(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674561
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】スタンドの位置検出装置
(51)【国際特許分類】
B62H 1/02 20060101AFI20200323BHJP
【FI】
B62H1/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-558950(P2018-558950)
(86)(22)【出願日】2017年12月4日
(86)【国際出願番号】JP2017043466
(87)【国際公開番号】WO2018123451
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年3月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-255865(P2016-255865)
(32)【優先日】2016年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 恭造
(72)【発明者】
【氏名】山下 明彦
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−130314(JP,A)
【文献】
特開2000−142431(JP,A)
【文献】
特開2003−252264(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0167659(US,A1)
【文献】
特開2012−128986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 1/02
B62J 99/00
H01H 21/00
H01H 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレーム側に取り付けられる回動軸と、前記回動軸に回動自在に支持され起立位置と収納位置との間で回動可能なスタンドバーの位置を検出する装置であって、
前記フレーム側に取り付けられ、磁気センサが設けられたケース部材と、
前記ケース部材内に少なくともその一部が収納され、磁気を発生させる磁気発生部材が取り付けられ、前記回動軸の周囲を回動可能であって、前記スタンドバーの回動に伴って移動する移動部材とを備え、
前記移動部材は、環状の本体と、前記本体から前記スタンドバー側に突出して前記スタンドバーに係合される係合ピンとを有し、
前記ケース部材は、前記移動部材の外周面との間にラビリンスシールとなる間隔を形成する内周面を有し、
前記係合ピンは、前記移動部材の本体と一体に形成され、前記本体の前記スタンドバー側の端面から突出されていること
を特徴とするスタンドの位置検出装置。
【請求項2】
前記係合ピンは、前記回動軸の軸方向から見たときに、円柱状または円筒状に形成され、その直径が前記移動部材の本体の径方向の厚さと同一になるように形成されている、請求項1に記載のスタンドの位置検出装置。
【請求項3】
前記ケース部材は、前記磁気発生部材と前記磁気センサとの間に隔壁を設け、前記移動部材が収納されている前記ケース部材の領域と前記磁気センサとを分離してなる、請求項1または2に記載のスタンドの位置検出装置。
【請求項4】
前記ケース部材は、一方が開放され前記移動部材を収納可能な筒状部を備え、
前記筒状部は、前記開放された側から離れた側に小径部と、前記小径部から前記開放された側に向けて拡径された大径部と、前記小径部と前記大径部との間に段差部と、を有し、
前記移動部材は前記大径部の内周面と前記段差部とに対向して配置され、
前記移動部材と前記大径部の内周面との隙間および前記移動部材と前記段差部との隙間によりラビリンスシールを形成していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記移動部材は、前記磁気発生部材を係止する係止爪を有し、
前記係止爪は、前記移動部材の前記本体と一体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のスタンドの位置検出装置。
【請求項6】
前記係止爪は、その外周面と前記磁気発生部材の外周面がほぼ面一になるように形成されており、
前記磁気発生部材の外周は、前記移動部材の前記本体の外周よりも小径に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のスタンドの位置検出装置。
【請求項7】
前記本体、前記係合ピンおよび前記係止爪は、合成樹脂材料により一体に成形されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のスタンドの位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車等の車両に回動自在に設けられたメインスタンドやサイドスタンドバーの位置を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車に装着されているサイドスタンドは、サイドスタンドバーが二輪車の停止時に起立位置に下ろされて二輪車を支え、二輪車の走行時には収納位置に収納されて走行に支障のない状態で保持される。自動二輪車においては、サイドスタンドバーが起立位置のままで走行しないように、サイドスタンドバーの位置を検出して、起立位置の場合には走行ができないようにエンジンを制御することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロータリースイッチによりサイドスタンドバーの位置を検出する装置が開示されている。当該装置は、スイッチユニットのベースをフレーム側に設置し、サイドスタンドバーに係合されてサイドスタンドバーと共に回動する環状のロータリーに、サイドスタンドバーと係合するための位置決めピンを設けた構造となっている。
【0004】
当該装置では、環状のロータリーと、その周囲を覆うベースと、ロータリーとベースとの環状の間隔をオイルシールでシールして、内部に水や埃等が侵入しないようにしている。特許文献1の
図4には、ロータリー側に位置決めピンを設けた構成が図示されているが、位置決めピンを取り付けた部分の外周にはオイルシールが設けられているので、オイルシールの径方向の厚さを確保するためには、位置決めピンの太さを太くすることができない。よって、位置決めピンを金属で形成して強度を確保する等の対策が必要となる。
【0005】
このように、樹脂製の部材に金属製の位置決めピンを取り付ける場合、一般的に両者をインサート成形により成形するか、位置決めピンの合成樹脂部材への圧入、或いはかしめ加工等を行って取り付けがなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/080756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、スタンドの動きに追従する部材とスタンドとを連結する位置決めピンは、強度を確保するために位置決めピンを金属の部材とすると、インサート成形や圧入、或いはかしめ加工等を行う必要がある。従って、位置検出装置の製造時に材料コストや加工コストが上昇するという不都合がある。また、位置決めピンを樹脂にした場合、シール構造に起因する要因によりピンの太さを太くすることができないため、十分な強度が確保できないという不都合がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、係合ピンなどの金属材料のインサート成形等をすることなく、十分な強度を確保して、スタンドの動きに追従することが可能なスタンドの位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のスタンドの位置検出装置は、車両のフレーム側に取り付けられる回動軸と、前記回動軸に回動自在に支持され起立位置と収納位置との間で回動可能なスタンドバーの位置を検出する装置であって、前記フレーム側に取り付けられ、磁気センサが設けられたケース部材と、前記ケース部材内に少なくともその一部が収納され、磁気を発生させる磁気発生部材が取り付けられ、前記回動軸の周囲を回動可能であって、前記スタンドバーの回動に伴って移動する移動部材とを備え、前記移動部材は、環状の本体と、前記本体から前記スタンドバー側に突出して前記スタンドバーに係合される係合ピンとを有し、前記ケース部材は、前記移動部材の外周面との間にラビリンスシールとなる間隔を形成する内周面を有し、前記係合ピンは、前記本体と一体に形成され、前記本体の前記スタンドバー側の端面から突出されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のスタンドの位置検出装置では、ケース部材と移動部材との間のシール構造を、オイルシールではなく、両者の間隔の狭いラビリンスシール構造とした。このため、移動部材の外径寸法を、従来のものに比べて径方向に広げることができる。従って、移動部材の本体の径方向の厚さを厚くすることができる。
【0011】
また、係合ピンは移動部材の本体におけるスタンドバー側の端面に設けられているので、係合ピンの太さを移動部材の径方向の厚さとほぼ同一の寸法に形成することができる。このため、係合ピンを移動部材の本体と同一の厚さまで厚くすることができるので、係合ピンの強度を確保することができる。
【0012】
また、シール構造をラビリンスシール構造とした場合、条件によってはケース部材と移動部材との間に埃等が進入するおそれがあるが、本発明のスタンドの位置検出装置では、ケース部材に設けられた磁気センサと、移動部材に設けられた磁気発生部材を用いており、非接触でスタンドバーの位置を検出できるため、埃等の影響を受けにくい。
【0013】
また、本発明のスタンドの位置検出装置において、前記係合ピンは、前記回動軸の軸方向から見たときに、円柱状または円筒状に形成され、その直径が前記移動部材の本体の径方向の厚さと同一になるように形成されていることが好ましい。当該構成によれば、係合ピンの強度を高めることができる。ここで、本体の径方向の厚さと同一になるようにとは、本体の径方向の厚さと同一である場合の他、多少増減した場合も含む意味である。
【0014】
また、本発明のスタンドの位置検出装置において、前記ケース部材は、前記磁気発生部材と前記磁気センサとの間に隔壁を設け、前記移動部材が収納されている前記ケース部材の領域と前記磁気センサとを分離してなることが好ましい。当該構成によれば、仮にラビリンスシールの部分から埃等が進入した場合であっても、磁気センサは移動部材が収納されている領域から分離されているため、埃等の影響を受けることがない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インサート成形等をすることなく係合ピンを形成することができ、十分な強度を確保して、スタンドの動きに追従することが可能な位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るサイドスタンド装置の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るサイドスタンド装置の分解斜視図である。
【
図3】(A)は本実施の形態に係るサイドスタンド装置の部分断面図であり、(B)はラビリンスシール構造を示す断面図である。
【
図4】本実施の形態に係るサイドスタンド装置の分解斜視図である。
【
図5】本実施の形態に係るロータ部材の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、特にサイドスタンドの例について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1および
図2を参照して、サイドスタンド装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るサイドスタンド装置の斜視図である。
図2は、本発明の実施の形態に係るサイドスタンド装置の分解斜視図である。
【0018】
図1および
図2に示すように、本実施の形態に係るサイドスタンド装置1は、自動二輪車を駐車時に起立状態に支持するものであり、図示しない車体フレームに設けられたブラケット2と、ブラケット2にピボットボルト(回動軸)4を介して回動可能に取り付けられたサイドスタンドバー3とを備えて構成されている。また、サイドスタンド装置1には、ピボットボルト4に固定ボルト6を介してサイドスタンドスイッチ(位置検出装置)5が設けられ、サイドスタンドスイッチ5によりサイドスタンドバー3の回動位置が検出される。
【0019】
ブラケット2は、板状部11と、板状部11を厚み方向に貫通して固定された貫通ピン12とを有して構成されている。板状部11には、サイドスタンドバー3の取り付け位置において、厚み方向に貫通形成された軸孔13が形成されている。貫通ピン12の一端側は、サイドスタンドスイッチ5を位置決めする位置決めピンとして機能し、貫通ピン12の他端側は、図示しないリターンスプリングに係止される係止ピンとして機能する。
【0020】
サイドスタンドバー3は、ピボットボルト4によりブラケット2に取り付けられ、ピボットボルト4を中心として地面に接地される起立位置と地面に対して略水平な収納位置との間を回動可能に構成されている。サイドスタンドバー3の基端側は、板状部11を挟み込むように二股に形成された一対の連結部15、16が設けられており、この一対の連結部15、16を貫通するように軸孔17、18が形成されている。一方の連結部15の軸孔17の近傍には、サイドスタンドスイッチ5のロータ部材(移動部材)32に係合される係合孔19が貫通形成されている。
【0021】
ピボットボルト4は、一対の連結部15、16にブラケット2を挟み込んだ状態で、一対の連結部15、16の軸孔17、18およびブラケット2の軸孔13に挿通される。この場合、ピボットボルト4の中間部23は、一方の連結部15の軸孔17およびブラケット2の軸孔13に挿通され、先端側のネジ部24は、他方の連結部16の軸孔18に挿通されて一部が外部に露出される。
【0022】
ピボットボルト4は、この露出されたネジ部24に固定ナット7が螺合され、固定ナット7が締め付けられることにより一対の連結部15、16に固定される。これにより、サイドスタンドバー3は、ピボットボルト4と一体となってブラケット2に対して回動される。また、ピボットボルト4の頭部21には、固定ボルト6が螺合されるネジ穴22が形成されている。
【0023】
サイドスタンドスイッチ5は、サイドスタンドバー3が起立位置側または収納位置側のどちら側に位置するかを検出するものであり、固定ボルト6によりピボットボルト4の頭部21に取り付けられる。サイドスタンドスイッチ5のケース部材31には、挟持部34が形成されており、この挟持部34で貫通ピン12の一端側を挟み込むことによりサイドスタンドスイッチ5が位置決めされる。なお、サイドスタンドスイッチ5の詳細構成については後述する。
【0024】
固定ボルト6は、サイドスタンドスイッチ5を挿通してピボットボルト4のネジ穴22に螺合された状態で締め付けられることで、サイドスタンドスイッチ5をピボットボルト4に固定する。固定ボルト6は、頭部に円形のフランジ部27を有し、このフランジ部27によりサイドスタンドスイッチ5が安定的に押圧される。
【0025】
次に、
図3〜
図5を参照して、サイドスタンドスイッチの詳細構成について説明する。
図3の(A)は本実施の形態に係るサイドスタンド装置の部分断面図であり、(B)はラビリンスシール構造を示す断面図である。
図4は、本実施の形態に係るサイドスタンドスイッチ5の分解斜視図である。
図5は本実施の形態に係るロータ部材32の斜視図である。
【0026】
図3(A)および
図4に示すように、サイドスタンドスイッチ5は、貫通ピン12の一端側に回転規制されたケース部材31と、ケース部材31の内側において回転可能に収納されたロータ部材32とを有して構成されている。ケース部材31は、合成樹脂等で成形され、下面を開放した筒状部33と、筒状部33の側方に設けられた上記の挟持部34と、磁気センサ37の信号を外部に送信するためのカプラ部35を備えている。
【0027】
図3(A)に示すように、ケース部材31の表面側(
図3(A)において上側)には磁気センサ37を装着するためのセンサ用凹部38が形成されており、その内部に磁気センサ37が収納され、充填用樹脂38b(
図1参照)が充填されている。また、磁気センサ37と後述するロータ部材32のプラスチックマグネット(磁気発生部材)36との間にはセンサ用凹部38の底面(隔壁)が介在しており、この底面とプラスチックマグネット36との間には隙間38aが形成されている。
【0028】
磁気センサ37は、磁気センサ本体37aと、磁気センサ本体37aから突出したリード端子37bを備えている。また、センサ用凹部38の底面からは、カプラ部35のターミナル端子40の入力端40aが突出しており、このターミナル端子40の出力端40bは、ケース部材31の内部を介してカプラ部35内に突出している。
【0029】
ケース部材31の筒状部33は、
図3及び
図4に示すように、固定ボルト6等が挿通される開口部41と、後述するロータ部材32のプラスチックマグネット36が収納される小径部41aと、小径部41aからサイドスタンドバー3の方向に向けて拡径された大径部41bとを有している。この小径部41aと大径部41bとの間には両者の内径の相違から生じる段差部41cが形成されている。また、開口部41の内周面には、後述するフランジ部材9の軸受部9bの外周面を摺動するリング状の摺動部41dが設けられている。
【0030】
上記構成を有するケース部材31は、
図3に示すように、固定ボルト6と、その周囲に装着される金属製のカラー8と、その周囲に装着される樹脂製のフランジ部材9によって回転自在に軸支される。
【0031】
カラー8は金属製の筒状体であり、フランジ部材9と同一の高さ(固定ボルト6の軸方向における長さ)を有している。フランジ部材9は、
図4に示すように、ケース部材31の脱落を防止するためのフランジ部9aと、外径がフランジ部9aよりも小径に形成された軸受部9bと、外径が軸受部9bよりも小径に形成されロータ部材32を固定するためのロータ部材固定部9cを備えている。
【0032】
図3に示すように、カラー8及びフランジ部材9は、固定ボルト6のフランジ部27によってピボットボルト4の頭部21に固定される。ロータ部材32は、フランジ部材9のロータ部材固定部9cによってピボットボルト4の頭部21に固定されており、サイドスタンドバー3と共に回動する。
【0033】
ロータ部材32は、
図3〜
図5に示すように、リング状のロータ本体32aと、ロータ本体32aからサイドスタンドバー3の係合孔19に向けて突出する円筒状の係合ピン32bと、プラスチックマグネット36を係止する係止爪32cとを備えている。このロータ本体32a、係合ピン32b及び係止爪32cは、合成樹脂材料により一体に成形されている。
【0034】
ロータ本体32aは、ケース部材31の筒状部33における大径部41bの内径よりもわずかに小さい外径を有しており、係止爪32cの外面及びプラスチックマグネット36の外径よりも大径に形成されている。また、ロータ本体32aは、サイドスタンドバー3側に向けて凹入部32dが設けられて、軽量化と強度の向上が図られている。
【0035】
係合ピン32bは、中心に凹入部32eを有する円筒形状に形成されており、ロータ本体32aと一体に形成されている。この係合ピン32bは、ロータ本体32aのサイドスタンドバー3側の端面からサイドスタンドバー3側に延びるように設けられている。この係合ピン32bは、その外径をロータ本体32aの径方向の厚みと略同一の寸法としており、強度の向上が図られている。また、係合ピン32b自体の形状が、中心に凹入部32eを有する円筒形状となっているため、内部が中実になっている円柱形状にした場合に比べて、軽量化と強度の向上が図られている。
【0036】
プラスチックマグネット36は、リング状に形成された磁気発生部材であり、ピボットボルト4の軸方向から見て90°の角度で4分割され、極性の異なる部材36a,36bが交互に連結されて構成されている。当該構成により、サイドスタンドバー3の回動に伴って磁気センサ37でその回動位置の検出を行うことができる。
【0037】
また、
図4に示すように、プラスチックマグネット36には、その周方向に係止爪32cの幅と略同じ幅に形成された係止溝36cが設けられている。プラスチックマグネット36がロータ部材32の係止爪32cによって係止されている状態では、プラスチックマグネット36の外周面と係止爪32cの外周面がほぼ面一になるように形成されている。また、
図5に示すように、プラスチックマグネット36の外周は、ロータ本体32aの外周よりも小径に形成されており、両者の外径の相違から生じる段差部32fが形成されている。
【0038】
次に、本実施形態のサイドスタンド装置1におけるサイドスタンドスイッチ5のシール構造について説明する。
図3(B)に示すように、筒状部33の大径部41bの内周面とロータ部材32の外周面32aとの間隔39aが狭く設定されている。また、筒状部33の段差部41cとロータ部材32の段差部32fとの間隔39bも狭く設定されている。本実施形態においては、これらの部材の間隔を狭くすることにより、ラビリンスシール39を形成し、ケース部材31の内部への異物混入を防止している。
【0039】
ところで、上記特許文献1におけるロータ部材は、オイルシールの寸法を確保する関係上、外形寸法が均一のリング形状であったが、本実施形態では、シール構造をラビリンス構造としたため、ケース部材31の筒状部33の内径を大径にすることができ、その分、ロータ本体32aの外径を大きくすることができる。当該構成により、ピボットボルト4の軸方向から見たロータ本体32aの径方向の厚みを厚くすることができ、ロータ本体32aの強度の向上を図ることができる。また、これにより係合ピン32bの径も大きくすることが可能となり、係合ピン32bの強度の向上も図ることができる。
【0040】
このように構成されたサイドスタンド装置1においては、自動二輪車が走行される場合には、運転者によりサイドスタンドバー3が押し上げられ、サイドスタンドバー3がピボットボルト4を支点として起立位置から収納位置に回動される。このとき、サイドスタンドバー3と共に、係合ピン32bを介してロータ本体32aが回動し、ロータ本体32aに設けられたプラスチックマグネット36が回動する。
【0041】
このプラスチックマグネット36の動きは、ケース部材31に設けられている磁気センサ37によって検出される。ここで、サイドスタンドバー3が起立位置のときに、磁気センサ37に対面するプラスチックマグネット36の極性が36aだった場合、サイドスタンドバー3が収納位置まで回動すると、プラスチックマグネット36の極性は36bに変化する。このプラスチックマグネット36の極性の変化は、磁気センサ37によって検出され、サイドスタンドバー3が収納位置に位置することが検出される。
【0042】
一方、自動二輪車が駐車される場合には、運転者によりサイドスタンドバー3が押し下げられ、サイドスタンドバー3がピボットボルト4を支点として収納位置から起立位置に回動される。このとき、サイドスタンドバー3と共に、係合ピン32bを介してロータ本体32aが回動し、ロータ本体32aに設けられたプラスチックマグネット36が回転する。このプラスチックマグネット36の動きは、磁気センサ37によって検出される。これにより、サイドスタンドスイッチ5によりサイドスタンドバー3が起立位置に位置することが検出される。
【0043】
なお、上記実施形態において、スタンドとしてサイドスタンドを例にして説明したが、メインスタンドであってもよい。また、上記実施形態では、ロータ本体32aを樹脂により成形しているが、これにより形状の設計自由度を高めると共に、ロータ本体32aを金属で成形する場合と比較して、成形時の製造コストを低減することが可能となる。また、サイドスタンドスイッチ5を軽量化することが可能となる。さらに、サイドスタンドスイッチ5において金属面が少なくなることにより、錆び防止用のメッキ費用を低減することが可能となる。
【0044】
また、ロータ部材32については、ロータ本体32a、係合ピン32b、及び係止爪32cを一体に成形しているが、これにより、係合ピン32bとロータ本体32aとの結合強度を高くすることができる。この係合ピン32bは、上記実施形態では円筒状に形成しているが、これに限らず、円柱状としてもよく、角柱状或いは扇形等にしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、ラビリンスシール39として、筒状部33の大径部41bの内周面とロータ本体32aの外周面との間隔39a、及び筒状部33の段差部41cとロータ部材32の段差部32fとの間隔39bを狭くすることにより形成しているが、これらのいずれか一方の間隔を狭くすることによりラビリンスシール39とすることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1…サイドスタンド装置
2…ブラケット
3…サイドスタンドバー
4…ピボットボルト(回動軸)
5…サイドスタンドスイッチ(位置検出装置)
6…固定ボルト
7…固定ナット
19…係合孔
21…頭部
31…ケース部材
32…ロータ部材(移動部材)
32b…係合ピン
36…プラスチックマグネット(磁気発生部材)
37…磁気センサ
38a…隙間
38b…充填用樹脂
39…ラビリンスシール
39a,39b…間隔
40…ターミナル端子
40a…ターミナル端子40の入力端
40b…ターミナル端子40の出力端
41…開口部
41a…小径部
41b…大径部
41c…段差部
41d…摺動部