した場合、前記移動時間と、第1座面移動速度で前記第1支援動作を完了させるまでに要する第1動作時間とを比較し、前記動作時間が前記移動時間よりも短いとき、第1座面移動速度よりも遅い第2座面移動速度で第1支援動作を実行し、前記第2座面移動速度は、当該第2座面移動速度で前記第1支援動作を完了させるまでに要する第2動作時間が前記移動時間と同じになる速度であるとしてもよい。
【0043】
上記態様によると、自動昇降型椅子は、自律移動型ロボットの支援位置まで移動するのに要する移動時間と、第1支援動作を完了させるまでに要する第2動作時間が同じ時間になるように第1支援動作の移動速度を制御する。これによって、ユーザにとって、スムーズに第1動作支援から第2動作支援へ移行することが可能になる。
【0044】
上記態様において、例えば、前記移動制御部は、前記支援位置までの移動経路、および前記移動経路の移動に要する移動時間を算出し、前記自動昇降型椅子は、さらに、前記第1支援動作を完了させるまでに要する動作時間を取得する動作時間取得部を備え、前記第2通信部は、前記ネットワークを介して、前記動作時間を示す動作時間情報を前記自律移動型ロボットへ送信し、前記移動制御部は、前記支援位置までの移動経路、および前記移動経路を所定の移動速度で移動した場合に要する移動時間を算出し、前記移動制御部は、前記第1通信部を介して、前記動作時間情報を受信した場合、前記動作時間と、前記移動経路を第1移動速度で移動するのに要する第1移動時間とを比較し、前記動作時間と前記第1移動時間に差異があるとき、前記移動経路を前記移動装置を第2移動速度で動作させ、前記第2移動速度は、前記移動経路を当該第2移動速度で移動した場合に要する第2移動時間が前記動作時間と同じになる速度であるとしてもよい。
【0045】
上記態様によると、自律移動型ロボットは、自動昇降型椅子が第1支援動作を完了するまでに要する動作時間と、移動時間が同じ時間になるように移動制御のための速度を制御する。これによって、ユーザにとって、スムーズに第1動作支援から第2動作支援へ移行することが可能になる。
【0046】
上記態様において、例えば、前記自律移動型ロボットは、さらに、前記本体部に設けられた第1発光部を備え、前記第2通信部は、前記第1支援動作が実行された場合、前記第1発光部を発光させる第1コマンドを前記自律移動型ロボットへ送信するとしてもよい。
【0047】
上記態様によると、自律移動型ロボットは、自動昇降型椅子が第1支援動作を実施中である旨の通知を受けた際、本体部に設けられた第1発光部を発光させる。これによって、ユーザはこれから立ち上がりの動作が行われることを認知することができる。
【0048】
上記態様において、例えば、前記自律移動型ロボットは、さらに、前記自動昇降型椅子に対して前記本体部のいずれの面を向けているかを判定する面判定部を備え、前記第1発光部は、前記本体部の正面および背面にそれぞれ設けられ、前記第1通信部を介して前記第1コマンドを受信した場合、前記本体部が前記自動昇降型椅子に前記背面を向けていると判定される面に対応した前記
第1発光部が発光するとしてもよい。
【0049】
上記態様によると、自律移動型ロボットは、昇降型椅子に対して、正面を向いているか、背面を向いているかを判定し、背面を向いている場合には、背面に設けた発光部を発光させる。これによって、ユーザは、自律移動型ロボットが歩行支援状態にあることを認知することができる。
【0050】
上記態様において、例えば、前記自律移動型ロボットは、さらに、前記ハンドル部に設けられた第2発光部を備え、前記第2通信部は、前記第1支援動作が完了した場合、前記第2発光部を発光させる第2コマンドを前記自律移動型ロボットへ送信するとしてもよい。
【0051】
上記態様によると、自律移動型ロボットは、ハンドル部に設けた第2発光部を、自動昇降型ロボットが第1支援動作を完了した場合に、発光させる。これによって、ユーザは、自身が把持すべきハンドル部の位置と把持タイミングを容易に認知することができる。
【0052】
また、他の態様において、ネットワークを介して自律移動型ロボットと接続し、ユーザが着座する座面の座面移動を行なう自動昇降型椅子であって、前記ネットワークを介して、前記自律移動型ロボットから、立ち上がり支援支持を受付けた旨を表す受付情報、および前記自律移動型ロボットにかかる荷重を検知した旨を表す荷重検知情報を受信する通信部と、前記座面を制御して、前記自動昇降型椅子に着座しているユーザの立ち上がりに対する支援動作を実行する、支援制御装置と、を備え、前記支援制御装置は、前記通信部によって前記受付情報を受信した場合、前記座面位置を着座位置から第1座面位置へ移動させる第1支援動作を実行し、前記通信部によって前記荷重検知情報を受信した場合に、前記座面位置を前記第1座面位置から第2座面位置へ移動させる第2支援動作を実行する。
【0053】
上記態様によると、自律移動型ロボットに入力された支援指示に基づき、自動昇降型椅子は座面位置を着座位置から第1座面位置へ移動する第1支援動作を実行する。その後、自律移動型ロボットからの荷重検知情報に応じて、座面位置を第1座面位置から第2座面位置へ移動させる。
【0054】
ここでは、例えば、ユーザが自発的に立ち上がろうと自律移動型ロボットに荷重を掛けて立ち上がり動作を自発的に行なった場合に、自動昇降型椅子は第2支援動作を実行する。そのため、少なくとも、立ち上がり動作の開始時には、自らの筋力を使うため、自動昇降型椅子の動作のみに自らの立ち上がり動作を任せることがない。本態様の生活支援システムの利用によって、ユーザの立ち上がり動作の支援と、ユーザの筋力低下の抑制が可能となる。
【0055】
また、立ち上がり支援指示が実行されると、自動昇降型椅子は、例えば、ユーザの身体を起こすための第1支援動作を実行する。そして、ユーザが自律移動型ロボットに荷重を掛けると、例えば、ユーザの身体を、身体を起こした状態から立ち上がり状態へ移行させる第2支援動作が実行される。そのため、ユーザが立ち上がりの意思を生活支援システムへ伝えた上で、尚且つ自身の体重を自律移動型ロボットに掛ける動作を実行すると、自動昇降型椅子による立ち上がり支援動作が実行される。したがって、自らの身体操作が生活支援システムに支配されることが無いので、ユーザの精神的な負担を軽減可能である。さらに、第2支援動作が実行される際には、ユーザは自律支援ロボットに体重の一部をかけた状態である。そのため、自動昇降型椅子が動作することで体勢が崩れ易くなる身体を自ら支えることができる。この点からもユーザの精神的な負担を軽減可能となる。以上のことから、本態様においては、ユーザが心と体の準備ができた段階で、自動昇降型椅子が立ち上がり動作をするため、ユーザの安心感を生むことが可能である。
【0056】
上記他の態様において、例えば、前記自律移動型ロボットは、本体部と、前記本体部に設けられ、ユーザが把持可能なハンドル部と、前記ハンドル部にかかる荷重を検知する第1荷重検知部と、を備え、前記荷重検知情報は、前記第1荷重検知部において前記荷重が検知された場合に、前記自律移動型ロボットから前記自動昇降型椅子へ送信される情報であるとしてもよい。
【0057】
上記態様によると、ユーザが、自律移動型ロボットのハンドル部を把持することで荷重をかけることができる。よって、少なくとも第2支援動作が実行される際には、ユーザは自律移動型ロボットのハンドル部を把持しているため、体勢を崩れることを抑制できる。
【0058】
また、他の別の態様において、ネットワークを介して自律移動型ロボットと接続し、ユーザが着座する座面の座面移動を行なう自動昇降型椅子において用いられる生活支援方法であって、前記ネットワークを介して、前記自律移動型ロボットから、立ち上がり支援支持を受付けた旨を表す受付情報、および前記自律移動型ロボットにかかる荷重を検知した旨を表す荷重検知情報を受信し、前記座面を制御して、前記自動昇降型椅子に着座しているユーザの立ち上がりに対する支援動作を実行し、前記受付情報を受信した場合、前記座面位置を着座位置から第1座面位置へ移動させる第1支援動作を実行し、前記荷重検知情報を受信した場合に、前記座面位置を前記第1座面位置から第2座面位置へ移動させる第2支援動作を実行する。
【0059】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0060】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1における生活支援システムの主要な構成、及び、主要な動作を示した模式図である。本実施の形態1は、ユーザの立ち上がりを支援する生活支援システムであって、自律移動型ロボット2と、自動昇降型椅子3とを備え、両者が通信ネットワークを介して接続されることにより構成される。本実施の形態1では、ユーザが自動昇降型椅子3の着座位置に着座している際、ユーザから、生活支援システムに対して立ち上がり支援指示の入力があると、まず、自動昇降型椅子3が着座位置から第1座面位置まで座面を起き上がらせる動作をする。次に、ユーザが自律移動型ロボットのハンドル部を保持したこと、またはユーザがハンドル部に対して荷重をかけたことを検知すると、自動昇降型椅子3は第2座面位置まで起き上がる動作をする。
【0061】
また、自律移動型ロボット2の概観図を
図2に示し、自動昇降型椅子3の概観図を
図3に示す。ここで、着座位置、第1座面位置および第2座面位置の位置関係は、
図1に示したように、「着座位置の座面角度」<「第1座面位置の座面角度」<「第2座面位置の座面角度」の関係にある。すなわち、座面角度が大きくなるほど、ユーザの姿勢は立った姿勢に近づくことになる。
図3では、水平方向と座面の前後方向とがなす角の角度を座面角度θとして表わしているため、座面が水平である場合に座面角度θの値は0となる。一方で、座面が自動昇降型椅子3の後方へ傾くように傾斜している場合、座面角度θはマイナスの値となる。また、ここで、鉛直方向と座面の前後方向とがなす角の角度を座面角度θとして表わしてもよい。
【0062】
(自律移動型ロボットの構成)
図2に示すように、自律移動型ロボット2は、本体部21と、本体部21を自立させた状態にて移動させる移動装置22と、本体部21に設けられて、ユーザが把持可能なハンドル部23と、立ち上がりの支援指示を受け付ける、指示入力部24とを備える。なお、以降の説明では、自動移動型ロボット2を単に「ロボット2」と称する場合がある。
【0063】
本体部21は、例えば、他の構成部材を支持するとともに、ユーザが立ち上がる際の荷重を支えることができるような剛性を有するフレームにより構成される。
【0064】
移動装置22は、本体部21の下部に設けられた複数の車輪25と、車輪を回転駆動させることにより、本体部21を移動させる駆動部26とを備える。車輪25は、本体21を自立させた状態で支持し、駆動部26により回転駆動されることにより、自立させた姿勢を保った状態で、本体部21を移動させる。なお、移動装置22が車輪を用いた移動機構を備える場合を例としたが、車輪以外の移動機構(走行ベルト、ローラ、多脚機構など)が用いられるような場合であってもよい。
【0065】
ハンドル部23は本体部21の上部に設けられており、ユーザが着座した状態および起立した状態にて、ユーザの両手により把持しやすい形状・高さ位置に設けられている。
【0066】
また、ロボット2には、ハンドル部23にかかる荷重を検出する第1荷重検知部27が設けられている。第1荷重検知部27は、ハンドル部23をユーザが把持することにより、ハンドル部23に生じる荷重(すなわち、鉛直方向の力)を検出する。このような第1荷重検知部27としては、例えば、力センサを用いることができる。また、第1荷重検知部27にて検出されたハンドル荷重は、ネットワークを通じて自動昇降型椅子3に送られ、自動昇降型椅子3が後述する第2支援動作を行う際に用いられる。
【0067】
指示入力部24は、ユーザの「立ち上がりたい」という意思表示を支援指示として受け付ける機能を有する。指示入力部24は、例えば、マイク、ボタン、またはカメラなどであってもよい。指示入力部24がマイクである場合には、ユーザの意思表示を音声(例えば、特定のキーワード)、または音などをマイクにより取得し、音声または音認識手段により電気信号に変換して、支援指示を受け付けるようにしてもよい。また、指示入力部24がボタンである場合には、ユーザがボタンを押すことによって意思表示を入力するようにしてもよい。また、指示入力部24がカメラである場合には、ユーザの画像をカメラで取得して、画像認識手段により特定のジェスチャーを認識すること、あるいは表情を認識すること(例えば、片目を閉じるなど)で、支援指示を受け付けるようにしてもよい。支援指示は、ユーザが立ち上がれるタイミングになっていることを通知する情報であればよく、上述において例示したものに限られない。
【0068】
さらに、ロボット2には、ネットワークを通じて自動昇降型椅子3にハンドル荷重などの情報を送信する通信部28が設けられている。ここで、「ネットワーク」とは、いわゆるインターネットなどの公衆回線網を指すのみならず、近距離通信技術(例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信など)を含む概念である。
【0069】
(自動昇降型椅子の構成)
図3に示すように、自動昇降型椅子3は、ユーザが着座する座面31と、座面31を昇降可能に支持するフレーム32と、前方へ傾斜するように座面31を移動させる座面移動装置33とを備える。また、自動昇降型椅子3は、指示入力等に応じて座面移動装置33による座面移動を制御する支援制御装置34を備える。なお、本明細書において前方とは、自動昇降型椅子3に着座した状態のユーザの正面側の向きのことであり、後方とはユーザの後面側の向きのことである。また、左右方向とは、ユーザの正面側の向きを基準とした左右方向のことである。例えば、
図1において紙面に直交する方向が左右方向となっている。なお、以降の説明では、自動昇降型椅子3を単に「椅子3」と称する場合がある。
【0070】
座面31は、フレーム32により支持されている。具体的には、座面31の前方側端部は、左右方向を回動軸として回動可能にフレーム32に支持されている。座面31の後方側端部は、上下方向に機械的に伸縮する機構として、例えば、油圧式昇降アクチュエータ35を介してフレーム32に支持されている。昇降アクチュエータ35が油圧により伸縮することにより、座面31の角度θを変位させるように座面移動を行うことができる。本実施の形態1では、座面移動装置33が昇降アクチュエータ35を備えており、昇降アクチュエータ35を伸縮させることにより、前方へ傾斜するように座面31を移動させることができる。なお、本明細書において座面31の角度θは、ユーザが着座する姿勢にある座面の姿勢を基準とした角度変位として表している。なお、座面31の移動は、油圧式昇降アクチュエータのほか、例えば電動モータを用いるなど、その他様々な駆動装置を用いて行ってもよい。
【0071】
また、座面31には、座面31の角度θを検出する座面角度検出部37が設けられている。座面角度検出部37として、傾きセンサなどを用いてもよい。座面角度検出部37にて検出された座面の角度θは、支援制御装置34に入力される。
【0072】
支援制御装置34は、自律移動型ロボット2の通信部28より通信ネットワークを介して、自動昇降型椅子3の通信部38に入力された支援指示に関する情報に基づいて、座面移動装置33(すなわち、昇降アクチュエータ35)による座面移動を制御する。
【0073】
(生活支援システムの制御構成)
次に、このような構成を有する生活支援システム1において、ユーザの立ち上がりを支援する支援動作を制御するための制御構成について説明する。
図4に、生活支援システム1における主要な制御構成を示す制御ブロック図を示す。また、
図4の制御ブロック図では、それぞれの制御構成と取り扱われる情報の関係についても示している。
【0074】
図4に示すように、ロボット2の指示入力部24に立ち上がり支援の指示入力(すなわち、支援指示の入力)があった場合には、その旨を受付け、支援指示として支援指示を受け付けた旨を表す受付情報を、通信部28を通じて椅子3に通知する。通知を受けた椅子3の支援制御装置34は、椅子3の座面角度θを着座状態から第1座面位置になるように座面移動装置33を制御する。また、ロボット2の第1荷重検知部27が、ユーザがハンドル部23を保持したことに起因する荷重を検知した場合には、荷重の情報(ハンドル荷重)を、通信部28を介して椅子3へ通知する。通信部38を通じて通知を受けた椅子3の支援制御装置34は、椅子3の座面角度θを第1座面位置から第2座面位置になるように座面移動装置33を制御する。
【0075】
(生活支援システムによる立ち上がり支援)
次に、本実施の形態1の立ち上がり支援システム1により、椅子3に着座しているユーザの立ち上がり動作を支援する主要な手順について、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。また、
図5のフローチャートでは、ロボット2における手順と、椅子3における手順とを並列して示すとともに、ロボット2と椅子3との間の情報の受け渡しについても示している。
【0076】
まず、
図5のステップS1において、ロボット2の指示入力部24が、ユーザによる立ち上がりたいという意思表示である支援指示の入力を待つ。
【0077】
指示入力部24が支援指示の入力を受け付けた場合には、指示入力部24は、通信部28へその旨を通知し、通信部28はネットワークを通じて椅子3の通信部38へ支援指示を受け付けたことを示す受付情報を通知する。椅子3における支援制御装置34は、通信部38より受付情報を受けると、座面31を着座位置(初期の位置)から第1座面位置に移動するように制御する(ステップS2:第1支援動作)。具体的には、支援制御装置34は座面移動装置33(すなわち、油圧昇降アクチュエータ35)を制御することで、座面31の移動を制御する。ここで、支援制御装置34は、傾きセンサ37から座面31の角度を取得して、この角度を用いて座面31の移動をフィードバック制御してもよい。
【0078】
次に、
図5のステップS3において、ロボット2の第1荷重検知部27が、荷重を検知したかどうかを検出する。ここで、荷重を検知することとは、ユーザがロボット2のハンドル部23に接触したかどうかを検知することである。第1荷重検知部27が、ユーザのハンドル部23への荷重(ハンドル荷重)を検知した場合、その旨を第1荷重情報(荷重検知情報)として通信部28および通信部38を介して椅子3の支援制御装置34に通知する。この通知を受けた支援制御装置34は座面31を第1座面位置から第2座面位置へ移動するように制御する(ステップS4:第2支援動作)。
【0079】
座面31が第2座面位置へ到達すると、座面31の移動制御が終了し(ステップS5)、立ち上がり支援処理を終了させる。その後、立ち上がったユーザによりハンドル部23が把持された状態のロボット2は、立ち上がり支援モードから歩行支援モードへと切り替わり(ステップS6)、ユーザの歩行動作の支援を開始してもよい。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態1の生活支援システム1によれば、ユーザが椅子3から立ち上がる意思表示を行ったタイミングで第1段階の座面の移動を行って、ユーザに立ち上がる心や体の準備を促す。その後、ユーザがロボット2のハンドル部23を把持することで、実際に立ち上がることができる状態で、椅子2を実際に立ち上がるための第2段階の座面の移動を行うことができる。
【0081】
(実施の形態2)
次に、本開示の実施の形態2にかかる生活支援システム71について、
図6の自動昇降型椅子73の構成図と、
図7の制御ブロック図とを用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態2の生活支援システム71と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0082】
図6は、本実施の形態2の自動昇降型椅子73の構成を示したものである。
図6において、実施の形態1における自動昇降型椅子3との相違点は、座面31の下部に第2荷重検知部36を追加した点である。第2荷重検知部36は、ユーザが座面31に座っている際に、どの程度体重を椅子に乗せているか、を検知するものである。典型的には、圧力センサで構成されるが、荷重を検知できる構成であれば、これに限られない。
【0083】
図7に、本実施の形態2にかかる生活支援システム71の制御ブロック図を示す。本実施の形態2と実施の形態1との相違点は、自動昇降型椅子73が第2荷重検知部36を有して、支援制御装置74が第1荷重検知部27の情報と第2荷重検知部36の情報とに基づいて、座面移動装置33への制御を行う点である。具体的には、次のような制御を行う。
【0084】
支援制御装置74は、自律移動型ロボット2から第1荷重検知部27が、荷重を検知した旨の通知(荷重検知情報の通知)を受けた場合において、第2荷重検知部36の第2荷重データを検知する。このとき、第2荷重データが減少したことを検知したタイミングで、支援制御装置74は、座面移動装置33に第1の座面位置から第2の座面位置へ座面を移動することを指令する。なお、第2荷重データが、予め設定された閾値以下となった場合に、第2荷重データが減少したと判断してもよい。
【0085】
以上述べたように、本開示の実施の形態2にかかる生活支援システム71によれば、ユーザ本人が椅子から立ち上がろうとする動作に伴って、自動昇降型椅子73を持ち上げることができるため、よりスムーズな立ち上がり動作を実現できる。
【0086】
(実施の形態3)
次に、本開示の実施の形態3にかかる生活支援システム91について、
図8における自律移動型ロボット92の構成図、
図9における制御ブロック図、
図10における移動経路設定部94のより詳細な制御ブロック図、および、
図11における自律移動型ロボット92の動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1と共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態3の生活支援システム91と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0087】
図9は、本実施の形態3にかかる生活支援システム91における自律移動型ロボット92の構成図を示す。
図9において、実施の形態1の自律移動型ロボット2との相違点は、自律移動型ロボット92が移動制御部93を備える点である。移動制御部93は、後述するように、自律移動型ロボット92と自動昇降型椅子3との相対的な位置関係を算出する。自律移動型ロボット92は、算出された位置関係に基づいて、自動昇降型椅子3の前方近傍に定義された支援位置への移動経路を決定して、その移動経路に基づいて支援位置に移動する。
【0088】
図9は、本実施の形態3にかかる生活支援システム91の制御ブロック図である。
図9において、実施の形態1における生活支援システム1との相違点は、移動経路設定部94を含む移動制御部93が追加され、移動制御部93による移動制御に基づいて移動装置22が自律移動型ロボット92の移動制御を実施する点である。なお、本実施の形態3では、移動経路設定部94が移動制御部93に内蔵されるように構成したが、このような形態に限られない。例えば、移動経路設定部94が自律移動型ロボット92の外部に設置され、自律移動型ロボット92と通信することで、制御情報をやり取りしてもよい。
【0089】
図10は、移動経路設定部94のより詳細な構成を説明する制御ブロック図である。
図10に示すように、移動経路設定部94は、距離画像センサ101、椅子位置推定部102、自己位置推定部104、および移動経路決定部105を備える。
図10において、距離画像センサ101は、例えば、画像センサを用いて外界の画像を取り込む。一例としては、生活支援システム91の置かれた環境を上部よりカメラ等を用いて撮影してもよい。そして、椅子位置推定部102は、距離画像センサ101により取り込まれた画像を分析し、かつ、生活支援システム91が置かれた環境の地図を保持した環境マップ106に基づいて自動昇降型椅子3の位置を推定する。より具体的には、上部より撮影された画像と、予め取得しておいた「上部から見た椅子3の形状画像」をマッチングし、その結果を環境マップ106と比較することで、可能性の高い位置を推定するものである。同様に、自己位置推定部104も、画像のマッチングの結果を環境マップ106と比較することで、可能性の高い自己位置(すなわち、ロボット92の位置)を推定するものである。なお、椅子3の自己位置を推定する方法は、上記以外にも様々あり、例えば車輪25の回転角度を累積することで、移動距離と方向を推定する方法もある。本実施の形態3においては、自動昇降型椅子3と自律移動型ロボット92の位置を推定できればよいので、位置の推定方法は上記の実施の形態の方法に限られない。その後、移動経路決定部105は、椅子位置推定部102と自己位置推定部104の各々の位置推定結果に基づいて、自動昇降型椅子3と自律移動型ロボット92の相対位置を算出する。移動経路決定部105は、算出された相対位置関係に基づいて、ロボット92の現在位置から自動昇降型椅子3の前方近傍に定義された「支援位置」への移動経路を決定する。
【0090】
本実施の形態3における自律移動型ロボット92は、立ち上がり支援指示の入力があった場合(ステップS1)に、上述した方法により、自律移動型ロボット92の自己位置と自動昇降型椅子3の位置をそれぞれ推定する(ステップS110)。その後、自律移動型ロボット92において、自律移動型ロボット92の移動経路を決定し(ステップS111)、決定された移動経路に基づき、自律移動型ロボット92は、自動昇降型椅子3の前方近傍の支援位置へ移動する(ステップS112)。
【0091】
以上述べたように、本開示の実施の形態3にかかる生活支援システム91によれば、立ち上がり支援を行う際に、自律移動型ロボット92が自動昇降型椅子3の前方の支援位置へ移動する。したがって、必要な時にロボットの力を借りることができ、リクライニング中に邪魔をすることがないという効果を奏する。
【0092】
(実施の形態4)
次に、本開示の実施の形態4にかかる生活支援システム1について、
図12の構成図を用いて説明する。本実施の形態4では、自動昇降型椅子3の着座位置における座面の前後方向が水平方向(水平面)に対して自動昇降型椅子3の後方へ傾斜している。つまり、
図12において、座面の前後方向と水平面とがなす角度である座面角度θは、水平面の上方へ傾斜角を有するものである(すなわち、座面角度θはマイナスの値となっている。)。
【0093】
以上述べたように、本実施の形態4における自動昇降型椅子3では、ユーザは着座位置において、よりリクライニングの角度が深い姿勢をとることができるため、ユーザの快適性を向上させることができる。また、このようにリクライニングの角度が深い状態の着座位置から、ユーザの立ち上がり支援を行うことができる。
【0094】
(実施の形態5)
次に、本開示の実施の形態5にかかる生活支援システム1における自動昇降型椅子3について、
図13の模式図を用いて説明する。本実施の形態5は、座面角度θの定義方法について述べたものである。
図13において、座面角度θは、座面の前後方向と水平方向とがなす角の角度を水平方向から座面の前後方向に向かって時計方向を正の向きと定める。
図13に示すように、実施の形態4で説明した着座位置(すなわち、リクライニングの角度が深い状態の着座位置)での座面角度θ(定常座面角度)は負の値を示すことになる。一方、第1座面位置、第2座面位置では、それぞれの座面角度θは正の値を示すことになる。なお、第1座面角度は、定常座面角度と第2座面角度との間の角度になる。
【0095】
(実施の形態6)
次に、本開示の実施の形態6にかかる自動昇降型椅子3について、
図14の模式図を用いて説明する。本実施の形態6における自動昇降型椅子3は、フットレスト142あるいはレッグレスト141の少なくとも一方を備えている。また、自動昇降型椅子3において、フットレスト142あるいはレッグレスト141の少なくとも一方を利用したユーザの膝関節の角度は、90度より大きくなる。逆に言えば、フットレスト142あるいはレッグレスト141は、ユーザの膝関節の角度が90度より大きくなるように設定されている。
【0096】
以上述べたように、本実施の形態6にかかる自動昇降型椅子3では、ユーザは着座位置において足を前に伸ばした姿勢がとれるため、ユーザの快適性を向上させることができる。
【0097】
(実施の形態7)
次に、本開示の実施の形態7にかかる自動昇降型椅子151について、
図15の構成図を用いて説明する。本実施の形態6にかかる自動昇降型椅子151は、変位機構153を設け、さらにその上に座面152を設けている点が、実施の形態1にかかる自動昇降型椅子3と異なる。
【0098】
図15に示すように、椅子151は、座面ベース(実施の形態1の椅子3における座面31に相当)154の上に設けられた変位機構153と、変位機構153の上に設けられた座面152とを備える。変位機構153は、座面ベース154に対して、座面152を前後方向にスライドさせる機能を有する。変位機構153としては、例えば、レールと、レールに沿ってスライドするスライダとにより構成されてもよい。例えば、座面ベース154および座面152のいずれか一方にレールが固定され、いずれか他方にスライダが固定され、レールに沿ってスライダが移動することで、座面ベース154に対して座面152を前後方向にスライドさせてもよい。
【0099】
このような構成の椅子151に着座しているユーザがロボット2に対して立ち上がり支援指示を行うと、椅子151の座面152が着座位置から第1座面位置へと移動される(第1支援動作)。第1座面位置は前方に傾斜した座面角度であるため、ユーザの自重によって変位機構153を通じて、座面ベース154に対して座面152が前方にスライドする。すなわち、第1支援動作により、椅子151の座面152を、着座位置から着座位置よりも椅子151の前方である第1座面位置へ変位させることになる。これにより、ユーザはロボット2により近づくことができ、ハンドル部23を容易に把持することができる。その後、ハンドル部23への荷重が検知されると、第2支援動作が開始される。
【0100】
本実施の形態7の椅子151によれば、第1支援動作を行うことで、ユーザがロボット2により近づいた姿勢を採ることができ、ハンドル部23を握りやすくすることができる。椅子151において、例えば、リクライニングの角度が深い状態の着座位置(座面角度θが負の値)が用いられる場合には、ユーザは椅子151に深く腰掛けている状態となる。このような場合であっても、第1支援動作により座面152を前方に変位させることで、ユーザがハンドル部23を容易に握ることができ、ユーザの利便性が向上する。なお、
図15は、フットレストやレッグレストの記載を省略しているが、これらを有してもよい。
【0101】
(実施の形態8)
次に、本開示の実施の形態8にかかる生活支援システム161について、
図16における生活支援システム161の制御ブロック図、
図17における動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態8の生活支援システム161と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0102】
図16は、本実施の形態8にかかる生活支援システム161の制御ブロック図である。本実施の形態8は、上述の実施の形態1と、自動昇降型椅子162がバイタル情報検知部165と覚醒度判定部164とを有して、それらの情報に基づいて、支援制御装置163が座面移動の速度を制御する点が異なる。
【0103】
バイタル情報検知部165は、直近の荷重変化(体動)、脈、心拍あるいは呼吸等を検知する。そして、覚醒度判定部164は、これらのバイタル情報からユーザの覚醒度を判定する。
【0104】
バイタル情報検知部165は、例えば、椅子162の座面31または背もたれ(背面)に設けられた荷重センサであってもよい。この荷重センサにより、ユーザの体表面(生体表面)の圧の変化を捉えることで、荷重変化(体動)、脈、心拍あるいは呼吸等を検出してもよい。例えば、呼吸によってユーザの体の形状が変化するため、この変化を荷重として検出してもよい。また、血管表面の変化として、脈を検出してもよい。また、ユーザの心臓に近い体表面の変化として、心拍を検出してもよい。1つの荷重センサにより、脈、心拍および呼吸などの複数のバイタル情報を検出してもよい。なお、脈については、赤外線を用いたパルスメータ等、公知の脈取得手法や機器を利用してもよい。また、呼吸についても、ユーザの体の膨らみを距離センサで捉える、あるいは、カメラを用いて画像で検出するなどの方法を用いてもよい。
【0105】
覚醒度判定部164は、バイタル情報検知部165にて検出されたバイタル情報に基づいて、ユーザの覚醒度を判定する。例えば、バイタル情報において、荷重変化が頻繁である場合、脈が高めである場合、あるいは、呼吸の回数が高めである場合には、ユーザの覚醒度が高いと判定できる。
【0106】
また、バイタル情報が脈拍または心拍のデータである場合、脈拍または心拍の減少(例えば、10%減少)、または、HF成分(高周波成分)の増加が検出されると、覚醒度判定部164は、ユーザの覚醒度が低い(例えば、睡眠状態など)と判定してもよい。また、脈拍または心拍の低下(例えば、連続してなだらかに低下)、または、HF成分が連続して上がる状態が検出されると、覚醒度判定部164は、ユーザの覚醒度が低い(例えば、眠る前の状態など)と判定してもよい。
【0107】
また、バイタル情報を検出し、検出されたバイタル情報に基づいて覚醒度を判定する他の手法として、ユーザの脳波を計測することも考えられる。脳波にα波やθ波の成分が見られる場合には、覚醒度が低いことが知られているため、この計測データを用いて覚醒度の高さを判定することもできる。最後に、支援制御装置163は、判定されたユーザの覚醒度に基づいて座面31の移動速度を決定するように制御する。具体的には、覚醒度が低い程、座面31の移動速度を遅くする。
【0108】
図17は、本実施の形態8にかかる生活支援システム161の動作フローチャートである。まず、自動昇降型椅子162のバイタル情報検知部165が、ユーザの直近における荷重変化(体動)、脈、あるいは呼吸等を検知する(ステップS171)。次に、覚醒度判定部164が、上述のバイタル情報からユーザの覚醒度を判定する(ステップS172)。なお、覚醒度の判定は、覚醒度が閾値以上であるか、閾値未満であるかにより判定することができる。支援制御装置163は、上述の覚醒度が低い程、自動昇降型椅子162の座面の移動速度も低くなるように決定し(ステップS173)、座面移動装置33は、当該決定された移動速度で、着座位置から第1座面位置へ座面を移動する(ステップS174)。
【0109】
以上述べたように、本開示の実施の形態8にかかる生活支援システム161によれば、立ち上がり支援を行う際に、自動昇降型椅子162がユーザの覚醒度に応じた速度で座面を移動させる。したがって、例えば、ユーザの覚醒度が低い場合に急速な速度で不意を打たれるようなことがなく、より安全に立ち上がり動作を実行することができる。
【0110】
(実施の形態9)
次に、本開示の実施の形態9にかかる生活支援システム181について、
図18における生活支援システム181の制御ブロック図、
図19における動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態9の生活支援システム181と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0111】
図18は、本実施の形態9にかかる生活支援システム181の制御ブロック図である。本実施の形態9は上述の実施の形態1と、バイタル情報検知部184が、主としてユーザの荷重変化(体動)を検知し、支援制御装置183が、上述の荷重変化の変化量(体動の激しさに相当)が所定の値以上であった場合に、自律移動型ロボット2からの支援指示を待たずに自動昇降型椅子182の支援動作を開始する点が異なる。
【0112】
図19は、本実施の形態9にかかる生活支援システム181の動作フローチャートである。まず、自動昇降型椅子182において、バイタル情報検知部184は、主としてユーザの荷重変化を検知する(ステップS191)。検知されたユーザの荷重変化の情報が、支援制御装置183に入力される。支援制御装置183は、上述の荷重変化量が所定の値以上であった場合に、通信部38を介して入力される自律移動型ロボット2の支援指示情報を待たずに、着座位置から第1座面位置までの座面移動を行う(ステップS3)。
【0113】
以上説明したように、ユーザの荷重変化量が大きく(すなわち、ユーザが自動昇降型椅子182から立ち上がる準備ができている)時には、受付情報の有無によらず第1支援動作を実行する。したがって、ユーザにとって適切なタイミングで立ち上がり動作を開始することができる。
【0114】
(実施の形態10)
次に、本開示の実施の形態10にかかる生活支援システム201について、
図20における生活支援システム201の制御ブロック図、
図21における動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態8にかかる生活支援システム161との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態10の生活支援システム201と実施の形態8の生活支援システム161との相違点を中心に説明する。
【0115】
図20は、本実施の形態10にかかる生活支援システム201の制御ブロック図である。本実施の形態10は、支援制御装置203が、覚醒度判定部164が判定したユーザの覚醒度に基づいてユーザへ音声で報知するか否かを判断し、音声出力部204が音声をユーザに出力する点が、上述の実施の形態8と異なる。ここで、音声信号はいわゆる聴覚信号であり、ユーザが聴覚的に認知できる情報(信号)であればよく、例えば、音声をあらわす信号や、音量の大小を表す信号などがある。
【0116】
図21は、本実施の形態10にかかる生活支援システム201の動作フローチャートである。まず、覚醒度判定部164が、バイタル情報検知部165の検知したバイタル情報からユーザの覚醒度を判定する(ステップS172)。支援制御装置203は、当該覚醒度が所定の値以下かどうかを判定し、もし、所定の値以下の場合には、音声出力部204に音声を出力するように制御する(ステップS211)。これを受けて、音声出力部204はユーザに音声を出力する(ステップS212)。
【0117】
以上説明したように、本開示の実施の形態10にかかる生活支援システム201によれば、ユーザの覚醒度が十分でない場合は、ユーザに覚醒を促せるため、座面の移動動作時における安全性を高めることができる。
【0118】
(実施の形態11)
次に、本開示の実施の形態11にかかる生活支援システム221について、
図22における生活支援システム221の制御ブロック図、
図22における動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態11の生活支援システム221と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0119】
図22は、本実施の形態11にかかる生活支援システム221の制御ブロック図である。本実施の形態11は、自動昇降型椅子222の動作時間取得部225が第1支援動作を完了させるまでに要する時間(第1動作時間)を算出し、自律移動型ロボット226の移動制御部224が現在位置から支援位置までの移動経路に基づく移動時間を算出する。支援制御装置223が、上述の第1動作時間と移動時間を比較し、もし、第1動作時間より移動時間の方が長い場合には、座面の移動速度をゆっくりするように制御する点が、上述の実施の形態1と異なる。ここで、移動時間の算出は、現在位置から支援位置までの移動経路に基づいて算出するが、単に「移動距離/移動速度」で算出してもよいし、移動経路がカーブしている場合に、曲率の度合いによって自律移動型ロボット226の速度が変化するのであれば、その変化度合いを加味して算出してもよい。また、上述の動作時間は、座面位置から第1の座面位置までに変化すべき座面角度を座面移動の角速度で割った値を用いてもよい。
【0120】
図23は、本実施の形態11にかかる生活支援システム221の動作フローチャートである。まず、自動昇降型椅子222の動作時間取得部が、座面の移動により、座面位置から第1座面位置に到達するまでの時間(第1動作時間)を算出する(ステップS231)。また、自律移動型ロボット226の移動制御部224が、求めた移動経路に基づき、現在位置から支援位置までに移動する時間(移動時間)を算出する(ステップS232)。支援制御装置223は、通信部38を介して送られてきた前記移動時間と前記第1動作時間を比較し(ステップS233)、もし前記第1動作時間が前記移動時間より短い場合には、通常の時間より長い時間をかけて(第2動作時間)、着座位置から第1座面位置に座面を移動させるように制御する(ステップS234)。なお、比較結果が逆であれば、通常の時間で(第1動作時間)、座面を移動させるように制御する(ステップS235)。ここで、第2動作時間を取る場合とは、上述したことから明らかなように、自律移動型ロボット225の到着が遅い場合には、ゆっくりと座面を移動させることを意味している。
【0121】
以上説明したように、本開示の実施の形態11にかかる生活支援システム221によれば、自律移動型ロボット226の到着と自動昇降型椅子222の第1座面位置までの到着が近い時間となるため、ユーザにとって、スムーズに前記第1動作支援から第2動作支援へ移行することが可能になる。
【0122】
(実施の形態12)
次に、本開示の実施の形態12にかかる生活支援システム241について、
図24における生活支援システム241の制御ブロック図、
図25における動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態12の生活支援システム241と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0123】
図24は、本実施の形態12にかかる生活支援システム241の制御ブロック図である。本実施の形態12は、自動昇降型椅子242の動作時間取得部225が取得した「着座位置から第1座面位置まで立ち上げ動作に要する時間」を用いて、自律移動型ロボット243の移動制御部244が、自律移動型ロボットの現在位置から支援位置までの移動速度を調整する点が、上述の実施の形態1と異なる。そのため、移動制御部244は、移動経路設定部94が算出した自律移動型ロボット243の「現在位置から支援位置までの移動時間」と、上述した「自動昇降型椅子242の立ち上げ動作に要する時間」とを比較する。両者の時間が異なる場合には、立ち上がり動作終了時点と、支援位置到達時点が一致するように、自律移動型ロボット243の移動速度を調整する。具体的には、上述した両者の時点が異なる場合には、その時間的差異(Δt:ロボットの移動時間−上述の動作時間)を算出し、数1にしたがって、移動速度を算出する。
(数1): Δv=Δt/t×v
【0124】
ここで、Δvは自律移動型ロボット243の移動速度の変化量であり、tは上述の動作時間、vは自律移動型ロボット243の通常の移動速度(第1移動速度)である。なお、上記の算出結果では、ロボットの移動速度を等速運動運動(速さ一定)と仮定したが、移動経路が曲がっている場合には、直線部分のみ移動速度を加速するように設定してもよい。カーブで加速すると、危険性が高まるためである。
【0125】
図25は、本実施の形態12にかかる生活支援システム241の動作フローチャートである。まず、自動昇降型椅子242の動作時間取得部が着座位置から第1座面位置に移動する時間(動作時間)を取得する(ステップS231)。次に、自律移動型ロボット243の移動制御部244は、現在位置から支援位置に到達するのに要する時間(第1移動時間)を算出する(ステップS232)。次に、支援制御装置245が、当該動作時間を、通信部38を介して、自律移動型ロボット243に送信する。通信部28を介して受けた動作時間を用いて移動制御部244は、動作時間と第1移動時間を比較する(ステップS251)。比較の結果、両者の時間が異なる場合は、移動制御部244は自律移動型ロボット243の移動速度(第1移動速度)を数1に示す形に変更して(第2移動速度)で移動制御を行う(ステップS252)。なお、比較の結果、両者の時間が同じである場合は、第1移動速度での移動制御を行う(ステップS253)。
【0126】
以上説明したように、本開示の実施の形態12にかかる生活支援システム241によれば、自律移動型ロボット243の到着と自動昇降型椅子242の第1座面位置までの到着が近い時間となる。したがって、ユーザにとって、スムーズに前記第1動作支援から第2動作支援へ移行することが可能になる。
【0127】
(実施の形態13)
次に、本開示の実施の形態13にかかる生活支援システム271について、
図26における自律移動型ロボット276の概観図、
図27における生活支援システム271の制御ブロック図、
図28における動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態13の生活支援システム271と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0128】
図26は、自律移動型ロボット276の概観図である。
図26において、273は第1発光部であり、第1発光部273は、自律移動型ロボット276がこれから立ち上がり支援を実行する準備ができていることをユーザに知らせる機能を有する。ここで、第1発光部273は、LEDや電球等以外に光度の強弱を表す信号や発光色の違いを表す信号等、およそユーザが視覚的に認識できる情報(信号)であればよい。
【0129】
図27は、本実施の形態13における生活支援システム271の制御ブロック図である。本実施の形態13では、支援制御装置274が、「自動昇降型椅子275が着座位置から第1座面位置へ移動を開始した」旨の第1コマンドを、通信部38を介して、自律移動型ロボット276に通知する。この第1コマンドに基づいて、自律移動型ロボット276の本体部272が、第1発光部273を光らせるように制御される。このような点が、上述の実施の形態1と異なる。ここで、第1コマンドを通知して第1発光部273を発光させるタイミングは、上述した移動を開始した時点だけでなく、移動中でも構わない。要は、発光タイミングが、ユーザにとって違和感のないタイミングでありさえすれば良い。
【0130】
図28は、本実施の形態13にかかる生活支援システム271の動作フローチャートである。支援制御装置274が、自動昇降型椅子275が着座位置から第1座面位置に移動する段階で、その旨を表す第1コマンドを出力する。通信部28を介して第1コマンドを受けた自律移動型ロボット276の本体部272は、第1発光部273を発光させる(ステップS281)。
【0131】
以上説明したように、本開示の実施の形態13にかかる生活支援システム271によれば、ユーザがこれから立ち上がりの動作が行われることを分かりやすく認知することができる。
【0132】
(実施の形態14)
次に、本開示の実施の形態14にかかる生活支援システム301について、
図29における自律移動型ロボット303の概観図、
図30における生活支援システム301の制御ブロック図、
図31における動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態13にかかる生活支援システム271との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態13の生活支援システム301と実施の形態13の生活支援システム271との相違点を中心に説明する。
【0133】
図29は、自律移動型ロボット303の概観図である。
図29において305はそれぞれ自律移動型ロボット303の正面及び背面(同図の紙面垂直に上方側を正面、下方側を背面とする)を照らす方向に向けて設けられた第1発光部である。ここで、
図29においては正面用、背面用の2つの第1発光部305を有するように記載しているが、一つの筐体の裏と表にそれぞれ第1発光部を配置してももちろん構わない。第1発光部305の発光体は、実施の形態13における自律移動型ロボットの発光部273と同様である。また、306は、自律移動型ロボット303が自動昇降型椅子275に対して正対しているか否かを判定する面判定部である。
【0134】
図30は、本実施の形態14における生活支援システム301の制御ブロック図である。本実施の形態14では、面判定部306が、自律移動型ロボット303が自動昇降型椅子275に正面/背面の何れの面を向けているかを判定する。この面判定部306による判定結果に基づき、自動昇降型椅子275に着座したユーザから視認できる側の第1発光部305を発光させる。このような点が、上述の実施の形態13と異なる。ここで、面判定部306は、自律移動型ロボット303に実装された図示しない赤外線センサや電波等を照射し、その反射情報を解析することで、何れの面が自動昇降型椅子を向いているのか、を判定する。なお、面を判定する技術はこれ以外にも存在するため上述の手法に限られない。例えば、自動昇降型椅子275に特定の目印をつけておき、自律移動型ロボット303に実装された正面と背面を撮像可能な図示しない撮像装置により撮られた画像の中から、当該目印が撮影されているか否かを解析し、撮影された側が、自動昇降型椅子275を向いていると判定してもよい。
【0135】
図31は、本実施の形態14にかかる生活支援システム301の動作フローチャートである。通信部28を介して通信された第1コマンドを受けて、本体部304は、面判定部306の判定結果に基づき、自動昇降型椅子275に向けた側の第1発光部305を発光させる(ステップS311)。
【0136】
これによって、ユーザは、自律移動型ロボット303が歩行支援状態にあることを認知することができる。
【0137】
(実施の形態15)
次に、本開示の実施の形態15にかかる生活支援システム331について、
図32における自律移動型ロボット333の概観図、
図33における生活支援システム331の制御ブロック図、
図34における動作フローチャートを用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態15の生活支援システム331と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0138】
図32は、自律移動型ロボット333の概観図である。
図32において336はハンドル部335に設けられた第2発光部である。第2発光部336の詳細は、上述の第1発光部と同様なため、説明は省略する。この第2発光部336は、生活支援システム331が第2支援動作に移れることをユーザに知らせるものである。つまり、第2発光部336が点灯又は点滅した場合には、ユーザはハンドル部335を把持するタイミングであることを認知でき、安心してハンドル部335を把持する行動をとることができる。
【0139】
図33は、本実施の形態15における生活支援システム331の制御ブロック図である。本実施の形態15では、ハンドル部335に第2発光部を設けている。さらに、自動昇降型椅子332の支援制御装置334が、通信部38を通じて第1支援動作が完了した旨の第2コマンドを自律移動型ロボット333に送る。自律移動型ロボット333のハンドル部335は、この第2コマンドを受けて、第2発光部336を発光させるように制御される。このような点が、上述の実施の形態1と異なる。
【0140】
図34は、本実施の形態15にかかる生活支援システム331の動作フローチャートである。自動昇降型椅子332の支援制御装置334は、椅子332が第1支援動作を完了した段階で、通信部38を介して第2コマンドを出力する。自律移動型ロボット333のハンドル部335は、上述の第2コマンドを受けると、第2発光部336を発光させるように制御する(ステップS341)。なお、上述では第2発光部336の発光制御は、ハンドル部335が行うこととしたが、この限りではない。図示しない移動制御部でも良いし、自律移動型ロボット333の外に設けて通信により制御することも可能である。
【0141】
以上説明したように、本開示の実施の形態15にかかる生活支援システム331によれば、ユーザは、自身が把持すべきハンドル部335の位置と把持タイミングを分かりやすく認知することができる。
【0142】
(実施の形態16)
次に、本開示の実施の形態16にかかる生活支援システム401について、制御ブロック図を
図35に示し、
図35を用いて説明する。上述の実施の形態8にかかる生活支援システム161との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態16の生活支援システム401と、実施の形態8の生活支援システム161との相違点を中心に説明する。
【0143】
図35に示すように、本実施の形態16にかかる生活支援システム401は、自動昇降型椅子402が、バイタル情報検知部165と疲労度判定部403とを有して、それらの情報に基づいて、支援制御装置413が座面移動の速度を制御する点が、実施の形態8とは異なる。特に、ユーザの覚醒度ではなく、ユーザの疲労度に基づいて、座面移動の速度を制御する点が、実施の形態8とは異なる。
【0144】
バイタル情報検知部165は、直近の荷重変化(体動)、脈、心拍あるいは呼吸等を検知する。疲労度判定部403は、検知されたバイタル情報からユーザの疲労度を判定する。例えば、バイタル情報として脈拍または心拍が用いられるような場合には、HF成分とLF成分とのバランス(比率)から、疲労度判定部403が疲労度を判定してもよい。例えば、LF成分/HF成分>2.5である場合には、疲労度が高いと判定してもよい。
【0145】
疲労度判定部403において、ユーザの疲労度が高いと判定した場合には、支援制御装置413は、判定されたユーザの疲労度に基づいて座面31の移動速度を決定するように制御する。具体的には、疲労度が高い程、座面31の移動速度を遅くする。
【0146】
以上述べたように、本開示の実施の形態16にかかる生活支援システム401によれば、立ち上がり支援を行う際に、自動昇降型椅子402がユーザの疲労度に応じた速度で座面を移動させる。したがって、例えば、ユーザの疲労度が高い場合に急速な速度で不意を打たれるようなことがなく、より安全に立ち上がり動作を実行することができる。
【0147】
(実施の形態17)
次に、本開示の実施の形態17にかかる生活支援システム451について、制御ブロック図を
図36に示し、
図36を用いて説明する。上述の実施の形態1にかかる生活支援システム1との共通する構成については、同じ参照番号を付して、その説明を省略する。以下、実施の形態17の生活支援システム451と実施の形態1の生活支援システム1との相違点を中心に説明する。
【0148】
図36に示すように、実施の形態17の生活支援システム451は、自動昇降型椅子3と、ユーザの手または腕によってかかる荷重を検知する荷重検知装置452と、ユーザによる立ち上がり支援指示を受け付ける指示入力部453とを備える。
【0149】
荷重検知装置452は、ユーザの手または腕による荷重を受け止めて、ユーザの体を支えるような支持構造体と、支持構造体に設けられ、支持構造体にかけられた荷重を検知する荷重検知手段とを備える。このような支持構造体は、例えば、杖であってもよく、また自動昇降型椅子3に設けられた肘掛けであってもよい。すなわち、支持構造体は、椅子3に設けられた構造体であってもよく、また、椅子3とは別体の独立した構造体であってもよい。荷重検知手段は、例えば、力センサであってもよい。
【0150】
指示入力部453は、例えば、荷重検知装置452の支持構造体(例えば、杖や肘掛けなど)に設けられている。なお、指示入力部453は、荷重検知装置452に設けられている場合に限られず、荷重検知装置452とは、別体であるような場合であってもよい。
【0151】
さらに、荷重検知装置452には、ネットワークを通じて自動昇降型椅子3に荷重などの情報を送信する通信部428が設けられている。
【0152】
実施の形態17の生活支援システム451において、指示入力部453にユーザからの支援指示が入力されると、指示入力部24は通信部428へその旨を通知し、通信部428はネットワークを通じて椅子3の通信部38へ支援指示を受け付けたことを示す受付情報を通知する。椅子3における支援制御装置34は、通信部38より受付情報を受けると、座面31を着座位置から第1座面位置に移動するように制御する(第1支援動作)。
【0153】
次に、荷重検知装置452が、ユーザの手または腕によってかかる荷重を検知した場合、その旨を荷重検知情報として通信部428および通信部38を介して椅子3の支援制御装置34に通知する。この通知を受けた支援制御装置34は座面31を第1座面位置から第2座面位置へ移動するように制御する(第2支援動作)。
【0154】
本実施の形態17の生活支援システム451によれば、自律移動型ロボットではなく、杖や肘掛けのような支持構造体において、ユーザの荷重を検知することで、ユーザの立ち上がり動作の支援を行うことができる。
【0155】
なお、上記様々な実施の形態のうちの任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0156】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。