(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スライド機構は、さらに、前記ロール対を構成するそれぞれの前記ロールの間隙を変化させるように、前記ロールの少なくとも一方を前記第一法線方向にスライド移動させる第三スライド部を備えていることを特徴とする、
請求項1に記載のロールベンディング装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0026】
[長尺部品]
まず、本開示で製造される長尺の成形部品(長尺部品)の代表的な一例について、
図1(A)〜(E)を参照して具体的に説明する。
【0027】
本実施の形態では、
図1(A)に示すように、長尺部品40として、航空機胴体の製造に用いられる種々の骨格部材のうち、航空機胴体の断面方向(横方向)に用いられるフレームを例示する。この長尺部品40(フレーム)は、全体的に湾曲した形状を有しているが、長手方向(長尺部品40の縦方向)の両端部および中央部は、一定の曲率で湾曲する一定湾曲部40aとなっているとともに、一定湾曲部40aの間の部分は、一定湾曲部40aから変化した曲率で湾曲する可変湾曲部40bとなっている。それゆえ、長尺部品40は、異なるコンターを有するものとなっている。
【0028】
図1(A)に示す長尺部品40の断面形状は特に限定されず、予め設定される所定の形状であればよいが、例えば、
図1(B)〜
図1(E)に示すように、断面方向(長尺部品40の横方向)の両縁部のうち少なくとも一方が折り曲げられた形状を挙げることができる。なお、
図1(B)〜
図1(E)は、いずれも
図1(A)に示す長尺部品40の一方の端面を図中矢印V方向から見た図に相当するが、この端面形状は、実質的に、長尺部品40の断面形状に対応する。したがって、長尺部品40は、長手方向の断面が全体的に均一であるが、異なるコンターを有する部品(均一断面長尺部品)であるということができる。
【0029】
図1(B)および
図1(C)に示す断面形状は、いずれもアルファベットの「Z」字状(Z型)であり、断面方向の両縁部が折り曲げられた形状である。このうち
図1(B)に示す断面形状は、折り曲げられた両縁部の外側がさらに折り曲げられた形状となっているが、
図1(C)に示す断面形状は、折り曲げられた両縁部のうち一方(
図1(C)では、図中上側)の縁部の外側のみがさらに折り曲げられた形状となっている。
【0030】
図1(D)および
図1(E)に示す断面形状は、いずれもアルファベットの「L」字状(L型)であり、断面方向の一方の縁部が折り曲げられた形状である。このうち
図1(D)に示す断面形状は、図中下側の縁部のみ折り曲げられており、
図1(E)に示す断面形状は、図中上側の縁部のみ折り曲げられている。
図1(D)および
図1(E)のいずれの断面形状においても、折り曲げられた縁部の外側がさらに折り曲げられている。
【0031】
なお、本開示で製造される長尺部品40の断面形状は、
図1(B)〜
図1(E)に示す形状に限定されず、公知のさまざまな構成を挙げることができる。例えば、Z型(
図1(B)または
図1(C)参照)またはL型(
図1(D)または
図1(E)参照)以外に、J型、ハット型等を例示することができる。
【0032】
また、
図1(A)に示す長尺部品40は、前記の通り、均一断面長尺部品であるが、本開示で製造される長尺部品40はこれに限定されず、長手方向の部位毎に断面形状の異なるもの(フレキシブル断面形状を有するもの、フレキシブル断面長尺部品)であってもよい。また、長尺部品40の材質も特に限定されない。長尺部品40はフレーム等の航空機用部品であれば、当該長尺部品40の材質としては、アルミニウムまたはその合金(アルミニウム系材料)が挙げられるが、他の分野に用いられる部品であれば、鋼材等の鉄系材料(鉄または鉄を含有する合金)も挙げられる。
【0033】
長尺部品40がフレキシブル断面形状を有する場合では、断面形状によっては断面剛性に違いが生じる可能性がある。また、同一のロールベンディング装置を用いて同じ形状の長尺部品40に同じ湾曲を形成する場合、材質が異なれば、形状および湾曲が同一であっても断面剛性に違いが生じる。材質の相違としては、例えば、アルミニウム系材料と鉄系材料との相違のように、主成分となる金属材料の相違が挙げられる。また、アルミニウム系材料として分類される複数の合金材料であっても、合金の種類等によって異なる断面剛性を呈する場合が挙げられる。本開示で製造される長尺部品40は、このように異なる断面剛性を有するものであってもよい。
【0034】
なお、長尺部品40が、航空機用部品である場合、当該長尺部品40の具体例としてはフレームに限定されず、例えば、ストリンガー、スティフナー、スパー、フロアビーム、リブ、フレーム、ダブラー等を挙げることができる。これらは、航空機の骨格部材であるが、長尺部品40は、このような骨格部材に限定されず、他の航空機用部品であってもよい。加えて、本開示で製造される長尺部品40は、航空機用部品に限定されず、自動車分野または建材分野等の他の分野で用いられる、湾曲を有する部品にも好適に用いることができる。
【0035】
後述するロールベンディング装置の説明では、代表的な一例として、所定の断面形状が予め形成された部品に対して、湾曲が形成(湾曲が付与)されることにより長尺部品40が製造される。しかしながら、本開示はこれに限定されず、断面形状が形成される前の板材に対して、所定の断面形状が形成される工程に連続して、湾曲が形成される工程が行われてもよい。本開示においては、
図1(A)に示すような「長尺部品40」を「湾曲が形成された部品(または部材)」と定義とすれば、「湾曲が形成される前の部品(または部材)」を、便宜上「長尺材料」と称する。
【0036】
この「長尺材料」には、既に断面形状が形成されているが湾曲が形成されていないものを含むだけでなく、湾曲の形成も断面形状の形成もなされていない板材等も含む。また、長尺部品40に対して、断面形状の形成および湾曲の形成以外に、他の公知の加工がなされていれば、「長尺材料」には、何ら加工がなされていない板材(あるいは原料素材)だけでなく、湾曲形成以外の加工が既になされているものも含まれる。断面形状の形成またはこれ以外の他の加工は、公知の方法で行われればよい。特に、断面形状の形成は、本開示における湾曲の形成とともに公知のロール成形により行うことができる。
【0037】
[ロールベンディング装置の基本構成]
次に、本開示に係るロールベンディング装置の代表的な一例について、
図2(A)および
図2(B)を参照して具体的に説明する。
【0038】
本開示に係るロールベンディング装置は、ロール対を、長尺材料の搬送方向を含む平面上で当該搬送方向に対する法線方向にスライド移動させるスライド機構と、当該ロール対を、搬送方向および法線方向のそれぞれに直交する方向に沿ったチルト軸を中心として回転移動させるチルト機構と、を備えるものであればよい。さらに、スライド機構は、チルト軸に対するロール対の位置を相対的に変化させるように、当該ロール対をスライド移動させるように構成されていればよい。
【0039】
なお、本実施の形態では、ロール対による長尺材料の搬送方向を単に「搬送方向」と称する。ここで、スライド機構をスライド移動させる方向は、前記の通り「搬送方向を含む平面上で当該搬送方向に対する法線方向」であるが、スライド機構を回転移動させるチルト軸の方向は、「搬送方向および法線方向の双方に直交する方向」すなわち「搬送方向および法線方向を含む面(搬送面)に対する法線方向」になる。そこで、本実施の形態では、説明の便宜上、スライド移動の方向を「第一法線方向」と称し、チルト軸の方向を「第二法線方向」と称する。
【0040】
このような構成のロールベンディング装置の一例として、
図2(A)および
図2(B)に示す構成のロールベンディング装置10を挙げることができる。
図2(A)に示すように、本実施の形態に係るロールベンディング装置10は、複数のロールベンディング部51(
図2(A)では4台)、引張スタンド部53、メジャーリングロール部54、ベンディング装置台座部55等を備えている。複数のロールベンディング部51、引張スタンド部53、メジャーリングロール部54は、図中一点鎖線で示すベンディング経路50に沿って配置されており、これらがベンディング装置台座部55の上に設置されている。なお、
図2(A)におけるブロック矢印Fは、図示しない長尺材料の搬送方向である。
【0041】
図2(A)に示す構成では、複数のロールベンディング部51としては、湾曲形成用(ロールベンディング用)の成形ロール部11と断面形状形成用(ロールフォーミング用)のロールベンディング部52とを備えている。搬送方向Fの上流側から見れば、引張スタンド部53、2台のロールベンディング部52、2台の成形ロール部11、およびメジャーリングロール部54の順でベンディング経路50に配置されている。
【0042】
ロールベンディング部52は、図示しない長尺材料に所定の断面形状を形成する。成形ロール部11は、後述するように、断面形状が形成された長尺材料(あるいは部品)に湾曲を形成して長尺部品40とする。引張スタンド部53は、長尺材料を搬送方向Fに引っ張る。メジャーリングロール部54は長尺材料の長さを計測する。なお、ロールベンディング部52、引張スタンド部53、およびメジャーリングロール部54、並びに、ベンディング装置台座部55の具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。また、ロールベンディング装置10には、複数のロールベンディング部51、引張スタンド部53、メジャーリングロール部54、ベンディング装置台座部55以外の構成を備えてもよい。
【0043】
成形ロール部11は、
図2(B)に示すように、ロール対12、ロール駆動部13、第一ロール支持部14、第二ロール支持部15、ロール対支持部16、スタンド台座部17、スライド機構20、およびチルト機構30等を備えている。ロール対12は、一対のロール12a,12bで構成される。
【0044】
これら一対のロール12a,12bのうち図中向かって左側を第一ロール12aとし、右側を第二ロール12bとする。第一ロール12aは、上側の小径部分と下側の大径部分とを有し、第二ロール12bは、上側の大径部分と下側の小径部分とを有する。第一ロール12aの小径部分の外周面は第二ロール12bの大径部分の外周面に対向し、第一ロール12aの大径部分の外周面は第二ロール12bの小径部分の外周面に対向する。第一ロール12aの小径部分および大径部分、並びに、第二ロール12bの大径部分および小径部分は、それぞれの外周面の幅(ロール部分の間隔または高さ)が同程度である。
【0045】
さらに、第一ロール12aの小径部分の上には、小径部分または大径部分よりも幅の小さい中径部分が設けられている。この中径部分は、第二ロール12bの大径部分の上面の周縁部に対向している。第一ロール12aおよび第二ロール12bがこのような状態で対向配置していることにより、ロール対12の間には、略Z字状の隙間が形成される。したがって、本実施の形態では、成形ロール部11に導入される長尺材料は、Z型の断面形状を有する部品であればよく、より具体的には、
図1(C)に示すような、折り曲げられた両縁部のうち一方の縁部の外側のみさらに折り曲げられた断面形状が挙げられる。
【0046】
ロール対12は、ロール駆動部13により回転駆動する。ロール駆動部13は、本実施の形態では、第一ロール駆動部13aおよび第二ロール駆動部13bにより構成される。第一ロール駆動部13aは、第一ロール12aの上側に位置してロール軸の上端を支持しており、この第一ロール12aを回転駆動する。第二ロール駆動部13bは、第二ロール12bの上側に位置してロール軸の上端を支持しており、この第二ロール12bを回転駆動する。
【0047】
図2(B)において破線で示すように、ロール駆動部13は、ロール対12の上側から両外側に向かって開放するように移動可能に構成される。第一ロール駆動部13aは、第一ロール12aの上側から図中向かって左外側に移動可能であり、第二ロール駆動部13bは、第二ロール12bの上側から図中向かって右外側に移動可能である。このようにロール駆動部13は、ロール対12に対して着脱自在に設けられている。
【0048】
ロール対12の下側には、第一ロール支持部14および第二ロール支持部15が位置している。第一ロール支持部14は、第一ロール12aの下側に位置してロール軸の下端を支持している。第二ロール支持部15は、第二ロール12bの下側に位置してロール軸の下端を支持している。さらに、第一ロール支持部14は、後述するように、第二ロール支持部15の下側も支持している。言い換えれば、第一ロール支持部14は、第一ロール12aのロール軸の下端を支持するとともに、第二ロール支持部15の下部も支持している。
【0049】
また、第一ロール支持部14には、第一ロール駆動部13aが開放移動可能に支持されている。同様に、第二ロール支持部15には、第二ロール駆動部13bが開放移動可能に支持されている。したがって、第一ロール支持部14は、第一ロール12aおよび第一ロール駆動部13aを直接支持しているとともに、第二ロール支持部15を介して、第二ロール12bおよび第二ロール駆動部13bを間接的に支持している。
【0050】
第一ロール支持部14の外側(第一ロール12aから見て、対向する第二ロール12bの反対側)には、スライド機構20を構成する第二スライド部22が位置している。また、第二ロール支持部15の外側(第二ロール12bから見て、対向する第一ロール12aの反対側)には、スライド機構20を構成する第三スライド部23が位置している。なお、
図2(B)では、便宜上、第二スライド部22を破線の枠で囲んで図示しており、第三スライド部23を点線の枠で囲んで図示している。
【0051】
第二スライド部22は、第一ロール支持部14をスライド移動させる。第三スライド部23は、第二ロール支持部15をスライド移動させる。前記の通り、第一ロール支持部14は、ロール対12、ロール駆動部13、および第二ロール支持部15を直接または間接的に支持しているので、第二スライド部22は、第一ロール支持部14とともに、ロール対12、ロール駆動部13、および第二ロール支持部15をスライド移動させることになる。また、第二ロール支持部15は、第二ロール12bおよび第二ロール駆動部13bを支持しているので、第三スライド部23は、第二ロール支持部15とともに、第二ロール12bおよび第二ロール駆動部13bをスライド移動させることになる。
【0052】
第二ロール支持部15の下側には、ロール対支持部16が位置している。それゆえ、ロール対支持部16は、その上部で第一ロール支持部14の下部を支持している。前記の通り、第一ロール支持部14は第二ロール支持部15の下部も支持しているので、ロール対支持部16は、第一ロール支持部14および第二ロール支持部15を介してロール対12を支持していることになる。また、ロール対支持部16は、第一ロール支持部14の外側に位置する第二スライド部22を支持している。なお、第二ロール支持部15の外側に位置する第三スライド部23は、第二ロール支持部15とともに第一ロール支持部14により支持されている。
【0053】
ロール対支持部16の下側には、チルト機構30が設けられている。なお、
図2(B)では、チルト機構30は、便宜上、実線の枠で囲んで図示している。チルト機構30はスタンド台座部17の上面に設けられ、鉛直上方に向かって立設するチルト軸部31を備えている。ロール対支持部16の下面には嵌合部16aが設けられており、チルト軸部31は、この嵌合部16aに嵌合する。これにより、ロール対支持部16は、チルト軸部31を中心として回動可能になっている。
【0054】
ロール対支持部16は、前記の通り、第一ロール支持部14および第二スライド部22を支持しており、第一ロール支持部14は、第一ロール12a、第一ロール駆動部13a、第二ロール支持部15および第三スライド部23を支持しており、第二ロール支持部15は、第二ロール12bおよび第二ロール駆動部13bを支持している。それゆえ、ロール対支持部16は、第一ロール支持部14、第二ロール支持部15、ロール対12、ロール駆動部13、第二スライド部22、および第三スライド部23を直接または間接的に支持していることになる。さらに、チルト機構30は、ロール対支持部16を回動可能に支持しているので、第一ロール支持部14、第二ロール支持部15、ロール対12、ロール駆動部13、第二スライド部22、および第三スライド部23も回動可能に支持していることになる。
【0055】
チルト機構30は、スタンド台座部17に載置されているが、スタンド台座部17には、スライド機構20を構成する第一スライド部21が載置されている。第一スライド部21は、チルト機構30をスライド移動させる。前記の通り、チルト機構30は、ロール対支持部16、第一ロール支持部14、第二ロール支持部15、ロール対12、ロール駆動部13、第二スライド部22、および第三スライド部23を回動可能に支持しているので、第一スライド部21は、チルト機構30とともに、ロール対支持部16、第一ロール支持部14、第二ロール支持部15、ロール対12、ロール駆動部13、第二スライド部22、および第三スライド部23をスライド移動させることになる。
【0056】
なお、成形ロール部11を構成するロール対12、ロール駆動部13、各支持部14〜16、スタンド台座部17、スライド機構20、およびチルト機構30の具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
【0057】
[成形ロール部による位置調整]
次に、本開示に係るロールベンディング装置10において、スライド機構20およびチルト機構30によるロール対12の位置調整について、
図3(A),(B)、
図4(A)〜(C)、および
図5を参照して具体的に説明する。
【0058】
図3(A)および
図3(B)は、
図2(A)に示すロールベンディング装置10において、隣接する2台の成形ロール部11について、ロール対12の位置関係のみに注目した模式図である。
図3(A)においては、ロール対12−1が上流側に位置する成形ロール部11が備えるロール対12に対応し、ロール対12−2が成形ロール部11が備えるロール対12に対応する。また、
図3(A),(B)においては、ロール対12−1は位置調整されず、ロール対12−2は位置調整されるものとする。なお、
図4(A)〜
図4(C)も
図3(A),(B)と同様の模式図である。
【0059】
図3(A)に示すように、ロール対12−1およびロール対12−2により長尺材料41に対して図中実線で示すパスラインIで湾曲が形成されるとする。この場合、位置調整可能なロール対12−2における好適な位置は、
図3(A)に示すように、第一ロール12aおよび第二ロール12bにより長尺材料41が好適に挟持されている位置になる。この位置を便宜上「基準位置」とする。また、
図3(B)においては、「基準位置」にあるロール対12−2を細い実線で図示している。
【0060】
次に、
図3(A)において破線で示すパスラインIIのように、長尺材料41に対して、実線のパスラインIよりも曲率が大きくなるように湾曲形成されるとする。この場合、位置調整可能なロール対12−2が長尺材料41のパスラインIIに直交するようにスライド移動させるとする。ところが、
図3(B)において破線で示す「第一位置」のように、ロール対12−2の位置は好適な位置からずれることになる。破線のパスラインIIを有する長尺材料41に対しては、ロール対12−2の好適な位置は、
図3(B)において点線で示す「第二位置」となる。
【0061】
一方、例えば、第一の長尺材料41とは材質の異なる第二の長尺材料41についても、第一の長尺材料41と同様に破線のパスラインIIの曲率で湾曲を形成するとする。ところが、第二の長尺材料41のヤング率、耐力、あるいは弾性二次モーメント等によっては、第一の長尺材料41と第二の長尺材料41との間でスプリングバック量が異なってくる。したがって、破線のパスラインIIで湾曲を形成する場合に、第一の長尺材料41にとってロール対12−2の好適な位置が点線で示す「第二位置」であるとしても、第二の長尺材料41にとってロール対12−2の好適な位置は、例えば「第一位置」のような他の位置となり得る。
【0062】
すなわち、長尺材料41を構成する材料の種類等によっては、同じ曲率を得るためであっても、ロール対12−2を「第一位置」にスライド移動させたり、「第二位置」にスライド移動させたり、他の位置にスライド移動させたりする場合もあり得る。
【0063】
そこで、本開示に係るロールベンディング装置10においては、前述したスライド機構20およびチルト機構30のように、ロール対12をスライド移動させる機構の上に、ロール対12をチルト(傾斜)させる機構を組み合わせている。また、ロール対12をチルトさせる中心は、諸条件にもよるが、長尺材料41の湾曲の中立軸付近、もしくは、長尺材料41の幅方向の内壁側、あるいは、幅方向の外壁側に設定することが多い。そこで、本開示に係るロールベンディング装置10においては、チルトの中心すなわちチルト軸を可変させるよう構成されている。
【0064】
例えば、
図4(A)では、破線のパスラインIIで長尺材料41に湾曲を形成する場合において、湾曲の中立軸Xnを一点鎖線で示している。また、
図4(A)では、スライド移動の方向をブロック矢印Dsで示し、チルト方向をブロック矢印Dtで示し、チルト軸Xtを太線の円で示している。
図4(A)に示す位置関係では、位置調整可能なロール対12−2は、
図3(B)と同様に、破線で示す「第一位置」または点線で示す「第二位置」に位置調整することができるとともに、チルト軸Xtを中立軸Xn付近に位置調整することができる。
【0065】
あるいは、
図4(B)に示す位置関係では、
図4(A)および
図3(B)と同様に、ロール対12−2は、「第一位置」または「第二位置」に位置調整することができるとともに、チルト軸Xtを外壁側(湾曲の外側、突出側)に位置調整することができる。同様に、
図4(C)に示す位置関係でも、ロール対12−2は、「第一位置」または「第二位置」に位置調整することができるとともに、チルト軸Xtを内壁側(湾曲の内側、陥凹側)に位置調整することができる。なお、
図4(B)および
図4(C)では、ロール対12−2の位置調整のみ図示しており、ロール対12−1の図示については、
図4(A)で参照できるため省略している。
【0066】
図4(A)〜(C)に示すような位置調整を言い換えれば、チルト軸Xtをスライド移動させる機構を有し、さらに、チルト軸Xtに対してロール対12を構成する各ロール12a,12bの回転軸(ロール軸)を相対的に移動させればよいことになる。本実施の形態では、
図2(B)に示すように、スライド機構20は、チルト機構30を含む成形ロール部11全体をスライド移動させる第一スライド部21、チルト軸Xtに対してロール対12を相対的にスライド移動させる第二スライド部22、および、ロール対12の間隔を変化させるように一対のロール12a,12bの少なくとも一方をスライド移動させる第三スライド部23を備えている。
【0067】
これらスライド部21〜23のうち、チルト軸Xtをスライド移動させる手段は第一スライド部21であり、チルト軸Xtに対してロール軸を相対的にスライド移動させる手段は第二スライド部22である。また、第三スライド部23は、一対のロール12a,12bのロール軸の間隔を変化させるようにスライド移動させる手段であるとともに、この第三スライド部23は、一対のロール12a,12bの少なくともいずれかを取り外す際にも利用することができる。
【0068】
例えば、一対のロール12a,12bにおけるロール軸の間隔が200mmであり、チルト軸Xtの位置が、ロール12a,12bの間における片側のロール軸から70mmに位置しているとする。これに対して、チルト軸Xtの位置を片側のロール軸から90mmの位置に移動させるとする。この場合、
図2(B)に示す成形ロール部11の構成では、第一スライド部21により成形ロール部11全体を20mmスライド移動させるとともに、第二スライド部22により、第一スライド部21とは反対外にロール対12を20mmスライド移動させる。これにより、ロール対12の配置が同一(同一材料のパスライン)を維持したままチルト軸Xtをずらした(位置調整した)ことになる。なお、パスラインが異なる場合には、第一スライド部21をさらにスライド移動させ、チルト機構30により回転移動させればよい。
【0069】
ここで、長尺材料41の湾曲の中立軸Xn(
図4(A)〜(C)の一点鎖線参照)を算出する具体的な方法は特に限定されないが、
図5に示すように、長尺材料41を撮影して画像処理することにより、長尺材料41のひずみを計測する方法が挙げられる。
図5では、画像処理画面56として模式的に示すように、長尺材料41を公知の撮像装置で撮影し、得られた画像を公知の画像処理方法を用いて処理することによりひずみを計測し、公知の手法で中立軸Xnを算出すればよい。
【0070】
図5に示す模式図では、画像処理画面56の中心に長尺材料41が部分的に撮影されており、この長尺材料41の一部領域である画像処理領域56aを画像処理することで中立軸Xnとして算出している。なお、画像処理画面56における矢印CDは長尺材料41の幅方向を示し、矢印LDは長尺材料41の長手方向を示す。このようにして算出された中立軸Xnに基づいて、
図5左下に示すように、チルト軸Xtを中立軸Xn付近に位置調整することができ(
図4(C)参照)、また、
図5右下に示すように、ロール対12に接する長尺材料41の内壁側(あるいは外壁側)にチルト軸Xtを位置調整することができる(
図4(B)参照)。
【0071】
[スライド機構およびチルト機構の動作]
次に、本開示に係るロールベンディング装置10(成形ロール部11)が備えるスライド機構20およびチルト機構30のより具体的な動作の一例について、
図6〜
図12を参照して具体的に説明する。
【0072】
本開示に係るロールベンディング装置10は、
図2(B)に示す構成の成形ロール部11を備えているが、この成形ロール部11において、スライド機構20によりスライド移動される部位およびスライド移動の方向、並びに、チルト機構30により回転移動(チルト移動)される部位および回転移動の方向を、
図6に具体的に示す。なお、
図6では、ロール駆動部13の脱離方向についても具体的に示している。
【0073】
図6に示すように、成形ロール部11が備えるスライド機構20は、第一スライド部21、第二スライド部22、第三スライド部23から少なくとも構成されている。第一スライド部21は、前述したようにスタンド台座部17上に設けられ、実質的に成形ロール部11のほぼ全て(スタンド台座部17以外)をブロック矢印Ds1の方向にスライド移動させる。第一スライド部21が直接スライド移動させる対象は、前述したように、チルト機構30である。
図6では、チルト機構30を太線枠で囲んだ横線のハッチング領域で強調して図示している。
【0074】
第二スライド部22は、前述したようにロール対支持部16上に設けられ、実質的にロール対12(およびロール駆動部13)をブロック矢印Ds2の方向にスライド移動させる。第二スライド部22が直接スライド移動させる対象は、前述したように、第一ロール支持部14である。
図6では、第一ロール支持部14を太線枠で囲んだ斜線のハッチング領域で強調して図示している。
【0075】
第三スライド部23は、前述したように第一ロール支持部14上に設けられ、本実施の形態では、ロール対12のうち第二ロール12b(および第二ロール駆動部13b)をブロック矢印Ds3の方向にスライド移動させる。第三スライド部23が直接スライド移動させる対象は、前述したように、第二ロール支持部15である。
図6では、第二ロール支持部15を太線枠で囲んだ縦線のハッチング領域で強調して図示している。
【0076】
チルト機構30は、前述したように、スタンド台座部17上に設けられるとともに、その上面に立設するチルト軸部31を備えている。チルト軸部31にはロール対支持部16の嵌合部16aが嵌合しているので、チルト機構30によれば、ロール対支持部16およびこれに支持される成形ロール部11の大部分(チルト機構30および第一スライド部21を除く部分)が、チルト軸Xtを中心としてブロック矢印Dtの方向に回転移動する。
図6では、チルト機構30が直接回転移動させる対象である、ロール対支持部16を太線枠で囲んだ格子斜線のハッチング領域で強調して図示している。
【0077】
ロール駆動部13については、前述したように、第一ロール駆動部13aおよび第二ロール駆動部13bが上側から外側に開放されるようにブロック矢印Duに示す方向に移動する。これによって、ロール駆動部13はロール対12から脱離される。ここで、
図6(および
図2(B))に示す構成では、ロール駆動部13は、上側から開放するように脱離移動しているが、ロール駆動部13の脱離移動の手法はこれに限定されない。例えば、第一ロール駆動部13aおよび第二ロール駆動部13bが外側にスライド移動してもよいし、横から開放するように脱離移動してもよい。
【0078】
なお、
図6では、第一スライド部21のスライド移動の方向(ブロック矢印Ds1)は、図中左側の方向に図示しており、第二スライド部22のスライド移動の方向(ブロック矢印Ds2)は、図中右側の方向に図示しており、第三スライド部23のスライド移動の方向(ブロック矢印Ds3)は、図中右側の方向に図示している。しかしながら、これらスライド機構20のスライド移動の方向は特に限定されず、図示されている方向とは逆方向であってもよい。
【0079】
図6(および
図2(B))に示す状態は、スライド機構20が動作していない「基本状態」ということができる。それゆえ、
図6に示す状態では、スライド部21〜23は、いずれもスライド移動の対象をブロック矢印Ds1〜Ds3の方向に移動させるが逆方向に移動させない状態ということができる。便宜上、
図6に示すスライド移動の方向を、スライド部21〜23におけるスライド移動の「正方向」と定義すると、
図6に示す状態では、スライド部21〜23は正方向のみに移動可能な状態であるということができる。言い換えれば、スライド部21〜23が正方向にある程度動作していれば、正方向に対する「逆方向」に対象をスライド移動させることができる。
【0080】
ここで、スライド部21〜23のスライド移動方向は、正方向または逆方向の違いはあっても、いずれも長尺材料41の搬送方向F(
図2(A)参照)を含む平面上でこの搬送方向Fに対する法線方向である第一法線方向に設定される。これは、成形対象である長尺材料41のパスラインに対して、ロール対12を直交するようにスライド移動させるためである。
【0081】
また、スライド部21〜23のうち、成形ロール部11のほぼ全体を実質的にスライド移動させる第一スライド部21と、ロール対12を実質的にスライド移動させる第二スライド部22とにおいては、そのスライド移動の正方向が実質的に反対方向となっている。これにより、スライド機構20を簡素かつコンパクトな構成にすることができる。また、例えば、第一スライド部21のスライド移動と第二スライド部22のスライド移動とを、それぞれ同量に設定すれば、ロール軸の間隔を変更することなく(長尺材料41のパスラインを変更することなく)チルト軸Xtを位置調整することが可能になる。
【0082】
一方、第三スライド部23は、一対のロール12a,12bにおけるロール軸の間隔を変化させるようにスライド移動させればよいので、必ずしも
図6に示す方向(第二スライド部22と同じ方向)を正方向に設定する必要はない。また、
図6に示す構成では、第二ロール12bのみスライド移動する構成であるが、第一ロール12aのみスライド移動する構成であってもよいし、一対のロール12a,12bの双方がスライド移動する構成であってもよい。
【0083】
次に、ロール駆動部13、スライド機構20およびチルト機構30を動作させた状態について、
図7〜
図12を参照して説明する。まず、
図7に斜視図として示す成形ロール部11の状態は、
図6に示す基本状態であり、ロール駆動部13、スライド機構20およびチルト機構30のいずれも動作していない。
【0084】
次に、
図8に示す成形ロール部11の状態は、ロール駆動部13が動作した状態である。
図8に示すように、第一ロール駆動部13aおよび第二ロール駆動部13bがそれぞれ第一ロール12aおよび第二ロール12bから脱離し、ブロック矢印Duに示すように、開放するように外側に向かって移動している。なお、
図8では、移動対象であるロール駆動部13を斜線のハッチングで強調して図示している。
【0085】
次に、
図9に示す成形ロール部11の状態は、ロール駆動部13に加えて第三スライド部23が動作した状態である。ロール駆動部13は動作しているので、第二ロール駆動部13bは外側に開放するように移動している。第三スライド部23は、この状態にある第二ロール支持部15をブロック矢印Ds3の方向にスライド移動させている。これにより、第一ロール12aと第二ロール12bとにおけるロール軸の間隔が広がっている。なお、
図9においても、移動対象である第二ロール支持部15および第二ロール駆動部13bを斜線のハッチングで強調して図示している。
【0086】
次に、
図10に示す成形ロール部11の状態は、ロール駆動部13および第三スライド部23に加えて、第二スライド部22が動作した状態である。ロール駆動部13は外側に開放済であり、第二ロール12bが第一ロール12aから離れるようにスライド移動済である。さらに、第二スライド部22は、第一ロール支持部14をブロック矢印Ds2の方向にスライド移動させるので、第一ロール支持部14上に支持されるロール対12、第二ロール支持部15、およびロール駆動部13がスライド移動される。なお、
図10においても、移動対象である第一ロール支持部14、ロール対12、第二ロール支持部15、およびロール駆動部13を斜線のハッチングで強調して図示している。
【0087】
次に、
図11に示す成形ロール部11の状態は、ロール駆動部13、第三スライド部23、および第二スライド部22に加えて、第一スライド部21が動作した状態である。ロール駆動部13は外側に開放済であり、第二ロール12bは第一ロール12aから離れるようにスライド移動済であり、第一ロール支持部14は基本状態からスライド移動済である。第一スライド部21は、チルト機構30およびその上に支持されるロール対支持部16をブロック矢印Ds1の方向にスライド移動させるので、実質的に成形ロール部11が全体的にスライド移動される。なお、
図11においても、移動対象であるチルト機構30、ロール対支持部16、第一ロール支持部14、ロール対12、第二ロール支持部15、およびロール駆動部13を斜線のハッチングで強調して図示している。
【0088】
次に、
図12に示す成形ロール部11の状態は、ロール駆動部13およびスライド部21〜23に加えてチルト機構30が動作した状態である。ロール駆動部13は外側に開放済であり、第二ロール12bは第一ロール12aから離れるようにスライド移動済であり、第一ロール支持部14は基本状態からスライド移動済であり、成形ロール部11のほぼ全体も基本状態からスライド移動済である。チルト機構30は、チルト軸部31を中心としてチルト軸部31に嵌合部16aで嵌合するロール対支持部16をブロック矢印Dtの方向に回転移動させる。これにより、チルト機構30(および第一スライド部21)を除く成形ロール部11の大部分が回転移動する。なお、
図12においても、移動対象であるロール対支持部16、第一ロール支持部14、ロール対12、第二ロール支持部15、およびロール駆動部13を斜線のハッチングで強調して図示している。
【0089】
このように、本開示においては、スライド機構20は、ロール対12を、成形対象である長尺材料の搬送方向を含む平面上で当該搬送方向に対する法線方向である第一法線方向にスライド移動させるとともに、チルト機構30は、ロール対12を、搬送方向および第一法線方向を含む搬送面に対する法線方向である第二法線方向に沿ったチルト軸Xtを中心として回転移動させる構成であればよい。このようにスライド機構20によるスライド軸とチルト機構30によるチルト軸Xtとをそれぞれ移動させることにより、長尺材料41が所望のパスラインとなるように(長尺部品40が所望のコンターを有するように)調整することができる。
【0090】
本実施の形態では、前記の通り、スライド機構20には、少なくともチルト機構30およびロール対12をまとめて、第一法線方向にスライド移動させる第一スライド部21と、チルト軸Xtに対してロール対12の位置を相対的に変化させるように、当該ロール対12を第一法線方向にスライド移動させる第二スライド部22とを備えている構成を、好ましい一例として挙げることができる。また、本実施の形態では、スライド機構20は、さらに、ロール対12を構成するそれぞれのロール12a,12bの間隙を変化させるように、一対のロール12a,12bの少なくとも一方を第一法線方向にスライド移動させる第三スライド部23を備えている構成を、好ましい一例として挙げることができる。
【0091】
[ロールベンディング装置の構成例]
次に、本開示に係るロールベンディング装置10のより具体的な構成例について、
図13〜
図18を参照して具体的に説明する。
【0092】
前述したように、本開示に係るロールベンディング装置10は、例えば
図2(B)に例示するようなスライド機構20およびチルト機構30が設けられた成形ロール部11を備えていればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
【0093】
本開示に係るロールベンディング装置10においては、
図2(A)に示すように、長尺材料41のベンディング経路50(図中一点鎖線)は、長尺材料41に湾曲を形成するために、直線経路部と湾曲経路部とを有する。成形ロール部11は、ベンディング経路50の湾曲経路部に少なくとも1台配置されればよいが、より具体的には、
図2(A)に示すように、湾曲経路部における搬送方向F(
図2(A)参照)の最上流の位置に成形ロール部11が配置され、湾曲経路部に隣接する直線経路部の最下流の位置に成形ロール部11が配置されていればよい。
【0094】
なお、
図2(A)に示す構成では、直線経路部に配置される成形ロール部11の上流には、断面形状形成用のロールベンディング部52が2台設けられている。このように、ロールベンディング装置10は、長尺材料41の搬送方向Fに沿って複数のロールベンディング部51を配置するように備えており、これらのうち少なくとも一つが成形ロール部11(スライド機構20およびチルト機構30を備えているロールベンディング部51)であればよい。
【0095】
あるいは、ロールベンディング装置10が備える全てのロールベンディング部51が、スライド機構20およびチルト機構30を備えている成形ロール部11であってもよい。具体的には、例えば、
図13に示すように、成形ロール部11を3台備える構成、
図14または
図15に示すように、成形ロール部11を4台備える構成等を挙げることができる。
【0096】
説明の便宜上、ベンディング経路50の直線経路部に配置される成形ロール部11を「直線配置型」の成形ロール部11とし、湾曲経路部に配置される成形ロール部11を「傾斜配置型」の成形ロール部11としたとき、
図13に示すロールベンディング装置10は、直線配置型の成形ロール部11を1台、傾斜配置型の成形ロール部11を2台備える構成であり、
図14または
図15に示すロールベンディング装置10は、直線配置型の成形ロール部11を2台、傾斜配置型の成形ロール部11を2台備える構成である。
【0097】
なお、
図13〜
図18においては、説明の便宜上、ロールベンディング装置10の構成要素のうち成形ロール部11のみを図示している。また、
図13〜
図18には、オペレータ60も図示しており、オペレータ60がロールベンディング装置10または成形ロール部11を手動で操作する際のオペレータ60の配置も模式的に図示している。
【0098】
また、
図2(B)に示す構成の成形ロール部11では、
図6または
図8においてブロック矢印Duに示すように、ロール駆動部13がロール対12から脱離移動することが可能となっている。ここで、ロール駆動部13がロール対12から脱離し、さらに、スライド機構20のうち第三スライド部23により一対のロール12a,12bにおけるロール軸の間隔を広げれば、
図16〜
図18に示すように、オペレータ60は、成形ロール部11におけるロール12a,12bの交換またはメンテナンス等が容易になる。
【0099】
例えば、ロール駆動部13が脱離移動することで、ロール対12がロール駆動部13から外される。それゆえ、ロール対12または一対のロール12a,12bのいずれかを交換したり別のロールに取り替えたりすることが容易になる。さらに、第三スライド部23により、一対のロール12a,12bにおけるロール軸の間隔を広げることができるので、これにより、ロール12a,12bの交換または別のロールへの取替え等がより一層容易になる。また、ロール12a,12b同士におけるロール軸の間隔を調整できるため、長尺材料41として板厚の異なるものをロール対12の間に導入することも容易となる。
【0100】
オペレータ60は、
図17(あるいは
図16または
図18)に示すように、成形ロール部11の外側(搬送方向Fに交差する方向)からロール対12を取り扱うことができるとともに、
図16または
図18に示すように、成形ロール部11の正面側(搬送方向Fに沿った方向)からロール対12を取り扱うことができる。
【0101】
なお、
図13〜
図18に示すロールベンディング装置10においては、備えている成形ロール部11は、いずれも長尺材料41に湾曲を形成するための構成であるが、本開示に係るロールベンディング装置10は、これに限定されず、
図2(A)に示すロールベンディング装置10のように、所定の断面形状を形成するためのロールベンディング部52を備えていてもよい。
【0102】
具体的には、本実施の形態に係る他のロールベンディング装置10は、複数のロールベンディング部51を備えておりこれらロールベンディング部51には、長尺材料41としての長尺板材をロール成形して所定の断面形状を成形する、断面形状形成用のロールベンディング部51と、長尺材料41としての断面形状が成形された部品にさらに湾曲を形成する、湾曲形成用の成形ロール部11と、が含まれる構成であってもよい。このとき、湾曲形成用の成形ロール部11には、前述したスライド機構20およびチルト機構30が設けられていればよい。
【0103】
これにより、例えば、航空機のフレーム等のような長尺部品40を製造するに当たって、原料素材である長尺材料41(長尺板材等)に対して、ロール成形装置から連続して多段構成のロールベンディングを行う際に、異なる材料あるいは異なるコンターを有する長尺部品40を製造する場合であっても、複数の異なるロール成形装置を用いることなく、共通のロールベンディング装置10により成形することができる。
【0104】
このように、本開示に係るロールベンディング装置10においては、互いに対向して配置される一対のロール12a,12bにより構成され、これらロール12a,12bの間に長尺材料41を挟持して成形するロール対12と、当該ロール対12を第一法線方向(長尺材料41の搬送方向Fに対する法線方向)にスライド移動させるスライド機構20と、ロール対12を第二法線方向(長尺材料41の搬送方向Fおよび第一法線方向に直交する方向)に沿ったチルト軸Xtを中心として回転移動させるチルト機構30と、を備え、スライド機構20は、さらに、チルト軸Xtに対するロール対12の位置を相対的に変化させるように、当該ロール対12をスライド移動させる構成であればよい。
【0105】
前記構成によれば、スライド機構20とともにチルト機構30を備えているので、ロール対12を単にスライド移動させるのではなく、チルト軸Xtに対するロール対12の位置を相対的に変化させることができる。これにより、パスラインの接線に対してロール対12を直交配置するように位置調整することができるので、異なるパスラインでのロール成形が可能になる。それゆえ、一つの部品の中に異なるコンターまたは異なる断面剛性を有する長尺部品40であっても、精度良く湾曲を形成することができる。その結果、ストレッチ成形またはプレス成形等を用いることなく、異なるコンターまたは異なる断面剛性を有する長尺部品40を製造することが可能になる。
【0106】
また、所定の断面形状をロール成形および/またはロールベンディングにより形成する場合には、断面形状を形成するロールフォーミングに続いて、ロールベンディングにより連続的に湾曲を形成することが可能になる。それゆえ、実質的に同じ設備(治具およびまたはロール)を用いて、長尺部品40を製造することができるので、大幅なコストダウンを実現することが可能となる。
【0107】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。