(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674545
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】モータ一体型流体機械
(51)【国際特許分類】
F04C 29/04 20060101AFI20200323BHJP
F04C 18/02 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
F04C29/04 E
F04C18/02 311Y
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-527350(P2018-527350)
(86)(22)【出願日】2016年7月15日
(86)【国際出願番号】JP2016070965
(87)【国際公開番号】WO2018011970
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 俊平
(72)【発明者】
【氏名】兼本 喜之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史紀
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭64−051789(JP,U)
【文献】
特開2014−105693(JP,A)
【文献】
特開2000−120568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/04
F04C 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮または膨張させる流体機械ユニットと、
前記流体機械ユニットに接続される駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するロータと、前記ロータに回転力を付与するステータと、前記ロータおよび前記ステータを収容するモータケーシングとを有するモータユニットと、
前記駆動軸の前記流体機械ユニットと反対側に接続され、前記モータユニット側から冷却風を吸込み、前記モータユニットと前記流体機械ユニットとを冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンの径方向外側の一部と前記モータユニットと反対側とを覆うファンカバーとを備え、
前記冷却ファンは、径方向外側に冷却風を吐き出し、
前記モータユニットと前記冷却ファンの間で、前記モータケーシング側面と当該モータケーシング側面に向かい合うファンカバーとの間に形成され、径方向外側から前記駆動軸へ向かう冷却風通路の最小断面積が、前記モータユニット側から前記冷却ファンへ向かう冷却風通路の最小断面積よりも大であることを特徴とするモータ一体型流体機械。
【請求項2】
前記ファンカバーと前記流体機械ユニットとを接続する導風ダクトを設けることを特徴とする請求項1に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項3】
前記導風ダクトと前記流体機械ユニットとの間は前記冷却ファンから前記流体機械ユニットに向かって冷却風が流れることを特徴とする請求項2に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項4】
前記流体機械ユニットは鏡板とラップ部とを有し、前記モータユニットに接続され旋回運動する旋回スクロールと、前記旋回スクロールのラップ部に対向して配置されたラップ部を有する固定スクロールとを備えることを特徴とする請求項1に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項5】
導風ダクトから供給される冷却風で、前記固定スクロールの鏡板の前記ラップ部が形成された面と反対側の面と、前記旋回スクロールの鏡板の前記ラップ部が形成された面と反対側の面とを冷却することを特徴とする請求項4に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項6】
前記モータケーシングの外周面に、前記流体機械ユニットから前記冷却ファンに向かう方向を長手方向とする冷却フィンを設けることを特徴とする請求項1に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項7】
前記ファンカバーの径方向寸法を前記モータケーシングの径方向寸法よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項8】
流体を圧縮または膨張させる流体機械ユニットと、
前記流体機械ユニットに接続される駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するロータと、前記ロータに回転力を付与するステータと、前記ロータおよび前記ステータを収容するモータケーシングとを有するモータユニットと、
前記駆動軸の前記流体機械ユニットと反対側に接続され、前記モータユニット側から冷却風を吸込み、前記モータユニットと前記流体機械ユニットとを冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンの径方向外側の一部と前記モータユニットと反対側とを覆うファンカバーとを備え、
前記冷却ファンは、径方向外側に冷却風を吐き出し、
前記モータユニットと前記冷却ファンの間で、前記モータケーシング側面と当該モータケーシング側面に向かい合うファンカバーとの間に形成され、径方向外側から前記駆動軸へ向かう冷却風通路の最小断面積が、前記モータユニット側から前記冷却ファンへ向かう冷却風通路の最小断面積よりも大であり、
前記モータケーシングの外周面の一部は前記流体機械ユニット側から前記冷却ファンに向かう冷却風で冷却され、他の一部は前記冷却ファンから前記流体機械ユニット側に向かう冷却風で冷却されることを特徴とするモータ一体型流体機械。
【請求項9】
流体を圧縮または膨張させる流体機械ユニットと、
前記流体機械ユニットに接続される駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するロータと、
前記ロータに回転力を付与するステータと、前記ロータおよび前記ステータを収容するモータケーシングとを有するモータユニットと、
前記駆動軸の前記流体機械ユニットと反対側に接続され、前記モータユニット側から冷却風を吸込み、前記流体機械ユニットと前記モータユニットを冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンを収容するファンカバーとを備え、
前記冷却ファンは、径方向外側に冷却風を吐き出し、
前記ファンカバーは、前記冷却ファンの径方向外側の一部と前記モータユニットと反対側とを覆い、
前記ファンカバーの前記モータケーシング側の開口部の最大直径をDとし、前記開口部の開口面積をSとし、前記モータケーシング壁面と当該モータケーシング壁面に向かい合うファンカバー前記開口部と前記モータケーシングとの離間距離をhとしたとき、
h>S/(πD)
を満たすことを特徴とするモータ一体型流体機械。
【請求項10】
前記ファンカバーと前記流体機械ユニットとを接続する導風ダクトを設けることを特徴とする請求項9に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項11】
前記導風ダクトと前記流体機械ユニットとの間は前記冷却ファンから前記流体機械ユニットに向かって冷却風が流れることを特徴とする請求項10に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項12】
前記流体機械ユニットは鏡板とラップ部とを有し、前記モータユニットに接続され旋回運動する旋回スクロールと、前記旋回スクロールのラップ部に対向して配置されたラップ部を有する固定スクロールとを備えることを特徴とする請求項9に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項13】
導風ダクトから供給される冷却風で、前記固定スクロールの鏡板の前記ラップ部が形成された面と反対側の面と、前記旋回スクロールの鏡板の前記ラップ部が形成された面と反対側の面とを冷却することを特徴とする請求項12に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項14】
前記モータケーシングの外周面に、前記流体機械ユニットから前記冷却ファンに向かう方向を長手方向とする冷却フィンを設けることを特徴とする請求項9に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項15】
前記ファンカバーの径方向寸法を、前記モータケーシングの径方向寸法よりも大きくすることを特徴とする請求項9に記載のモータ一体型流体機械。
【請求項16】
流体を圧縮または膨張させる流体機械ユニットと、
前記流体機械ユニットに接続される駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するロータと、
前記ロータに回転力を付与するステータと、前記ロータおよび前記ステータを収容するモータケーシングとを有するモータユニットと、
前記駆動軸の前記流体機械ユニットと反対側に接続され、前記モータユニット側から冷却風を吸込み、前記流体機械ユニットと前記モータユニットを冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンを収容するファンカバーとを備え、
前記冷却ファンは、径方向外側に冷却風を吐き出し、
前記ファンカバーは、前記冷却ファンの径方向外側の一部と前記モータユニットと反対側とを覆い、
前記ファンカバーの前記モータケーシング側の開口部の最大直径をDとし、前記開口部の開口面積をSとし、前記モータケーシング壁面と当該モータケーシング壁面に向かい合うファンカバー前記開口部と前記モータケーシングとの離間距離をhとしたとき、
h>S/(πD)
を満たし、
前記モータケーシングの外周面の一部は前記流体機械ユニット側から前記冷却ファンに向かう冷却風で冷却され、他の一部は前記冷却ファンから前記流体機械ユニット側に向かう冷却風で冷却されることを特徴とするモータ一体型流体機械。
【請求項17】
前記モータユニットはアキシャルギャップモータであることを特徴とする請求項1、8、9、16の何れか1つに記載のモータ一体型流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ一体型流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却ファンから吐き出された冷却風を流体機械本体へと導通する冷却風ガイドでモータを覆うことによって、モータと流体機械本体を冷却する流体機械が記載されている。
【0003】
特許文献2には、冷却ファンから吐き出された冷却風を冷却風ガイドで流体機械本体に導通することによって、流体機械本体を冷却する流体機械が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4625193号公報
【特許文献2】特開2014−105693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体機械本体とモータが一体となったモータ一体型流体機械においては、流体の圧縮熱や軸受の発熱およびモータの発熱により、各部の温度上昇が起こる。圧縮室の温度上昇は圧縮効率の低下により性能を低下させ、モータや軸受の温度上昇は部品の劣化により信頼性を低下させるため、流体機械本体およびモータの効率的な冷却が重要となる。
【0006】
特許文献1の流体機械本体とモータが一体となった流体機械は、流体機械本体とモータを冷却するため、冷却ファンから吐き出された冷却風を流体機械本体へと導通する冷却風ガイドでモータを覆う。よって、冷却風は冷却ファンから吐き出され、冷却風ガイド内をモータに沿って流れることでモータを冷却し、その後、流体機械本体を冷却する。この構造ではモータと軸方向反対側に冷却ファンの冷却風吸い込み口を設けているために、流体機械の軸方向外側に吸気のスペースを確保しなければならず、設置に必要なスペースが増大する問題がある。また、モータの冷却は冷却風ガイドで覆った部分でのみ行い、それ以外の部分は冷却風が流れないため、モータの冷却が不足する問題がある。
【0007】
特許文献2の流体機械本体とモータが一体となった流体機械は、冷却ファンの冷却風吸い込み口は軸方向モータ側に設けられ、冷却ファンから吐出された冷却風を流体機械本体へと導通する冷却風ガイドの断面形状を工夫することで流体機械本体を効率的に冷却する。この構造では、モータと冷却風ガイドの隙間から冷却風を吸い込むため、この距離が小さいときに冷却風を十分に吸い込めず、流体機械本体の冷却が不足する問題がある。また、モータの冷却については考慮されていない。
【0008】
そこで、本発明は、設置スペースを増大することなく、流体機械本体とモータの冷却を効率的に行うことで性能と信頼性を向上させたモータ一体型流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の「モータ一体型流体機械」の一例を挙げるならば、
流体を圧縮または膨張させる流体機械ユニットと、
前記流体機械ユニットに接続される駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するロータと、前記ロータに回転力を付与するステータと、前記ロータおよび前記ステータを収容するモータケーシングとを有するモータユニットと、
前記駆動軸の前記流体機械ユニットと反対側に接続され、前記モータユニット側から冷却風を吸込み、前記モータユニットと前記流体機械ユニットとを冷却する冷却ファンとを備え、
前記モータユニットと前記冷却ファンの間で、径方向外側から前記駆動軸へ向かう冷却風通路の最小断面積が、前記モータユニット側から前記冷却ファンへ向かう冷却風通路の最小断面積よりも大であることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の「モータ一体型流体機械」の他の一例を挙げるならば、
流体を圧縮または膨張させる流体機械ユニットと、
前記流体機械ユニットに接続される駆動軸と、前記駆動軸と一体に回転するロータと、前記ロータに回転力を付与するステータと、前記ロータおよび前記ステータを収容するモータケーシングとを有するモータユニットと、
前記駆動軸の前記流体機械ユニットと反対側に接続され、前記モータユニット側から冷却風を吸込み、前記流体機械ユニットと前記モータユニットを冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンを収容するファンカバーとを備え、
前記ファンカバーの前記モータケーシング側の開口部の最大直径をDとし、前記開口部の開口面積をSとし、前記開口部と前記モータケーシングとの離間距離をhとしたとき、
h>S/(πD)
を満たすことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却風の吸い込み損失を低減し冷却風を確保することにより、設置スペースを増大することなく流体機械本体とモータの冷却を効率的に行い、性能と信頼性を向上させたモータ一体型流体機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1におけるモータ一体型流体機械の横断面図である。
【
図2】本発明の実施例1におけるモータ一体型流体機械の、吸い込み側冷却風流れの模式図である。
【
図3】本発明の実施例2におけるモータ一体型流体機械の横断面図である。
【
図4】本発明の実施例3におけるモータ一体型流体機械の横断面図である。
【
図5】本発明の実施例4におけるモータ一体型流体機械の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態による流体機械として、モータ一体型スクロール式空気圧縮機を例に挙げて、添付図面に従って説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本実施例1におけるモータ一体型流体機械の横断面図を示す。符号1は全体として圧縮機ユニットを示す。符号2は圧縮機ユニット1の外殻を構成する圧縮機ケーシング、符号3は圧縮機ケーシング2に設けられ渦巻状のラップ部3aが立設された固定スクロール、符号4は渦巻状のラップ部4aが立設された旋回スクロールを示す。旋回スクロール4は、モータの回転軸である駆動軸5および駆動軸5の圧縮機ユニット1側の端部に設けられた偏芯部(図示せず)を介して駆動される。そして、旋回スクロール4のラップ部4aは、前記固定スクロール3のラップ部3aとの間に複数の圧縮室6を形成する。
【0015】
よって、旋回スクロール4は、駆動軸5および圧縮機ケーシング2と旋回スクロール4の間に設けられた自転防止機構(図示せず)により旋回運動を行い、固定スクロール3との間に構成される圧縮室6を中心に向かうに従い縮小させることで圧縮を行う。
【0016】
圧縮機ユニット1を駆動するモータユニット11は、モータケーシング12と、これに収められたステータ13aとロータ13bで構成され、ロータ13bに貫通して取り付けられた駆動軸5と連結している。
【0017】
冷却ファン21は、駆動軸5の圧縮機ユニット1と反対側に取り付けられたファンカバー22の中に収められ、冷却風吸い込み口23は軸方向でモータユニット11側に開口している。導風ダクト25は、冷却ファン21と圧縮機ユニット1を連通する。
【0018】
本実施例における冷却風の流れについて説明する。冷却ファン21は、モータユニット11が駆動されることにより回転し、軸方向に開口した冷却風吸い込み口23より吸い込み側冷却風31を吸い込み、ファンカバー22内に吐き出し側冷却風32を吐き出す。
【0019】
吸い込み側冷却風31は流体機械の外部から、モータケーシング12端面とファンカバー22の間に形成される径方向冷却風通路33を通過し、軸方向冷却風通路34を経て冷却ファン吸い込み口23へ到達する。この際、径方向冷却風通路33へ流入する冷却風の一部は、モータケーシング12の径方向側面から吸い込まれるモータケーシング側面冷却風31aであり、モータユニット11の冷却を行う。
【0020】
吐き出し側冷却風32は、ファンカバー22から導風ダクト25内へ流入し、圧縮機ユニット1へ流れ込んで、固定スクロールラップ部3aの背面を流れることで固定スクロール3を冷却し、旋回スクロールラップ部4aの背面を流れることで旋回スクロール4を冷却する。
【0021】
ここで、本実施例における径方向冷却風通路33と軸方向冷却風通路34の関係について、冷却風通路の模式図である
図2を用いて説明する。吸い込み側冷却風31は径方向冷却風通路33を径方向外周側から内周側に向かって流れ、その後、軸方向冷却風通路34をモータユニット11側から冷却ファン21側へ流れる。ここで、径方向冷却風通路33における冷却風通過断面積S
1は、
図2の概円柱形状の側面(曲面部)面積となり、モータケーシング12端面とファンカバー22の間の距離と、軸中心からの距離(半径)とに比例する。一方で、軸方向冷却風通路34の冷却風通過断面積S
2は、
図2の概円柱形状の断面(平面部)面積となり、冷却風吸い込み口23へと冷却風を導くファンカバー22の軸方向断面積から駆動軸5の断面積を引いた面積となる。本実施例の特徴は、径方向外側から駆動軸へ向かう径方向冷却風通路33における冷却風通過断面積S
1の最小値(最小断面積)S
1minと、モータユニット側から冷却ファンへ向かう軸方向冷却風通路34の冷却風通過断面積S
2の最小値(最小断面積)S
2minの関係を
S
1min>S
2min
としたことにある。
【0022】
例えば、
図1における流体機械において、モータケーシング12端面とファンカバー22との距離は場所によらず一定値hとする。そして、軸方向冷却風通路34で最も直径が小さい部分として冷却風吸い込み口23の直径をD、冷却風吸い込み口23部での駆動軸5の直径をdとする。このとき径方向冷却風通路33の冷却風通過断面積S
1の最小値S
1minは、冷却風吸い込み口23の直径Dにおける通過断面積となり、
S
1min=πDh
となる。一方で、軸方向冷却風通路34の冷却風通過断面積S
2の最小値S
2minは、
S
2min=π(D
2−d
2)/4
となる。ここで、各冷却風通路が前述の関係となる条件は、
h>(D
2−d
2)/(4D)
であり、モータケーシング12壁面とファンカバー22の距離hが、冷却風吸い込み口23の直径D、冷却風吸い込み口23部での駆動軸5の直径dから定まる一定値より大きいことを意味する。
【0023】
また、軸方向冷却風通路34の開口部の最大径をD、開口部の開口面積をSとした時、径方向冷却風通路の最小値は πDh となるから、駆動軸の直径dが小さいとすると、 h>S/(πD) の関係を満たせばよい。
【0024】
以上のように、径方向冷却風通路33の流れ方向(径方向)断面積S
1の最小値を、軸方向冷却風通路34の流れ方向(軸方向)断面積S
2の最小値より大きくすることで、同一断面積の流れに対して抵抗が大きい隙間流れである径方向冷却風通路33での損失による冷却風量の減少を防止し、圧縮機ユニット1を効率的に冷却することで、性能と信頼性を向上することができる。また、冷却風吸い込み口23が軸方向でモータユニット11側に開口していることで、軸方向で圧縮機外部に吸気スペースを設ける必要がないため設置スペースを低減し、さらにモータケーシング12の全周に渡ってモータケーシング側面冷却風31aが流れるため、モータユニット11を効率的に冷却し信頼性を向上することができる。
【0025】
本実施例では、モータケーシング12の壁面とファンカバー22の距離を一定とした例を用いて、径方向冷却風通路33における冷却風通過断面積S
1を、
図2に示すような概円柱形状の側面(曲面部)としたが、周方向の位置に応じて概円柱形状の軸方向高さが変わるような形状でも、側面部の面積として冷却風通過断面積S
1を定義可能である。また、同様に、軸方向冷却風通路34が円形でない場合も、軸と垂直な方向の断面積として、冷却風通過断面積S
2を定義可能である。
【0026】
なお、冷却ファン21においては、吐き出し側冷却風32を軸方向で冷却風吸い込み口23と反対側に吐き出す軸流ファンを用いることも可能であるが、吐き出し側冷却風32を径方向外側に吐き出す遠心ファンを用いることで、流体機械の軸方向寸法の増加を抑制し、また、吐き出し側冷却風32を圧縮機ユニット1方向へ誘導することが容易となり、構造を簡素とすることができる。
【0027】
また、特開2014−105693号公報(特許文献2)に、駆動軸を介して圧縮機本体とモータが接続され、冷却ファンが駆動軸の圧縮機本体と反対側に取り付けられ、冷却風吸い込み口が軸方向モータ側に開口する構成が開示されている。しかし、特許文献2においては、径方向冷却風通路と軸方向冷却風通路の関係については考慮されておらず、また、吸い込み側の冷却風によるモータの冷却についても検討がなされておらず、特許文献2から本実施例が容易に想到できるものではない。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例2を、
図3に基づき説明する。実施例1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施例2では、実施例1と同様のモータ一体型流体機械において、ファンカバー22の導風ダクト25へと連通する部分を除いた一部が、モータケーシング12よりも径方向外側に突出していることが特徴である。図に示すように、径方向冷却風通路33へ流入する冷却風における、モータケーシング側面冷却風31aの割合が増加する。
【0029】
本実施例においては、実施例1の効果に加え、径方向冷却風通路33へ流入する冷却風の流れ方向がファンカバー22によって規制され、モータケーシング側面冷却風31aが増加することで、モータユニット11をより効率的に冷却し信頼性を向上することができる。
【実施例3】
【0030】
本発明の実施例3を、
図4に基づき説明する。実施例1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施例3では、実施例1と同様のモータ一体型流体機械において、モータケーシング12の外周面に軸方向を長手方向とするモータ冷却フィン14を設けた点が特徴である。図に示すように、モータケーシング側面冷却風31aは、圧縮機ユニット1側から冷却ファン21に向かってモータ冷却フィン14に沿って流れる。
【0031】
本実施例においては、実施例1の効果に加え、モータケーシング側面冷却風31aがモータケーシング12の周囲を流れる際、モータ冷却フィン14に阻害されることなく流れることで、モータユニット11をより効率的に冷却し信頼性を向上することができる。
【実施例4】
【0032】
本発明の実施例4を、
図5に基づき説明する。実施例1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施例4では、実施例1と同様のモータ一体型流体機械において、導風ダクト25の一部がモータケーシング12へ開口し、モータケーシング12の壁面を冷却ファン21と圧縮機ユニット1を連通する通路の一部としたことが特徴である。図に示すように、冷却ファン21から圧縮機ユニット1へ流れる冷却風は、モータケーシング12の側面に沿って流れ、モータユニット11を冷却する。
【0033】
本実施例においては、実施例1の効果に加え、モータケーシング側面冷却風31aと比較して流速の早い吐き出し側冷却風32をモータケーシング12の側面に流すことで、モータユニット11をより効率的に冷却し信頼性を向上することができる。
【0034】
以上の実施例においては、流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明してきたが、本発明はこれに限らず、モータによって駆動される往復動圧縮機やスクリュー圧縮機にも適用することができる。また、圧縮機に限らずモータによって駆動される流体機械、例えば膨張機にも適用することができる。また、モータについてはラジアルギャップモータを例としたが、軸方向寸法を短縮可能であるアキシャルギャップモータを適用することができる。
【0035】
これまで説明してきた実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 圧縮機ユニット
2 圧縮機ケーシング
3 固定スクロール
3a 固定スクロールラップ部
4 旋回スクロール
4a 旋回スクロールラップ部
5 駆動軸
6 圧縮室
11 モータユニット
12 モータケーシング
13a ステータ
13b ロータ
14 モータ冷却フィン
21 冷却ファン
22 ファンカバー
23 冷却風吸い込み口
25 導風ダクト
31 吸い込み側冷却風
31a モータケーシング側面冷却風
32 吐き出し側冷却風
33 径方向冷却風通路
34 軸方向冷却風通路