特許第6674441号(P6674441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6674441不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒及びその製造方法並びに不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674441
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒及びその製造方法並びに不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/887 20060101AFI20200323BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20200323BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20200323BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20200323BHJP
   C07C 45/35 20060101ALI20200323BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20200323BHJP
   C07C 51/25 20060101ALI20200323BHJP
   C07C 57/05 20060101ALI20200323BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200323BHJP
【FI】
   B01J23/887 Z
   B01J37/00 E
   B01J37/00 F
   B01J37/02 301D
   B01J37/08
   C07C45/35
   C07C47/22 A
   C07C51/25
   C07C57/05
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-502467(P2017-502467)
(86)(22)【出願日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】JP2016055650
(87)【国際公開番号】WO2016136882
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2018年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-37574(P2015-37574)
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 智志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 元彦
(72)【発明者】
【氏名】平岡 良太
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/181839(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102451710(CN,A)
【文献】 特許第4683508(JP,B2)
【文献】 特開2012−176938(JP,A)
【文献】 特開2012−115825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法であって、下記一般式(1)で表される化合物を調合する工程において、モリブデン成分原料をモリブデン酸アンモニウムのみとし、溶解させる水の重量モリブデン酸アンモニウム中に含まれるモリブデンの重量に対して4.0倍以上8.5倍以下とし、かつビスマス成分原料を硝酸ビスマスのみとし、溶解させる硝酸水溶液の重量硝酸ビスマス中に含まれるビスマスの重量に対して2.3倍以上とし、かつ硝酸ビスマスを溶解させる硝酸水溶液の硝酸濃度10重量%以上とする、不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法
一般式(1)
Mo12 Bi Fe Co Ni
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、a〜gは各成分の原子比率を表し、hは触媒成分の酸化度で決定される数値であり、a=0.40以上0.80未満、b=1.0〜2.5、c=4.5〜7.5、d=1.6〜3.5、e=0〜10、f=0〜10、g=0.015〜0.12であり、hは他の元素の酸化状態を満足させる数値で表記され、d/aが2.0より大きく8.8以下であり、かつd/gが14以上100以下であり、かつa/gが3.5以上53.3未満である。)。
【請求項2】
前記一般式(1)のe及びfが0である、請求項1に記載の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法
【請求項3】
前記一般式(1)の成分を含有するスラリーを乾燥して得られる乾燥粉体を200℃以上600℃以下の温度で焼成して得られた予備焼成粉体を成型し、再度200℃以上600℃以下の温度で焼成する、請求項1または2に記載の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法
【請求項4】
触媒の成型方法が球状担体に触媒活性成分をコーティングする方法であり、得られた触媒の平均粒径3.0mm〜10.0mmとし、触媒活性成分の重量が触媒全体に占める割合20〜80重量%とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法によって製造された触媒を使用する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルケンを酸化触媒の存在下に分子状酸素又は分子状酸素含有ガスにより気相酸化して対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造する際に使用する複合金属酸化物触媒及びその製造方法並びに不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルケンを原料にして対応する不飽和アルデヒド、および不飽和カルボン酸を製造するための触媒の生産および製造は工業的に広く実施されている。なかでもプロピレンを分子状酸素により気相接触酸化して、アクロレイン及びアクリル酸を合成する触媒に関し、従来から数多くの提案がなされている。そのなかで、鉄およびコバルト、ニッケルの原子比率に関する技術が特許文献1に記載されており、コバルトおよび/またはニッケルに対する鉄の原子比率を特定の範囲とすることで活性および選択性を向上させることが出来ることが記載されている。特許文献2には、コバルトおよび/またはニッケルに対する鉄の原子比率を一定にしつつ、コバルトおよびニッケルの原子比率に対するコバルトの原子比率を変化させた触媒を複数調製し、反応器内の2層以上の反応帯に充填して使用する技術が開示されている。特許文献3にはモリブデンの原子比率に対するコバルトの原子比率、鉄の原子比率に対するコバルトの原子比率を特定の値にする非担持リング触媒に関する技術が開示されている。特許文献4にはビスマス原料として三酸化ビスマスまたは次炭酸ビスマスを使用し、超音波で処理して得られる触媒が開示されている。特許文献5には、特定の原子比率を成し、コバルトおよびまたはニッケルのモリブデートを主成分とし第二成分として鉄モリブデートが存在する酸化物において活性および選択性を向上させることが出来ると記載されているが酸化物内には三酸化モリブデンが含まれない限定的なものである。特許文献6には、モリブデンに対するそれぞれの元素の原子比率の最適化に加え、ビスマスの原子比率に対するニッケルの原子比率や、アルカリ金属成分の原子比率に対するニッケルの原子比率、アルカリ金属成分の原子比率に対するビスマスの原子比率を詳細に検討し、その効果を明確にしているが、収率に対する原子比率が及ぼす影響を明確化した検討は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2003−164763号公報
【特許文献2】日本国特開2003−146920号公報
【特許文献3】日本国特表2007−511565号公報
【特許文献4】日本国特開2008−149263号公報
【特許文献5】日本国特許第4683508号
【特許文献6】国際公開第2014/181839号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような手段をもって改良をはかっても、アルケンの部分酸化反応により対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造において、さらなる収率の改善が求められている。例えば、目的生成物の収率は、製造に要するアルケンの使用量を左右し製造コストに多大な影響を与える。また、低い収率で運転を継続することによって副生成物を大量に生成するため精製工程に大きな負荷を与え、精製工程にかかる時間および運転コストが上がってしまう問題が生じる。さらには副生成物の種類によっては、それらは触媒表面や触媒付近のガス流路に堆積する場合もある。これらは触媒表面の必要な反応活性点を被覆してしまうことで触媒の活性を低下させるため、無理やり活性を上げる必要が生じ反応浴温度を上げざるを得なくなる。すると、触媒が熱的ストレスを受けることとなり、寿命の低下やさらなる選択率の低下を引き起こし、収率の低下を招くことにもなる。また、系内に堆積した副生成物により系内圧力の上昇を引き起こすことでも選択率が低下し、収率低下につながることも考えられ、最悪の場合は内部圧力の急上昇によって温度異常をきたし反応が暴走することさえ考えられる。そうなると長期にわたり運転を停止し、系内清掃や触媒交換が必要になることも想定される。そこで、本発明は不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を安全、安価に製造でき目的生成物の収率が高い触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の原子比率を満たす触媒組成であり、かつその触媒の調合においてモリブデン成分原料がモリブデン酸アンモニウムであり、モリブデン酸アンモニウムを溶解する溶媒が水であり、その水の重量と、またビスマス成分原料が硝酸ビスマスであり、硝酸ビスマスを溶解する溶媒が硝酸水溶液であり、その硝酸水溶液の重量と、硝酸水溶液の酸濃度とが、それぞれ特定の範囲を満たし、さらにモリブデン組成比率12に対してビスマスの組成比が0.4以上0.8未満の範囲にて調製された複合金属酸化物触媒が、目的生成物を高選択率かつ高収率で与えるという知見を見いだし、この発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)下記一般式(1)で表される化合物を含有し、下記一般式(1)で表される化合物を調合する工程において、モリブデン成分原料をモリブデン酸アンモニウムのみとし、溶解させる水の重量がモリブデン酸アンモニウム中に含まれるモリブデンの重量に対して4.0倍以上8.5倍以下であり、かつビスマス成分原料を硝酸ビスマスのみとし、溶解させる硝酸水溶液の重量が硝酸ビスマス中に含まれるビスマスの重量に対して2.3倍以上であり、かつ硝酸ビスマスを溶解させる硝酸水溶液の硝酸濃度が10重量%以上である方法によって調製された、不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒、
一般式(1)
Mo12 Bi Fe Co Ni
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、は各成分の原子比率を表し、hは触媒成分の酸化度で決定される数値であり、a=0.40以上0.80未満、b=1.0〜2.5、c=4.5〜7.5、d=1.6〜3.5、e=0〜10、f=0〜10、g=0.015〜0.12であり、hは他の元素の酸化状態を満足させる数値で表記され、d/aが2.0より大きく8.8以下であり、かつd/gが14以上100以下であり、かつa/gが3.5以上53.3未満である。)
(2)前記一般式(1)のe及びfが0である(1)に記載の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒、
(3)前記一般式(1)の成分を含有するスラリーを乾燥して得られる乾燥粉体を200℃以上600℃以下の温度で焼成して得られた予備焼成粉体を成型し、再度200℃以上600℃以下の温度で焼成した(1)または(2)に記載の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒、
(4)触媒の成型方法が球状担体に触媒活性成分をコーティングする方法であり、得られた触媒の平均粒径が3.0mm〜10.0mmであり、触媒活性成分の重量が触媒全体に占める割合が20〜80重量%である(1)〜(3)のいずれか一つに記載の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒、
(5)(1)〜(4)のいずれか一つに記載の不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸製造用触媒の製造方法であって、前記一般式(1)で表される化合物を調合する工程において、モリブデン成分原料をモリブデン酸アンモニウムのみとし、溶解させる水の重量をモリブデン酸アンモニウム中に含まれるモリブデンの重量に対して4.0倍以上8.5倍以下とし、かつビスマス成分原料を硝酸ビスマスのみとし、溶解させる硝酸水溶液の重量を硝酸ビスマス中に含まれるビスマスの重量に対して2.3倍以上とし、かつ硝酸ビスマスを溶解させる硝酸水溶液の硝酸濃度を10重量%以上とする触媒の製造方法
(6)(1)〜(4)のいずれか一つに記載の触媒を使用する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、アルケンから対応する不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸を製造するための選択性および目的生成物の収率が高い触媒を得ることができる。それによって安全かつ安定に低コストで長期運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例及び比較例における各触媒のプロピレン転化率(%)に対する有効収率(%)を示す図である。
図2】実施例における各触媒のプロピレン転化率(%)に対する有効収率(%)及び比較例1の触媒と同じ原子比率を有する触媒における焼成温度、反応浴温度を変化させて評価したプロピレン転化率(%)に対する有効収率(%)のプロットの線形近似曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
下記一般式(1)で表わされる本発明の触媒は以下の工程を経ることで調製することが出来る。
一般式(1)
Mo12 Bi Fe Co Ni
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、は各成分の原子比率を表し、hは触媒成分の酸化度で決定される数値であり、a=0.40以上0.80未満、b=1.0〜2.5、c=4.5〜7.5、d=1.6〜3.5、e=0〜10、f=0〜10、g=0.015〜0.12であり、hは他の元素の酸化状態を満足させる数値で表記され、d/aが2.0より大きく8.8以下であり、かつd/gが14以上100以下であり、かつa/gが3.5以上53.3未満である。好ましくは、a=0.45以上0.75未満、b=1.5〜2.4、c=4.7〜7.0、d=1.8〜3.2、e=0〜10、f=0〜10、g=0.02〜0.11であり、hは他の元素の酸化状態を満足させる数値で表記され、d/aが2.5より大きく7.0以下であり、かつd/gが20以上90以下であり、かつa/gが5以上25未満である。)
【0010】
工程a)調合
本発明においては、触媒を構成する各元素の出発原料は、モリブデン成分原料としてはモリブデン酸アンモニウムを使用した場合に高性能触媒が得られる。特にモリブデン酸アンモニウムには、ジモリブデン酸アンモニウム、テトラモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム等、複数種類の化合物が存在するが、その中でもヘプタモリブデン酸アンモニウムを使用した場合が最も好ましい。ビスマス成分原料としては硝酸ビスマスを使用した場合に高性能な触媒が得られる。鉄、コバルト、ニッケル及びその他の元素の原料としては通常は酸化物あるいは強熱することにより酸化物になり得る硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、水酸化物等又はそれらの混合物を用いることができる。例えば、鉄成分原料とコバルト成分原料及び/又はニッケル成分原料を所望の比率で10〜80℃の条件下にて水に溶解混合し、20〜90℃の条件下にて別途調合されたモリブデン成分原料およびZ成分原料水溶液もしくはスラリーと混合し、20〜90℃の条件下にて1時間程度加熱撹拌した後、ビスマス成分原料を溶解した水溶液と、必要に応じX成分原料、Y成分原料とを添加して触媒成分を含有する水溶液またはスラリーを得る。以降、両者をまとめて調合液(A)と称する。
【0011】
ここで、調合液(A)は必ずしもすべての触媒構成元素を含有する必要は無く、その一部の元素または一部の量を以降の工程で添加してもよい。また、調合液(A)を調合する際に各成分原料を溶解する水の量や、また硫酸や硝酸、塩酸、酒石酸、酢酸などの酸を加える場合には、原料を溶解するのに十分な水溶液中の酸濃度が例えば5重量%〜99重量%の範囲の中で適する値を選択していなければ調合液(A)の適度な粘度を得ることができず、安定生産の点で好ましくない。特にモリブデン成分原料を溶解させるにあたっては、モリブデン成分原料をモリブデン酸アンモニウムのみとし、溶解させる水の重量がモリブデン酸アンモニウム中に含まれるモリブデンの重量に対して4.0倍以上8.5倍以下であり、かつビスマス成分原料を溶解させるにあたっては、ビスマス成分原料を硝酸ビスマスのみとし、溶解させる硝酸水溶液の重量が硝酸ビスマス中に含まれるビスマスの重量に対して2.3倍以上であり、かつ硝酸ビスマスを溶解させる硝酸水溶液の硝酸濃度が10重量%以上である。それによって得られる調合液(A)の形態としては水溶液またはスラリーであることが、優れた触媒が得られる点で好ましい。モリブデン酸アンモニウムを溶解させる水の量は、溶解させる水の重量がモリブデン酸アンモニウム中に含まれるモリブデンの重量に対して4.0倍未満の場合モリブデン酸アンモニウムが十分に溶解し均一なスラリーを形成しない上、粘度が高すぎるため製造上好ましくない。
【0012】
ここで、構成元素比としては、触媒主成分の一つであるビスマスと、活性に大きく影響を及ぼすニッケルおよびアルカリ金属の比率が重要であり、ビスマスに対するニッケルの比率であるd/aが2.0より大きく8.8以下であり、かつアルカリ金属に対するニッケルの比率であるd/gが14以上100以下であり、かつアルカリ金属に対するビスマスの比率であるa/gが3.5以上53.3未満であることにより、目的生成物の選択性と収率が高い優れた触媒となる。また、ビスマスの量を0.40以上0.80未満、好ましくは0.45以上から0.75未満にすることにより高い収率が得られる。この効果はその充填方法にもよらず、例えば単一層の充填でもよく、反応効率や温度分布のバランス等を考慮するためにそれらを多層充填することや、多層では他の組成の触媒と組み合わせて充填しても得られる。また、単一層充填、多層充填のいずれかまたはすべての層において必要があれば不活性物質と混合および/または粒径を調製することで対応することもできる。
【0013】
工程b)乾燥
次いで上記で得られた調合液(A)を乾燥し、乾燥粉体とする。乾燥方法は、調合液(A)を完全に乾燥できる方法であれば特に制限はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固等が挙げられる。これらのうち本発明においては、スラリーから短時間に粉体又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が特に好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリーの濃度、送液速度等によって異なるが概ね乾燥機の出口における温度が70〜150℃である。また、この際得られる乾燥粉体の平均粒径が10〜700μmとなるよう乾燥することが好ましい。こうして乾燥粉体(B)を得る。
【0014】
工程c)予備焼成
得られた乾燥粉体(B)は空気流通下で200℃から600℃で、好ましくは300℃から600℃で焼成することで触媒の成型性、機械的強度、触媒性能が向上する傾向がある。焼成時間は1時間から12時間が好ましい。こうして予備焼成粉体(C)を得る。
【0015】
工程d)成型
成型方法に特に制限はないが円柱状、リング状に成型する際には打錠成型機、押し出し成型機などを用いた方法が好ましい。さらに好ましくは、球状に成型する場合であり、成型機で予備焼成粉体(C)を球形に成型しても良いが、予備焼成粉体(C)(必要により成型助剤、強度向上剤を含む)を不活性なセラミック等の担体に担持させる方法が好ましい。ここで担持方法としては転動造粒法、遠心流動コーティング装置を用いる方法、ウォッシュコート方法等が広く知られており、予備焼成粉体(C)が担体に均一に担持できる方法で有れば特に限定されないが、触媒の製造効率や調製される触媒の性能を考慮した場合、より好ましくは固定円筒容器の底部に、平らな、あるいは凹凸のある円盤を有する装置で、円盤を高速で回転させることにより、容器内にチャージされた担体を、担体自体の自転運動と公転運動により激しく撹拌させ、ここに予備焼成粉体(C)並びに必要により、成型助剤および/または強度向上剤、細孔形成剤を添加することにより粉体成分を担体に担持させる方法が好ましい。尚、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。用いうるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニルアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等がより好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成型性が良好となり、機械的強度の高い、高性能触媒が得られ、具体的にはグリセリンの濃度5重量%以上の水溶液を使用した場合に特に高性能触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉体(C)100重量部に対して通常2〜80重量部である。不活性担体は、通常2〜8mm程度のものを使用し、これに予備焼成粉体(C)を担持させるが、その担持率は触媒使用条件、たとえば反応原料の空間速度、原料濃度などの反応条件を考慮して決定されるものであるが、通常20重量%から80重量%である。ここで担持率は以下の式(3)で表記される。こうして成型体(D)を得る。成形体(D)は工程e)の本焼成前に乾燥させ、使用したバインダーの一部を蒸発させることもできる。
【0016】
式(3)
担持率(重量%)
=100×〔成型に使用した予備焼成粉体(C)の重量/(成型に使用した予備焼成粉体(C)の重量+成型に使用した不活性担体の重量+成型に使用した成型助剤と強度向上剤の重量)〕
【0017】
工程e)本焼成
成型体(D)は200〜600℃の温度で1〜12時間程度焼成することで触媒活性、有効収率が向上する傾向にある。焼成温度は400℃以上600℃以下が好ましく、500℃以上600℃以下がより好ましい。流通させるガスとしては空気が簡便で好ましいが、その他に不活性ガスとして窒素、二酸化炭素、還元雰囲気にするための窒素酸化物含有ガス、アンモニア含有ガス、水素ガスおよびそれらの混合物を使用することも可能である。こうして触媒(E)を得る。焼成温度を高くすることで適宜活性を抑制することができる。そのような触媒は、例えばホットスポットが発生するような原料ガス入口側で使用することができる。
【0018】
この発明によって得られる複合酸化物触媒を使用するアルケンの気相接触酸化反応は、原料ガス組成として1〜12体積%のアルケン、5〜18体積%の分子状酸素、0〜60体積%の水蒸気及び20〜70体積%の不活性ガス、例えば窒素、炭酸ガスなどからなる混合ガスを前記のようにして調製された触媒上に250〜450℃の温度範囲及び常圧〜10気圧の圧力下、300〜10000hr-1の空間速度で導入することによって遂行される。本発明において、アルケンとは、その分子内脱水反応においてアルケンを生じるアルコール類、例えばターシャリーブタノールも含めたものとする。
【0019】
本発明の触媒は、不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造に使用することができる。具体的には、プロピレンを分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化しアクロレインおよびアクリル酸を製造する方法や、イソブチレンおよび/またはターシャリーブチルアルコールを分子状酸素または分子状酸素含有ガスにより気相接触酸化してメタクロレインおよびメタクリル酸を製造する方法に使用することができる。その中でも、アクロレインおよびアクリル酸の製造に使用することが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、具体例を挙げて実施例を示したが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り実施例に限定されるものでは無い。
【0021】
実施例1
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4重量部を60℃に加温した純水715mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水97.1mlに硝酸(60重量%)23.3重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス91.6重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度530℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒1を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒1の原子比率はd/a=6.0、d/g=37.5、a/g=6.3、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.50:2.0:6.5:3.0:0.08
【0022】
実施例2
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.2重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物259.3重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物263.5重量部を60℃に加温した純水655.7mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度540℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒2を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒2の原子比率はd/a=3.4、d/g=40、a/g=12、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:1.7:6.5:2.4:0.06
【0023】
実施例3
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物289.8重量部、硝酸コバルト六水和物692.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物252.5重量部を60℃に加温した純水654.4mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度530℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒3を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒3の原子比率はd/a=3.3、d/g=29、a/g=9、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:1.9:6.3:2.3:0.08
【0024】
実施例4
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸ルビジウム1.1重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4重量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒4を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒4の原子比率はd/a=4.3、d/g=75、a/g=18、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Rb=12:0.70:2.0:6.5:3.0:0.04
【0025】
実施例5
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸セシウム2.9重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.6重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4重量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒5を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒5の原子比率はd/a=4.3、d/g=75、a/g=18、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.7:2.0:6.5:3.0:0.04
【0026】
実施例6
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4重量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒6を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒6の原子比率はd/a=4.3、d/g=38、a/g=9、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.0:6.5:3.0:0.08
【0027】
実施例7
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム1.4重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物324.9重量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒7を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒7の原子比率はd/a=4.3、d/g=75、a/g=18、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.0:6.5:3.0:0.04
【0028】
実施例8
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物259.3重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物263.5重量部を60℃に加温した純水655.7mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒8を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒8の原子比率はd/a=3.4、d/g=30、a/g=9、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:1.7:6.5:2.4:0.08
【0029】
実施例9
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム3.7重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物350.8重量部、硝酸コバルト六水和物538.5重量部及び硝酸ニッケル六水和物263.5重量部を60℃に加温した純水611.0mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒9を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒9の原子比率はd/a=3.4、d/g=24、a/g=7、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.3:4.9:2.4:0.1
【0030】
実施例10
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム3.7重量部を純水42mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物259.3重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物324.9重量部を60℃に加温した純水690.6mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒10を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒10の原子比率はd/a=4.3、d/g=30、a/g=7、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:1.7:6.5:3.0:0.1
【0031】
実施例11
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム3.7重量部を純水42mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物350.8重量部、硝酸コバルト六水和物549.5重量部及び硝酸ニッケル六水和物263.5重量部を60℃に加温した純水616.8mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、本発明の平均粒径5.2mmの球状触媒11を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒11の原子比率はd/a=3.4、d/g=24、a/g=7、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.3:5.0:2.4:0.1
【0032】
比較例1
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム3.7重量部を純水42mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物274.6重量部、硝酸コバルト六水和物571.5重量部及び硝酸ニッケル六水和物307.4重量部を60℃に加温した純水611.4mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水330.1mlに硝酸(60重量%)79.3重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス311.4重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度550℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒12を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒12の原子比率はd/a=1.6、d/g=28、a/g=17、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.7:1.8:5.2:2.8:0.1
【0033】
比較例2
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸セシウム2.9重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4重量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水174.7mlに硝酸(60重量%)42.0重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス164.8重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度540℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒13を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒13の原子比率はd/a=3.3、d/g=75、a/g=23、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.9:2.0:6.5:3.0:0.04
【0034】
比較例3
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム1.0重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物259.3重量部、硝酸コバルト六水和物769.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物219.6重量部を60℃に加温した純水661.6mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水194.2mlに硝酸(60重量%)46.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス183.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度540℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒14を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒14の原子比率はd/a=2、d/g=67、a/g=33、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.0:1.7:7.0:2.0:0.03
【0035】
比較例4
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム19.0重量部を純水200mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4重量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水97.1mlに硝酸(60重量%)23.3重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス91.6重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒15を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒15の原子比率はd/a=6.0、d/g=6、a/g=1、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.5:2.0:6.5:3.0:0.5
【0036】
比較例5
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸セシウム1.5重量部を純水200mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物259.3重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物263.5重量部を60℃に加温した純水680.0mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水97.1mlに硝酸(60重量%)23.3重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒16を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒16の原子比率はd/a=3.4、d/g=120、a/g=35、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:Cs=12:0.7:1.7:6.5:2.4:0.02
【0037】
比較例6
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム7.5重量部を純水200mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4重量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒17を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒17の原子比率はd/a=4.3、d/g=15、a/g=4、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.0:6.5:3.0:0.2
【0038】
比較例7
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4重量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水165.0mlに硝酸(60重量%)39.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス155.7重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒18を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒18の原子比率はd/a=3.3、d/g=38、a/g=11、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:2.0:6.5:3.0:0.08
【0039】
比較例8
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物263.5重量部を60℃に加温した純水680.0mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水242.7mlに硝酸(60重量%)58.3重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス228.9重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒19を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒19の原子比率はd/a=1.8、d/g=30、a/g=16、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:1.3:2.0:6.5:2.4:0.08
【0040】
比較例9
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム1.8重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物149.5重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物263.5重量部を60℃に加温した純水680.0mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒20を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒20の原子比率はd/a=3.4、d/g=48、a/g=14、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:0.9:6.5:2.4:0.05
【0041】
比較例10
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム1.4重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物228.8重量部、硝酸コバルト六水和物769.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物131.8量部を60℃に加温した純水598.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒21を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒21の原子比率はd/a=1.7、d/g=30、a/g=18、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:1.5:7.0:1.2:0.04
【0042】
比較例11
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム重量1.4部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物442.4重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水787.7mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒22を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒22の原子比率はd/a=4.3、d/g=75、a/g=18、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.9:6.5:3.0:0.04
【0043】
比較例12
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム5.6重量部を純水65mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水97.1mlに硝酸(60重量%)23.3重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス91.6重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒23を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒23の原子比率はd/a=6、d/g=20、a/g=3、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.5:2.0:6.5:3.0:0.15
【0044】
比較例13
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム7.5重量部を純水85mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水97.1mlに硝酸(60重量%)23.3重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス91.6重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒24を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒24の原子比率はd/a=6、d/g=15、a/g=2.5、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.5:2.0:6.5:3.0:0.20
【0045】
比較例14
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム5.6重量部を純水65mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水680.0mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒25を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒25の原子比率はd/a=4.3、d/g=20、a/g=5、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.0:6.5:3.0:0.15
【0046】
比較例15
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水58.2mlに硝酸(60重量%)14.0重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス54.9重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒26を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒26の原子比率はd/a=10、d/g=38、a/g=4、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.3:2.0:6.5:3.0:0.08
【0047】
比較例16
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム1.2重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物439.2量部を60℃に加温した純水773.1mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒27を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒27の原子比率はd/a=5.7、d/g=114、a/g=20、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.0:6.5:4.0:0.035
【0048】
比較例17
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を9重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス91.6重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒28を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒28の原子比率はd/a=6、d/g=38、a/g=6、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.5:2.0:6.5:3.0:0.08
触媒28は実施例1の硝酸濃度を変更することによって得たが、実施例1に比べて大幅に活性が低下してしまった。
【0049】
比較例18
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水714.9mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水63.1mlに硝酸(60重量%)15.8重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2倍の重量)に硝酸ビスマス91.6重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒29を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒29の原子比率はd/a=6、d/g=38、a/g=6、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.5:2.0:6.5:3.0:0.08
触媒29は実施例1の硝酸溶液重量を変更することによって得たが、実施例1に比べて大幅に活性が低下してしまった。
【0050】
比較例19
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3912重量部(モリブデンの重量に対し9.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム2.9重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水680.0mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水97.1mlに硝酸(60重量%)23.3重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス91.6重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒30を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒30の原子比率はd/a=6、d/g=38、a/g=6、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.5:2.0:6.5:3.0:0.08
触媒30は実施例1のモリブデン酸アンモニウムを溶解する水の量を増加させて得たが、実施例1に比べて大幅に活性が低下してしまった。
【0051】
比較例20
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム0.2重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物714.4重量部及び硝酸ニッケル六水和物219.6量部を60℃に加温した純水680.0mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水77.7mlに硝酸(60重量%)18.7重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス73.3重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒31を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒31の原子比率はd/a=5、d/g=200、a/g=40、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.4:2.0:6.5:2.0:0.01
【0052】
比較例21
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム1.4重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物901.2重量部及び硝酸ニッケル六水和物263.5量部を60℃に加温した純水779.0mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水174.7mlに硝酸(60重量%)42重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス164.8重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒32を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒32の原子比率はd/a=2.7、d/g=60、a/g=23、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.9:2.0:8.2:2.4:0.04
【0053】
比較例22
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム1.4重量部を純水30mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物439.6重量部及び硝酸ニッケル六水和物329.4量部を60℃に加温した純水569.3mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒33を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒33の原子比率はd/a=4.3、d/g=75、a/g=18、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.0:4.0:3.0:0.04
【0054】
比較例23
ヘプタモリブデン酸アンモニウム四水和物800重量部を60℃に加温した純水3040重量部(モリブデンの重量に対し7.0倍の重量)に完全溶解させた。次に、硝酸カリウム1.4重量部を純水100mlに溶解させて、上記溶液に加えた。次に、硝酸第二鉄九水和物305.1重量部、硝酸コバルト六水和物879.3重量部及び硝酸ニッケル六水和物324.9量部を60℃に加温した純水802.3mlに溶解させた。これらの溶液を、撹拌しながら徐々に混合した。続いて純水135.9mlに硝酸(60重量%)32.6重量部を加えて硝酸濃度を12重量%とした硝酸水溶液(溶解させる硝酸ビスマス五水和物中のビスマスの重量に対し2.3倍以上の重量)に硝酸ビスマス128.2重量部を加え完全溶解させた溶液を上記溶液に加え、撹拌混合した。このスラリーをスプレードライ法にて乾燥し、得られた乾燥粉体を最高温度440℃で4時間保持するよう予備焼成した。予備焼成粉体に対して5重量%分の結晶性セルロースを添加し、十分混合した後、転動造粒法にてバインダーとして30重量%グリセリン溶液を用い、不活性の球状担体に、担持率が50重量%となるように球状に担持成型した。次に最高温度520℃で4時間保持されるよう焼成を行って、比較用の平均粒径5.2mmの球状触媒34を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比率を有する複合金属酸化物であった。
球状触媒34の原子比率はd/a=4.3、d/g=75、a/g=18、
Mo:Bi:Fe:Co:Ni:K=12:0.7:2.0:8.0:3.0:0.04
【0055】
これより、プロピレンの酸化反応の結果を示すが、ここでプロピレン転化率、アクロレイン収率、アクリル酸収率、有効収率の定義とは、次の通りである。
プロピレン転化率(モル%)
=(反応したプロピレンのモル数/供給したプロピレンのモル数)×100
アクロレイン収率(モル%)
=(生成したアクロレインのモル数/供給したプロピレンのモル数)×100
アクリル酸収率(モル%)
=(生成したアクリル酸のモル数/供給したプロピレンのモル数)×100
有効収率(モル%)
=アクロレイン収率+アクリル酸収率
【0056】
(反応条件)
上記のようにして調製した球状触媒1〜触媒34を使用して、プロピレンの酸化反応を実施し、プロピレン転化率、アクロレイン収率、アクリル酸収率、有効収率を求めた。触媒67.7mlを内径28.4mmのステンレス鋼製反応管に充填し、プロピレン8体積%、空気67体積%、水蒸気25体積%の混合ガスを約860hr−1の空間速度で導入し、プロピレンの酸化反応を実施して有効収率が最大となるときの反応浴温度およびプロピレン転化率を求め、表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
触媒の活性は、転化率が上昇すれば有効収率も同時に上昇する為、転化率に応じた有効収率によって比較する。図1に実施例と比較例の各触媒のプロピレン転化率に対する有効収率を示した。比較例の中で、プロピレン転化率に対して高い有効収率を示すプロットをつないだところ、性能が良好な実施例の触媒はいずれも、同じプロピレン転化率におけるこの曲線上の有効収率よりも高い有効収率を示し、比較例に対して優位な活性を有していることが確認された。
【0059】
また、比較例1にあたる球状触媒12と同じ原子比率の組成からなる触媒について、様々な焼成温度および反応浴温度にて評価を実施した。これらのプロピレン転化率に対する有効収率のプロットの線形近似曲線を図2に実施例と共に示した。性能が良好な実施例の触媒はいずれも、同じプロピレン転化率におけるこの曲線上の有効収率よりも高い有効収率を示し、優位な活性を有していた。換言すると、本願触媒組成の範囲から外れる触媒は、焼成条件や反応浴温度条件を変化させても、本願触媒のようなプロピレン転化率に対する優れた有効収率を示さなかった。
【0060】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願は、2015年2月27日付で出願された日本国特許出願(2015−037574)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の触媒は、不飽和アルデヒドおよび/または不飽和カルボン酸の製造に有用である。
図1
図2