(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
研削砥石と、調整砥石と、前記研削砥石および前記調整砥石の間に配置されたブレードと、前記ブレードを支持するワークレストと、前記ワークレストに配置されている応力センサと、前記調整砥石を少なくとも水平方向に駆動する第1駆動機構と、前記研削砥石を少なくとも水平方向に駆動する第2駆動機構と、前記第1駆動機構および前記第2駆動機構のそれぞれの動作を制御する制御装置と、を備え、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードによりワークを支持しながら前記研削砥石および前記調整砥石を回転させることにより、当該ワークを研削加工するセンタレス研削装置であって、
前記応力センサとしての一対の応力センサのそれぞれが、前記ブレードの長手方向について前記ブレードまたは前記ワークレストにおける異なる箇所のそれぞれに配置され、
前記制御装置が、
前記ブレードに作用する荷重と、前記一対の応力センサのそれぞれの出力と、の相関関係を表わす相関関係情報を記憶保持する記憶装置と、
前記一対の応力センサのそれぞれの出力に基づき、前記記憶装置に記憶されている前記相関関係情報にしたがって、前記ブレードに作用する荷重を測定する荷重測定部と、
前記荷重測定部により測定された荷重の時系列を周波数解析することにより抽出される指定周波数の成分が閾値を超えているか否かを判定する周波数解析部と、
前記周波数解析部により、前記指定周波数の成分が前記閾値を超えていると判定された場合、前記ワークの心高を調節することで、前記指定周波数の成分を前記閾値以下にするための指定処理として、前記第1駆動機構に前記調整砥石を少なくとも水平方向に駆動させること、および、前記第2駆動機構に前記研削砥石を少なくとも水平方向に駆動させることのうち少なくとも一方を実行する指定処理部と、を備えることを特徴とするセンタレス研削装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば特許文献1のように、調整砥石を介してワークに掛かる負荷を測定する場合、時系列で変動の遅い、いわゆる静的負荷変動を測定することはある程度可能であるが、心なし研削特有のビビリ振動のような時系列で変動の速い、動的負荷変動を測定するには、ラバーを含有し、弾性率の低い調整砥石を介して測定した場合、振動減衰により正確さが低下する。このため、ワークの横断面における被研削面または、そのビビリ振動により、外側面が真円形状ではなく、周方向に沿って波打った形状などの非真円形状になったとしても、この状態をその負荷変動で適切に監視することは困難なため、形状精度を改善することができない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、ワークに掛かる負荷を金属性のブレードを介して測定することで、静荷重的負荷変動に加え、動荷重的負荷変動を同時に正確に測定し、ワークの研削状態に応じた適切、かつ迅速な対応が可能なセンタレス研削装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、研削砥石と、調整砥石と、前記研削砥石および前記調整砥石の間に配置されたブレードと、前記ブレードを支持するワークレストと、前記ワークレストに配置されている応力センサと、前記調整砥石を少なくとも水平方向に駆動する第1駆動機構と、前記研削砥石を少なくとも水平方向に駆動する第2駆動機構と、前記第1駆動機構および前記第2駆動機構のそれぞれの動作を制御する制御装置と、を備え、対象物を前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードによりワークを支持しながら前記研削砥石および前記調整砥石を回転させることにより、当該ワークを研削加工するセンタレス研削装置に関する。さらに、本発明は、当該センタレス研削装置において前記ワークの研削状態を監視する方法に関する。
【0007】
本発明のセンタレス研削装置は、研削砥石と、調整砥石と、前記研削砥石および前記調整砥石の間に配置されたブレードと、前記ブレードを支持するワークレストと、前記ワークレストに配置されている応力センサと、前記調整砥石を少なくとも水平方向に駆動する第1駆動機構と、前記研削砥石を少なくとも水平方向に駆動する第2駆動機構と、前記第1駆動機構および前記第2駆動機構のそれぞれの動作を制御する制御装置と、を備え
、前記研削砥石、前記調整砥石および前記ブレードによりワークを支持しながら前記研削砥石および前記調整砥石を回転させることにより、当該ワークを研削加工するセンタレス研削装置であって、前記応力センサとしての一対の応力センサのそれぞれが、前記ブレードの長手方向について前記ブレードまたは前記ワークレストにおける異なる箇所のそれぞれに配置され、前記制御装置が、前記ブレードに作用する荷重と、前記一対の応力センサのそれぞれの出力と、の相関関係を表わす相関関係情報を記憶保持する記憶装置と、前記一対の応力センサのそれぞれの出力に基づき、前記記憶装置に記憶されている前記相関関係情報にしたがって、前記ブレードに作用する荷重を測定する荷重測定部と、前記荷重測定部により測定された荷重の時系列を周波数解析することにより抽出される指定周波数の成分が閾値を超えているか否かを判定する周波数解析部と、前記周波数解析部により、前記指定周波数の成分が前記閾値を超えていると判定された場合、
前記ワークの心高を調節することで、前記指定周波数の成分を前記閾値以下にするための指定処理
として、前記第1駆動機構に前記調整砥石を少なくとも水平方向に駆動させること、および、前記第2駆動機構に前記研削砥石を少なくとも水平方向に駆動させることのうち少なくとも一方を実行する指定処理部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のセンタレス研削装置において、前記ワークレストを少なくとも鉛直方向に駆動する第3駆動機構をさらに備え、前記制御装置が、前記第1駆動機構および前記第2駆動機構に加えて、前記第3駆動機構の動作を制御するように構成され、前記指定処理部が、前記ワークの心高を調節するため、前記第3駆動機構に前記ワークレストを少なくとも鉛直方向に駆動させることを前記指定処理として実行することが好ましい。
【0010】
本発明のセンタレス研削装置において、前記指定処理部が、前記指定周波数としての第1指定周波数の成分、例えば、仕上がりワーク断面が12、14山等の偶数山周期を有する形状の場合、が前記閾値としての第1閾値を超えた場合は前記ワークの心高を低下させる一方、前記指定周波数としての第2指定周波数の成分、例えば、仕上がりワーク断面が3、5山等の奇数山周期を有する形状の場合、前記閾値としての第2閾値を超えた場合は前記ワークの心高を上昇させるように前記指定処理を実行することが好ましい。
【0011】
さらに、研削中にワーク仕上がり形状精度の劣化が、研削砥石や調整砥石の摩耗が原因となるケースが多いため、ワークに掛かる負荷の静的負荷変動と動的負荷変動を監視し、本発明のセンタレス研削装置において、前記調整砥石および前記研削砥石のうち少なくとも一方をドレッシングするためのドレッシング装置を備え、前記指定処理部が、前記ドレッシング装置により、前記調整砥石および前記研削砥石のうち少なくとも一方をドレッシングすることを前記指定処理として実行することが好ましい。
【0012】
本発明のセンタレス研削装置において、前記記憶装置が、前記ブレードに作用する荷重と、前記ブレードにおける荷重の作用位置と、前記一対の応力センサのそれぞれの出力と、の相関関係を表わす情報を前記相関関係情報として記憶保持し、前記制御装置が、前記一対の応力センサのそれぞれの出力に基づき、前記記憶装置に記憶されている前記相関関係情報にしたがって、前記ブレードに作用する荷重と、前記ブレードにおける荷重の作用位置と、を測定することが好ましい。
【0013】
本発明のセンタレス研削装置において、前記記憶装置が、前記ブレードに作用する荷重Fと、前記ブレードにおける荷重の作用位置yと、前記一対の応力センサのそれぞれの出力sと、のそれぞれを座標軸とする3次元直交座標系における曲面を表わす式s=g
1(f,y)およびs=g
2(f,y)を前記相関関係情報として記憶保持し、前記制御装置が、前記一対の応力センサのそれぞれの出力s
1およびs
2に基づき、前記相関関係情報にしたがって、f−y平面における曲線s
1=g
1(f,y)およびs
2=g
2(f,y)の交点の座標値として、前記ブレードに作用する荷重Fと、前記ブレードにおける荷重の作用位置yと、を測定することが好ましい。
【0014】
本発明のセンタレス研削装置において、前記一対の応力センサが、前記ブレードを基準として対称的に配置されていることが好ましい。
【0015】
本発明のワークの研削状態監視方法は、前記応力センサとしての一対の応力センサのそれぞれが、前記ブレードの長手方向について前記ブレードまたは前記ワークレストにおける異なる箇所のそれぞれに配置され、前記一対の応力センサのそれぞれの出力に基づき、前記ブレードに作用する荷重と、前記一対の応力センサのそれぞれの出力と、の相関関係を表わす相関関係情報にしたがって、前記ブレードに作用する荷重を測定する荷重測定工程と、前記荷重測定工程において測定された荷重の時系列を周波数解析することにより抽出される指定周波数の成分が閾値を超えているか否かを判定する周波数解析工程と、前記周波数解析工程において、前記指定周波数の成分が前記閾値を超えていると判定された場合、
前記ワークの心高を調節することで、前記指定周波数の成分を前記閾値以下にするための指定処理
として、前記第1駆動機構に前記調整砥石を少なくとも水平方向に駆動させること、および、前記第2駆動機構に前記研削砥石を少なくとも水平方向に駆動させることのうち少なくとも一方を実行する指定処理工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセンタレス研削装置およびワークの研削状態監視方法によれば、ブレードにおける荷重作用位置の相違に応じて、荷重が同一であっても一の応力センサの出力が変化することが勘案され、当該一の応力センサとは異なる箇所に配置された他の応力センサの出力も用いられることによって当該ブレードに作用する荷重の測定精度の向上が図られる。このため、ワークの外側面が非真円形状であってその研削状態が不良である場合、荷重の時系列における周波数解析により指定周波数の成分が閾値を超える程度にまで抽出されないまたは抽出されるまでに過度に長い時間を要する状況が回避される。よって、ワークの研削状態の監視精度の向上が図られ、かつ、当該ワークの研削状態が不良である場合、迅速に指定処理が実行されるので、この状態を改善するための適切な対処が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としてのセンタレス研削装置は、調整砥石1と、研削砥石2と、ブレード4と、制御装置20と、第1ドレッシング装置112と、第2ドレッシング装置122と、第1回動機構211と、第1駆動機構212と、第2回動機構221と、第2駆動機構222と、第3駆動機構232と、を備えている。
【0019】
調整砥石1は、略円柱状であり、電動モータ等のアクチュエータにより構成された第1回動機構211によって軸線O
1回りに回転可能に支持されている。センタレス研削装置がスルーフィード式である場合、軸線O
1は、研削砥石2の軸線O
2と傾斜角をなすように延在し、また、調整砥石1は、略一葉双曲面体状(軸線方向について一端から中央にかけて徐々に縮径した後、中央から他端にかけて徐々に拡径するような略円筒状)に形成されている。これにより、調整砥石1および研削砥石2の間に案内されたワークW(例えば略円筒状または略円柱状のワーク)に対して、y軸(またはこれに略平行な軸線)回りの回転力および±y方向(例えば+y方向)への並進力が与えられる。
【0020】
第1ドレッシング装置112は、調整砥石1をドレッシングするための装置であり、例えばロータリードレッサにより構成される。
【0021】
第1回動機構211は、調整砥石スライダ11によって水平方向(±x方向(必要に応じてさらに±y方向))または水平面に対して傾斜した面に沿って往復動可能に支持されている。調整砥石スライダ11は、電動モータまたはピストンシリンダユニット等のアクチュエータにより構成された第1駆動機構212によって水平方向(または水平方向に対して傾斜した方向(水平方向および鉛直方向の両方))に駆動される。調整砥石スライダ11は基台10を介してベッドに搭載されている。調整砥石スライダ11は、z軸に平行な軸線(旋回ピン)回りに旋回し、y軸に対する調整砥石1の軸線O
1のなす角度を調整可能に構成されている。調整砥石スライダ11は基台10(または下部スライダ)を介してベッドに搭載されている。なお、調整砥石スライダ11はベッドに直接的に搭載されていてもよい。
【0022】
研削砥石2は、略円柱状であり、調整砥石1の外周面に対してその外周面を対向させるように配置され、電動モータ等のアクチュエータにより構成された第2回動機構221により軸線O
2(y軸に平行な軸線)回りに回転可能に支持されている。第2ドレッシング装置122は、研削砥石2をドレッシングするための装置であり、例えばロータリードレッサにより構成される。第2回動機構221は、ベッドに搭載されている研削砥石スライダ12によって例えば水平方向(±x方向(必要に応じてさらに±y方向))または水平面に対して傾斜した面に沿って往復動可能に支持されている。研削砥石スライダ12は、電動モータまたはピストンシリンダユニット等のアクチュエータにより構成された第2駆動機構222によって水平方向(または水平方向に対して傾斜した方向(水平方向および鉛直方向の両方))に駆動される。
【0023】
ブレード4は、調整砥石1および研削砥石2の間に配置されている。ブレード4は、ベッドの上に搭載されているワークレスト6に対して固定されている。ワークレスト6は、電動モータまたはピストンシリンダユニット等のアクチュエータにより構成された第3駆動機構232によって鉛直方向(±z方向)(または鉛直方向に対して傾斜した方向(鉛直方向および水平方向の両方))に駆動される。なお、第3駆動機構232は省略されてもよい。
【0024】
ワークレスト6には、ブレード4に作用する外力(またはワークレスト6のひずみ量)に応じた信号を出力する第1応力センサS
1および第2応力センサS
2が設けられている。第1応力センサS
1および第2応力センサS
2は、例えば同一仕様のひずみゲージにより構成されている。第1応力センサS
1および第2応力センサS
2のうち少なくとも一方がブレード4に設けられてもよい。
【0025】
図2に示されているように、第1応力センサS
1は、y方向についてブレード4の延在領域のうち、調整砥石1および研削砥石2のそれぞれの延在領域と重複する対象領域(y|−D≦y≦D)から−y方向に外れた位置(x,y,z)=(x
0,−D−d
1,z
0)に配置されている。第2応力センサS
2は、当該対象領域から+y方向に外れた位置(x,y,z)=(x
0,D+d
2,z
0)に配置されている。なお、x方向およびz方向(または鉛直方向)のそれぞれについて第1応力センサS
1および第2応力センサS
2の位置が異なっていてもよい。
【0026】
制御装置20は、コンピュータ(CPU(演算処理装置)、ROMまたはRAMなどのメモリ(記憶装置)および入出力I/F回路等により構成されている。)により構成されている。制御装置20は、第1回動機構211、第1駆動機構212、第2回動機構221、第2駆動機構222、第3駆動機構232、第1ドレッシング装置112および第2ドレッシング装置122のそれぞれの動作を制御する。
【0027】
制御装置20は、コンピュータにより構成され、当該コンピュータを構成する演算処理装置(CPU、シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサ)が、当該コンピュータを構成する記憶装置(ROM、RAMなど)から必要なソフトウェアおよびデータを読み取って、当該ソフトウェアにしたがって当該データを演算処理するように設計またはプログラムされている。
【0028】
制御装置20は、記憶装置21、荷重測定部22、周波数解析部23および指定処理部24を備えている。記憶装置21は、ブレード4に作用する荷重と、第1応力センサS
1および第2応力センサS
2のそれぞれの出力と、の相関関係を表わす「相関関係情報」等を記憶保持する。荷重測定部22は、第1応力センサS
1および第2応力センサS
2のそれぞれの出力に基づき、記憶装置21に記憶されている相関関係情報にしたがって、ブレード4に作用する荷重を測定する。周波数解析部23は、荷重測定部22により測定された荷重の時系列を周波数解析することにより抽出される指定周波数の成分が閾値を超えているか否かを判定する。指定処理部24は、周波数解析部23により、指定周波数の成分が閾値を超えていると判定された場合、指定周波数の成分を閾値以下にするための指定処理を実行する。
【0029】
(機能)
(基本的機能)
インフィード式のセンタレス研削装置においては、調整砥石1および研削砥石2の間にワークWが供給されることによって、ワークWと、調整砥石1、研削砥石2およびブレード4のそれぞれとの三接点が適当に位置決めされ、調整砥石1または研削砥石2をワークWの径方向に切り込むことで所望の研削加工が実現される。調整砥石1および研削砥石2の間隔は、第1駆動機構212および第2駆動機構222のうち少なくとも一方の位置が制御されることによって予め調整されている。
図1に示されているように、x−z平面における調整砥石1の中心(軸線O
1)および研削砥石2の中心(軸線O
2)を結ぶ線分Lはx軸に平行であり、ワークWの中心O
Wは当該線分Lの上方に位置する。
【0030】
調整砥石1が軸線O
1回りに時計回りに回転し、かつ、研削砥石2が軸線O
2回りに時計回りに回転するように、第1回動機構211および第2回動機構221のそれぞれの動作が制御される。この過程で、ワークWが軸線O
W回りに反時計回りに回転しながら、ワークWは研削砥石2により外周から研削加工または切り込み加工される。その加工を繰り返すことで、例えば、研削中の研削砥石の回転周波数成分の強度が次第に高まれば、研削砥石の局所摩耗と判断し、研削砥石のドレッシングを行う。また研削中、ワーク回転周波数の12倍の周波数を検出すれば、ワーク外周に12山成分のうねり形状が発生していると判断し、心高を下げて加工を行う。特に歪の大きいワークに関しては、その素材の形状により適切な心高が変化するため、加工中の動荷重的負荷変動の周波数を監視しながら心高を自動調整することは、従来以上の形状精度を安定して確保することが可能となる。
【0031】
スルーフィード式のセンタレス研削装置の場合、上記のように、ワークWがその軸線方向について調整砥石1および研削砥石2の一端側から他端側まで並進移動する過程で、その外側面が研削加工中の研削抵抗の変化を計測することができる。砥石1、2間を移動しながら研削されるワークWへの研削抵抗の変化を把握することで、両砥石1、2の隙間の変化、つまり研削量の変化を知ることができ、砥石1、2の摩耗状態の管理も可能となる。
【0032】
(特徴的機能)
第1応力センサS
1および第2応力センサS
2のそれぞれの出力に基づき、記憶装置に記憶時保持されている相関関係情報にしたがって、任意の時刻においてブレード4に作用している荷重F、ひいてはブレード4により支持されているワークWに作用している荷重およびブレード4における荷重の作用位置yが荷重測定部22により測定される(
図3/STEP02)。
【0033】
記憶装置21には、ブレード4に作用する荷重F、ブレード4における荷重Fの作用位置(y座標値)および第1応力センサS
1の出力sの相関関係を表わす相関関係情報が記憶保持されている。この相関関係は、例えばF−y−s空間における曲面を表わす式s=g
1(F,y)として表現される。記憶装置21には、ブレード4に作用する荷重F、ブレード4における荷重Fの作用位置(y座標値)および第2応力センサS
2の出力sの相関関係が記憶保持されている。この相関関係は、例えばF−y−s空間における曲面を表わす式s=g
2(F,y)として表現される。
【0034】
第1応力センサS
1および第2応力センサS
2の仕様は同一であり、かつ、y方向について第1応力センサS
1が負領域に配置され、第2応力センサS
2が正領域に配置されている(
図2参照)。このため、yおよびFを変数とする関数g
1(F,y)およびg
2(F,y)の間には関係式(01)で表わされるような関係がある。
【0035】
g
1(F
0,y−(d
2−d
1)/2)=g
2(F
0,−y+(d
2−d
1)/2) ‥(01)。
【0036】
関係式(01)は、s−y平面に対して平行な任意の平面F=F
0において、曲線s=g
1(F,y
0)および曲線s=g
2(F,y
0)が、直線y=(d
2−d
1)/2に対して鏡映対称な変化特性を有していることを表わしている。d
1=d
2である場合、関係式(01)は、関係式(01’)のようにより簡単な形で表現される。
【0037】
g
1(F
0,y)=g
2(F
0,−y) ‥(01’)。
【0038】
図4には、d
1=d
2である場合、第1応力センサS
1および第2応力センサS
2のそれぞれの出力sの、ブレード4における任意の荷重Fの作用位置yに応じた変化態様の一例が示されている。第1応力センサS
1の出力sは、線形関数g
1(F,y)=−c(F)y+s
0(F)により表わされている。第2応力センサS
2の出力sは、線形関数g
2(F,y)=c(F)y+s
0(F)により表わされている。c(F)(>0)は荷重Fの大小に応じて変化する傾きであり、s
0(F)(>0)は荷重Fの大小に応じて変化する切片である。
【0039】
関数g
1(F,y)および関数g
2(F,y)は、関係式(02)および(03)で表わされるような性質を有している。
【0040】
(∂g
1/∂y)<0、(∂g
2/∂y)>0 ‥(02)。
【0041】
関係式(02)は、関数g
1(F,y)が変数yについて減少関数であること、および、関数g
2(F,y)が変数yについて増加関数であることを表わしている。
図3に示されている一実施例において、線形関数g
1(F,y)の傾き−c(F)は負値であり、線形関数g
2(F,y)の傾きc(F)は正値である。
【0042】
(∂g
1/∂F)>0、(∂g
2/∂F)>0 ‥(03)。
【0043】
関係式(03)は、関数g
1(F,y)および関数g
2(F,y)のそれぞれが変数Fについて増加関数であることを表わしている。従って、関数g
1と関数g
2を加算した値を用いることで、負荷測定感度はブレード上のワークの場所に関係なく一定となり、一般的に大型、幅広の砥石を用いるセンタレス研削装置の研削砥石の局所的摩耗等の負荷変動においても正確、かつ安定して検出可能となる。
【0044】
図5には、ブレード4における荷重作用位置yに加えて、荷重Fに応じた第1応力センサS
1および第2応力センサS
2のそれぞれの出力sの変化態様の一例が示されている。ブレード4に作用する荷重Fが「F
1」である場合の関数s=g
1(F=F
1,y)およびs=関数g
2(F=F
1,y)のそれぞれの変化態様が一点鎖線により示されている。これは、曲面s=g
1(F,y)およびs=g
2(F,y)のそれぞれと平面F=F
1との交線に相当する。ブレード4に作用する荷重Fが「F
2(>F
1)」である場合の関数s=g
1(F=F
2,y)および関数s=g
2(F=F
2,y)のそれぞれの変化態様が実線により示されている。荷重Fが大きいほど、切片s
0(F)、第1応力センサS
1および第2応力センサS
2のそれぞれの出力sが大きくなる傾向があることがわかる。
【0045】
任意の時刻における第1応力センサS
1の出力sが「s
1」であり、かつ、第2応力センサS
2の出力sが「s
2」である場合、F−y平面における曲線s
1=g
1(F,y)およびs
2=g
2(F,y)の交点の座標値(F,y)が、当該時刻においてブレード4に作用している荷重Fおよびその作用位置yとして測定される。測定された荷重Fの時系列F(t)は記憶装置21に保存される。荷重F(t)の測定周期は、制御装置20を構成するCPUのクロック周波数と同じであってもよく、例えば1[s]、10[s]などの任意の機関であってもよい。
【0046】
関数g
1(f,y)およびg
2(f,y)の間に、前記関係式(01)に加えて関係式(04)で表わされるような近似的な関係があるように、第1応力センサS
1および第2応力センサS
2の配置(および仕様)が調整されてもよい。
【0047】
g
1(f,y)+g
2(f,y)=f ‥(04)。
【0048】
この場合、第1応力センサS
1および第2応力センサS
2のそれぞれの出力から、ブレード4に作用する荷重Fがただちに測定される。
【0049】
続いて、周波数解析部23により、荷重Fの時系列F(t)が周波数解析されることにより、複数の周波数(離散値)のそれぞれの成分が抽出される(
図3/STEP04)。具体的には、時間関数としての荷重F(t)がフーリエ級数展開されることにより、各フーリエ係数が、対応する周波数の成分として算定または抽出される。これにより、例えば
図6に示されているように、離散的な周波数f
1、f
2、‥f
nのそれぞれを中心とする成分が抽出される。
【0050】
さらに、周波数解析部23により、指定周波数の成分が閾値を超えているか否かが判定される(
図3/STEP06)。例えば、ワークWの回転周波数q
Wの所定の整数倍m×q
W(m=3、12、16など)が指定周波数として設定されている。m=16の場合、ワークwの横断面において外側面が1周当たり16回にわたって波打った形状(振幅は数μmである。)であることを意味している。ワークWの回転周波数q
Wは、例えばワークwの半径r
W、ならびに、調整砥石1の半径r
1および回転周波数q
1に基づき、q
w=(r
2/r
w)q
1と表現される。
【0051】
当該判定結果が否定的である場合(
図3/STEP06‥NO)、荷重Fの測定(
図3/STEP02)以降の処理が繰り返される。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図3/STEP06‥YES)、指定処理部24により指定処理が実行される(
図3/STEP08)。
図6において、例えばf=f
nが指定周波数である場合、f=f
nの成分が閾値A
thを超えているので、当該判定結果は肯定的となる。閾値A
thは、複数の指定周波数のそれぞれについて共通の値であってもよいし異なった値であってもよい。
【0052】
「指定処理」は、指定周波数の成分を閾値以下にするための処理である。具体的には、ワークWの心高(線分O
1−O
2を基準とした点O
Wの高さ)を調節するため、第1駆動機構212に調整砥石1を水平方向に駆動させること、第2駆動機構222に研削砥石2を水平方向に駆動させること、および、第3駆動機構232にワークレスト6を鉛直方向に駆動させることのうち少なくとも1つが指定処理に含まれていてもよい。心高が上下に微調整されることにより、ワークWの横断面における外側面が真円形状に近づくため、指定周波数の成分が閾値以下になる程度まで小さくなる。
【0053】
なお、複数の指定周波数が「第1指定周波数」および「第2指定周波数」のいずれかに分類される場合、第1指定周波数の成分が第1閾値を超えた場合はワークWの心高を低下させる一方、第2指定周波数の成分が閾値を超えた場合はワークWの心高を上昇させるように、第1駆動機構212により調整砥石1が駆動され、かつ、第2駆動機構222により研削砥石2を駆動する制御処理が指定処理に含まれていてもよい。
【0054】
そのほか、第1ドレッシング装置112により調整砥石1がドレッシングされ、これに加えてまたは代えて、第2ドレッシング装置122により研削砥石2がドレッシングされるように、第1ドレッシング装置112および第2ドレッシング装置122を作動させる制御処理が指定処理に含まれていてもよい。ドレッシングにより、研削砥石2の切れ味が復元または向上されると、ワークWの横断面における外側面が真円形状に近づくため、指定周波数の成分が閾値以下になる程度まで小さくなる。