特許第6674550号(P6674550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674550
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】電池セルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20200323BHJP
   C23C 14/00 20060101ALI20200323BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20200323BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20200323BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20200323BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20200323BHJP
   H01M 4/139 20100101ALN20200323BHJP
【FI】
   H01M4/04 Z
   C23C14/00 A
   C23C16/44 A
   H01M4/36 C
   H01M10/0562
   H01M10/0585
   !H01M4/139
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-532699(P2018-532699)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-501499(P2019-501499A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(86)【国際出願番号】EP2016081528
(87)【国際公開番号】WO2017108625
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2018年6月21日
(31)【優先権主張番号】102015226540.4
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】ダンコ、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ピルク、ティアルフ
(72)【発明者】
【氏名】シッカー、オリヴィエ
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−053236(JP,A)
【文献】 特開2011−233246(JP,A)
【文献】 特開2015−216101(JP,A)
【文献】 特開2002−275620(JP,A)
【文献】 特開2014−123581(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/073313(WO,A1)
【文献】 KIM Icpyo et al,"Electrochemical properties of an as-deposited LiFePO4 thin film electrode prepared by aerosol depostion",Journal of Powder Sources ,NL,Elsevier B.V.,2013年 1月 5日,Vol.244,Page.646-651,ISSN:0378-7753,URL,https://doi.org/10.1016/j.jpowsour.2012.12.108
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/04
H01M 4/13 − 4/139
H01M 4/36
H01M 10/0562
H01M 10/0585
C23C 14/00
C23C 16/44
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル(10)を製造する方法であって、材料粒子(1)に第1の被膜(3)が付けられ、前記第1の被膜(3)は、リン酸塩ガラス、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、Li10SnP12、LiTi(PO、LiSn(PO、及び/又は、LiPSClを含みイオン伝導性を備えている、前記方法において、
前記第1の被膜(3)が付けられた前記材料粒子(1)は、堆積工程において、基板(112)へと加速され、前記材料粒子(1)の前記第1の被膜(3)は、前記基板(112)に衝突した際に、他の材料粒子(1)の前記第1の被膜(3)と結合し、その結果、第1の層(30)が形成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記材料粒子(1)の前記第1の被膜(3)には、少なくとも1つの第2の被膜(5)が施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料粒子(1)の前記第1の被膜(1)及び/又は前記第2の被膜(5)は、前記基板(112)に衝突した際に裂けて開き、及び/又は、他の材料粒子(1)の前記第1の被膜(3)及び/又は前記第2の被膜(5)と融合することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の被膜(3)及び/又は前記第2の被膜(5)は、活物質であり、及び/又は、前記第1の被膜(3)及び/又は前記第2の被膜(5)は、保護剤であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記材料粒子(1)に前記第1の被膜(3)及び/又は前記第2の被膜(5)が付けられる成膜工程、及び、前記堆積工程が、同じ装置(100)内で行われることを特徴とする、請求項2〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記成膜工程が時間的に前記堆積工程の直前に行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の被膜(3)及び/又は前記第2の被膜(5)と大気成分との反応を防ぐために、前記成膜工程が時間的に前記堆積工程の直前に行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記材料粒子(1)は、前記電池セル(10)の電極の活物質粒子であり、又は、前記電池セル(10)の電極の導電材料粒子であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、エアロゾルデポジション法(ADM:aerosol deposition method)を含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電池セル(10)は、固体電池セルであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
外部からの入熱が行われることなく、前記第1の層(30)が形成されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
電池セル(10)であって、
前記電池セル(10)の複数の層(20、21、22、23、24、25)は、各前記層(20、21、22、23、24、25)の材料粒子(1)の第1の被膜(3)が前記各層(20、21、22、23、24、25)の他の材料粒子(1)の第1の被膜(3)と結合するように構成されることを特徴とする、電池セル(10)であって、前記第1の被膜(3)は、リン酸塩ガラス、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、Li10SnP12、LiTi(PO、LiSn(PO、及び/又は、LiPSClを含みイオン伝導性を備えている、電池セル(10)
【請求項13】
前記電池セル(10)の前記層(20、21、22、23、24、25)は、アノードのアノード導電層(20)、アノードのアノード活物質層(21)、電解質層(22)、カソードのカソード導電層(24)、カソードのカソード活物質層(23)、及び/又は、保護層(25)であることを特徴とする、請求項12に記載の電池セル(10)。
【請求項14】
前記電池セル(10)の少なくとも1つの層(20、21、22、23、24、25)が勾配を有し、前記アノード活物質層(21)及び/又は前記カソード活物質層(23)のイオン伝導体の割合が、当該アノード活物質層(21)及び/又は当該カソード活物質層(23)の厚さを介して変化することを特徴とする、請求項13に記載の電池セル(10)。
【請求項15】
アノード活物質層(21)及び/又はカソード活物質層(23)が勾配を有することを特徴とする、請求項14に記載の電池セル(10)。
【請求項16】
固体電池セルであることを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載の電池セル(10)。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を用いて、電池セルを製造する装置(100)において、
前記装置(100)は、材料粒子(1)に膜形成するための成膜チャンバ(109)、前記第1の被膜(3)が施された前記材料粒子(1)を堆積させるための堆積チャンバ(110)、及び、複数のノズル(108a、108b、113)を備えることを特徴とする、装置(100)。
【請求項18】
前記装置(100)は、互いに並列又は直列に接続された1つ以上のスロットダイ及び/又はエアナイフを備えることを特徴とする、請求項17に記載の装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の導入部に記載の、電池セルを製造する方法、電池セル、及び、電池セルを製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池セルは、電気化学的なエネルギー貯蔵器であり、その放電時には、蓄えられた化学的エネルギーが、電気化学的な反応によって電気エネルギーに変換される。将来的に、風力発電所等の定置型の適用において、ハイブリッド自動車又は電気自動車として設計された自動車内で、及び、電子機器においても、信頼性、安全性、性能、及び寿命に対する要求が非常に高い新しい電池システムが使用されることは明らかである。その高いエネルギー密度により、特にリチウムイオン電池は、電気で駆動する自動車のためのエネルギー貯蔵器として利用される。
【0003】
特開2015−053236号明細書には、電極体を製造する方法が開示されており、ここでは、活物質粒子が、ニオブ酸化物層により成膜される。他の工程において、上記膜形成された活物質粒子が、基板に堆積させられて加熱される。
【0004】
米国特許出願公開第2013/0252094号明細書には、導体と、ケイ素粒子から成る活物質層と、を含む負の電極が開示されており、ケイ素粒子は部分的に被膜で覆われている。
【0005】
液状の電解質を含む電池セルは、少なくとも多孔質の複合電極を有し、複合電極の孔には、イオン伝導網として機能しイオンを搬送する液状の電解質が充填されうる。
さらに、多孔質の複合電極の代わりにコンパクトな活物質層を有する固体電池又は薄膜電池が公知である。
【0006】
以下では、活物質とは、リチウムイオンが可逆的に挿入可能な貯蔵物質として理解される。活物質は、例えば、電池セルの電極の導体に塗布されて、導体と共に電極を形成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づいて、独立請求項の特徴的な特徴を備えた、電池セル、特に固体電池セルを製造する方法であって、材料粒子に第1の被膜が付けられる、上記方法、並びに、電池セル、及び、電池セルを製造する装置が提供される。
【0008】
このことは、特に、第1の被膜が付けられた材料粒子が、堆積工程において基板へと加速され、材料粒子の第1の被膜が、基板に衝突した際に他の材料粒子の第1の被膜と結合し、その結果、第1の層が形成されることに基づいている。このことは、特に外部からの入熱が行われずに、行われる。材料粒子は、特に、材料粒子の被膜同士が互いに反応する速度により、基板へと加速される。本発明に係る方法では有利に、例えばプレス処理と比較してより密度が高い層が実現され、材料粒子と設けられた被膜との間のより良好な結合が達成される。さらに有利に、膜形成された材料粒子の均等な分散及び連結(Vernetzung)が達成され、その際に、材料の局所的な集中が発生しない。この観点は、例えば、電池セル用の電極の製造の場合に特に有利である。電池セルの電極は、例えば、活物質と導電材料とを含む。ここで導電材料とは、イオン伝導性を有する材料、特に、リチウムイオン伝導性材料と理解される。本発明に係る方法によって獲得される、特に均等に分散された上記膜形成された材料粒子によって、電池セルの性能を損なうことなく、可能な限り少ない割合で導電材料を使用し、かつより多くの活物質を使用することが可能である。有利に、これにより、性能が不変のまま電池セルの容量が著しく向上する。
【0009】
さらに有利に、本発明に係る方法を用いて、例えば、液状の電解質を含む電池セルを製造する方法と比較して、非常にコンパクトで安定した層が獲得される。これにより、例えば、より頻繁に充電過程及び放電過程が行われ、その上、電池セルの寿命が著しく延び、このことがコスト削減をもたらし、電池セルの持続性を改善する。これに加えて、例えば固体の電池セルは、当該電池セルがほぼ不燃性であり、電池セルから漏れる可能性がある液状の電解質が存在せず、温度変動に対して非常に安定しているため、より安全である。
【0010】
さらに有利に、上記層は、熱的及び/又は機械的処理によって初めて固体層に変換される必要はなく、上記層は必要な組成において、直接的に設けられる。これにより、例えば、時間、作業工程、及びコストが節約され、エラーの原因及び汚染物質が低減され、上記層の寿命が延びる。
【0011】
本発明に係る方法の更なる別の利点は、様々な特性を備えた層が製造されうることである。材料粒子の特性は、材料粒子に設けられる被膜の特性と組み合される。このようにして、様々な所望の特性が、1つの層において統合されうる。電池セルの層のこのような特性は、特に例えば、イオン伝導性、電子伝導性、イオン貯蔵容量、耐熱性、弾性、又は、保護効果である。
【0012】
さらに有利に、本発明に係る方法は、例えば上記層の厚さ、上記厚さの密度、又は上記層の横方向の寸法等のパラメータの変更に関して非常にフレキシブルである。これらパラメータは、例えば非常に迅速に、所望されるように適合されうる。
【0013】
さらに有利に、本発明に係る方法を用いて、上記層の様々な組成、即ち、材料粒子及び材料粒子に施される被膜の様々な組成に関して、簡単かつ迅速に試験を実行することが可能である。
【0014】
特に有利に、本方法は、外部からの入熱が行われることなく実行される。このことによって、より多くの材料種の利用が可能となる。なぜならば、温度の作用下では安定せず、不活性になり、又は分解する材料も使用することが可能だからである。さらに、材料粒子又は被膜は、予め熱処理が施されていない場合に、より良好な耐老化性を有する。
【0015】
代替的に、材料粒子及び/又は被膜は、例えば成膜工程の間に加熱される。有利に、このようにして非常に均一な層が獲得される。
【0016】
さらに代替的に、材料粒子及び/又は被膜は、例えば成膜工程の間に冷却される。このことは、例えば、温度に条件付けられて他の物質、即ち例えば大気成分と反応する材料であって、冷却された状態ではそのような反応が例えば防止され又は明らかに遅らされる上記材料の場合には有利である。
【0017】
電池セルを製造するための本方法の更なる別の実施形態は、従属請求項から明らかとなろう。
【0018】
一実施形態において、材料粒子の第1の被膜には、少なくとも1つの第2の被膜が施される場合には有利である。有利に、このようにして、特性が組み合わされた高度に複雑な複合層が製造されうる。その際に、材料粒子の特性が、第1の被膜の特性及び第2の被膜並びに場合によっては更なる別の被膜の特性と組み合わせられる。このような特性の例として、イオン伝導性、電子伝導性、耐熱性、弾性、イオン貯蔵容量、又は保護効果が挙げられる。これに加えて、被膜、即ち例えば第1の被膜又は第2の被膜は、様々な物質の混合物も含みうる。
【0019】
一実施形態において、材料粒子の第1の被膜及び/又は第2の被膜は、基板に衝突した際に裂けて開き、及び/又は、他の材料粒子の第1の被膜及び/又は第2の被膜と融合する。有利に、このようにして、記成分の特に良好で均一な分散が保証され、材料の局所的な集中が回避される。さらに有利に、これに加えて、例えば温度による作用が必要ではない。
【0020】
特に有利な実施形態において、第1の被膜及び/又は第2の被膜は、イオン伝導性を備えて実現される。有利に、本発明に係る方法により達成される、膜形成された材料粒子の均等な分散及び連結により、一貫したイオン伝導性の経路が生じる。これにより、非常に良好なイオン伝導網が獲得され、当該イオン伝導網によって、蓄えられたイオン、特にリチウムイオンがより迅速に、例えば自身を蓄えていた活物質から脱離することが可能であり、これにより電池セルの性能が向上する。
【0021】
追加的又は代替的な実施形態において、第1の被膜及び/又は第2の被膜は、電子伝導性を備えて実現され、これにより、活物質への電気化学的な挿入のための必要な電子の迅速かつ効果的な搬入と、及外部の負荷回路内での利用のための、放電過程における解放された電子の迅速かつ効果的な搬出と、が保証される。
【0022】
好適な実施形態において、イオン伝導性を有する被膜は、ガーネット、特にLiLaZro、硫化物ガラス又はリン酸塩ガラス、特にLi10XP12(X=Ge、Sn)、及び/又は、硫銀ゲルマニウム鉱、特にLiPSClを含む。有利に、先に挙げた物質は、イオン伝導性が非常に高く、そのイオン特性は、例えば液状のイオン伝導体の性能に匹敵する。さらに有利に、上記材料は通常、熱的に安定していて不燃性であり、さらに、周囲雰囲気下で安定している。
【0023】
更なる別の実施形態において、第1の被膜及び/又は第2の被膜が活物質である場合には有利である。例えば、電池セルの活物質から成る物質粒子が、他の活物質を含む被膜で覆われる場合には、利用される双方の活物質の特性を互いに組み合わせることが可能である。その例は、例えば、リチウム金属リン酸塩(LXP)、ニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、又は、酸化バナジウムから成る材料粒子であり、当該材料粒子は、酸化アルミニウム(Al),酸化ジルコニウム(ZrO)、Li10SnP12、LiTi(PO、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、リン酸リチウム(LiPO)、LiSn(PO、又は他の酸化物、リン酸塩、又は硫化物ガラスから成る被膜で覆われる。上記の被膜により、材料粒子が、例えば化学的及び機械的に安定化され、他の物質に対する限界抵抗が、例えば下げられる。
【0024】
代替的又は追加的な実施形態において、第1の被膜及び/又は第2の被膜が保護剤である場合には有利である。ここでは保護剤として、特に例えば大気成分、湿気、又は望まれぬ温度の影響等の有害な影響から、自身の下に存在する構成要素を保護する物質が理解される。保護剤から成る被膜の場合、その下にある層又は積層スタックが保護されることは有利である。特に、保護剤から成る被膜は、堆積工程の間にも既に材料粒子を保護する。さらに有利に、保護剤である被膜によって、複数の材料の使用が可能となる。なぜならば、保護剤無しでは利用出来ないであろう材料も利用出来るからである。このような材料は、保護剤が無ければ、例えば、大気成分との望まれない反応を起こし又は分解するであろう
【0025】
更なる別の実施形態において、材料粒子は、電池セルの電極の活物質粒子であり、又は、電池セルの電極の導電材料粒子である。
【0026】
特に有利な実施形態において、材料粒子に1の被膜及び/又は他の被膜が付けられる成膜工程、及び、堆積工程が同じ装置内で行われる。これにより有利に、2つの異なる成膜装置を調達し、操作し、保守を行い、洗浄する必要がない。さらに、1の装置から他の装置へと材料を移動させる必要がない。成膜工程と堆積工程との双方が進行する装置によって、コスト及び作業時間が削減される。さらにこれにより、例えば、上記成膜と上記堆積との間に材料が大気に露出すること(Atomosphaeren‐Exposition)が回避され、これにより、例えば、上記材料と、酸素、窒素、又はOC等の大気成分と、の分解反応等の望まれぬ反応が防止される。
【0027】
更なる別の特に有利な実施形態において、特に、1の被膜及び/又は他の被膜と大気成分との反応を防ぐために、成膜工程が時間的に堆積工程の直前に行われる。特に、好適に真空雰囲気下で進行する成膜工程において、残留している大気成分の反応を防ぐことが可能である。有利に、これにより、例えば、ガーネット、特に、LiLaZro、硫化物ガラス又はリン酸塩ガラス、特にLi10XP12(X=Ge、Sn)、及び/又は、硫銀ゲルマニウム鉱、特にLiPSCl等の、反応しやすく又は高度に反応しやすい材料が、被膜として使用されうる。堆積工程の直前に材料粒子に予め膜形成することによって、被膜は、大気成分とは反応せず、特に装置内に残留している大気成分とは反応せず、これにより劣化しないため、反応しやすい物質を利用することも可能である。さらに、材料が汚染される確率が低くなり、場合によっては不安定な材料の劣化が防止される。さらに、上記材料は、有害ガスによる比較的長い作用下に晒されない。
【0028】
更なる別の有利な実施形態において、本方法は、エアロゾルデポジション法(ADM:aerosol deposition method)を含む。
エアロゾルデポジション法では、例えば、適切な粉末がエアロゾル状態にされる。成膜チャンバ内で生じた低真空と、それから得られる圧力差と、によって、ノズル内のエアロゾルが数百m/sに加速され、続いて基板に堆積させられる。その際に、塑性変形が起こると共に、粉末粒子が破砕して破片となり、この破片が配されて、例えば粘着性が良好な緻密層となる。
【0029】
有利に、上記の成膜方法は、好適に、コールドコーティング法である。基板と材料粒子との双方、又は材料粒子の被膜が、外部からの入熱によって加熱されない。室温での衝突固化(Aufprallverfestigung)により、層を形成するために焼結工程又は焼戻し工程が必要ではない。
【0030】
代替的な実施形態において、本方法は、プラズマ溶射法を含む。
材料粒子に被膜を施す成膜工程は、例えば、スパッタリング若しくは蒸着、又は、ALD/CVDコーティング処理(原子層堆積(ALD:Atomic layer deposition)/化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition))を含む。被膜としての硫化物ガラスの場合には、例えば、粒子同士が単に接触することによっても、良好な導電網が形成される。
【0031】
さらに、電池セル、特に固体電池セルは本発明の主題であり、電池セルの複数の層は、各層の材料粒子の第1の被膜が各層の他の材料粒子の第1の被膜と結合するように構成され、電池セルの層は、特に、アノード導電層、アノード活物質層、電解質層、カソード導電層、カソード活物質層、及び/又は、保護剤から成る保護層に相当する。有利に、このようにして、電池セルの層を迅速に時間を節約して製造することが可能である。なぜならば、上記層を同じ装置内で同じ方法により製造できるからである。
【0032】
追加的な実施形態は、電池セルの少なくとも1つの層が勾配を有し、特に、アノード活物質層及び/又はカソード活物質層が勾配を有し、例えば、アノード活物質層及び/又はカソード活物質層のイオン伝導体の割合が、当該アノード活物質層及び/又はカソード活物質層の厚さを介して変化することに基づく。これにより、イオンの拡散差が、少なくとも大幅に補正される。各層の様々な深さにおけるイオン密度が、このように考慮されて補正されうる。これにより、多くの時間及びコストを要する成形工程が必要ではない。
【0033】
さらに、電池セルを製造する装置が本発明の主題であり、上記装置は、材料粒子に膜形成するための成膜チャンバ、被膜が施された材料粒子を堆積させるための堆積チャンバ、及び、複数のノズル、特に、互いに並列又は直列に配置された1つ以上のスロットダイ及び/又はエアナイフを備える。有利に、上記装置は、非常にフレキシブルに構成可能であり、上記層の厚さ、上記層の密度、及び、上記層の横方向の寸法等のパラメータが、非常に迅速に適合されうる。さらに、上記装置は、迅速かつ簡単に、大きな基板面に対してスケール調整が可能である。更なる別の利点は、被膜及び/又は粒子の様々な組成、複合構造に関する迅速かつ簡単な試験が可能である。さらに上記装置を用いて、特性が組み合わされた複雑な複合材料及び高度に複雑な複合材料の製造、例えば、2つ以上の被膜及び/又は様々な材料の混合物から成る被膜が施された材料粒子の製造が可能である。その際に、様々な被膜、及び/又は、材料混合物から成る被膜が、同じノズルを用いて又は同じ点に対して焦点が合わせられた複数のノズルを用いて、堆積させられる。
【0034】
特に有利に、電池セル、特に固体電池セルを製造するための方法及び装置は、リチウムイオン電池セルを製造するための方法及び装置である。
【0035】
特に有利に、電池セル、特に固体電池セルは、例えば電気自動車又はハイブリッド自動車で使用されるリチウムイオン電池セルである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の実施形態が、図面に示され、以下の図面についての記載において、より詳細に解説される。
図1】成膜チャンバ、堆積チャンバ、及び複数のノズルを備えた電池セルを製造するための本発明に係る装置の断面を概略的に示す。
図2a】第1の実施形態における、本発明に係る方法の堆積工程の前の第1の被膜が施された材料粒子の断面を概略的に示す。
図2b】第1の実施形態における、本発明に係る方法の堆積工程の後の、図2aに係る第1の被膜が施された材料粒子の断面を概略的に示す。
図3a】第2の実施形態における、本発明に係る方法の堆積工程の前の第1の被膜及び第2の被膜が施された材料粒子の断面を概略的に示す。
図3b】第2の実施形態の第1の変形例における、本発明に係る方法の堆積工程の後の図3aに係る第1の被膜及び第2の被膜が施された材料粒子の断面を概略的に示す。
図3c図3bに係る第1の被膜及び第2の被膜が施された材料粒子の概略的な立体図を示す。
図3d】第2の実施形態の第2の変形例における、本発明に係る方法の堆積工程の後の図3aに係る第1の被膜及び第2の被膜が施された材料粒子の断面を概略的に示す。
図4a】第2の実施形態の第3の変形例における、本発明に係る方法の堆積工程の前の第1の被膜及び第2の被膜が施された材料粒子の断面を概略的に示す。
図4b】第2の実施形態の第3の変形例における、本発明に係る方法の堆積工程の後の図4aに係る第1の被膜及び第2の被膜が施された材料粒子の断面を概略的に示す。
図5a】第1の実施形態における複数の層を含む本発明に係る電池セルの断面を概略的に示す。
図5b】第2の実施形態における図3aに係る本発明に係る電池セルの断面を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1には、電池セル、特にリチウムイオン電池セルを製造する装置100が示されている。ガスホルダ102から出発して、ガス流104が、例えば流量調整器103を介して調整され、材料粒子貯蔵部105へと案内され、この材料粒子貯蔵部105には、材料粒子1が例えば粉末状で存在する。材料粒子1は、例えば、電池セルの電極の活物質粒子、又は、電池セルの電極の導電材料粒子である。一実施形態において、材料粒子1からの粉末が、装置100の前段に接続された図示されない装置において、例えば気相から、例えば気相成分の凝縮によって合成される。材料粒子1は、ガス流104を介して搬送され、例えば、フィルタ106によってフィルタに掛けられて、例えば分流器107によって、例えば大きさ、形状、又は電荷特性に従って選別される。続いて、材料粒子1は、ガス流104を介して、成膜チャンバ109へと搬送される。成膜チャンバ109には、例えば、第1のノズル108a及び第2のノズル108bが配置されており、この第1のノズル108a及び第2のノズル108bの傍らを材料粒子1が流過する。第1のノズル108aによって、材料粒子1には例えば第1の被膜3が施される。図1には、第1の被膜3を形成するための、第1のノズル108aにより噴霧された第1の物質33が示されている。第2のノズル108bによって、材料粒子1の第1の被膜3には、例えば第2の被膜5が施される。図1には、第2の被膜5を形成するための、第2のノズル108bにより噴霧された第2の物質55が示されている。代替的に、材料粒子1の第1の被膜3には、第1の被膜3に相当する第2の被膜5が施され、従って、第1の被膜3がより厚く形成される。代替的な実施形態において、第1の被膜3のみが、第1のノズル108aによって材料粒子1に施される。更なる別の代替的な実施形態において、成膜チャンバ109は、複数のノズル(108a、108b)を備え、従って複数の異なる又は同じ被膜3、5が、材料粒子1に施される。成膜チャンバ109は、例えば、真空下で被膜3、5が材料粒子1に施される真空めっき室として形成される。代替的に、成膜チャンバ109は、例えば、被膜3、5が材料粒子1にスパッタされる(aufsputtern)スパッタリング室である。さらに代替的に、成膜チャンバ109は、例えば、被膜3、5が材料粒子1に蒸着される蒸着室である。更に代替的に、成膜チャンバ109は、例えば、被膜3、5が材料粒子1にALD(Atomic layer deposition、原子層堆積)/CVD(chemical vapor deposition、化学蒸着)法により施されるALD/CVD室である。ノズル108a、108bは、例えば、互いに例えば並列又は直列に配置されたスロットダイ及び/又はエアナイフであるため、複数の被膜3、5が同時に施され、又は互いにずらして連続的に施されうる。従って、互いに並列に接続されたノズル108a、108bにより同時に材料粒子1に成膜される場合には、第1の被膜3又は第2の被膜5は、例えば2つ以上の異なる材料も含みうる。被膜3、5は、例えば、開いた被膜として実現され、材料粒子1を完全にはぐるりと包囲せず、例えば蒸着法により施されている。代替的に、被膜3、5は、例えば、閉じた被膜であり、材料粒子1を完全にぐるりと包囲しており、例えばALD/CVD法により材料粒子1に施されている。ガス流104は、1回以上、成膜チャンバ109を通って案内される。代替的に、装置100は、複数の成膜チャンバ109を備え、この複数の成膜チャンバ109を通って、ガス流104が1回以上案内される。このようにして、例えばより厚い被膜3、5が獲得され及び/又は複数の異なる被膜3、5が獲得されうる。他の工程において、被膜3、5が施された材料粒子1は、フィルタ106を介してフィルタに掛けられ、分流器107を介して選別される。続いて、ガス流104が、被膜3、5が施された材料粒子1と共に堆積チャンバ110に供給され、そこで、膜形成された材料粒子1が、堆積工程において、基板112に堆積させられる。
基板112は、例えば、電池セルのアノード導電層若しくはカソード導電層、又は、セラミック層であり、例えば電池セルの電解質層、特に固体電解質層等である。代替的に、基板112は、電池セルのアノード活物質層若しくはカソード活物質層、保護剤から成る電池セルの保護層、又は、電池セルの構成要素ではなく例えば支持機能のみ果たす層である。代替的に、基板112は、様々な機能層又は支持層から成る多層構造の層である。
膜形成された材料粒子1を基板112に堆積させるために、堆積チャンバ110では、例えばポンプ115によって真空が生成される。堆積ノズル113の前と後ろの、真空によって生じた圧力差によって、膜形成された材料粒子1が堆積ノズル113内で加速され、その結果、材料粒子流114が基板112に堆積させられる。その際に、基板112の位置は、例えば可動的な台座116によって変えられる。材料粒子は、好適に、エアロゾルデポジション法(ADM)によって又は代替的にプラズマ溶射法によって堆積させられる。
【0038】
図2aには、基板112への堆積工程の前の、第1の実施形態における第1の被膜3が施された材料粒子1が1つ示されている。第1の被膜3は、材料粒子1に完全にぐるりと形成されている。
【0039】
図2bには、基板112への堆積工程の後の、図2aに係る第1の実施形態における膜形成された材料粒子1が示されている。第1の被膜3が施された材料粒子1は、堆積工程において、基板112へと加速され、材料粒子1の第1の被膜3は、基板112に衝突した際に他の材料粒子1の第1の被膜3と結合し、その結果、第1の層30が形成される。第1の層30は、材料粒子1に完全にぐるりと形成されている。膜形成された材料粒子1が基板112に衝突した際には、第1の被膜3が例えば裂けて開き、又は、他の材料粒子1の被膜3と融合し、その際特に、外部からの入熱が付加されない。
【0040】
図3aには、基板112への堆積工程の前の、第2の実施形態における第1の被膜3及び第2の被膜5が施された材料粒子1が1つ示されている。第1の被膜3が、材料粒子1に完全にぐるりと形成され、及び、第2の被膜5が、第1の被膜3に完全にぐるりと形成されている。
【0041】
図3bには、第2の実施形態の第1の変形例における、基板112への堆積工程の後の、図3aに係る膜形成された材料粒子1が示されている。第1の被膜3及び第2の被膜5が施された材料粒子1が、堆積工程において基板112へと加速され、材料粒子1の第2の被膜5が、基板112に衝突した際に他の材料粒子1の第2の被膜5と結合し、その結果第2の層50が形成される。その際に、材料粒子1の第1の被膜3は、材料粒子1にぐるりと形成されたままであり、少なくとも部分的に他の材料粒子1の第1の被膜3と結合し、その結果、第1の層30が形成される。膜形成された材料粒子1が基板112に衝突した際には、第2の被膜5が例えば裂けて開き、又は、他の材料粒子1の第2の被膜5と融合し、特に、外部からの入熱が付加されない。その際に、第2の層50は、特に、第1の層30が形成された材料粒子1全体をぐるりと覆い、その結果、最外層が一貫して、第2の層50によって形成される。基板112に衝突した際には、例えば第1の被膜3も少なくとも部分的に裂けて開き、及び/又は、他の材料粒子1の第1の被膜3と少なくとも部分的に融合する。図に示されない代替的な変形例において、第1の被膜3は裂けて開かず、かつ、他の材料粒子1の第1の被膜3とも融合せず、特に完全に第2の層50によって覆われる。
【0042】
図3cには、図3bに係る堆積工程後の、被膜が形成された材料粒子1の立体図が示されている。
【0043】
図3dには、第2の実施形態の第2の変形例における、基板112への堆積工程の後の、図3aに係る被膜が形成された材料粒子1が示されている。第1の被膜3及び第2の被膜5が施された材料粒子1が、堆積工程において基板112へと加速され、材料粒子1の第2の被膜5が、基板112に衝突した際に他の材料粒子1の第2の被膜5と結合し、その結果第2の層50が形成される。その際に、材料粒子1の第1の被膜3は、他の材料粒子1の第1の被膜3と結合し、従って、第1の層30が形成される。ここでは、材料粒子1の第1の層30が、部分的にしか材料粒子1のまわりに残っていないため、材料粒子1同士が少なくとも部分的に接触する。しかしながら、第1の層30は材料粒子1を、例えば全体的に覆っているため、材料粒子1は第2の層50とは接触しない。被膜が形成された材料粒子1が基板112に衝突した際には、第2の被膜5が例えば裂けて開き、又は、他の材料粒子1の第2の被膜5と融合し、特に、外部からの入熱は付加されない。その際に、例えば第1の被膜3も少なくとも部分的に裂けて開き、及び/又は、他の材料粒子1の第1の被膜3と少なくとも部分的に融合する。
【0044】
図4aには、基板112への堆積工程の前の、第2の実施形態の第3の変形例における第1の被膜3及び第2の被膜5が施された材料粒子1が1つ示されている。第1の被膜3は、部分的にのみ材料粒子1の周りに形成されている。第2の被膜5は、部分的に第1の被膜が施された材料粒子1に、完全にぐるりと形成されている。
【0045】
図4bには、第2の実施形態の第3の変形例における、基板112への堆積工程の後の図4aに係る被膜が形成された材料粒子1が示されている。部分的な第1の被膜3、及び第2の被膜5が施された材料粒子1が、堆積工程において基板112へと加速され、材料粒子1の第2の被膜5が、基板112に衝突した際に他の材料粒子1の第2の被膜5と結合し、その結果、第2の層50が形成される。その際に、材料粒子1の部分的な第1の被膜3が、他の材料粒子1の部分的な第1の被膜3と結合し、その結果、第1の層30が形成される。ここでは、材料粒子1の第1の層30が、部分的に材料粒子1のまわりに残っている。その際に、材料粒子1同士が互いに接触していない。さらに、材料粒子1は、部分的に第1の層30によって包囲され、かつ、部分的に第2の層50によって包囲されている。第2の層50は、材料粒子1及び第1の層30を好適にそれら全体を包囲しており、その結果、最外層が、第2の層50によって形成される。
図示されない代替的な実施形態において、材料粒子1同士が少なくとも部分的に互いに接触する。被膜が形成された材料粒子1が基板112に衝突した際には、第2の被膜5が、例えば裂けて開き、及び/又は、他の材料粒子1の第2の被膜5と融合し、特に、外部からの入熱が付加されない。その際に、例えば第1の被膜3も少なくとも部分的に裂けて開き、及び/又は、他の材料粒子1の第1の被膜3と少なくとも部分的に融合する。
【0046】
以下の解説は、図2a〜図4bの上記の全ての実施形態及び変形例並びにその解説に関する。
【0047】
被膜が形成された材料粒子1が基板112に衝突した際には、材料粒子1が例えば、第1の被膜3と化学反応を起こし、及び/又は、化学的又は物理的な結合が形成されるということが可能である。同様に、追加的又は代替的に、第1の被膜3が第2の被膜5と化学反応を起こし、及び/又は、化学的又は物理的な結合が形成されるということが可能である。複数の被膜が設けられる実施形態において、このことは、上記複数の被膜についても当てはまる。
【0048】
材料粒子1は、例えば電池セルの電極の活物質で、例えば、二酸化コバルトリチウム(LiCoO)、若しくは、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、特にLiNi1/3Co1/3Mn1/3、若しくは、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウム金属酸化物であり、又は、電池セルの電極の導電材料粒子で、例えば、カーボンブラック、黒鉛、若しくはグラフェン等の炭素を含有する材料粒子1である。
第1の被膜3及び/又は第2の被膜5は、例えばイオン伝導性を備えて実現され、特に、第1の被膜3及び/又は第2の被膜5は、ガーネット、特にLiLaZro、硫化物ガラス又はリン酸塩ガラス、特にLi10XP12(X=Ge、Sn)、及び/又は、硫銀ゲルマニウム鉱、特にLiPSClを含む。代替的又は追加的に、第1の被膜3及び/又は第2の被膜5は、電子伝導性を備えて実現され、好適に、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン等の炭素を含有する化合物によって実現される。
代替的又は追加的な実施形態において、第1の被膜3及び/又は第2の被膜5は、電池セルの電極の活物質であり、例えば、二酸化コバルトリチウム(LiCoO)、若しくは、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、特にLiNi1/3Co1/3Mn1/3、若しくは、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウム金属酸化物である。代替的に、第1の被膜3及び/又は第2の被膜5は、電池セルの保護剤であり、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、Li10SnP12、LiTi(PO、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、リン酸リチウム(LiPO)又は(LiSn(PO)である。
特に好適な実施形態において、材料粒子1は、電池セルの活物質を含み、特に、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiCoMn)、又は、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAl)である。材料粒子1には、特にイオン伝導性を備えて実現された第1の被膜1が施される。イオン伝導性を有する第1の被膜3は、例えば、ガーネット、特にLiLaZro、硫化物ガラス又はリン酸塩ガラス、特にLi(x、y=Ge、Sn)、及び/又は、硫銀ゲルマニウム鉱、特にLiPSClを含む。第1の被膜3には、例えば第2の被膜5が施され、第2の被膜5は、例えば炭素を含有しており、特にカーボンブラック、黒鉛、又はグラフェンを含む。
更なる別の被膜又は代替的な第2の被膜5は、例えば、一方では、炭素を含有する成分、特にカーボンブラック、黒鉛、又はグラフェンを含み、他方では、弾性成分、特にポリエチレンオキシドを含む。弾性成分は、例えば、電池セルの容量の変化を吸収して緩和するために役立つ。
【0049】
図5aには、基板112への堆積工程の直後の電池セル10、特に固体電池セルが示されている。電池セル10は、複数の層20、21、22、23、24、25を有し、これらの複数の層20、21、22、23、24、25は、図2a〜図4bで示したように、各層20、21、22、23、24、25の材料粒子1の第1の被膜3が当該各層20、21、22、23、24、25の他の材料粒子1の第1の被膜3と結合するように、構成されている。電池セル10の上記層20、21、22、23、24、25は、例えば、アノード導電層20、アノード活物質層21、固体として特に形成されセパレータとして機能する電解質層22、カソード活物質層23、カソード導電層24、及び/又は、保護剤から成る保護層25である。様々な層20、21、22、23、24、25が、例えば、例えば図1で示したような、特にエアロゾルデポジション法を含む方法によって設けられる。一実施形態において、最初にアノード導電層20が、図5aに示すように、基板112に堆積させられる。代替的な実施形態において、最初に、カソード導電層24が基板112に堆積させられる。
アノード導電層20は、例えば銅を含み、アノードのアノード活物質層21は、例えば、リチウム、黒鉛、特に、自然黒鉛又は合成黒鉛、ケイ素、及び/又は、チタン酸塩を含む。特にセパレータとして機能する電解質層22は、例えば、ガーネット、及び/又は、硫化物ガラスを含む。カソードのカソード活物質層23は、例えば、リチウム金属リン酸塩、又はリチウム金属酸化物を含み、カソード活物質層24は、例えば、アルミニウム、又は、ニッケルを含む。保護剤から成る保護層25は、例えば、金属窒化物又は金属酸化物を含む。
一実施形態において、電池セル10の少なくとも1つの層20、21、22、23、24、25は勾配を有し、特に、アノード活物質層21及び/又はカソード活物質層23は勾配を有し、アノード活物質層21及び/又はカソード活物質層23のイオン伝導体の割合が、当該アノード活物質層21及び/又はカソード活物質層23の厚さを介して変化する。
【0050】
図5bには、第2の実施形態における図3aに係る電池セル10が示されている。電解質22が、アノード活物質21の側面も包囲し、その結果、アノード活物質層21は、アノード活物質層21が基板112に堆積されている面を除いて、全ての側面が電解質層22によって包囲されている。さらに、電解質層22がアノード活物質層21に設けられている面及び電解質層22が基板112に載置されている面を除いて、カソード活物質層23が、電解質層22の全ての側面を包囲している。保護層25は、基板112と隣接していない全ての平面で、上記の積層スタックを包囲する。これにより、保護層25の下方に存在する層が保護される。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5a
図5b