特許第6674563号(P6674563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6674563材料除去加工用の工具のホルダ、特に長手方向旋削工具のホルダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674563
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】材料除去加工用の工具のホルダ、特に長手方向旋削工具のホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/16 20060101AFI20200323BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20200323BHJP
   B23B 27/10 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   B23B27/16 B
   B23B27/04
   B23B27/10
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-560979(P2018-560979)
(86)(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公表番号】特表2019-516572(P2019-516572A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2017061942
(87)【国際公開番号】WO2017198759
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】102016109327.0
(32)【優先日】2016年5月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503128054
【氏名又は名称】ハルトメタル−ウェルクゾーグファブリック ポール ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヌールディン, ハッサン
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−138309(JP,A)
【文献】 特表平01−501537(JP,A)
【文献】 米国特許第05516241(US,A)
【文献】 特開昭57−121402(JP,A)
【文献】 米国特許第06139227(US,A)
【文献】 特開平04−304902(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第3301919(DE,A1)
【文献】 特開平09−108923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 − 29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを機械加工する工具(10)のホルダ(12)であって、
ホルダ(12)は、前端部(18)に切削インサート(14)を受け入れるための切削インサート受け部(20)と、前端部(18)の反対側の後端部(26)に長手方向軸(32)に沿って延びるシャンク(28)を備えて、ホルダ(12)を工作機械にクランプするためのクランプ部(30)を形成し、
切削インサート受け部(20)は、上下クランプジョー(24、22)によって規定され、ホルダは上側クランプジョー(24)が配置される上側部分(34)と、シャンク(28)に一体に接続され、下側クランプジョー(22)が配置される下側部分(36)を備え、
上側部分と下側部分(34、36)は、第1と第2の分離スリット(38、40)の間を延びるウェブ(42)によってのみ接続され、2つの分離スリット(38、40)は、ホルダ(12)の上側部分(34)と下側部分(36)との間に延び、ウェブ(42)の両側に配置され、上側部分(34)はロッカーのようにウェブ(42)を介して下側部分(36)に対して旋回可能であり、第1の分離スリット(38)は、切削インサート受け部(20)とウェブ(42)との間の前側ホルダ領域内に延び、第2の分離スリット(40)は、ウェブ(42)とクランプ部(30)との間の中央ホルダ領域内に延び、
ホルダ(12)は更に、下側部分(36)に設けられたネジ山(48)に螺合し、ホルダ(12)の長手方向軸(32)に対して垂直に配置されたネジ軸(60)に沿って延びるネジ(44)を備え、該ネジ(44)は中央ホルダ領域の上側部分(34)に係合する円錐形のネジ頭部(46)を備え、該ネジ頭部(46)は該係合によって第2の分離スリット(40)を広げ、上側クランプジョー(22)を下側クランプジョーに向かって動かし、切削インサート(14)を上下クランプジョー(24、22)の間にクランプする、ホルダ。
【請求項2】
ホルダ(12)は、第1の長手方向側部(50)上にネジ頭部(46)を受け入れるための第1の凹部(52)を備え、ネジ山(48)及び第2の分離スリット(40)は、第1の凹部(52)内に開口しており、第1の凹部(52)は、上側部分(34)に配置され接触面(54)によって少なくとも部分的に画定され、ネジ頭部(46)は接触面(54)にて上側部分(34)に係合する、請求項1に記載のホルダ。
【請求項3】
接触面(54)は円錐形に形成された、請求項2に記載のホルダ。
【請求項4】
接触面(54)は、ネジ軸(60)と角度(α1)を成し、円錐形のネジ頭部(46)は円錐形の円周面(58)を備え、円周面はネジのネジ軸(62)との間で第1の角度(α1)以上の第2の角度(α2)を囲む、請求項3に記載のホルダ。
【請求項5】
第1の凹部(52)は、下側部分(36)に配置された下側境界面(56)によって少なくとも部分的に画定され、ネジ軸(60)と接触面(54)との間の第1の距離は、ネジ軸(60)と下側境界面(56)との間の第2の距離よりも短く、ネジ頭部(46)の半径は第2の距離よりも小さい、請求項2乃至4の何れかに記載のホルダ。
【請求項6】
上側クランプジョー(24)及び下側クランプジョー(22)は、ホルダ(12)の第2の長手方向側部(64)に隣接しており、第2の長手方向側部(64)は第1の長手方向側部(50)とは反対側に配置されている、請求項2乃至5の何れかに記載のホルダ。
【請求項7】
ホルダ(12)は、第2の長手方向側部(64)にネジ頭部(46)を受け入れるための第2の凹部(66)を備え、ネジ山(48)と第2の分離スリット(40)は、第2の凹部(66)に開口し、ネジは第1の凹部を介して第1の長手方向側部(50)または第2の凹部を介して第2の長手方向側部から選択的にネジ山に挿入可能である、請求項6に記載のホルダ。
【請求項8】
第2の分離スリット(40)はウェブ(42)に隣接している第1の部分(78)と、第2の分離スリット(40)の自由端(82)に隣接している第2の部分(80)を備え、第1及び第2の部分(78、80)は、互いに対して鋭角を成すように傾斜している、請求項1乃至7の何れかに記載のホルダ。
【請求項9】
第1の分離スリット(38)は、切削インサート受け部(20)内に開口している、請求項1乃至8の何れかに記載のホルダ。
【請求項10】
第1及び第2の分離スリット(38、40)は、ホルダ(12)の全幅に亘って延び、第1の分離スリット(38)は第2の分離スリット(40)よりも短い、請求項1乃至9の何れかに記載のホルダ。
【請求項11】
ホルダ(12)は内部冷却剤チャネル(68)を含み、冷却剤チャネル(68)の冷却剤出口(70)は上部クランプジョー(24)に配置され、冷却剤チャネル(68)のセクション(74)は、ウェブ(42)の内部においてホルダ(12)の下側部分(36)から上側部分(34)に通じている、請求項1乃至10の何れかに記載のホルダ。
【請求項12】
切削インサート(14)と請求項1乃至11の何れかに記載のホルダ(12)を有する、ワークピースを機械加工する工具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを機械加工する工具のホルダに関する。本発明は更に、そのようなホルダ及び該ホルダ上に交換可能に固定可能な切削インサートを有する工具に関する。本発明による工具は、特に、旋削工具、好ましくはいわゆる長手方向旋削工具に関する。
【0002】
本発明によるホルダは、その前端領域に切削インサートを受け入れるための切削インサート受け部と、反対側の後端領域にホルダを工作機械にクランプするためのクランプ部とを含む。切削インサート受け部は、上下クランプジョーによって規定される。ホルダは更に、上側クランプジョーがその上に配置される上側部分を備える。ホルダは更に、下側クランプジョーがその上に配置される下側部分を備える。
【背景技術】
【0003】
この種の一般的な工具ホルダは、既にヨーロッパ特許2282859号から公知である。
【0004】
上記タイプの旋削工具は、大部分が鋼製の略棒状のホルダと、交換可能であるようにホルダ上に締結された硬質金属製の切削インサートとからなる。多くの場合において、切削インサートは、ネジ又は他の締結手段によってホルダ上に固定される。摩耗部品として比較的頻繁に交換されなければならない切削インサートは従って、ホルダから比較的簡単な方法で取り外され、新たな切削インサートと交換され得る。
【0005】
回転対称の部品を回転させる場合、スピンドルのすぐ近くで機械加工を行う必要がある。これは、特に、ここでは送り動作がスピンドルから進行するので、所謂長手方向旋削旋盤の場合である。この理由から、工具(所謂、長手方向旋削工具)は主に前記旋盤のスピンドル上に直接配置される。大部分の場合、スピンドル上に複数の種々のタイプの工具が同時に配置されて、所望の回転に応じて1つの工具から次の工具に可変的に変えることができる。スペースの理由から、長手方向旋削旋盤の工具は、しばしば、複数の工具または工具ホルダが直接的に上下に配置された、いわゆるリニアユニットでクランプされる。工具ホルダが交換可能な切削インサートで占有されている場合、大部分の場合、解放される締結手段(主にねじ)へのアクセスが非常に限られているので、切削インサートの交換はしばしば困難である。従って、切削インサートを交換することができるようにするために、工具ホルダ全体をしばしばリニアユニットから取り外さなければならない。これは労力がかかり、設定時間が非常に長くなる。
【0006】
上記の問題を解決するために、多種多様な解決策が既に提案されている。ヨーロッパ特許2282859号は、締結手段としての役割を果たすねじが多数の側から工具のホルダ内に挿入可能な様々な解決策を開示しており、これにより、取付け状況に応じて、好ましいネジ位置に関する対応する解決策が選択され得る。
【0007】
ヨーロッパ特許2379260号は更に、切削インサートを固定するために使用されるクランプねじが2つの異なる側からホルダ内に挿入され得る工具を開示し、取付け状況に応じて、一方の側又は他方の側の何れかからホルダ内に締結される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底にある目的は、厳しい取付け状況であっても、できるだけ単純な方法で切削インサートをホルダ上に固定することができる上記のタイプの工具のためのホルダを提供することである。特に、切削インサートの締結及び解放のための構成は、既に開示された前述の解決策とは別の方法で構成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、冒頭で言及したタイプのホルダから進んで、本発明に従って達成され、ホルダの上側部分と下側部分は、第1と第2の分離スリットの間を延びるウェブによってのみ接続され、2つの分離スリットは、ホルダの上側部分と下側部分との間に延び、ウェブの両側に配置され、上側部分はロッカーのようにウェブを介して下側部分に対して旋回可能であり、第1の分離スリットは、切削インサート受け部とウェブとの間の前側ホルダ領域内に延び、第2の分離スリットは、ウェブとクランプ部との間の中央ホルダ領域内に延び、ホルダは更に、中央ホルダ領域の上側部分と協働する作動要素を備え、該作動要素は第2の分離スリットを広げるように構成されて、上側クランプジョーを下側クランプジョーに向かって動かし、切削インサートを上下クランプジョーの間にクランプする。
【0010】
このようにして、本発明に従ったホルダは、ただ1つの機械的接続、すなわち、上述したウェブによる機械的接続が、上側クランプジョーが配置される上側部分と下側クランプジョーが配置される下側部分との間に存在する。これにより、一種のロッカーが生じ、ロッカーのジョイントとして作用する上側部分と下側部分の間の連結ウェブが生じる。しかし、これは実際のジョイント又は軸受ではないことは明らかであり、上側部分と下側部分との間の安定した機械的接続であり、小さな幅故に、上側部分が少なくとも部分的に弾性的に回転可能になる。この回転可能であることを確実にするために、上側部分を下側部分から分離する分離スリットがウェブの両側に接続される。従って、分離スリットにより、ウェブの両側の上側部分と下側部分との間に空間が形成され、該空間は充填されず、空気がある。
【0011】
ネジが好ましい作動要素は、第2の分離スリットの上方に配置された後部領域において上側部分を上方に押圧すべく上側部分と協働する。上側部分の本発明に従ったロッカー機構の結果、上側部分の後部の上方への動きにより、第2の分離スリットが広げられ、上側クランプジョーが下側クランプジョーに向かって移動する。その結果、切削インサート受け部の高さが低くなり、切削インサートが切削インサート受け部内にクランプされる。
【0012】
作動要素を解放すると、逆方向の動き、即ち上側部分が後方に旋回し、上側クランプジョーが下側クランプジョーから離れるように動かされ、切削インサート受け部が広げられる。次に切削インサートは手動で除去されるのが好ましい。
【0013】
このように、上記の目的は完全に達成された。
【0014】
本発明の改良形態によれば、ホルダは、長手方向軸に沿って略延びるシャンクを備え、シャンクはクランプ部を形成して下側部分に一体に接続され、作動手段は、下側部分に設けられたネジ穴に螺合し、ホルダの長手方向軸に対して略垂直に配置されたネジ軸に沿って延びるネジである。この場合、ネジ軸は、好ましくは、第1及び/又は第2の分離スリットと平行に延在し、好ましくは、分離スリットは、ホルダの全幅に亘って延在し、従って、上側部分と下側部分との間に一種の平面を形成する。換言すれば、ネジ軸は、好ましくは、ウェブに平行に延び、該ウェブはホルダの第1の長手方向側部からホルダの反対側に配置された第2の長手方向側部に延びる。
【0015】
従って、作動手段として使用されるネジは、ホルダの側部にねじ込まれる。これは、特に自動長手方向旋盤において、アクセスするのが非常に簡単であるという利点を提供し、これはホルダの端面の前面又は前面から斜めにねじ込まれるネジとは対照的である。
【0016】
本発明の更なる改良形態によれば、ネジは上側部分と協働する円錐形のネジ頭部を備えて、第2の分離スリットを拡張する。特に円錐形のネジ頭部の円錐形の周面は、ホルダの上部と協働して、第2の分離スリットを広げる。
【0017】
第2の分離スリットの上方に配置されている後部にネジがねじ込まれると、ホルダの上部は円錐形のネジ頭部のために自動的に上方へ移動され、その結果として第2の分離スリットが広げられる。既に上述したように、第2の分離スリットを広げることにより、第1の分離スリットと前記第1の分離スリットに接続された切削インサート受け部とが、ロッカー機構のためにウェブの反対側でサイズを小さくされまたは圧縮される。ネジをホルダにさらにねじ込むと、上側クランプジョーが下側クランプジョーに向かって移動し、切削インサートが2つのクランプジョーの間にクランプされる。
【0018】
更なる改良形態では、ホルダは、第1の長手方向側部上にネジ頭部を受け入れるための第1の凹部を備える。ここで、ネジ山及び第2の分離スリットは、第1の凹部内に開口しており、第1の凹部は、上側部分に配置されてネジ頭部と協働する接触面によって少なくとも部分的に画定されている。ホルダの上側部分の前記接触面も、ネジ頭部と同様に円錐形に形成されるのが好ましい。
【0019】
最後に述べた改良形態にて、ホルダの上部に設けられた円錐形の接触面がネジ軸と第1の角度を成すことが特に好ましく、第1の角度はネジ頭部の円錐状の円周面がネジの長手方向軸と囲む第2の角度以下である。特に好ましい方法では、2つの名前付けられた角度は同じ大きさである。
【0020】
更に、最後に述べた改良形態では、第1の凹部は、下側部分に配置された下側境界面によって少なくとも部分的に画定されることが好ましく、ネジ軸と上側部分に配置された円錐形の接触面との間の第1の距離は、ネジ軸と下側の境界面との間の第2の距離よりも短く、ネジ頭部の半径は第2の距離よりも小さいが、第1の距離と同じかそれより大きい長さである。
【0021】
上述の寸法決めの利点は、ネジが締め付けられたときに、第1の凹部の下側境界面が自由に動くことであり、ネジのネジ頭は、ホルダの上部に配置された円錐形の接触面と単に協働するが、凹部の下側境界面とは接触しない。
【0022】
好ましい改良形態では、上側クランプジョー及び下側クランプジョーは、第1の凹部が配置されている第1の長手方向側部とは反対側に配置されているホルダの第2の長手方向側部に隣接している。
【0023】
従って、ねじは、切削インサート受け部とは反対側に配置されている側、即ち上側および下側クランプジョーからホルダにねじ込まれることが好ましい。この種の配置は、インサート座の機械的安定性またはホルダ内への切削インサートの締め付けを改善する。
【0024】
本発明の更なる改良形態では、ホルダは、第2の長手方向側部にネジ頭部を受け入れるための第2の凹部を備え、ネジ山と第2の分離スリットは、第2の凹部に開口し、ネジは第1の長手方向側部または第1の凹部及び第2の長手方向側部または第2の凹部の両方から選択的にネジ山に挿入可能である。
【0025】
ホルダの両側に配置された同等の2つの凹部は、必要条件及び工作機械における工具の設置状況に応じて、ホルダの一方側からもホルダの反対側からもネジをねじ込むことを可能にして、切削インサートをホルダに締結する。
【0026】
本発明の更なる改良形態では、第2の分離スリットは2つの部分を備える。第2の分離スリットの第1の部分はウェブに隣接している。第2の分離スリットの第2の部分は、第2の分離スリットの自由端に隣接している。第1及び第2の部分は、互いに対して鋭角を成すように傾斜していることが好ましい。
【0027】
前記の鋭角故に、ホルダーシャンクの一部は上側部分の後部を越えて突出している。第2の分離スリットの第2の部分は、ホルダシャンクの突出部とホルダの上側部分の後部との間に延びる。この利点は、以下である。第2の分離スリットの第1の部分が大きく広がり過ぎてホルダの上側部分がそれ以上傾くことが防止されれば、上側部分がホルダシャンクの突出部に突き当たるので、ロッカー機構が過度に回転または傾くことが防止される。
【0028】
第1の分離スリットは、上側クランプジョーと下側クランプジョーとの間の切削インサート受け部内に開口していることが好ましい。ホルダの第2の長手方向側部に隣接し且つホルダの前記側部上にのみ配置されている上部及び下部クランプジョーとは対照的に、第1の分離スリット(及び第2の分離スリット)はホルダーの全幅にわたって延びている。
【0029】
本発明の更なる改良形態によれば、ホルダは内部冷却剤チャネルを含み、冷却剤チャネルの冷却剤出口は上部クランプジョー上に配置される。冷却剤チャネルのセクションは、ウェブの内部においてホルダの下側部分から上側部分に通じている。
【0030】
このようにして、ホルダの上側部分とホルダの下側部分とがウェブによってのみ接続されているにもかかわらず、冷却剤は切削インサートまたはそのブレードに直接案内され得る。ウェブはホルダの全幅にわたって延びることが好ましいので、冷却剤チャネルのセクションの一体化の結果としてウェブは過度の機械的弱化を被らない。
【0031】
上記で述べた特徴および以下に説明する特徴は、それぞれの場合において特定された組み合わせだけでなく、他の組み合わせで、または単独で本発明の範囲から逸脱することなく、使用可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の例示的な実施形態は、図面に示され、以下の記載にてより詳細に説明される。図面にて、
図1】本発明に従った工具の例示的な実施形態の斜視図を示す。
図2図1に示す本発明に従った工具の例示的な実施形態を反対側から見たときの斜視図を示す。
図3】本発明に従った工具の詳細な側面図を示す。
図4図3に示す側面図の詳細を示し、作動要素が図3に比して省略されている。
図5図3及び図4に示す側面図の詳細を示し、反対側から見ている。
図6図1に示す本発明に従った工具の例示的な実施形態の長手方向の断面図である。
図7】本発明に従った工具の詳細な更なる長手方向の断面図である。
図8】本発明に従った工具のホルダを通る断面図である。
図9】例示的な実施形態に従って、本発明に従った工具に用いられる作動要素の断面図である。
図10】本発明に従った図5に示す工具のホルダの更なる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1及び図2は、本発明に従った工具の例示的な実施形態を異なる側から見た斜視図である。工具は全体として符号10によって指定されている。
【0034】
工具10は、工具ホルダ12としばしば指定されるホルダ12と、切削インサート14とを備える。切削インサート14は、ホルダ12に取り外し可能に固定されており、即ち、ホルダ12の固定構成部品ではない。ホルダ12は鋼から生産されるのが好ましい。これとは反対に、切削インサート14は、硬質金属から製造されるのが好ましい。切削インサート14は、好ましくは、図1及び図2に示される例示的な実施形態による2つの同一の切削ヘッド16または16 'を含む、いわゆる割出し可能な切削インサートであり、2つの切削ヘッドの各々は、1つまたは複数の切り刃を含み、該切り刃によって、工具10が使用されるときに材料を除去するようにワークピースが機械加工される。しかし、本発明に従って、1つだけの切削ヘッド16を有し、又は2つ以上の切削ヘッド16又は16’を有する切削インサートが工具10に用いられることも自明である。
【0035】
前端の領域18にて工具ホルダ12は切削インサート14の受け部として役立つ切削インサート受け部20を備える。切削インサート受け部20は、下側クランプジョー22と上側クランプジョー24とによって形成される。切削インサート14は下側クランプジョー22と上側クランプジョー24との間にクランプされる。上側クランプジョー24は回転可能なクランプジョーであり、然るに下側クランプジョー22は固定したクランプジョーである。
【0036】
ホルダの後端部26の領域において、ホルダ12は、実質的に棒状のシャンク28を備える。前記シャンク28は、ホルダ12を工作機械にクランプすることができるクランプ部30を形成する。シャンク28は、実質的に長手方向軸32(例えば図6参照)に沿って延び、好ましくは矩形断面を有する。
【0037】
切削インサート14のホルダ12への固定のタイプは、本発明による工具10の特徴である。ホルダ12は、この目的のために上側部分34と下側部分36とに分割されている。上側クランプジョー24は、上側部分34に配置されている。上側部分34と下側部分36は、2つの分離スリット38、40(特に図3-図5参照)によって互いに分離されている。従って、2つの分離スリット38、40は、空間的に見たときにホルダ12の上側部分34と下側部分36との間で延びている。第1の分離スリット38は、好ましくは、切削インサート受け部20内に開口しており、第2の分離スリット40は、第1の分離スリット38に比べて、クランプ部30に近い側またはホルダ12の後端部26に近い側に配置された中央領域に配置されている。第2の分離スリット40は、ホルダ12の全幅に亘って延びることが好ましい。
【0038】
2つの分離スリット38、40の間にウェブ42が配置されている。前記ウェブ42はまた、好ましくは、ホルダ12の全幅にわたって延びる。ウェブ42は、ホルダ12の上側部分34と下側部分36との間の接続ウェブとしての役割を果たす。上側部分34と下側部分36は、より正確には、前記ウェブ42によって専ら互いに接続されている。上側部分34と下側部分36との間に他の直接的な接続は存在しない。上側部分34のこの種のロッカー機構は、上側部分34がロッカーのように下側部分36に対して旋回可能であるため、このようにして生成される。ウェブ42は、この場合、一種のジョイントまたはヒンジとして機能する。しかし、ホルダ12が鋼から製造されるという事実のために、上側部分34の旋回可能性は比較的小さいことは明らかである。
【0039】
上側部分34の上記のロッカー機構を作動させるために、ホルダ12は更に作動要素44を備える。前記作動要素44は、好ましくは、円錐形のネジ頭部46(図9参照)を備えたネジである。ネジ44は、ホルダの横方向に長手方向軸32に直交して延在するネジ山48に係合する。ネジ山48は、好ましくは、第1及び/又は第2の分離スリット38、40と平行に配列されている。ネジ山48は、ホルダ12の硬質の下側部分36に配置されている。しかし、ねじ込み状態では、ネジ44は、ネジ頭部46を介してホルダ12の上側部分34と協働する。円錐形のネジ頭部46のために、上側部分34の後部、即ちホルダ側の端部は、ネジ44が段々と深くねじ込まれるにつれて上方に押し付けられ、その結果、第2の分離スリット40は、 徐々に且つ更に広がっていく。ウェブ42による上側部分34と下側部分36との間の上述した接続のために、この場合には上側部分34の前側又はワークピース側の端部が下方に旋回されるか、下側部分36に向かって移動する。従って、上側クランプジョー24は、ネジ44が段々と深くねじ込まれるにつれて、徐々に下側クランプジョー22に向かって更に旋回し、切削インサート受け部20の高さが減少し、切削インサート14が上側クランプジョー24と下側クランプジョー22との間にクランプされる(締め付けられる)。
【0040】
切削インサート受け部20と比較して見たときに、ネジ44は、好ましくは、反対側のホルダ側からホルダ12に螺合される(図1及び図2参照)。この目的から、ホルダ12の第1の長手方向側部50には、ネジ44(図4参照)のネジ頭部46を受け入れるのに役立つ第1の凹部52が設けられている。第1の凹部52は、好ましくは略ポット状の凹部として構成される。ネジ山48及び第2の分離スリット40の両方が前記第1の凹部52内に開口する。第1の凹部52は、一方では接触面54によって半径方向の頂部に規定され、境界面56によって底部に規定され、該境界面56は本例では下側境界面56(図4参照)として指定されている。接触面54は、ホルダ12の上側部分34に配置されている。これに対して、下側境界面56は、ホルダ12の下側部分36に配置されている。接触面54及び境界面56は、第2の分離スリットによって互いに分離されている。接触面54は、ネジ44のネジ頭部46に設けられた円錐形の円周面58に接触するのに役立つ(図9参照)。図10は、図5に示すホルダ12の断面図を示し、第1の凹部52の断面も見える。ホルダ12の上側部分34に配置された接触面54は、好ましくは、ネジ山48のネジ軸60に対して角度α1で傾斜している(図10参照)。前記角度α1は、好ましくは、ネジ頭部46の円錐形の円周面58がネジ44のネジ軸62で囲む第2の角度α2と同じ大きさである(図9参照)。原理的には、第2の角度α2が第1の角度α1よりも大きいことも可能である。しかしながら、2つの角度α1とα2が同じ大きさであることが特に好ましい。
【0041】
図10からさらに理解されるように、接触面54とネジ軸60との間の距離は、ネジ軸60と下側境界面56との間の距離よりも短い。最後に記載したネジ軸60と下側境界面56との間の距離は、またネジ44のネジ頭部46の半径よりも大きい。これにより、ネジ44がホルダ12にねじ込まれるときに、ネジ44は、ホルダ12の上側部分34に配置された接触面54にのみ接触するか、接触面54と協働し、然るにホルダ12の下側部分36に配置された下側境界面56がこの場合自由に動くことを確実にする。
【0042】
上述したように、ネジ44をホルダの第1の長手方向側部50からホルダ12にねじ込むことが好ましいが、ここに示す本発明による工具10の例示的な実施形態の場合には、前記ホルダの反対側の第2の長手方向側部64からネジ44をホルダ12にねじ込むことも可能である。図示された実施形態の場合には、ネジ44のネジ頭部46を受け入れるための凹部66も、すなわちホルダ12の第2の長手方向側部64に設けられている(図2図5及び図10参照)。前記凹部66は、第1の凹部52と等価に形成され、第1の凹部52と同じく接触面54 '及び下側境界面56'を等価的に備える(図5及び図10参照)。凹部66は本実施形態の場合な第2の凹部66として指定される。従って、取り付け状況及び空間条件に応じて、ネジ44が第1の長手方向側部50から第1の凹部52内に挿入され、第2の長手方向側部64から第2の凹部66内に挿入されて、ネジ山48とねじ結合されることが可能となる。
【0043】
本発明に従ったホルダ12は、内部冷却剤チャネル68をさらに備える。冷却剤は、前記冷却剤チャネル68を介して、ホルダ12を通って切削インサート14の領域まで導入される。冷却剤チャネル68は、図6図7及び図8に見られる多数のセクションを含んでいる。冷却剤チャネル68は最終的に上側クランプジョー24内に配置された冷却剤出口70に開口する。冷却剤は、シャンク28の側部または後端部26の何れかに設けられた第1のセクション72に導入され得る。冷却剤は第1のセクションから第2のセクション74に流入する。第2のセクション74は、第1のセクション72を上側クランプジョー24に配置された第3のセクション76に接続する。第2のセクション74は、ウェブ42の内部を通って、ホルダの下側部分36から上側部分34まで延びている。
【0044】
図6において更に、第2の分離スリット40は、略V字状に設計され、第1の部分78と第2の部分80の2つの部分を含むことが見られる。第2の分離スリット40の2つの部分78、80はともに、鋭角を囲む。第1の部分78は、ウェブ42と第2の部分80との間を延びる。第2の部分80は、第1の部分78と第2の分離スリット40の自由端82との間を延びる。前記第2の分離スリット40のV字形状の結果として、第1の部分78が広がり過ぎているか、または上側部分34があまりにも強く傾けられている場合には、クランプねじ44が締め付けられるときに、上側部分34が第2の部分80の領域でシャンク28に当接すると、上側部分34が過度に締め付けられることが防止される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10