(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物体側から順に、負のパワーを持つ第一のレンズ群、正のパワーを持つ第二のレンズ群、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズ及び正レンズを少なくとも有する第三のレンズ群からなり、
前記第一のレンズ群の最も物体側のレンズ面から像面までの距離を一定に保ちながら、固定レンズ群である該第一のレンズ群及び前記第三のレンズ群に対して前記第二のレンズ群を光軸方向に移動させることで光学像を変倍させ、
前記第二のレンズ群は、
物体側から順に、正レンズ、正レンズ、正のパワーを持つ接合レンズからなり、
前記第二のレンズ群が有する2枚の正レンズは焦点距離が互いに異なっており、
前記2枚の正レンズの合成焦点距離をfc(単位:mm)と定義し、該2枚の正レンズの焦点距離のうち長い方の焦点距離をfp(単位:mm)と定義した場合に、次の条件式
0.3<fc/fp
を満たす、
内視鏡用変倍光学系。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る内視鏡用変倍光学系、及び内視鏡用変倍光学系を有する電子スコープについて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子スコープ1の外観を示す外観図である。
図1に示されるように、電子スコープ1は、可撓性を有するシース11aによって外装された挿入部可撓管11を備えている。挿入部可撓管11の先端部分(湾曲部14)は、挿入部可撓管11の基端に連結された手元操作部13からの遠隔操作(具体的には、湾曲操作ノブ13aの回転操作)に応じて湾曲する。湾曲機構は、一般的な内視鏡に組み込まれている周知の機構であり、湾曲操作ノブ13aの回転操作に連動した操作ワイヤの牽引によって湾曲部14を湾曲させる。湾曲部14の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された先端部12の基端が連結している。先端部12の方向が湾曲操作ノブ13aの回転操作による湾曲動作に応じて変わることにより、電子スコープ1による撮影領域が移動する。
【0020】
先端部12の樹脂製筐体の内部には、内視鏡用変倍光学系100(
図1中斜線で示されたブロック)が組み込まれている。内視鏡用変倍光学系100は、撮影領域中の被写体の画像データを採取するため、被写体からの光を固体撮像素子(図示省略)の受光面上に結像させる。固体撮像素子としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが挙げられる。
【0021】
次に、本発明の実施例1〜7に係る内視鏡用変倍光学系100について説明する。
【実施例1】
【0022】
図2(a)、
図2(b)は、本発明の実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
図2(a)は、変倍位置が広角端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
図2(b)は、変倍位置が望遠端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
【0023】
本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100は、
図2に示されるように、物体(被写体)側から順に、第一のレンズ群G1、絞りS、第二のレンズ群G2、第三のレンズ群G3を有している。本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100は、第一のレンズ群G1の最も物体側のレンズ面から像面までの距離(すなわち、内視鏡用変倍光学系100の全長)を一定に保ちながら、固定レンズ群である第一のレンズ群G1及び第三のレンズ群G3に対して第二のレンズ群G2を光軸方向AXに移動させることで、合焦状態を保持しつつ全系の焦点距離(第一のレンズ群G1から第三のレンズ群までの合成焦点距離)を変化させ、光学像を変倍させる構成となっている。各レンズ群G1〜G3を構成する各光学レンズは、内視鏡用変倍光学系100の光軸AXを中心として回転対称な形状を有している。第三のレンズ群G3の後段には、固体撮像素子用の色補正フィルタFが配置されている。色補正フィルタFは、固体撮像素子を保護するカバーガラスCGに接着されている。
【0024】
第一のレンズ群G1は、絞りSよりも物体側に配置された負のパワーを持つレンズ群である。第一のレンズ群G1は、物体側から順に、負レンズL1、負レンズL2と正レンズL3とを接合した接合レンズCL1を少なくとも有している。「少なくとも有している」と記載したのは、本発明の技術的思想の範囲において、平行平板等の別の光学素子を追加配置する構成例もあり得るからである。第二のレンズ群G2、第三のレンズ群G3の説明においても、同様の理由で「少なくとも有している」と表現している。
【0025】
言い換えると、第一のレンズ群G1は、1枚の単レンズと1つの接合レンズを含む構成となっている。
【0026】
第一のレンズ群G1を1枚の単レンズと1つの接合レンズ(本実施例1では、1枚の負レンズと正又は負のパワーを持つ1つの接合レンズ)を含む構成とすることにより、第一のレンズ群G1内での負のパワーを分散して正のパワーを持つことで群としてコマ収差及び色収差が良好に補正される。これにより、全系での収差の変動が抑えられ、広角端から望遠端に至るまでの各倍率で収差が良好に抑えられる。
【0027】
第二のレンズ群G2は、正のパワーを持つレンズ群である。第二のレンズ群G2は、物体側から順に、正レンズL4、負レンズL5と正レンズL6とを接合した正のパワーを持つ接合レンズCL2を少なくとも有している。第二のレンズ群G2は、固体撮像素子の受光面上に結像される光学像を変倍するため、絞りSと一体に光軸AX方向に移動する。第二のレンズ群G2と絞りSとを一体に移動させることにより、望遠端にしたときの非点収差の発生が効果的に抑えられる。
【0028】
絞りSは、光軸AXを中心とした所定の円形開口を有する板状部材、又は第二のレンズ群G2の絞りSに最も近いレンズ面(
図2の構成例においては、正レンズL4の物体側の面r7)であって光軸AXを中心とした所定の円形領域以外にコーティングされた遮光膜である。絞りSの厚みは、内視鏡用変倍光学系100を構成する各光学レンズの厚みと比べて非常に薄く、内視鏡用変倍光学系100の光学性能を計算する上で無視しても差し支えない。そのため、本明細書においては、絞りSの厚みをゼロとみなして説明を進める。
【0029】
第三のレンズ群G3は、物体側から順に、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL7、正レンズL8を少なくとも有している。物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL7を第二のレンズ群G2の像側、すなわち、第三のレンズ群G3内に配置することにより、電子スコープ1を用いて体腔内を観察する際に求められる倍率を第三のレンズ群G3に大きく負担させることができる。そのため、第一のレンズ群G1及び第二のレンズ群G2を小型化させることができ、電子スコープ1の細径化設計に有利となる。加えて、メニスカスレンズL7よりも像側に正レンズL8を配置することにより、メニスカスレンズL7で大きく発生する軸上色収差及び倍率色収差を良好に補正することができる。これにより、広角端から望遠端に至るまでの各倍率で収差が良好に抑えられる。
【0030】
本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100は、望遠端での第二のレンズ群G2の倍率をm
2tと定義し、広角端での第二のレンズ群G2の倍率をm
2wと定義し、望遠端から広角端に又は広角端から望遠端に変化するために必要な第二のレンズ群G2の移動量をd(単位:mm)と定義し、第二のレンズ群G2の焦点距離をf
2(単位:mm)と定義した場合に、次の2つの条件式(1)(2)
−1<m
2t<m
2w<−0.35・・・(1)
0.3<d/f
2<0.6・・・(2)
を満たす構成となっている。
【0031】
条件式(1)及び(2)が満たされることにより、内視鏡用変倍光学系100を精細なフォーカス調整に適した構成でありつつも小型化に設計することが可能となる。
【0032】
条件式(1)において倍率m
2wが右辺の値以上となる場合、広角端での第二のレンズ群G2の倍率m
2wが低いことから、変倍に必要な第二のレンズ群G2の移動量が大きくなり、内視鏡用変倍光学系100の全長が長くなる。この結果、全長の長い内視鏡用変倍光学系100を収容する必要上、硬質部分である電子スコープ1の先端部12の全長を長くしなければならない。また、条件式(1)において倍率m
2wが右辺の値以上となる場合、望遠端での第二のレンズ群G2の倍率m
2tが相対的に大きくなることから、第二のレンズ群G2を移動させたときの最良物体距離の変化が大きくなる。そのため、精細なフォーカス調整ができなくなる。
【0033】
体腔内を観察する際の電子スコープ1の使い勝手を考慮すると、最良物体距離は、広角端から望遠端に近付くほど短くなり、望遠端に到達したときに最も短くなるのが好ましい。しかし、条件式(1)において倍率m
2tが左辺の値以下となる場合、最良物体距離が望遠端に到達する前に最も短くなってしまう。そのため、体腔内を観察する際の電子スコープ1の使い勝手が悪くなる。
【0034】
条件式(2)において中辺の値が右辺の値以上となる場合、第二のレンズ群G2のパワーが強くなりすぎる又は移動量dが大きくなりすぎることから、広角端と望遠端との変倍比が大きくなりすぎる。これにより、拡大観察時の(望遠端側での)実効Fナンバが大きくなり、光量不足や解像度の低下が発生して、例えば被写界深度が狭くなったり観察し難くなったりする。
【0035】
条件式(2)において中辺の値が左辺の値以下となる場合、第二のレンズ群G2のパワーが弱くなりすぎる又は移動量dが小さくなりすぎることから、第二のレンズ群G2の僅かな移動でフォーカス調整を行わなければならない。そのため、精度の高いフォーカス調整機構が必要となり、電子スコープ1を高コスト化させたり大型化させたりしてしまう。また、フォーカス調整の範囲が狭くなりすぎるため、体腔内を観察する際の電子スコープ1の使い勝手が悪くなる。
【0036】
また、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100は、第二のレンズ群G2内の正レンズの焦点距離をf
21(単位:mm)と定義し、広角端での全系の焦点距離をf
w(単位:mm)と定義した場合に、次の条件式(3)
2<f
21/f
w<6・・・(3)
を満たす構成となっている。
【0037】
条件式(3)が満たされることにより、第二のレンズ群G2内の各レンズの偏芯感度(例えば光軸AXに対して配置面・形状面での偏芯が生じたときの収差の変化量)が低減される。
【0038】
条件式(3)において中辺の値が右辺の値以上となる場合、第二のレンズ群G2内の接合レンズのパワーが強くなりすぎて、接合レンズの偏芯感度が大きくなる。ここでは、特に、接合レンズの偏心により非点収差や倍率色収差が大きく発生する。また、変倍時における第二のレンズ群G2の移動量が大きくなるため、内視鏡用変倍光学系100の小型化設計に不利である。
【0039】
条件式(3)において中辺の値が左辺の値以下となる場合、第二のレンズ群G2内の正レンズのパワーが強くなりすぎて、正レンズの偏芯感度が大きくなる。ここでは、特に、正レンズの偏心により非点収差が大きく発生する。また、望遠端に近いほど球面収差が大きく発生して、解像度が低下する。
【0040】
表1に、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100(及びその後段に配置された光学部品)の具体的数値構成(設計値)を示す。表1中、左上欄に広角端での値(面データ)を示し、右上欄に望遠端での値(面データ)を示す。表1に示される面番号NOは、
図2中、物体側から像側に並ぶ各面(絞りSを含む。)に順に付した番号である。表1において、R(単位:mm)は光学部材の各面の曲率半径を、D(単位:mm)は光軸AX上の光学部材厚又は光学部材間隔を、N(d)はd線(波長588nm)の屈折率を、νdはd線のアッベ数を、それぞれ示す。
【0041】
また、表1に、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100の仕様(各種データ)を示す。具体的には、実効Fナンバ、全系の焦点距離(単位:mm)、光学倍率、半画角(単位:degree)、BF(バックフォーカス)(単位:mm)、像高(単位:mm)、内視鏡用変倍光学系100の全長(単位:mm)を示す。表1中、左下欄に広角端での値(各種データ)を示し、右下欄に望遠端での値(各種データ)を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
図3(a)のグラフA〜Dは、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が広角端にあるときの各種収差図である。
図3(b)のグラフA〜Dは、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が望遠端にあるときの各種収差図である。
図3(a)、(b)のグラフAは、d線、g線(波長436nm)、C線(波長656nm)での球面収差及び軸上色収差を示す。
図3(a)、(b)のグラフBは、d線、g線、C線での倍率色収差を示す。グラフA、B中、実線はd線での収差を、点線はg線での収差を、一点鎖線はC線での収差を、それぞれ示す。
図3(a)、(b)のグラフCは、非点収差を示す。グラフC中、実線はサジタル成分を、点線はメリディオナル成分を、それぞれ示す。
図3(a)、(b)のグラフDは、歪曲収差を示す。グラフA〜Cの縦軸は像高を、横軸は収差量を、それぞれ示す。グラフDの縦軸は像高を、横軸は歪曲率を、それぞれ示す。なお、広角端と望遠端との中間域においては、
図3(a)と
図3(b)とが示す範囲内で各種収差が変化する。また、本実施例1の各表又は各図面についての説明は、以降の各数値実施例で提示される各表又は各図面においても適用する。
【0044】
本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100は、
図2及び
図3並びに表1から判るように、小型でありながらも、広角端から望遠端に至るまでの各変倍位置で光学性能(特に、非点収差、コマ収差、色収差の補正)が良好である。
【実施例2】
【0045】
図4(a)、
図4(b)は、本発明の実施例2に係る内視鏡用変倍光学系100及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
図4(a)は、変倍位置が広角端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
図4(b)は、変倍位置が望遠端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
【0046】
図4に示されるように、本実施例2に係る内視鏡用変倍光学系100は、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100とレンズ構成が同一である。
【0047】
図5(a)のグラフA〜Dは、本実施例2に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が広角端にあるときの各種収差図である。
図5(b)のグラフA〜Dは、本実施例2に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が望遠端にあるときの各種収差図である。
【0048】
表2は、本実施例2に係る内視鏡用変倍光学系100を含む各光学部品の具体的数値構成及び仕様を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
本実施例2に係る内視鏡用変倍光学系100は、
図4及び
図5並びに表2から判るように、小型でありながらも、広角端から望遠端に至るまでの各変倍位置で光学性能(特に、非点収差、コマ収差、色収差の補正)が良好である。
【実施例3】
【0051】
図6(a)、
図6(b)は、本発明の実施例3に係る内視鏡用変倍光学系100及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
図6(a)は、変倍位置が広角端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
図6(b)は、変倍位置が望遠端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
【0052】
図6に示されるように、本実施例3に係る内視鏡用変倍光学系100は、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100とレンズ構成が同一である。
【0053】
図7(a)のグラフA〜Dは、本実施例3に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が広角端にあるときの各種収差図である。
図7(b)のグラフA〜Dは、本実施例3に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が望遠端にあるときの各種収差図である。
【0054】
表3は、本実施例3に係る内視鏡用変倍光学系100を含む各光学部品の具体的数値構成及び仕様を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
本実施例3に係る内視鏡用変倍光学系100は、
図6及び
図7並びに表3から判るように、小型でありながらも、広角端から望遠端に至るまでの各変倍位置で光学性能(特に、非点収差、コマ収差、色収差の補正)が良好である。
【実施例4】
【0057】
図8(a)、
図8(b)は、本発明の実施例4に係る内視鏡用変倍光学系100及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
図8(a)は、変倍位置が広角端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
図8(b)は、変倍位置が望遠端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
【0058】
図8に示されるように、本実施例4に係る内視鏡用変倍光学系100は、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100とレンズ構成が同一である。
【0059】
図9(a)のグラフA〜Dは、本実施例4に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が広角端にあるときの各種収差図である。
図9(b)のグラフA〜Dは、本実施例4に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が望遠端にあるときの各種収差図である。
【0060】
表4は、本実施例4に係る内視鏡用変倍光学系100を含む各光学部品の具体的数値構成及び仕様を示す。
【0061】
【表4】
【0062】
本実施例4に係る内視鏡用変倍光学系100は、
図8及び
図9並びに表4から判るように、小型でありながらも、広角端から望遠端に至るまでの各変倍位置で光学性能(特に、非点収差、コマ収差、色収差の補正)が良好である。
【実施例5】
【0063】
図10(a)、
図10(b)は、本発明の実施例5に係る内視鏡用変倍光学系100及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
図10(a)は、変倍位置が広角端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
図10(b)は、変倍位置が望遠端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
【0064】
図10に示されるように、本実施例5に係る内視鏡用変倍光学系100は、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100とレンズ構成が同一である。
【0065】
図11(a)のグラフA〜Dは、本実施例5に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が広角端にあるときの各種収差図である。
図11(b)のグラフA〜Dは、本実施例5に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が望遠端にあるときの各種収差図である。
【0066】
表5は、本実施例5に係る内視鏡用変倍光学系100を含む各光学部品の具体的数値構成及び仕様を示す。
【0067】
【表5】
【0068】
本実施例5に係る内視鏡用変倍光学系100は、
図10及び
図11並びに表5から判るように、小型でありながらも、広角端から望遠端に至るまでの各変倍位置で光学性能(特に、非点収差、コマ収差、色収差の補正)が良好である。
【実施例6】
【0069】
図12(a)、
図12(b)は、本発明の実施例6に係る内視鏡用変倍光学系100及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
図12(a)は、変倍位置が広角端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
図12(b)は、変倍位置が望遠端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
【0070】
図12に示されるように、本実施例6に係る内視鏡用変倍光学系100は、第二のレンズ群G2以外は、本実施例1に係る内視鏡用変倍光学系100とレンズ構成が同一である。
【0071】
本実施例6に係る第二のレンズ群G2は、正のパワーを持つレンズ群である。第二のレンズ群G2は、物体側から順に、正レンズL4、正レンズL4’、負レンズL5と正レンズL6とを接合した正のパワーを持つ接合レンズCL2を少なくとも有している。接合レンズCL2は、物体側から順に負レンズ、正レンズが並ぶものであっても、物体側から順に正レンズ、負レンズが並ぶものであってもよい。
【0072】
内視鏡用変倍光学系100の小型化には、移動レンズ群である第二のレンズ群G2に強いパワーを持たせる必要がある。しかし、第二のレンズ群G2のパワーを単純に強くしただけでは光学性能が劣化する(ここでは、特に、非点収差について偏芯感度が増大する)虞がある。そこで、第二のレンズ群G2を2枚の正レンズと接合レンズを含む構成として、パワーの負担を2枚の正レンズに分担させることにより、第二のレンズ群G2に強い正のパワーを持たせつつ、第二のレンズ群G2内における偏芯感度を低減させることができる。また、第二のレンズ群G2内で接合レンズを最も像側に配置することで、軸外光線が光軸AXから離れた位置を通るため、倍率色収差の低減に有利である。
【0073】
なお、第二のレンズ群G2内の正レンズの枚数は単純に多ければ多いほど良いというわけではない。例えば、第二のレンズ群G2内の正レンズの枚数を3枚以上に増やしたとしても、正レンズが2枚の構成と比べて偏芯感度を低減させる効果が大きく得られるわけではない。正レンズの枚数を3枚以上に増やした場合、部品点数の増加によってコストが増加したり内視鏡用変倍光学系100の全長が長くなったりするなど、却ってデメリットが大きい。
【0074】
また、本実施例6に係る内視鏡用変倍光学系100は、第二のレンズ群G2が有する2枚の正レンズの焦点距離が互いに異なっており、2枚の正レンズの合成焦点距離をf
c(単位:mm)と定義し、2枚の正レンズの焦点距離のうち長い方の焦点距離をf
p(単位:mm)と定義した場合に、次の条件式(4)
0.3<f
c/f
p・・・(4)
を満たす構成となっている。
【0075】
条件式(4)において右辺の値が左辺の値以下となる場合、パワーの負担を2枚の正レンズに適切に分担させられていない(2枚の正レンズのうち一方のパワーが強すぎる)ため、第二のレンズ群G2内における偏芯感度の低減の効果が低い。
【0076】
図13(a)のグラフA〜Dは、本実施例6に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が広角端にあるときの各種収差図である。
図13(b)のグラフA〜Dは、本実施例6に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が望遠端にあるときの各種収差図である。
【0077】
表6は、本実施例6に係る内視鏡用変倍光学系100を含む各光学部品の具体的数値構成及び仕様を示す。
【0078】
【表6】
【0079】
本実施例6に係る内視鏡用変倍光学系100は、
図12及び
図13並びに表6から判るように、小型でありながらも、広角端から望遠端に至るまでの各変倍位置で光学性能(特に、非点収差、コマ収差、色収差の補正)が良好である。
【実施例7】
【0080】
図14(a)、
図14(b)は、本発明の実施例7に係る内視鏡用変倍光学系100及びその後段に配置された光学部品の配置を示す断面図である。
図14(a)は、変倍位置が広角端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
図14(b)は、変倍位置が望遠端にあるときのレンズ配置を示す断面図である。
【0081】
図14に示されるように、本実施例7に係る内視鏡用変倍光学系100は、第一のレンズ群G1以外は、本実施例6に係る内視鏡用変倍光学系100とレンズ構成が同一である。
【0082】
本実施例7に係る第一のレンズ群G1は、絞りSよりも物体側に配置された負のパワーを持つレンズ群である。本実施例7に係る第一のレンズ群G1は、物体側から順に、負レンズL1’と正レンズL2’とを接合した負のパワーを持つ接合レンズCL1’、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズL3’を少なくとも有している。
【0083】
第一のレンズ群G1を1枚の単レンズと1つの接合レンズ(本実施例7では、負のパワーを持つ1つの接合レンズと1枚のメニスカスレンズ)を含む構成とすることにより、第一のレンズ群G1内での負のパワーを分散して正のパワーを持つことで群としてコマ収差及び色収差が良好に補正される。これにより、全系での収差の変動が抑えられ、広角端から望遠端に至るまでの各倍率で収差が良好に抑えられる。
【0084】
図15(a)のグラフA〜Dは、本実施例7に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が広角端にあるときの各種収差図である。
図15(b)のグラフA〜Dは、本実施例7に係る内視鏡用変倍光学系100において変倍位置が望遠端にあるときの各種収差図である。
【0085】
表7は、本実施例7に係る内視鏡用変倍光学系100を含む各光学部品の具体的数値構成及び仕様を示す。
【0086】
【表7】
【0087】
本実施例7に係る内視鏡用変倍光学系100は、
図14及び
図15並びに表7から判るように、小型でありながらも、広角端から望遠端に至るまでの各変倍位置で光学性能(特に、非点収差、コマ収差、色収差の補正)が良好である。
【0088】
(条件式の検証)
表8は、本実施例1〜7の各実施例において、条件式(1)〜(4)の各条件式を適用したときに算出される値の一覧表である。
【0089】
【表8】
【0090】
本実施例1〜5の各実施例に係る内視鏡用変倍光学系100は、表8に示されるように、条件式(1)〜(3)を満たす。また、本実施例6、7の各実施例に係る内視鏡用変倍光学系100は、表8に示されるように、条件式(1)、(2)、(4)を満たす。本実施例1〜7の各実施例では、各条件式を満たすことによる効果が奏される。
【0091】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明した内容に限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施形態等又は自明な実施形態等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。