(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化反応触媒を含有した熱伝導性シートは、シリコーンゴムシート、シリコーンゲルシート、天然ゴムシート、合成ゴムシート及びパラフィンシートから選ばれる少なくとも一つのシートである請求項1〜3のいずれに記載の熱伝導性シート。
前記硬化反応触媒を含有した熱伝導性シート及び前記未硬化組成物には熱伝導性フィラーが混合されており、全体として熱伝導率が0.5W/mK以上である請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導性シート。
前記熱伝導性未硬化組成物は、パテシート、リボン、又はディスペンサー、シリンジ及びチューブから選ばれる少なくとも一つの容器から押し出された状態である請求項1〜9のいずれかに記載の熱伝導性硬化シート。
前記硬化反応触媒を含有した熱伝導性シートの少なくとも一主面に、硬化反応触媒を含有しない熱伝導性未硬化組成物を接合した状態で電気・電子部品に組み込む請求項11に記載の熱伝導性シートを用いた実装方法。
前記硬化反応触媒を含有した熱伝導性シートの少なくとも一主面に、硬化反応触媒を含有しない熱伝導性未硬化組成物を接合した電気・電子部品を圧着する請求項11に記載の熱伝導性シートを用いた実装方法。
前記硬化反応触媒を含有した熱伝導性シートに電気・電子部品を接合しておき、この状態で、前記熱伝導性シートの少なくとも一主面に熱伝導性未硬化組成物に圧着する請求項11に記載の熱伝導性シートを用いた実装方法。
前記熱伝導性未硬化組成物は、パテシート、リボン、ディスペンサーに収納、シリンジに収納及びチューブに収納された状態で実装工程に供給される請求項11〜15のいずれかに記載の熱伝導性シートを用いた実装方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、硬化触媒を含有した熱伝導性シートの少なくとも一主面に、硬化触媒を含有しない熱伝導性未硬化組成物を積層し、前記未硬化組成物を硬化させるための熱伝導性シートである。硬化触媒を含有した熱伝導性シート内には、未硬化組成物を硬化するための付加反応系触媒を含む。そして、電気・電子部品等へ実装する直前に、未硬化組成物を熱伝導性シートに接合又は塗布などが可能である。未硬化組成物は自由な変形が可能であり、発熱部及び/又は放熱部の凹凸に追従しやすい。また、実装後は、硬化触媒を含有した熱伝導性シート内に含まれる付加反応又は縮合反応触媒により、未硬化組成物は硬化される。さらに、未硬化組成物を、付加反応又は縮合反応触媒を含有した熱伝導性シートに接合した後も熱伝導性シートの表面は吸引が可能であり、自動実装機を用いたピックアンドプレース実装が可能となる。
【0012】
硬化触媒を含有した熱伝導性シート内に含まれる硬化触媒によって硬化される未硬化組成物の硬化機構は、脱酢酸、脱オキシム、脱アルコール等の縮合型、ヒドロキシル化による付加反応硬化型、いずれであってもよいが、周辺への腐食性がないこと、系外に放出される副生成物が少ないこと、深部まで確実に硬化することなどの理由により付加反応硬化型であることが好ましい。
【0013】
付加反応系触媒は白金族金属触媒であるのが好ましい。白金族金属触媒としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として公知の触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。
【0014】
前記未硬化組成物を硬化するための付加反応系触媒量はポリマー成分に対して1〜3500ppmが好ましく、より好ましくは5〜2000ppm、さらに好ましくは7〜700ppmである。硬化触媒を含有した熱伝導性シートと未硬化組成物を塗布及び/又は加圧圧着すると、硬化触媒を含有した熱伝導性シート内の反応触媒は、未硬化組成物を硬化させる。この機構は、硬化触媒を含有した熱伝導性シートに含有される反応触媒が未硬化組成物に浸透、拡散し、未硬化組成物を硬化させることによる。このため、熱伝導性シートと未硬化組成物との層間は、硬化により一体化する。
【0015】
硬化触媒を含有した熱伝導性シートは、シリコーンガム、シリコーンゴム、シリコーンゲル、天然ゴム、合成ゴム及びパラフィンから選ばれる少なくとも一つの材質からなるシートが好ましい。これらは硬化物であっても、硬化してなくてもよいが、長期信頼性の観点から硬化シートであることが好ましい。また、シリコーンゴム硬化シート及びシリコーンゲル硬化シートは耐熱性が高いことからさらに好ましい。
【0016】
未硬化組成物は、未硬化のシリコーンガム、シリコーンゴム、シリコーンゲル、シリコーングリース、シリコーンオイルのコーティング体、接着シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム及びパラフィンから選ばれる少なくとも一つの未硬化組成物が好ましい。この中でも未硬化のシリコーンゴム、シリコーンゲル、シリコーングリース、シリコーンオイル、接着シリコーンゴムは耐熱性が高いことからさらに好ましい。
【0017】
硬化触媒を含有した熱伝導性(硬化)シート及び未硬化組成物には、熱伝導性フィラーが混合されているのが好ましい。熱伝導性フィラーは、電気伝導性フィラー、電気絶縁性フィラー等があるが、どちらでもよい。電気伝導性のフィラーとしては、カーボンブラック等の炭素粉末又は金属粉末がある。金属粉末の場合は表面抵抗が1Ω/□以下の物がよく、具体的には金、銀、白金、銅、ニッケル、鉄、パラジュウム、コバルト、クロム、アルミニウム等の金属類やステンレス等の合金類からなる粉末、又は電気抵抗を低減する為に表面を金、銀、等の貴金属で被覆した金属粉末を用いるのが好ましい。電気絶縁性フィラーとしては、アルミナ,酸化亜鉛,酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、水酸化アルミ、石英又はシリカが好ましい。形状は球状,鱗片状,多面体状等様々なものを使用できる。アルミナを使用する場合は、純度99.5重量%以上のα−アルミナが好ましい。熱伝導性粒子の比表面積は0.06〜10m
2/gの範囲が好ましい。比表面積はBET比表面積であり、測定方法はJIS R1626にしたがう。平均粒子径を用いる場合は、0.1〜100μmの範囲が好ましい。平均粒子径は、レーザー回折光散乱法による粒度分布測定において、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)である。この測定器としては、例えば堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA−950S2がある。前記シリコーンシートは、熱伝導率が0.5W/mK以上であるのが好ましい。好ましい熱伝導率は0.7W/mK以上である。
【0018】
硬化触媒を含有した熱伝導性シートの厚みは0.1〜1.5mmが好ましい。未硬化物の厚みはシート状であれば0.5〜3.0mmが好ましい。また、棒状であれば直径0.5〜3.0mm、長さ50〜300mm、リボン状であれば厚さ0.5〜3.0mm、幅5〜50mm、塗りつけるのであれば厚さ0.5〜3.0mmが好ましい。前記の範囲であれば、発熱性電気・電子部品に組み込むのに都合がよい。
【0019】
硬化触媒を含有した熱伝導性シートの上下面にはカバーフィルムが配置されているのが好ましい。上下面にカバーフィルムが配置されていると、取り扱い性が良く、シリコーンシートの保護としての機能もある。このシリコーンシートを、自動実装機を用いてピックアンドプレース実装する際には、前記上下面のカバーフィルムの少なくとも一方を剥離し、キャリアテープの上に配列し自動実装機に供給される。
【0020】
熱伝導性未硬化組成物は、硬化後粘着性を有することが好ましい。硬化後に粘着性があると、未硬化組成物の硬化後の粘着性により、前記未硬化組成物と前記未硬化組成物に接触する物体を接合できる。前記熱伝導性未硬化組成物の硬化後の粘着性は、タッキネスチェッカーで0.5N以上が好ましく、より好ましくは1.0N以上、さらに好ましくは1.5N以上である。
【0021】
前記熱伝導性未硬化組成物は、パテシート、リボン、又はディスペンサー、シリンジ及びチューブから選ばれる少なくとも一つの容器から押し出された状態であるのが好ましい。このためには、前記熱伝導性未硬化組成物は、パテシート、リボン、ディスペンサーに収納、シリンジに収納及びチューブに収納された状態で実装工程に供給される。
【0022】
本発明の実装方法は、一例として下記の方法がある。
(1)硬化反応触媒を含有した熱伝導性シートの少なくとも一主面に、熱伝導性未硬化組成物を接合し、この状態で電気・電子部品に組み込み、しかる後、硬化反応触媒を含有した熱伝導性シート内の反応触媒により、未硬化組成物を硬化させる。
(2)硬化反応触媒を含有した熱伝導性シートの少なくとも一主面に、熱伝導性未硬化組成物を接合した電気・電子部品を圧着し、しかる後、硬化反応触媒を含有した熱伝導性シート内の反応触媒により、未硬化組成物を硬化させる。
(3)硬化反応触媒を含有した熱伝導性シートを接合した電気・電子部品を、熱伝導性未硬化組成物に圧着し、しかる後、硬化反応触媒を含有した熱伝導性シート内の反応触媒により、熱伝導性未硬化組成物を硬化させる。
【0023】
未硬化組成物を硬化させる時間は、室温で4〜48時間が好ましく、より好ましくは室温で12〜24時間である。前記の範囲であれば、実装の効率化が図れる。一例として、硬化触媒を含有した熱伝導性シートと未硬化組成物を貼り合わせ積層したシリコーンシートを、自動実装機を用いてピックアンドプレース実装する。この装置は、例えばエアー圧力吸脱着式ピックアンドプレースが使用できる。
【0024】
未硬化組成物は下記組成のコンパウンドが好ましい。
(A)ベースポリマー成分:1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン:100重量部
(B)架橋成分:1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、前記A成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、1モル未満の量
(C)熱伝導性粒子:A成分100重量部に対して100〜3000重量部
硬化触媒を含有した熱伝導性シリコーンシートは、下記コンパウンドが好ましい。
(D)ベースポリマー:付加反応硬化型又は過酸化物硬化型シリコーンゴム或いはシリコーンゲル100重量部
(E)白金系金属触媒:D成分に対して重量単位で1〜3500ppm(硬化有効量の10〜35000倍)。
(F)熱伝導性粒子:D成分100重量部に対して100〜3000重量部
【0025】
以下、各成分について説明する。
(1)ベースポリマー成分(A成分)
ベースポリマー成分は、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンであり、アルケニル基を2個含有するオルガノポリシロキサンは本発明の未硬化組成物における主剤(ベースポリマー成分)である。このオルガノポリシロキサンは、アルケニル基として、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に2個有する。粘度は25℃で10〜1000000mPa・s、特に100〜100000mPa・sであることが作業性、硬化性などから望ましい。
【0026】
具体的には、下記一般式(化1)で表される1分子中に平均2個以上かつ分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンを使用する。25℃における粘度は10〜1000000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0028】
式中、R
1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
2はアルケニル基であり、kは0又は正の整数である。ここで、R
1の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられる。R
2のアルケニル基としては、例えば炭素原子数2〜6、特に2〜3のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。一般式(1)において、kは、一般的には0≦k≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦k≦2000、より好ましくは10≦k≦1200を満足する整数である。
【0029】
A成分のオルガノポリシロキサンとしては一分子中に例えばビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6のケイ素原子に結合したアルケニル基を3個以上、通常、3〜30個、好ましくは、3〜20個程度有するオルガノポリシロキサンを併用しても良い。分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれの分子構造のものであってもよい。好ましくは、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、25℃での粘度が10〜1000000mPa・s、特に100〜100000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0030】
アルケニル基は分子のいずれかの部分に結合していればよい。例えば、分子鎖末端、あるいは分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合しているものを含んでも良い。なかでも下記一般式(化2)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ1〜3個のアルケニル基を有し(但し、この分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基が、両末端合計で3個未満である場合には、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合したアルケニル基を、(例えばジオルガノシロキサン単位中の置換基として)、少なくとも1個有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって、上記でも述べた通り25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0032】
式中、R
3は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基であって、少なくとも1個がアルケニル基である。R
4は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
5はアルケニル基であり、l,mは0又は正の整数である。ここで、R
3の一価炭化水素基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0033】
また、R
4の一価炭化水素基としても、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、上記R
1の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。R
5のアルケニル基としては、例えば炭素数2〜6、特に炭素数2〜3のものが好ましく、具体的には前記式(化1)のR
2と同じものが例示され、好ましくはビニル基である。
l,mは、一般的には0<l+m≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦l+m≦2000、より好ましくは10≦l+m≦1200で、かつ0<l/(l+m)≦0.2、好ましくは、0.0011≦l/(l+m)≦0.1を満足する整数である。
【0034】
(2)架橋成分(B成分)
本発明のB成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、この成分中のSiH基とA成分中のアルケニル基とが付加反応(ヒドロシリル化)することにより硬化物を形成するものである。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有するものであればいずれのものでもよく、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は2〜1000、特に2〜300程度のものを使用することができる。
【0036】
上記の式中、R
6は互いに同一又は異種の水素、アルキル基、フェニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アルコキシ基であり、少なくとも2つは水素である。Lは0〜1,000の整数、特には0〜300の整数であり、Mは1〜200の整数である。
【0037】
(3)触媒成分(E成分)
E成分の触媒成分はヒドロシリル化反応に用いられる触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。D成分に対して重量単位で1〜3500ppm(硬化有効量の10〜35000倍)添加するのが好ましい。
【0038】
(4)熱伝導性粒子(C及びF成分)
C及びF成分の熱伝導性粒子は、マトリックス成分であるA成分100重量部に対して100〜3000重量部添加するのが好ましい。これにより熱伝導率を高く保つことができる。熱伝導粒子としては、アルミナ,酸化亜鉛,酸化マグネシウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、水酸化アルミ、石英及びシリカから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。形状は球状,鱗片状,多面体状等様々なものを使用できる。アルミナを使用する場合は、純度99.5重量%以上のα−アルミナが好ましい。熱伝導性粒子の比表面積は0.06〜10m
2/gの範囲が好ましい。比表面積はBET比表面積であり、測定方法はJIS R1626にしたがう。平均粒子径を用いる場合は、0.1〜100μmの範囲が好ましい。粒子径の測定はレーザー回折光散乱法により、メディアン径を測定する。この測定器としては、例えば堀場製作所製社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA−950S2がある。
【0039】
熱伝導性粒子は平均粒子径が異なる少なくとも2つの無機粒子を併用してもよい。このようにすると大きな粒子径の間に小さな粒子径の熱伝導性無機粒子が埋まり、最密充填に近い状態で充填でき、熱伝導性が高くなるからである。
【0040】
無機粒子は、R
aSi(OR’)
3-a(Rは炭素数1〜20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1〜4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるシラン化合物、もしくはその部分加水分解物で表面処理するのが好ましい。R
aSi(OR’)
3-a(Rは炭素数1〜20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1〜4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物(以下単に「シラン」という。)は、一例としてメチルトリメトキシシラン,エチルトリメトキシシラン,プロピルトリメトキシシラン,ブチルトリメトキシシラン,ペンチルトリメトキシシラン,ヘキシルトリメトキシシラン,ヘキシルトリエトキシシラン,オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン,ヘキサデシルトリメトキシシラン,ヘキサデシルトリエトキシシラン,オクタデシルトリメトキシシラン,オクタデシルトリエトキシシラン等のシラン化合物がある。前記シラン化合物は、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、アルコキシシランと片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。平均粒子径2μm以上の粒子は、粒子全体を100重量%としたとき50重量%以上添加するのが好ましい。
【0041】
(5)付加反応硬化型又は過酸化物硬化型シリコーンゴム或いはシリコーンゲル(D成分)
適用される熱硬化型シリコーンゴム或いはゲルは、ジメチルシリコーンゴム或いはゲル、メチルビニルシリコーンゴム或いはゲル、メチルフェニルビニルシリコーンゴム或いはゲル、フロロシリコーンゴム或いはゲル等に適用できる。一般にシリコーンゴム或いはゲルには、必要に応じ種々の充填剤、添加剤が使用されているが、これらも特に制限なく、シリカゲル、アエロジル#200(商品名)に代表される補強性シリカ、セライトに代表されるけい藻土、また、必要に応じ、加工助剤や難燃付与剤、耐熱性向上剤、可塑性、顔料等の添加剤を使用してもよい。また、シリコーンゴム或いはゲルの硬化系は付加反応硬化型、過酸化物硬化型どちらも使用でき、また、硬化していなくてもよい。
【0042】
(6)その他の成分
本発明の組成物には、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。例えばベンガラ、酸化チタン、酸化セリウムなどの耐熱向上剤、難燃助剤、フィラーの表面処理等の目的でアルキルトリアルコキシシランなどを添加してもよい。フィラー表面処理などの目的で添加する材料として、アルコキシ基含有シリコーンを添加しても良い。シランカップリング剤等の接着プロモーターを添加しても良い。着色、調色の目的で有機或いは無機顔料を添加しても良い。
【0043】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施形態におけるシリコーンゲルシートの斜視図である。このシリコーンゲルシートは、硬化シート1の表面に硬化触媒を含有しない未硬化シート2が、発熱性電子部品に実装される直前に接合されて、その後実装される。硬化シート1内には、未硬化シート2を硬化するための付加反応系触媒が過剰に含まれているため、実装後、例えば室温、24時間で未硬化シート2も硬化する。
【0044】
図2Aはシリコーンゲル未硬化組成物2の断面図、
図2Bは硬化シート1の断面図、
図2Cは電子部品5の発熱部へ実装する状態を示す模式的断面図である。硬化シート1及び未硬化シート2はそれぞれ保護フィルム3a,3b,4a,4bによって保護されており、発熱性電子部品5に実装される直前に、保護フィルム3b,4aが剥離され、積層される。保護フィルムは例えばポリエステル(PET)フィルムを使用する。実装時には未硬化シート2は自由な変形が可能であり、発熱性電子部品5の凹凸に追従して変形される。未硬化シート2側にはヒートシンク6を組み込むこともできる。硬化シート1内には未硬化シート2を硬化するための付加反応系触媒が過剰に含まれているため、実装後、例えば室温、24時間で未硬化シート2も硬化する。
【0045】
図3A−
図3Eは本発明の一実施形態の自動実装機を用いたピックアンドプレース実装の工程図である。
(1)
図3Aは自動実装機7をシリコーンシート1の表面まで移動した状態を示す説明図である。硬化シート1の下面には未硬化シート2が接合されている。硬化シート1と未硬化組成物2の積層体はキャリアテープ(図示省略)の上に配列され、1枚ずつ左側に送られる。右側の離れた位置には、配線基板10の上にCPUが搭載された電子部品11が配置されている。
(2)
図3Bは自動実装機先端部7のエアーを矢印8の方向に吸引し、硬化シート1を吸着した状態を示す説明図である。硬化シート1の下には未硬化組成物2が接合されている。
(3)
図3Cは硬化シート1を吸着した状態でCPUを搭載する電子部品11の上方まで移動した状態を示す説明図である。
(4)
図3Dは硬化シート1を電子部品11上に設置し、エアーを矢印9に示すように開放し、電子部品11上に硬化シート1と未硬化組成物2を実装した状態を示す説明図である。
(5)
図3Eは自動実装機先端部7を上に移動し、1サイクルを終了した状態を示す説明図である。
【0046】
図4Aは本発明の別の実施形態における熱伝導性シリコーンゴム硬化シート1の表面に未硬化組成物13bをディスペンサー12から押し出した状態を示す模式的断面図である。熱伝導性シリコーンゴム硬化シート1には未硬化組成物13bを硬化するための付加反応系触媒が過剰に含まれている。硬化シート1はヒートシンク6に貼り合わされている。ディスペンサー12には未硬化組成物13aが収納された状態で実装工程に供給される。
図4Bは未硬化組成物の上に電気・電子部品14を載せて圧着することにより、未硬化組成物層13cが形成されている模式的断面図である。この状態で未硬化組成物層13cが硬化すると硬化シート1と電気・電子部品14は接合される。
【0047】
図5Aは本発明のさらに別の実施形態における電気・電子部品15の表面に未硬化組成物13bをディスペンサー12から押し出した状態を示す模式的断面図、
図5Bは同、未硬化組成物13cを熱伝導性シリコーンゴムシート1の表面に接合する状態を示す模式的断面図である。電気・電子部品15のように表面に凹凸があっても未硬化組成物13cは追従する。
【0048】
図6−8は未硬化組成物を実装工程に供給する状態を説明する図である。
図6は本発明の一実施形態における棒状の未硬化組成物17をトレイ16上に配置して供給する状態を示す模式的斜視図である。
図7は本発明の別の実施形態における未硬化組成物をチューブ18に入れて供給する状態を示す模式的斜視図である。
図8は本発明のさらに別の実施形態におけるリボン状の未硬化組成物20をボビン19に巻いて供給する状態を示す模式的斜視図である。リボン状の未硬化組成物20には樹脂フィルムがラッピングされていてもよい。このほか、シリンジに入れて供給することもできる。
【0049】
図9Aは本発明の一実施形態における電気・電子部品21の模式的斜視図である。例えば変圧器、増幅器、電池等の電気・電子部品21の上にキャビティー(凹部)22を形成しておき、
図9Bに示すようにキャビティー22内に、棒状の未硬化組成物23を配置する。
図9Cに示すように、金属プレート24の上に熱伝導性シリコーンゴム硬化シート25を貼りつけておく。そして、
図9Dに示すように、
図9Bの電気・電子部品21を逆さにし、熱伝導性シリコーンゴム硬化シート25の上に未硬化組成物23を圧着させる。この状態で未硬化組成物層23が硬化すると、硬化シート25の上の未硬化組成物23を介して電気・電子部品21は金属プレート24に接合される。
【0050】
図10Aは本発明のさらに別の実施形態における電気・電子部品21の上に硬化シート25を配置した模式的斜視図、
図10Bは同、金属プレート24の上に未硬化組成物26をディスペンスした状態を示す模式的斜視図、
図10Cは同、金属プレート24の上の未硬化組成物26の上に電気・電子部品21の硬化シート25側を圧着させた状態を示す模式的部分断面図である。この状態で未硬化組成物層26が硬化すると、硬化シート25の上の未硬化組成物26を介して電気・電子部品21は金属プレート24に接合される。
【実施例】
【0051】
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜8、比較例1〜2)
(1)触媒含有シートの配合物1〜9の作成
表1〜2に示すように配合物1〜9を作成した。配合物1〜9に使用した各材料の内容は次のとおりである。
ベースポリマー:シリコーンポリマー、東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名"SE1185U"
ベースポリマー:シリコーンポリマー、ブルースターシリコーン社製、商品名"BS 621V350"
過酸化物硬化剤:シリコーン硬化剤、東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名" RC-4"
架橋剤:シリコーン架橋剤、ブルースターシリコーン社製、商品名"BS FLD 626V30H2.5"
架橋剤:シリコーン架橋剤、東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名"SH-1107"
硬化遅延剤:日信化学工業社製、商品名"オルフィンB"
硬化遅延剤:エチニルシクロヘキサノール
付加反応触媒:白金系触媒、東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名"SRX-212"
熱伝導性フィラー:アルミナ平均粒子径38μm、昭和電工社製、商品名"AS-10"
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
(2)未硬化組成物の配合物10〜12の作成
表3に示すように配合物10〜12を作成した。配合物10〜12に使用した各材料の内容は次のとおりである。
ベースポリマー:シリコーンポリマー、ブルースターシリコーン社製、商品名"BS 621V350"
架橋剤:シリコーン架橋剤、ブルースターシリコーン社製、商品名"BS FLD 626V30H2.5"
熱伝導性フィラー:アルミナ平均粒子径38μm、昭和電工社製、商品名"AS-10"
付加反応触媒:白金系触媒、東レ・ダウコーニングシリコーン社製、商品名"SRX-212"
【0055】
【表3】
【0056】
(3)触媒含有シートと未硬化組成物の接合
表4〜5に示すように、触媒含有シートと未硬化組成物を接合し、未硬化組成物の硬化が進むことによりグリース状の組成物の表面から付着、転写しなくなるまでの時間を調べた。各条件と評価は次のとおりである。
触媒含有シートの厚み:0.5mm
未硬化組成物の塗布厚み:2.0mm
【0057】
【表4】
【0058】
<粘着力の測定>
タッキネスチェッカー(東洋精機株式会社製)を用いて測定した。接触子を接触荷重5N、接触時間3秒で対象物に押しつけ、引き剥がした際の応力をロードセル方式で検出した。
<熱伝導率の測定>
熱伝導性シートの熱伝導率は、ホットディスク(ISO/CD 22007-2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置31は
図11Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ32を2個の試料33a,33bで挟み、センサ32に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ32の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ32は先端34が直径7mmであり、
図11Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極35と抵抗値用電極(温度測定用電極)36が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出する。
【0059】
【数1】
【0060】
【表5】
【0061】
以上の結果から次のことがわかる。
(1)実施例1と比較例1から、触媒含有シートに触媒を含まないと、未硬化組成物は硬化しない。
(2)実施例1〜4から、触媒シートの性状は、未硬化ゴム、付加硬化、ゲル、過酸化物加硫ゴム、付加硬化ゴムいずれでも良い。
(3)実施例5〜7から、未硬化組成物の硬化速度は触媒シートの触媒量で調整できる。
(4)実施例5、8、9から、未硬化組成物の硬化後の性状は未硬化組成物の配合で調整できる。
(5)比較例2から、触媒シートに架橋剤、未硬化組成物に触媒を入れても、架橋剤は浸透せず硬化しない。但し、未硬化組成物から触媒が浸透し触媒シートが硬化する。
本発明の熱伝導性シートは、硬化反応触媒を含有した熱伝導性シート1の少なくとも一主面に、硬化反応触媒を含有しない熱伝導性未硬化組成物2が接合されており、前記硬化反応触媒を含有した熱伝導性シート1は、前記熱伝導性未硬化組成物を硬化させるため必要な量の硬化反応触媒を含む。本発明の実装方法は、硬化反応触媒を含有した熱伝導性シート2の少なくとも一主面に、硬化反応触媒を含有しない熱伝導性未硬化組成物1を接合し、前記硬化反応触媒を含有した熱伝導性シート1の硬化反応触媒の拡散により、前記熱伝導性未硬化組成物を硬化させる。これにより、電子部品等へ実装する直前に、熱伝導性未硬化組成物を熱伝導性シートに接合でき、発熱部及び/又は放熱部の凹凸に追従しやすく、実装後に前記未硬化組成物を硬化することができる。