【実施例】
【0089】
以下の実施例は、本発明者らが発明と見なすものの範囲を限定することを意図しない。特に断りのない限り、部分は重量による部分であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、かつ圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0090】
実施例1
ヒトIL-3/GM-CSFおよびヒトTPOマウスの作製
hIL-3/GM-CSFターゲティング
1回のターゲティング工程でマウスIL-3遺伝子をヒトIL-3遺伝子と置換し、マウスGM-CSF遺伝子をヒトGM-CSF遺伝子と置換するためのターゲティング構築物は、ギャップ修復クローニングを利用するVELOCIGENE(登録商標)技術(例えば、米国特許第6,586,251号およびValenzuela et al. (2003) "High-throughput engineering of the mouse genome coupled with high-resolution expression analysis," Nat Biot 21(6):652-659を参照されたい。参照により本明細書に組み入れる)を用いて構築した。
【0091】
マウス配列は細菌人工染色体(BAC)RPCI-23、クローン5E15から取得した。ヒト配列はCaltech Dライブラリー(CTD)、BACクローン2333J5から取得した。
【0092】
p15複製起点を含むギャップ修復ドナーベクターは、mIL-3 ATGのすぐ上流の5'マウスホモロジーアーム、hIL-3 ATGから約274ntまでhIL-3遺伝子にわたるヒト5'IL-3ホモロジーアーム、ポリリンカー、hGM-CSF遺伝子のポリA配列の約2.9kb下流で開始する3'hGM-CSF(約233塩基)、および薬物選択カセットと、これに続くmGM-CSFポリA配列の下流(約2.9kb下流)の配列を有するマウス3'ホモロジーアームをクローニングすることによって構築した。このギャップ修復ベクターを線状化し、かつヒトCTD BACクローン2333J5と組換え酵素ベクターを含む大腸菌(E. coli)DH10B株に、Valenzuelaらに記載される通りに挿入した。
【0093】
細胞を薬物選択培地で増殖させた。個々のクローンを増殖させて、ギャップ修復ドナーベクターDNAを抽出し、適切なマウス-ヒト接合点について該ベクターの部分を配列決定した。パルスフィールドゲル電気泳動を用いて、挿入物のサイズおよび予想される制限断片長を確認した。
【0094】
hIL-3遺伝子に隣接するマウス上流および下流ホモロジーボックス、hGM-CSF遺伝子、およびロキシド(loxed)薬物選択カセットを含む捕捉ドナー(captured donor)を修復ドナーベクターから得て、その捕捉ドナーを線状化し、線状化した捕捉ドナーを、RPCI23クローン5E15とpABGベクターを含む大腸菌DH10Bに導入した。細胞を薬物選択培地で増殖させた。RPCI23クローン5E15 DNA中に捕捉ドナーDNAを含む(ターゲティングベクターを形成する)個々のクローンを単離し、ターゲティングベクターDNAを抽出し、かつ適切なマウス-ヒト接合点について該ベクターの部分を配列決定した。パルスフィールドゲル電気泳動を用いて、挿入物のサイズおよび予想される制限断片長を確認した。
【0095】
エレクトロポレーション
ターゲティングベクターを線状化し、これを用いてValenzuelaらに記載される通りにマウスES細胞をエレクトロポレーションにかけた。エレクトロポレーション処理を行った、ターゲティングベクターを含むマウスES細胞は、ロキシド薬物選択カセットを除くために、一過性Cre発現ベクターを用いてさらにエレクトロポレーションにかけた。そのターゲティングベクターをRag2 HET Il2rg y/- ES細胞にエレクトロポレーションにより導入した。RAG2遺伝子とIl2rg遺伝子のノックアウトがなされた親ES細胞株は市販のV17 ES細胞(BALB/c×129ヘテロ接合体)であった。hIL-3およびhGM-CSF遺伝子でターゲティングされたES細胞は、マウス胚に導入するために使用した。
【0096】
hIL-3/GM-CSFマウス
ターゲティングされたドナーES細胞を、8細胞期のマウス胚にVELOCIMOUSE(登録商標)法により導入する(例えば、米国特許第7,294,754号およびPoueymirou et al. (2007) "F0 generation mice that are essentially fully derived from the donor gene-targeted ES cells allowing immediate phenotypic analyses," Nat Biot 25(1):91-99を参照されたい。参照により本明細書に組み入れる)。ヒト化IL-3およびGM-CSF構築物を保持するVELOCIMICE(登録商標)(完全にドナーES細胞に由来するF0マウス)は、対立遺伝子アッセイ法の変法(例えば、Valenzuelaら参照)を用いて、マウス対立遺伝子の喪失とヒト対立遺伝子の獲得について遺伝子型を同定することによって同定される。これらのマウスを最初にBALB/cAnNCRと交配させ、次にRag2とIl2rgについてヘテロ接合性で、ヒトIL-3/GM-CSF KIを含むマウスを、移植研究のためにRag2/Il2rg二重KOマウスと交配させる。
【0097】
hIL-3/GM-CSFマウスの表現型分類
ヒト化マウスは、hGM-CSF特異的プライマーを用いるRT-PCRによって、ヒトGM-CSFの産生について試験した。試験した組織のヒトGM-CSFの発現パターンはマウスGM-CSFのそれに一致した(主に肺で発現)。ConAとIL-2で48時間刺激した、ヒト化マウス由来の脾細胞のELISAを実施して、hIL-3とhGM-CSFの存在を検出した。脾細胞はhIL-3とhGM-CSFの両方の発現について陽性であった。
【0098】
hTPOターゲティング
1回のターゲティング工程でマウスTpo(mTpo)遺伝子をヒトTPO(hTPO)遺伝子と置換するためのターゲティング構築物(
図11(d))は、ギャップ修復クローニングを利用するVELOCIGENE(登録商標)技術を用いて構築した(Valenzuela et al.)。このベクターは、Tpoのオープンリーディングフレームを含む配列を置換するが、マウス由来のプロモーターと5'UTRを維持するように設計された。マウス配列を細菌人工染色体(BAC) RPCI-23、クローン98H7から得た。ヒト配列をBAC RPCI-11、クローン63m3から得た。p15複製起点を含むギャップ修復ドナーベクターは、mTpo ATGのすぐ上流の5'マウスホモロジーアーム、hTPO ATGから約275ntまでhTPO遺伝子にわたるヒト5'TPOホモロジーアーム、ポリリンカー、hTPO遺伝子のポリA配列の約1.5kb下流で開始する3'hTPOホモロジーアーム、およびロキシド薬物選択カセットと、これに続くmTpoポリA配列の下流(約3.5kb下流)の配列を有するマウス3'ホモロジーアームをクローニングすることによって構築した。このギャップ修復ベクターを線状化し、かつヒトBACクローンRPCI-11、63m3と組換え酵素ベクターを含む大腸菌DH10B株に挿入した。細胞を薬物選択培地で増殖させた。個々のクローンを増殖させて、ギャップ修復ドナーベクターDNAを抽出し、適切なマウス-ヒト接合点について該ベクターの部分を配列決定した。パルスフィールドゲル電気泳動を用いて、挿入物のサイズおよび予想される制限断片長を確認した。hTPO遺伝子に隣接するマウス上流および下流ホモロジーボックスおよびロキシド薬物選択カセットを含む捕捉ドナーを修復ドナーベクターから得て、その捕捉ドナーを線状化し、線状化した捕捉ドナーを、RPCI-23クローン98H7とpABGベクターを含む大腸菌DH10Bに導入した。細胞を薬物選択培地で増殖させた。RPCI-23クローン98H7 DNA中に捕捉ドナーDNAを含む(ターゲティングベクターを形成する)個々のクローンを単離し、ターゲティングベクターDNAを抽出し、かつ適切なマウス-ヒト接合点について該ベクターの部分を配列決定した。パルスフィールドゲル電気泳動を用いて、挿入物のサイズおよび予想される制限断片長を確認した。ターゲティングベクターを線状化し、これを用いてマウス胚性幹(ES)細胞をエレクトロポレーションにかけた。ターゲティングベクターはRAG2+/-γ
cY/-ES細胞にエレクトロポレーションにより導入した。親RAG2
+/-γ
cY/-ES細胞株は、市販されているV17 ES細胞株(BALB/c×129ヘテロ接合体)から作られた。正しくターゲティングされたES細胞は、ロキシド薬物選択カセットを除くために、一過性Cre発現ベクターを用いてさらにエレクトロポレーションにかけた。hTPOでターゲティングされた、選択カセットを含まないES細胞を、8細胞期のマウス胚にVELOCIMOUSE(登録商標)法により導入した(Poueymirou et al)。野生型Tpo(TPO
m/m)、ヘテロ接合型(TPO
h/m)またはホモ接合型(TPO
h/h)TPO遺伝子置換をもつRag2
-/-γ
c-/-マウスが得られた。
【0099】
実施例2
hIL-3/GM-CSFマウス:移植
ヒト造血幹細胞の単離
ヒト臍帯血および胎児肝臓試料は、それぞれイェールニューヘブン病院(Yale-New Haven Hospital)およびアルバート・アインシュタイン医科大学ニューヨーク(Albert Einstein Medical College New York)から、イェール大学の人権擁護調査委員会(Human Investigation Committee)の承認の下で得られたものである。CD34+細胞は、ヒト臍帯血または胎児肝臓から、密度勾配遠心およびCD34マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社)を用いる免疫磁気選別によって単離した。単離されたCD34陽性細胞の純度をフローサイトメトリーにより確認した。精製したヒトCD34陽性細胞は凍結保存され、使用前に液体窒素中で保存した。
【0100】
ヒト造血幹細胞を用いたマウスの移植
移植は以前に記載された通りに行った(Traggiai et al. (2004) Development of a human adaptive immune system in cord blood cell-transplanted mice, Science 304:104-107)。簡単に説明すると、出生日に、RAG2遺伝子ノックアウト/Il2rg遺伝子ノックアウトの背景(hIL-3/hGM-CSFを含むまたは含まない)からの仔マウスを亜致死的に照射した(4時間間隔で2×200cGy)。照射後、新生仔は30ゲージ針を用いる肝内注射によって1〜2×10
5個のヒトCD34+細胞(25μLのPBS中に再懸濁したもの)を受け取った。対照にはPBSのみを注射した。マウスは生後3〜4週間で離乳させ、特定病原体フリーの条件下で維持した。日和見感染を防ぐために、マウスに飲料水中の予防的抗生物質(サルファトリム(Sulfatrim))を投与した。すべての動物実験作業はイェール大学の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee: IACUC)によって承認され、IACUCの規則に従って実施された。
【0101】
移植されたマウスの解析
ヒト造血細胞の生着は移植後8〜12週で判定した。血液試料を後眼窩洞(retro-orbital sinus)から採取し、ACK溶解緩衝液(Lonza社)を用いて赤血球の溶解を行った。次に、試料をマウスCD45、ヒトCD45、ヒトCD3、およびヒトCD14に対する蛍光標識モノクローナル抗体(すべてBD Biosciences社から)で染色し、FACScalibur(商標)(BD Biosciences社)でフローサイトメトリーにより解析した。感染実験に用いたマウスは、特に明記しない限り、>4%のhCD45+細胞の血中生着レベルを有していた。適合したマウス、すなわち同じバッチのCD34+細胞を用いて移植されたマウスを、実験に使用した。特に明記しない限り、実験はFL由来のCD34+細胞を用いて移植されたマウスを用いて行った。
【0102】
フローサイトメトリー
hIL-3/GM-CSF研究のため、移植後10〜14週のマウスの肺、BAL、骨髄、胸腺、脾臓および血液から細胞懸濁液を調製した。RBCの溶解はACK溶解緩衝液(Lonza社)を用いて行った。次に、マウスおよびヒト細胞表面抗原に対する蛍光色素標識モノクローナル抗体(mAb)で試料を染色した。次のmAbを使用した:(1)抗ヒト:CD3 (UCHT1)、CD4 (RPA-T4)、CD8 (HIT8a)、CD11c (B-ly6)、CD14 (MoP9)、CD19 (HIB19)、CD33 (WM53)、CD45 (HI30および2D1)、CD56 (NCAM 16.2)、CD66 (B1.1)、CD116 (4H1)、CD123 (9F5)。(2)抗マウス:CD45 (30-F11)、F4/80 (BM8)。CD116、CD45 (30-F11)およびF4/80 mAbはeBioscience社から購入した。他のすべてのmAbはBD Biosciences社から購入した。試料はFACSCalibur(商標)またはLSRII(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences社)で解析した。
【0103】
メチルセルロースCFUアッセイ法
hIL-3/GM-CSF研究のため、移植されたマウスからのヒトCD34+骨髄細胞をセルソーティングにより精製した。ソーティングされた細胞(1〜1.5×10
5個)をイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、GIBCO社)ベースのメチルセルロース培地(Methocult(商標)H4100、StemCell Technologies社)で培養した。該培地には20%FBS、1%BSA、2mM L-グルタミン、55μM 2-メルカプトエタノール、および次のヒトサイトカインを添加した:幹細胞因子(10ng/ml)、FLT3リガンド(10ng/ml)、トロンボポエチン(50ng/ml)、IL-3 (20ng/ml)、IL-6 (10ng/ml)、IL-11 (10ng/ml)、GM-CSF (50ng/ml)、およびエリトロポエチン(4U/ml)(すべてR&D Systems社)。細胞を60mmペトリ皿で37℃/5%C0
2にてインキュベートした。12〜14日後にコロニーの数を顕微鏡で測定した。
【0104】
LPSに対する炎症反応
マウスにUltrapure LPS E. coli 0111:B4 (Invivogen社)の2回腹腔内注射を48時間間隔で行った(35および17.5μg)。各注射の2〜3時間後に血清を採取した。ヒトIL-6の血清濃度をELISA (R&D Systems社)で測定した。最初のLPS注射の72時間後にマウスを屠殺し、心穿刺で血液を採取してフローサイトメトリーに使用した。
【0105】
細胞内サイトカイン染色
hIL-3/GM-CSF研究のため、全TB10.4タンパク質(Skjot et al. (2002) Epitope mapping of the immunodominant antigen TB10.4 and the two homologous proteins TB10.3 and TB12.9, which constitute a subfamily of the esat-6 gene family, Infect. Immun. 70:5446-5453)をカバーする重複ペプチドをイェール大学のW.M. Keck Facilityで合成した。BCG感染したマウス由来の脾細胞(2×10
6個/ウェル)を混合ペプチド(5μg/mlの各ペプチド)と共に、96ウェルのU底マイクロタイタープレート(Becton Dickinson社)において200μl/ウェルの全体積で37℃/5%C0
2にて5時間インキュベートした。細胞培養のために10%FCS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、1% L-グルタミン、および55μM 2-メルカプトエタノールを添加したRPMI 1640培地(Invitrogen社)を用いた。細胞内サイトカイン染色はCytofix/Cytoperm(商標)キット(BD Biosciences社)を用いてメーカーの指示に従って行った。次のmAbを細胞内染色のために使用した(すべてBD Biosciences社)。抗ヒトIFNγ(B27)、抗マウスIFNγ(XMG1.2)。アイソタイプの適合したmAbを対照として用いた。
【0106】
組織学および免疫組織化学
hIL-3/GM-CSF研究のため、器官を取り出し、かつ組織学的分析のために10%中性緩衝ホルマリンまたはZinc Fixative (BD Biosciences社)中に固定した。パラフィン包埋組織切片を調製し、H&EもしくはPASで染色するか、またはイェール病理組織サービス(Yale Pathology Tissue Services)で免疫組織化学のために処理した。次の抗ヒト抗体を免疫組織化学のために使用した(すべてDako社から):CD45 (2B11+PD7/26)、CD3 (F7.2.38)、CD68 (PG-M1)。肉芽腫の存在についての組織切片の評価は盲検で行った。
【0107】
統計解析
hIL-3/GM-CSF研究のため、ノンパラメトリックなMann-WhitneyのU検定を用いて、2グループ間の統計的有意性(a=0.05)を判定した。多重グループ比較のために、我々は一元配置ANOVAとともにTukeyの多重比較検定(a=0.05)を用いる事後検定(post hoc testing)を採用した。統計的に有意なP値(P<0.05)のみが示される。
【0108】
実施例3
hIL-3/GM-CSFを移植されたマウス:感染
チフス菌ISP2825 (Galan J.E.およびCurtiss, R. (1991) Distribution of the invA, -B, -C, and -D genes of S. thyphimurium among other S. serovars: invA mutants of S. typhi are deficient for entry into mammalian cells, Infect. Immun. 59(9):2901-2908;参照により本明細書に組み入れる)は、腸チフス患者からの臨床分離株であるが、このチフス菌をLBブロスで一晩増殖させた。翌日、40μLの細菌細胞培養物を、0.3M NaClを含む新鮮なLBブロス2mLに移し、かつその培養物が約0.9のOD
600に達するまで37℃で約3時間増殖させた。その細菌培養物をスピンダウンし、緩衝生理食塩水に再懸濁させて、感染のために使用した。9〜12週齢のヒト化マウスと対照マウスに1×10
3または1×10
4または1×10
5個のチフス菌を0日目に腹腔内接種した。感染したマウスを念入りに監視し、かつ感染後4週で屠殺した。脾臓、肝臓および胆のうを無菌的に摘出し、0.05%デオキシコール酸ナトリウムを含む無菌PBS 3〜5mL中で機械的にホモジナイズした。組織ホモジネートを連続希釈し、LB寒天プレートにまき、コロニー数の計測のために37℃で一晩インキュベートした。コロニー数を計測し、かつ回収された全コロニー形成単位の数を算出した。マウスのデータは
図1〜4に提供される。
図1において、「対照」マウスは、移植されていない遺伝子改変されたマウス(RAG KO, Il2rg KO/hIL-3, hGM-CSF)である。
図2〜4において、「対照」マウスは移植されていないRAG KO/Il2rg KOマウスである(すなわち、それらはIL-3とGM-CSFのヒト化を欠くが、代わりに内在性マウスIL-3と内在性マウスGM-CSFをもつ)。「対照」マウスには、ヒトCD34+細胞の代わりにPBSを注射した。
【0109】
図1に示す通り、脾臓におけるチフス菌感染は感染後10日で2匹の遺伝子改変されたマウス(RAG KO, Il2rg KO/hIL-3, hGM-CSF)に検出される。
【0110】
図2に示す通り、1×10
3個のチフス菌の感染後1週で、3.8および3%の生着率を有する遺伝子改変されたマウス(RAG KO, Il2rg KO)は、対照マウスより約1000倍高い、脾臓での感染を示した(p<0.01)。対照マウスとヒト化マウス間の差のp値はp<0.01であった。
【0111】
図3に示す通り、胎児肝由来のCD34陽性細胞を用いて移植され、かつ1×10
4個のチフス菌を感染させた、遺伝子改変されたマウス(RAG KO, Il2rg KO)は、感染後4週で、脾臓(平均して約1,000〜約10,000倍)と肝臓(平均して約1,000倍)の両方にチフス菌感染を示した。脾臓のチフス菌について試験したコホート中の各マウスは、(
図3の左パネルの「ヒト化」コホートにおいて上から下に)23.5、40.1、16.5、50、26、および51.7のヒト細胞の生着率を有していた。肝臓のチフス菌について試験したコホート中の各マウスは、(
図3の右パネルの「ヒト化」コホートにおいて上から下に)16.5、40.1、23.5、26、50、および51.7のヒト細胞の生着率を有していた。脾臓では対照マウスとヒト化マウス間の差のp値はp<0.01であった;肝臓ではp<0.03。
【0112】
図4に示す通り、胎児肝由来のCD34陽性細胞を用いて移植され、かつ1×10
4個のチフス菌を感染させた、遺伝子改変されたマウス(RAG KO, Il2rg KO)は、感染後4週で、胆のうにおけるチフス菌感染を示し、チフス菌cfuは平均して対照マウスより100万倍高かった。胆のうのチフス菌について試験したコホート中の各マウスは、(
図3の「ヒト化」コホートにおいて上から下に)23.5、16.5、40.1、50、26、および51.7のヒト細胞の生着率を有していた。対照マウスとヒト化マウス間の差のp値はp<0.03であった。
【0113】
これらの結果は、遺伝子改変されたマウス(RAG KO, Il2rg KO/hIL-3, hGM-CSF)が全身感染後にチフス菌によってコロニー化され得ることを証明している。
【0114】
実施例4
hIL-3/GM-CSFを移植されたマウス:肺病原体に対するヒト炎症反応のためのマウスモデルの検証
GM-CSF(Csf2)およびIL-3をコードする遺伝子は、ヒトおよびマウスではそれぞれ5番および11番染色体上で密接に連鎖している(<10kb)。これは、hIL-3/GM-CSF KIマウスを作製するために、両遺伝子のマウス遺伝子座とヒト遺伝子座との置換を可能にした(
図5(e))。ヒトIL-3 KI対立遺伝子はマウス調節エレメントの制御下にある一方で、ヒトCsf2 KI対立遺伝子はそのヒト調節エレメントの制御下のままである。マウスおよびヒトGM-CSF mRNAの発現は、各マウス遺伝子の一方の対立遺伝子および各ヒト遺伝子の一方の対立遺伝子を発現するhIL-3/GM-CSF KIマウス(IL-3/GM-CSF「ヒト/マウス」(h/m)マウスと呼ばれる)においてRT-PCRにより解析した。IL-3およびGM-CSFのマウス対立遺伝子を唯一持つ野生型マウスは、IL-3/GM-CSF「マウス/マウス」(m/m)マウスと呼ばれる。
【0115】
hIL-3/GM-CSF KIマウスのRT-PCRおよびELISA解析
全RNAはホモジナイズした組織からTRIzol(商標)試薬(Invitrogen社)を用いてメーカーの指示に従って抽出した。等量のDNase処理RNAをSuperScript(商標)First-Strand Synthesis System(Invitrogen社)によるcDNA合成のために使用した。従来型RT-PCRは、次のプライマーを用いて行った。
定量的RT-PCRは、ABI社から購入したプライマー-プローブセットを用いる7500 FastリアルタイムPCRシステムで行った。発現量は比較閾値サイクル法(comparative threshold cycle method)を用いて計算し、マウスまたはヒトHPRTに対して正規化された。マウスとヒトのIL-3およびGM-CSFタンパク質は、R&D Systems社からの種特異的ELISAキットを用いてメーカーの指示に従って検出した。脾細胞は5μg/mlコンカナバリンA(ConA)と100U/ml IL-2で活性化し、48時間の刺激の後に上清をELISAのために回収した。
【0116】
hIL-3/GM-CSF KIマウスにおける発現
ヒトGM-CSF mRNAは、肺で最高の発現を示して、そのマウス対応物と同様のパターンで発現された(
図5(a))。IL-3は主に活性化T細胞によって発現され、活性化T細胞はまたGM-CSFをも産生する。したがって、ELISAはh/mマウスから単離された活性化脾細胞からの上清で実施した。ヒトIL-3およびGM-CSFタンパク質の両方を検出することができた(
図6(f)f、6(g))。ヒト造血細胞に競合的優位性を付与するために、ヒトIL-3およびGM-CSFの2つの対立遺伝子を発現する、IL-3/GM-CSF「ヒト/ヒト」(h/h)マウスと呼ばれるホモ接合体KIマウスを作製した。肺組織の従来型RT-PCR解析および定量的RT-PCR解析は、h/hマウスがヒトGM-CSF mRNAのみを発現し、マウスGM-CSF mRNAを発現しないことを示した(
図5(b)、5(c))。ヒトGM-CSFタンパク質はELISAでh/hマウスの気管支肺胞洗浄(BAL)液中に検出することができた(
図5(d))。これらの結果は、hIL-3/GM-CSF KIマウスがヒトGM-CSF(およびIL-3)を忠実に発現することを示している。
【0117】
図5(a)〜(d)は、非移植hIL-3/GM-CSF KIマウスにおけるヒトGM-CSF発現の検証を示す。
図5(a)は、ヒトCsf2の1つの対立遺伝子とマウスCsf2の1つの対立遺伝子をもつKIマウス(h/m)由来の各種組織におけるGM-CSF mRNA発現の代表的なRT-PCR解析を示す。Li, 肝臓;Br, 脳;Lu, 肺;Mu, 筋肉;Sp, 脾臓;Th, 胸腺;LN, リンパ節;BM, 骨髄。下部:ヒトGM-CSFを検出するためのプライマーの特異性を対照マウス(m/m)由来の組織のRT-PCR解析によって検証した。リボソームタンパク質L13(Rpl13)を内在性対照として用いた。
図5(b)は、m/mマウスまたはヒトCsf2の2つの対立遺伝子を発現するホモ接合体KIマウス(h/h)(それぞれn=5)由来の肺におけるGM-CSF mRNA発現のRT-PCR解析を示す。Rpl13を内在性対照として用いた;NTC, テンプレートを含まない対照。
図5(c)は、(b)と同じGM-CSF mRNA発現の定量的RT-PCR解析を示す。GM-CSF発現はマウスHprtに対して正規化された(それぞれn=5)。
図5(d)は、m/mまたはh/h KIマウス(それぞれn=6)から回収されたBAL液中のヒトGM-CSFタンパク質のELISAを示す。結果は2つの独立した実験を代表する。各ドットは1匹のマウスを表す。水平バーは平均値を示す。
【0118】
図5(e)は、hIL-3/GM-CSF KIマウスを作製するための戦略を示す。マウス(上)とヒト(下)のIL3およびCsf2の遺伝子座のゲノム構成がそれぞれ11番および5番染色体上に示される。マウス遺伝子座が本開示に記載する通りにヒト遺伝子座と置き換えられた。
【0119】
図6(f)、(g)は、非移植hIL-3/GM-CSF KIマウスにおけるヒトIL-3およびGM-CSFの発現を示す。活性化脾細胞によるヒトIL-3(f)およびGM-CSF(g)産生のELISA結果が提示される。m/mマウス(白のバー)またはh/m KIマウス(黒のバー)由来の脾細胞はConAとIL-2で48時間刺激し、上清を回収した(それぞれn=1)。m/mマウスではヒトIL-3およびGM-CSFが検出されなかった(ND)。
【0120】
実施例5
hIL-3/GM-CSFを移植されたマウス:増強されたヒト炎症反応
hIL-3/GM-CSF KIマウスは、Rag2とIl2rgの両方の1つの対立遺伝子がすでに欠失されている胚性幹(ES)細胞から作製された。その後Rag2 KO Il2rg KO背景へと交配させることで、ヒトCD34+造血細胞を移植することが可能になった。全体的なヒトCD45+造血細胞のキメリズム、ならびに骨髄中、胸腺中、脾臓および血液中のT細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の分布は、hIL-3/GM-CSF KIマウスにおいて有意に増加していなかった(データは示さず)。さらに、全ヒトCD33+骨髄細胞、CD66+顆粒球、CD14+単球/マクロファージ、CD14loCD16+非古典的単球、CD11c+樹状細胞(DC)、およびCD123+CD11c-形質細胞様DCの頻度は、hIL-3/GM-CSF KIマウスにおいて有意に増加していなかった(データは示さず)。これは定常状態の条件下のh/mマウスとh/hマウスの両方にあてはまった。最後に、移植したhIL-3/GM-CSF KIマウス由来のヒト骨髄細胞は同様の能力を有して、インビトロでメチルセルロース中に骨髄コロニーを形成した(データは示さず)。これらの知見は、IL-3とGM-CSFの両方が本明細書で解析した器官での定常状態の骨髄造血にほとんど不要であることを示すKOマウス研究からの結果と一致している。
【0121】
対照的に、GM-CSFは炎症反応を媒介する上で重要な役割を果たしている。GM-CSFの発現は炎症性刺激によって誘導され、これは単球/マクロファージによる炎症性サイトカイン(IL-6およびTNFαなど)の産生と、炎症部位へのそれらの動員とにつながる。移植hIL-3/GM-CSF KIマウス由来のヒトCD14+単球は、GM-CSF受容体α鎖(CD116)の最高発現を示した(
図8(d))。したがって、移植hIL-3/GM-CSF KIマウスの解析はヒト単球/マクロファージに集中した。最初に、移植hIL-3/GM-CSF KIマウスにおけるヒト単球の炎症反応が解析された。リポ多糖(LPS)の腹腔内(i.p.)注射によって全身性の炎症を誘発させた。LPS注射後に、循環ヒトCD14+単球の頻度が対照のm/mマウスと比較してh/mマウスでは有意に増加していた(
図8(e)、(f))。h/mマウスでのヒト単球動員の増加は、1回および2回のLPS注射後のヒトIL-6の血清濃度の上昇と関連していた(
図8(g))。ヒトTNFαのLPS誘発産生もh/mマウスで増加していたが、この結果は統計的有意性に達しなかった。これらのデータは、ヒト造血細胞を用いて移植されたhIL-3/GM-CSF KIマウスがヒト骨髄単球細胞によって媒介されるヒト炎症反応の亢進を有することを示している。
【0122】
図8(d)〜(g)は、移植hIL-3/GM-CSF KIマウスにおけるヒト炎症反応の亢進を示す。
図8(d)は、定常状態の移植hIL-3/GM-CSF h/m KIマウス由来のヒト骨髄細胞のフローサイトメトリー解析を示す。ドットプロット(左)はhCD45+mCD45-細胞にゲーティングされる。ヒストグラム(右)はCD14-細胞(集団1)、CD14mid/SSChi顆粒球(集団2)、およびCD14hi単球(集団3)上のGM-CSF受容体α(CD116)発現を示す。解析した合計12匹のマウスからの代表的な一例が示される。
図8(e)は、2回のLPS腹腔内注射後72時間のCB移植m/mまたはh/m KIマウス由来のヒト血液細胞の代表的なフローサイトメトリー解析を含む。プロットはhCD45+mCD45-細胞にゲーティングされる。ボックス領域の隣にある数字はヒトCD14+細胞のパーセンテージを示す。
図8(f)は、LPS注射後72時間の移植m/mマウス(n=4)またはh/m KIマウス(n=8)におけるヒトCD14+血液細胞の頻度を示す。
図8(g)は、1回目(上)および2回目(下)のLPS注射後2〜3時間の移植m/mマウス(n=4〜5)またはh/m KIマウス(n=8)由来の血清中のヒトIL-6についてのELISA結果を示す。1匹のm/mマウスは1回目のLPS注射後に死亡した。各ドットは1匹のマウスを表す。水平バーは平均値を示す。結果は2つの独立した実験を代表する。
【0123】
実施例6
hIL-3/GM-CSFを移植されたマウス:肺での増強されたヒトマクロファージ生着
BAL解析
hIL-3/GM-CSF研究のための気管支肺胞解析は次の方法で行った。気管に挿入したカテーテルから1mlのPBSを入れて肺を膨らませた。これを2回繰り返し、回収した洗浄液をプールした。遠心分離後、細胞フリーの上清は、ELISAによるGM-CSFタンパク質濃度の測定のために、またはBCA Protein Assay Kit(Pierce社)をメーカーの指示に従って用いる総タンパク質含有量の測定のために保存した。赤血球(RBC)をACK溶解緩衝液(Lonza社)で溶解した後、細胞ペレット数を計測し、フローサイトメトリーのためにまたはサイトスピン標本作成のために使用した。細胞をスライド上にスピンさせ、Diff-Quik(商標)Stain Set (Dade Behring社)でメーカーの指示に従って染色した。
【0124】
増強されたマクロファージ生着
マウスGM-CSFの非存在はマウス肺胞マクロファージ(AM)の機能低下につながり、これはホモ接合体hIL-3/GM-CSF KIマウスにおいてヒトマクロファージによる再構成に有利にはたらくはずである。その裏付けとして、h/hマウスの肺およびBALではヒトGM-CSFが高度に発現しており、一方マウスGM-CSFは欠損している。
【0125】
非移植h/hマウスからのマウスAMは肥大し、かつ典型的な「泡沫状」外観(
図9(f))を呈した。この泡沫状外観はGM-CSF KOマウス由来のAMに関して記載されている。GM-CSF KOマウスは、最終分化に障害があるAMによる表面活性物質のクリアランスの欠陥に起因するPAPを発症する。GM-CSF KOマウスに関して報告されたものと同様に、非移植h/hマウスは、過ヨウ素酸シッフ(PAS)陽性物質に満ちたAMの胸膜下蓄積など、PAPの特徴を現した(
図9(g))。したがって、非移植h/hマウスはマウスAMの分化障害を示してPAPを発症し、それゆえにGM-CSF KOマウスと機能的に同等であると結論づけられた。
【0126】
図9(f)、(g)は、非移植ホモ接合体hIL-3/GM-CSF KIマウスにおけるPAPの発症を示す。
図9(f)は、非移植m/mまたはh/h KIマウス由来のBAL細胞のDiff-Quick(商標)染色を示し(倍率400x);グループごとに解析した合計6匹のマウスの代表的な一例が示される。
図9(g)は、非移植m/mまたはh/h KIマウス由来の肺組織切片のPAS染色を示し(倍率400x);グループごとに解析した合計12匹のマウスの代表的な一例が示される。
【0127】
次に、ヒト造血細胞を移植した後のh/hマウスの肺区画を検討した。FACS解析は、h/hマウスがBAL中にかなり多くのヒトCD45+細胞をもつことを示した(
図6(a)、(b))。肺組織の定量的RT-PCRは、このヒト細胞の増加が主として、ヒト骨髄マーカーCD33、CD11b、CD11c、およびCD14のmRNAを発現する細胞で構成されることを明らかにした(
図6(c))。さらに、主に細胞内に発現される成熟マクロファージマーカーである、ヒトCD68のmRNA発現が移植h/hマウスでは著しく増加していた(
図6(d))。h/hマウスでのこの増加は、AMによって発現される2つの転写因子、すなわちPU.1(Spi1)およびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)のより高い発現と関連していた(
図6(d))。PU.1は最終的に分化したAMにおいてGM-CSF依存的方法で高度に発現される。重要なことは、インビトロでGM-CSF KO AMにPU.1を形質導入すると、それらの機能障害が改善することである。PPARγもまたAMで高度に発現されており、GM-CSF KOマウスと同様に、PPARγ KOマウスはPAPを発症する。肺切片の免疫組織学的染色は、移植h/hマウスにおいて、ヒトAMと一致して、典型的な肺胞内位置での多数のhCD68+細胞の存在を明らかにした(
図6(e))。対照的に、移植m/m対照マウスではごくわずかなヒトAMしか検出できなかった。要約すると、CD34+造血細胞を移植したh/hマウスの肺は、際立って改善されたヒトマクロファージ生着を示す。
【0128】
図6(a)〜(e)は、ホモ接合体hIL-3/GM-CSF KIマウスが肺での良好なヒトマクロファージ生着を有することを示す。
図6(a)は、移植したm/mおよびh/h KIマウス由来のBAL細胞の代表的なフローサイトメトリー解析を示す。丸で囲った領域の隣にある数字はhCD45+およびmCD45+造血細胞のパーセンテージを示す。mCD45+hCD45+細胞は高い自己蛍光を有し、F4/80+マウスAMを構成する。
図6(b)は、移植したm/mおよびh/h KIマウス由来のBAL中のヒト造血(hCD45+)細胞の数を提供する(結果は3つの独立した実験(グループあたり合計n=15)から組み合わされる)。
図6(c)は、移植したm/mおよびh/h KIマウス(それぞれn=4)由来の肺組織におけるヒトリンパ球および骨髄遺伝子発現の定量的RT-PCR解析の結果を示す。発現はマウスHPRTに対して正規化された(
*, P<0.05)。
図6(d)は、移植したm/mおよびh/h KIマウス(それぞれn=4)由来の肺組織におけるヒトマクロファージ遺伝子発現の定量的RT-PCR解析を示す。発現はマウスHPRTに対して正規化された(
*, P<0.05)。各ドットは1匹のマウスを表す。水平バーは平均値を示す。
図6(e)は、移植したm/mおよびh/h KIマウス由来の、ヒトCD68について染色した肺組織切片の免疫組織化学を示す(倍率100x(上)および200x(下))。グループごとに解析した合計10匹のマウスの代表的な一例が示される。
【0129】
実施例7
hIL-3/GM-CSFを移植されたマウス:ヒト造血細胞によって軽減されるPAP
h/hマウスのヒトマクロファージ生着の増加が肺における良好なヒト免疫機能につながるかどうかを検討した。最初に、ヒトマクロファージが非移植h/hマウスに見られるPAP症候群をレスキューできるかどうかを検討した。II型肺胞上皮細胞とAMは両方ともGM-CSFに応答し得るが、PAPは骨髄移植によってレスキューすることができる。これは、造血細胞、特にAM、がPAPを改善できる主な細胞型であることを示している。したがって、ヒト造血細胞を用いて移植されたh/hマウスはPAPの重症度が低いはずであると仮定された。予想通り、非移植h/hマウスはPAS陽性物質の肺胞内蓄積を示し(
図7(a))、これはPAPの顕著な特徴である。この仮説に一致して、移植したh/hマウスは肺に軽度のタンパク質蓄積を有し、一部のh/hマウスの肺は(非移植または移植)m/m対照マウスに似ていた(
図7(a))。さらに、移植h/hマウスは、BAL液中の総タンパク質量が非移植h/hマウスより有意に低かった(
図7(b))。これらの結果は、移植されたヒト造血細胞(おそらくAM)がホモ接合体hIL-3/GM-CSF KIマウスにおいてPAPを軽減できることを示している。
【0130】
図7(a)〜(e)は、ヒト造血細胞がホモ接合体hIL-3/GM-CSF KIマウスにおいてPAPを軽減することを示す。
図7(a)は、非移植または移植m/mもしくはh/h KIマウス由来の肺組織切片のPAS染色を示す。2匹の異なる移植h/h KIマウス由来の肺切片が示される(倍率400x)。グループごとに解析した合計10〜12匹のマウスの代表的な例が示される。
図7(b)は、非移植(non)または移植h/h KIマウスもしくはm/m対照マウス(グループあたりn=6)由来のBAL液中の総タンパク質の定量を示す。P<0.0001(一元配置ANOVA検定)。Tukeyの多重比較検定で決定されたP値は星印によって示される(
**, P<0.01;
***, P<0.001)。
【0131】
実施例8
hIL-3/GM-CSFを移植されたマウス:インフルエンザAに対する強いヒトI型IFN応答
インフルエンザA感染
マウス(9〜10週齢)に2×10
4プラーク形成単位のインフルエンザA/PR8(H1N1)ウイルスを鼻腔内経路で感染させた。感染は、Anafane(商標)(Ivesco社)で深く麻酔しておいたマウスに、PBSで希釈したウイルスストック液50μl(または対照として等量のPBS)を鼻腔内投与することによって行った。感染の24時間後に、上記のRNA抽出および定量的RT-PCR解析のために肺を回収した。
【0132】
肺の恒常性におけるそれらの役割に加えて、AMは肺での宿主防衛に不可欠である。多くの研究は、GM-CSF KOマウスが肺のさまざまな病原体の影響を受けやすくなることを示している。移植されたヒトAMの肺病原体に対する機能的応答を評価するために、移植h/hマウスにインフルエンザA/PR8(H1N1)ウイルスを鼻腔内経路で感染させた。AMは肺ウイルス感染後のI型インターフェロン(IFN)の主な産生細胞であり、かつAMはインフルエンザAへの有効な先天性応答に必要とされる。ヒトヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)mRNAの発現は、対照m/mマウスと比べて、移植h/hマウスの肺で有意に高かった(
図8(a))が、これは良好なヒト免疫細胞のキメリズムを示している。移植m/mマウスは、PBSを鼻腔内投与された移植m/mマウスと比べた場合、インフルエンザA感染後にヒトIFNβ mRNA発現の有意な誘導を示さなかった(
図8(b))。対照的に、移植h/hマウスは、非感染h/hマウスと感染m/mマウスの両方よりも有意に多いヒトIFNβ mRNAを発現した(
図8(b))。m/mマウスと比較して、h/hマウスにおけるヒトIFNβ mRNAの発現増加は、ヒトHPRTに、すなわち肺中のヒト細胞の数に、正規化された場合、まだ有意であった(
図8(c))。まとめると、ホモ接合体hIL-3/GM-CSF KIマウスは、良好なヒトマクロファージキメリズムと、ウイルス感染に対して増強されたヒト粘膜免疫につながる肺での機能とを可能にする。
【0133】
図8(a)〜(g)は、ホモ接合体hIL-3/GM-CSF KIマウスがインフルエンザA感染に対して強いヒトI型IFN応答を開始することを示す。
図8(a)〜(c)は、インフルエンザA(PR8)の鼻腔内感染後24時間のm/mおよびh/h KI由来の肺組織における遺伝子発現の定量的RT-PCR解析を示す(それぞれn=8)。PBSの鼻腔内投与を対照(PBS)として用いた(それぞれn=4)。
図8(a)は、マウスHprtに正規化されたヒトHprtの発現を示す。P<0.0001(一元配置ANOVA検定)。
図8(b)は、マウスHprtに正規化されたヒトIFNγの発現を示す。P=0.0171(一元配置ANOVA検定)。
図8(c)は、ヒトHprtに正規化されたヒトIFNγの発現を示す。P=0.0032(一元配置ANOVA検定)。Tukeyの多重比較検定で決定されたP値は星印によって示される
(*, P<0.05;
**, P<0.01;
***, P<0.001)。各ドットは1匹のマウスを表す。水平バーは平均値を示す。結果は2つの独立した実験を代表する。
【0134】
実施例9
hIL-3/GM-CSFを移植されたマウス:マイコバクテリア感染後のヒト細胞を含む肉芽腫
マクロファージが病原体特異的免疫応答において中心的な役割を果たす肺に向性を有する第2の病原体に対するヒト炎症反応を支持するhIL-3/GM-CSF KIマウスの能力が検討された。マイコバクテリア感染後の肉芽腫の形成が選択された。肉芽腫は、マイコバクテリア感染の特徴である、特殊化した局所炎症反応を表している。それはDTH応答の古典的な例であり、その形成は活性化T細胞とマクロファージとの相互作用に依存している。最適なDTH応答にはIL-3とGM-CSFの両方が必要であり、重要なことは、GM-CSF KOマウスがマイコバクテリアに感染した場合肉芽腫を形成しないことである。
【0135】
移植したhIL-3/GM-CSF h/m KIマウスにBacillus Calmette-Guerin (BCG)を静脈内注射により感染させた。BCGはヒト結核に対するワクチンとして使用されるM. ボビス(M. bovis)の弱毒株である。BCG感染実験に用いたマウスは>20%のhCD45+細胞の血中生着レベルを有し、hCD45+細胞の>8%がT細胞(hCD3+)であった。マウスは感染時に9〜10週齢であった。1×10
5コロニー形成単位のBCG(コペンハーゲンのStatens Serum Institute社)を0.1ml量で尾静脈注射によりマウスに感染させた。
【0136】
肉芽腫の形成にはT細胞が不可欠であることから、最初に、感染4週後のBCGに対するヒトT細胞応答を調べた。フローサイトメトリーは、移植したm/mおよびh/mマウスの両方の肺にヒトT細胞が存在することをはっきりと示した(
図9(a))。実際に、T細胞はBCG感染肺において主要なヒト造血細胞型であった。m/m対照マウスに比較して、BCGに感染したh/mマウスは肺でのヒトCD4対CD8 T細胞の平均比率がより高かったが、その差は統計的有意性に完全には達しなかった(
図9(b)、9(c))。これら2つのマウスグループ間で脾臓hCD4/hCD8 T細胞の比率の差は認められなかった。
【0137】
次に、2種類のT細胞由来サイトカイン、すなわちIFNγとTNFαの発現を解析した。これらは両方ともマイコバクテリアに対する防御免疫応答に極めて重要である。感染したマウス由来の脾細胞を、免疫優性マイコバクテリア抗原TB10.4から誘導されたペプチドで再刺激した後の、細胞内サイトカイン染色によるBCG特異的IFNγ産生が検討された。予想されたとおり、IFNγを産生するマウスT細胞の集団がBALB/cマウス由来の脾細胞の中に検出された(
図9(d))。さらに、ヒトBCG特異的T細胞応答が移植したh/mおよびm/mマウスのサブセットで見られた(
図9(d))。最後に、移植したh/mおよびm/mマウスの大部分はBCG感染後に肺でヒトIFNγおよびTNFα mRNAを発現した(
図9(e))。これらの結果は、移植されたマウスのサブセットがBCGに対する病原体特異的ヒトT細胞応答を開始することができるが、この応答はhIL-3/GM-CSF KIマウスにおいて増強されなかったことを示している。これに一致して、細菌負荷にはh/mおよびm/mマウス間で差がなかった。
【0138】
次に、肉芽腫の形成が感染4週後に肺と肝臓で組織学により評価された。非移植m/mマウス(T細胞を欠く)は肉芽腫を発生せず(表1)、これは肉芽腫形成のためのT細胞の必要性と一致する。同様に、ヒト細胞を用いて移植されたm/mマウスは肺にも肝臓にも肉芽腫を示さなかった(表1)。これに対して、h/mマウスの大部分には肺(
図10(a))または肝臓または両方の臓器に小さな病変または肉芽腫があった(表1)。一般的に、観察された肉芽腫は小さく、ヒトよりもマウスの肉芽腫に特有のゆるい組織化を有していた。しかしながら、hIL-3/GM-CSF KIマウスの肺肉芽腫は、免疫組織化学によって証明される通りに、ヒト造血細胞(hCD45+)を含んでいた(
図10(b))。これらの細胞の大部分はヒトT細胞(hCD3+)であり、中心部に数個のヒトマクロファージ(hCD68+)が存在していた(
図10(b))。まとめると、移植されたhIL-3/GM-CSF KIマウスは、マイコバクテリア感染に応答してヒトT細胞とヒトマクロファージを含む肉芽腫を発症することができるが、こうしたことはHISマウスでは以前に報告されていない。表1は、BCG感染4週後のBALB/c、非移植m/m(non)、移植m/m、および移植hIL-3/GM-CSF h/m KIマウス由来の肝臓および肺組織切片に認められた病変/肉芽腫を示す。
【0139】
(表1)BCGに感染させた移植したhIL-3/GM-CSF KIにおける肉芽腫
【0140】
図9(a)〜(g)は、移植hIL-3/GM-CSF KIマウスにおけるBCGに対するヒトT細胞応答を示す。
図9(a)〜(c)は、BCG感染4週後の移植したm/mおよびh/m KIマウス由来の肺細胞のフローサイトメトリー解析を示す。
図9(a)は、肺におけるヒトT細胞(hCD45+hCD3+)の頻度を示す。ボックス領域の隣にある数字は細胞のパーセンテージを示す。
図9(b)は、肺におけるヒトCD4およびCD8 T細胞の分布を示す。ドットプロットはhCD45+hCD3+細胞に対しゲーティングされる。象限内の数字は細胞のパーセンテージを示す。
図9(c)は、肺におけるヒトCD4対CD8 T細胞の比率を示す(それぞれn=6)。各ドットは1匹のマウスを表す。水平バーは平均値を示す。
図9(d)は、BCG感染4週後のBALB/cマウス、移植m/mマウス、および移植h/m KIマウス由来の脾細胞のフローサイトメトリー解析を示す。脾細胞は、本明細書に記載したTB10.4タンパク質をカバーする重複ペプチドのプールを用いてインビトロで再刺激された。ドットプロットは、細胞内サイトカイン染色により測定されたマウスIFNγ+ CD4 T細胞(mCD4+)またはヒトIFNγ+ T細胞(hCD3+)の頻度を示す。アイソタイプの適合した抗体による染色を対照として用いた。
図9(e)は、BCG感染4週後のBALB/cマウス、非移植(non)m/mマウス、移植m/mマウス、および移植h/m KIマウス由来の肺組織におけるヒトIFNγ(左)およびTNFα(右)遺伝子発現の定量的RT-PCR解析の結果を示す(グループあたりn=4〜7)。各ドットは1匹のマウスを表す。水平バーは平均値を示す。
【0141】
図10(a)、(b)は、移植したhIL-3/GM-CSF KIマウスがBCG感染後にヒト細胞を含む肉芽腫を発症することを示す。
図10(a)は、BCG感染4週後の移植h/m KIマウス由来の肺組織切片のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を示す(倍率100x(左)および倍率200x(右))。
図10(b)は、BCG感染4週間後の移植h/m KIマウス由来のヒトCD45、CD3、またはCD68を染色した肺組織切片の免疫組織化学を示す(倍率200x)。肺肉芽腫を有する2匹のマウスのうち代表的な一例が示される。
【0142】
実施例10
hTPOマウス:生着および解析
TPOマウスへの移植
レシピエントマウスは、Traggiaiらに記載される通りにヒト造血前駆細胞を用いて移植された。臍帯血試料は、イェール大学の人権擁護調査委員会(Department of Labor and Birth, Yale New Haven Hospital, New Haven, CT)からの承認の下で、健康な満期新生児から採取された。胎児肝臓試料は、アルバート・アインシュタイン医科大学(Bronx, NY)のヒト胎児組織リポジトリ(Human Fetal Tissue Repository)から、およびAdvance Biosciences Resources社(Alameda, CA)から取得された。
【0143】
胎児肝臓試料を小さな断片に切断し、コラゲナーゼD(100ng/ml、Roche社)を用いて37℃で45分間処理し、かつ細胞懸濁液を調製した。ヒトCD34+細胞は、密度勾配遠心(リンパ球分離溶液(Lymphocyte Separation Medium)、MP Biomedicals社)と、その後の抗ヒトCD34マイクロビーズを用いる陽性免疫磁気選別(positive immunomagnetic selection)によりメーカーの指示(Miltenyi Biotec社)に従って、胎児肝臓試料からまたは臍帯血から精製した。細胞は、FBSを含む10%DMSO中で凍結させるか、または直接注入した。
【0144】
新生仔(生後1日以内)を亜致死的に照射し(X線照射、4時間間隔で2×150cGy)、20μlのPBS中の100,000〜200,000個のCD34+細胞を、22ゲージ針(Hamilton社, Reno, NV)を使って肝臓に注入した。
【0145】
すべての実験は、イェール大学人権擁護調査委員会プロトコルおよびイェール大学動物管理使用委員会プロトコルに従って行った。
【0146】
TPO発現
マウスおよびヒトTPOタンパク質の血清濃度は、種特異的ELISA(RayBiotech社)によりメーカーのプロトコルに従って測定した。TPOをコードするマウスおよびヒトmRNAの発現を測定するために、組織を成体動物から分離し、全RNAを、TRIzol(Invitrogen社)を用いてメーカーの指示に従って精製した。混入しているゲノムDNAをRNase-Free DNase I(Roche社)で処理して除去し、そのRNAを、SuperScript II逆転写酵素(Invitrogen社)とオリゴdTプライマーを用いて逆転写した。PCR増幅のために次のプライマーを使用した。
【0147】
ヒトTPOがこれらのマウスで忠実に発現されるかどうかを調べるために、全RNAをTPO
h/mマウス由来のさまざまな器官から抽出した。かつTPOをコードするマウスおよびヒトmRNAの両方について同様の発現パターンがRT-PCRにより観察された(
図11(a))。次に、TPO
m/m、TPO
h/mおよびTPO
h/hマウス由来の、TPOを発現することが公知である3種の組織または細胞型(肝臓、腎臓および間葉系多能性間質細胞)における発現を比較した。TPO
m/mおよびTPO
h/mマウスからの試料ではマウスTpoの発現が検出され、一方TPO
h/mおよびTPO
h/hマウスではヒトTPOが発現された(
図11(b))。標的マウスの血清中のTPOタンパク質の濃度も測定された。マウスTPOはTPO
m/mおよびTPO
h/m動物で検出され、ヒトTPOはTPO
h/mおよびTPO
h/hで検出された(
図11(c))。測定されたヒトTPOの濃度はマウスTPOより約10倍低かった。しかしながら、この差異は健康なヒトとマウスで報告された生理的濃度に適合するものであり(
図11(c))、サイトカイン半減期の種特異的な差異に起因する可能性がある。
【0148】
図11は、(a)Rag2
+/-γ
cY/- TPO
h/mマウスの異なる組織におけるマウスTPO(mTpo)およびヒトTPO(hTPO)発現のRT-PCR解析(マウスRpl13aはハウスキーピング遺伝子として使用した);(b)Rag2
-/-γ
c-/- TPO
m/m、TPO
h/mおよびTPO
h/hマウスの肝臓、腎臓および間葉系多能性間質細胞(MSC)におけるmTpoおよびhTPO発現のRT-PCR解析;(c)TPO
m/m、TPO
h/mおよびTPO
h/hマウスの血清中の、ELISAにより測定されたマウスおよびヒトTPOタンパク質の濃度(pg/ml、平均±S.D.、n=7〜9)を示す。ND:検出されず。示した正常範囲はR&D Systems社のThrombopoietin Quantikineキットからである。
【0149】
間葉系多能性間質細胞の単離
TPO研究のため、マウスの大腿骨と脛骨を採取し、かつ骨髄細胞を流し出した。骨を小片に切断し、コラゲナーゼPおよびD(10μg/ml)を用いて37℃で45分間消化した。骨関連細胞を反復ピペッティングによって収集した。刺激用サプリメント(stimulatory supplements)(Stemcell Technologies社)を加えたMSC培地の存在下で細胞を14日間培養した。その培養物から、CD45およびTer119抗体を用いる免疫磁気セルソーティング(MACS、Miltenyi Biotec社)により造血系細胞を除去した。非造血細胞(CD45-Ter119-)をもう5日間培養し、MSC表現型(CD45-Ter119-Sca1+CD90+)をFACSにより確認した(Diminici et al. (2006) Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells, The International Society for Cellular Therapy position statement, Cytotherapy 8:315-317)。
【0150】
TPOマウスにおける造血細胞集団の解析
移植後8〜12週でマウスを採血した。ACK(Lonza社)を用いて赤血球を3回溶解し、細胞を抗マウスCD45および抗ヒトCD45抗体で染色した。CD45+細胞の少なくとも1%がヒト由来であった動物をさらなる解析のために使用した。移植されたマウスの約80%がこの生着閾値に達しており、TPOm/mおよびTPOh/hグループの間で違いは認められなかった。
【0151】
マウスを移植後3〜4または6〜7ヶ月で屠殺した。単一細胞懸濁液を骨髄(2本の大腿骨と2本の脛骨から流した)、脾臓および胸腺から調製した。赤血球をACK溶解により排除し、FACS解析のため次の抗体を用いて細胞を染色した。全体的な造血移植のために:抗マウスCD45-eFluor450 (30-F11、eBioscience社)および抗ヒトCD45-APC-Cy7 (2D1)。ヒト造血幹細胞前駆細胞および造血系列のために:抗ヒトCD14-PerCP (MoP9)、CD19-APC (HIB19)、CD33-APC (WM53)、CD34-PE (AC136、Miltenyi Biotec社)、CD38-FITC (HIT2)、CD41a-APC (HIP8)およびCD66-FITC (B1.1)。
【0152】
マウス幹細胞前駆細胞の解析のため、抗細胞系列カクテル(anti-lineage cocktail)はCD3ε(145-2C11)、CD11b (M1/70)、CD11c (HL3)、CD19 (1D3)、Gr1 (RB6-8C5)およびLy-76 (Ter119)に対するビオチン化抗体を含んでいた。その後、細胞をストレプトアビジン-APC-Cy7、抗cKit-APC (2B8)および抗Sca1-PE-Cy7 (D7)で染色した。
【0153】
すべての抗体は、特に指定した場合を除き、BD Biosciences社から入手した。データはFACSCalibur(商標)またはLSRII(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences社)で取得し、FlowJo(商標)ソフトウェアを用いて解析した。
【0154】
TPOマウスにおけるヒト造血幹細胞前駆細胞の機能的特性解析
3〜7匹の移植されたマウスから得られた骨髄細胞をプールし、ヒトCD34+細胞を、マウスCD45+細胞のMACS枯渇(Miltenyi Biotec社)とその後のFACSAria(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences社)でのヒトCD45+CD34+細胞のFACSソーティングによって精製した。
【0155】
ヒトCD34+細胞のコロニー形成能を評価するために、IMDMに20%FCS、2mM L-グルタミン、55μM 2-メルカプトエタノール(試薬はすべてGIBCO社から)を添加し、Methocult(商標)H4100、1%BSA(Stemcell Technologies社)と混合し、次のヒトサイトカインを加えた:SCF (10ng/ml)、FLT3I (10ng/ml)、TPO (50ng/ml)、IL-3 (20ng/ml)、IL-6 (10ng/ml)、IL-11 (10ng/ml)、GM-CSF (50ng/ml)、EPO (4U/ml) (すべてR&D systems社から)。100,000〜150,000個のソーティングされた細胞を60mmペトリ皿にまき、37℃、5%C0
2で12〜14日間インキュベートした。12〜14日でコロニー数を計測し、顕微鏡で特定の骨髄系列に分類した。
【0156】
二次移植実験のため、TPO
m/mまたはTPO
h/h一次レシピエントから精製された100,000個のCD34+細胞を、上記の通りに、亜致死的に照射(2×200cGy)したRag2
-/-γ
c-/- TPO
m/m二次レシピエントに注入した。これらのマウスを8週間後に屠殺し、骨髄中のヒトCD45+細胞の割合をFACSで測定した。
【0157】
TPOマウスデータの統計解析
データは対応のない両側t検定を用いて比較された。2つより多い試料を比較する場合は、一元配置ANOVAと、その後にTukeyの事後検定を行った。二次移植実験において生着を示したマウスの割合はPearsonのカイ二乗検定を用いて比較された。p値が0.05を下回った場合は、差を有意と見なした。
【0158】
実施例11
hTPOを移植されたマウス:TPO
h/hレシピエントマウスの骨髄における改善されたヒト生着レベル
ヒト化および移植されたマウスの骨髄の表現型分類
ヒト化マウスの骨髄から分離された細胞をフローサイトメトリーで解析したところ、非ヒト化マウス(すなわち、TPO遺伝子のヒト化を欠くRAGおよびIl2rgノックアウト)の生着と比べて、全ヒト造血細胞、ヒト造血幹細胞、ヒト骨髄細胞、およびヒト顆粒球の生着の統計的に有意な改善が認められた。
図12および14参照。
【0159】
野生型Tpo(TPO
m/m)、ヘテロ接合型(TPO
h/m)またはホモ接合型(TPO
h/h)TPO遺伝子置換を有するRag2
-/-γ
c-/-マウスを、記載した通りに作製した。照射(2×1.5Gy)した新生仔Rag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hマウスは、臍帯血または胎児肝臓から精製されたヒトCD34
+細胞を用いて移植され、3〜4ヶ月または6〜7ヶ月後に骨髄における生着を解析された。
【0160】
図12は生着研究の結果を示す。
図12(a)は、ヒトCD34
+細胞の移植後3〜4ヶ月のRag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hマウスの骨髄におけるヒトおよびマウスCD45
+細胞の代表的なFACS解析を示す。2匹の代表的なマウスの結果が各遺伝子型について示される。全(マウス+ヒト)CD45
+細胞集団中のマウスおよびヒトCD45
+細胞のパーセンテージが示される。
図12(b)は、移植後3〜4ヶ月(左、n=42〜53)または6〜7ヶ月(右、n=20〜25)の骨髄中のヒトCD45
+細胞のパーセンテージを示す。各記号は個々のマウスを表し、水平バーは平均値を示す。
図12(c)は、(b)と同じ動物の骨髄中のヒトCD45
+細胞の絶対数を示す。p値は統計的有意性を示す。
【0161】
TPO
m/mレシピエントと比較して、TPO
h/hの骨髄中のヒト造血細胞(hCD45
+)のパーセンテージ(
図12(a)および12(b))と絶対数(
図12(c))に両時点で有意な増加が観察された。さらに、TPO
h/hレシピエントはより低い生着のばらつきを示し、3〜4ヶ月の時点でマウスの75%に少なくとも80%のヒトキメリズムが見られた(
図12(b))。CD34
+細胞の供給源はこの結果に影響を及ぼさなかったが、それは、TPO
h/h宿主でのキメリズムの同様の増加が臍帯血由来細胞と胎児肝臓由来細胞で観察されたからである(
図12(d))。興味深いことに、TPO
m/m宿主ではヒト細胞の数が早い時点と遅い時点の間に減少したが、TPO
h/h動物ではそれらが一定のままであった(
図12(c))。これらの結果は、マウスにおけるTPOの先に記載した機能と一致している。第一に、TPOは照射レシピエントマウスへの移植後にHSCの増幅に有利にはたらいて、生着レベルの増加をもたらす。第二に、それは成体HSCの維持に有利にはたらき、成体期を通じて持続的な造血をもたらす。
【0162】
実施例12
hTPOを移植されたマウス:マウスおよびヒト血小板に対するTPOヒト化の効果
TPOマウスにおける血小板解析
末梢血中の血小板数はHemavet(商標)950FS装置(Drew Scientific社)を用いて測定した。次に血液試料を抗マウスCD61-PE (2C9.G2)および抗ヒトCD41a-APC (HIP8)で染色し、マウスおよびヒト血小板のパーセンテージを、細胞のサイズ(FSC)または顆粒性(granulosity)(SSC)にいかなるゲートも配置せずに、フローサイトメトリーで測定した。絶対マウスおよびヒト血小板数は、これらの各パーセンテージを絶対血小板数と乗じることによって算出した。
【0163】
TPOは血小板産生に及ぼすその重要な機能について周知されているので、TPOのヒト化が血小板の発生に影響を与えるかどうかを検討した。TPO遺伝子の両方の対立遺伝子のヒト化は、非移植Rag2
-/-γ
c-/-マウスの血中血小板数の約2倍低下につながった(
図13(a))。ヒト細胞を移植した後では、TPO
h/hマウスにおけるマウス血小板数は正常値の25%未満にさらに低下した(
図13(d))。ヒト対マウス血小板の比率(
図13(b)、13(c))、ならびにヒト血小板の絶対数(
図13(e))は、TPO
m/mよりもTPO
h/hマウスにおいて高くなる傾向にあったが、これらの差はどれも統計的有意性に達しなかった。さらに、ヒト細胞のうちの骨髄巨核球(CD41a
+細胞)のパーセンテージは両系統で同等であった(
図13(f))。これらの結果は、ノックイン戦略によって達成されたヒトTPOのレベルまたは生物活性がマウスTPO機能を完全に置き換えるには十分でないことを実証しており、さらに、ヒトTPOが単独ではマウス環境においてヒト血小板産生を支持するのに十分でないことを示唆している。
【0164】
図13(a)は、成体非移植Rag2
-/-γ
c-/- TPO
m/m、TPO
h/mおよびTPO
h/hマウスの血液中の血小板数を示す。p<0.0001 (一元配置ANOVA、n=7〜17;示したp値はTukeyの事後検定により算出した)。各記号は個々のマウスを表し、水平バーは平均値を示す。
図13(b)移植後3〜4ヶ月のRag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hマウスの血液中のマウス(mCD61
+)およびヒト(hCD41a
+)血小板の代表的FACS解析。数字は全イベントのうちの比率を示す。
図13(c)TPO
m/mおよびTPO
h/hマウス(n=19〜22)における、FACSにより測定されたヒト血小板のキメリズム。血中のヒトCD45
+細胞のパーセンテージが5%より高いマウスだけをこの解析に含めた。(d)、(e)TPO
m/mおよびTPO
h/hレシピエントの血液中のマウス(mCD61
+,(d))およびヒト(hCD41a
+,(e))血小板数;(f)骨髄中のヒトCD45
+細胞のうちのヒト巨核球(CD41a
+)のパーセンテージ。
【0165】
図13(g)〜(i)は、二次リンパ器官におけるヒト生着レベルを示す。
図13(g)、(h)は、Rag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hマウスの血液(20g;n=43〜53)および脾臓(13h;n=35〜36)中のヒトCD45
+細胞のパーセンテージを提供する(各記号は個々のマウスを表し、水平バーは平均値を示す)。
図13(i)は、移植したTPO
m/mおよびTPO
h/hレシピエント(n=24〜34)の胸腺の全細胞性を示す。胸腺に見られた細胞の90%超がヒト由来(hCD45
+)であった。
【0166】
実施例13
hTPOを移植されたマウス:TPOヒト化マウスにおける多系列の造血
ヒト化および移植されたマウスの血液細胞の表現型分類
ヒト化マウスの血液から分離された細胞をフローサイトメトリーで解析したところ、非ヒト化マウス(すなわち、TPO遺伝子のヒト化を欠くRAGおよびIl2rgノックアウト)の移植と比べて、ヒト単球および顆粒球の移植において統計的に有意な改善が認められた。
図14参照。
【0167】
ヒトTPOがインビボでヒト造血幹細胞前駆細胞の多系列分化に有利にはたらくことができるかどうかを検討した。以前に報告された通りに(Traggiai et al.; Ishikawa et al. (2005) Development of functional human blood and immune systems in NOD/SCID/IL2 receptor gamma chain(null) mice, Blood 106:1565-1573))、移植されたヒト細胞は野生型Rag2
-/-γ
c-/-宿主において主にB細胞(CD19
+)を生じさせ(脾臓中のヒト細胞の61.51±4.71%、平均±標準誤差、n=32)、骨髄細胞はほんのわずかしか含まれていなかった。TPO
m/mレシピエントとTPO
h/hレシピエントを比較した場合、TPO
h/hマウスの骨髄中のCD33
+骨髄細胞の頻度の有意な増加が観察された(
図14(a)および14(b))。興味深いことに、この増加は主として顆粒球(CD33
+CD66
hiSSC
hi細胞)によるものであり、単球(CD33
hiCD66
loCD14
+)の割合は両系統で類似していた(
図14(a)、(c)、(d)、(e))。骨髄細胞(顆粒球と単球の両方)のパーセンテージもまた、TPO
h/h動物の末梢血で有意に増加していた(
図14(a)、(f)、および(g))。
【0168】
図14(a)〜(g)は、移植したTPO
m/mおよびTPO
h/hマウスのCD33
+、CD66
+、CD14
+細胞で測定した場合の、hTPOマウスにおける改善された多系列造血を示す。
図14(a)は、移植後3〜4ヶ月のRag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hマウスの骨髄中および血液中のヒト骨髄細胞集団の代表的なFACS解析を示す。数字は示したゲーティングされた細胞集団のうちのパーセンテージを示す。
図14(b)〜(e)は、Rag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hレシピエント(n=19)の骨髄における全ヒトCD45
+細胞キメリズムに対するヒト骨髄細胞集団の解析を示す。
図14(b)は、全骨髄集団(CD33+細胞)を提供する。
図14(d)は、顆粒球(CD33
+CD66
hi)を提供し、
図14(c)は、TPO
h/hレシピエントの骨髄から精製されたhCD45
+SSC
hiCD33
+CD66
hi細胞のDiff-Quick(商標)染色を示す。
図14(e)は、単球(CD33
+CD66
loCD14
+)を示す。各記号は個々のマウスを表し、水平バーは平均値を示す。
図14(f)および(g)は、Rag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hレシピエント(n=6〜7)の血液中の全ヒトCD45
+細胞キメリズムに対するヒト骨髄細胞集団の解析を示す;
図14(f):顆粒球(CD66
+);
図14(g):単球(CD14
+)。
【0169】
実施例14
hTPOを移植されたマウス:マウスおよびヒト造血幹細胞前駆細胞に対するヒト化効果
HSCならびに前駆細胞それら自体の数および機能に及ぼすヒトTPOの効果が解析された。TPOの遺伝子欠失は成体マウスではHSCの減少につながる。TPOヒト化がマウスHSCを含むと免疫表現型的に定義されるマウス集団に影響を及ぼすことができるかどうかを調べるために、非移植TPO
m/m、TPO
h/mおよびTPO
h/h成体マウスの骨髄中の系列陰性(lineage-negative)Sca1
+c-Kit
+細胞のパーセンテージを比較した。
【0170】
図15は、ヒトTPOノックインマウスの骨髄中のlin
-c-Kit
+Sca1
+細胞の減少、ならびにヒト幹細胞前駆細胞の数および自己再生能の増加を示す。
図15(a)は、WT TPO (TPO
m/m) Rag2
-/-γ
c-/-マウスと比較した、非移植Rag2
-/-γ
c-/- TPO
h/mおよびTPO
h/hマウスの骨髄中のマウスLin
-Sca1+c-Kit
+幹細胞前駆細胞のFACS解析の代表的な結果を示す。数字はLin
-集団のうちのSca1
+c-Kit
+細胞のパーセンテージを示す。
図15(b)は、(a)に示された結果の定量的解析を示す。p=0.0006(一元配置ANOVA;示したp値はTukeyの事後検定により算出した;遺伝子型あたりn=5;示された結果は2つの独立した実験を代表する)。各記号は個々のマウスを表し、水平バーは平均値を示す。
図15(c)は、移植後3〜4ヶ月のRag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hマウスの骨髄中のヒトCD34
+CD38
-細胞の代表的なFACS解析を示す。数字はヒトCD45
+CD34
+細胞のうちのCD38
-細胞のパーセンテージを示す。
図15(d)は、TPO
m/mおよびTPO
h/hレシピエントマウス(n=43〜53)におけるヒトCD45
+CD34
+集団中のCD38
-細胞のパーセンテージの定量的解析を示す。
図15(e)は、15(d)dと同じマウスの骨髄中のヒトCD34
+CD38
-細胞の絶対数を示す。
図15(f)および(g)は、Rag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/hレシピエントから精製されたヒトCD45
+CD34
+細胞を用いるメチルセルロースコロニー形成アッセイ法を示す。
図15(f)はCFU-GEMMであり、
図15(g)はBFU-E(黒)、CFU-G(白)、CFU-M(灰色)およびCFU-GM(破線)である。CD34
+細胞は3〜4匹のマウスのグループからプールして、レシピエントマウスの遺伝子型あたり4つの独立したプールを得た。
図15(h)では、Rag2
-/-γ
c-/- TPO
m/mおよびTPO
h/h一次レシピエントマウスからヒトCD45
+CD34
+細胞を精製し、新生仔Rag2
-/-γ
c-/-マウスに移植し(マウスあたり100,000個の細胞)、8週間後に二次レシピエントにおけるヒトCD45
+キメリズムを測定した。結果は2つの独立した実験からプールされたものである(n=7〜12一次レシピエント、n=11〜19二次レシピエント)。
【0171】
TPO
m/mと比較して、TPO
h/mとTPO
h/hの両マウスではこれらの細胞のパーセンテージの有意な減少が観察され(
図15(b))、ヒトTPOはマウス受容体に完全には交差反応性でないか、このノックイン設定ではマウス細胞に十分な量で利用されないことを示唆している。
【0172】
移植したTPO
m/mおよびTPO
h/h宿主の骨髄中のヒトCD34
+集団が特性解析された。長期再増殖能を有するヒトHSCはLin-CD34
+CD38
-細胞画分に含まれる。ヒトCD45
+集団のうちのCD34
+細胞のパーセンテージはTPO
h/hマウスでわずかに増加していた(12.39±0.79%対10.00±0.81%、平均±標準誤差、n=43〜53、p=0.037)。TPO
m/mレシピエントに比較して、TPO
h/hではCD34
+集団内のCD38
-細胞のパーセンテージに、少ないながらも(1.5倍)、統計的に有意な増加が観察された(
図15(c)、(d))。全体として、これはTPOヒト化マウスにおいてCD34
+CD38
-細胞の絶対数の有意な増加(約2.8倍)をもたらした(
図15(e))。したがって、細胞表面の免疫表現型に基づいて、ヒトTPOはHSCに非常に富むことが公知である細胞の集団を支持している。
【0173】
この細胞集団の機能的特性を検討するために、ヒトCD34
+細胞をTPO
m/mおよびTPO
h/hマウスの骨髄から精製し、かつインビトロでメチルセルロースコロニー形成アッセイ法により評価した。CFU-GEMMは、すべての赤芽球-巨核球および骨髄細胞への分化能を少なくとも含む未熟細胞に由来する多系列骨髄系コロニーである。CFU-GEMMの形成は、少数ではあるが、TPO
h/hレシピエントマウスから単離されたCD34
+細胞の4つすべての試料から検出されたのに対し、TPO
m/mからは1つの試料のみがCFU-GEMMを生成したにすぎなかった(
図15(f))。この結果は、TPO
h/hレシピエントにおける未熟なヒト造血前駆細胞の改善された維持を示している。さらに、インビボで観察された増大した骨髄分化と一致して(
図14)、CFU-Mの数もまた、TPO
m/mマウスに比較して、TPO
h/hから単離されたヒトCD34
+細胞試料において有意に高かった(培養した150,000個のCD34
+細胞あたり225.0±12.25対81.25±10.80コロニー、平均±標準誤差、p=0.0001;
図15(g))。
【0174】
HSCの維持および/または自己再生は機能的には二次移植の成功によって最もよく実証される。マウスにおいて連続的に生着するSCID repopulating cell(SRC)は現在、ヒトHSC機能のための信頼できるサロゲート実験基準を表す。したがって、ヒトCD34
+細胞をTPO
m/mおよびTPO
h/h一次レシピエントの骨髄から精製し、かつRag2
-/-γ
c-/-新生仔マウスに同様に少数(動物あたり100,000個のCD34
+細胞)を移植した。二次レシピエントの骨髄を8週間後に解析した(
図15(h))。TPO
m/m一次レシピエントから単離されたヒトCD34
+細胞は、ヒトCD45
+細胞が11匹のうち2匹の二次レシピエントにしか検出されなかったので、連続的に生着する能力が非常に低かった。対照的に、TPO
h/h一次レシピエントから単離されたCD34
+細胞を用いて移植された19匹のうち15匹のマウスの骨髄にヒトCD45
+細胞が存在していた(p=0.0012)。二次レシピエントマウスの遺伝子型は両グループ(TPO
m/m)で同じだったので、この結果は、一次レシピエントにおけるヒトTPOの存在が自己再生能を高められたヒト細胞の維持に有利にはたらくことを示している。
【0175】
まとめると、これらの結果は、ホモ接合体TPOヒト化マウスがヒト造血幹細胞前駆細胞の自己再生能および多系列分化能を維持するための良好な環境を提供することを実証している。
【0176】
当業者は、本開示で明示的に記載または表現されていないが、本発明を具体化しかつ本発明の精神および範囲に含まれる、さまざまな修正を考案することができる。すべての実施例は、読者が本発明の原理と概念を理解するのを助けるために提供されるものであり、記載された特定の実施例および態様に限定されずに用いられる。本発明のすべての原理、局面、態様および実施例は、等価物が現在公知であろうと将来開発されようと、それらの等価物を包含することを意図している。本発明の範囲は本開示で示したまたは説明した態様および実施例に限定されるものではない。