特許第6674401号(P6674401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6674401検出システム、検出方法及び検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674401
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】検出システム、検出方法及び検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/64 20130101AFI20200323BHJP
【FI】
   G06F21/64
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-38140(P2017-38140)
(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公開番号】特開2018-147016(P2018-147016A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】清本 晋作
【審査官】 平井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0005804(US,A1)
【文献】 特表2018−530175(JP,A)
【文献】 特開2017−204707(JP,A)
【文献】 大橋 盛徳 ほか,デジタルコンテンツのスマートプロパティ化に向けた情報登録方法の提案と実装,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2016年 5月 5日,Vol.116 No.23,pp.13−18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/00−88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
販売者の端末から登録された販売予定データのハッシュ値の集合を格納するデータベースと、
取引履歴を含むブロックを、ブロックチェーンとして管理する取引管理部と、
前記ブロックを閉じるためのプルーフオブワークとして、前記ハッシュ値の集合から、前記取引履歴のいずれかと一致するハッシュ値を検出し、当該一致するハッシュ値を、不正ハッシュリストとして前記ブロック内に格納する検証端末と、を備え、
前記取引管理部は、前記不正ハッシュリストが格納されたことを条件に、前記ブロックを閉じると共に、当該不正ハッシュリストを格納した前記検証端末に対して対価を与える検出システム。
【請求項2】
前記データベース内に、前記取引履歴のいずれかを複製した、前記一致するハッシュ値として検出され得るダミーのハッシュ値を混入させる管理者端末を備える請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記管理者端末は、前記ハッシュ値の集合の大きさに応じて、前記ダミーのハッシュ値を混入させる数を調整し、ダミーの割合を一定にする請求項2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記管理者端末は、前記ダミーのハッシュ値を暗号化し、前記ブロックが閉じられる前に当該ブロック内に格納する請求項2又は請求項3に記載の検出システム。
【請求項5】
前記取引管理部は、前記不正ハッシュリストに格納されたハッシュ値に対応するデータの販売者を、取引に関する信頼度を下げて記録する請求項1から請求項4のいずれかに記載の検出システム。
【請求項6】
前記ハッシュ値は、前記販売予定データに対して所定の演算行った後の1又は複数のデータそれぞれに対してハッシュ演算を行ったものである請求項1から請求項5のいずれかに記載の検出システム。
【請求項7】
前記取引管理部は、階層化された管理単位それぞれに対応する、複数のブロックチェーン毎に設けられる請求項1から請求項6のいずれかに記載の検出システム。
【請求項8】
販売者の端末から登録された販売予定データのハッシュ値の集合を格納するデータベースと、取引履歴を含むブロックをブロックチェーンとして管理する取引管理部と、を備えるシステムにおいて、
検証端末が、前記ブロックを閉じるためのプルーフオブワークとして、前記ハッシュ値の集合から、前記取引履歴のいずれかと一致するハッシュ値を検出し、当該一致するハッシュ値を、不正ハッシュリストとして前記ブロック内に格納し、
前記取引管理部が、前記不正ハッシュリストが格納されたことを条件に、前記ブロックを閉じると共に、当該不正ハッシュリストを格納した前記検証端末に対して対価を与える検出方法。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の検出システムとしてコンピュータを機能させるための検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正に流通されたデータを検出するためのシステム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、取引のトランザクションを分散管理するブロックチェーンと呼ばれるシステムが開発され、正当性が検証された安全な売買取引の実現に寄与している(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Satoshi Nakamoto, “Bitcoin: A peer−to−peer electronic cash system,” 2008.
【非特許文献2】Sompolinsky, Y., Zohar, A., “Accelerating bitcoin’s transaction processing. Fast money grows on trees, not chains,” IACR Cryptology ePrint Archive 2013 (2013)881.
【非特許文献3】Lewenberg, Y., Sompolinsky, Y., Zohar, A., “Inclusive block chain protocols,” Financial Cryptography and Data Security − 19th International Conference, FC2015, San Juan, Puerto Rico, January 26−30, 2015, Revised Selected Papers. (2015)528−547.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、データ流通市場において、不正にコピーされたデータが流通される場合があり、このような不正データの売買取引を取り締まることが求められている。
しかしながら、プラットフォーム事業者が膨大な取引履歴の中から、このような不正データを検出することは難しく、多大なコストが掛かっていた。
【0005】
本発明は、セキュアなデータ流通プラットフォームを低コストで実現できる不正データの検出システム、検出方法及び検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検出システムは、販売者の端末から登録された販売予定データのハッシュ値の集合を格納するデータベースと、取引履歴を含むブロックを、ブロックチェーンとして管理する取引管理部と、前記ブロックを閉じるためのプルーフオブワークとして、前記ハッシュ値の集合から、前記取引履歴のいずれかと一致するハッシュ値を検出し、当該一致するハッシュ値を、不正ハッシュリストとして前記ブロック内に格納する検証端末と、を備え、前記取引管理部は、前記不正ハッシュリストが格納されたことを条件に、前記ブロックを閉じると共に、当該不正ハッシュリストを格納した前記検証端末に対して対価を与える。
【0007】
前記検出システムは、前記データベース内に、前記取引履歴のいずれかを複製した、前記一致するハッシュ値として検出され得るダミーのハッシュ値を混入させる管理者端末を備えてもよい。
【0008】
前記管理者端末は、前記ハッシュ値の集合の大きさに応じて、前記ダミーのハッシュ値を混入させる数を調整し、ダミーの割合を一定にしてもよい。
【0009】
前記管理者端末は、前記ダミーのハッシュ値を暗号化し、前記ブロックが閉じられる前に当該ブロック内に格納してもよい。
【0010】
前記取引管理部は、前記不正ハッシュリストに格納されたハッシュ値に対応するデータの販売者を、取引に関する信頼度を下げて記録してもよい。
【0011】
前記ハッシュ値は、前記販売予定データに対して所定の演算行った後の1又は複数のデータそれぞれに対してハッシュ演算を行ったものであってもよい。
【0012】
前記取引管理部は、階層化された管理単位それぞれに対応する、複数のブロックチェーン毎に設けられてもよい。
【0013】
本発明に係る検出方法は、販売者の端末から登録された販売予定データのハッシュ値の集合を格納するデータベースと、取引履歴を含むブロックをブロックチェーンとして管理する取引管理部と、を備えるシステムにおいて、検証端末が、前記ブロックを閉じるためのプルーフオブワークとして、前記ハッシュ値の集合から、前記取引履歴のいずれかと一致するハッシュ値を検出し、当該一致するハッシュ値を、不正ハッシュリストとして前記ブロック内に格納し、前記取引管理部が、前記不正ハッシュリストが格納されたことを条件に、前記ブロックを閉じると共に、当該不正ハッシュリストを格納した前記検証端末に対して対価を与える。
【0014】
本発明に係る検出プログラムは、前記検出システムとしてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セキュアなデータ流通プラットフォームを低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るデータ流通プラットフォームを示す概要図である。
図2】実施形態に係る検出システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係るデータ流通プラットフォームを示す概要図である。
【0018】
データ流通プラットフォームにおいて、販売者は、データ流通市場(Data Trading Market)に対して、マルチメディアコンテンツ等の販売データを登録し、購入者は、この市場に登録されたデータを購入する。
ここで、売買は、データの移転であり、この移転の記録がVerifiable Data Transfer Records(VDTR)として蓄積される。
【0019】
このようなデータ流通市場においては、データの価格を安定させるために、データの複製(販売)数の上限が定められる。したがって、データの不正な複製を監視する機能が必要である。
本実施形態では、VDTRの構成としてブロックチェーンを用い、データの複製を検出する機能を、プルーフオブワークとして実現する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る検出システム1の構成を示す図である。
検出システム1は、販売者の端末10と、購入者の端末20と、市場管理者の端末30と、検証者の端末40とを備える。さらに、検出システム1は、データベース50と、取引管理部60とを備えるが、これらは、ネットワーク(インターネット)上に分散配置されてよい。
【0021】
販売者の端末10は、販売データを暗号化し、購入者の端末20に送信する。
購入者の端末20は、ブロックチェーンの取引履歴に基づいて、データの正当性を確認すると、販売者から別途受け取った鍵により、購入したデータを復号する。
【0022】
また、販売者の端末10は、販売予定データのハッシュ値をデータベース50に登録する。データベース50には、販売予定データのハッシュ値の集合が格納され、この中には、過去に販売されたデータを不正にコピーしたデータが含まれている可能性がある。
【0023】
市場管理者の端末30は、データベース50に格納されるハッシュ値の集合内に、ブロックチェーンで管理されている取引履歴に含まれるハッシュ値のいずれかを複製したダミーのハッシュ値を混入させる。このダミーのハッシュ値は、検証者の端末40において、取引履歴と一致するハッシュ値として検出され得る。
【0024】
このとき、市場管理者の端末30は、ハッシュ値の集合の大きさに応じて、ダミーのハッシュ値を混入させる数を調整し、ダミーの割合を一定にすることで、プルーフオブワークの処理負荷を適正に保つ。
【0025】
また、市場管理者の端末30は、データベース50に混入させたダミーのハッシュ値を公開鍵暗号により暗号化し、ブロックが閉じられる前に、このブロック内に格納する。この暗号化されたハッシュ値は、検証者の端末40により次のブロックに格納された不正ハッシュリストの検証のために、市場管理者により復号されて提供される。
【0026】
検証者の端末40は、ブロックチェーンのブロックを閉じるためのプルーフオブワークとして、データベース50に格納されているハッシュ値の集合から選択したハッシュ値と、ブロックチェーンの取引履歴に格納されているハッシュ値とを照合する。検証者の端末40は、ハッシュ値の集合の中から取引履歴のいずれかと一致するハッシュ値を検出すると、この一致するハッシュ値を、不正ハッシュリストとしてブロック内に格納する。
【0027】
データベース50は、前述のように、販売予定データのハッシュ値、及びダミーのハッシュ値が格納されている。
本実施形態において、ハッシュ値の形式は限定されないが、不正コピーされたデータを検出するために、適宜設定されたデータ単位毎に生成されてよい。
具体的には、ハッシュ値は、販売予定データに対して所定の演算行った後の1又は複数のデータそれぞれに対してハッシュ演算を行ったものでよい。
【0028】
例えば、動画コンテンツでは所定時間又はシーン毎に分割する等、元データを複数に分割し、分割単位毎にハッシュ値が生成されてもよい。また、分割の大きさがツリー状に階層で設定されてもよい。
さらに、各データの特徴量を算出した後に、この特徴量に対するハッシュ値が算出されてもよい。
【0029】
取引管理部60は、取引履歴を含むブロックを、ブロックチェーンとして管理する。取引管理部60は、階層化された管理単位それぞれに対応する、複数のブロックチェーン毎に設けられてもよい。管理単位は、例えば、国又は地域、あるいは分野毎に設けられる。
【0030】
ブロックチェーンで管理される各ブロックには、例えば、次の要素が格納される。
・データのハッシュ値を含む取引履歴
・不正ハッシュリスト
・ダミーのハッシュ値を暗号化した、次のブロックのためのコミットメント
・前のブロック全体のハッシュ値
・監査を行った検証者の電子署名
【0031】
取引管理部60は、検証者の端末40により不正ハッシュリストが格納されたことを条件に、検証者又は市場管理者の指示に従ってブロックを閉じると共に、この不正ハッシュリストを格納した検証者の端末40に対して対価を与える。
なお、取引管理部60は、不正ハッシュリストが格納されたことに加えて、混入されたダミーのハッシュ値が全て検出されたことを条件にしてブロックを閉じてもよい。
【0032】
また、検出されたハッシュ値にダミーではない不正データのハッシュ値が含まれている場合、取引管理部60は、ハッシュ値に対応する不正データの販売者を、取引に関する信頼度を下げて記録する。
【0033】
本実施形態によれば、検出システム1は、データの売買取引を記録するVDTRの構成としてブロックチェーンを使用する。各ブロックを閉じるための検証者によるプルーフオブワークを、取引履歴と一致する不正データのハッシュ値を探索する処理と定義する。
したがって、通常は、ブロックを閉じるためだけの計算問題がプルーフオブワークとして用意されるが、検出システム1は、プルーフオブワークにより不正データを検出でき、検証者の動機付けを変えることなく、効率的に計算資源を活用できる。
【0034】
検出システム1は、販売予定データのハッシュ値の集合に、過去の取引履歴と一致するダミーのハッシュ値を混入させる。
したがって、検出システム1は、不正データの有無及びその数によらず、取引履歴と一致するハッシュ値が所定時間内に検出されることが期待できるので、ブロックチェーンの各ブロックを適切な時間内に検証し、閉じることができる。
【0035】
さらに、検出システム1は、ダミーのハッシュ値を混入させる数を調整し、ハッシュ値の集合におけるダミーの割合を一定にできるので、プルーフオブワークの処理負荷を均一にできる。また、プルーフオブワークの処理負荷が容易に調整可能である。
【0036】
検出システム1は、ダミーのハッシュ値を暗号化してブロック内に格納するので、適宜に不正ハッシュリストと照合が可能であり、プルーフオブワークの正確さの検証、及び不正データの特定が容易になる。
【0037】
検出システム1は、取引履歴と一致し不正コピーと判定されたデータの販売者に対してペナルティを与え、例えば、この販売者の取引に関する信頼度を下げて記録することにより、不正データの流通、及び検証者との結託による対価の不正な受け取り等を抑制できる。
【0038】
検出システム1は、販売予定データに対して所定の演算、例えばデータの分割、又は特徴量の算出等を行った後の1又は複数のデータそれぞれに対してハッシュ値を生成する。
したがって、検出システム1は、データの一部、あるいは改変後の不正コピーにも対応可能であり、検出精度を向上できる。
【0039】
検出システム1は、ブロックチェーンを階層化することにより、データ流通市場を複数の管理単位に分割できる。また、上位階層において、より信頼できる機関で追認することにより、システム全体の信頼度が向上する。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0041】
本実施形態では、販売予定データと過去の取引履歴とをハッシュ値で比較することとしたが、これには限られず、ハッシュ演算以外の関数が用いられてもよい。
【0042】
検出システム1による検出方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、情報処理装置(コンピュータ)にインストールされる。また、これらのプログラムは、CD−ROMのようなリムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 検出システム
10 販売者の端末
20 購入者の端末
30 市場管理者の端末(管理者端末)
40 検証者の端末(検証端末)
50 データベース
60 取引管理部
図1
図2