(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674543
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】抗体に基づく薬物のコンパニオン診断としての細胞結合補体活性化産物アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20200323BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20200323BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20200323BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20200323BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 K
A61P37/02
A61P37/06
A61P29/00 101
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-525527(P2018-525527)
(86)(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公表番号】特表2018-528439(P2018-528439A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】US2016044779
(87)【国際公開番号】WO2017023781
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年7月23日
(31)【優先権主張番号】62/199,713
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506405518
【氏名又は名称】アレゲーニー・シンガー リサーチ インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アハーン,ジョセフ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チャウ−チン
(72)【発明者】
【氏名】マンズィ,スーザン,エム.
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/105973(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/124098(WO,A1)
【文献】
特表2014−505264(JP,A)
【文献】
特表2007−537449(JP,A)
【文献】
WILLIAMS, E. M. et al.,Thrice-Weekly Low-Dose Rituximab Decreases CD20 Loss via Shaving and Promotes Enhanced Targeting in Chronic Lymphocytic Leukemia,The Journal of Immunology,2006年11月 2日,Vol. 177, No. 10,pp. 7435-7443
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者について、Bリンパ球抗原に対する潜在的治療用抗体の結合を評価する方法において、前記被検者からの白血球細胞を含む血液試料について、
前記試料中のBリンパ球の表面上の少なくとも1つのバイオマーカの存在レベルを定量化する工程であって、前記バイオマーカは、C4d、C3d、C4b、iC4b、C3b、iC3b、及びC3dgからなる群から選択される、工程と、
前記被検者の前記バイオマーカの存在レベルを対照試料のBリンパ球の表面上の前記バイオマーカの存在レベルと比較することで、前記被検者の前記バイオマーカの存在レベルが前記対照試料における存在レベルに比べて上昇しているか否かを判定する工程と、
前記対照試料における存在レベルと比較した前記被検者からの前記血液試料中の前記バイオマーカの存在レベルの増加を、前記被検者のBリンパ球上の前記Bリンパ球抗原に対する前記潜在的治療用抗体の結合の減少と関連付ける工程と、
を含んでおり、
前記バイオマーカの存在レベルの増加は、前記潜在的治療用抗体の前記被検者への投与前に、且つ、前記潜在的治療用抗体が標的とする前記Bリンパ球抗原の発現に関連付けられることなく検出される、方法。
【請求項2】
前記バイオマーカはC4dである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Bリンパ球抗原は、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD40、CD69、CD70、CD79、CD80、CD85、CD86、CD137、CD138、CD252、及びCD268からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対照試料が、より早い時期に前記被検者から得られた試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被検者のBリンパ球上の前記Bリンパ球抗原に対する前記潜在的治療用抗体の結合の減少は、前記被検者が前記潜在的治療用抗体による治療に有利に反応する可能性が低いことを意味する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被検者は、自己免疫疾患又は自己免疫障害を有する疑いがある、或いは、自己免疫疾患又は自己免疫障害について検査されており、前記対照試料は、前記自己免疫疾患又は自己免疫障害を患っていない1又は複数の個体を含む対照セットから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記自己免疫疾患または自己免疫障害は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性硬化症、血管炎、混合型クリオグロブリン血症、及び炎症性ミオパチーからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記被検者は、自己免疫疾患又は自己免疫障害を有する疑いがある、或いは、自己免疫疾患又は自己免疫障害について検査されており、前記対照試料は、前記自己免疫疾患又は自己免疫障害を有するが、前記自己免疫疾患又は自己免疫障害の急性期を経験していない1又は複数の個体を含む対照セットから得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記自己免疫疾患または自己免疫障害は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性硬化症、血管炎、混合型クリオグロブリン血症、及び炎症性ミオパチーからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記被検者は、B細胞リンパ腫を有する疑いがある、或いは、B細胞リンパ腫について検査されており、前記対照試料は、B細胞リンパ腫を患っていない1又は複数の個体の対照セットから得られる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2015年7月31日出願の「Cell‐Bound Complement Activation Products Assays as Companion Diagnostics for Antibody‐Based Drugs」と題する米国仮特許出願第62/199,713号の利益を主張し、その開示内容全体を参照によって本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体薬物は、標的細胞上の特異的抗原と結合する。ある場合には、薬物は、ひとたびそれらの抗原に結合すると、患者の免疫系を刺激して、標識細胞を攻撃する。他の場合では、結合の後に続く治療的作用の機序は不明なままである。B細胞上の特異的抗原(CD20)を標的にするモノクローナル抗体であるリツキシマブは、B細胞リンパ腫を持つ患者に対する一般的な治療になってきた。また、それは、全身性エリテマトーデス(SLE)及び他の自己免疫疾患の治療にも使用されている。CD20及び他の表面発現抗原を含むB細胞抗原を標的とする、開発中のさらなるモノクローナル抗体薬物が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書は、特定の態様において、被検者の白血球細胞を包含する血液試料で、試料中のBリンパ球の表面に付けられた診断バイオマーカのレベルを測定することによって、被検者が抗体による療法から利益を得る可能性があるか否かを判定するのに有用な方法、システム、及びキットを明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】
図1A及び
図1Bは、標識B細胞及び非標識B細胞が抗体及び補体源を含有する血漿で処理される場合に得られる特異的メジアン蛍光強度(SMFI)(Y軸)を示しており、様々な患者由来のB細胞(X軸)が補体活性化の結果としてC4dにより有効に標識されたことを実証している。
【0005】
【
図2】
図2は、C4d標識B細胞は、CD20を標的とする抗体を結合させる効果が、補体活性化産物を含まない細胞より低いことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
次の特許文献の開示内容を参照によって本明細書に援用する:2009年9月8日に発行された「Diagnosing and Monitoring Inflammatory Diseases by Measuring Complement Components on White Blood Cells」と題する米国特許第7,585,640号。
【0007】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの」及び「その」は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数形を含む。特に規定しない限り、本明細書で使用する全ての科学技術用語は、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で使用する場合、用語「備える」とは「含んでいるが、それだけに限られない(including, but not limited to)」を意味する。
【0008】
「細胞結合補体活性化産物」又は「CB‐CAP」とは、1つ以上の補体活性化産物と、その補体活性化産物が結合している血液細胞(赤血球、網状赤血球、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、顆粒球、又は血小板を含むが、それらに限定されない)との結合体である。
【0009】
本明細書で使用する場合、CB‐CAPの「対照」レベルとは、一部の実施形態においては、研究の関心対象である自己免疫性、炎症性、又は他の疾患若しくは障害を患っていない1人以上の個体から得た試料から得られたCB‐CAPのレベルを指す。このレベルは個々の被検者毎に又は平均のような集計ベースで測定されてよい。「対照」レベルはまた、疾患又は障害を有するが疾患又は障害の急性期を経験していない個体の集団の分析によっても判定することができる。「対照」細胞又は試料は、そのような「対照」レベルを得るために使用されてよい。「対照」細胞又は試料は、研究の関心対象である自己免疫性、炎症性、又は他の疾患若しくは障害を患っていない1人以上の個体から得てよい。「対照」細胞又は試料はまた、疾患又は障害を有するものの疾患又は障害の急性期を経験していない個体の集団からも得ることができる。
【0010】
一部の実施形態では、それぞれのCB‐CAP、細胞、又は試料の「対照」レベルは、診断が求められている或いはその状態が監視されている同一個体のものであるが、異なる時期に取得される。特定の実施形態では、「対照」レベル、試料、又は細胞は、同一患者から、より早い時期に、例えば数週間前、数か月前、又は数年前に得られたレベル、試料、又は細胞であってよい。
【0011】
本明細書で使用する場合、「対照レベルとの差」とは、現在又は今後当業者によって使用される任意の統計的分析方法によって決定される統計学的有意差を指す。対照レベルとの差とは、それぞれのCB‐CAPの対照レベルと、その診断又は他の情報が求められている個体からの同じCB‐CAPのレベル、即ち実験レベルとの間の統計学的有意差を指す。差が統計的に有意であるか否かを判定するために、多くの方法が利用可能であり、且つ使用される特定の方法は本発明を限定するものではないことを、当業者は認識されるであろう。
【0012】
本明細書で使用する場合、「白血球細胞」とは、赤血球、巨核球、循環内皮細胞、又は網状赤血球ではない循環血液細胞、例えばTリンパ球及びBリンパ球、NK細胞、好酸球、好塩基球、顆粒球、好中球、単球、マクロファージ、プラズマ細胞、及び幹細胞を指す。
【0013】
本明細書で使用する場合、抹消血単核細胞(PBMC)は、円形の核を有する任意の血液細胞に対応することができる。そのような細胞は、免疫応答において役割を果たすことが知られている。PBMCは、例えばTリンパ球、Bリンパ球、及びNK細胞のようなリンパ球、単球、並びにマクロファージを含んでよい。
【0014】
本明細書において、「電子装置」又は「処理装置」とは、プロセッサ及び非一時的なコンピュータ可読メモリを含む装置を指す。メモリは装置に組み込まれてもよく、或いはメモリは装置から遠隔配置され、1つ以上の通信ネットワークを介して装置からアクセス可能であってよい。メモリは、プロセッサによって実行されたときに、プログラミング命令に従ってプロセッサに1つ以上の動作を実行させるように構成されたプログラミング命令を含んでよい。電子装置の例としてはコンピュータ装置、タブレット、及びスマートフォンが挙げられる。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「被検者」は、哺乳類を含むがそれに限定されない動物を意味するものとして使用される。哺乳類はヒトであってよい。用語「被検者」及び「患者」は互換可能に使用されてよい。
【0016】
白血球細胞における細胞結合補体活性化産物(CB‐CAP)の存在は、以前から観察されている。B細胞抗原上の細胞結合補体活性化産物の存在は、標的に対する抗体の結合親和性に影響を及ぼし得ることを、本発明者らは実証した。
【0017】
B細胞の表面における補体タンパク質の有無、面密度、及び/又は性質を検知するアッセイは、特定のモノクローナル抗体薬物の潜在的な治療上の利益及び/又は必要な投与量を予測するために使用されてよい。そのようなアッセイはまた、異なる抗原又は特定の抗原上の異なる位置を標的とする多数のモノクローナル抗体薬物から選択する上でも有意義であろう。患者のB細胞の表面のCB‐CAPを計測するアッセイは、どのような薬物及び投与量が特定の患者に最も適しているかを決定するのに使用されてよい。
【0018】
実施形態では、血液試料から得られたBリンパ球細胞の表面に付けられた診断バイオマーカのレベルを検知し、且つ任意選択的に定量化するための方法、システム、及びキットを提供する。実施形態では、血液試料は白血球細胞を含む。実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカは、CB‐CAPである。実施形態では、少なくとも1つのバイオマーカは、C4d、C3d、C4b、iC4b、C3b、iC3b、及びC3dgからなる群から選択される。これらは全て、補体活性化によって産生されるペプチドである。
【0019】
実施形態では、これらの方法、システム、及びキットはBリンパ球の細胞表面マーカの検知を含んでよい。実施形態では、Bリンパ球の細胞表面マーカは、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD40、CD69、CD70、CD79、CD80、CD85、CD86、CD137、CD138、CD252、及びCD268を含む群から選択されてよいが、それらに限定されない。
【0020】
本明細書に記載する検知方法は手動で実行できるが、大抵の場合は、自動化システム及び/又は機器を用いて便利に実行される。そこでは、単数又は複数の必要な決定を下すために、血液試料又は限定されることなく抹消血白血球(PBL)などの単離された血球分画が自動的に分析されて、且つ基礎値又は基準値との比較がその目的に適したコンピュータソフトウェアを用いて自動的に実行される。
【0021】
実施形態では、被検者のBリンパ球の表面上の補体タンパク質の有無、面密度、及び性質の1つ以上を検知するための方法が提供される。一部の実施形態では処理装置又はシステムによって実現されてよいこの方法は、患者の1組の血液試料データを受け取る工程を含む方法を実現する。1組の血液試料データは、患者の1つ以上の細胞結合補体活性化産物(CB‐CAP)のレベルを含む。この方法は、測定されるCB‐CAPの各々に対する対照レベルを含む対照データセットにアクセスする工程を含む。この方法は、患者のCB‐CAPレベルを対照レベルと比較して、患者のレベルが対照レベルに比べて上昇しているCB‐CAPの数及び/又はレベル(大きさ)を決定する工程を含む。
【0022】
本明細書に記載する方法、システム、及びキットの実施形態では、CB‐CAPはB‐C4d、B‐C3d、B‐C3b、B‐C4b、B‐iC3b、B‐iC4b、又はB‐C3dgの1つ以上を含んでよい。
【0023】
任意選択的に、方法及びシステムは、レベルの上昇が存在するB細胞のCB‐CAPの1つ以上についてその大きさを決定することを含んでよい。実施形態では、CB‐CAPの1つ以上の決定された大きさは、抗体の結合特性に基づいて、1つ以上の抗体による治療から利益を得る可能性が多少なりともあるものとして患者を分類するか否かを判定するために使用されてよい。
【0024】
実施形態では、抗体療法により治療され得る疾患は、B細胞リンパ腫のみならず、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性硬化症、血管炎、混合型クリオグロブリン血症、炎症性ミオパチー、及び他の自己免疫疾患をも含むが、それらに限定されない。
【0025】
ある実施形態では、本明細書は、特定の抗原による治療から治療上の利益を引き出す可能性を有する被検者を同定する方法を開示する。この方法は、一部の実施形態では処理装置又はシステムによって実現されてよく、患者の1組の血液試料データを受け取る工程を含む方法を実現する。1組の血液試料データは、患者の1つ以上の細胞結合補体活性化産物(CB‐CAP)のレベルを含む。この方法は、測定されるCB‐CAPの各々に対する対照レベルを含む対照データセットにアクセスする工程を含む。実施形態では、この方法は、患者のCB‐CAPレベルを対照レベルと比較して、患者のレベルが対照レベルに比べて上昇しているCB‐CAPの数及び/又はレベル(大きさ)を判定する工程を含んでよい。実施形態では、この方法は、決定された数及び/又はレベルを使用して、患者が特定の抗体による治療から利益を得る可能性がある確率を割り当ててよい。実施形態では、この方法は、確率に基づく診断を含む報告を生成する工程を含んでよい。
【0026】
ある実施形態では、患者が特定の抗体療法から利益を得られる可能性があるか否かを判定する方法は、任意選択的に処理装置によって、(i)患者の1組の血液試料データを受け取る工程であって、1組の血液試料データは、患者のB細胞に関連付けられる細胞結合補体活性化産物(CB‐CAP)レベルの1つ以上を含む、工程と、(ii)CB‐CAPの各々に対する対照レベルを含む対照データセットにアクセスする工程と、(iii)患者のB細胞のCB‐CAPレベルを対照レベルと比較して、患者のB細胞のCB‐CAPレベルの1つ以上が対照レベルに比べて上昇しているか否かを判定する工程と、(iv)B細胞に上昇したCB‐CAPレベルを有するものとして患者が分類されるか否かの指標を含む報告を生成する工程とを含む。B細胞のCB‐CAPのレベルは、1つ以上の抗体のそれらの標的に対する結合親和性の変化に関連付けられてよい。
【0027】
ある実施形態では、被検者が抗体による療法から利益を得る可能性があるか否かを判定する方法は、被検者からの白血球細胞を包含する血液試料において、試料中のBリンパ球の表面に付けられた少なくとも1つのバイオマーカのレベルを定量化する工程であって、バイオマーカはC4d、C3d、C4b、iC4b、C3b、iC3b、及びC3dgからなる群から選択される、工程と、被検者のバイオマーカのレベルを対照試料のBリンパ球の表面に付けられたバイオマーカのレベルと比較して、被検者のレベルが対照レベルに比べて上昇しているバイオマーカの数を判定する工程であって、対照のレベルと比較した被検者からの血液試料中のバイオマーカの上昇レベルは、被検者を特定の抗体による治療に有利に反応する可能性が低いものと同定される、工程とを含む。
【0028】
別の実施形態では、抗体療法により患者を治療するか否かを判定する方法は、任意選択的に処理装置によって、(i)患者の1組の血液試料データを受け取る工程であって、1組の血液試料データは、患者のBリンパ球に関連付けられる少なくとも1つの細胞結合補体活性化産物(CB‐CAP)レベルを含む、工程と、(ii)対照データセットにアクセスする工程であって、対照データセットはCB‐CAPの各々に対する対照レベルを含む、工程と、(iii)患者のCB‐CAPレベルを対照レベルと比較して、患者のレベルが対照レベルに比べて上昇しているCB‐CAPの数を判定する工程と、(iv)決定された数が閾値を超える場合、抗体療法から利益が得られる可能性が無いものとして患者を分類する工程と、(v)患者を抗体療法から利益を得る可能性が低いものと分類するか否かの指標を含む報告を生成する工程とを含む。そのような場合には、本発明の方法は、代替的抗体療法が特定の患者により有効であることを示すために使用されてよい。
【0029】
別の実施形態では、患者が抗体療法から利益を得る可能性があるか否かを判定するためのシステムは、処理装置、コンピュータ可読媒体、及び対照被検者集団の血液試料データの対照データセットを保持するデータ格納設備を含む。ここで、血液試料データは患者の1つ以上の細胞結合補体活性化産物(CB‐CAP)のレベルを含む。コンピュータ可読媒体は、(i)患者の1組の血液試料データを受け取る工程であって、1組の血液試料データは患者のCB‐CAPレベルを含み、ここでCB‐CAPレベルは、以下のCB‐CAPの少なくとも1つ、即ちB‐C4d、B‐C3d、B‐C3b、B‐C4b、B‐iC3b、B‐iC4b、又はB‐C3dgのレベルである、工程と、(ii)患者のCB‐CAPレベルを対照レベルと比較して、患者のレベルが対照レベルに比べて上昇しているCB‐CAPを判定する工程と、(iii)患者のCB‐CAPの決定されたレベルが閾値を超えて上昇している場合、患者を抗体療法から利益を得る可能性が低いものと分類する工程と、(iv)患者が抗体療法から利益を得る可能性があるか否かの指標を含む報告を生成する工程とを、処理装置に命令するように構成されたプログラミング命令を含む。
【0030】
実施形態では、患者のBリンパ球と関連するCB‐CAPの測定が、患者に効果的な抗体治療の正確な投与量を算出するために使用されてよい。特定の閾値レベルを超えるCB‐CAPの検知は、抗体療法に関する治療上の決定を下すのに有用であろうと考えられる。
【0031】
本明細書に記載する様々な実施形態では、B細胞などのPBMC上のCB‐CAPのレベルは、次のようなことを示してよい:1)患者には特定の療法に反応する可能性が無く、代替的治療を使用すべきであり、これにより、有効でないと予測される療法の費用及び/又は潜在的な重大な副作用を控えることができる。又は、2)患者は特定の療法の用量の増加を必要としているかもしれない。又は、3)CB‐CAPが実際に、細胞に対する治療薬の結合又は治療薬によって引き起こされる細胞膜を横切る信号伝達を増強している場合、患者は特定の療法の用量の低下を必要としているかもしれない。又は、4)患者は感染症、悪性疾患等のような療法の副作用を経験する可能性が高く、そのような状態についてより綿密に監視すべきであることを、CB‐CAPは予測しているかもしれない。実施形態では、少なくとも部分的に、本明細書に記載する方法、システム、及びキットの使用によって提供される結果を考慮して、患者に対して様々な形態の治療が提供されてよい。
【0032】
別の実施形態は、被検者のBリンパ球に関連付けられるCB‐CAPの測定用のキットを提供する。このキットは、Bリンパ球の細胞表面マーカに反応する抗体を含むことができる。実施形態では、Bリンパ球の細胞表面マーカは、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD40、CD69、CD70、CD79、CD80、CD85、CD86、CD137、CD138、CD252、及びCD268を含む群から選択されてよいが、それらに限定されない。実施形態では、キットはBリンパ球の細胞表面マーカに反応する蛍光標識された抗体を含んでよい。実施形態では、抗体はモノクローナル抗体であってよい。そのような何れのキットも、本明細書に開示する通り、1つ以上のバイオマーカの同定に適しており、それは1つ以上のCB‐CAPに反応する抗体のキット内に含まれるものを含んでよいが、それらに限定されない。実施形態では、1つ以上のCB‐CAPに反応する抗体は、モノクローナル抗体であってよい。実施形態では、1つ以上のCB‐CAPに反応する抗体は、フルオロコンジュゲートであってよい。実施形態では、キットは任意選択的に1つ以上の生化学試薬を含んでよい。実施形態では、キットは任意選択的に、関連バイオマーカを測定する際にキット及びキット構成要素を使用するための説明書を含んでよい。
【0033】
一実施形態では、キットは、以下のものを備えていてよい。
【0034】
Bリンパ球の細胞表面マーカに反応する蛍光標識された抗体。
【0035】
少なくとも1つのCB‐CAPに反応する蛍光標識された抗体。
【0036】
任意選択的に、1つ以上の生化学試薬。
【0037】
任意選択的に、1つ以上のバイオマーカを同定する際にキット及びキット構成要素を使用するための説明書。
【0038】
実施形態では、本明細書に記載する方法、システム、及びキットは、本明細書で上述したものを含む、しかしそれらに限定されず、被検者のBリンパ球に関連付けられるCB‐CAPSの検知及び/又は測定のための適切な任意の試薬を使用してよい。
【0039】
実施形態では、本明細書に記載する方法、システム、及びキットは、抗体療法に連動するコンパニオン診断として使用されてよい。実施形態では、治療用抗体はモノクローナル抗体であってよい。実施形態では、抗体はBリンパ球上の特異的抗原と結合する。実施形態では、本明細書に記載する方法、システム、及びキットは、B細胞抗原を標的とする少なくとも1つの抗体を用いたコンパニオン診断として使用されてよい。B細胞抗原は、CD5、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD40、CD69、CD70、CD79、CD80、CD85、CD86、CD137、CD138、CD252、及びCD268を含む群から選択されてよいが、それらに限定されない。実施形態では、抗体療法は、限定されることなく、リツキシマブ、エプラツズマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、オクレリズマブ、又は別の抗B細胞モノクローナル抗体をベースとする治療薬を備えてよい。一実施形態では、抗体療法は、限定されることなくリツキシマブのような抗CD20抗体を備えてよい。一実施形態では、抗体療法は、限定されることなくエプラツズマブをはじめとする抗CD22抗体を備えてよい。
【0040】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を更に説明するのに役立つ。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
C4d標識Bリンパ球を、事前に規定されたプロトコルを用いてインビトロで生成した。Bリンパ球に結合しているC4dのレベルを、マルチカラーフローサイトメトリアッセイを用いて測定した。簡潔に述べると、抹消血白血球(PBL)を、Ficoll Plus(GE ヘルスケア)を用いた勾配遠心分離によって調製した。低張性溶解によって混入赤血球を除去した後、PBLをリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、1%のウシ血清を含むPBSに再懸濁し、抗体染色のために小分けした。リンパ球を、特徴的な表面分子の発現及び前方(サイズ)/側方(粒度)散乱のそれら独自の特徴に基づいて、単球及び顆粒球から区別した。Zenon抗体標識キット(Invitrogen社、カリフォルニア、カールスバッド)を用いてAlexa Fluor 488により標識された抗ヒトC4d(マウスIgG1;C4のC4d含有分画と反応;Quidel社、カリフォルニア、サンディエゴ)と併用して、系統特異的細胞表面マーカ(Bリンパ球用CD19;BD Biosciences社、カリフォルニア、サンディエゴ)と反応するフィコエリトリン‐又はフィコエリトリンCy5‐結合マウスモノクローナル抗体(mAb)を使用した。
【0042】
染色後に、FACS Calibur(商標)フローサイトメータ及びCell Questソフトウェア(Becton Dickinson Immunocytometry Systems社)を使用して、細胞を分析した。検知された抗体染色の特異性を確実にするため、適切なアイソタイプのマウスIgGで染色された各患者からの白血球アリコートを規定通りに、全ての実験に含めた。mAbは全て、5μg/mlの濃度で使用した。細胞結合C4dのレベルは特異的メジアン蛍光強度(SMFI)として表され、それはC4d特異的メジアン蛍光強度からアイソタイプ対照メジアン蛍光強度を差し引いた値として算出された。
【0043】
C4d標識B細胞を、全身性エリテマトーデス(SLE)の4人の患者(
図1A)及び12人の健康な対照(
図1B)からの血漿試料を用いて、インビトロで生成した。
図1は、標識B細胞及び非標識B細胞がC4d抗体で処理された場合に得られた特異的メジアン蛍光強度(SMFI)を示す。この結果は、本発明者らがC4dによりB細胞を標識することに成功したことを実証している。
【0044】
各患者の試料に由来する標識細胞及び非標識細胞を次に、CD20を標的とする抗体により処理した。抗CD20抗体結合のSMFIを示す
図2に示されているように、C4d標識細胞は、補体活性化産物を担持しない場合よりも抗CD20抗体を結合する作用が低かった。
【0045】
記載する特定のプロセス、組成、又は手法は変更されてよく、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用した用語法は、一部の実施形態を説明することを目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0046】
本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群又は他の選択肢群の観点から記載されている場合、本発明はそれによって、マーカッシュ群又は他の群の個々の構成要素又は構成要素の部分群の観点からも記載されていることを、当業者は認識されるであろう。
【0047】
特に異なる指示が無い限り、本明細書に記載する全ての数値範囲は、範囲の全ての組合せ及び部分的な組合せ並びにその中に包含される特定の整数を含む。そのような範囲はまた、記載された発明の範囲内でもある。
【0048】
本明細書で引用した全ての参考文献は、それらの内容全体を参照によって本明細書に援用される。