(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態による冷蔵庫について図面を参照して説明する。
まず、
図1に示すように、冷蔵庫の断熱箱体1は、詳細は後述するが、鋼板製の外箱2と合成樹脂製の内箱3との間の空間部に断熱材を設けた断熱壁で構成されており、内部に複数の貯蔵室が設けられている。貯蔵室としては、具体的には上段から冷蔵室4、野菜室5が設けられ、その下方に製氷室6と小冷凍室7(
図2参照)が左右に並べて設けられ、これらの下方に主冷凍室8が設けられている。製氷室6内には、自動製氷装置9が設けられている。
【0009】
冷蔵室4および野菜室5は、いずれも冷蔵温度帯(例えば、1〜4℃のプラス温度帯)の貯蔵室であり、それらの間は、合成樹脂製の仕切壁10により上下に仕切られている。冷蔵室4の前面には、ヒンジ開閉式の断熱扉4aが前後方向に回動可能に設けられている。この断熱扉4aの背面部には、ドアポケット4bが設けられている。野菜室5の前面には、引出し式の断熱扉5aが設けられている。この断熱扉5aの背面部には、貯蔵容器を構成する下部ケース11が連結されている。下部ケース11の上部には、下部ケース11よりも小形の上部ケース12が設けられている。冷蔵室4内の最下部(仕切壁10の上部)には、チルド室13が設けられている。このチルド室13内には、チルドケース14が出し入れ可能に設けられている。
【0010】
製氷室6、小冷凍室7、および主冷凍室8は、いずれも冷凍温度帯(例えば、−10〜−20℃のマイナス温度帯)の貯蔵室である。冷蔵温度帯の野菜室5と、冷凍温度帯の製氷室6および小冷凍室7との間は、断熱仕切壁15により上下に仕切られている。この断熱仕切壁15は、断熱箱体1に一体的に設けられている。したがって、冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室4、野菜室5)と冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室6、小冷凍室7、主冷凍室8)では貯蔵温度帯が異なっていて、これらの間は断熱仕切壁15により上下に仕切られている。製氷室6の前面には、引出し式の断熱扉6aが設けられており、その断熱扉6aの背面部に貯氷容器16が連結されている。小冷凍室7の前面にも、図示はしないが、貯蔵容器が連結された引出し式の断熱扉が設けられている。主冷凍室8の前面にも引出し式の断熱扉8aが設けられており、この断熱扉8aの背面部に、貯蔵容器を構成する下部容器17および上部容器18が連結されている。
【0011】
断熱箱体1内には、上記した各貯蔵室を冷却するための冷凍サイクルが組み込まれている。この冷凍サイクルは、冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室4および野菜室5を冷却する冷蔵用冷却器20と、冷凍温度帯の貯蔵室である製氷室6、小冷凍室7、および主冷凍室8を冷却する冷凍用冷却器21を含んで構成されている。断熱箱体1の下端部背面側には機械室22が設けられている。この機械室22内に、冷凍サイクルを構成する圧縮機23や、凝縮器(図示せず)、これらを冷却する冷却ファン(これも図示せず)、除霜水蒸発皿24などが配設されている。
【0012】
断熱箱体1内における冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室4、野菜室5)の奥部には、冷蔵用冷却器20、この冷蔵用冷却器20により生成された冷気を冷蔵室4(および野菜室5)内に供給するための冷気ダクト26、冷気を循環させるための冷蔵側送風ファン27などが、以下のようにして設けられている。冷蔵室4の最下段のチルド室13の後方に位置させて送風ダクト兼用の冷蔵側冷却器室28が設けられていて、この冷蔵側冷却器室28内に、冷蔵用冷却器20が配設されている。冷蔵側冷却器室28の前側下部には、野菜室5内の空気を吸い込む吸込み口29が設けられている。冷蔵側冷却器室28の後部側の下部には、冷蔵用冷却器20の除霜水を受ける冷蔵側水受け部30が設けられている。冷蔵側水受け部30で受けた水は、排水ホース30a(
図18参照)を介して前記機械室22内の除霜水蒸発皿24に導かれ蒸発するようになっている。
【0013】
チルド室13の後方には、冷蔵側送風ファン27が配設されているとともに、送風ダクト31が設けられている。送風ダクト31は、下端部が前記冷蔵側冷却器室28の上部に連通され、上端部が前記冷気ダクト26の下端部に連通している。冷気ダクト26は、冷蔵室4の背面に沿って上方へ延びており、前方からダクトカバー32により覆われている。ダクトカバー32には、冷気ダクト26内を通る冷気を冷蔵室4およびチルド室13内に供給するための複数の冷気吹出し口33が設けられている。なお、図示はしないが、冷蔵室4の底板を構成する仕切壁10の後部の左右の隅部には、冷蔵室4と野菜室5とを連通させる連通口が形成されている。
【0014】
この構成において、冷蔵側送風ファン27が駆動されると、
図1の矢印で示すように、野菜室5内の空気が吸込み口29から冷蔵側冷却器室28内に吸い込まれ、その吸い込まれた空気は、送風ダクト31側へ吹き出される。送風ダクト31側へ吹き出された空気は冷気ダクト26を通り、複数の冷気吹出し口33から冷蔵室4内およびチルド室13内に吹き出される。冷蔵室4内に吹き出された冷気の一部は野菜室5内にも供給される。そして、最終的に、冷蔵側冷却器室28を経て送風ダクト31内に吸い込まれるという循環が行われる。この過程で、冷蔵側冷却器室28内を通る空気が冷蔵用冷却器20により冷却されて冷気となり、その冷気が冷蔵室4および野菜室5に供給されることによって、冷蔵室4および野菜室5が冷蔵温度帯の温度に冷却される。
【0015】
断熱箱体1内における冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室6、小冷凍室7、主冷凍室8)の奥部には、送風ダクト兼用の冷凍側冷却器室35が設けられている。この冷凍側冷却器室35の下部に位置させて、冷凍用冷却器21や除霜ヒータ(図示せず)が配設されている。冷凍側冷却器室35の上部に位置させて、冷凍側送風ファン36が配設されている。冷凍側冷却器室35の前面側には、各貯蔵室(製氷室6、小冷凍室7、主冷凍室8)に対応させて冷気吹出し口37が設けられ、下部には吸込み口38が設けられている。
【0016】
冷凍用冷却器21の下方に位置させて、冷凍用冷却器21の除霜時の除霜水を受ける排水樋39が設けられている。この排水樋39は、断熱箱体1の底部断熱壁を貫通する排水管40を介して機械室22内の前記除霜水蒸発皿24に連通している。これにより、排水樋39で受けられた除霜水も排水管40を介して除霜水蒸発皿24に導かれ、当該除霜水蒸発皿24で蒸発するようになっている。
【0017】
この構成において、冷凍側送風ファン36が駆動されると、冷凍用冷却器21により生成された冷気が、各冷気吹出し口37から製氷室6、小冷凍室7、主冷凍室8内に供給された後、吸込み口38から冷凍側冷却器室35内に戻されるといった循環を行うようになっている。これにより、それら製氷室6、小冷凍室7、主冷凍室8が冷凍温度帯の温度に冷却される。なお、断熱箱体1における天井部の断熱壁の上面側には、当該冷蔵庫の動作を制御する制御装置41が設けられている。
【0018】
次に、断熱箱体1の具体的な構成について
図2から
図21も参照しながら説明する。断熱箱体1は、左側壁43、右側壁44、天井壁45、底部壁46、背部壁47と、前記断熱仕切壁15を有していて、前面が開口している。これら各壁43〜47と、断熱仕切壁15は、断熱箱体1の断熱壁を構成している。
【0019】
断熱箱体1の外板を構成する外箱2は、鋼板製で、左側板53、右側板54、天板55、底板56、および背板57を有するもので、前面が開口する。この場合、左側板53、右側板54、および天板55は、一枚の長尺な鋼板をほぼU字状に折曲することにより形成されている。底板56には、機械室22を形成するためのクランク状の屈曲部56aが折曲形成されている。この底板56には、
図16に示すように、前部の左右両側および後上部の左右両側に金属板製の補強板58がスポット溶接により固着され、補強されている。また、この底板56の左右両側には、金属製の側部補強板59(
図5参照)がやはりスポット溶接により固着され、補強されている。
【0020】
左側板53および右側板54において、それぞれの前端部には、内方へ突出する連結片53a,54a(
図6〜
図8参照)が形成され、それぞれの後端部には、前方へ指向する連結片53b,54bが形成されている。背板57の左右両端部には、前記左側板53および右側板54の連結片53b,54bに挿入係合される連結片が形成されている。
図3および
図5に示すように、背板57の左右両側部の上部と下部に、後述する発泡断熱材の原液を注入するための注入口60が形成されている。注入口60は、4箇所に形成されている。また、背板57には、上下方向に延びる補強用成形部61が複数本設けられている。
【0021】
断熱箱体1の内板を構成する内箱3は、合成樹脂製であり、真空成形機により一体成形されたものである。この内箱3は、外箱2の左側板53、右側板54、天井板55、底板56、および背板57と対応する左側板63、右側板64、天井板65、底板66、および背板67を有するとともに、前記断熱仕切壁15の外殻を形成する中間仕切部68を有していて、前面が開口している。前面開口部の周縁部には、側方へ張り出すフランジ部が形成されている。底板66には、外箱2の底板56における屈曲部56aに対応して機械室22を形成するための屈曲部66aが形成されている。左側板63および右側板64のフランジ部は、外箱2における左側板53および右側板54の連結片53a,54aに挿入係合されている。
【0022】
図6から
図8に示すように、左側壁43において、これの内部には、断熱材として、真空断熱パネル70と、発泡ウレタンからなる発泡断熱材71が設けられている。真空断熱パネル70は、左側壁43に沿って上下方向に延び、外箱2の左側板53の内面に接着剤にて接着されている。発泡断熱材71は、真空断熱パネル70と内箱3の左側板63との間、および真空断熱パネル70の周囲に設けられている。
【0023】
右側壁44において、これの内部にも、左側壁43と同様に断熱材として、真空断熱パネル72と発泡断熱材71が設けられている。真空断熱パネル72は、右側壁44に沿って上下方向に延び、外箱2の右側板54の内面に接着剤にて接着されている。発泡断熱材71は、真空断熱パネル72と内箱3の右側板64との間、および真空断熱パネル72の周囲に設けられている。
【0024】
図1および
図4に示すように、天井壁45において、これの内部にも、断熱材として、真空断熱パネル73と発泡断熱材71が設けられている。真空断熱パネル73は、一部が内箱3の天井板65に接着剤にて接着されている。発泡断熱材71は、真空断熱パネル73と外箱2の天板55との間、真空断熱パネル73と内箱3の天井板65との間、および真空断熱パネル73の周囲に設けられている。
【0025】
底部壁46において、これの内部にも、断熱材として、真空断熱パネル74と発泡断熱材71が設けられている。真空断熱パネル74は、側面から見てL字形をなしていて、外箱2の底板56における上面に接着剤にて接着されている。発泡断熱材71は、真空断熱パネル74と内箱3の底板66との間、真空断熱パネル74と外箱2の底板56との間、および真空断熱パネル74の周囲に設けられている。
【0026】
背部壁47において、これの内部には、断熱材として、真空断熱パネル75と、発泡断熱材71が設けられている。真空断熱パネル75は、背部壁47に沿って上下方向に延びている。この背部壁47において、冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室4および野菜室5に対応する冷蔵温度帯用背部壁47aと、冷凍温度帯の貯蔵室である製氷室6、小冷凍室7および主冷凍室8に対応する冷凍温度帯用背部壁47bで、厚さが異なっている。冷蔵温度帯用背部壁47aにおいて、外箱2の背板57と内箱3の背板67との間の断熱材としては基本的には真空断熱パネル75で、後述するように一部に発泡断熱材71が入り込んでいる。冷凍温度帯用背部壁47bにおいて、外箱2の背板57と内箱3の背板67との間の断熱材としては基本的には真空断熱パネル75と発泡断熱材71が併用されていて、発泡断熱材71は、内箱3の背板67と真空断熱パネル75との間に設けられている。
【0027】
このように背部壁47において、冷凍温度帯用背部壁47bは断熱材が真空断熱パネル75と発泡断熱材71が併用されているため、基本的に断熱材が真空断熱パネル75のみの冷蔵温度帯用背部壁47aに比べて厚さが厚く構成されている。これに伴い、
図4に示すように、冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室4および野菜室5の奥行き寸法L1は、冷凍温度帯の貯蔵室である製氷室6、小冷凍室7および主冷凍室8の奥行き寸法L2よりも大きく設定されている(L1>L2)。断熱仕切壁15において、内箱3の中間仕切部68の内部には、断熱材として発泡断熱材71が充填されている。
【0028】
ここで、断熱箱体1の各断熱壁に発泡断熱材71を充填させる充填方法について簡単に説明する。外箱2と内箱3を組み合わせるとともに、各断熱壁に対応する真空断熱パネル70,72,73,74,75を配置する。そして、断熱箱体1を、これの開口部を下に向けた状態で、上面となる外箱2の背板57に形成された4箇所の注入口60から発泡断熱材の原液を注入する。注入された原液は、左右の側壁43,44内の空間を流下して、左側板53と左側板63の前部の連結部、および右側板54と右側板64の前部の連結部に到達し、そこから発泡して周囲の空間へ広がる。広がった発泡断熱材71は、左右の側壁43,44の空間、天井壁45の空間、底部壁46の空間、および断熱仕切壁15の空間にも広がって充填され、最終的には背部壁47の空間にも広がって充填される。
【0029】
このとき、断熱箱体1の左右の後部のコーナー部においては、内箱3の角部に位置させて、90度の角度よりも緩やかとなる面取り部76(
図6、
図9参照)が形成されている。内箱3の角部には、角度が異なる面取り部76aも設けられている。このため、注入口60から注入される発泡断熱材の原液は、その面取り部76,76aに沿って左側壁43および右側壁44の空間に案内され易くなる。また、断熱箱体1のコーナー部において、当該断熱箱体1の底部寄りの注入口60の注入先の内部には、
図8に示すように、傾斜状の案内面77aを有する案内部材77が配置されている。この案内部材77を設けることで、面取り部76,76aと同様に、注入口60から注入される発泡断熱材の原液が左側壁43および右側壁44の空間へ案内され易くなる。
【0030】
断熱箱体1の左右の後部のコーナー部において、外箱2の背板57の左右両端部の角部78はほぼ90度に曲げられている。したがって、断熱箱体1の左右の後部のコーナー部において、内箱3の角部となる面取り部76,76aと外箱2の背板57の角部78とでは曲げ角度が異なっていて、内箱3の面取り部76,76aの角度は、外箱2の角部78の角度よりも緩やかに形成されている。断熱箱体1の左右および上下の後部のコーナー部においては、真空断熱パネルが存しておらず、発泡断熱材71の厚さが厚くなっている。また、発泡断熱材71の厚さが特に大きい部分では、
図8および
図10に示すように、真空断熱パネル75と発泡断熱材71がラップしている。
【0031】
背板57の左右両側の下端部には、角部78の外側に位置させて平坦部が形成されていて、背板57の下端部は、この平坦部を利用して側部補強板59にねじ50(
図5、
図8参照)によりねじ止めされている。
【0032】
内箱3における背板67において、冷蔵室4に対応する部位には、
図2に示すように、上部の左右に位置させて部品取付用の凸部79が設けられているとともに、この凸部79に連ねて下方に延びる凸部80が設けられている。これら凸部79および80は、前方に向けて突出していて、内部の空間部に発泡断熱材71が充填されている。これら左右の凸部79および80は、全体としてL字形をなしていて、左右が向かい合った形態をなしている。これら左右の凸部79,80に囲まれた窪み部を、前記冷気ダクト26としている。左右の部品取付用の凸部79には部品取付用の取付穴79aが形成されていて、その取付穴79aを利用して前記ダクトカバー32が取り付けられている。
【0033】
左右の凸部79,80は、背部壁47の真空断熱パネル75の周囲に位置した形態となっている。これら凸部79,80の前面には、複数のガス抜き孔81が形成されている。このガス抜き孔81は、発泡断熱材71の発泡充填時においてガス抜き孔として機能する。このガス抜き孔81が形成された部位は、発泡断熱材71の発泡充填時に当該発泡断熱材71が入る狭い箇所でかつ行き止まりとなる箇所である。このガス抜き孔81は、発泡断熱材71の充填前において、
図18に示すように、シート82で塞ぐようにしている。このシート82は、ガスは通すが、発泡断熱材71の漏れは塞ぐ機能を有したものである。また、凸部80の裏側にシート82を貼り付けておくことにより、凸部80やガス抜き孔81を成形する際に発生するばりがあったとしても、そのばりで真空断熱パネル75を傷付けることを防止する機能がある。
【0034】
また、内箱3における背板67において、左右の凸部79,80で挟まれた部位には、上下方向に延びる補強用成形部83が2本設けられている。この補強用成形部83は、前方への突出寸法は小さく、裏側には発泡断熱材71は入らず、空間部となっている。そして、部品取付用の前記凸部79に前記ダクトカバー32を取り付けた状態では、左右の凸部79,80、ならびに補強用成形部83は、そのダクトカバー32により覆われて前方から見えないようになっている。この場合、凸部79,80も補強用成形部として機能する。また、背部壁47の冷蔵温度帯用背部壁47aにおいては、内箱3の背板67と真空断熱パネル75との間が接着剤で接着されておらず、その接着されていない部分の背板67をダクトカバー32により前方から覆っている。
【0035】
内箱3における背板67の背面において、
図18に示すように、凸部79,80で囲まれた部位から下側にかけて、シート84が貼り付けられている。このシート84も、背板67側の成形用のばりで真空断熱パネル75を傷付けることを防止する機能がある。
【0036】
背部壁47において、発泡断熱材71が無い冷蔵温度帯用背部壁47aと発泡断熱材71が有る冷凍温度帯用背部壁47bとの境界部分となる断熱仕切壁15との接続部分には、
図1、
図4、
図13に示すように、内箱3の背板67に、前下がり状態に傾斜した傾斜部85が設けられていて、この傾斜部85の裏側に発泡断熱材71が入り込んでいる。
図18に示すように、内箱3の背板57の背面において、傾斜部85の上端から上方の部位に、シート86が貼り付けられている。このシート86は、発泡断熱材71の発泡充填時に発泡断熱材71が背板57と真空断熱パネル75との間に浸入することを防止するためである。
【0037】
背部壁47の真空断熱パネル75には、
図1、
図4、
図11、
図12に示すように、背面側の上端部および下端部に幅方向に延びる段差部87aが形成されているとともに、上下方向に延びてそれら段差部87aに連通する2本の溝部87bが形成されていて、この段差部87aおよび溝部87bに放熱パイプ88が配置されている。このような構成とすることで、外箱3の背板57側に放熱パイプ88逃げ用の凹部を形成する必要がなくなる。この場合、上下の段差部87aは、真空断熱パネル75の芯材を間引きすることによって形成し、2本の溝部87bは、ローラによるプレス成形によって凹状に形成している。なお、左側壁43の真空断熱パネル70および右側壁44の真空断熱パネル72の外側にも上下方向に延びる2本の溝部89が形成されていて、これら溝部89にも放熱パイプ88が配置されている(
図6〜
図10参照)。
【0038】
左側壁43および右側壁44において、内箱3の左側板63および右側板64には、冷蔵室4に対応する部位に位置させて、複数本の棚受け用凸部90が設けられている。これら棚受け用凸部90は、前後方向に延びて上下に複数段配置されている。また、内箱3の左側板63および右側板64には、冷蔵室4に対応する部位の前部に位置させて、上下方向に延びる補強用成形部91が設けられている。棚受け用凸部90および補強用成形部91の裏側の空間部にも、発泡断熱材71が充填されている。
【0039】
図2に示すように、断熱箱体1の左後部のコーナー部には、冷蔵室4の下部奥部に位置させて、電気配線収納ボックス93が設けられている。この電気配線収納ボックス93は、発泡断熱材71の発泡充填前に内箱3に取り付けられ、発泡断熱材71の発泡充填後には、
図14に示すように、電気配線収納ボックス93の裏側は発泡断熱材71で覆われた状態となる。この電気配線収納ボックス93には、図示はしないが電気部品の電気配線が収納される。
【0040】
図1、
図2において、主冷凍室8の奥部には、前記機械室22の上方に位置させて前記排水樋39が配置されている。この排水樋39は、例えば合成樹脂製で、左右方向に長い矩形の容器状をなしていて、
図19に示すように、左右の両側部に側方へ突出するピン状の固定部94を有している。内箱3の左側板63および右側板64には、排水樋39に対応する部位に位置させて排水樋39側へ突出する凸部95が設けられていて、これら凸部95の排水樋39側の面に取付孔96が形成されている。排水樋39は、発泡断熱材71の発泡充填前に、左右の固定部94を内箱3側の取付孔96に挿入しておく。このとき、発泡断熱材71の発泡充填前の状態では、内箱3は弾性変形が十分にできるので、それら固定部94を取付孔96に容易に挿入することができる。そして、排水樋39を内箱3に取り付けた状態で、断熱箱体1の各断熱壁に発泡断熱材71を発泡充填させることにより、排水樋39は、固定部94を介して断熱箱体1における左側壁43と右側壁44との間に固定状態に設けられる。
【0041】
そして、内箱3において、排水樋39の上方には、合成樹脂製の補強板98が設けられている。この補強板98は、例えば合成樹脂製で、
図20、
図21に示すように、上部に上方へ突出するピン状の固定部99が設けられ、下部に例えば2個の係合爪100が一体に設けられている。この補強板98は、次のようにして取り付けられる。
【0042】
すなわち、発泡断熱材71を発泡充填する前に、
図21に示すように、補強板98の2個の係合爪100の先端部を、排水樋39の後壁39aと内箱3の背板67との間の隙間に挿入して、後壁39aの上端部のフランジ部39bに引っ掛け(
図20参照)、その引っ掛けた部分を支点にして補強板98の上部を、
図21の矢印で示すように後方に向けて回動させる。そして、上部の固定部99を、断熱仕切壁15の外殻を形成する内箱3の中間仕切部68の下面に形成された取付孔101に挿入することで仮固定される。このときも、発泡断熱材71を発泡充填する前の状態では、内箱3は弾性変形が容易にできるから、固定部99を取付孔101に容易に挿入することができる。この状態で、発泡断熱材71を断熱箱体1内に発泡充填させることにより、補強板98は、内箱3内に強固に取り付けることができる。
【0043】
したがって、補強板98は、排水樋39に係止固定させることで取り付けられている。この場合、補強板98を取り付けるについて、内箱3の中間仕切部68に取付孔101を設ける必要があるが、背板67には取付孔を設ける必要がない。
【0044】
図17および
図18に示すように、内箱3の開口部周縁部のフランジ部において、貯蔵室の仕切部に対応する部位などの複数箇所に、ソフトテープ103を取り付けている。このソフトテープ103は、内箱3のフランジ部を、外箱2の前記連結片53a,54aに連結した状態で、発泡断熱材71が外部に漏れることを防止するためである。断熱箱体1における左右後部のコーナー部などには、冷凍サイクルのサクションパイプなどの冷媒管104が配置されている。
【0045】
上記構成の冷蔵庫を梱包する場合、図示はしないが、梱包箱内において、断熱箱体1における天井壁45の制御装置41の上面に緩衝材を配置しておくことが好ましい。
上記した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0046】
貯蔵温度帯が異なる複数の貯蔵室を有する断熱箱体1を備え、この断熱箱体1を構成する断熱壁の断熱材に真空断熱パネルを用いる構成の冷蔵庫において、貯蔵室のうち貯蔵温度帯が高い貯蔵室に対応する断熱壁の厚さと貯蔵温度帯が低い貯蔵室に対応する断熱壁の厚さが異なっている。具体的には、断熱箱体1における背部壁47において、貯蔵温度帯が高い貯蔵室である冷蔵温度帯の貯蔵室(冷蔵室4、野菜室5)に対応する冷蔵温度帯用背部壁47aの厚さを、貯蔵温度帯が低い貯蔵室である冷凍温度帯の貯蔵室(製氷室6、小冷凍室7、主冷凍室8)に対応する冷凍温度帯用背部壁47bの厚さより薄く形成している。この場合、冷蔵温度帯用背部壁47aは、これの断熱材としては基本的に真空断熱パネル75のみでも断熱性能を確保でき、厚さを薄くできる。冷凍温度帯用背部壁47bは、これの断熱材として真空断熱パネル75と発泡断熱材71を併用していて、真空断熱パネル75と発泡断熱材71とで断熱性能を確保している。したがって、貯蔵室の貯蔵温度帯に応じた厚さの断熱壁を備え、断熱性能が安定した冷蔵庫を提供することができる。
【0047】
断熱箱体1における断熱壁のうち断熱材に発泡断熱材71が用いられていないか若しくは使用量が少ない部分は、貯蔵温度帯が高い冷蔵温度帯の貯蔵室の背部壁となる冷蔵温度帯用背部壁47aのみに用いられている。冷蔵温度帯用背部壁47aは、基本的に真空断熱パネル75のみで断熱性能を確保することが可能である。
【0048】
断熱壁のうち発泡断熱材71が用いられていない冷蔵温度帯用背部壁47aにおいて、内箱3の背板67と真空断熱パネル75との間にシート84を設けた。内箱3の背板67には部品取付用の凸部79などが設けられることが多く、成形時のばりなどが生じ易い。その背板67と真空断熱パネル75が直接接触すると、そのばりなどで真空断熱パネル75を傷付けるおそれがあるが、それらの間にシート84を設けることで、真空断熱パネル75が傷付けられることを防止できる。
【0049】
背部壁47の内板となる内箱3の背板67に、部品取付用の凸部79を設けた。この凸部79を利用して、ダクトカバー32を取り付けることができる。
背部壁47の内板となる背板67にあって発泡断熱材71が入る狭い箇所でかつ行き止まりとなる箇所にガス抜き孔81が設けられ、そのガス抜き孔81を、通気性を有するシート82で塞ぐようにした。これにより、発泡断熱材71の発泡充填時にガス抜き孔81からガスを容易に抜くことができて、発泡断熱材71の発泡充填を良好に行うことができる。また、ガス抜き孔81を形成する際に生ずるばりで真空断熱パネル75を傷付けることを防止できる。
【0050】
背部壁47の内板となる内箱3の背板67に、貯蔵室側へ突出する凸部79,80が設けられ、これら凸部79,80は、真空断熱パネル75の周囲に位置している。凸部79,80の裏側には発泡断熱材71が入り込み、その発泡断熱材71で真空断熱パネル75を包み込む形態とすることが可能となる。
【0051】
背部壁47の内板となる内箱3の背板67に、貯蔵室側へ突出する凸部79,80が設けられ、これら凸部79,80で囲まれた窪み部を冷気ダクト26としている。これによれば、冷気ダクト26を良好に形成することができる。
【0052】
貯蔵温度帯が高い貯蔵室(冷蔵室4、野菜室5)の奥行き寸法L1は、貯蔵温度帯が低い貯蔵室(製氷室6、小冷凍室7、主冷凍室8)の奥行き寸法L2よりも長く設定されている。これによれば、貯蔵温度帯が高い貯蔵室の有効庫内容積を広く確保することが可能となる。
【0053】
断熱箱体1の内部に形成される冷気ダクト26において、当該冷気ダクト26を流れる冷気を真空断熱パネル75が存しない部位に流さない。これによれば、冷気ダクト26を通る冷気の熱ロスを少なくできる利点がある。
【0054】
背部壁47の内板となる内箱3の背板67に、背部壁47にあって発泡断熱材71が有る冷凍温度帯用背部壁47bと発泡断熱材71が無い冷蔵温度帯用背部壁47aの境界部分に位置させて傾斜部85を設けた。これにより、傾斜部85の裏側に発泡断熱材71が入り易く、また、その発泡断熱材71により真空断熱パネル75と背板67とを強固に接続することが可能となる。さらに、内箱3の成形時において、前記境界部分を傾斜部85とすることで、そこをほぼ90度の角部にする場合に比べて、成形性を良好にできる。また、内箱3を重ねる際に重ね易く、取り扱い性の向上も図ることができる。
【0055】
背部壁47にあって発泡断熱材71が有る冷凍温度帯用背部壁47bと発泡断熱材71が無い冷蔵温度帯用背部壁47aの境界部分において、内箱3の背板67と真空断熱パネル75との間に、発泡断熱材71の浸入を防止するシート86を設けた。これによれば、発泡断熱材71が浸入することで背板67が変形したりすることを防止できる。
【0056】
内箱3における背板67には補強用成形部83が設けられ、また、左側板63および右側板64にも補強用成形部91が設けられている。これによれば、補強用成形部83、91を設けることで、合成樹脂製の背板67、左側板63および右側板64の強度をアップさせることが可能となる。背板67には、前記補強用成形部83を前方から覆うカバーとしてダクトカバー32を設けているので、見た目を良くすることが可能となる。
【0057】
断熱箱体1の断熱壁のうち天井壁45は、内板となる天井板65と真空断熱パネル73は接着剤で接着した。これによれば、天井板65と真空断熱パネル73の剥がれを防止できる。断熱箱体1の断熱壁において内箱3と真空断熱パネル75との間を接着剤で接着しない冷蔵温度帯用背部壁47aでは、貯蔵室側からダクトカバー32で覆う構成としている。これによれば、ダクトカバー32により見た目を良くすることが可能となる。
【0058】
断熱箱体1における各断熱壁において、真空断熱パネル70,72,73,74,75の周囲を囲うように発泡断熱材71が存している。これによれば、発泡断熱材71でそれら真空断熱パネル70,72,73,74,75を保護することができる。
【0059】
断熱箱体1のコーナー部は発泡断熱材71が厚くなっている(
図6〜
図10参照)。断熱箱体1のコーナー部には真空断熱パネルを配置することが難しいため、断熱材としては発泡断熱材71を主体とすることが好ましい。また、断熱壁において、断熱材に真空断熱パネルが存していないところは発泡断熱材71が主体となり、発泡断熱材71が厚くなっている。断熱箱体1において発泡断熱材71が厚い部分は、当該発泡断熱材71と真空断熱パネルがラップしている(
図10参照)。これによれば、ラップした部分は断熱性能が一層向上する。
【0060】
断熱箱体1のコーナー部に電気配線収納ボックス93が存している。これによれば、コーナー部を有効利用することが可能となる。すなわち、配線等を発泡断熱材71が充填される空間に配置しているため、配線等と真空断熱パネルとが接触するなどして真空断熱パネルが傷つくことを防止できるとともに、コーナー部を利用して上下方向に直線的に配線処理が可能なため、製造性が良い。
【0061】
背部壁47の真空断熱パネル75に形成された段差部87aに放熱パイプ88を配置している(
図11参照)。これによれば、放熱パイプ88を配置するについて、外箱2の背板57側にパイプ逃げ用の凹部を形成する必要をなくすことができる。
【0062】
断熱箱体1の内箱3のコーナー部に、発泡断熱材71の原液の注入時にその原液を断熱箱体1の左側壁43、右側壁44へ案内する面取り部76,76aを設けた(
図6参照)。これによれば、発泡断熱材71の原液を左右の側壁43,44へ良好に案内することができ、発泡断熱材71の発泡充填作業を良好に行うことが可能になる。また、断熱箱体1のコーナー部において、発泡断熱材71の原液を注入する注入口60の注入先に、前記原液を断熱箱体1の左側壁43、右側壁44へ案内する案内面77aを有する案内部材77を設けた(
図8参照)。これによっても、発泡断熱材71の原液を左右の側壁43,44へ良好に案内することができ、発泡断熱材71の発泡充填作業を良好に行うことが可能になる。
【0063】
断熱箱体1のコーナー部において、内箱3のコーナー部となる面取り部76,76aの角度を、外箱2のコーナー部となる角部78の角度よりも緩やかに形成して、角度を異ならせた。これによれば、背部壁47における真空断熱パネル75の左右方向の幅寸法をできるだけ大きく設定することが可能となる。
【0064】
断熱箱体1における背板57の角部78付近に、発泡断熱材71の原液を注入する注入口60を形成した。これによれば、発泡断熱材71の原液を左右の側壁43,44に注入しやすくできる。断熱箱体1における背板57の角部78の外側は平坦に形成されていて、その平坦部を利用してねじ50止めしている。これによれば、背板57を強固に固定することが可能となる。断熱箱体1における内箱3のフランジ部と外箱2の連結部分にソフトテープ103を設けた。これにより、発泡断熱材71の発泡充填時に発泡断熱材71が外側に漏れ出ることを防止できる。
【0065】
断熱箱体1の底部の外板を構成する金属製の底板56に、金属製の補強板58および側部補強板59をそれぞれスポット溶接により固着した。これによれば、底板56を補強することができ、また、その固着作業を容易に行うことができる。
【0066】
冷凍温度帯の貯蔵室の後部に設けられる補強板98と、冷凍用冷却器21の除霜水を受ける排水樋39を備え、補強板98の係合爪100を排水樋39の後壁39aの端部に係止固定する構成とした。これによれば、内箱3の背板67に取付孔を設けなくても、補強板98を背板67に取り付けることができる。排水樋39は左右両側部に突状の固定部94を有し、この固定部94を介して左右の側壁43および44に固定する構成としたので、排水樋39を断熱箱体1に強固に取り付けることができる。
【0067】
(その他の実施形態)
上記した実施形態では、断熱箱体1の断熱壁のうち背部壁47において、冷蔵温度帯用背部壁47aと冷凍温度帯用背部壁47bで厚さを異ならせる構成としたが、これに限られず、例えば左側壁43、右側壁44において厚さを異ならせることも可能である。
【0068】
また、背部壁47において、断熱材として真空断熱パネル75を主体とした冷蔵温度帯用背部壁47aと、断熱材として真空断熱パネル75と発泡断熱材71を併用した冷凍温度帯用背部壁47bで厚さを異ならせる構成としたが、冷蔵温度帯用背部壁47aと冷凍温度帯用背部壁47bで真空断熱パネル75の厚さを異ならせることも可能である。
【0069】
上記した実施形態では、冷蔵用冷却器20と冷凍用冷却器21の2つの冷却器を備えた例を示したが、これに限られず、冷却器としては1つのものでもよい。
以上説明したように、本実施形態の冷蔵庫によれば、貯蔵温度帯が異なる複数の貯蔵室を有する断熱箱体を備え、この断熱箱体を構成する断熱壁の断熱材に真空断熱パネルを用いる構成のものにおいて、貯蔵室の貯蔵温度帯に応じた厚さの断熱壁を備え、断熱性能が安定した冷蔵庫を提供することが可能となる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。