(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端側がアンプルから突出しているプランジャーロッドを、アンプル内に押し込むことにより、アンプルに収容した薬液を、アンプルの先端から噴射させる無針注射器であって、
筒状のケーシングと、
前記ケーシングの一端部に設けられ、前記プランジャーロッドの一端側を前記ケーシングの内部に導入した状態で、前記アンプルを取り付けるアンプル取着部と、
軸線をケーシングの軸線に沿わせた状態で当該ケーシングの内部に設けられたシリンダと、
前記シリンダの内部に挿入され、当該シリンダの軸方向に沿って往復移動可能なピストンと、
前記ピストンを、第1の原位置から前記ケーシングの他端部方向へ一定ストローク往動させるピストン往動機構と、
前記ピストン往動機構によって往動された前記ピストンを、前記第1の原位置に復動させる第1のばねと、
前記ピストンを、往動された位置にロックし、このロックを解除すると、前記ピストンが第1の原位置に復動するのを許容するロック機構と、
前記ピストンが復動する毎に、前記プランジャーロッドを一定ストロークずつ間欠的にアンプル内に押し込む押し込み機構と、を備え、
前記押し込み機構は、
前記シリンダの内部に往復移動可能に挿入され、前記ピストンの往動に伴って第2の原位置からケーシングの他端部方向へ一定ストローク往動し、前記ピストンの復動に伴って前記第2の原位置へ復動するリボルバーと、
前記リボルバーが所定ストローク往動した状態で、当該リボルバーを一定角度ずつ回動させる回動駆動機構と、を備え、
前記リボルバーは、前記回動駆動機構によって一定角度ずつ回動する毎に、前記ケーシングの内部に導入されたプランジャーロッドの端面を順次押圧して、当該プランジャーロッドをアンプル内に間欠的に押し込む複数の押圧部を有する無針注射器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の無針注射器は、ピストン102を圧縮コイルバネ103によって、復動端まで一気に移動させるものであるので、アンプルAに収容された薬液は、皮下組織層等への1回の投与で全て使い切ってしまうことになる。ところが、薬液を投与する部位によっては、薬液を少量ずつ広い範囲に繰り返し投与する場合がある。しかし、前記従来の無針注射器では、このような用途には適用することができないという問題がある。
この発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、アンプルに収容した薬液を、少量ずつ広い範囲に投与することができる無針注射器を提供することを目的とする。
【0006】
この発明に係る無針注射器は、一端側がアンプルから突出しているプランジャーロッドを、アンプル内に押し込むことにより、アンプルに収容した薬液を、アンプルの先端から噴射させる無針注射器であって、
筒状のケーシングと、
前記ケーシングの一端部に設けられ、前記プランジャーロッドの一端側を前記ケーシングの内部に導入した状態で、前記アンプルを取り付けるアンプル取着部と、
軸線をケーシングの軸線に沿わせた状態で当該ケーシングの内部に設けられたシリンダと、
前記シリンダの内部に挿入され、当該シリンダの軸方向に沿って往復移動可能なピストンと、
前記ピストンを、第1の原位置から前記ケーシングの他端部方向へ一定ストローク往動させるピストン往動機構と、
前記ピストン往動機構によって往動された前記ピストンを、前記第1の原位置に復動させる第1のばねと、
前記ピストンを、往動された位置にロックし、このロックを解除すると、前記ピストンが第1の原位置に復動するのを許容するロック機構と、
前記ピストンが復動する毎に、前記プランジャーロッドを一定ストロークずつ間欠的にアンプル内に押し込む押し込み機構と、を備
え、
前記押し込み機構は、
前記シリンダの内部に往復移動可能に挿入され、前記ピストンの往動に伴って第2の原位置からケーシングの他端部方向へ一定ストローク往動し、前記ピストンの復動に伴って前記第2の原位置へ復動するリボルバーと、
前記リボルバーが所定ストローク往動した状態で、当該リボルバーを一定角度ずつ回動させる回動駆動機構と、を備え、
前記リボルバーは、前記回動駆動機構によって一定角度ずつ回動する毎に、前記ケーシングの内部に導入されたプランジャーロッドの端面を順次押圧して、当該プランジャーロッドをアンプル内に間欠的に押し込む複数の押圧部を有している。
【0007】
前記無針注射器によれば、アンプル取着部にアンプルを取り付けた状態で、ピストン往動機構によって、第1のばねの付勢力に抗してピストンを第1の原位置からケーシングの他端部方向へ一定ストローク往動させ、ロック機構によって、ピストンを前記一定ストローク往動させた位置にロックすることができる。
【0008】
この状態で、ピストンのロックを解除すると、第1のばねの付勢力によって、ピストンを第1の原位置へ復動させることができる。このピストンが復動する毎に、押し込み機構は、プランジャーロッドを一定ストロークずつ間欠的にアンプル内に押し込むことができ
る。
【0010】
より詳しくは、前記ピストンの往動に伴って、リボルバーを第2の原位置から往動させることができる。また、前記ピストンの復動に伴って、往動させたリボルバーを、第2の原位置へ復動させることができる。このリボルバーの復動により、プランジャーロッドの端面に対向する押圧部によって、プランジャーロッドを一定ストロークアンプル内に押し込むことができる。
【0011】
次に、前記リボルバーが所定ストローク往動した状態で、回動駆動機構により、当該リボルバーを一定角度回動させることができる。これにより、前記プランジャーロッドの端面に対向する押圧部を、これに隣接する押圧部に切り換えることができる。
以後、前記動作を繰り返すことにより、前記プランジャーロッドをアンプル内に間欠的に押し込むことができる。
したがって、アンプルに収容された薬液を少量ずつ繰り返し投与することができる。
【0012】
前記複数の押圧部は、螺旋階段状に配置した複数の段部からなるのが好ましい。
この場合、前記複数の押圧部をリボルバー簡単に構成することができる。
【0013】
前記回動駆動機構は、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記一定角度毎に複数のラチェット歯を有するラチェット歯車と、前記ラチェット歯に噛み合うラチェット爪とを備えるラチェット機構と、
前記ラチェット歯車を、ケーシングの外部から一定角度ずつ回動させるラチェット操作部と、を備えるのが好ましい。
【0014】
この場合、ラチェット操作部によって、前記ラチェット歯車をケーシングの外部から一定角度ずつ回動させることができ、これにより、前記ケーシング内に導入されたプランジャーロッドの端面と対向する押圧部を、順次切り換えることができる。
このため、前記押圧部の切り換えを簡単に行うことができる。
【0015】
前記ラチェット歯車は、リボルバーに形成されているのが好ましい。
この場合、前記ラチェット歯車を回動させると同時に、リボルバーも回動させることができるので、両者を連動させる機構が不要となる。このため、前記回動駆動機構の構造を簡素化することができる。
【0016】
前記ラチェット操作部は、一部がケーシングの外部に露出するリセットブロックと、前記リセットブロックをケーシングの内部に押し込む毎に、前記ラチェット歯車を一定角度ずつ回動させるラチェットレバーとを有するのが好ましい。
この場合、前記リセットブロックをケーシングの内部に押し込む毎に、ラチェットレバーを介して前記ラチェット歯車を一定角度ずつ回動させることができるので、ラチェット歯車を繰り返し容易に回動させることができる。
【0017】
前記ピストン往動機構は、前記リセットブロックをケーシングの内部に押し込む動作を、前記ピストンを往動させる動作に変換するカム機構を有するのが好ましい。
この場合、前記リセットブロックをケーシングの内部に押し込むだけで、前記カム機構によりシリンダを往動させることができるので、前記シリンダを容易に往動させることができると共に、ピストン往動機構の構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の無針注射器によれば、アンプルに収容した薬液を、少量ずつ広い範囲に投与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施形態を説明する。
図1はこの発明に係る無針注射器の一実施形態を示す断面図である。この無針注射器は、アンプルAに収容した薬液を、アンプルAの先端のノズル(オリフェス)から噴射させるものである。
アンプルAには、その先端のノズルから薬液を噴射させるためのプランジャーA1が設けられている。このプランジャーA1は、筒状のケーシング1の内部に導入されている。
【0021】
無針注射器は、ケーシング1の一端部1aにアンプルAを取り付けるためのアンプル取着部2と、軸線をケーシング1の軸線に沿わせた状態で、当該ケーシング1内に設けられたシリンダ3と、シリンダ3の内部に当該シリンダ3の軸線に沿って往復移動可能に挿入されたピストン4と、ピストン4を、第1の原位置X1から、一定ストロークだけケーシング1の他端部1b方向へ往動させるピストン往動機構5と、往動されたピストン4を第1の原位置X1に復動させる第1のばね6と、ピストン4が往動した位置(往動端)から復動するのを規制するロック機構7と、ピストン4の復動毎に、プランジャーロッドA2を一定ストロークずつ間欠的にアンプルA内に押し込む押し込み機構8とを備えている。
なお、第1の原位置X1とは、ピストン4の
図1において左端面41aが、ケーシングの一端部1a側へ最も移動した位置(復動端)である。
【0022】
ケーシング1は、断面形状が多角形の異形形状のものであり、その外周を片手で握ることができる大きさである。ケーシングの一端部1aには、アンプルAの後端部(
図1の右端部)とプランジャーロッドA2とをケーシング1の内部に導入するための開孔12が設けられている。ケーシング1は合成樹脂製のものである。
【0023】
ケーシング1の一端部1aの内部には、合成樹脂製の板状のブロック21が設けられており、このブロック21に、アンプル取着部2が形成されている。アンプル取着部2は、ケーシング1の開孔12に臨ませた状態で、ブロック21に形成された雌ねじ22と、この雌ねじの内奥部に形成された開孔23とを有している。雌ねじ22はアンプルAの後端部の雄ねじA3をねじ込んでアンプルAを固定するものであり、開孔23はアンプルAのプランジャーロッドA2をケーシング1の内部に導入するためのものである。
【0024】
シリンダ3は、ケーシング1の内部の一端部1a付近から他端部1b付近にかけて設けられた筒状のものであり、その外周の断面形状は、ケーシング1の内周面と合致する異形形状である。前記シリンダ3は、ケーシング1の他端部1b側に、第1のシリンダ部31を有しており、ケーシングの一端部1a側に、第2のシリンダ部32を有している。
【0025】
ピストン4は、角柱状の本体部41と、この本体部41の
図1において左端面41aからアンプル取着部2方向に延びる棒状の突出部42と、本体部41の右端面41bからケーシング1の他端部1b方向に延びる棒状のばねガイド41cとを有している。この突出部42は、プランジャーロッドA2に対応させて、ピストン4の
図1において上部のみに設けられている。ピストン4は第1のシリンダ部31に往復移動可能に挿入されている。また、ピストン4は合成樹脂又は金属で形成されている。なお、第2のシリンダ32の内周の断面形状は、ピストン4の本体部41の外周に合致する角形形状である。
【0026】
第1のばね6は、圧縮コイルばねからなり、ピストン4の本体部41の
図1において右端面41bと、ケーシング1内の他端部1bに設けられたばね受け部14との間に、常時圧縮させた状態で介在している。ばね受け部14は、ケーシング1内の他端部1b近傍に設けられた合成樹脂製のブロック14aに保持されている。第1のばね6の内周には、ピストン4に設けられたばねガイド41cが挿入されており、このばねガイド41cによって第1のばね6がガイド(保持)されている。
【0027】
押し込み機構8は、第2のシリンダ32の内部に往復移動可能に挿入されたリボルバー81と、リボルバー81を第2の原位置X2からケーシング1の他端部1b方向へ往動させる第2のばね82と、リボルバー81を一定角度ずつ回動させる回動駆動機構90とを備えている。
なお、第2の原位置X2とは、リボルバー81の軸84の
図1において左端面84aがブロック21に突き当たった位置である。
【0028】
リボルバー81は、ピストン4の往動に伴って、第2の原位置X2からケーシング1の他端部1b方向へ一定ストローク往動し(
図2参照)、前記ピストン4の復動に伴って、第2の原位置X2へ復動する(
図1参照)。
図3も参照して、リボルバー81は、前記軸84と、この軸84の左端面84a寄りに当該軸84と同芯に設けられた柱状部85と、軸84の右端面84b側に設けられたラチェット歯車86とを有している。
柱状部85は軸84よりも大径であり、この柱状部85と、軸84の右端面84b側とは、第2のシリンダ部32に、ケーシング1の軸方向に沿って往復移動可能に挿入されている。
【0029】
柱状部85の
図1において左端85a側には、押圧部としての複数の段部87が、ブロック21に対向させた状態で設けられている。複数の段部87は、リボルバー81の軸心を中心とする同芯円上に、柱状部85の周方向に沿って等間隔に設けられている。
各段部87は、隣接する段部87に対して軸方向に所定長さ(段差)Lずつ、柱状部85の
図1において右端面85b側に、段階的にずれている。つまり、複数の段部87は、螺旋階段状に設けられている。
【0030】
リボルバー81は、1本のアンプルA毎に、矢印Dで示す方向、つまりケーシング1の一端部1a側から見て時計回り方向に1回転され、この1回転で、全ての段部87が、プランジャーロッドA2の端面に順次対向する。
なお、リボルバー81の往動ストロークは、リボルバー81の回動時にプランジャーロッドA2と段部87とが干渉しないように、互いに隣接する段部87の段差Lよりも長くなっている。このリボルバー81の往動ストロークに対して、ピストン4の往動ストロークはさらに長くなっている。
【0031】
アンプルAをアンプル取着部2に取り付ける前において、リボルバー81は、第2の原位置X2に移動させた状態で、リボルバー81の段部87のうちの、軸84の軸方向において、当該軸84の左端面84aから最も近い段部87(以下「第1の段部87a」という)を、アンプル取着部2に対向させておく。これにより、プランジャーロッドA2をケーシング1内に最後まで導入できる。
【0032】
第1の段部87aがアンプル取着部2に対向しているか否かは、例えば、リボルバー81に目印を付して、この目印をケーシング1の外から目視することにより確認することができる。
なお、以下の説明において、リボルバー81の各段部87のうちの、第1の段部87aに隣接し、軸84の軸方向において、当該軸84の左端面84aから最も遠い段部87を、「第2の段部」という。
【0033】
本実施形態において、段部87は10個形成されている。このため、本実施形態において、リボルバー81は、回動駆動機構90によって36度ずつ10回ほど回動操作され、この10回の回動操作により、アンプルA内の薬液を使い切るように、隣接する段部87の段差Lが設定されている。本実施形態においては、段差Lは3mm程度に設定されている。
【0034】
軸84の左端面84a側には、軸84の右端面84b方向に延びるばね孔84cが形成されている。このばね孔84cは軸84の左端面84aにおいて開口している。
前記第2のばね82は、圧縮コイルバネからなり、常時弾性収縮させた状態で、ばね孔84cの底部とブロック21との間に介在している。
【0035】
図4を参照して、回動駆動機構90は、リボルバー81に設けられたラチェット歯車86と、このラチェット歯車86の各ラチェット歯86aに噛み合うラチェット爪94とを有するラチェット機構91と、
ラチェット歯車86をケーシング1の外部から一定角度θずつ回動させるラチェット操作部92とを備えている。
【0036】
ラチェット爪94は、ラチェット歯車86の下方に設けられており、その先端部がラチェット歯86aに噛み合って、ラチェット歯車86が
図4において時計回り方向へ回動するのを規制している。
ラチェット爪94は、
図4において上下動可能であり、第4のばね94aによってラチェット歯車86方向へ常時弾性的に付勢されている。したがって、ラチェット爪94は、ラチェット歯車86の回動に伴って一旦下方へ退避した後、上昇して、ラチェット歯86aに再び係合する。
【0037】
ラチェット操作部92は、一部がケーシング1の外部に露出するリセットブロック93を有し、リセットブロック93をケーシング1の内部に押し込む毎に、ラチェット歯車86を一定角度θずつ回動させる。
リセットブロック93は、所定間隔離れて互いに対向する一対の平板状の脚部93aと、この脚部93aの基端部どうしを繋ぐ基部93bとを有する双脚状のものである。
【0038】
リセットブロック93は、ケーシング1の底面から両側面にかけて設けられた開口部1dと、シリンダ3の図示しない開口部とを通してケーシング1内に導入されており、その基部93b側の所定範囲が、ケーシング1の外部に露出している。また、リセットブロック93の脚部93aは、リセットブロック93をケーシング1の内部に押し込めるように、ケーシング1内に、
図4において上下動可能に設けられている。
【0039】
リセットブロック93の基部93bとシリンダ3との間には、第3のばね93iを介在しており(
図1参照)、この第3のばね93iの付勢力により、ケーシング1内に押し込んだリセットブロック93を(
図2参照)、元の位置に押し戻すことができる。
なお、リセットブロック93を第3のばね93iの付勢力に抗してケーシング1の内部に押し込むには、片方の手でケーシング1を握り、この片方の手の指をリセットブロック93の基部93bに引っ掛けて、当該指で基部93bをケーシング1内に押し込めばよい。このように、片手による操作でリセットブロック93をケーシング1内に押し込むことができるので、その操作を容易に行うことができる。
【0040】
一対の脚部93aの相互間には、リボルバー81の軸84に形成したラチェット歯車86が導入されている。ラチェット歯車86とリセットブロック93とは、ケーシング1の軸方向に相対移動可能である。
脚部93aの一方(
図4において右側)には、ラチェット歯車86を一定角度θずつ回動させるためのラチェットレバー91aが設けられている。このラチェットレバー91aは、一方の脚部93aに設けられた凹溝93e内に配置されている。ラチェットレバー91aの基端部93fは、ラチェットレバー91aがラチェット歯車86方向へ回動できるように、脚部93aに回動可能に支持されている。このラチェットレバー91aは、凹溝93e内に設けられた板ばね91cによって、ラチェット歯車86方向へ常時弾性的に回動付勢されている。
【0041】
前記した回動駆動機構90によれば、リセットブロック93の基部93b部分を押圧して、ケーシング1内に押し込むと、リセットブロック93とともにラチェットレバー91aが上昇し、ある程度上昇した時点で、ラチェットレバー91aの先端部がラチェット歯86aに係合する。この状態で、ラチェットレバー91aをさらに上昇させることにより、ラチェット歯車86を一定角度θだけ回動させることができる。このため、簡素な構造で、回動駆動機構90を構成することができる。
なお、前記回転駆動機構90によってラチェット歯車86を回動させるタイミングは、リボルバー81の回転に伴って、その段部87とプランジャーロッドA2とが干渉しない位置までリボルバー81が往動した時点に設定されている。
【0042】
図1を参照して、ピストン往動機構5は、リセットブロック93をケーシング1の内部に押し込む動作を、ピストン4の往動動作に変換させるカム機構51を有する。カム機構51は、リセットブロック93の一対の脚部93aに設けられたカム面51aと、ピストン4に挿通されたカムピン51bと、このカムピン51bのケーシング1の軸方向への往復移動を案内するピンガイド51cとによって構成されている。
【0043】
カム面51aは、リセットブロック93の各脚部93aを貫通し、かつ断面が三角形の開口部の上向きの傾斜面によって構成されている。前記開口は、図の場合直角三角形であり、カム面51aは、ケーシング1の軸方向に対して45度の角度で傾斜している。
カムピン51bは、各脚部93aの前記直角三角形の開口部及びピストン4を挿通しており、その両端部は、脚部93aから突出して、ピンガイド51cに導入されている。
ピンガイド51cは、シリンダ3の内周に設けられた長孔で構成されており、その長手方向をケーシング1の軸線に沿わせた状態で設けられている。
【0044】
このピストン往動機構5によれば、ケーシング1が第1の原位置X1に復帰した状態で、リセットブロック93をケーシング1内に押し込むと、カム面51aが上昇して、カムピン51bがカム面51a上を摺動しながらケーシング1の他端部1b方向へ移動する。これにより、ピストン4を第1のばね6の付勢力に抗して一定ストローク往動させることができる。このため、簡素な構造でピストン4を往動させることができる。
【0045】
図1及び
図5を参照して、ロック機構7は、先端にロック爪71aを有するロックレバー71と、ピストン4の突出部42に設けられ、ロック爪71aと係合するロック溝72と、ロック爪71aとロック溝72との係合状態を維持する一対の第5のばね73と、ロック溝72とロック爪71aとの係合状態を解除する押しボタン74とを備えている。
ロックレバー71は、シリンダ3の外周に設けられた凹溝33内に配置されており、その先端寄りに設けられたピン71eを介して、凹溝33に揺動可能に取り付けられている。
【0046】
ロック爪71aは、逆三角形状のものであり、ピストン4の開口41dを通して、ロック溝72に係合可能になっている。ロック爪71aの
図1において右側の辺部71bは、ロック溝72と係合した状態で、ピストン4が復動するのを規制する角度に設定されている。また、ロック爪71aの左側の辺部71cは、ピストン4が往動すると、ロック溝72の上縁により徐々に押し上げられて、ピストン4の往動を許容する角度に設定されている。
【0047】
一対の第5のばね73は、圧縮コイルばねであり、ロックレバー71の後端側と、シリンダ3に設けられたばね孔73aとの間に、弾性収縮させた状態で介在している。したがって、ロックレバー71は第5のばね73によって、
図1において時計回り方向へ常時付勢されている。
【0048】
押しボタン74は、ロックレバー71の後端を、第5のばね73の付勢力に抗して反時計回り方向に回動させるものである。この押しボタン74を押し下げることにより、ロックレバー71のロック爪71aとロック溝72との係合状態を解除することができる。
【0049】
以上の構成の無針注射器の動作は以下の通りである。
なお、以下の説明において、ピストン4が第1の原位置X1に位置し、リボルバー81が第2の原位置X2に位置し、リボルバー81の第1の段部87aがアンプル取着部2に対向し、ロック爪71aとロック溝72との係合が解除された状態(
図1の状態)を「初期状態」という。
【0050】
まず、初期状態において、リセットブロック93をケーシング1の内部に押し込むと、ピストン4が、カム機構51を介して第1の原位置X1からケーシング1の他端部1b方向に往動する。ピストン4が往動端まで往動すると、ロック機構7のロックレバー71とロック溝72とが係合し、ピストン4が第1の原位置X1方向へ復動するのが阻止される。
前記ピストン4の往動に伴って、リボルバー81は、第2のばね82の付勢力により、第2の原位置X2からケーシング1の他端部1b方向に往動する。
【0051】
また、リセットブロック93をケーシング1の内部に押し込む動作に連動して、回動駆動機構90のラチェットレバー91aが上昇し、ラチェット歯車86を一定角度θ回動させる。これにより、リボルバー81も一定角度θ回動するので、アンプル取着部2に対向する第1の段部87aが、第2の段部に切り換わる。これにより、アンプルAのプランジャーロッドA2を、アンプル取着部2を通してケーシング1内に導入して、アンプルAをアンプル取着部2に取り付けることができる。
リセットブロック93は、リボルバー81が一定角度θ回動した後、その押圧を解除して原位置に戻す。
【0052】
アンプルAをアンプル取着部2に取り付けた状態で、アンプルAの先端を投与部位に押し当て、この状態で、ロック機構7の第5のばね73の付勢力に抗して押しボタン74を押すと、ロックレバー71のロック爪71aとピストン4のロック溝72との係合が解除される。すると、ピストン4が第1のばね6の付勢力によって弾撥的に復動し、この復動に追従してリボルバー81も復動して、第2の原位置X2に復帰する。これにより、第2の段部がプランジャーロッドA2の端面を押圧して、プランジャーロッドA2を段部87の段差Lに相当するストロークだけアンプルA内に押し込むことができる。その結果、アンプルA内の薬剤の一部を、アンプルA先端から噴射して皮下組織層に投与することができる。
以後、前記動作を繰り返すことにより、アンプルA内の薬剤を間欠的に噴射させることができる。
【0053】
前記実施形態に係る無針注射器によれば、アンプルAに収容した薬液を、少量ずつ繰り返し投与することができるので、アンプルAの先端部を押し当てる部位を適宜移動させることにより、薬液を広範囲にわたって投与することができる。
しかも、リセットブロック93をケーシング1内に押し込むだけで、リボルバー81の回動と、ピストン4及びリボルバー81の往動とを行うことができるので、薬剤を投与するための操作が容易である。
また、従来の無針注射器を用いた場合、薬液を投与する部位によっては、薬液が過剰に投与されることがある。しかし、前記実施形態に係る無針注射器によれば、薬液を投与する量を選択できるので、薬液が過剰に投与されるのを抑制することができる。
【0054】
一方、従来の無針注射器において、ピストンを往復移動させるために、電動モータを用いることが考えられる。この場合、電動モータの駆動を制御することにより、ピストンを間欠的に移動させることができる。しかし、この場合には、電動モータのほかに、これを駆動するためのバッテリーや、電動モータの回転運動をピストンの往復運動に変換するための機構等が必要となる。このため、無針注射器が大型化するとともに重量が重くなり、携行に適さなくなるという問題が生じる。この点、前記実施形態に係る無針注射器は、ピストン4を機械的に移動させるものであり、モータやバッテリーが不要であるので、携行に適するものとなる。
【0055】
この発明に係る無針注射器は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、ピストン往動機構5として、前記カム機構51に代えてリンク機構を採用すること、リボルバー81の段部87の数を適宜増減すること等、種々変更して実施することができる。
【解決手段】第1の原位置X1からケーシング1の他端部1b方向へ往動させたピストン4を、第1の原位置X1方向へ復動させる第1のばね6と、ピストン4の往動及び復動に追従して往動及び復動するリボルバー81と、リボルバー81を一定角度ずつ回動させる回動駆動機構90とを備える。リボルバー81は、螺旋階段状の複数の段部87によって、アンプルAのプランジャーロッドA2の端面を順次押圧して、当該プランジャーロッドA2をアンプルA内に間欠的に押し込む。