【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づいて、独立請求項の特徴的な特徴を備えた、電池セル、特に固体電池セルを製造する方法であって、材料粒子に第1の被膜が付けられる、上記方法、並びに、電池セル、及び、電池セルを製造する装置が提供される。
【0008】
このことは、特に、第1の被膜が付けられた材料粒子が、堆積工程において基板へと加速され、材料粒子の第1の被膜が、基板に衝突した際に他の材料粒子の第1の被膜と結合し、その結果、第1の層が形成されることに基づいている。このことは、特に外部からの入熱が行われずに、行われる。材料粒子は、特に、材料粒子の被膜同士が互いに反応する速度により、基板へと加速される。本発明に係る方法では有利に、例えばプレス処理と比較してより密度が高い層が実現され、材料粒子と設けられた被膜との間のより良好な結合が達成される。さらに有利に、膜形成された材料粒子の均等な分散及び連結(Vernetzung)が達成され、その際に、材料の局所的な集中が発生しない。この観点は、例えば、電池セル用の電極の製造の場合に特に有利である。電池セルの電極は、例えば、活物質と導電材料とを含む。ここで導電材料とは、イオン伝導性を有する材料、特に、リチウムイオン伝導性材料と理解される。本発明に係る方法によって獲得される、特に均等に分散された上記膜形成された材料粒子によって、電池セルの性能を損なうことなく、可能な限り少ない割合で導電材料を使用し、かつより多くの活物質を使用することが可能である。有利に、これにより、性能が不変のまま電池セルの容量が著しく向上する。
【0009】
さらに有利に、本発明に係る方法を用いて、例えば、液状の電解質を含む電池セルを製造する方法と比較して、非常にコンパクトで安定した層が獲得される。これにより、例えば、より頻繁に充電過程及び放電過程が行われ、その上、電池セルの寿命が著しく延び、このことがコスト削減をもたらし、電池セルの持続性を改善する。これに加えて、例えば固体の電池セルは、当該電池セルがほぼ不燃性であり、電池セルから漏れる可能性がある液状の電解質が存在せず、温度変動に対して非常に安定しているため、より安全である。
【0010】
さらに有利に、上記層は、熱的及び/又は機械的処理によって初めて固体層に変換される必要はなく、上記層は必要な組成において、直接的に設けられる。これにより、例えば、時間、作業工程、及びコストが節約され、エラーの原因及び汚染物質が低減され、上記層の寿命が延びる。
【0011】
本発明に係る方法の更なる別の利点は、様々な特性を備えた層が製造されうることである。材料粒子の特性は、材料粒子に設けられる被膜の特性と組み合される。このようにして、様々な所望の特性が、1つの層において統合されうる。電池セルの層のこのような特性は、特に例えば、イオン伝導性、電子伝導性、イオン貯蔵容量、耐熱性、弾性、又は、保護効果である。
【0012】
さらに有利に、本発明に係る方法は、例えば上記層の厚さ、上記厚さの密度、又は上記層の横方向の寸法等のパラメータの変更に関して非常にフレキシブルである。これらパラメータは、例えば非常に迅速に、所望されるように適合されうる。
【0013】
さらに有利に、本発明に係る方法を用いて、上記層の様々な組成、即ち、材料粒子及び材料粒子に施される被膜の様々な組成に関して、簡単かつ迅速に試験を実行することが可能である。
【0014】
特に有利に、本方法は、外部からの入熱が行われることなく実行される。このことによって、より多くの材料種の利用が可能となる。なぜならば、温度の作用下では安定せず、不活性になり、又は分解する材料も使用することが可能だからである。さらに、材料粒子又は被膜は、予め熱処理が施されていない場合に、より良好な耐老化性を有する。
【0015】
代替的に、材料粒子及び/又は被膜は、例えば成膜工程の間に加熱される。有利に、このようにして非常に均一な層が獲得される。
【0016】
さらに代替的に、材料粒子及び/又は被膜は、例えば成膜工程の間に冷却される。このことは、例えば、温度に条件付けられて他の物質、即ち例えば大気成分と反応する材料であって、冷却された状態ではそのような反応が例えば防止され又は明らかに遅らされる上記材料の場合には有利である。
【0017】
電池セルを製造するための本方法の更なる別の実施形態は、従属請求項から明らかとなろう。
【0018】
一実施形態において、材料粒子の第1の被膜には、少なくとも1つの第2の被膜が施される場合には有利である。有利に、このようにして、特性が組み合わされた高度に複雑な複合層が製造されうる。その際に、材料粒子の特性が、第1の被膜の特性及び第2の被膜並びに場合によっては更なる別の被膜の特性と組み合わせられる。このような特性の例として、イオン伝導性、電子伝導性、耐熱性、弾性、イオン貯蔵容量、又は保護効果が挙げられる。これに加えて、被膜、即ち例えば第1の被膜又は第2の被膜は、様々な物質の混合物も含みうる。
【0019】
一実施形態において、材料粒子の第1の被膜及び/又は第2の被膜は、基板に衝突した際に裂けて開き、及び/又は、他の材料粒子の第1の被膜及び/又は第2の被膜と融合する。有利に、このようにして、記成分の特に良好で均一な分散が保証され、材料の局所的な集中が回避される。さらに有利に、これに加えて、例えば温度による作用が必要ではない。
【0020】
特に有利な実施形態において、第1の被膜及び/又は第2の被膜は、イオン伝導性を備えて実現される。有利に、本発明に係る方法により達成される、膜形成された材料粒子の均等な分散及び連結により、一貫したイオン伝導性の経路が生じる。これにより、非常に良好なイオン伝導網が獲得され、当該イオン伝導網によって、蓄えられたイオン、特にリチウムイオンがより迅速に、例えば自身を蓄えていた活物質から脱離することが可能であり、これにより電池セルの性能が向上する。
【0021】
追加的又は代替的な実施形態において、第1の被膜及び/又は第2の被膜は、電子伝導性を備えて実現され、これにより、活物質への電気化学的な挿入のための必要な電子の迅速かつ効果的な搬入と、及外部の負荷回路内での利用のための、放電過程における解放された電子の迅速かつ効果的な搬出と、が保証される。
【0022】
好適な実施形態において、イオン伝導性を有する被膜は、ガーネット、特にLi
xLaZro、硫化物ガラス又はリン酸塩ガラス、特にLi
10XP
2S
12(X=Ge、Sn)、及び/又は、硫銀ゲルマニウム鉱、特にLi
6PS
5Clを含む。有利に、先に挙げた物質は、イオン伝導性が非常に高く、そのイオン特性は、例えば液状のイオン伝導体の性能に匹敵する。さらに有利に、上記材料は通常、熱的に安定していて不燃性であり、さらに、周囲雰囲気下で安定している。
【0023】
更なる別の実施形態において、第1の被膜及び/又は第2の被膜が活物質である場合には有利である。例えば、電池セルの活物質から成る物質粒子が、他の活物質を含む被膜で覆われる場合には、利用される双方の活物質の特性を互いに組み合わせることが可能である。その例は、例えば、リチウム金属リン酸塩(LXP)、ニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、又は、酸化バナジウムから成る材料粒子であり、当該材料粒子は、酸化アルミニウム(Al
2O
3),酸化ジルコニウム(ZrO
2)、Li
10SnP
2S
12、LiTi
2(PO
4)
3、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、リン酸リチウム(Li
3PO
4)、LiSn
2(PO
4)
3、又は他の酸化物、リン酸塩、又は硫化物ガラスから成る被膜で覆われる。上記の被膜により、材料粒子が、例えば化学的及び機械的に安定化され、他の物質に対する限界抵抗が、例えば下げられる。
【0024】
代替的又は追加的な実施形態において、第1の被膜及び/又は第2の被膜が保護剤である場合には有利である。ここでは保護剤として、特に例えば大気成分、湿気、又は望まれぬ温度の影響等の有害な影響から、自身の下に存在する構成要素を保護する物質が理解される。保護剤から成る被膜の場合、その下にある層又は積層スタックが保護されることは有利である。特に、保護剤から成る被膜は、堆積工程の間にも既に材料粒子を保護する。さらに有利に、保護剤である被膜によって、複数の材料の使用が可能となる。なぜならば、保護剤無しでは利用出来ないであろう材料も利用出来るからである。このような材料は、保護剤が無ければ、例えば、大気成分との望まれない反応を起こし又は分解するであろう
【0025】
更なる別の実施形態において、材料粒子は、電池セルの電極の活物質粒子であり、又は、電池セルの電極の導電材料粒子である。
【0026】
特に有利な実施形態において、材料粒子に1の被膜及び/又は他の被膜が付けられる成膜工程、及び、堆積工程が同じ装置内で行われる。これにより有利に、2つの異なる成膜装置を調達し、操作し、保守を行い、洗浄する必要がない。さらに、1の装置から他の装置へと材料を移動させる必要がない。成膜工程と堆積工程との双方が進行する装置によって、コスト及び作業時間が削減される。さらにこれにより、例えば、上記成膜と上記堆積との間に材料が大気に露出すること(Atomosphaeren‐Exposition)が回避され、これにより、例えば、上記材料と、酸素、窒素、又はOC
2等の大気成分と、の分解反応等の望まれぬ反応が防止される。
【0027】
更なる別の特に有利な実施形態において、特に、1の被膜及び/又は他の被膜と大気成分との反応を防ぐために、成膜工程が時間的に堆積工程の直前に行われる。特に、好適に真空雰囲気下で進行する成膜工程において、残留している大気成分の反応を防ぐことが可能である。有利に、これにより、例えば、ガーネット、特に、Li
XLaZro、硫化物ガラス又はリン酸塩ガラス、特にLi
10XP
2S
12(X=Ge、Sn)、及び/又は、硫銀ゲルマニウム鉱、特にLi
6PS
5Cl等の、反応しやすく又は高度に反応しやすい材料が、被膜として使用されうる。堆積工程の直前に材料粒子に予め膜形成することによって、被膜は、大気成分とは反応せず、特に装置内に残留している大気成分とは反応せず、これにより劣化しないため、反応しやすい物質を利用することも可能である。さらに、材料が汚染される確率が低くなり、場合によっては不安定な材料の劣化が防止される。さらに、上記材料は、有害ガスによる比較的長い作用下に晒されない。
【0028】
更なる別の有利な実施形態において、本方法は、エアロゾルデポジション法(ADM:aerosol deposition method)を含む。
エアロゾルデポジション法では、例えば、適切な粉末がエアロゾル状態にされる。成膜チャンバ内で生じた低真空と、それから得られる圧力差と、によって、ノズル内のエアロゾルが数百m/sに加速され、続いて基板に堆積させられる。その際に、塑性変形が起こると共に、粉末粒子が破砕して破片となり、この破片が配されて、例えば粘着性が良好な緻密層となる。
【0029】
有利に、上記の成膜方法は、好適に、コールドコーティング法である。基板と材料粒子との双方、又は材料粒子の被膜が、外部からの入熱によって加熱されない。室温での衝突固化(Aufprallverfestigung)により、層を形成するために焼結工程又は焼戻し工程が必要ではない。
【0030】
代替的な実施形態において、本方法は、プラズマ溶射法を含む。
材料粒子に被膜を施す成膜工程は、例えば、スパッタリング若しくは蒸着、又は、ALD/CVDコーティング処理(原子層堆積(ALD:Atomic layer deposition)/化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition))を含む。被膜としての硫化物ガラスの場合には、例えば、粒子同士が単に接触することによっても、良好な導電網が形成される。
【0031】
さらに、電池セル、特に固体電池セルは本発明の主題であり、電池セルの複数の層は、各層の材料粒子の第1の被膜が各層の他の材料粒子の第1の被膜と結合するように構成され、電池セルの層は、特に、アノード導電層、アノード活物質層、電解質層、カソード導電層、カソード活物質層、及び/又は、保護剤から成る保護層に相当する。有利に、このようにして、電池セルの層を迅速に時間を節約して製造することが可能である。なぜならば、上記層を同じ装置内で同じ方法により製造できるからである。
【0032】
追加的な実施形態は、電池セルの少なくとも1つの層が勾配を有し、特に、アノード活物質層及び/又はカソード活物質層が勾配を有し、例えば、アノード活物質層及び/又はカソード活物質層のイオン伝導体の割合が、当該アノード活物質層及び/又はカソード活物質層の厚さを介して変化することに基づく。これにより、イオンの拡散差が、少なくとも大幅に補正される。各層の様々な深さにおけるイオン密度が、このように考慮されて補正されうる。これにより、多くの時間及びコストを要する成形工程が必要ではない。
【0033】
さらに、電池セルを製造する装置が本発明の主題であり、上記装置は、材料粒子に膜形成するための成膜チャンバ、被膜が施された材料粒子を堆積させるための堆積チャンバ、及び、複数のノズル、特に、互いに並列又は直列に配置された1つ以上のスロットダイ及び/又はエアナイフを備える。有利に、上記装置は、非常にフレキシブルに構成可能であり、上記層の厚さ、上記層の密度、及び、上記層の横方向の寸法等のパラメータが、非常に迅速に適合されうる。さらに、上記装置は、迅速かつ簡単に、大きな基板面に対してスケール調整が可能である。更なる別の利点は、被膜及び/又は粒子の様々な組成、複合構造に関する迅速かつ簡単な試験が可能である。さらに上記装置を用いて、特性が組み合わされた複雑な複合材料及び高度に複雑な複合材料の製造、例えば、2つ以上の被膜及び/又は様々な材料の混合物から成る被膜が施された材料粒子の製造が可能である。その際に、様々な被膜、及び/又は、材料混合物から成る被膜が、同じノズルを用いて又は同じ点に対して焦点が合わせられた複数のノズルを用いて、堆積させられる。
【0034】
特に有利に、電池セル、特に固体電池セルを製造するための方法及び装置は、リチウムイオン電池セルを製造するための方法及び装置である。
【0035】
特に有利に、電池セル、特に固体電池セルは、例えば電気自動車又はハイブリッド自動車で使用されるリチウムイオン電池セルである。