【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例では、次の原料を用いて水処理材を作製した。
・ゼオライト:ジークライト株式会社製のSGW−B4(平均粒子径18μm)を用いた。このゼオライトは、粉末X線回折によってクリノプチロライト及びモルデナイトの両方を含むことを確認した。
・ケイ酸カルシウムを与える材料:ALCの端材を500μm未満に粉砕したもの(以下、「ALC粉末」という。)を用いた。ALC粉末の主成分は、ケイ酸カルシウム水和物の一種であるトバモライトである。
【0027】
実施例及び比較例における各評価は、次のようにして行った。
<ゼオライトの種類の同定>
粉末X線回折装置(Bruker社製D8 Advance)を用い、電流350mA、電圧35kV、ステップサイズ0.02°、スキャンスピード0.13秒/ステップ、測定範囲10°〜65°の条件で、水処理材に含まれるゼオライトの種類の同定を行った。
【0028】
<クリノプチロライト及びモルデナイトの結晶子径の算出>
粉末X線回折装置(Bruker社製D8 Advance)を用い、CuKα線により、クリノプチロライトの2θ=30.0°付近の(151)面の回折線プロファイルの半値幅、モルデナイトの2θ=25.7°付近の(202)面の回折線プロファイルの半値幅を測定した後、上記のシェラーの式(I)によってクリノプチロライト及びモルデナイトの結晶子径を算出した。
【0029】
<水処理材の摩耗(強度)の評価>
水道水100mL及び水処理材5gを内容積250mLのポリ容器に入れ、振とう器で3日間振とうした後、5mmの篩で篩分けした。その後、5mmの篩上に残留した水処理材を乾燥させ、乾燥後の重量を測定した。そして、水処理材の摩耗率(%)を以下の式によって算出した。
(振とう前の水処理材の重量−振とう後の水処理材の重量)/振とう前の水処理材の重量×100
【0030】
<水処理材のpH緩衝作用の評価>
水道水に硝酸を添加してpHを2.2となるように調整した模擬水100mL及び水処理材1.5gを内容積250mLのポリ容器に入れ、振とう器で3日間振とうした後、模擬水のpHを測定した。
【0031】
<水処理材のアンモニア及びリン酸の吸着能力の評価>
リン酸水素二アンモニウム0.47gを蒸留水に加えた模擬水1Lを準備した。この模擬水において、アンモニア態窒素の濃度は100mg/L、リン酸態リンの濃度は110mg/Lである。この模擬水200mL及び水処理材0.5gを内容積250mLのポリ容器に入れ、振とう器で7日間振とうした後、水処理材を除去し、模擬水におけるアンモニア態窒素及びリン酸態リンの濃度を測定した。アンモニア態窒素の濃度は、インドフェノール青比色法を用いたパックテスト、リン酸態リンの濃度は、モリブデン青比色法を用いたパックテストによって測定した。
【0032】
水処理材のアンモニアの吸着能力は、以下の式によってアンモニアの吸着率(%)を算出した。
(振とう前の模擬水におけるアンモニア態窒素の濃度−振とう後の模擬水におけるアンモニア態窒素の濃度)/振とう前の模擬水におけるアンモニア態窒素の濃度×100
同様に、水処理材のリン酸の吸着能力は、以下の式によってリン酸の吸着率(%)を算出した。
(振とう前の模擬水におけるリン酸態リンの濃度−振とう後の模擬水におけるリン酸態リンの濃度)/振とう前の模擬水におけるリン酸態リンの濃度×100
【0033】
<重金属の吸着能力の評価>
鉛濃度が1mg/Lとなるような模擬水を、蒸留水に硝酸鉛(特級試薬Pb(NO
3)
2)を加えることで調製した。この模擬水1L及び水処理材10gをポリプロピレン製容器に入れ、振とう器で7日間振とうした後、水処理材を除去し、模擬水における鉛濃度を測定した。鉛濃度は、ICP質量分析装置を用いて測定した。
水処理材の鉛の吸着能力は、以下の式によって算出した。
(振とう前の模擬水における鉛濃度−振とう後の模擬水における鉛濃度)/振とう前の模擬水における鉛濃度×100
【0034】
(実施例1〜6及び比較例1〜3)
70質量部のゼオライト及び30質量部のALC粉末を混合した後、得られた混合物を直径が7mm〜10mmとなるようにパンペレタイザーを用いて水を噴霧しながら造粒した。得られた造粒物を乾燥した後、表1に示す温度及び時間で焼成することにより、球状の水処理材を得た。得られた水処理材について、上記の各評価を行った。なお、重金属の吸着能力の評価については、代表として実施例4のみ行った。各評価の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示されているように、実施例1〜6の水処理材は、摩耗率が小さく(強度が高く)、pH緩衝作用を有すると共に、アンモニア及びリン酸の吸着能力が高かった。また、実施例4の水処理材は重金属の吸着能力を有しており、類似の鉱物組成を有する実施例1〜3及び実施例5〜6の水処理材についても重金属の吸着能力を有することが推認される。このような効果を有する実施例1〜6の水処理材は、クリノプチロライトの結晶子径が15〜26.5nm、モルデナイトの結晶子径が39〜48nm、ゼオライトとケイ酸カルシウムとの質量比が4.0:1〜1.1:1の範囲内であった。
【0037】
これに対して比較例1の水処理材は、焼成温度が低すぎたために、モルデナイトの結晶子径が大きくなり過ぎてしまい、摩耗率が大きくなった(強度が低くなった)。また、比較例2の水処理材は、焼成温度が高すぎたために、モルデナイトの結晶子径が小さくなり過ぎてしまい、アンモニア及びリン酸の吸着能力が低くなった。さらに、比較例2と同じ焼成温度で焼成時間を長くすることによって作製した比較例3の水処理材は、クリノプチロライトの結晶子径が大きくなり過ぎてしまい、アンモニア及びリン酸の吸着能力が低くなった。
【0038】
次に、ゼオライトとALC粉末との混合割合を変えて水処理材を作製し、上記の各評価(重金属の吸着能力の評価は除く)と共に造粒性の評価を行った。また、実施例4の水処理材についても同様の評価を行った。なお、造粒性の評価は目視にて行った。造粒性の評価において、パンペレタイザーによる造粒が容易であったものを◎、混合物の粘着性が低下したものの、パンペレタイザーによる造粒が可能であったものを○、混合物の粘着性が低く、パンペレタイザーによる造粒が困難であったものを△と表す。
(実施例7)
ゼオライトの配合量を60質量部、ALC粉末の配合量を40質量部に変えたこと以外は実施例4と同様にして水処理材を作製した。
【0039】
(実施例8)
ゼオライトの配合量を50質量部、ALC粉末の配合量を50質量部に変えたこと以外は実施例4と同様にして水処理材を作製した。
(比較例4)
ゼオライトの配合量を80質量部、ALC粉末の配合量を20質量部に変えたこと以外は実施例4と同様にして水処理材を作製した。
実施例4、7及び8、並びに比較例4の水処理材の各評価の結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2に示されているように、実施例4、7及び8の水処理材は、摩耗率が小さく(強度が高く)、pH緩衝作用を有すると共に、アンモニア及びリン酸の吸着能力が高かったのに対し、比較例4の水処理材は、ゼオライトの配合割合が高すぎたために、リン酸の吸着能力が低くなった。また、ALC粉末の配合割合が高くなるにつれて、ゼオライトとALC粉末との混合物の粘性が低下し、ゼオライトとALC粉末がまとまり難くなったため、パンペレタイザーによる造粒が難しくなった。ただし、ALC粉末の配合割合が高くなっても、他の成形手段などを用いれば造粒可能であることは言うまでもない。
【0042】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、強度が高く、アンモニア及びリン酸の吸着能力、並びにpH緩衝作用に優れた水処理材及びその製造方法を提供することができる。