(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車の例をもって説明する。しかしながら、本発明の実施の形態は、電動アシスト自転車だけに適用対象を限定するものではなく、人力に応じて移動する移動体(例えば、台車、車いす、昇降機など)の移動を補助するモータなどに対するモータ駆動制御装置についても適用可能である。また、電動アシスト車も、2輪だけではなく3輪などである場合もある。
【0010】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態における電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車の一例を示す外観図である。この電動アシスト自転車1は、モータ駆動装置を搭載している。モータ駆動装置は、バッテリパック101と、モータ駆動制御装置102と、トルクセンサ103と、ペダル回転センサ104と、モータ105と、操作パネル106と、人力センサ107と、荷重センサ108と、ハンドル切り角センサ111とを有する。
【0011】
また、電動アシスト自転車1は、ハンドルポスト110、前輪、後輪、前照灯、フリーホイール、変速機等も有している。
【0012】
バッテリパック101は、例えばリチウムイオン二次電池であるが、他種の電池、例えばリチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル水素蓄電池などであってもよい。そして、バッテリパック101は、モータ駆動制御装置102を介してモータ105に対して電力を供給し、回生時にはモータ駆動制御装置102を介してモータ105からの回生電力によって充電も行う。
【0013】
トルクセンサ103は、クランク軸周辺に設けられており、運転者によるペダルの踏力を検出し、この検出結果をモータ駆動制御装置102に出力する。また、ペダル回転センサ104は、トルクセンサ103と同様に、クランク軸周辺に設けられており、回転に応じた信号をモータ駆動制御装置102に出力する。
【0014】
モータ105は、例えば周知の三相直流ブラシレスモータであり、例えば電動アシスト自転車1の前輪に装着されている。モータ105は、前輪を回転させるとともに、前輪の回転に応じてローターが回転するように、ローターが前輪に連結されている。さらに、モータ105はホール素子等の回転センサを備えてローターの回転情報(すなわちホール信号)をモータ駆動制御装置102に出力する。
【0015】
ユーザが電動アシスト自転車1に搭乗している場合には、モータ駆動制御装置102は、モータ105の回転センサ、トルクセンサ103及びペダル回転センサ104等からの信号に基づき所定の演算を行って、モータ105の力行駆動を制御し、モータ105の回生制動の制御も行う。また、ユーザが電動アシスト自転車1を手で押す又は手で引くような状態(手押し状態と簡略化する場合もある)においては、モータ駆動制御装置102は、人力センサ107、モータ105の回転センサ、トルクセンサ103及び荷重センサ108等からの信号に基づき所定の演算を行って、モータ105の制御モードを決定して、当該制御モードにおいてモータ105を力行駆動又は回生制動させるように制御する。
【0016】
操作パネル106は、例えばアシストの有無に関する指示入力(すなわち、電源スイッチのオン及びオフ)、アシスト有りの場合には希望アシスト比等の入力をユーザから受け付けて、当該指示入力等をモータ駆動制御装置102に出力する。なお、本実施の形態では、操作パネル106に、電動アシスト自転車1を手で押す又は手で引くことを指示するボタンを有していないが、このようなボタンを設けて、以下で述べる制御の開始指示として受け付けるようにしても良い。
【0017】
人力センサ107は、例えばハンドルの継ぎ手部分であるステムに設けられた応力センサである。本実施の形態では、電動アシスト自転車1を前進させる方向への人力だけではなく、電動アシスト自転車1を後退させる方向への人力も検出するものとする。また、ステムに限らず、ハンドルのグリップ部分に設けるようにしたり、ハンドルポスト110のたわみを検出する箇所に設けるようにしたり、モータ105の軸付近に設けるようにしても良い。
【0018】
荷重センサ108は、例えばサドル下に設け、ユーザがサドルに着座したか否かを表す信号を、モータ駆動制御装置102に出力する。ハンドル切り角センサ111は、ハンドル切り角θを検出して、当該ハンドル切り角θをモータ駆動制御装置102に出力する。本実施の形態では、前輪と連結するホークとハンドルポスト110とは一体化されており、ハンドルはステムにおいてハンドルポスト110と連結されているので、ハンドルを動かすとハンドルポスト110がフレームに対して回転することで前輪も連動して回転する。ハンドル切り角センサ111は、この回転角をハンドル切り角θとして特定する。
【0019】
図2に、電動アシスト自転車1の上面図を示す。本実施の形態では、上で述べたように、人力センサ107は、ステムに設けられる。これによって、ユーザが、電動アシスト自転車1のハンドルの両グリップ109a及び109bを握って、電動アシスト自転車1を前進させたり後退させたりしたときに、電動アシスト自転車1にかけられる人力がその方向と共に検出される。なお、グリップ109a及び109bに、接触センサを設けて、両グリップを握っているか否かを検出して、その信号をモータ駆動制御装置102に出力するようにしても良い。さらに、グリップ109a及び109bに、人力センサ107を設けるようにしてもよい。
【0020】
図3に、電動アシスト自転車1のハンドルが傾けられている状態の上面図を示す。この状態で、ユーザが電動アシスト自転車1のハンドルのグリップ109a及び109bを握って押すと、ステムに設けられた人力センサ107は、例えば人力F
inを検出する。一方、ハンドル切り角センサ111は、ハンドル切り角θを検出する。
【0021】
次に、本実施の形態に係るモータ駆動制御装置102に関連する構成を
図4に示す。
【0022】
モータ駆動制御装置102は、制御器1020と、FET(Field Effect Transistor)ブリッジ1030とを有する。FETブリッジ1030は、モータ105のU相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Suh)及びローサイドFET(Sul)と、モータ105のV相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Svh)及びローサイドFET(Svl)と、モータ105のW相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Swh)及びローサイドFET(Swl)とを含む。このFETブリッジ1030は、モータ105を力行駆動又は回生制動させるインバータとして機能する。
【0023】
また、制御器1020は、演算部1021と、荷重入力部1022と、切り角入力部1023と、モータ回転入力部1024と、可変遅延回路1025と、モータ駆動タイミング生成部1026と、トルク入力部1027と、人力入力部1028と、AD(Analog-Digital)入力部1029とを有する。
【0024】
演算部1021は、操作パネル106からの入力(例えばアシストのオン/オフなど)、荷重入力部1022からの入力、切り角入力部1023からの入力、モータ回転入力部1024からの入力、トルク入力部1027からの入力、人力入力部1028からの入力、AD入力部1029からの入力を用いて所定の演算を行って、モータ駆動タイミング生成部1026及び可変遅延回路1025に対して出力を行う。なお、演算部1021は、メモリ10211を有しており、メモリ10211は、演算に用いる各種データ及び処理途中のデータ等を格納する。さらに、演算部1021は、プログラムをプロセッサが実行することによって実現される場合もあり、この場合には当該プログラムがメモリ10211に記録されている場合もある。また、メモリ10211は、演算部1021とは別に設けられる場合もある。
【0025】
荷重入力部1022は、荷重センサ108からの、着座の有無を表す信号を、ディジタル化して演算部1021に出力する。切り角入力部1023は、ハンドル切り角センサ111からのハンドル切り角θを表す信号を、ディジタル化して演算部1021に出力する。
【0026】
モータ回転入力部1024は、モータ105が出力するホール信号からモータ105の回転(本実施の形態においては前輪の回転)に関する信号(例えば回転位相角、回転方向など)を、ディジタル化して演算部1021に出力する。モータ回転入力部1024は、例えば、モータ回転入力から電動アシスト自転車1の速度(例えば正の速度は前進速度で、負の速度は後退速度)を算出して出力するようにしても良い。トルク入力部1027は、トルクセンサ103からの踏力に相当する信号をディジタル化して演算部1021に出力する。人力入力部1028は、人力センサ107からの人力を表す信号を、ディジタル化して演算部1021に出力する。AD入力部1029は、二次電池からの出力電圧をディジタル化して演算部1021に出力する。
【0027】
演算部1021は、演算結果として進角値を可変遅延回路1025に出力する。可変遅延回路1025は、演算部1021から受け取った進角値に基づきホール信号の位相を調整してモータ駆動タイミング生成部1026に出力する。演算部1021は、演算結果として例えばPWM(Pulse Width Modulation)のデューティー比に相当するPWMコードをモータ駆動タイミング生成部1026に出力する。モータ駆動タイミング生成部1026は、可変遅延回路1025からの調整後のホール信号と演算部1021からのPWMコードとに基づいて、FETブリッジ1030に含まれる各FETに対するスイッチング信号を生成して出力する。演算部1021の演算結果によって、モータ105は、力行駆動される場合もあれば、回生制動される場合もある。なお、モータの駆動等の基本動作については、国際公開第2012/086459号パンフレット等に記載されており、本実施の形態の主要部ではないので、ここでは説明を省略する。
【0028】
次に、
図5に、演算部1021における手押し制御部3000に関連する機能ブロック構成例を示す。手押し制御部3000は、状態判定部3100と、モード判定部3200と、制御部3300とを有する。
【0029】
状態判定部3100は、ペダルトルク入力や着座の有無などに基づき、本実施の形態に係る制御を行うか否かを判定し、行う場合には手押し状態通知を、行わない場合には乗車状態通知を制御部3300に出力する。モード判定部3200は、モータ回転入力に含まれるモータ回転方向と、人力入力に含まれる人力の方向とから、制御モードを判定し、制御部3300に出力する。制御部3300は、状態判定部3100から手押し状態通知を受け取っている場合には、モード判定部3200からの制御モードに従って、切り角入力と人力入力とから、モータ105で生成すべきトルクを算出して、当該トルクを生じるように、モータ105の制御を行う。
【0030】
本実施の形態では、制御モードは、正方向力行と、正方向回生又は負方向力行と、正方向力行又は負方向回生と、負方向力行とのいずれかである。演算部1021は、いずれかの制御モードで動作するようにモータ駆動タイミング生成部1026、可変遅延回路1025及びFETブリッジ1030を介してモータ105を力行駆動又は回生制動させる。
【0031】
本実施の形態において、手押し状態におけるどのような状況においてどのような制御を行うかについて、
図6にまとめる。なお、電動アシスト自転車1の進行方向(前進又は後退)、モータ回転方向、モータ出力トルクの方向、人力の方向などについては、
図7に示しておく。
【0032】
モード1は、典型的には、坂を上向きに前進する状況(坂を前向きに上る状況)、及び平地を前進する状況において、人力が正の方向に働いて電動アシスト自転車1を前進させるように押しているため、電動アシスト自転車1が前方向に進んでおり(走行時に相当)、モータ回転は正方向になる、という状態での制御モードを表している。このような状態においては、正方向力行をモータ105に行わせることで、人力をアシストすることが好ましい。このとき、モータ出力トルクは正である。なお、人力が正の方向に働いて電動アシスト自転車1を前進させるように押していても、電動アシスト車1が動かない場合(停車時に相当)もあり、このような場合モータ回転はないが、人力の方向に従って、正方向力行をモータ105に行わせる。
【0033】
但し、例えば、坂を上向きに前進する状況や平地を前進する状況から、坂を下向きに前進する状況(坂を前向きに下る状況)に変化して、電動アシスト自転車1が正方向に進みすぎの場合には、人力は負の方向に変化して、電動アシスト自転車1を後ろ方向に引くようになるので、モード2(場合によってはモード4)に遷移する。
【0034】
モード2は、典型的には、坂を下向きに前進する状況において、人力が負の方向に働いて電動アシスト自転車1を後退させるように引いているが、電動アシスト自転車1の自重のため電動アシスト自転車1は前進しており(走行時に相当)、モータ回転は正方向になる、という状態での制御モードを表している。このような状態においては、電動アシスト自転車1があまり速く坂を下向きに前進しないように正方向回生又は負方向力行をモータ105に行わせることで、負方向の人力をアシストすることが好ましい。このとき、モータ出力トルクは負である。なお、正方向回生と負方向力行については、例えばモータ回転から得られる速度や、当該速度と人力との関係で切り替えるようにしても良い。また、人力が負方向に働いて電動アシスト自転車1を後退させるように引いているが、電動アシスト自転車1が動かない場合(停車時に相当)もあり、このような場合にはモータ回転は無いが、人力の方向に従って負方向力行をモータ105に行わせる。
【0035】
但し、例えば、坂の傾斜が緩くなってきて、電動アシスト自転車1が意図したように進まなくなるようであれば、人力が正方向に変化して、電動アシスト自転車1を押すようになるので、モード1に遷移する。一方、例えば、坂を目標より下りすぎてしまったような場合には、負方向の人力が増加するので、モータ回転は負方向に転換し、モード4に遷移する。
【0036】
モード3は、例えば、坂を上向きに後退する状況(坂を後ろ向きに下る状況)において、人力が正の方向に働いて電動アシスト自転車1を押しているが、電動アシスト自転車1の自重によって後退しており(走行時に相当)、モータ回転は負方向になる、という状態での制御モードを表している。このような状態においては、正方向力行又は負方向回生をモータ105に行わせることで、正方向の人力をアシストすることが好ましい。このとき、モータ出力トルクは正である。なお、正方向力行と負方向回生については、例えばモータ回転から得られる速度や、当該速度と人力との関係で切り替えるようにしても良い。また、人力が正の方向に働いて電動アシスト自転車1を押しているが、電動アシスト自転車1が動いていない場合(停車時に相当)もあり、このような場合にはモータ回転は無いが、人力の方向に従って正方向力行をモータ105に行わせる。
【0037】
但し、例えば後退させずに前進させたい場合には、人力は正方向に増加するので、モータ回転が正方向に転換し、モード1に遷移する。
【0038】
モード4は、例えば、坂を下向きに後退する状況(坂を後ろ向きに上る状況)において、人力は負方向に働いて、電動アシスト自転車1も後退しており(走行時に相当)、モータ回転が負方向になる、という状態での制御モードを表している。このような状態においては、負方向力行をモータ105に行わせることで、人力をアシストすることが好ましい。このとき、モータ出力トルクは負である。なお、人力が負の方向に働いて電動アシスト自転車1を引いているが、電動アシスト自転車1が動かない場合(停車時に相当)もあり、このような場合にはモータ回転は無いが、人力の方向に従って負方向力行をモータ105に行わせる。
【0039】
但し、例えば後退した先が下り坂であったりして、負方向に電動アシスト自転車1が進みすぎた場合には、正方向に人力が変化するので、モード3に遷移し、さらにはモード1に遷移する。
【0040】
なお、停車状態では、モード1とモード3とは区別できず、電動アシスト自転車1が動き始めると、モータ回転方向に応じて制御モードが切り替わる。但し、いずれの場合も正方向力行となる場合もある。モード1とモード3で正方向力行を行う場合でも、アシストの程度は異なる場合もある。同様に、停車状態では、モード2とモード4とを区別できず、電動アシスト自転車1が動き始めると、モータ回転方向に応じて制御モードが切り替わる。但し、いずれの場合も負方向力行となる場合もある。モード2とモード4で負方向力行を行う場合でも、アシストの程度は異なる場合もある。
【0041】
このような制御モード分けを行うことで、電動アシスト自転車1を手押しする場合や手で引く場合であっても、モータ105の適切な制御が行われるようになる。
【0042】
次に、
図8及び
図9を用いて、手押し制御部3000の処理内容について説明する。
【0043】
手押し制御部3000は、人力入力部1028から人力F
inを、モータ回転入力部1024からモータ回転入力を取得する(
図8:ステップS1)。人力F
inは、ステムやハンドルポスト110に設けられた人力センサ107からの入力ではなく、ハンドルのグリップ109a及び109bに設けられた2つのセンサからの入力である場合もある。2つのセンサからの入力の場合、それらを加算して人力F
inを算出しても良いし、2つの値を平均することで人力F
inを算出するようにしても良い。
【0044】
また、手押し制御部3000は、切り角入力部1023からハンドル切り角θを取得する(ステップS3)。さらに、手押し制御部3000は、状態判定のための入力を取得する(ステップS5)。状態判定のための入力は、本実施の形態の場合、トルク入力部1027からのペダルトルク入力、及び荷重入力部1022からの着座の有無を表す入力である。但し、ハンドルのグリップ109a及び109bに設けられた接触センサからの入力を含む場合もある。
【0045】
そして、状態判定部3100は、手押し状態であるか否かを判断する(ステップS7)。例えば、着座無しを表す入力があり、且つペダルトルク入力が閾値未満である場合に手押し状態であると判断する。安全性を高めるために、グリップ109a及び109bに設けた2つの接触センサの両方から接触有りを表す入力を取得することを要件にする場合もある。また、センサの数を減らすために、それらのいずれかで判断するようにしても良い。なお、電動アシスト自転車1が前進している場合には、ペダル回転(クランク回転)が無いことを要件にすることができるが、後退する場合には自動的にペダルが回転してしまうので、本実施の形態では要件から除外している。
【0046】
手押し状態では無いと判断した場合には、状態判定部3100は、乗車状態通知を制御部3300に出力し、制御部3300は、従来の制御を行う(ステップS15)。例えばペダルトルク入力に応じたアシストトルクを生じさせるように制御を行う。
【0047】
一方、手押し状態であると判断した場合には、状態判定部3100は、手押し状態通知を制御部3300に出力する。
【0048】
また、モード判定部3200は、人力F
inが0であるか否かを判断する(ステップS9)。人力F
in=0である場合には、モード判定部3200は、
図6を用いて説明した制御モード以外のモード5を制御部3300に出力する。この場合、制御部3300は、モータ出力無しとして制御する(ステップS13)。すなわち、モータ105のモータ出力トルクはゼロとなる。そして処理はステップS17に移行する。ここでは人力F
inが0であるか否を確認しているが、人力F
inの絶対値と正の一定値とを比較するようにしてもよい。すなわち、人力F
inの絶対値が一定値未満であるならば、モータ105によるアシストを行わなくても良い状態と判断してモータ出力トルクを出さないようにしてもよい。
【0049】
一方、人力F
inがゼロではない場合には、モード判定部3200及び制御部3300は、モード別制御処理を実行する(ステップS11)。モード別制御処理については、
図9を用いて説明する。
【0050】
モード判定部3200は、人力F
inが正の値であるか否かを判断する(
図9:ステップS21)。本ステップにおいても、人力F
inが正の一定値以上であるか否かを判断するようにしても良い。一定値未満であればモータ105によるアシストを行わなくても良い状態と判断するものである。なお、このように判断する場合には、ステップS29の前に、F
inが負の一定値以下であるか否かを判断するようにする。
【0051】
人力F
inが正の値である場合には、モード判定部3200は、モータ回転がなし又は正方向であるか否かを判断する(ステップS23)。モータ回転がなし又は正方向である場合(速度がゼロ又は正の値である場合)には、モード判定部3200は、モード1であると判断して、モード1を制御部3300に通知する。そうすると、制御部3300は、人力F
in及びハンドル切り角θに応じたトルクで、モータ105を正方向力行を行うように制御する(ステップS25)。そして処理は呼び出し元の処理に戻る。
【0052】
本実施の形態では、
図3に示すように、前輪の方向へ実質的に作用する人力F
eに応じたモータ出力トルクτを生じさせることを念頭に置き、
モータ出力トルクτ=α×r×F
in×cosθ (1)
を演算する。rは、モータ105が搭載された車輪(ここでは前輪)の半径を表し、αは、アシストの程度を表す係数である。αについては、制御モードに応じて変化する場合もある。
図3においてF
in×cosθ=F
eである。
【0053】
一方、モータ回転がなし又は正方向ではない場合、すなわち、モータ回転が負方向(速度が負の値である)である場合には、モード判定部3200は、モード3であると判断して、モード3を制御部3300に通知する。そうすると、制御部3300は、人力F
in及びハンドル切り角θに応じたトルクを、正方向力行又は負方向回生で生じさせるように制御する(ステップS27)。モータ出力トルクは(1)式で算出される。そして処理は呼び出し元の処理に戻る。
【0054】
また、人力F
inが負である場合には、モード判定部3200は、モータ回転が正方向であるか否かを判断する(ステップS29)。モータ回転が正方向である場合(速度が正の値である場合)には、モード判定部3200は、モード2であると判断して、モード2を制御部3300に通知する。そうすると、制御部3300は、人力F
in及びハンドル切り角θに応じたトルクを、正方向回生又は負方向力行で生じさせるように制御する(ステップS31)。モータ出力トルクは(1)式で算出される。そして処理は呼び出し元の処理に戻る。
【0055】
一方、モータ回転が正ではない場合、すなわち、モータ回転が負方向(速度が負の値である)又は無し(速度がゼロである)である場合には、モード判定部3200は、モード4であると判断して、モード4を制御部3300に通知する。そうすると、制御部3300は、人力F
in及びハンドル切り角θに応じたトルクを、負方向力行で生じさせるように制御する(ステップS33)。モータ出力トルクは(1)式で算出される。そして処理は呼び出し元の処理に戻る。
【0056】
図8の説明に戻って、手押し制御部3000は、例えばユーザから電源断が指示されるなど処理終了が指示されるまで、ステップS1乃至S15を、単位時間毎に実行する(ステップS17)。
【0057】
このように状況に応じた制御モード毎に適切な力行駆動又は回生制動が行われるようになって、電動アシスト自転車1を手で押す場合又は手で引く場合であっても、操作性及び利便性が向上する。
【0058】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、目的に応じて、上で述べた実施の形態における任意の技術的特徴を削除するようにしても良い。
【0059】
さらに、上で述べた機能ブロック図は一例であって、1の機能ブロックを複数の機能ブロックに分けても良いし、複数の機能ブロックを1つの機能ブロックに統合しても良い。処理フローについても、処理内容が変わらない限り、ステップの順番を入れ替えたり、複数のステップを並列に実行するようにしても良い。
【0060】
演算部1021は、一部又は全部を専用の回路にて実装しても良いし、予め用意したプログラムを実行することで、上で述べたような機能を実現させるようにしても良い。
【0061】
センサの種類も上で述べた例は一例であり、上で述べたパラメータを得られるような他のセンサを用いるようにしても良い。なお、設置箇所についても、センサで測定するパラメータの主旨に沿った形で変更しても良い。
【0062】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0063】
本実施の形態に係るモータ制御装置は、(A)電動アシスト車のモータを力行駆動又は回生制動させるインバータと、(B)ユーザが電動アシスト車を手で押す又は手で引く状態における人力の方向及びモータの回転方向に基づきモータの制御モードを決定し、決定された制御モードにおいて人力に基づくトルクをモータに生じさせるようにインバータを制御する制御部とを有する。
【0064】
このように手で押す又は手で引く状態における人力及びモータ回転に基づき、適切な制御モードにて、ユーザを適切に補助できるようになる。
【0065】
なお、上で述べた制御モードは、モータの正方向力行と、モータの正方向回生又は負方向力行と、モータの負方向回生又は正方向力行と、モータの負方向力行とのいずれかである場合もある。好ましい制御モードは、状況に応じて決定される。
【0066】
具体的には、上で述べた制御部は、(b1)人力の方向が正方向で且つモータの回転方向が正方向である場合、制御モードとしてモータの正方向力行を決定し、(b2)人力の方向が正方向で且つモータの回転方向が負方向である場合、制御モードとしてモータの負方向回生又は正方向力行を決定し、(b3)人力の方向が負方向で且つモータの回転方向が正方向である場合、制御モードとしてモータの正方向回生又は負方向力行を決定し、(b4)人力の方向が負方向で且つモータの回転方向が負方向である場合、制御モードとしてモータの負方向力行を決定するようにしても良い。上で述べたように想定される手押し状態では、このように場合分けするのが好ましい。
【0067】
また、上で述べた制御部が、人力を電動アシスト車のハンドルの切り角で補正するようにしても良い。例えばハンドルにより車輪が向く方向に作用する人力に基づきトルクを算出するものである。
【0068】
さらに、上で述べた制御部が、ユーザが電動アシスト車を手で押す又は手で引く状態を、電動アシスト車のハンドルにおける両グリップを握っていることを検出するセンサからの出力と、所定値未満のペダルトルク入力と、電動アシスト車への乗車を検出するセンサの乗車無しを表す出力とのうち少なくともいずれかにより検出するようにしても良い。乗車している場合には、従来の制御を行うべきだからである。また、このような判断を行うことで安全性を向上させることができる。
【0069】
なお、上で述べたモータが、電動アシスト車のハンドルの動きに連動して動く車輪に設けられている場合もある。このようなモータであれば、手押し状態において適切な補助がしやすくなる。
【0070】
このような構成は、実施の形態に述べられた事項に限定されるものではなく、実質的に同一の効果を奏する他の構成にて実施される場合もある。