特許第6674329号(P6674329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674329
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】スクリュー式エレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/02 20060101AFI20200323BHJP
   B66B 7/04 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   B66B9/02 B
   B66B7/04 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-112399(P2016-112399)
(22)【出願日】2016年6月6日
(65)【公開番号】特開2017-218254(P2017-218254A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228246
【氏名又は名称】日本オーチス・エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】市原 充博
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】加島 二郎
(72)【発明者】
【氏名】谷川 譲治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和義
(72)【発明者】
【氏名】森重 友仁
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−340389(JP,A)
【文献】 特開昭64−075386(JP,A)
【文献】 特開昭64−075385(JP,A)
【文献】 特開2009−208914(JP,A)
【文献】 実開昭60−047700(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 9/02
B66B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面によって囲まれた昇降路と、
この昇降路の断面の一方に片寄った位置に配置され、かつ昇降路と平行に延びたスクリューシャフトと、
このスクリューシャフトを回転駆動する駆動装置と、
上記スクリューシャフトが螺合するナット部材を有し、かつ上記スクリューシャフトが貫通した可動床と、
上記可動床の上記スクリューシャフトとは反対側となる一対のコーナ部にそれぞれ設けられ、各々のコーナ部が隣接する2つの壁面にそれぞれ圧接する90°異なる向きの2つのローラを有する一対のローラガイド装置と、
上記ナット部材から軸方向上側に離れて位置し、上記スクリューシャフトが螺合する上側補助ナット部材と、
上記ナット部材から軸方向下側に離れて位置し、上記スクリューシャフトが螺合する下側補助ナット部材と、
上記上側補助ナット部材を上記可動床の上面に連結する一対の棒状の補強材と、
上記下側補助ナット部材を上記可動床の下面に連結し、平面視において略V字形をなすように拡がって配置された一対の棒状の補強材と、
を備えてなるスクリュー式エレベータ。
【請求項2】
上記ローラは、ブレーキ機構を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載のスクリュー式エレベータ。
【請求項3】
上記昇降路の乗降口に対向する奥側の壁面に近接して上記スクリューシャフトが配置されており、
上記乗降口寄りの上記可動床の一対のコーナ部に上記ローラガイド装置が配置されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のスクリュー式エレベータ。
【請求項4】
上記上側補助ナット部材を上記可動床に連結する上記一対の棒状の補強材は、平面視において、上記昇降路の上記スクリューシャフト側の壁面と平行をなすように直線的に延びている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスクリュー式エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、昇降路内に設けたスクリューシャフトの回転によって可動床を昇降させるようにしたスクリュー式エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的低層の建築物に適したエレベータとして、特許文献1に記載されているようなスクリュー式エレベータが知られている。このスクリュー式エレベータは、昇降路内に該昇降路と平行に延びたスクリューシャフトを設けるとともに、かご側に、スクリューシャフトと螺合するナット部材を設け、スクリューシャフトを電動モータ等により回転駆動することによって、かごを上下に昇降させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−184286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスクリュー式エレベータは、一般的なロープ式のエレベータと同様に、乗客を収容するかご(かご室)を備えており、特許文献1では図示されていないが、昇降路内に配置した一対のガイドレールによってかごが上下移動可能に案内されている。従って、低層建築物に適した簡易なエレベータとしては、構成部品が多くなり、なお改善の余地があった。また、スペース的にも、ガイドレールのために昇降路が大きく必要となり、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るスクリュー式エレベータは、
壁面によって囲まれた昇降路と、
この昇降路の断面の一方に片寄った位置に配置され、かつ昇降路と平行に延びたスクリューシャフトと、
このスクリューシャフトを回転駆動する駆動装置と、
上記スクリューシャフトが螺合するナット部材を有し、かつ上記スクリューシャフトが貫通した可動床と、
上記可動床の上記スクリューシャフトとは反対側となる一対のコーナ部にそれぞれ設けられ、各々のコーナ部が隣接する2つの壁面にそれぞれ圧接する90°異なる向きの2つのローラを有する一対のローラガイド装置と、
を備えて構成されている。
【0006】
すなわち、この発明のスクリュー式エレベータは、かご室やガイドレールを備えておらず、スクリューシャフトの回転に伴って昇降する可動床が、昇降路の壁面によって案内される。乗客は、可動床の上に乗って階間を移動することとなる。
【0007】
スクリューシャフトの回転による昇降時に、可動床はスクリューシャフトの回転に伴う回転トルクを受け、昇降路内でスクリューシャフトを中心として回転しようとする。この回転方向の動きは、スクリューシャフトから離れて位置するローラガイド装置によって効果的に規制される。
【0008】
本発明の好ましい一つの態様では、上記ローラが、ブレーキ機構を備えている。これにより、可動床に対し制動作用を与えることができる。
【0009】
本発明の具体的な一つの態様では、上記昇降路の乗降口に対向する奥側の壁面に近接して上記スクリューシャフトが配置されており、上記乗降口寄りの上記可動床の一対のコーナ部に上記ローラガイド装置が配置されている。
【0010】
さらに本発明のスクリュー式エレベータは、
上記ナット部材から軸方向上側に離れて位置し、上記スクリューシャフトが螺合する上側補助ナット部材と、
上記ナット部材から軸方向下側に離れて位置し、上記スクリューシャフトが螺合する下側補助ナット部材と、
上記上側補助ナット部材を上記可動床の上面に連結する一対の棒状の補強材と、
上記下側補助ナット部材を上記可動床の下面に連結し、平面視において略V字形をなすように拡がって配置された一対の棒状の補強材と、
を備えている。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、比較的簡易なエレベータとして、構成部品をより少なくすることができるとともに、昇降路の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明に係るスクリュー式エレベータの一実施例を示す構成説明図。
図2】昇降路を断面として可動床を下側から見た説明図。
図3】可動床を上側から見た斜視図。
図4】可動床を下側から見た斜視図。
図5】1つのローラの構成を示した構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、この発明に係るスクリュー式エレベータの一実施例を示している。この実施例は、例えば2階建てのビルのエレベータとして適用したもので、ビル内の昇降路1は、断面矩形状に構成されており、乗降口1aを除いて、壁面2によって周囲が囲まれた構成となっている。詳しくは、乗降口1aに対向する奥側の壁面2aと、乗降口1aから見て左右の壁面2b,2cと、乗降口1a側の壁面2dと、を有している。
【0015】
昇降路1内には、可動床3を昇降させるためのスクリューシャフト4が配置されている。このスクリューシャフト4は、乗客用のスペースをできるだけ狭めないように、昇降路1の奥方に、つまり壁面2aに近接した位置で、かつ左右方向のほぼ中央に配置されており、昇降路1と平行に(換言すれば垂直に)延びている。このスクリューシャフト4の下端は、昇降路1下部のピット5内に配置された電動モータからなる駆動装置6に接続されている。一実施例では、駆動装置6として、低速・高トルク型の電動モータのロータにスクリューシャフト4が同軸状に連結されているが、適宜な減速ギヤ機構を介して電動モータがスクリューシャフト4を回転駆動する構成であってもよい。また、スクリューシャフト4の上端部は、図示せぬブラケットを介して昇降路1内の所定位置に回転可能な態様で支持することが望ましい。
【0016】
上記スクリューシャフト4は、可動床3を貫通して延びており、可動床3には、スクリューシャフト4が螺合するナット部材8が取り付けられている。可動床3は、図2図4にも示すように、昇降路1の断面形状にほぼ対応した形状、この実施例では矩形状をなしており、乗客が立って乗るように、適宜な厚みを有する単純な平板状をなしている。つまり、このエレベータは、かごないしかご室を具備しておらず、可動床3に乗客が立って乗る簡易な構造となっている。なお、可動床3の周囲(例えば乗降口1a側を除く三方)に簡単な手すりを設けるようにしてもよい。
【0017】
可動床3の周囲と昇降路1の壁面2との間には、可動床3が昇降路1内で移動するのに必要な最小限の隙間が設けられている。ナット部材8は、可動床3の下面に固定されている。なお、スクリューシャフト4およびナット部材8は、一般的なネジ山を有する構成であってもよいが、望ましくは、転動体となる金属ボールを介して両者が噛み合ったいわゆるボールねじ機構として構成されている。従って、駆動装置6によってスクリューシャフト4が回転駆動されると、可動床3が昇降路1内で上下方向に昇降する。
【0018】
上記スクリューシャフト4には、さらに、上記ナット部材8の下方において下側補助ナット部材9が螺合し、同様に、上記ナット部材8の上方において上側補助ナット部材10が螺合している。下側補助ナット部材9は、ナット部材8から軸方向下側に離れて位置しており、上下方向に斜めに延びた一対の棒状の補強材11によって、可動床3の下面に連結されている。一対の棒状の補強材11は、平面視においては、下側補助ナット部材9が頂点となって乗降口1a側へ向かって拡がった略V字形をなすように配置されている(図2図4参照)。上側補助ナット部材10は、ナット部材8から軸方向上側に離れて位置しており、上下方向に斜めに延びた一対の棒状の補強材12によって、可動床3の上面に連結されている。一対の棒状の補強材12は、平面視においては、奥側の壁面2aと略平行をなすように上側補助ナット部材10から直線的に延びている(図3参照)。上記下側補助ナット部材9および上側補助ナット部材10は、やはりボールねじ機構としてスクリューシャフト4に螺合しており、スクリューシャフト4の回転に伴ってナット部材8ととともに移動する。従って、乗客の重量を含む可動床3の荷重が、補強材11,12を介して、下側補助ナット部材9から上側補助ナット部材10に至るまでの上下に広いスパンで支持される。
【0019】
また、可動床3の乗降口1a寄りの一対のコーナ部には、それぞれローラガイド装置15が設けられている。図2に示すように、ローラガイド装置15のベースプレート17が、可動床3の下面に取り付けられている。各々のローラガイド装置15は、可動床3に対するガイド面となる昇降路1の壁面2に接する2つのローラ16を備えている。詳しくは、ローラガイド装置15は、昇降路1の左右の壁面2b,2cに接する側方ローラ16Aと、昇降路1の乗降口1a側の壁面2dに接する前側ローラ16Bと、を備え、これら2つのローラ16A,16Bが互いに90°異なる向きに組み合わされている。なお、図2から明らかなように、2つのローラガイド装置15は、ローラ16A,16Bの配置等が互いに対称な構成となっている。
【0020】
これらのローラガイド装置15は、一般的なエレベータにおいてガイドレールに対し設けられる公知のローラガイド装置と同様の構成を有しており、スプリングによる適宜な荷重でもって各々のローラ16が対応する壁面に圧接している。図5は、1つのローラ16の構成を模式的に示した説明図であり、ローラ16を回転自在に支持する回転軸21が、図示せぬブラケットを介して揺動可能に支持されているとともに、圧縮コイルスプリング等からなるスプリング22によってローラ16が壁面2へ向けて付勢されている。またスプリング22による振動を制振するために、フリクションダンパや液圧ダンパ等の適宜なダンバ23がローラ16と可動床3との間に介装されている。
【0021】
また本実施例では、ローラガイド装置15の各ローラ16が、該ローラ16の回転を制限するブレーキ機構25を備えている。このブレーキ機構25は、図5に模式的に示すように、先端にシュー(図示せず)を備えた一対のブレーキアーム26が軸27を介して交差しており、これら一対のブレーキアーム26の基端部に、両者を互いに引き寄せるソレノイド28と、両者を互いに離間させるように付勢するスプリング29と、が設けられている。通常時は、ソレノイド28は励磁されておらず、スプリング29のばね力によってブレーキアーム26先端のシューがローラ16の側面(例えばリムの側面)から離れている。従って、ローラ16が自由に回転する。そして、過速時など何らかの制動が必要なときには、ソレノイド28が励磁される。これにより、スプリング29のばね力に抗してブレーキアーム26の基端部が互いに引き寄せられるため、ブレーキアーム26先端の一対のシューがローラ16を挟むように両側から圧接し、ローラ16の回転を制限する制動作用が得られる。
【0022】
例えば、何らかの異常により可動床3が過速状態となったようなときに、ブレーキ機構25によりローラ16の回転を制限することで、壁面2との間での摩擦が増大し、可動床3が制動される。なお、制動時にブレーキ機構25と連動してローラ16を壁面2に対してより強く押し付けるアクチュエータを具備するようにしてもよい。
【0023】
昇降路1の乗降口1aは、図1に示すように、上部のドアオペレータ装置30によって開閉動作する乗り場ドア31を備えている。ドアオペレータ装置30は、電動モータおよびワイヤ(いずれも図示せず)を用いた一般的な構成である。乗降口1aの下縁のシル部32に、可動床3が所定の高さ位置(乗り場のフロアとほぼ整列する位置)に到達したことを検出する位置検出センサ33が設けられており、この位置検出センサ33の信号に基づいて乗り場ドア31が開閉制御される。
【0024】
上記のように構成されたスクリュー式エレベータにおいては、かご(かご室)やガイドレールを具備しておらず、乗客が立って乗る可動床3が、スクリューシャフト4に支持されるとともに該スクリューシャフト4の回転に伴って上下に昇降する。そして、可動床3のコーナ部に配置された一対のローラガイド装置15のローラ16が昇降路1の周囲の壁面2に圧接するため、可動床3の昇降の際に、昇降路1の周囲の壁面2が実質的なガイド面として機能し、可動床3の左右の振動を抑制する。
【0025】
例えば、図2においてスクリューシャフト4が時計回り方向に回転すると、可動床3全体もスクリューシャフト4を中心として時計回り方向に回転しようとする。このとき、壁面2c側の一方のローラガイド装置15の側面ローラ16Aが壁面2cに近付き、壁面2b側の他方のローラガイド装置15の側面ローラ16Aが壁面2bから離れる。同様に、壁面2c側の一方のローラガイド装置15の前側ローラ16Bが壁面2dから離れ、壁面2b側の他方のローラガイド装置15の前側ローラ16Bが壁面2dに近付く。そのため、各々のスプリング22の荷重によって、回転トルクに抗して可動床3を中立位置に戻そうとする作用が生じる。図2においてスクリューシャフト4が反時計回り方向に回転した場合においても同様であり、スクリューシャフト4を中心とした反時計回り方向の回転トルクに抗して可動床3を中立位置に戻そうとする作用が生じる。
【0026】
従って、スクリューシャフト4の回転駆動による昇降時に、可動床3は左右に大きく揺れることなく円滑に昇降する。ここで、ローラガイド装置15は、回転トルクの中心となるスクリューシャフト4から最も離れたコーナ部に配置されているので、スクリューシャフト4を中心とした可動床3の左右への振動を効果的に抑制できる。例えば昇降路1の壁面2のパネルの繋ぎ目による段差などを緩やかに乗り越えることができ、段差による左右への揺れが抑制される。
【0027】
このように上記スクリュー式エレベータによれば、かご室やガイドレールを具備せずに、可動床3が昇降路1の壁面2によって案内される構成であるので、部品点数が少なく、比較的低層の建築物に低コストで設置することができるとともに、必要な昇降路1の断面積が小さくなり、小型のエレベータを提供することができる。
【0028】
なお、詳細には図示しないが、ローラガイド装置15の各ローラ16に、ローラ16の位置を能動的に可変制御できるいわゆるアクティブサスペンション型のサスペンション機構を設け、かつ可動床3側に加速度センサを設けて、可動床3の振動と相殺する力を各ローラ16のサスペンション機構で発生させるように制御する構成とすることもできる。このようなアクティブサスペンション型の構成によれば、構成は複雑となるものの、可動床3の振動をより効果的に抑制することが可能である。
【0029】
また、上記実施例では、昇降路1の一つの壁面2dに各階の乗降口1aが設けられているが、可動床3に対し乗客がL字形に出入りするように、1階における乗降口1aと2階における乗降口1aとを異なる向きに配置したエレベータとしても本発明は構成することができる。例えば、1階の乗降口1aを壁面2dに設け、2階の乗降口1aを左右の壁面2b,2cのいずれかに設けることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…昇降路
2…壁面
3…可動床
4…スクリューシャフト
6…駆動装置
8…ナット部材
9…下側補助ナット部材
10…上側補助ナット部材
11,12…補強材
15…ローラガイド装置
16…ローラ
22…スプリング
23…ダンパ
25…ブレーキ機構
図1
図2
図3
図4
図5