特許第6674340号(P6674340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674340
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】センサ付き流体制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20200323BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   F16K37/00 F
   G01H17/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-129207(P2016-129207)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-3912(P2018-3912A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 聖士
(72)【発明者】
【氏名】永井 清
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/038527(WO,A1)
【文献】 特開2002−181229(JP,A)
【文献】 特開2005−273835(JP,A)
【文献】 特開平06−323945(JP,A)
【文献】 特開昭60−179586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
G01H 1/00 − 17/00
G01M 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部材を移動させるアクチュエータ部と、前記可動部材に設けられた弁体が当接離間する弁座が形成された弁部とを備える流体制御弁本体と振動を検出する振動センサとを備えるセンサ付き流体制御弁において、
前記振動の振幅は、前記流体制御弁本体に流体が流れている場合に前記弁体が前記弁座に当接するとき、前記弁体と前記弁座の間に漏れがない場合に発生するウォータハンマ現象により生じ、
所定の閾値以上の前記振幅を検出したときに前記流体制御弁本体は前記弁体と前記弁座との間に漏れがなく正常であると判断され、前記所定の閾値以上の前記振動を検出しないときに前記流体制御弁本体は前記弁体と前記弁座との間に漏れがあって異常であると判断されること、
前記所定の閾値とは、前記弁体と前記弁座との間に太さ100μmの糸状の異物が挟まったときに生じる振幅を検出可能な閾値であること、
を特徴とするセンサ付き流体制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ付き流体制御弁において、
前記振動センサは、衝撃検知に特化したものであること、
を特徴とするセンサ付き流体制御弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセンサ付き流体制御弁において、
前記振動センサは、前記振動を検知できる位置に設置すること、
を特徴とするセンサ付き流体制御弁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のセンサ付き流体制御弁において、
所定の時間に前記振動を検知しないとき、前記流体制御弁本体は異常であると判断されること、
を特徴とするセンサ付き流体制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部材を移動させるアクチュエータ部と、可動部材に設けられた弁体が当接離間する弁座が形成された弁部とを備える流体制御弁本体と振動を検出する振動センサとを備えるセンサ付き流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医用分析装置で使用される薬液用流体制御弁において、試薬、希釈液、洗浄液等の様々な流体を制御している。流体制御弁において、流体を流したり止めたりすることが確実に行われているかどうかの確認を行うため、特許文献1に示す流体制御弁が用いられていた。特許文献1の流体制御弁では、振動センサを設置することにより、制御弁の動作により発する音を感知し、比較することにより動作不良を検知し、流体の流れを確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5399687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の流体制御弁では、制御弁の動作不良を検知するのみで、弁閉止部の漏れの有無を検知することはできず、医用分析装置で使用される場合、流体の析出、固着により、制御弁の弁閉止部に詰まりが発生して弁閉止部に漏れが発生する恐れがあった。特に、血液検査装置においては、検体のタンパク質がシール面に堆積すると、弁閉止部に漏れが生じ、誤検出を引き起こす恐れがあった。
また、制御弁の駆動源であるソレノイド、エアシリンダ、モータ等の耐久動作により動きが悪くなり、弁開閉力が弱くなる場合がある。さらに、制御弁の流路を開閉する弁部の摩耗、突発的な異物等により、弁閉止できなくなる場合がある。これにより弁閉止部に漏れが発生する恐れがあった。
弁閉止部に漏れを検出するため、制御弁の前後に流量計、圧力計、温度計等を設置して制御を監視しているものもあるが、各センサを設置するスペースが必要となり、装置が大型化する問題があった。また、このような装置では、毛髪の太さ(100μm)程度の大きさの異物による微小な漏れを検出することは困難であった。さらに、これらのセンサは、流路の内部に設置する必要があるが、種々の流体を扱う装置では、接液材質に制限があり、極力接液部材を減らすことが好ましい。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、流体制御弁の弁閉止部における微小な漏れの検出を行うことができるセンサ付き流体制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のセンサ付き電磁弁は、次のような構成を有している。
(1)可動部材を移動させるアクチュエータ部と、可動部材に設けられた弁体が当接離間する弁座が形成された弁部とを備える流体制御弁本体と振動を検出する振動センサとを備えるセンサ付き流体制御弁において、振動は、弁体が弁座に当接するとき、弁体と弁座の間に漏れがない場合に発生するウォータハンマ現象により生じ、所定の閾値以上の振動を検出したときに流体制御弁本体は正常であると判断され、所定の閾値以上の振動を検出しないときに流体制御弁本体は異常であると判断されること、を特徴とする。
【0007】
(2)(1)に記載のセンサ付き流体制御弁において、振動センサは、衝撃検知に特化したものであること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載のセンサ付き流体制御弁において、振動センサは、振動を検知できる位置に設置すること、を特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のセンサ付き流体制御弁において、漏れが糸状の異物によるものであっても、流体制御弁本体は異常であると判断されること、を特徴とする。
【0008】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のセンサ付き流体制御弁において、所定の時間に振動を検知しないとき、流体制御弁本体は異常であると判断されること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記特徴を有する本発明のセンサ付き電磁弁は、以下のような作用効果を奏する。
(1)可動部材を移動させるアクチュエータ部と、可動部材に設けられた弁体が当接離間する弁座が形成された弁部とを備える流体制御弁本体と振動を検出する振動センサとを備えるセンサ付き流体制御弁において、振動は、弁体が弁座に当接するとき、弁体と弁座の間に漏れがない場合に発生するウォータハンマ現象により生じ、所定の閾値以上の振動を検出したときに流体制御弁本体は正常であると判断され、所定の閾値以上の振動を検出しないときに流体制御弁本体は異常であると判断されること、を特徴とするので、ウォータハンマ現象を利用し、閾値以上の振動を検出しないことにより、流体制御弁の弁閉止部における微小な漏れの検出をすることができる。
【0010】
(2)(1)に記載のセンサ付き流体制御弁において、振動センサは、衝撃検知に特化したものであること、を特徴とするので、わずかな衝撃も検知することができるため、ウォータハンマ現象によるわずかな衝撃による振動を検出することができ、流体制御弁の弁閉止部における微小な漏れを確実に検出することができる。
(3)(1)または(2)に記載のセンサ付き流体制御弁において、振動センサは、振動を検知できる位置に設置すること、を特徴とするので、振動は流体制御弁全体に伝播するため、流体制御弁のどこにでも取り付けることができる。
【0011】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のセンサ付き流体制御弁において、漏れが糸状の異物によるものであっても、流体制御弁本体は異常であると判断されること、を特徴とするので、太さ100μm程度の大きさの糸状の異物が原因による微小な漏れも確実に検出することができる。
【0012】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のセンサ付き流体制御弁において、所定の時間に振動を検知しないとき、流体制御弁本体は異常であると判断されること、を特徴とするので、可動部材の摺動部における摺動抵抗の増加により、全開までの時間が長くなるため、時系列にみることにより流体制御弁本体の交換時期を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】弁閉状態のセンサ付き流体制御弁の断面図である。
図2】弁開状態のセンサ付き流体制御弁の断面図である。
図3】異物がある場合のセンサ付き流体制御弁の断面図である。
図4】圧力0.0MPaで、流体制御弁が正常(異物なし)の条件の下、振動と電圧、及び時間の関係を示したグラフである。
図5】圧力0.0MPaで、流体制御弁が異常(異物あり)の条件の下、振動と電圧、及び時間の関係を示したグラフである。
図6】圧力0.3MPaで、流体制御弁が正常(異物なし)の条件の下、振動と電圧、及び時間の関係を示した図である。
図7】圧力0.3MPaで、流体制御弁が異常(異物あり)の条件の下、振動と電圧、及び時間の関係を示した図である。
図8】電圧が70%の条件の下、振動と電圧、及び時間の関係を示した図である。
図9】電圧が80%の条件の下、振動と電圧、及び時間の関係を示した図である。
図10】電圧が90%の条件の下、振動と電圧、及び時間の関係を示した図である。
図11】摺動抵抗がないときの振動と電圧、及び時間の関係を示した図である。
図12】摺動抵抗が増加したときの振動と電圧、及び時間の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のセンサ付き流体制御弁1について、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
(センサ付き流体制御弁の構成)
センサ付き流体制御弁1の構造について図1から図3を用いて説明する。図1は、弁閉状態のセンサ付き流体制御弁1の断面を示す。図2は、弁開状態のセンサ付き流体制御弁1の断面を示す。図3は、異物Aがある場合の弁閉状態のセンサ付き流体制御弁1の断面を示す。
センサ付き流体制御弁1は、図1に示すように、流体制御弁本体2と、振動を検出する振動センサ3から構成される。流体制御弁本体2は、アクチュエータ部4と弁部5を備える。アクチュエータ部4には、固定鉄心8と可動鉄心9が中空状のコイルボビン10に同軸上に設けられている。励磁コイル7がコイルボビン10の周りに巻回されている。固定鉄心8の一端面8aは磁極面となっており、この磁極面が可動鉄心9の他端面と対向するように同軸上に配設されている。固定鉄心8の外径は、コイルボビン10の内径とほぼ同じ径になっている。励磁コイル7の周囲は、ヨーク11が配設され、ヨーク11はモールド12に覆われている。モールド12の下端には弁部5と連結する連結部材13が設置されている。
可動鉄心9の下端は外周に鍔部9aが形成されている。鍔部9aには、後述するダイアフラム弁体16を弁座14a方向に付勢するバネ15の一端が当接されている。バネ15の他端は、ヨーク11と連結部材13の間に配置しているバネ受け部材17に当接されている。
【0015】
弁部5は、入力流路14bと出力流路14cを備える流路ブロック体14を有する。流路ブロック体14の中央には、ダイアフラム弁体16と当接または離間する弁座14aが形成されている。
図1では、励磁コイル7に通電されていないので、可動鉄心9は、固定鉄心8と離間し、ダイアフラム弁体16は、バネ15の付勢力により弁座14aに当接し、入力流路14bと出力流路14cは遮断されている。
一方、励磁コイル7に通電すると、可動鉄心9が固定鉄心8に吸引されるため、図2に示すように、ダイアフラム弁体16は弁座14aから離間し、入力流路14bと出力流路14cは連通される。
【0016】
次に、振動センサ3について説明する。振動センサ3は、チップ形状(数mm角)の大きさで、基板(図示なし)にハンダ付けされている。振動センサ3を取り付けた基板は、振動を検知できる位置に設置される。本実施形態では、ヨーク11の側面に直接設置され、一部モールド12で覆われている。
振動センサ3には、検出方向があり、センサが捉えることができる振動の方向は1つの方向である。そのため、振動センサ3を振動方向と同じように設置することが最良である。本実施形態では、可動鉄心9の動作による振動は、ヨーク11側面においても伝播するため、振動センサ3の検出方向を合わせることで振動検出を可能とする。なお、検出方向が斜めであっても検知は可能である。
【0017】
(センサ付き流体制御弁の作用効果)
次に、センサ付き流体制御弁1の閉弁時の作用効果について図4から図7を用いて説明をする。図4では、圧力0.0MPaで、流体制御弁が正常(異物なし)であるとの条件の下、図5では、圧力0.0MPaで、流体制御弁が異常(異物あり)であるとの条件の下、振動Sと電圧P、及び時間との関係を示す。図6では、圧力0.3MPaで、流体制御弁が正常(異物なし)であるとの条件の下、図7では、圧力0.3MPaで、流体制御弁が異常(異物あり)であるとの条件の下、振動Sと電圧P、及び時間の関係を示す。図4から図7のグラフのうち、縦軸は、電圧Pを示す電磁弁電圧[V]、または振動Sを示す振動センサ出力[V]を示し、横軸は時間[ms]を示す。なお、図5図7における流体制御弁が異常(異物あり)であるときの流体制御弁とは、図3に示すように、弁閉止部に異物Aが混入した状態を想定している。
【0018】
励磁コイル7への通電を止め、制御弁の電圧PがP1からP2に低下すると、バネ15の付勢力により可動鉄心9は下降してダイアフラム弁体16が弁座14aに当接する。このとき、ウォータハンマ現象が生じる。
ここで、ウォータハンマ現象について説明する。流体制御弁本体2において、入力流路14bから出力流路14cに向けて流れている流体は、ダイアフラム弁体16を急激に閉弁させると、閉弁直後においても、流体の慣性力により、なおもダイアフラム弁体16より出力流路14cに流れようとする。すると、出力流路14cにおける流体は負圧となり、正圧時になるときに流体が流路壁に衝突することにより生じる衝撃音を発するウォータハンマ現象が生じる。このウォータハンマ現象により、振動Sが生じる。振動Sは、振動センサ3により検出される。
【0019】
圧力0.3MPaの条件の下では、ダイアフラム弁体16と弁座14aの間に異物がなく、漏れがない場合、ウォータハンマ現象により振動S3が生じ、図6に示すように、時間T1経過後、振動S3は閾値Xを超える。閾値Xは、製品、また使用条件により設定される。これにより、流体制御弁本体2は正常であると判断される。
ダイアフラム弁体16と弁座14aの間に異物があり、漏れがある場合には、図7に示すように、ウォータハンマ現象により振動S4が生じるが、時間T1を経過しても振動S4は閾値Xを超えない。振動センサ3は、閾値X以上の振動S4を検出しないため、流体制御弁本体2は異常であると判断される。
ここで、異物があり、漏れがある場合に振動S4が閾値Xを超えないのは、ダイアフラム弁体16と弁座14aとの間に異物があり、わずかな隙間があれば、流路が存在するためである。閉弁直後、その流路により流体が出力流路14cに流れ込むことにより、発生する負圧が小さいため、ウォータハンマ現象による振動S4の振幅は小さくなる。この現象を利用することにより、たとえ、異物が太さ100μm程度の太さの糸状のものであっても、微小な漏れを検出することができる。
【0020】
一方、圧力0.0MPaに近い条件の下では、ダイアフラム弁体16と弁座14aの間に異物がなく、漏れがない場合、図4に示すように、時間T0経過後、バネ15の付勢力でダイアフラム弁体16を弁座14aに当てるために振動S1が生じる。振動S1の振幅は所定の閾値Xを超える。
ただし、圧力0.0MPaに近い条件の下では、異物があり、漏れがある場合であっても、図5に示すように、異物がない場合と同様に時間T0経過後、バネ15の付勢力でダイアフラム弁体16を弁座14aに当てるために振動S2が生じ、振動S2は閾値Xを超える。圧力0.0MPaに近い条件の下では、振動Sによって流体制御弁本体2の異常を検出することはできない。その理由は、圧力0.0MPaに近い条件の下では、流体の流速が小さく、流れがほとんどない。流速が小さいと、閉弁直後の出力流路14cにおける流体の負圧から正圧になるときの差は小さい。そのため、異物があって隙間があっても、その隙間を流れる流体はなく、バネ15の付勢力でダイアフラム弁体16を弁座14aに当てるための閾値Xを超える振動S1、S2が生じる。
なお、圧力0.0MPa(流れがないとき)の条件の下では、ウォータハンマ現象は生じない。圧力0.0MPaのとき、バネ15の付勢力でダイアフラム弁体16を弁座14aに当てるために振動が生じるが、圧力0.3MPa(流れがあるとき)の条件の下では、流れによってダイアフラム弁体16を押し上げる方向の力(付勢力に抗する力)が作用するので、着座時の衝撃が緩和される。そのため、ウォータハンマ現象は、流れが速いほど大きくなる。しかし、弁座14aに異物が挟まったりシール面に異常があったりすると異物の周囲にできた隙間から流体が流れ出るので、ウォータハンマ現象は小さくなる。
【0021】
本実施形態では、突発的な糸状の異物による漏れを検知しているが、流体の析出物や、弁体及び弁座のシール部の劣化、または可動鉄心の劣化による漏れも検知することができる。
また、作動途中の振動発生(可動鉄心の引っ掛かり、シリンダのスティックリップ状態)では、弁閉しないため、振動が大きく低下する。この場合も流体制御弁本体2の異常を検知することができる。さらに、流路(接液部)にセンサを設置する必要がないため、使用流体への影響がない。また、流体制御弁本体2に振動センサ3を設置するため、漏れを検出するために、制御弁の前後に流量計、圧力計、温度計等を設置する必要がなく、装置を小型化することができる。
【0022】
次に、センサ付き流体制御弁1の開弁時の作用効果について、図8から図12を用いて説明する。図8では、電圧が70%の条件の下、図9では、電圧が80%の条件の下、図10では、電圧が90%の条件の下、振動Sと電圧P、及び時間Tとの関係を示す。図11図12では、摺動抵抗の増加による応答時間の遅れを説明するための図であり、図11は摺動抵抗がないとき、図12は摺動抵抗が増加したときの振動Sと電圧P、及び時間Tとの関係を示す。縦軸は、電圧Pを示す電磁弁電圧[V]、または振動Sを示す振動センサ出力[V]を示し、横軸は、時間[ms]を示す。なお、開弁時の振動Sは、閉弁直後に起こるウォータハンマ現象による振動ではなく、可動鉄心9と固定鉄心8の衝突により生じる振動である。
【0023】
励磁コイル7に通電すると(図8のP3−P4、図9のP5−P6、図10のP7−P8)、可動鉄心9は上昇して固定鉄心8に吸着する。これによりダイアフラム弁体16が弁座14aから離間する。
電圧Pが70%の条件(電圧P4)の下では、時間T2経過後、可動鉄心9は上昇して固定鉄心8に当接する際に、閾値Xを超える振動S5が生じる。次に、電圧Pが80%(電圧P6)では、時間T2より短い時間T3経過後、閾値Xを超える振動S6が生じる。さらに、電圧Pが90%(電圧P8)では、時間T3より短い時間T4経過後、閾値Xを超える振動S7が生じる。
これらの電圧Pの高さと時間Tとを比較すると、電圧P(P4<P6<P8)が高いほど、応答する時間T(T2>T3>T4)が短く、電圧Pが低いほど応答する時間Tが長い。
ここで、可動鉄心9の摩耗検知について図11図12を用いて説明する。流体制御弁本体2では、経時的な可動鉄心9の摩耗等により、可動鉄心9の摺動部における摺動抵抗が増加する。摺動抵抗が増加すると、図11の摺動抵抗のない場合と比較して(振動S7)、図12の摺動抵抗が増加したとき(振動S8)に可動鉄心9の動作に遅れ(T6−T5)が生じる。この可動鉄心9の動作の遅れは、電圧Pが下がったときと同様に、摺動抵抗が高いほど動作の遅れが生じる。摺動抵抗が高いほど、全開までの応答時間が長くなる。その結果、応答時間が閾値Yを超えたときの可動鉄心9の動作の遅れを検知することにより、摺動抵抗の増加を推測することができる。例えば、応答時間が閾値Yを超えたとき、製品の交換時期を判断することができ、製品寿命の予防保全をすることができる。また、可動鉄心9が途中で止まった場合にも、振動が低下もしくは発生しないため、流体制御弁本体2の異常を検知することができる。
【0024】
以上、説明したように、本発明のセンサ付き流体制御弁1によれば、
(1)可動鉄心9を移動させるアクチュエータ部4と、可動鉄心9に設けられたダイアフラム弁体16が当接離間する弁座14aが形成された弁部5とを備える流体制御弁本体2と振動Sを検出する振動センサ3とを備えるセンサ付き流体制御弁1において、振動Sは、ダイアフラム弁体16が弁座14aに当接するとき、ダイアフラム弁体16と弁座14aの間に漏れがない場合に発生するウォータハンマ現象により生じ、所定の閾値X以上の振動Sを検出したときに流体制御弁本体2は正常であると判断され、所定の閾値X以上の振動Sを検出しないときに流体制御弁本体2は異常であると判断されること、を特徴とするので、ウォータハンマ現象を利用し、閾値X以上の振動Sを検出しないことにより、流体制御弁本体2の弁閉止部における微小な漏れの検出をすることができる。
【0025】
(2)(1)に記載のセンサ付き流体制御弁1において、振動センサ3は、衝撃検知に特化したものであること、を特徴とするので、わずかな衝撃も検知することができるため、ウォータハンマ現象によるわずかな衝撃による振動Sを検出することができ、流体制御弁本体2の弁閉止部における微小な漏れを確実に検出することができる。
(3)(1)または(2)に記載のセンサ付き流体制御弁1において、振動センサ3は、振動Sを検知できる位置に設置すること、を特徴とするので、振動Sは流体制御弁本体2全体に伝播するため、流体制御弁本体2のどこにでも取り付けることができる。
【0026】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のセンサ付き流体制御弁1において、漏れが糸状の異物Aによるものであっても、流体制御弁本体2は異常であると判断されること、を特徴とするので、太さ100μm程度の大きさの糸状の異物が原因による微小な漏れも確実に検出することができる。
【0027】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のセンサ付き流体制御弁1において、所定の時間に振動Sを検知しないとき、流体制御弁本体2は異常であると判断されること、を特徴とするので、可動鉄心9の摺動部における摺動抵抗の増加により、全開までの応答時間が長くなるため、時系列にみることにより流体制御弁本体2の交換時期を判断することができる。
【0028】
なお、本実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
例えば、本実施形態の流体制御弁本体2は電磁弁であるが、エアで駆動するパイロット弁等の他の形式の流体制御弁でも良い。
また、本実施形態の振動センサ3は振動を検出するが、加速度を検出する加速度センサでも良い。
また、本実施形態の振動センサ3は、ヨーク11の側面に設置されているが、振動を検知できる位置であればよいため、振動センサ3は製品外観に後付けして取り付け、振動を検出することも可能である。例えば、製品の上面(モールド12の外側)に取り付けても良い。振動センサ3をハンダ付けした基板を樹脂でモールドし、それをねじ止め又は接着する。可動鉄心9の動作により振動が発生するため、上下振動を検出することが可能となる。
また、振動センサ3は、流路ブロック体14の底面に設置されても良い。ダイアフラム弁体16が弁座14aに当接する際に、振動が発生するため、流路ブロック体14の底面に取り付けることで検出が可能となる。取り付けは流路ブロック体14の内部に埋め込んでも良い。
さらに、振動センサ3は、流体制御弁内部のヨーク11の上面に設置されても良い。可動鉄心9の動作による振動を検知することが容易となる。ヨーク11は金属部材であり、振動を直接検出できる。製品への内蔵が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 センサ付き流体制御弁
2 流体制御弁本体
3 振動センサ
4 アクチュエータ部
5 弁部
7 励磁コイル
8 固定鉄心
9 可動鉄心
14a 弁座
16 ダイアフラム弁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12