(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程a)において、前記階層的多孔性を有する少なくとも1つのFAUゼオライトを、除去されるものである犠牲テンプレートの存在下で調製する、請求項6に記載の方法。
使用した凝集バインダーおよびゼオライトの割合が、ゼオライト92重量部から85重量部につき、バインダー8重量部から15重量部である、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
前記バインダーが、カオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリン、ならびにまたあらゆる割合のこれらの粘土の2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
パラキシレン吸着剤として、請求項1から5のいずれか一項に記載のゼオライト吸着材料を使用して、炭素原子8個を含有する芳香族異性体画分からパラキシレンを分離する方法である、請求項14に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
芳香族炭化水素の混合物中のパラキシレンを選択的に吸着するための、XまたはY型の少なくとも1つのフージャサイト(FAU)ゼオライトを含み、ナトリウムカチオン以外にバリウムイオン、カリウムイオンまたはストロンチウムイオンを単独でまたは混合物として含む、ゼオライト吸着材料の使用が先行技術において周知である。
【0004】
特許US3558730、US3558732、US3626020およびUS3663638によって、ナトリウムおよびバリウムを主成分とする(US3960774)またはナトリウム、バリウムおよびカリウムを主成分とするアルミノシリケートを含むゼオライト吸着材料が、芳香族C8画分(炭素原子8個を含有する芳香族炭化水素を含む画分)中に存在するパラキシレンを分離するのに有効であることが示されている。
【0005】
特許US3878127に記載された吸着材料は、特許US2985589に記載された吸着材料と同様であり、特に芳香族C8画分に適用される、好ましくは疑似向流型の液相法における吸着材料として使用される。
【0006】
上に挙げた特許において、ゼオライト吸着材料は、主としてゼオライト粉末と、20重量%までの不活性バインダーから成る、粉末形態の結晶の形態または凝集体の形態である。
【0007】
FAUゼオライトの合成は通常、アルミノシリケートゲルの核化および結晶化によって行う。この合成により、工業規模での使用が特に困難である(取り扱い中の実質的な圧力損失)(一般に粉末形態の)結晶が生じる。これらの結晶の、細粒、ヤーンおよび他の凝集体の形態の凝集形態がこのため好ましく、これらの前記形態は、おそらく、押出、ペレット化、アトマイズ化および当業者に既知の他の凝集技法によって得られる。これらの凝集体は、粉状物質に固有の欠点を有さない。
【0008】
さらに、ゼオライト結晶は通常、ナトリウム水溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)から調製され、所望である場合には、ナトリウムカチオンは、他のカチオン、例えばバリウムまたはバリウムおよびカリウムによって完全にまたは部分的に置換(交換)されてよい。これらのカチオン交換は、当業者に既知の標準技法に従って、粉状ゼオライトの凝集前および/または後に、凝集バインダーによって行ってよい。
【0009】
凝集体は、プレートレット、ビーズまたは押出物などの形態にかかわらず、一般に、(吸着に関して)有効成分を構成するゼオライト結晶と、凝集バインダーとから成る。この凝集バインダーは、凝集構造において結晶を確実に相互に結合させるものであるが、凝集体が制約、例えば振動、圧力下での大規模および/または頻繁な変化、移動などの多くの制約を受ける工業使用の間に発生し得る、破断、亀裂または破損を回避または極めて少なくとも最小化するために、前記凝集体の十分な機械的強度の確保も可能にすべきである。
【0010】
これらの凝集体の調製は例えば、粉末形態のゼオライト結晶を粘土ペーストによって、20重量%から10重量%のバインダーにつき約80重量%から90重量%のゼオライト粉末の割合でスラリー化して、続いてビーズ、プレートレットまたは押出物に形成し、高温での熱処理で粘土を焼成してゼオライトを再活性化し、可能な場合は粉状ゼオライトのバインダーによる凝集の前および/または後に、カチオン交換、例えばバリウムとの、および場合によりカリウムとの交換を行うことによって行われる。
【0011】
粒径が2、3ミリメートルまたはさらにおよそ1ミリメートルであるゼオライト物質が得られ、該ゼオライト物質は、凝集バインダーおよび造粒の選択が当分野の規則内で行われれば、一連の満足な性質、特に多孔性、機械的強度および耐摩耗性を有する。しかし、これらの凝集体の吸着性質は、出発活性粉末と比較した場合、吸着に関して不活性である凝集バインダーが存在するために、明らかに低下する。
【0012】
吸着性能に対して不活性である凝集バインダーのこの欠点を克服するための各種の手段がすでに提案され、この中には、凝集バインダーの全部または少なくとも一部を吸着の点から活性であるゼオライトに変換することがある。この操作は、例えば「ゼオライト化」という名称で現在、当業者に周知である。この操作をただちに行うために、通常、カオリナイト群に属し、好ましくは一般に500℃から700℃の間の温度にて事前に焼成される、ゼオライト化可能バインダーを使用する。
【0013】
特許出願FR2789914は、ゼオライトX結晶を、シリカおよびカルボキシメチルセルロース源であるバインダーで凝集させ、続いて凝集体をアルカリ液に浸漬してバインダーをゼオライト化することによって、1.15から1.5の間のSi/Al原子比を有し、バリウム、場合によりカリウムで交換されたゼオライトX凝集体を製造する方法について記載している。ゼオライトのカチオンをバリウムイオン(場合によりカリウムイオン)と交換して活性化した後、このように得た凝集体は、芳香族C8画分に含有されるパラキシレンの吸着の観点から、同量のゼオライトXおよび同量のゼオライト化されていないバインダーから調製した吸着材料と比較した場合、改善された性質を有する。
【0014】
特許US7812208(UOP)は、「バインダーレス」型の、即ち非晶質物質を含まない、またはゼオライトXに対して2重量%未満の量の非晶質物質を含み、1.8μm未満の平均結晶径を有する吸着材料を使用する、芳香族画分に含有されたパラキシレンを分離する方法について記載している。これらの吸着材料は、バインダーのゼオライト化工程の後に得られる。
【0015】
これらの吸着材料は、改善された移動および吸着性質を有し、非晶質または非ゼオライト物質を含有しないか、または2重量%未満、通常、0.5重量%未満の量でのみ含有する。他方、このような「バインダーレス」粒子の機械的強度に関する情報は与えられていない。前記文献は、バインダーのゼオライトへの完全変換によって、吸着能力を最大化できることを教示している。しかし、この場合、機械的性質が必ずしも保存または最適化されるとは思えない。
【0016】
このことは例えば特許出願FR2999098によって確認され、FR2999098は、典型的には、サイズが1.7μm未満の小型結晶を有するゼオライトXを主成分とし、パラキシレンに対する最大の選択性を示す性質および物質移動の性質を有する、凝集ゼオライト吸着材料について記載している。この種の吸着材料では、最大の機械的強度と最適化吸着能力との妥協点が課される。実施例に照らして、最適なゼオライト化の後でも、出発ゼオライト結晶のサイズが小さいほど(例えば0.8μm)、凝集吸着材料の機械的強度が弱くなるということも生じる。
【0017】
先行技術に記載された調製方法は、サイズの小さい結晶(<0.5μm)の結晶性を潜在的に劣化させることに加え、追加コストも伴う、追加のゼオライト化工程を含む。
【0018】
RuthvenによってPrinciples of Adsorption and Adsorption Processes,John Wiley&Sons,(1984),pages 326 and 407という表題の書籍で指摘されるように、反応混合物から分離される種に対する高い吸着能力および良好な選択性を示す性質に加えて、吸着材料は、混合物中の種の効率的な分離を行うために、十分な数の理論的プレートを確保するための良好な物質移動の性質を有する必要がある。Ruthvenは(ibid.,page 243)、凝集吸着材料の場合、全体の物質移動が結晶内拡散抵抗および結晶間の拡散抵抗の追加に依存することを指摘している。
【0019】
結晶内拡散抵抗は、結晶の直径の二乗に比例し、分離される分子の結晶内拡散率に反比例する。
【0020】
結晶間の拡散抵抗(「マクロ細孔抵抗」としても既知)自体は、凝集体の直径の二乗に比例し、凝集体内のマクロ細孔およびメソ細孔(即ち開口が2nmを超える細孔)に含有される多孔率に反比例し、この多孔率において分離される分子の拡散率に反比例する。
【0021】
凝集体のサイズが工業用途での吸着材料の使用中の重要なパラメータであるのは、該サイズによって工業ユニット内での圧力損失および充填均一性が決定されるためである。凝集体の粒径分布はこのため、狭くあるべきであり、過剰な圧力損失を回避するために、典型的には、0.40mmから0.65mmの間の数平均径に集中すべきである。
【0022】
マクロ細孔およびメソ細孔に含有される多孔率は、物質移動を改善するための細孔形成剤、例えば文献US8283274で推奨されているようなコーンスターチを使用することによって向上され得る。しかし、この多孔率は吸着能力に関与せず、結果として、マクロ細孔物質移動の改善は次いで、容積吸着能力の劣化をもたらす。結果として、このマクロ細孔物質移動を改善する手法は、非常に限定的であることが判明する。
【0023】
移動反応速度の改善を概算するために、RuthvenがPrinciples of Adsorption and Adsorption Processes,ibid.,pages 248−250に記載するプレート理論を使用することができる。この手法は、有限数の理想的撹拌仮想反応装置(理論段階)によるカラムによる表現に基づいている。同じ高さの理論プレートは、系の軸分散および物質移動に対する抵抗の直接測定値である。
【0024】
所与のゼオライト構造、所与のサイズの吸着材料および所与の動作温度では、拡散率が一定であり、物質移動を改善する手段の1つが結晶の直径を縮小することに存する。物質移動全体の増大はこのため、結晶のサイズを縮小することによって得られる。
【0025】
当業者はこのため、物質移動を改善するためにゼオライト結晶の直径を最小化しようとする。
【0026】
特許CN1267185Cはこのため、パラキシレンを分離するための、90%から95%のゼオライトBaXまたはBaKXを含有する吸着材料であって、ゼオライトX結晶のサイズが、物質移動の性能を改善するために、0.1μmから0.4μmの間である、吸着材料を請求している。同様に、特許出願US2009/0326308は、性能が0.5μm未満のゼオライトX結晶を主成分とする吸着材料を使用することによって改善される、キシレン異性体を分離する方法について記載している。
【0027】
出願人は、それにもかかわらず、サイズが0.5μm未満であるゼオライト結晶の合成、濾過、取り扱いおよび凝集には、面倒で不経済な工程が含まれ、ゆえに工業化が困難であることを認めている。
【0028】
さらに、サイズが0.5μm未満の結晶を含むこのような吸着材料は、より脆弱であることも判明し、次いで、吸着材料内の結晶の結合を補強するために凝集バインダーの含有率を上昇させることが必要となる。しかし、凝集バインダーの含有率を増加させると、吸着材料の高密度化につながり、これはマクロ細孔拡散抵抗の上昇の原因となる。このため、結晶のサイズの縮小による結晶内拡散抵抗の低下にもかかわらず、吸着材料の高密度化によるマクロ細孔拡散抵抗の上昇によって、全体の移動は改善されない。
【0029】
さらに、バインダー含有率の上昇によって、良好な吸着能力を得ることはできない。
【0030】
最終吸着能力は、先行技術で教示されているように、吸着材料の凝集バインダーのゼオライト化を行うことによって改善することができる。
【0031】
しかし、このバインダー変換工程の有益効果は、出発ナノ結晶の結晶性の低下によって大幅に損なわれることがあり、この低下はこのゼオライト化工程中に使用される塩基性溶液によって引き起こされている。
【0032】
疑似向流型の液相分離の良好な性能を確保するために必要である吸着材料の第3の性質は、良好な機械的強度を有することである。特に、この種の方法の標準動作条件下では、高い機械的応力が、粒子の形成を伴って工業ユニット内の吸着材料に印加され、性能の低下を誘発し(例えばPrimary Analysis on State of Xylene Adsorption Unit,Li et al.,Jingxi Shiyou Huagong,2004,(4),54−55を参照のこと。)、さらにこのような場合には、吸着材料の機械的強度がより低くなる。
【0033】
しかし、先行技術FR2999098によって、小型サイズの結晶(例えば0.8μm)を使用する場合、機械的強度も、ゼオライト化工程にもかかわらず、低下する。当業者はこのため、機械的強度を改善するために結晶のサイズを大きくする傾向がある。
【0034】
要するに、キシレンの分離について、先行技術により:
−1)物質移動を改善するために、結晶のサイズを縮小すること、
−2)および/または細孔形成剤を使用することによってマクロ多孔性を上昇させること、および
−3)機械的強度を上昇させ、吸着能力を最大化するために、バインダーをゼオライト化すること
が必要であることが示されている。
【0035】
このため、以下の性質すべてを兼ね備えた吸着材料を得ることは困難と思われる:
−吸着材料内での考えられる最速の物質移動、即ち考えられる最小の、理想的には本質的にゼロまたはさらにゼロの物質移動に対する抵抗、
−最適な機械的粉砕強度、
−考えられる最大の吸着能力(即ち、可能な限り大きいゼオライト含有率(吸着目的の活性結晶相))。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下のテキストでは、別途指摘しない限り、値の範囲の制限は、この範囲に、とりわけ「の間」および「...から...まで」という表現に含まれる。
【0042】
「階層的多孔性を有するゼオライト」という用語は、ミクロ細孔およびメソ細孔の両方を含有するゼオライト、即ちミクロ多孔性およびメソ多孔性の両方であるゼオライトを意味する。「メソ細孔性ゼオライト」という用語は、ミクロ多孔性ゼオライト結晶が、ミクロ細孔性と併せて、例えばUS7785563に記載されているように、透過型電子顕微鏡(TEM)によってただちに同定可能である、ナノメートルサイズの内部空洞を有する(メソ細孔性)、ゼオライトを意味する。
【0043】
本発明によるゼオライト吸着材料は、窒素吸着を特徴とした、2nmから50nmの間の平均径を有するメソ細孔の群と関連する大きな外表面積を有する。
【0044】
メソ細孔の平均径は、Barrett−Joyner−Halenda法(BJH method,E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.P.Halenda,“The Determination of Pore Volume and Area Distributions in Porous Substances.I.Computations from Nitrogen Isotherms”,J.Am.Chem.Soc.,73(1),(1951),373−380)によって、77Kにおける窒素物理吸着等温線の吸着アームから求める。
【0045】
有利には、平均径Dmの関数としてdV/dDmまたはdV/dlogDmによってグラフ表示される、本発明による吸着材料のメソ細孔についてこのように求めた平均径体積分布は、狭い単峰形分布に相当する。
【0046】
「単峰形分布」という用語は、ピークを1個のみ有する分布を意味する。平均径単峰形分布はこのため単一のピークを特徴とし、該ピークの頂点の平均径値は、「最頻値」またはもしくは優勢な値として既知であり、分布の最も高頻度の値に相当する。分布が谷によって隔離された2個のピークを有する場合、該分布は二峰性と言われる。本発明は、二峰性またはさらに多峰性分布の場合に、即ち不連続性によって隔離された、値の集中区域が複数存在する分布には関連しない。このような分布は、各種の平均径を有する複数の細孔群が存在することに特徴的である。
【0047】
メソ細孔の平均径分布をキャラクタリゼーションするために使用される「狭い」という用語は、キャラクタリゼーション技法で後述するように、最頻値付近の分布中央高幅が20nm未満、好ましくは15nm未満、好ましくは10nmから0.1nmの間、およびより好ましくは5nmから0.5nmの間であることを示している。
【0048】
「従来の」サイズの階層的多孔性を有するゼオライト結晶を使用すると、同時に:
−マイクロメートルサイズの(即ち、1μm以上の数平均径を有する。)、しかし極めて小さいナノメートル結晶で、典型的には、厳密に0.5μm未満の数平均径で得られた結晶と同等の移動性質を有する結晶を使用すること、ならびに
−階層的多孔性を有するこれらのゼオライトから得た吸着材料について、バインダーのゼオライト化に必ずしも頼る必要なく、吸着能力について高レベルを維持できるようにする、バインダーの含有率の低下と共に、分離工程での吸着材料の使用に適した機械的強度を保持すること
が可能となる。
【0049】
先に示したように、階層的多孔性を有するこれらのゼオライトは、ミクロ多孔性およびメソ多孔性の両方であり、これらの用語は、本明細書で先に定義している。US7785563に示されているように、透過型電子顕微鏡法(TEM)による観測によって、吸着材料のゼオライト結晶が充填ゼオライト結晶(即ち、非メソ多孔性)であるか、または充填ゼオライト結晶であるか、もしくはメソ多孔性結晶の凝集体であることを確認することが可能となる。
【0050】
本発明の別の目的は、前記吸着材料を調製する方法および特に先行技術に記載されている方法よりも経済的である、前記吸着材料を調製する方法、ならびにまた、異性体、より詳細にはキシレンの気体状または液体混合物を分離するための、およびとりわけ炭素原子8個を含有する異性体を含有する芳香族炭化水素供給原料から非常に純粋なパラキシレンを分離するための前記吸着材料の使用を提供することに存する。
【0051】
本発明のまた別の目的は、ゼオライト吸着材料内での物質移動を最大化し、同時に用途に好適である吸着能力を維持することに、同時に検討中の用途に適合可能である機械的強度を維持することに存する。
【0052】
また別の目的として、本発明は、分離工程で使用するために最適化され、良好な機械的強度、高い吸着能力ならびに吸着材料およびゼオライト相内での最大化された分子の輸送(最大化物質移動)を兼ね備えた、ゼオライト吸着材料を提案している。
【0053】
このため、第1の態様により、本発明は、階層的多孔性を有する少なくとも1つのFAUゼオライトを含み、バリウムまたはバリウムおよびカリウムを含むゼオライト吸着材料であって:
−窒素吸着によって測定された外表面積が、20m
2・g
−1超、好ましくは30m
2・g
−1超、およびより好ましくは30m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間、およびより優先的には30m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間であり、前記外表面積が2nmから50nmの間の平均径を有するメソ細孔の群と組み合わされ、ならびに
−非ゼオライト相(吸着の目的には不活性な相)の含有率が、吸着材料の全重量に対して6重量%から12重量%の間、好ましくは吸着材料の全重量に対して6重量%から11重量%の間、より好ましくは吸着材料の全重量に対して6重量%から10重量%の間であるゼオライト吸着材料に関する。
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、ゼオライト吸着材料の階層的多孔性を有するFAUゼオライトは:
−結晶の数平均径が、1μmから20μmの間、より好ましくは1.5μmから20μmの間、より優先的には1.8μmから10μmの間、さらになお2μmから10μmの間、より好ましくは2μmから8μmの間であり、
−窒素吸着によって測定した結晶の外表面積が、40m
2・g
−1超、好ましくは40m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間、より好ましくは40m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間であるゼオライトである。
【0055】
本発明のゼオライト吸着材料の外表面積は、真空下(P<6.7×10
−4Pa)で300℃から450℃の間の温度にて9時間から16時間の範囲に及ぶ時間にわたって、好ましくは400℃にて10時間にわたって脱気した後、77Kの温度にて窒素吸着等温線からtプロット法によって計算する。階層的多孔性を有するFAUゼオライトの外表面積は、同じ方法で測定する。
【0056】
好ましい態様により、酸化バリウム(BaO)として表される、本発明のゼオライト吸着材料のバリウム(Ba)含有率は、吸着材料の全質量に対して10重量%超、好ましくは15重量%超、非常に好ましくは20重量%超、またより好ましくは23%超またはさらに33重量%超であり、有利には、バリウム含有率は、吸着材料の全重量に対して23重量%から42重量%の間および典型的には30重量%から40重量%の間である。
【0057】
好ましい別の実施形態により、酸化カリウム(K
2O)として表される、本発明のゼオライト吸着材料のカリウム(K)含有率は、吸着材料の全質量に対して25重量%未満、好ましくは0重量%から20重量%の間、またさらに好ましくは0重量%から15重量%の間および非常に好ましくは0重量%から10重量%の間である。
【0058】
また別の好ましい実施形態により、酸化バリウムBaOおよび酸化カリウムK
2O以外のアルカリ金属酸化物イオンまたはアルカリ土類金属酸化物イオンの全含有率として表される、バリウムイオンおよびカリウムイオン以外のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンの全含有率は、吸着材料の全質量に対して0から5%の間である。
【0059】
好ましくは、前記ゼオライト吸着材料のメソ細孔群は、窒素吸着によってキャラクタリゼーションされる2nmから30nmの間および好ましくは2nmから20nmの間の、最頻値の平均径を有する。
【0060】
有利には、本発明によるゼオライト吸着材料は、0.15cm
3・g
−1から0.5cm
3・g
−1の間、好ましくは0.20cm
3・g
−1から0.40cm
3・g
−1の間のおよび非常に好ましくは0.20cm
3・g
−1から0.35cm
3・g
−1の間の、水銀圧入によって測定したマクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)を有する。
【0061】
本発明の好ましい実施形態により、ゼオライト吸着材料は、マクロ細孔、メソ細孔およびミクロ細孔を同時に含む。「マクロ細孔」という用語は、直径が50nm超、好ましくは50nmから400nmの間である細孔を意味する。「メソ細孔」という用語は、直径が2nmから50nmの間である細孔を意味する。「ミクロ細孔」という用語は、直径が2nm未満である細孔を意味する。
【0062】
さらに、本発明の吸着材料は、有利には、0.2から1の間および非常に好ましくは0.4から0.8の間の(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)比を有する。
【0063】
本発明の文脈において、77Kの温度にて窒素(N
2)吸着等温線からtプロット法によって評価したミクロ細孔容積が、0.200cm
3・g
−1超、好ましくは0.205cm
3・g
−1から0.270cm
3・g
−1の間およびより好ましくは0.205cm
3・g
−1から0.260cm
3・g
−1の間であるゼオライト吸着材料も好ましい。前記ミクロ細孔容積測定値は、300℃から450℃の間の温度にて9時間から16時間の範囲に及ぶ時間にわたる、好ましくは400℃にて10時間にわたる真空(P<6.7×10
−4Pa)下での脱気後に計算する。
【0064】
本発明の文脈において、機械的強度は、サイズが1.6mm未満の凝集体に適したShell法シリーズSMS1471−74によって測定する。先に定義したゼオライト吸着材料について測定したこの機械的強度は一般に、1.5MPaから4MPaの間、好ましくは1.7MPaから4MPaの間、より好ましくは1.8MPaから4MPaの間および最も好ましくは2MPaから4MPaの間である。
【0065】
また別の好ましい実施形態により、本発明によるゼオライト吸着材料は、1.00から2.00の間、好ましくは1.00から1.80の間、より好ましくは1.15から1.80の間およびさらにより好ましくは1.15および1.60の間のSi/Al原子比を有する。
【0066】
X型FAUゼオライトのうち、特に、ゼオライトLSXおよびゼオライトMSXとして既知の2つのサブグループを認識することが現在一般に認められている。ゼオライトLSXは、約1に等しいSi/Al原子比を有し、ゼオライトMSXは、約1.05から約1.15の間のSi/Al原子比を有する。好ましい実施形態により、少なくとも1つのFAUゼオライトは、1.10から1.50の間のSi/Al原子比を有するゼオライトXである。別の好ましい実施形態により、少なくとも1つのゼオライトXは、約1に等しいSi/Al原子比を有するLSX型のゼオライトである。
【0067】
本発明のゼオライト吸着材料において、および好ましい実施形態により、「階層的多孔性を有するFAUゼオライト」という用語は、上で定義したX型FAUゼオライトを意味し、階層的多孔性を有するこれらの前記ゼオライト、即ち階層的多孔性を有するX型のゼオライト(即ち、ゼオライトXHP)、階層的多孔性を有するMSX型のゼオライト(即ち、MSXHP)および階層的多孔性を有するLSX型のゼオライト(即ち、LSXHP)ならびにより詳細には階層的多孔性を有し、1.00から1.50の間、好ましくは1.05から1.50の間、より好ましくは1.05から1.40の間およびまたより好ましくは1.10から1.40の間のSi/Al原子比を有するFAUゼオライトを意味する。
【0068】
本発明は、ちょうど定義したような、階層的多孔性を有する2つ以上のFAUゼオライトの混合物を含むゼオライト吸着材料も含む。
【0069】
別の好ましい実施形態により、FAU構造以外のゼオライト構造、好ましくはフージャサイトX構造以外のゼオライト構造は、本発明のゼオライト吸着材料におけるX線回折(省略形XRDで当業者に既知)によって検出されない。
【0070】
「FAU構造以外のゼオライト構造は検出されない」という用語は、FAU構造以外の1つ以上のゼオライト相が(後述する技法であるXRDによって求めた質量分率)2重量%未満(限界値を含む。)であることを意味する。
【0071】
本発明によるゼオライト吸着材料はまた、好ましくは、確実に結晶を結合させる調製モードで使用する凝集バインダーを含む少なくとも1つの非ゼオライト相(NZP)を含み、このため、「凝集体」または「ゼオライト凝集体」という用語は、場合により、先に記載したような、本発明の「ゼオライト吸着材料」という用語の代わりに使用される。
【0072】
本発明において、「バインダー」という用語は、本発明のゼオライト吸着材料(または凝集ゼオライト物質)中のゼオライト結晶の結合を確実にする凝集バインダーである。このバインダーは、焼成後にゼオライト性結晶構造を有さないという点で、ゼオライト結晶とも異なり、このことはバインダーが多くの場合不活性であって、より正確には吸着およびイオン交換に関して不活性であるからである。
【0073】
また別の好ましい実施形態により、好ましくはX型ゼオライトである、FAUゼオライトの質量分率は、本発明の吸着材料の全重量に対して88%以上であり、100%までの残量は、好ましくは非ゼオライト相(NZP)から成る。
【0074】
すでに示したように、本発明による吸着材料のゼオライトの質量分率(結晶度)は、XRDという省略形で当業者に既知の、X線回折分析によって求めることができる。
【0075】
好ましい実施形態により、本発明によるゼオライト吸着材料は、7.7%以下、好ましくは0から7.7%の間、好ましくは3.0%から7.7%の間、より好ましくは3.5%から6.5%の間および有利には4.5%から6%の間の、規格NF EN 196−2に従って、950℃にて測定した強熱減量を有する。
【0076】
本発明の別の主題は、ちょうど定義したようなゼオライト吸着材料を調製する方法であって、少なくとも:
a)40m
2・g
−1を超える、好ましくは40m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間、より好ましくは40m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の外表面積を有する、階層的多孔性を有する少なくとも1つのFAU型ゼオライトの結晶であって、該ゼオライトの結晶の数平均径が1μmから20μmの間、より好ましくは1.5μmから20μmの間、より優先的には1.8μmから10μmの間、より良好にはなお2μmから10μmの間およびより好ましくは2μmから8μmの間であるゼオライトの結晶を、好ましくは少なくとも80%の粘土または粘土の混合物を含むバインダーならびに5%以下の添加剤およびまた凝集物質を形成させる量の水と共に凝集させて、続いて該凝集体を乾燥および焼成する工程;
b)工程a)からの凝集体をバリウムイオンならびに/またはバリウムイオンおよびカリウムイオンの溶液と接触させることにより、該凝集体のカチオン交換を行う工程;
c)工程b)からの凝集体をカリウムイオンの溶液と接触させることにより、場合によりさらにカチオン交換する工程;
d)工程b)またはc)で得た凝集体を50℃から150℃の間の温度にて洗浄して乾燥させる工程;ならびに
e)工程d)で得た凝集体を酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/または除炭酸空気、場合により乾燥および/または除炭酸した酸素欠乏空気などのガスにより、100℃から400℃の間、好ましくは200℃から300℃の間の温度にて、所望の含水率および強熱減量の関数として決定された時間、典型的には1から6時間にわたって活性化することによって、本発明によるゼオライト吸着材料を製造する工程
を含む方法に関する。
【0077】
本発明のゼオライト吸着材料を調製する方法の好ましい実施形態において、上の工程a)における凝集体の乾燥は一般に、50℃から150℃の間の温度にて行い、乾燥凝集体の焼成は一般に、酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/または除炭酸空気、場合により乾燥および/または除炭酸した酸素欠乏空気などのガスにより、150℃超、典型的には、180℃から800℃の間、優先的には200℃から650℃の間の温度にて数時間にわたって、例えば2時間から6時間にわたって行う。
【0078】
好ましい実施形態により、前記少なくとも1つのFAUゼオライトは定義した通りであり、有利には、好ましくは1.00から1.50の間、好ましくは1.05から1.50の間、より好ましくは1.05から1.40の間およびまたより好ましくは1.10から1.40の間のSi/Al原子比を有する。
【0079】
先に示したように、上記の方法の工程a)で使用した結晶の外表面積は、真空下(P<6.7×10
−4Pa)で300℃から450℃の間の温度にて9時間から16時間の範囲に及ぶ時間にわたって、好ましくは400℃にて10時間にわたって脱気した後、77Kの温度にて窒素吸着等温線からtプロット法によって計算する。
【0080】
大きい外表面積を有する、階層的多孔性を有するFAUゼオライト結晶は、当業者に既知の各種の方法に従って、例えばInayatらによってAngew.Chem.Int.Ed.,(2012),
51,1962−1965に記載された合成に従って得ることができる。
【0081】
シーディングによるならびに/または合成動作条件、例えば合成混合物のSiO
2/Al
2O
3比、ナトリウム含有率およびアルカリ度などを調整することによる合成によって、または当業者に既知のFAUゼオライト結晶の後処理のための従来方法に従って、前記結晶を調製することも可能である。
【0082】
後処理方法は一般に、例えばD.Verboekendらによって記載されているような(Adv.Funct.Mater.,22,(2012),pp.916−928)、固体を脱アルミネートする(dealuminate)1回以上の酸処理であって、水酸化ナトリウム(NaOH)による1回以上の洗浄が後続して形成されたアルミニウム系残基を除去する、酸処理、またはもしくは、例えば特許出願WO 2013/106816に記載されているように、酸の作用および酸処理の効力を改善する構造化剤の作用を併用する処理のどちらかによって、すでに形成されたゼオライト網目から原子を除去することに存する。
【0083】
これらのゼオライトの直接合成方法(即ち後処理以外の合成方法)は一般に、1つ以上の構造化剤または犠牲テンプレートを包含する。
【0084】
使用され得る犠牲テンプレートは、当業者に既知のいずれの種類でもよく、とりわけ特許出願WO 2007/043731に記載されているものでよい。好ましい実施形態により、犠牲テンプレートは、有利には、有機シランから、より優先的には[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクチルアンモニウムクロリド、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン、トリエトキシ−3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、[2−(シクロヘキセニル)エチル]−トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシランおよびまたあらゆる割合のこれらの2つ以上の混合物から選ばれる。
【0085】
上に挙げた犠牲テンプレートのうち、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、即ちTPOACが最も特に好ましい。
【0086】
より高いモル質量の犠牲テンプレート、例えばPPDA(ポリジアリルジメチルアンモニウムポリマー)、PVB(ポリビニルブチラール)およびメソ細孔の直径を増大させるための、当分野で既知の他のオリゴマー性化合物も使用してよい。
【0087】
本発明の方法の好ましい実施形態により、除去するための犠牲テンプレートの存在下で調製した、先に記載したような階層的多孔性を有する少なくとも1つのFAUゼオライトの結晶の凝集は、工程a)で行う。
【0088】
この除去は、当業者に既知の方法に従って、例えば焼成によって、および非限定的な方式で行ってよく、犠牲テンプレートを含むゼオライト結晶の焼成は、酸化性ガスおよび/または不活性ガス流下で、とりわけ酸素、窒素、空気、乾燥および/もしくは除炭酸空気、または場合により乾燥および/もしくは除炭酸した酸素欠乏空気などのガスにより、150℃超、典型的には、180℃から800℃の間、優先的には200℃から650℃の間の1つ以上の温度にて、数時間、例えば2から6時間にわたって行ってよい。ガスの性質、温度上昇ランプおよび連続温度ステージならびにこれらの期間は、犠牲テンプレートの性質の関数として適応される。
【0089】
任意選択による犠牲テンプレートの除去の追加の工程は、本発明のゼオライト吸着材料を調製する方法の間のいつでも実施してよい。前記犠牲テンプレートの除去はこのため、有利には、ゼオライト結晶の焼成によって、凝集工程a)の前に、または工程a)の間の吸着材料の焼成と同時に行ってよい。
【0090】
工程a)の凝集が各種のモードによって得た、階層的多孔性を有する複数のFAUゼオライトの凝集を含む場合、本発明の文脈からの逸脱とはならない。
【0091】
FAU型ゼオライトの合成は一般に、ナトリウム媒体(水酸化ナトリウムおよびこのためNa
+カチオン)中で実施される。このように得たFAUゼオライト結晶は、主にまたはさらに排他的に、ナトリウムカチオンを含む。しかし、この工程が工程a)を行う前に行われる場合、犠牲テンプレートの任意選択による除去前または後に、Na形態での合成中に、1回以上のカチオン交換が行われた結晶を使用することは、本発明の文脈からの逸脱とはならない。この場合、工程b)および場合により交換工程c)は、結果として不要になる。
【0092】
工程a)で使用するFAUゼオライト結晶および本発明による吸着材料中のFAUゼオライト結晶のサイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定する。先に示したように、好ましくは成分の平均径は、1μmから20μmの間、より好ましくは1.5μmから20μmの間、より優先的には1.8μmから10μmの間、より良好にはなお2μmから10μmの間およびより好ましくは2μmから8μmの間である。このSEM観測によって、例えば凝集バインダーまたは吸着材料中の他の非晶質相を含む非ゼオライト相の存在を確認することも可能となる。
【0093】
本文書において、「数平均径」または「サイズ」は、とりわけゼオライト結晶に使用される。これらの大きさを測定する方法は、本明細書にて後に説明する。
【0094】
凝集および形成(工程a)は、当業者に既知のいずれの技法、例えば押出、圧縮、造粒プレート、造粒ドラムでの凝集、アトマイズ化などに従って行ってよい。
【0095】
使用する凝集バインダー(後の定義を参照のこと)およびゼオライトの割合は、ゼオライト92重量部から85重量部につき、バインダー8重量部から15重量部である。工程a)から得た吸着材料は、ビーズ、押出物などの形態にかかわらず、好ましくは0.2mmから2mmの間、および特に0.2mmから0.8mmの間、および好ましくは0.40mmから0.65mmの間の体積平均径、即ちこれらの長さ(これらが球状でない場合の最大寸法)を有する。
【0096】
工程a)の後、最も微細な凝集吸着材料は、サイクロン処理および/もしくはふるい分けによって除去することができ、ならびに/または過度に粗い凝集体は、例えば押出物の場合、ふるい分けもしくは粉砕によって除去することができる。
【0097】
有利には、凝集バインダーはゼオライト化されていない。本発明の文脈で使用できるバインダーは、このため、当業者に既知の従来のバインダーから選ぶことができ、バインダーがゼオライト化可能であってもよく、もしくは可能でなくてもよく、好ましくは粘土および粘土の混合物、シリカ、アルミナ、コロイダルシリカ、アルミナゲルなどおよびこれらの混合物から選ぶことができる。
【0098】
該粘土は、好ましくはカオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンならびにあらゆる割合のこれらの2つ以上の混合物からも選ばれる。
【0099】
セピオライトまたはアタパルジャイト型の繊維状粘土が好ましく、粘土がおそらく一般に、粉末の形態で、またはより良好にはなお、ゲル(即ち層間剥離粘土)の形態で調合および分散され、ならびに市販の粘土Min−U−Gel(R)、Pansil(R)、Pangel(R)、Cimsil(R)、Attagel(R)、Actigel(R)などのように場合により粉砕され、これらには化学処理を行っても行わなくてもよい。このようなゲルは、例えばEP170299またはUS6743745に記載されている。
【0100】
工程a)の間に、ゼオライト結晶以外に、バインダーは1つ以上の添加剤も含んでよい。添加剤は優先的には有機、例えばリグニン、デンプン、カルボキシメチルセルロース、界面活性剤分子(カチオン性、アニオン性、非イオン性または両性)であり、レオロジーおよび/もしくは粘着性を調節することによってゼオライト/粘土ペーストの取り扱いを容易にし、または最終吸着材料にとりわけマクロ多孔性に関して満足な性質を与えることを目的とする。
【0101】
優先的には、しかし網羅的ではないが、メチルセルロースおよびこれの誘導体、リグノスルホネート、ポリカルボン酸およびカルボン酸コポリマー、これらのアミノ誘導体およびこれらの塩、とりわけアルカリ金属塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。添加剤は、吸着材料の全重量に対して0重量%から5重量%および好ましくは0.1重量%から2重量%の割合で導入される。
【0102】
添加剤は、液体および/または固体シリカ源であってもよく、好ましくは前記固体の全質量の1%から5%に相当する。任意選択によるシリカ源は、ゼオライト合成の専門家である当業者に既知であるいずれの種類、例えばコロイダルシリカ、珪藻土、パーライト、フライアッシュ、砂または固体シリカの他のいずれかの形態でもよい。
【0103】
工程a)に含まれる焼成では、ガスの性質、温度上昇ランプおよび連続温度ステージと、ならびにそれぞれの期間も、とりわけ除去される犠牲テンプレートの性質の関数としておよび凝集工程a)で使用するバインダーの性質の関数として適応させる。
【0104】
上記のカチオン交換工程b)およびc)は、当業者に既知の従来方法に従って、通常、工程a)から得た吸着材料をバリウム塩ならびに/またはバリウム塩およびカリウム塩、例えば塩化バリウム(BaCl
2)および/または塩化カリウム(KCl)に、高い酸化バリウム含有率、即ち吸着材料の全質量に対して、酸化バリウムの重量として表される、好ましくは10%超、好ましくは15%超、非常に好ましくは20%超、さらにより好ましくは23%超、またはさらに33重量%超を迅速に得られるように、室温から100℃の間および好ましくは80℃から100℃の間の水溶液中で接触させることによって行う。
【0105】
有利には、酸化バリウムとして表すバリウムの含有率は、吸着材料の全重量に対して、23重量%から42重量%の間、典型的には、30重量%から40重量%の間である。交換したいゼオライトのカチオンに対して大過剰量のバリウムイオンで、典型的には、約10から12の過剰量を、有利には連続交換を行うことにより、交換することが好ましい。
【0106】
工程c)の任意選択によるカリウム交換を、バリウム交換(工程b)の前および/または後に行ってよい。先に示したように、工程a)において、バリウムイオンもしくはカリウムイオンまたはバリウムイオンおよびカリウムイオンをすでに含有するFAUゼオライト結晶を凝集させ(工程a)の前の、出発FAU型ゼオライト中に存在するカチオン、典型的にはナトリウムカチオンの、バリウムイオンもしくはカリウムイオンまたはバリウムイオンおよびカリウムイオンとの事前交換し、ならびに工程b)および/またはc)を省略する(または省略しない)ことも可能である。
【0107】
驚くべきことに、出願人は、階層的多孔性を有するゼオライト結晶の構造の相対的な脆弱性のために困難であり得るカチオン交換工程が、階層的多孔性を有する前記ゼオライト結晶の(いったん交換した吸着材料の質量に対する)固有の外表面積およびミクロ細孔容積の性質に影響を及ぼさないことを確認している。
【0108】
カチオン交換工程の後、次いで、好ましくは水による洗浄が一般に行われ、このように得た吸着材料の乾燥が後続する。
【0109】
乾燥に後続する活性化は、従来、当業者に既知の方法に従って、例えば一般に100℃から400℃の間、好ましくは200℃から300℃の間の温度にて、所望の含水率および強熱減量の関数として求めた時間、典型的には1から6時間にわたって行う。
【0110】
本発明は、有利には、バリウムもしくはバリウムおよびカリウムを含む、従来のFAU型ゼオライトの結晶を主成分とする、またはバリウムもしくはバリウムおよびカリウムを含む従来のFAU型ゼオライトの結晶を主成分とする、文献に記載された吸着剤に、とりわけ以下に挙げる使用:
・C8芳香族異性体画分およびとりわけキシレンの分離、
・置換トルエン異性体、例えばニトロトルエン、ジエチルトルエン、トルエンジアミンなどの分離、
・クレゾールの分離、
・多価アルコール、例えば糖などの分離
において、代わることができる吸着材料としての、上記のゼオライト吸着剤の使用に関する。
【0111】
本発明によるゼオライト吸着材料は、とりわけ気相または液相中でキシレン異性体を分離する方法で使用するために特に適した機械的強度および同じく特に適した吸着能力の両方を有する。
【0112】
このため、および別の主題により、本発明は、先に定義したような少なくとも1つのゼオライト吸着材料を使用して、好ましくはゼオライト吸着材料のゼオライト結晶が1つ以上の構造剤または犠牲テンプレートを使用する直接合成によって調製される、気相または液相中のキシレン異性体を分離する方法に関する。
【0113】
本発明はとりわけ、パラキシレン吸着材料として、先に定義したようなゼオライト吸着材料ならびにとりわけ、液相工程で使用されるが、気相工程でも使用される、バリウムおよび/またはカリウムを含み、典型的には20m
2・g
−1超、好ましくは30m
2・g
−1超およびより好ましくは30m
2・g
−1から200m
2・g
−1の間およびより優先的には30m
2・g
−1から150m
2・g
−1の間の窒素吸着を特徴とする大きい外表面積を有する、ゼオライト吸着材料を使用して、炭素原子8個を含有する芳香族異性体画分からパラキシレンを分離する方法に関する。
【0114】
所望の生成物(パラキシレン)はこのため、分取吸着液体クロマトグラフィー(バッチ形式の)により、および有利には継続的に模擬移動床にて、即ち模擬向流または模擬並流で、およびより詳細には模擬向流で分離除去することができる。
【0115】
模擬向流型の工業吸着ユニットの動作条件は、一般に以下の通りである:
・床数:6から30、
・区画の数:それぞれ供給箇所と抜き出し箇所との間に位置する、少なくとも4つの動作区画、
・100℃から250℃の間、好ましくは150℃から190℃の間の温度、
・処理温度におけるキシレンの気泡圧力と3MPaとの間の、工業ユニットの圧力、
・単一(独立型)吸着ユニットでは0.7から2.5の間の、例えば0.9から1.8の間の、および結晶化ユニットと組み合わされた吸着ユニットでは0.7から1.4間のの、脱着剤流速/供給原料流速の比、
・2から12の間、好ましくは2.5から6.0の間のリサイクル比。
【0116】
特許US2985589、US5284992およびUS5629467の教示も参照してよい。
【0117】
工業的模擬並流吸着ユニットの動作条件は一般に、一般に0.8から7の間であるリサイクル度を除いて、模擬向流を用いて機能するユニットと同様である。特許US4402832およびUS4498991を参照してよい。
【0118】
脱着溶媒は、当業者に既知であり、沸点がトルエンなどの供給原料の沸点よりも低い脱着剤であってよいが、沸点がパラジエチルベンゼン(PDEB)などの供給原料の沸点よりも高い脱着剤であってもよい。C
8芳香族画分中に含有されるパラキシレンの吸着のための本発明による吸着材料の選択性は、950℃にて測定した吸着材料の強熱減量が好ましくは7.7%以下、好ましくは0から7.7%の間、非常に好ましくは3.0%から7.7%の間、最も好ましくは3.5%から6.5%の間およびまたより好ましくは4.5%から6%の間である場合に最適である。
【0119】
本発明のパラキシレン分離方法は、先行技術において既知の方法に勝る本質的な利点を有し、中でも、とりわけ、特に、吸着材料の全重量に対して、典型的には、6重量%から12重量%の、非ゼオライト相のバインダー含有率の低下による満足な吸着能力と、サイズが1.6mm未満の凝集体に適用したShell法シリーズSMS1471−74によって測定した、典型的には1.5MPaから4MPaの間、好ましくは1.7MPaから4MPaの間、最も好ましくは1.8MPaから4MPaの間および完全に好ましくは2MPaから4MPaの間の良好な機械的強度との間の、特に有利な折衷を与えるものがある。
【0120】
さらに、外表面積(典型的には、先に示したよう20m
2・g
−1超)によってミクロ細孔までの移送時間を短縮することが可能となり、先行技術と比べて物質移動が著しく改善されることが着目されてきた。
【0121】
さらに、ゼオライト吸着材料のゼオライト含有率を最大化するために先行技術で推奨されることが多いゼオライト化工程は、本発明のゼオライト吸着材料によって必ずしも必要でないため、前記ゼオライト吸着材料を調製する方法は、多くの特に求められた利点を有し、中でも、ゼオライト化操作中に、とりわけナノメートルサイズの結晶の使用中によくあることとして、コストの増加、処理時間の延長、塩基性溶液による結晶の分解の著しい減少が挙げられる。
【0122】
別の利点は、ただちに操作可能であり、このため吸着材料の製造が容易となる、(典型的には、1μmから20μmの間、より好ましくは1.5μmから20μmの間、より優先的には1.8μmから10μmの間、より良好にはなお2μmから10μmの間およびより好ましくは2μmから8μmの間の)マイクロメートルサイズの結晶が入手できることである。
【0123】
このため、本発明のゼオライト吸着材料は、とりわけ改善された物質移動の性質を有すると同時に、パラキシレンに対する最適な選択性を示す性質および最大の吸着能力を維持し、好ましくは疑似向流型の固相パラキシレン分離方法での高い機械的強度を保持する。
【実施例】
【0124】
キャラクタリゼーション技法
ゼオライト結晶の粒径−メソ細孔の検出
本発明によるゼオライト吸着材料が含有するゼオライトFAU結晶の数平均径の概算は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観測によって行う。
【0125】
吸着材料中のゼオライト結晶のサイズを概算するために、画像一式を少なくとも5000の倍率で撮影する。次いで、専用ソフトウェアを使用して、少なくとも200個の結晶の直径を測定する。精度はおよそ3%である。
【0126】
US7785563に示されているように、TEMによって、吸着材料に含有されるゼオライト結晶が、充填ゼオライト結晶(即ち非メソ多孔性)または充填ゼオライト結晶の凝集体またはメソ多孔性結晶(メソ多孔性が明らかに目視できる
図1のTEM画像と、充填結晶を示す
図2のTEM画像との比較を参照のこと。)であるかを確認することもできる。このためTEM観測によって、メソ細孔の存在または非存在を描出することもできる。好ましくは、本発明による方法の吸着材料は、極めて主として、即ち典型的には、充填結晶ではなく、数により80%超および好ましくは90%超のメソ細孔性ゼオライト結晶を含有する。この統計分析は、有利には、少なくとも50枚のTEMまたはSEM画像(イオン研磨によって得たサンプルの断面でのSEM)を分析することによって行う。
【0127】
ゼオライト吸着材料の化学分析−Si/Al比および交換度
ゼオライト吸着材料の元素化学分析は、当業者に既知の各種の分析技法に従って行ってよい。これらの技法のうち、規格NF EN ISO 12677:2011に記載されているような、波長分散型分光器(WDXRF)、例えばBruker社のTiger S8装置でのX線蛍光化学分析の技法を挙げることができる。
【0128】
X線蛍光は、サンプルの元素組成を確認するための、X線範囲の原子の光ルミネセンスを利用する非破壊スペクトル技法である。一般に、X線のビームを用いた、または電子の衝撃による原子の励起によって、原子の基底状態に戻った後に、特定の放射線が発生する。X線蛍光スペクトルは、元素の化学結合にごくわずかしか依存しないという利点を有するため、定性的にも定量的にも精密な測定値が得られる。各酸化物の較正後に、0.4重量%未満の測定不確定性が従来得られている。
【0129】
これらの元素化学分析によって、吸着材料の調製中に使用したゼオライトのSi/Al原子比の、また吸着材料のSi/Al原子比の確認と、工程b)および任意選択による工程c)で記載したイオン交換の品質の確認の両方が可能となる。本発明の説明において、Si/Al原子比の測定不確定性は±5%である。
【0130】
イオン交換の質は、交換後のゼオライト凝集体中に残存する酸化ナトリウムNa
2Oのモル数に関連する。より詳細には、バリウムイオンとの交換度は、酸化バリウムBaOのモル数と、組み合せ(BaO+Na
2O)のモル数との間の比を評価することによって概算される。同様に、バリウムイオンおよび/またはカリウムイオンによる交換度は、酸化バリウム+酸化カリウムの組み合せ(BaO+K
2O)のモル数と、組み合せ(BaO+K
2O+Na
2O)のモル数との間の比を評価することによって概算される。各種の酸化物の含有率が、無水ゼオライト吸着材料の全重量に対する重量パーセンテージとして示されていることに留意されたい。
【0131】
ゼオライト吸着材料の粒径
凝集および形成工程a)の後に得たゼオライト吸着材料の体積平均径の測定は、規格ISO 13322−2:2006による撮像による吸着材料のサンプルの粒径分布の分析によって、カメラの対物レンズの前にサンプルを通過させるコンベヤベルトを使用して行う。
【0132】
次いで、規格ISO 9276−2:2001を利用して、粒径分布から体積平均径を計算する。本文書において、「体積平均径」または「サイズ」という名称は、ゼオライト吸着材料に使用する。本発明の文脈で有用である吸着材料のサイズ範囲での精度は、およそ0.01mmである。
【0133】
ゼオライト吸着材料の機械的強度
本発明に記載するゼオライト吸着材料の床の粉砕強度は、Shell法シリーズSMS1471−74(Shell Method Series SMS1471−74 Determination of Bulk Crushing Strength of Catalysts.Compression−Sieve Method)に従ってキャラクタリゼーションされ、該Shell法シリーズはVinci Technologies社が販売するBCS Tester装置に関連付けられている。この方法は、最初は3mmから6mmの触媒のキャラクタリゼーション向けであったが、425μmふるいの使用に基づき、とりわけ粉砕中に生じる微粉を分離することが可能となる。425μmふるいの使用は、1.6mm超の直径を有するゼオライト吸着材料になお適しているが、キャラクタリゼーションが望まれる吸着材料の粒径に従って適応させるべきである。
【0134】
一般にビーズまたは押出物の形態の本発明の吸着材料は、一般に0.2mmから2mmの間、特に0.2mmから0.8mmの間および好ましくは0.40mmから0.65mmの間の、体積平均径または長さ、即ち非球状吸着材料の場合の最長寸法を有する。結果として、Shell法規格SMS1471−74で示した425μmふるいの代わりに100μmふるいを使用する。
【0135】
測定プロトコルは以下の通りである:事前に適切なふるい(100μm)によってふるい分けして、事前に(Shell法規格SMS1471−74に示された300℃の代わりに)250℃のオーブン内で少なくとも2時間乾燥させた凝集吸着材料の20cm
3のサンプルを、内断面が既知の金属製シリンダに入れる。このサンプルに対して、鋼球の床5cm
3を通じてピストンによって加える力を段階的に増大させて、凝集吸収材料にピストンによって加えられる力をより良好に分散させる(直径が厳密に1.6mm未満の球形状の粒子には、直径2mmのボールを使用)。各種の圧力段階で得た微粉をふるい分け(約100μmのふるい)によって分離して、秤量する。
【0136】
バルク粉砕強度は、ふるいを通過する微粉の累積量がサンプルの0.5重量%である、メガパスカル(MPa)での圧力によって求める。この値は、得られた微粉の質量を吸着材料床に印加された力の関数としてグラフにプロットして、累積微粉0.5質量%まで内挿することによって得る。機械的バルク粉砕強度は、典型的には、数百kPaから数十MPaの間および一般に0.3MPaから3.2MPaの間である。精度は従来、0.1MPa未満である。
【0137】
ゼオライト吸着材料の非ゼオライト相
非ゼオライト相NZPの含有率、例えば凝集バインダーおよび他の非晶質相の含有率は、以下の等式:
NZP=100−Σ(ZP)
によって計算され、式中、ZPは、本発明の意味の範囲内での、ゼオライトX画分の量の和を表す。
【0138】
ゼオライト吸着材料のゼオライト画分の質量の量
ゼオライト画分の質量の量は、当業者に既知の、省略形がXRDの、X線回折分析によって測定される。この分析は、Brukerブランドの装置で行い、次いでゼオライト画分の量を、好適な参照(検討中の吸着材料のカチオン性条件処理と同じカチオン性処理条下で、100%結晶性とされる同じ化学的性質のゼオライト)のピーク強度を参照としたディフラクトグラムのピーク強度から評価する。結晶性までトレースバックするためのピークは、9°から37°の間の角2θ区画の最も強いピーク、即ちそれぞれ11°から13°の間、22°から26°の間および31°から33°の間の角2θ範囲で見られるピークである。
【0139】
メソ細孔のミクロ細孔容積、外表面積および直径
本発明のゼオライト吸着材料の結晶性も、吸着材料のミクロ細孔容積を測定して、これを好適な参照(同じカチオン性処理条件下での100%結晶性ゼオライトまたは理論的ゼオライト)のミクロ細孔容積と比較することによって評価する。このミクロ細孔容積は、窒素などのガスの、これらの液化温度における吸着等温線の測定から求める。
【0140】
吸着の前に、ゼオライト吸着材料を300℃から450℃の間で、9時間から16時間の間の時間にわたって、真空下(P<6.7×10
−4Pa)で脱気する。次いで、77Kにおける窒素吸着等温線の測定をMicromeritics製のASAP 2020M装置で、0.002から1の間の比P/P
0を有する相対圧にて少なくとも35個の測定点を取って行う。
【0141】
ミクロ細孔容積および外表面積は、得られた等温線から、tプロット法により、規格ISO 15901−3:2007を適用して、ジュラ−ハーキンスの式(Harkins−Jura equation)によって統計的厚さtを計算することによって求める。ミクロ細孔容積および外表面積は、それぞれy軸から原点までおよび線形進行の傾きから、0.45nmから0.57nmの間のtプロットの点に対する線形回帰によって得る。評価したミクロ細孔値は、無水吸着材料1グラム当たりの液体吸着質のcm
3で表す。外表面積は、無水吸着材料1グラム当たりのm
2で表す。
【0142】
Barrett−Joyner−Halenda法(BJH法、1951に提案)による77Kにおける窒素吸着等温線の解釈によっても、細孔径分布およびとりわけメソ細孔分布を得ることが可能となる。容積によるメソ細孔径分布は、平均細孔径Dmの関数としての曲線dV/dDmによって表される。
【0143】
体積分布の半値全幅dV/dDmは、値dV/dDmがピークの頂点でのこれの最大値f
maxの半分に等しくなる2つの平均径間の差によって得られる。これらの2つの平均径は、dV/dDmが値f
max/2を包囲する、最頻値の両側の所望の点の間の内挿によって得る。これは、最大値がf
maxである分布f(x)の半値全幅、即ちFWHMである。
【0144】
マクロ細孔およびメソ細孔容積ならびに細粒密度
マクロ細孔容積およびメソ細孔容積ならびに細粒密度は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定する。Micromeritics製のAutopore(R)9500水銀ポロシメータを使用して、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される細孔容積の分布を分析する。
【0145】
規格ASTM D4284−83に関連する装置の操作マニュアルに記載されている実験方法は、事前に秤量した吸着材料のサンプル(測定されるゼオライト性粒状物質)(既知の強熱減量)をポロシメータセルに入れ、次いで最初の脱気(少なくとも10分間にわたって30μmHgの真空圧)後、セルに水銀を所与の圧力(0.0036MPa)で充填し、次いで圧力を段階的に400MPaまで上昇させて印加して、水銀をサンプルの細孔網目に徐々に浸透させるものである。
【0146】
印加圧力と見かけの細孔径との間の関係は、円筒状細孔、水銀と細孔壁との間の140°の接触角および485ダイン/cmの水銀表面張力を仮定することによって確立される。印加圧力の関数として導入された水銀の累積量を記録する。水銀がすべての粒状物間空隙を充填する以上の値を0.2MPaに設定し、この値を超えると、水銀が粒状物質の細孔に浸透すると考えられる。次いで、この圧力(0.2MPa)における水銀の累積体積をポロシメータセルの容積から引き、この差を無水換算粒状物質の質量、即ち強熱減量について補正した前記物質の質量で割ることによって、粒状物体積(Vg)を計算する。
【0147】
細粒密度は、粒状物体積(Vg)の逆数であり、1cm
3当たりの無水吸着材料のグラム数で表す。
【0148】
粒状物質のマクロ細孔容積は、0.2MPaから30MPaの間の圧力にて導入された水銀の累積体積であるとして定義され、見かけの直径が50nm超の細孔に含有される容積に相当する。粒状物質のメソ細孔容積は、30MPaから400MPaの間の圧力にて導入された水銀の累積体積であるとして定義される。
【0149】
本文書において、cm
3・g
−1で表されるゼオライト吸着材料のマクロ細孔容積およびメソ細孔容積は、このように水銀圧入によって測定され、無水換算のサンプルの質量、即ち強熱減量について補正した前記物質の質量に関連付けられる。
【0150】
ゼオライト吸着材料の強熱減量
強熱減量は、規格NF EN 196−2(April 2006)に記載されているように、酸化雰囲気下で、950℃±25℃の温度での空気中でサンプルを焼成することによって求められる。測定値の標準偏差は、0.1%未満である。
【0151】
[実施例A]
階層的多孔性を有するFAUゼオライトの合成
大きい外表面積を有するFAUゼオライトは、Inayatらによる論文(Angew.Chem Int.Ed.,(2012),
51,1962−1965)に従って直接合成する。
【0152】
工程1):アルキメデススクリューで300rpmにて撹拌された反応装置内での成長ゲルの調製
成長ゲルは、加熱ジャケット、温度プローブおよびスターラーを装備した鋼鉄反応装置内で、ナトリウムシリケート565.3g、NaOH 55.3gおよび水1997.5gを含有する、25℃のシリケート溶液中にて、水酸化ナトリウム(NaOH)119gをアルミナ三水和物128g(Al
2O
3,3H
2O、65.2重量%のAl
2O
3を含有)および水195.5gと共に含有するアルミネート溶液を25℃にて25分間にわたって300rpmの撹拌速度で混合することによって調製する。
【0153】
成長ゲルの化学量論は、以下の通りである:3.48 Na
2O/Al
2O
3/3.07 SiO
2/180 H
2O。成長ゲルの均質化は、25℃にて300rpmで25分間撹拌することによって行う。
【0154】
工程2):構造化剤の反応媒体中への導入
MeOH中60%のTPOAC 27.3gを、300rpmの撹拌速度で反応媒体中に導入する(TPOAC/Al
2O
3モル比=0.04)。5分間の均質化の後、撹拌速度を50rpmに低下させる。
【0155】
工程3):熟成段階
反応媒体を50rpm、25℃にて22時間撹拌すると、次いで結晶化が開始した。
【0156】
工程4):結晶化
撹拌速度を50rpmで維持し、反応装置ジャケットの公称温度を80℃に設定して、反応媒体の温度を80分間にわたって75℃まで上昇させる。75℃の段階での72時間後、冷水をジャケットに循環させることによって反応媒体を冷却して、結晶化を停止させる。
【0157】
工程5):濾過/洗浄
固体をシンター上で回収し、次いで脱イオン水によって中性pHまで洗浄する。
【0158】
工程6):乾燥/焼成
生成物のキャラクタリゼーションを行うために、乾燥をオーブン内で90℃にて8時間行う。乾燥生成物の強熱減量は、22重量%である。
【0159】
乾燥生成物の焼成は、構造化剤を除去することによってミクロ多孔性(水)およびメソ多孔性の両方を解放するために必要であり、以下の温度プロファイル:30分間で200℃まで上昇、続いて200℃の段階で1時間、次いで3時間で550℃まで上昇および最後に550℃の段階で1.5時間を用いて行う。
【0160】
真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.260cm
3・g
−1および90m
2・g
−1である。このように得たメソ多孔性ゼオライト(または階層的多孔性を有するゼオライト)の結晶の数平均径は、4.5μmであり、Si/Al比は1.24に等しい。
【0161】
以下の文では、無水換算で表される質量は、生成物から生成物の強熱減量を減じた質量を意味する。
【0162】
[比較例1]
最終吸着材料の非ゼオライト相(NZP)の含有率が吸着材料の全重量に対して16重量%に等しくなるような、ゼオライト結晶のサイズ4.5μmのXHP型のゼオライトおよびカオリン型のバインダーを用いた、ビーズ形態のゼオライト吸着材料の調製
実施例Aの手順に従って合成したゼオライトX結晶の無水換算値1600g(結晶サイズ4.5μm)、カオリンの無水換算値350g、商品名Klebosol(R)30で販売されているコロイダルシリカ130g(30重量%のSiO
2および0.5%のNa
2Oを含有)およびまた混合物の凝集を可能にする量の水から成る、均質混合物を、ビーズ形成手法、例えば造粒プレートによって調製する。
【0163】
0.3mmから0.8mmの間で、0.55mmの体積平均径を有する分布ビーズを形成する。ビーズを80℃の通風オーブン内で終夜乾燥させる。ビーズを次いで窒素流下で550℃にて2時間、次いで除炭酸乾燥空気流下で550℃にて2時間にわたって焼成する。
【0164】
次いでバリウム交換を、95℃にて0.7M濃度の塩化バリウム溶液、BaCl
2を用いて4工程で行う。各工程において、固体の質量に対する溶液の体積比は20ml/gであり、交換は毎回4時間継続する。各交換の間、固体を複数回洗浄して、過剰な塩を遊離させる。次いで、固体を80℃にて2時間乾燥させ、次いで250℃にて窒素流下で2時間にわたって活性化させる。
【0165】
分析技法において上記したような、WDXRFによって測定したバリウム交換度は97%であり、強熱減量(900℃にて測定)は5.5%である。真空下での400℃、10時間にわたる脱気後の77Kにおける窒素吸着等温線からtプロット法に従って測定したミクロ細孔容積および外表面積はそれぞれ、0.192cm
3・g
−1および70m
2・g
−1である。
【0166】
水銀浸透によって測定した、マクロ細孔およびメソ細孔に含有される全容積(マクロ細孔容積およびメソ細孔容積の和)は、0.31cm
3・g
−1である。(マクロ細孔容積)/(マクロ細孔容積+メソ細孔容積)比は、0.65に等しい。
【0167】
97%バリウム交換吸着材料の非ゼオライト相の含有率は、吸着材料の全重量に対して16重量%である。
【0168】
[実施例2]
最終吸着材料の非ゼオライト相の含有率が吸着材料の全重量に対して4重量%から20重量%の間であるような、カオリン型の凝集バインダーを含む、XHP結晶のサイズが4.5μmの吸着材料
交換後の非ゼオライト相の含有率が4%から20%の間の範囲に及ぶ吸着材料を得るために、凝集バインダーの含有率を変化させて
比較例1を再現する。吸着材料に
比較例1と同じ処理を行う。結果を下の表1にまとめる。
【0169】
【表1】
【0170】
次いで、ピアッシング試験(前端クロマトグラフィー)を、選択した6種類の吸着材料に対して行い、これらの有効性を評価する。4%および5%のNZPを含有する吸着材料に試験を行わないのは、このような吸着材料は、これらの低い機械的強度のために、パラキシレン分離用途に使用できないためである。この試験に使用した吸着材料の量は、約34gである。強熱減量(LOI)は、5.4%および5.6%の間に設定する。
【0171】
ピアッシング曲線を得るための手順は、以下の通りである:
・カラムにシーブを充填して、試験床に設置;
・室温の溶媒を充填;
・溶媒流下(5cm
3・min
−1)で175℃まで徐々に上昇;
・吸着温度(175℃)に到達したら、30cm
3・min
−1にて溶媒を注入;
・溶媒/供給原料交換を行って供給原料(30cm
3・min
−1)注入;
・ピアッシング溶離液の回収および分析;供給原料の注入は、溶離液中の溶媒の濃度がゼロになるまで維持する。
【0172】
使用した溶媒は、パラジエチルベンゼンである。供給原料の組成は、以下の通りである:
−パラキシレン:45重量%、
−メタキシレン:45重量%、
−イソオクタン:10重量%(これは非選択的体積を概算するためのトレーサとして使用され、分離には関与しない。)。
【0173】
圧力は、供給原料が吸着温度にて液相に残存するのに十分であり、即ち1MPaである。表面速度は1.3cm/sである。
【0174】
メタキシレンに対するパラキシレンの選択性を、各化合物の吸着量から計算し、吸着量は、溶離液中に存在する構成成分すべてについて、ピアッシング曲線の第1のモーメントからの物質の残量によって求める。物質移動の品質は、パラキシレンピアッシング曲線からのEHTPを概算することによって評価する。結果を下の表2に示す。
【0175】
【表2】
【0176】
上の表において:
・キシレン吸着能力を、吸着材料1グラム当たりに吸着された、芳香族C8のcm
3で表す;
・「PX」は、パラキシレンを意味する;および最後に
・「EHTP」は、理論的プレート相当高さをcmで表す。
【0177】
16重量%および20重量%のNZPを含む吸着材料は、最高のキシレン吸着能力(0.205cm
3・g
−1)を有する吸着材料と比べて、10%を超える吸着能力の損失を有する。さらに、PX移動に対する拡散抵抗の上昇(EHTP)は、次第に顕著となり12%NZPを超える。