特許第6674585号(P6674585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674585
(24)【登録日】2020年3月10日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】体外生命維持システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20200323BHJP
【FI】
   A61M1/16 107
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-522613(P2019-522613)
(86)(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公表番号】特表2019-521820(P2019-521820A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】US2017041653
(87)【国際公開番号】WO2018013644
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年3月6日
(31)【優先権主張番号】62/361,050
(32)【優先日】2016年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519010488
【氏名又は名称】3アール ライフ サイエンシズ タイワン リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519010499
【氏名又は名称】リン、シャオ−チエン
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】リン、シャオ−チエン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ポン−ジェウ
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/089047(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0161321(US,A1)
【文献】 特開平04−040963(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0138350(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外生命維持システムであって、
患者の体外に配置される血液ポンプおよび酸素供給器と、
脱酸素化血液を受けるために上大静脈または下大静脈に留置される脱血カニューレアセンブリであって、前記患者の心調律に従って使用されるとともに作動させる、脱血バルーン、脱血オクルーダ、および脱血リザーバのうちの少なくとも1つを有し、前記脱血バルーンは、静脈還流血流を制御するために膨張または収縮させるものであり、前記脱血オクルーダは、当該体外生命維持システムへの脱血を制御するために圧縮または弛緩させるものであり、前記脱血リザーバは、前記脱血オクルーダと協働で作動させることで、結果的に連続的な血液ポンプ流が得られるものである、ことを特徴とする脱血カニューレアセンブリと、
前記上大静脈または前記下大静脈のいずれかにおいて前記脱血カニューレアセンブリの対側に留置される送血カニューレアセンブリであって、酸素化血流を前記患者の循環に戻すように送り込むために使用される、送血カニューレアセンブリと、を備える、
体外生命維持システム。
【請求項2】
前記脱血カニューレアセンブリは、2つの流路を有し、一方の流路は血液の伝送が可能であり、他方の流路は、前記脱血バルーンを膨張または収縮させるために前記脱血バルーンに接続されており、前記2つの流路は仕切られていて、互いに流体連通していない、ことを特徴とする、請求項1に記載の体外生命維持システム。
【請求項3】
前記脱血カニューレアセンブリは、前記脱血カニューレアセンブリの一端に配置された封止カニューレ端と、前記封止カニューレ端付近の前記脱血カニューレアセンブリの側壁に配置された複数の脱血孔と、を有することを特徴とする、請求項2に記載の体外生命維持システム。
【請求項4】
前記脱血カニューレアセンブリは、脱血カニューレと、脱血空気カテーテルと、脱血Yコネクタと、を有し、前記脱血空気カテーテルは、前記脱血バルーンに接続されるとともに、前記脱血カニューレから物理的に分離されている、ことと、前記脱血カニューレは、カニューレ先端と、前記脱血カニューレの一端において分散された複数の脱血孔と、を含むことと、前記脱血カニューレは、前記脱血Y型コネクタの第1枝に結合されており、前記脱血Y型コネクタの第2枝に、前記脱血空気カテーテルの挿入を受けるためのプラグを装備している、ことと、を特徴とする、請求項1に記載の体外生命維持システム。
【請求項5】
前記脱血空気カテーテルは、インナチューブとアウタチューブとを含み、前記アウタチューブは、前記脱血バルーンの膨張または収縮の空気圧制御に使用されるものであり、前記インナチューブは、血圧検知のための液体が充填されている、ことを特徴とする、請求項4に記載の体外生命維持システム。
【請求項6】
前記患者の心調律は、心電図信号から取得されることを特徴とする、請求項1に記載の体外生命維持システム。
【請求項7】
体外生命維持システムであって、
患者の体外に配置される血液ポンプおよび酸素供給器と、
当該生命維持システムからの酸素化血液を送り込むために、上大静脈または下大静脈に留置される送血カニューレアセンブリであって、前記患者の心調律に従って使用されるとともに作動させる、送血バルーン、送血オクルーダ、および送血リザーバのうちの少なくとも1つを有し、前記送血バルーンは、静脈還流血流を制御するために膨張または収縮させるものであり、前記送血オクルーダは、前記患者の右心房への送血を制御するために圧縮または弛緩させるものであり、前記送血リザーバは、前記送血オクルーダと協働で作動させることで、結果的に連続的な血液ポンプ流が得られるものである、ことを特徴とする送血カニューレアセンブリと、
前記上大静脈または前記下大静脈のいずれかにおいて前記送血カニューレアセンブリの対側に留置される脱血カニューレアセンブリであって、前記静脈還流からの脱酸素化血流を受けるために使用される、脱血カニューレアセンブリと、を備える、
体外生命維持システム。
【請求項8】
前記送血カニューレアセンブリは、流れ抵抗を最小限に抑えるために直列に整列された、シングルルーメン・カニューレと、前記送血オクルーダと、前記送血リザーバと、を有することと、送血流量制御は、前記送血オクルーダの断面の圧縮または拡張により調整されて、このとき、前記送血オクルーダの動作に応じて、パッシブな前記送血リザーバが連係することで、結果的に、当該生命維持システムにおいて連続的な血液ポンプ流が得られる、ことと、を特徴とする、請求項7に記載の体外生命維持システム。
【請求項9】
前記患者の心調律は、心電図信号から取得されることを特徴とする、請求項7に記載の体外生命維持システム。
【請求項10】
体外生命維持システムであって、
患者の体外に配置される血液ポンプおよび酸素供給器と、
脱酸素化血液を受けるために上大静脈または下大静脈に留置される脱血カニューレアセンブリであって、前記患者の心調律に従って使用されるとともに作動させる、脱血バルーン、脱血オクルーダ、および脱血リザーバのうちの少なくとも1つを有し、前記脱血バルーンは、静脈還流血流を制御するために膨張または収縮させるものであり、前記脱血オクルーダは、当該体外生命維持システムへの脱血を制御するために圧縮または弛緩させるものであり、前記脱血リザーバは、前記脱血オクルーダと協働で作動させることで、結果的に連続的な血液ポンプ流が得られるものである、ことを特徴とする脱血カニューレアセンブリと、
当該生命維持システムからの酸素化血液を送り込むために、前記上大静脈または前記下大静脈のいずれかにおいて前記脱血カニューレアセンブリの対側に留置される送血カニューレアセンブリであって、前記患者の心調律に従って使用されるとともに作動させる、送血バルーン、送血オクルーダ、および送血リザーバのうちの少なくとも1つを有し、前記送血バルーンは、静脈還流血流を制御するために膨張または収縮させるものであり、前記送血オクルーダは、前記患者の右心房への送血を制御するために圧縮または弛緩させるものであり、前記送血リザーバは、前記送血オクルーダと協働で作動させることで、結果的に連続的な血液ポンプ流が得られるものである、ことを特徴とする送血カニューレアセンブリと、を備え、
心拡張期に右心室に流入する酸素化血液を最大限にするとともに、心収縮期に生命維持回路に戻るように再循環する酸素化血液を低減するために、前記脱血カニューレアセンブリと前記送血カニューレアセンブリは協働で最適に機能することを特徴とする、
体外生命維持システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2016年7月12日に出願された、現在係属中の米国仮特許出願第62361050号に基づくものである。
【0002】
本発明は、体外生命維持システムに関し、より具体的には、酸素化された血流が脱血カニューレを介してECMO回路に戻るような循環を防ぐことを目的とした、静脈・静脈体外式膜型人工肺(VV ECMO:Veno−Venous ExtraCorporeal Membrane Oxygenation)システムに関連したアクティブ制御による流量調整方法に関するものである。
より具体的には、本発明は、心電図(ECG)をタイミング基準として用いてカニューレの流れの妨げまたは加速が可能なアクティブ制御レギュレータシステムによる再循環現象のさらなる改善のためのものであり、心拡張期に三尖弁が開いているときの右心室に対流する酸素化血液を最大限とする一方、心収縮期に三尖弁が閉じているときの右心房/大静脈への、脱酸素化された静脈還流を最大限としつつ、送り込まれる酸素化血流を抑えることを目的とする。
【背景技術】
【0003】
1992年の鳥インフルエンザの大流行以来、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のような重度の呼吸器疾患を救済するために、体外式膜型人工肺(ECMO)システムの世界的な使用が増加している。現在、年間に使用されるECMOの約40%は、ARDSまたはその他の進行した呼吸器疾患の治療に関連しており、その場合、効果的な肺疾患治療のためには、カニュレーションの方法および設計が極めて重要である。
【0004】
ECMOは、通常、静脈・動脈(VA)ECMO構成と静脈・静脈(VV)ECMO構成の2つのカテゴリに分けられる。VA ECMOは、心不全患者の治療を目的とするものであり、VV ECMOは、呼吸不全患者の治療を目的とするものである。VV ECMOの体外肺回路は、脱血カニューレと送血カニューレがそれぞれ下大静脈(IVC)と上大静脈(SVC)に留置される、2部位シングルルーメン・カニューレ挿入法に由来するものである。この最も一般的に見られるVV ECMOは、両カニューレが右心房(RA)領域で出会うまで、その脱血カニューレを鼠径部から挿入してIVCに挿通して進め、送血カニューレを頸静脈からSVCに挿通して進めて留置する。脱血カニューレと送血カニューレの先端が近接して留置されるので、送り込まれた酸素化血液のかなりの部分が、RAに流入するのではなく、脱血カニューレに吸い込まれる可能性があり、VV ECMOのサポート効果を損なう「再循環」と呼ばれる現象を引き起こす。
一般的に、肺の損傷が重大であるほど、より多くのECMO流量が必要とされるにもかかわらず、ECMO流量が増加するにつれて再循環率は高くなる。再循環が優勢になると、VV ECMOのサポート効果が損なわれるだけではなく、ECMO回路における滞留時間が長引くことに起因する余分な血液細胞の損傷によって生じる合併症も極めて望ましくない。例えば、ECMO回路において、特に人工肺の狭い繊維管内で、より長時間再循環している間に、血液細胞は溶解し、より多量の抗凝固ヘパリン投与が必要となることに伴って、出血性または血栓塞栓性の合併症を発現する。
【0005】
VV ECMOの再循環を抑制するためのソリューションが提案されている。実際の実施は、カニューレ設計および関連したカニュレーション法の改善に重点を置いていた。VV ECMOにおけるカニューレ/カニュレーションには、1)2部位シングルルーメン・カニュレーション、2)1部位ダブルルーメン・カニュレーション、3)2部位ダブルルーメン・カニュレーション、4)3部位シングルルーメン・カニュレーション、の4つのタイプがある。
近年、Avalonカニューレにより実現される1部位ダブルルーメン・カニュレーションは、再循環の抑制が向上するとともに、より早い肺回復のための、より優れた可搬性を患者に提供できるという、その効果によって、人気を得ている。
【0006】
上記のカニュレーション法はいずれも、再循環を最小限に抑えるためにアクティブ調整されるアクチュエータを伴わない、パッシブ設計概念を採用している。なお、注目すべきは、送り込まれる酸素化血液を右心室(RV)が受け入れるのは、心拡張期に三尖弁が開いているときのみであるということである。心収縮期には、三尖弁が閉じるので、送血カニューレ先端が三尖弁の入り口にどんなに近接して留置されていても、送り込まれる酸素化血液がRVに流入することはできない。これが、あらゆるパッシブ・カニュレーション選択肢の性能に上限を課している基本的な根本要因である。
VV ECMO再循環の評価を、本発明者の研究所で特別に設計された肺の模擬循環回路で実施した。3.5リットル/分のECMO流量で、従来の2部位シングルルーメン・カニュレーションの再循環率は40〜50%の範囲にあって高く、1部位ダブルルーメンAvalonカニュレーションの再循環率は約20〜25%である。肺ECMO治療を必要とする患者に有効であるように、さらなる改善を実施できる余地はまだ十分にある。
【0007】
ECMO装着患者は、多くの場合、集中治療室(ICU)で鎮静かつ寝たきりにされる。回復期を早めるために患者が歩き回るという、1部位ダブルルーメン・カニューレに伴う効果は、実際には実現するのが難しい。実際のところ、世界中の大多数のICUでは、ICUにおける看護師およびスタッフによるサポートは、ECMO患者が日課としてベッドを離れてICUで廊下を安全に歩き回ることを可能にするには不十分である。
【0008】
過度に大きなカニューレは挿入が難しく、術中血管損傷およびカニューレ抜去後の血管腔狭窄を引き起こすことがあるので、ECMOカニューレのサイズは一般的に制限される。ダブルルーメン・カニューレ内に共存する送血流路と脱血流路は、本質的に、シングルルーメン・カニューレのそれよりも小さい。1部位ダブルルーメン・カニュレーションに伴う、より高い流れ抵抗/壁せん断応力によって、血流が最初の脱血に次いでダブルルーメン・カニューレのより狭い流路を通って再び送血される間に、より多くの血液細胞が損傷することは避けられない。実際に、ダブルルーメン・カニュレーションにおけるECMO流量は、その高い流れ抵抗によって著しく制限されており、これは、より多くのECMO流量を緊急に必要とする進行した呼吸不全患者をサポートするのに理想的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以下で示すように、ECG同期型の再循環防止コントローラシステムを使用することにより再循環をさらに抑制するように特別に設計された、2部位ダブルルーメン・カニュレーションアプローチを採用する。なお、留意すべきことは、先に規定したルーメンのカテゴリ分類とは異なり、本発明では、ダブルルーメンは、空気流路と血流路とで構成される管状統合体と規定されることであり、その血流路の断面は、空気流路の断面よりもはるかに幅広である。文字通り、このダブルルーメン・カニューレの血流抵抗は、前述のシングルルーメン・カニューレの血流抵抗に匹敵する。従って、より小さな流れ抵抗を伴う、より多くのサポート流量という観点から、血行動態において最大限の効果が得られる。カニューレにおいてより大きな血流路を採用することにより、管状流のせん断応力がはるかに低減されて、これが血液細胞の損傷の減少につながり、必要となるヘパリンおよび抗血小板薬の投与はより少なくなる。
【0010】
三尖弁の開/閉状態に合わせて脱血/送血流速プロファイルを調整することにより、VV ECMO再循環を最小限に抑えて、既存の従来技術では達成できない前例のない率まで減少させることができる。本発明者の見解では、血液細胞の損傷の低減を前提として、ECMO流量サポート範囲を広げつつ、現状技術の再循環率をさらに低減することで、現状の1部位ダブルルーメン・カニュレーションによって提供されるものよりも、より望ましい治療選択肢となる。三尖弁運動に関連した時間経過と血流特性の両方を考慮して、カニューレに装着されたアクティブ制御によるアクチュエータにより、VV ECMOサポート効果をさらに向上させると、従来よりも適切な罹患肺の安静(lung rest)が可能であり、これが、より早い回復につながり、それらの患者に真に有効であるように、ECMOを装着してICUで過ごす期間を大幅に短縮する。患者がECMOから外されて、ICUから出た後に、患者の肺がより早く回復するのを助けるリハビリテーションを実施できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、静脈・静脈体外式膜型人工肺(VV ECMO)の効果を高めるように設計された新規の血流調整システムに関する。このアクティブ制御によるECMOシステムは、脱血カニューレと、送血カニューレと、血液ポンプと、酸素供給器と、心電図(ECG)同期コントローラと、空気駆動装置と、を備える。この脱血カニューレアセンブリは、脱酸素化血液を大静脈からECMOシステム内に引き込むものであって、脱血カニューレと、柔軟性リザーバと、脱血部位オクルーダと、第1のバルーンと、を有する。
ECMO返血部位用のカニューレアセンブリは、ECMO酸素化血液を大静脈または右心房(RA)に戻すように送り込むものであって、送血カニューレと、柔軟性リザーバと、返血部位オクルーダと、第2のバルーンと、を有する。その全体もしくは一部をこのコントローラシステム設計に採用できるような、アクティブ駆動またはパッシブ駆動される部品、すなわちバルーン、オクルーダ、およびリザーバは、このカニューレ流量調整要素を構成し、これらを、トリガ基準としてECG信号を用いる指令制御ロジックにより作動させる。三尖弁の開閉に応じて連携調整される、間欠的なオクルーダ制御による静脈還流ならびにECMO流による脱血および返血によって、右心室(RV)に予め送り込まれた後に肺循環に送り出される最大限の酸素化血流を実現する。このECG同期VV ECMO発明を用いることにより、酸素化血液がECMO回路に戻る再循環を大幅に低減可能であり、その結果、罹患肺に課される呼吸要求の望ましい軽減が得られる。さらに、血液再循環現象の低減により、ECMO回路に循環する血液細胞の滞留時間は短縮されて、溶血のような血液細胞の損傷、血栓塞栓性事象、および神経発作リスクの低減に寄与する。
【0012】
本発明の脱血カニューレまたは送血カニューレは、インフレータブルバルーンを有し、これは、カニューレ外面の一部を覆い得るか、または該カニューレに物理的に近接した位置にあって協働で機能するカテーテルによって支持されている。バルーン材料は、耐久性かつ生体適合性のあるものでなければならず、例えば、変形可能または膨張可能なエラストマで構成される。このバルーンは、しぼんでいるときには、流れ抵抗が最小限となるように、低プロファイルに収縮している。膨らんでいるときには、バルーンは、血管壁に当接または近接するように膨張して、これにより血流路を妨げている。
この血管内カニューレ・バルーンアセンブリは、大静脈内に留置されて、脱血および/または返血を担う。カニューレ上のバルーンの膨張および収縮を制御することにより、上大静脈(SVC)または下大静脈(IVC)から右心房への静脈還流に対するオブストラクション時間間隔およびその静脈還流の量を調整する。
【0013】
本発明の各カニューレは、さらに、このカニューレに装着されて患者の体外に位置する調整可能なオクルーダを備え得る。オクルーダは、制御される管状流の断面積を圧縮することにより流量を減少させるための機構である。すなわち、それは、流れ抵抗を高めることにより内部管状流を妨げるものである。あるいは、内側バルーンまたは柔軟膜による内部流れインピーダンスを、汎用オクルーダとして採用できる。様々に異なる圧閉度、圧搾タイミング、および時間間隔で、オクルーダをピンチすることにより、カニューレルーメン内の血流路を、時系列で、開状態、部分開状態、または閉状態に調整できる。このように、ECMO流入端に引き込まれる静脈還流、ならびにECMO流出端から流出する酸素化血液の時間間隔および量を調整可能である。
【0014】
ECMO流入路および流出路は、ECMO回路流と連携して血液を貯留および/または戻すためのキャパシタンス機構としてのリザーバと流体連通しており、このキャパシタンス機構は、回路内でバルーンまたはオクルーダが作動しているときに安定的かつ連続的な血液ポンプ動作を促すために必要である。人体の柔軟管と同様に機能するパッシブリザーバを、弾性材料を用いて構築できる。また、外部駆動システムにより制御されるポンプ容積を有する容積型ポンプのような、アクティブリザーバも構築できる。リザーバは、流路に対して直列または並列に配置できる。より単純な設計およびより合理化された流路のためには、インライン型リザーバが好ましい。しかしながら、状況によっては、リザーバに流入させておく液量またはリザーバから抽出される液量のアクティブ制御が、ECMO回路流の調整を助けるのに役立つことがある。
【0015】
バルーンとオクルーダは両方とも、ECG信号をトリガ基準信号として用いて作動させる。バルーンの膨張/収縮およびオクルーダの開閉の制御は、個別に、または組み合わせグループで、三尖弁の開閉タイミングに関連した適切なタイミングで設定できる。その目的は、(後で拡張期にRVに充満するのに備えて)三尖弁が開く前にRAに貯留される酸素化血液量を最大限とする一方、心収縮期に三尖弁が閉じたときに酸素枯渇静脈還流を最大限にECMO回路に引き込むことである。
また、オクルーダ閉鎖時に妨げられるECMO流は、オクルーダが開く次の期間で補償されて、リザーバがブースタのように機能することで加圧された貯留血液をECMO流に戻すように放出するという意味で、リザーバはオクルーダと協働で機能する。このECG同期VV ECMO発明を用いることにより、ECMO流量の減少という代償を払うことなく、酸素化血液がECMO回路に戻る再循環という従来の欠点を大幅に軽減できる。
【0016】
概説した本発明についてのより詳細な説明は、添付の図面に示す本発明の実施形態によって実現し得る。それらの図面は、本発明の典型的な実施形態を単に示すものと理解され、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。本明細書で参照される実施形態および本発明の最良の形態について、添付の図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】肺循環に関連したVV ECMO回路を示す概略図であり、拡張期に三尖弁が開いているときの6つの流量調整器のそれぞれに特徴的な制御動作を提示している。
図2】肺循環に関連したVV ECMO回路を示す概略図であり、収縮期に三尖弁が閉じているときの6つの流量調整器のそれぞれに特徴的な制御動作を提示している。
図3A】本発明の制御ブロック図である。
図3B】それぞれの流量調整器に関連したトリガタイミング(制御オンまたは制御オフ)を概略的に示している。
図4A】本発明の実施形態Iによる脱血カニューレアセンブリの側面図である。
図4B】本発明の実施形態Iによる脱血カニューレアセンブリの側面図である。
図5A】本発明の実施形態Iによる脱血カニューレアセンブリの長手方向断面図である。
図5B】本発明の実施形態Iによる脱血カニューレアセンブリの長手方向断面図である。
図5C】実施形態Iによる脱血カニューレアセンブリの断面図である。
図6】本発明の実施形態Iによる脱血カニューレのバルーンの長手方向断面図である。
図7】IVCとRAとの接合部に配置された実施形態Iの脱血カニューレの留置を示す概略図である。
図8A】本発明の実施形態IIによる脱血カニューレアセンブリの側面図である。
図8B】本発明の実施形態IIによる脱血カニューレアセンブリの側面図である。
図9A】本発明の実施形態IIによる脱血カニューレアセンブリの長手方向断面図である。
図9B】本発明の実施形態IIによる脱血カニューレアセンブリの長手方向断面図である。
図10】本発明の実施形態IIによる脱血カニューレのバルーンの長手方向断面図である。
図11】本発明の実施形態IIによる脱血カニューレの脱血Yコネクタの長手方向断面図である。
図12A】本発明の実施形態IIによる脱血カニューレの脱血Yコネクタの詳細図である。
図12B】本発明の実施形態IIによる脱血カニューレの脱血Yコネクタの分解図である。
図13】IVCとRAとの接合部に配置された実施形態IIの脱血カニューレの留置を示す概略図である。
図14A】本発明の実施形態IIIによる送血カニューレアセンブリの側面図である。
図14B】本発明の実施形態IIIによる送血カニューレアセンブリの側面図である。
図15A】本発明の実施形態IIIによる送血カニューレアセンブリの断面図である。
図15B】本発明の実施形態IIIによる送血カニューレアセンブリの断面図である。
図16】本発明の実施形態IIIによる送血カニューレアセンブリのオクルーダモジュールの断面図である。
図17】本発明の実施形態IIIによる送血カニューレアセンブリのオクルーダモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この制御方法の本質は、三尖弁運動に応じて静脈還流およびECMOカニューレ流を調整することである。その目的は、VV ECMOに伴う再循環という欠点を最小限に抑えることである。図1および2は、それぞれ配置された制御要素の位置と、収縮期および拡張期にそれぞれ生じる再循環を最小限に抑えるために望ましい動作モードと、を示している。
図1および2は、本発明の一実施形態による、肺循環に関連したVV ECMO回路を示す概略図である。体外生命維持システム20は、酸素供給器201と、血液ポンプ202と、送血カニューレアセンブリ21と、脱血カニューレアセンブリ23と、を備える。酸素供給器201と血液ポンプ202は、患者の体外に配置される。また、送血カニューレアセンブリ21は、脱血カニューレアセンブリ23の対側に留置される。本発明の一実施形態では、脱血カニューレアセンブリ23は、脱血バルーン208、脱血オクルーダ210、および/または脱血リザーバ212を有し得る。本発明の他の実施形態では、送血カニューレアセンブリ21は、送血バルーン207、送血オクルーダ205、および/または送血リザーバ203を有し得る。
【0019】
これらの2つの図面では、IVC(下大静脈)104に脱血カニューレ209が留置されており、その脱血カニューレ209に脱血バルーン208が装着されている。脱血オクルーダ210と脱血リザーバ212は、患者の体外に配置されて、脱血ECMO管類211に接続されている。また、送血カニューレ206、送血バルーン207、送血オクルーダ205、および送血リザーバ203は、同様に、SVC(上大静脈)または体外のいずれかに配置される。
留意すべきことは、外科手術の設定では、送血カニューレ206と脱血カニューレ209を、図1および2に開示している設定とは反対の挿入部位に、逆に入れ替え可能であることである。実際の応用では、カニューレアセンブリ21、23は両方とも、本明細書で提示している同じ制御方法およびハードウェアシステムを用いてアクティブ制御が可能である。
【0020】
上記の流量調整システムに関連した制御動作について以下で説明する。
【0021】
[心拡張期]
1.心拡張期には、RA102とRV105との間の三尖弁103は開いている。三尖弁103が開く前に、RV105への流入に備えて、可能な限り多くの酸素化血液をRA102に充満させなければならない。RA102に予め貯留された酸素化血液は、三尖弁103が開いている間に、RV105に最大限に流入して充満可能である。その結果、次の心収縮期に肺循環するように肺動脈109および肺に放出される最大限の酸素化血液量を、RV105に予め準備できる。
【0022】
2.三尖弁103が開く前の収縮末期、および三尖弁103が開く次の拡張期には、SVCおよびIVC104のそれぞれからの静脈還流を妨げるためにバルーン207、208を膨張させ、これにより、RA102への脱酸素化血液の流入を防ぎつつ、RA102に酸素化血液を流入させる送血カニューレ206のための余地を与える。
【0023】
3.ECMO流出端からの酸素化血液がRA102に流入可能とするために、送血カニューレアセンブリ21の送血オクルーダ205を開放する。対流および混合に時間を要することから、酸素化血液によるRA102のパージを、三尖弁103が開くよりも前に少し早く開始させなければならない。この短いパージ期間中は、2つのオクルーダ205、210を開放した状態で、両方のバルーン207、208を膨張させる。これにより、RA102に貯留された混合血液と、心収縮期に予め送血リザーバ203に貯留された酸素化血液は、強く放出されて、その結果、酸素化血液は、RV105への流入に備えて、最大限にRA102に充満する。
【0024】
4.RA102内の酸素化血液がECMO流入路に引き込まれることを防ぐために、脱血カニューレ209上の脱血オクルーダ210を閉鎖する。RA102の「パージ」プロセスの完了直後に、ECMO脱血部位では、脱血オクルーダ210の閉鎖を開始して、拡張期の大部分にわたって閉鎖したままとする。その結果、酸素化血液がECMO回路に戻る再循環を、さらに減らすことができる。
【0025】
5.安定したECMO血液ポンプの連続動作を維持するために、先行する心収縮期の脱酸素化/混合血液がパッシブに充満された脱血部位の脱血リザーバ212は、脱血部位の脱血オクルーダ210が閉鎖されているときに、血液ポンプおよび酸素供給器に送るためのまとまった血液をECMO回路に供給する。
【0026】
[心収縮期]
1.心収縮期には、RA102とRV105との間の三尖弁103は閉じている。この期間に、静脈還流を最大限にECMO脱血路に引き込まなければならず、そして酸素化血液を生成するための酸素供給器に通過させるように血液ポンプで供給されなければならない。静脈還流は、それまでの拡張末期には妨げられていたので、上昇したIVC前負荷(圧力)によって、血液ポンプ流は加速され、ひいてはIVC静脈還流の引き込みが促進されて、次の拡張初期にRA102に戻すための酸素化血液に寄与する。
【0027】
2.心収縮期には、両方のカニューレアセンブリ21、23のバルーン208、207を収縮させて、SVCとIVC104の両方から静脈還流がRA102に流入して充満するように促す助けとなる低圧吸引力を発生させる。
【0028】
3.ECMO酸素化血液がRA102に流入するのを防ぐために、送血カニューレアセンブリ21の送血オクルーダ205を閉鎖する。このECMO送血オブストラクション期間は、酸素化血液は送血部位の送血リザーバ203に振り向けられる。この送血リザーバ203内の圧力は、貯留血液量の増加に伴って上昇し、次の心拡張期に送血オクルーダ205が解放されたときに送血リザーバ203から貯留血液を放出する助けとなるブースタ圧力勾配を確立する。
【0029】
4.RA102に貯留された静脈還流血液を受け入れるために、脱血カニューレアセンブリ23の脱血オクルーダ210を開放する。動作中の血液ポンプ202の助けを借りて、脱血カニューレ209から引き込まれた血液は、酸素化血液を生成するための酸素供給器201を通って流れる。一方、脱血カニューレアセンブリ23の脱血リザーバ212は、この収縮期に、さらに膨張して追加の脱酸素化血液で満たされることがあり、その後、次の心拡張期に、脱血部位の脱血オクルーダ210が閉鎖されているときに、安定したECMO流を維持するために、その貯留血液を放出する。
【0030】
5.血液ポンプ202の連続動作を維持するために、収縮期に送血オクルーダ205が閉鎖されているときに、ECMOから流出する酸素化血液を、送血カニューレアセンブリ21の送血リザーバ203にパッシブに貯留する。この送血リザーバ203に貯留された高圧血液は、次の拡張期に送血部位の送血オクルーダ205が解放されたときに、ブーストされるようにして放出される。
【0031】
本発明は、安定的かつ連続的な血液ポンプ動作を維持しつつ、再循環率を最小限に抑えることを目的として、ECG同期VV ECMOコントローラシステムに関連付けられた、脱血カニューレアセンブリ23および送血カニューレアセンブリ21に分散された6つの流量調整器を含む。例えば、それらの流量調整器は、2つのバルーン207、208、2つのオクルーダ205、210、および2つのリザーバ203、212を含み得る。バルーン207、208は、人体の静脈還流を調整する目的のものであり、オクルーダ210、205は、それぞれ脱血側と送血側でECMOカニューレ流を妨げるために用いられる。
リザーバ212、203は、それぞれ血液ポンプ202の前と酸素供給器201の後の体外に配置される。リザーバ212、203の制御は、連続的なECMOポンプ流を維持するために設定された要件に応じて、アクティブまたはパッシブのいずれかであり得る。バルーン207、208は、SVCまたはIVC104に留置されるので、鬱血が生じないための適切な血行力学的構成設計を検討すべき血液接触性のものである。オクルーダ205、210は、カニューレ206、209の内部または外部に装着可能であり、通常は体外式の非血液接触型オクルーダ設計が好ましい。ECG信号を基準として用いる開ループコントローラの制御ロジックを開発すべきである。理論的には、このアクティブ制御による流量調整システムは、単入力多出力コントローラである。その制御目的は、VV ECMOシステムの再循環率を最小限に抑えることである。実際の設計実現では、上記の6つのアクチュエータ(流量調整器)をすべて含むか、一部を選択するか、または様々な組み合わせでグループ化できる。それぞれの流量調整器に対して、ECG波形に関連した制御オンおよび制御オフのタイミングを、制御パラメータとして設定する。選択された流量調整器に含まれるすべての制御パラメータは、全体としてまとめて、再循環率を最小限に抑えるように同時に最適化される。
【0032】
図3Aに、本発明の制御ブロック図を示している。心収縮期の始まり、すなわちR波を検出可能なアルゴリズムで拡張されたデータ取得システムによって、典型的にはECG波形である心調律を連続的に受信する。図3Bは、それぞれの流量調整器に関連したトリガタイミング(制御オンまたは制御オフ)を概略的に示している。図3Bに示す方形波時系列の立ち上がりと立ち下がりは、それぞれ、調整器の制御オンと制御オフを表している。
それぞれの流量調整器について、その調整器のターンオンまたはターンオフは、R波に関連したタイミングである。このR波に対する時間遅延は、所定の制御入力パラメータである。このアクティブコントローラシステムには、最大12個の制御変数が関わっている。該当する流量調整器の制御オンおよび制御オフを指令することは、その全体または一部として、ECMOシステムの脱血カニューレアセンブリおよび送血カニューレアセンブリに装着されたバルーン、オクルーダ、およびリザーバの組み合わせグループを含み得る。再循環の評価は、模擬循環回路または動物実験を用いて実施できる。再循環率を最小限に抑える最適な制御入力パラメータセットを反復的に探索することにより、最適化トリガアルゴリズムを見つけて、このVV ECMO発明において実施できる。
【0033】
本発明の一実施形態では、体外流量調整システムは、空気ポンプ機構と、心調律を特徴付ける信号を受信可能な検知システムと、実装された制御ロジックおよび検知された心調律信号に従って指令を発行可能なコントローラと、を有し得る。制御ロジックは、心拡張期に右心室に流入する酸素化血液を最大限にするように最適化されるとともに、心収縮期に生命維持回路に抜き出される脱酸素化静脈還流を最大限にするように最適化されている。
【0034】
[実施形態I:付属バルーンを装備した脱血カニューレ]
図4Aおよび4Bは、本発明の実施形態Iによる脱血カニューレアセンブリの側面図である。図4Aは、1:1縮尺の脱血カニューレアセンブリを示しており、図4Bは、図4Aの拡大図である。実施形態Iでは、脱血カニューレアセンブリ上のバルーン、脱血側孔の装備を示す。
図5Aおよび5Bは、本発明の実施形態Iによる脱血カニューレアセンブリの長手方向断面図である。図5Cは、実施形態Iによる脱血カニューレアセンブリの断面図であり、制御空気用に割り当てられた小さいほうのルーメンと、血流用に割り当てられた大きいほうのルーメンを示している。
図6は、本発明の実施形態Iによる脱血カニューレのバルーンの長手方向断面図であり、バルーン装着部、空気流オリフィス、脱血側孔、およびX線不透過マーカを示している。様々に異なる図面に表示される類似の構成要素は、本明細書の全体を通して同様にラベル付けしている。
【0035】
脱血カニューレアセンブリ30は、主に2つの流路を有する。一方の流路は血液の伝送または引き込みが可能であり、他方の流路は、脱血バルーン311を膨張または収縮させるために脱血バルーン311に接続されている。例えば、これらの2つの流路は、脱血カニューレ301および脱血空気カテーテル310であり得る。脱血カニューレ301は第1のルーメンを形成しており、脱血空気カテーテル310は第2のルーメンを形成している。例えば、脱血空気カテーテル310は、脱血カニューレ301内に配置されることがある。少なくとも1つの実施形態では、脱血カニューレ301と脱血空気カテーテル310のそれぞれは、その側壁の一部に、脱血カニューレアセンブリ30の側壁に融合している部分を有し、さらに、脱血カニューレアセンブリ30のルーメンを仕切る隔壁を有する。脱血カニューレ301の下端(近位端)などの一端を、例えばタケノコ型クイックコネクタにより、簡便にECMO管類に連結できる。脱血カニューレ301の上端(遠位端)などの他端は、封止されたカニューレ端316で終端している。
脱血バルーン311は、脱血カニューレ301の封止カニューレ端316付近の円錐形延長部317の側壁に外側から装着されている。脱血バルーン体積312とその指定の体外コントローラシステムとの空圧連通は、脱血空気カテーテル310を介して、これがさらに側孔313が穿設された円錐形延長部317に連通していることで、実現されている。脱血空気カテーテル310は、封止カニューレ端316から遠位の位置で、脱血カニューレアセンブリ30から分岐している。例えば、脱血カニューレ301および脱血空気カテーテル310は、脱血カニューレアセンブリ30の一端に封止カニューレ端316を有して配置されている。脱血バルーン311および側孔303は、脱血カニューレアセンブリ30の先端領域に配置されている。空気カテーテル310については、側孔313が、脱血バルーン311内に配置されて、それらは封止カニューレ端316付近にある。脱血空気カテーテル310の分岐点は、脱血カニューレアセンブリ30が患者の体外に出る位置である皮膚切開位置に対して適切な距離で離れている。この図示の実施形態では、融合遷移領域は、増厚壁を有する脱血カニューレアセンブリ30の二股構造体によって強化および保護されている。
【0036】
複数の開口または脱血孔303が、脱血カニューレ301の長さに沿って配置されている。それらの脱血孔303は、脱血バルーン311の下のセグメント上に分散されている。この脱血孔303の配列は、静脈還流血液を最大限に引き込むために、スタガード配置で最適に形成されている。脱血孔の配列と分岐遷移領域との間のカニューレ壁302は、ポリマまたは金属のワイヤを用いてワイヤ補強されている。カニューレ端316は封止されているので、カニューレ末端305を封止することで、脱血孔303の周囲で局所的に鬱血が生じることを避けるためには、脱血カニューレ301の側壁の脱血孔303は、滑らかな内部取り込み傾斜路304を有するべきである。
【0037】
図6に示すように、脱血バルーン311は、脱血カニューレアセンブリ30の封止カニューレ端316に取り付けられた円錐形延長部317に外側から装着されている。脱血バルーン311の両側でインジケータ314、315が、脱血カニューレ301に結合されており、これらは、脱血カニューレ301に接合されたX線不透過材料または脱血カニューレ301と材料一体化されたX線不透過材料のいずれかで構成されている。バルーンを製造するために、限定するものではないが、シリコーンまたはポリウレタンのようなポリマ材料を使用できる。
バルーン体積312は、挿入される血管のサイズ、および静脈還流を妨げるように脱血バルーン311を膨張させたときに達成すべき目的の閉塞率に応じて、3〜15ccであり得る。脱血バルーン311と指定のコントローラとの空圧連通は、一端が流量調整器側で終端しているとともに他端が円錐形延長部317に接続されている脱血空気カテーテル310を介して、実現されており、制御指令に従って脱血バルーン311を収縮または膨張させるために、減圧空気または圧縮空気が、脱血空気カテーテル310の中を行き来する。
【0038】
SVCまたはIVCのいずれかに留置された脱血カニューレ301から、血液が引き抜かれる。IVC104とRA102との接合部に留置される場合の、この脱血カニューレの相対挿入位置を、図7に示している。
【0039】
この実施形態は、図1および2に示す動作原理の変形例である。留意すべきことは、図1および2では、バルーンに対して遠位の脱血バルーン311の端を介してのみ血液がECMO回路に流入する一方、ECMO回路流を調整するためにリザーバ212が脱血オクルーダ210と連携して機能する必要があるということである。脱血バルーン311の付近でカニューレ端316が封止されるとともに脱血孔303の配列が分散されている本実施形態では、ハードウェア実現ならびに制御設計を単純化するために、リザーバ212、203および/またはオクルーダ211、205を省略できる。
【0040】
RA102から流入する酸素化/混合血液を妨げるために脱血バルーン311を膨張させているときに、封止カニューレ端316が、ECMO回路への酸素化/混合血液の吸い込みを防ぐ助けとなることで、望ましくない再循環を抑制する。脱血バルーン311が膨張しているにもかかわらず、依然として、心拡張期に複数の脱血孔303から脱酸素化静脈還流を連続的に引き込み可能である。ノンストップの連続的ECMOポンプ動作を維持するためにリザーバ動作が必要となるような、静脈還流の脱血が完全に遮断される期間は、存在しない。
本実施形態では、カニューレ流オクルージョンの制御および静脈還流の調整は、実際には、封止端バルーンカニューレの制御という1つの機構に融合されている。脱血バルーン311が膨張しているときには、この脱血カニューレ209が留置されている部位に応じてSVCまたはIVCの静脈還流を引き込む脱血孔303によって脱血が促される。脱血バルーン311が収縮しているときには、IVCとSVCの両方の静脈還流を、この脱血カニューレ209に引き込み可能である。また、脱血バルーン311は、再循環するRA房室流を妨げるための流れブロッカとしても機能する。
脱血バルーン311の膨張に伴い、脱血バルーン311のオブストラクションによって生じる流れの減速/閉塞の結果としての局所的な高圧によって、送血される酸素化血流は三尖弁103のほうに振り向けられ、この流れ方向の変化は、加速されたRAプライミング流をRVが受けるための「プッシュプル」駆動力が全体として生じるRV筋弛緩および三尖弁開放に従ってバルーン膨張タイミングが適切に制御されると仮定して、最大限の酸素化血液によるRVプライミングにつながり得る。
【0041】
この脱血カニューレの実施形態と共に機能させて、従来よりも低再循環のVV ECMO回路を構成するために、(可動部品または流量調整器が装着されていない)通常の市販のシングルルーメン送血カニューレを使用できる。このような構成は、実際に、最も単純なアクティブ制御によるVV ECMO設定である。
【0042】
[実施形態II:緩く結合されたバルーンを装備した脱血カニューレ]
図8Aおよび8Bは、本発明の実施形態IIによる脱血カニューレアセンブリの側面図であり、シングルルーメン脱血カニューレに挿入されたときのバルーンカテーテルの関係を示している。図8Aは、1:1縮尺のカニューレアセンブリを示しており、図8Bは、図8Aの拡大図である。脱血カニューレアセンブリ40は、脱血カニューレ401と、脱血空気カテーテル414と、脱血Yコネクタ430と、を有する。
図9Aおよび9Bは、本発明の実施形態IIによる脱血カニューレアセンブリの長手方向断面図であり、カニューレアセンブリ内部に配置されたときの脱血空気カテーテルの詳細な内部関係を示している。図9Aは、1:1縮尺のカニューレアセンブリを示しており、図9Bは、図9Aの拡大図である。脱血カニューレ401は、脱血空気カテーテル414および脱血Yコネクタ430と結合されている。静脈還流を調整するアクティブ制御による流量オクルーダは、その構造的関係を図9Aおよび9Bに示す脱血バルーン415および脱血空気カテーテル414による助けを受ける。
図10は、実施形態IIによる脱血カニューレのバルーンの長手方向断面図であり、バルーン装着部、空気流オリフィス、脱血側孔、およびX線不透過マーカを示している。
図11は、実施形態IIによる脱血カニューレの脱血Yコネクタの長手方向断面図であり、Yコネクタにより提供される脱血空気カテーテル導入路および止血コントロールを示している。図11、12A、および12Bに詳細に示す脱血Y型コネクタ430は、血液漏出および空気侵入を伴うことなく脱血空気カテーテルを脱血カニューレ内に送達するための挿入アダプタを構成している。
【0043】
脱血カニューレアセンブリ40は、限定するものではないが、ポリウレタンまたはシリコーンのような生体適合性ポリマ材料で構成された薄壁の管である。本実施形態では、カニューレ先端416は開口しており、このカニューレ先端開口416に近接して穿設された複数の脱血孔403が、脱血カニューレ401の壁に沿って分散されている。脱血バルーン415が膨張しているか収縮しているかに関わりなく、これらの脱血孔403は、静脈還流を最大限に引き込むように構成されている。より低外傷の外科的挿入を実現するために、カニューレ壁は薄肉であるとともに、ワイヤ補強ユニット404を有し、キンクフリーでスムーズな挿入を実現可能としている。この脱血カニューレアセンブリ40の徐々に拡径させた下部は、流れ抵抗の低減を目的としており、さらに構造的遷移および脱血Yコネクタ430への連結も提供できる。
【0044】
脱血カニューレアセンブリ40に挿入された脱血空気カテーテル414を、図9Aおよび9Bに示している。脱血空気カテーテル414は、挿入前は概ね直線状であるが、脱血空気カテーテル414の屈曲性によって、脱血空気カテーテル414をその留置経路に沿って湾曲させることが可能であり得る。脱血空気カテーテル414は、主に、インナ(圧力検知)チューブ411とアウタ(空気伝達)チューブ412とを含むことができ、インナチューブ411はアウタチューブ412内に長さ方向に配置されている。この脱血空気カテーテル414の上端の周りに、ポリウレタンまたはシリコーンのようなポリマ材料で構成された脱血バルーン415がある。脱血バルーン415は、体外アクチュエータシステムにより制御されることで膨張または収縮が可能である。
図8A、8B、9A、9B、および10に、完全に膨張させた脱血バルーン415を示している。その形状は、浸漬マンドレルまたはブロー成形の金型に共形である。脱血バルーン415は、脱血空気カテーテル414にシームレスに接合または結合されている。
図10に、好ましいバルーン組み込み方法を示している。バルーンの遠位管状端とインナチューブ411および近位管状端とアウタチューブ412のシームレス接着結合を示している。インナチューブ411は、典型的には外径が約1mmのサイズである。このインナチューブの空間424に充填するために生理食塩水を注入可能であり、これにより液圧検知チャネルを形成し、さらに、ECMOサポート中の大静脈血圧の測定を容易とするために、先端孔423まで延長できる。バルーン体積417と体外コントローラとの空圧連通は、インナチューブ411とアウタチューブ412との間のルーメン空間を用いて実現する。挿入時に脱血バルーン415の所定位置への留置を助けるために、バルーン415の近位管状端422および遠位管状端421にX線不透過マーカが配置されている。カニューレ先端416は、インナチューブ411の遠位端のキャップで被包されており、カテーテルの留置中に血管を傷つけないように滑らかなプロファイルを形成している。
【0045】
図12Aおよび12Bに示すように、脱血Y型コネクタ430は、主に、Y字型本体431と、止血用Yスリットテーパ433と、プラグ432と、ロックキャップ434と、を含む。脱血Yコネクタ430の第1枝は、2方向にそれぞれ、脱血カニューレ401とECMO管類402に結合されており、これらは協働で、IVCまたはSVCのいずれかから静脈還流を引き込むための脱血路を構成している。
プラグ432は、脱血Yコネクタ430の第2枝の中に配置されており、これは、Yスリットテーパ433と協働して、脱血空気カテーテル414の留置および設置のためのシール機構を形成する。プラグ432およびYスリットテーパ433は、主に、シリコーンまたはゴムのような弾性の変形可能なポリマ材料で構成される。このプラグ432は、一方の側で、脱血カニューレ内壁に対して面一に取り付けられる。脱血空気カテーテル414が脱血カニューレ401に進入する場所である、この血液接触プラグ面を構成するためには、滑らかかつ連続的な流体力学的境界が一般的に必要である。その目的は、カテーテル・カニューレ境界周辺の不連続面において血栓が形成される可能性を最小限に抑えることである。このプラグ432の他端は、止血弁として機能するためのYスリットテーパ433を収容している。
【0046】
脱血空気カテーテル414の留置は、最初に脱血空気カテーテル414をYスリットテーパ433に挿通してから、脱血空気カテーテル414をプラグ432のチャネル壁に抗して押し込むことにより行う。脱血空気カテーテル414の外壁とプラグ432のチャネルとの間の適切な間隙は、スムーズであるが漏れのないバルーンカテーテル留置を実現するように設計されなければならない。ロックキャップ434は、図11に示すように、Y字型本体431に螺合される。ネジを締め付ける周回数によって、止血用Yスリットテーパ433に対して制御された圧縮力を作用させることにより、このロックキャップ434は、様々に異なるシール効果を提供できる。
脱血空気カテーテル414を挿入する際には、脱血空気カテーテル414と脱血バルーン415との係合を助けるために、最初にロックキャップ434を緩める。このとき、キャップを締め付けた結果として圧縮されるテーパ433によって、脱血空気カテーテル414の挿入時にカテーテル・カニューレ境界の縁から逆流する血液を封止して、止血が確保される。ECMOポンプが作動しているときには、血液を引き込むための、カニューレの長さに沿った負の圧力勾配が生じる。脱血Yコネクタ430周辺の血圧は、概して大気圧よりも低い。従って、周囲空気が血流中に吸い込まれることを防ぐために、止血用Yスリットテーパ433により提供される密封シールが必要である。密封テーパシールの不良は、命に関わる空気塞栓によって患者を危険にさらす場合がある。
【0047】
本実施形態IIの実際の応用では、カニュレーション手技は2ステップで実施される。第1のステップは、針、ガイドワイヤ、イントロデューサからなる器具セットを使用して、脱血カニューレ401を埋め込むことである。この手技は、IVCまたはSVCのいずれかの部位からECMOシステムのシングルルーメン・カニューレを挿入するために外科医が臨床的に実施しているのと同じ一般的な方法である。
第2のステップは、脱血空気カテーテル414を留置することである。脱血空気カテーテル414上のバルーン415は、止血用Yスリットテーパ433の入口に挿通させる準備として、より低プロファイルに収縮させる。脱血空気カテーテル414の受け入れを助けるために、最初にロックキャップ434を緩めて、脱血空気カテーテル414がプラグ432を通り抜け、脱血カニューレ401に沿って進み、最終的に所望の位置に到達して、そこでカニューレ先端416の開口の外側に脱血バルーン415が適切に留置された後に、ロックキャップ434を締める。ステップ1および2の留置を実施するための正確なナビゲーションを得るために、イメージングシステムを用いることができる。
図13は、IVCとRAとの接合部における本実施形態IIの挿入および留置を示している。
【0048】
[実施形態III:オクルーダを装備した送血カニューレ]
本実施形態IIIの送血カニューレアセンブリ50を、図14Aおよび14Bに概略的に示している。図14Aは、1:1縮尺のカニューレアセンブリを示しており、図14Bは、図14Aの拡大図である。
図15Aおよび15Bは、実施形態IIIの送血カニューレアセンブリの断面図であり、送血カニューレおよびECMO管類に対するオクルーダ、リザーバの詳細な組み込みを示している。図15Aは、1:1縮尺の送血カニューレアセンブリを示しており、図15Bは、図15Aの拡大図である。送血カニューレアセンブリ50は、送血カニューレ501と、オクルーダモジュール520と、空気圧ライン524と、ECMO管類511と、を有し、オクルーダモジュール520は、送血カニューレ501とECMO管類511との間にそれぞれ直列接続されている。オクルーダモジュール520は、閉塞室523内に配置されたオクルーダ525と、リザーバ522と、を含む。本発明の一実施形態では、オクルーダ525は送血カニューレ501に接続されており、リザーバ522はECMO管類511に接続されている。送血カニューレ501は、実施形態IIで開示されたもののような一般的なシングルルーメン・カニューレである。
オクルーダ(送血オクルーダ)525、205、210と、(送血)リザーバ522、203、212は、流れ抵抗を最小限に抑えるために直列に整列されることがあり、その場合、送血流量制御は、オクルーダ(送血オクルーダ)525、205、210の断面の圧縮または拡張により調整されてよく、このとき、オクルーダ(送血オクルーダ)525、205、210の動作に応じて、パッシブリザーバ522、203、212が連係することで、結果的に、生命維持システムにおいて連続的な血液ポンプ流が得られる。先端開口504と、送血カニューレ501に穿設された側孔503は、血流の送り込みのために設けられている。例えば、先端開口504は、送血カニューレ501の一端に配置されており、側孔503は、送血カニューレ501の側壁に配置されている。この場合は送血カニューレ501内の血流を妨げるように設計されているオクルーダ525は、壁厚分布を有する可撓管である。この管が空気圧縮を受けると、閉塞室523内に収容されている送血オクルーダ525はピンチされて、その断面積が縮小されることにより、送血流を妨げる。このとき、これに応じて、送血リザーバ522は、閉塞された流量を受けるように拡張して、ECMO回路流の連続作動が可能となる。
本実施形態の送血流量制御は、実際には、図1および2で説明および図示したオクルーダおよびリザーバの動作に関連した機能を組み合わせている。リザーバ容量は、体外流量調整システムにより提供されるアクティブなオクルージョン流量制御に連携して、パッシブに応答する。
【0049】
この流量オクルーダモジュールの詳細な構造を、図16および17に示している。図16は、心拡張期のオクルーダおよびリザーバの動作を示しており、このとき、オクルーダはその全開状態にあり、リザーバは伸張されないままの状態である。図17は、心収縮期のオクルーダおよびリザーバの動作を示しており、このとき、オクルーダはその全閉状態にあり、リザーバは、ECMO回路流を受けるために、大きく拡張されている。このオクルーダサブシステムは、主に、タケノコ型アダプタ521と、オクルーダモジュール520と、空気圧室527と、タケノコ型アダプタ526において空気圧室527に連結された空気圧ライン524と、を含む。オクルーダモジュール520の制御は、体外流量調整システムを用いて空気伝達を促すことによる指令による。ECMO管類511は、タケノコ型アダプタ521を介してオクルーダモジュール520に連結される。オクルーダモジュール520のオクルーダ525は、漏れの懸念なく、空気圧室527の両端に結合される。室構造は、可撓管と比較して、硬質または半硬質である。従って、空気圧室の圧力が調整されることで、オクルーダ525の断面積を制御可能である。送血カニューレ501は、閉塞室523の遠位端に連結され、その遠位端は、迅速なカニューレ連結のためにタケノコ状に実現されている。
【0050】
本発明の上記実施形態の体外生命維持システムは、バルーン207、208、311、415、オクルーダ(モジュール)205、210、525、またはリザーバ203、212、522を備えるのみでもよい。心収縮期に生命維持回路に引き抜かれる脱酸素化静脈還流を最大限にするとともに、心拡張期に右心室に流入する酸素化血液を最大限とするために、バルーン207、208、311、415、オクルーダ(モジュール)205、210、525、および/またはリザーバ203、212、522を、患者の心調律に従って作動させることができる。
【0051】
本発明は、本明細書で開示および説明された発明の基本的な制御原理から逸脱することなく、他の特定の形態で実施されてよい。記載した実施形態は、あらゆる点で単なる例示的なものとみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。請求項の均等の意味および範囲内でのあらゆる変更は、それらの請求項の範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17