【実施例】
【0026】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
ここで、
図1は、本発明の実施例である高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置の概要を示す斜視図であり、
図2は、
図1の2A-2Aから視た一部断面を示す正面図であり、
図3は、
図1の3Bから視た平面図であり、
図4は、
図1に示す高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置の分解組立図であり、
図5は、本実施例で用いた高さ調整パッキンの斜視図であり、
図6は、本実施例で用いた高さ調整パッキンの組み付け動作図であり、
図7は、本実施例の高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置の施工前と施工後の比較図であり、
図8は、本実施例の高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置における雨水などの流れを示す図である。
【0027】
図1乃至
図4に示すように、本発明の一実施例である高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置100は、幅広で平底のレール底面R1を備えた逆T字型のレール断面を呈する長さ1mあたり重量60kgのレールRをコンクリート製まくらぎからなるレール支承体Sに締結するものであって、レールRのレール底面R1に敷設してレールRの振動を吸収するゴム製のレールパッド110と、レールRとレールパッド110とを包容してレールRに掛かる荷重を分散するタイプレート120と、このタイプレート120を載置した状態で重なり合ってレールRの振動を吸収するゴム製のタイプレートパッド130と、タイプレート120上に載置してレール支承体Sの平坦なレール設置用座面S1に向けてレールRの底部上面R2を押圧する左右一対の板ばねクリップ140、140と、この板ばねクリップ140とタイプレート120とタイプレートパッド130とにそれぞれ設けた締結用ボルト挿通孔141、121、131に順次挿通してレールRをレール支承体Sに固定する左右一対の締結用ボルト150、150と、レール支承体Sに埋め込んで締結用ボルト150、150とそれぞれ螺合する左右一対の埋込栓160、160と、レール設置用座面S1の左右両端部位にそれぞれ配置して板ばねクリップ140の中間湾曲部位を保持する左右一対のばね受け座台170、170と、タイプレートパッド130およびばね受け座台170、170とレール設置用座面S1との間に挿入する高さ調整パッキン180とで構成されている。
これにより、レールRをコンクリート製のレール支承体Sに締結することができる。
【0028】
ここで、本実施例の高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置100で用いるタイプレート120は、
図4に示すように、内面を平坦面とし、外面を傾斜面とした断面台形状を呈する一対の突部122、122を備え、これら一対の突部122、122の相互間に載置したレールRの横圧を受け止めるものであって、一対の突部122、122が上面に形成され、この上面の中間部には、板ばねクリップ140がレールRを押圧する際に突部上面に当接してレールRに対する押圧を阻止しないように板ばねクリップ140の幅よりも長い上面凹部が形成され、外面の中間部には外面凹部が形成され、一対の突部122、122の外側中央にはそれぞれ締結用ボルト挿通孔121が設けられ、この締結用ボルト挿通孔121の両側には一対の山形状の突起123、123が設けられている。
【0029】
そして、本実施例の高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置100で用いる板ばねクリップ140は、
図1及び
図2に示すように、U字状の中間湾曲部位142とこの中間湾曲部位142の上端から水平方向に延びる上方部位143と下端から水平方向に延びる下方部位144の二層構造とした板状体であって、上方部位143は端部をレールRの底部上面R2の形状に沿うように上向きに傾斜させるとともに、上方部位143の直線部に締結用ボルト150を貫通させる締結用ボルト挿通孔141が形成され、下方部位144が、U字状の中間湾曲部位142の端部から延びる直線部を備え、この直線部が先端に向かって二つに分岐し、分岐部間に締結用ボルト150が挿通し得る空間部が形成され、板ばねクリップ140を取り付けた際に分岐部がタイプレート120に設けられている山形の突起123、123の頂面にそれぞれ当接させる。
なお、上述した板ばねクリップ140をレールRに締結する締結用ボルト150は、C型弾性リング151とナット座金152とを用いて埋込栓160に螺着されることは言うまでもない。
【0030】
そして、タイプレートパッド130とばね受け座台170は、タイプレートパッド130およびばね受け座台170とレール設置用座面S1との間に挿入する高さ調整パッキン180に対して並置状態で着座している。
これにより、レールRの高さ調整をするため、レールを向上させ、必要な高さ調整量の厚さ分の高さ調整パッキン180を締結ボルト150に沿って、タイプレートパッド130とばね受け座台170の下に挿入し、レールRを底上げしても、レールRに対して当接する板ばねクリップ140の姿勢が確実に保持される。
【0031】
そこで、本実施例の高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置100が最も特徴とする高さ調整パッキン180について、更に詳しく説明する。
まず、高さ調整パッキン180は、
図5に示すように、平行四辺形状の外輪郭を備えたプレートからなり、締結用ボルト150に沿って誘導して板ばねクリップ140とタイプレート120とタイプレートパッド130とにそれぞれ設けた締結用ボルト挿通孔141、121、131に連通する左右一対のU字状切欠き部181、181を備えている。
これにより、
図6の矢印で示すように、高さ調整パッキン180をタイプレートパッド130およびばね受け座台170とレール設置用座面S1との間に挿入する際に、高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181が、締結用ボルト150に挿し込まれる。
【0032】
そして、高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181は、板ばねクリップ140とタイプレート120とタイプレートパッド130とにそれぞれ設けた締結用ボルト挿通孔141、121、131に連通している。
これにより、タイプレート120およびタイプレートパッド130の締結用ボルト挿通孔121、131内に滞留しがちな雨水などの水分が、高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181に向けて落下排水する。
また、高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181から流入した外気が、U字状切欠き部181内に滞留した湿気を排出して乾燥させるため、水分に起因して生ずる電蝕を未然に防止している。
【0033】
また、高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181は、
図6に示すように、レール支承体Sのレール設置用座面S1から連続して立ち上がった内方端壁面S2に沿って平行な挿入方向に開口している。
これにより、高さ調整パッキン180をタイプレートパッド130およびばね受け座台170とレール設置用座面S1との間に挿入する際に、高さ調整パッキン180が、レール支承体Sの内方端壁面S2に沿った方向に挿し込まれるため、高さ調整パッキン180を位置決めしつつ確実に挿着することができる。
【0034】
ここで、本実施例の場合、上述したコンクリート製のレール支承体Sの内方端壁面S2は、クサビ状のばね受け座台170が挿入してクサビ効果を奏することが可能なようにレール長手方向に対して所定の角度に傾斜した状態で平坦なレール設置用座面S1に連続形成されていることは言うまでもない。
【0035】
さらに、レール支承体Sのレール設置用座面S1は、
図7に示すように、高さ調整パッキン180によるレールRの底上げ代hを見込んだレール支承体Sの天面S3よりも低位置に形成されている。
これにより、高さ調整パッキン180によりレールを底上げしても、ばね受け座台170が、レール支承体S内から上方に突出することなく、レール支承体Sのレール設置用座面S1から連続して立ち上がった内方端壁面S2に規制された状態でレール支承体Sのレール設置用座面S1に着座するため、板ばねクリップ140を安定して支持することができる。
【0036】
高さ調整パッキン180は、レールRの底上げ代、すなわち、底上げ寸法hを補填する寸法になれば、厚さの異なる複数枚の高さ調整パッキン180で構成することも可能になるため、底上げ寸法hを細かく設定することができる。
【0037】
加えて、高さ調整パッキン180は、上り勾配の軌道では下り勾配方向に向かって挿入し、下り勾配の軌道では下り勾配方向に向かって挿入して、上り勾配あるいは下り勾配の軌道のいずれであっても、高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181が下り勾配方向に向かって開口するように配置する。
これにより、
図8の矢印で示すように、タイプレート120およびタイプレートパッド130の締結用ボルト挿通孔121、131内に滞留しがちな雨水などの水分が、高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181から流下して排水され、締結用ボルト150およびタイプレート120に生じがちな電蝕、すなわち、直流の電化区間で回帰電流がレール底部R1などから大地へ漏れてレールRと大地が接触している部分でレールRに生じる損傷を抑制することができる。
但し、
図8は、締結装置の周辺に降った雨水などの流れを概略的に示すもので、現実的に雨水などが矢印に沿って流れることを示す図ではない。
さらに、施工後の列車通過による振動が長期に亘って生じても、締結用ボルト150が、高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181に係止されるため、高さ調整パッキン180の抜け落ちを防止することができる。
【0038】
このようにして得られた本発明の一実施例である高さ調整可能なレール波状摩耗対策用締結装置100は、タイプレートパッド130とばね受け座台170とが、タイプレートパッド130およびばね受け座台170とレール設置用座面S1との間に挿入する高さ調整パッキン180に対して並置状態で着座していることにより、コンクリート製の道床、コンクリート製のまくらぎ等をそのままに、締結装置だけでレール高さの調整が可能であって、簡易な工事で軌道面の不陸を解消して、この軌道面の不陸で発生する列車の乗り心地の悪化の改善や、路盤振動増加の改善を短期間で、且つ、低コストにて行うことができ、その結果、レール頭部R3の高さ調整が簡便に達成され、列車走行時の騒音や振動を大幅に抑制することができる。
【0039】
そして、高さ調整パッキン180が、締結用ボルト150に沿って誘導して板ばねクリップ140とタイプレート120とタイプレートパッド130とにそれぞれ設けた締結用ボルト挿通孔141、121、131に連通するU字状切欠き部181を備えていることにより、高さ調整パッキン180を確実に挿着し、しかも、この高さ調整パッキン180のU字状切欠き部181が、板ばねクリップ140とタイプレート120とタイプレートパッド130とにそれぞれ設けた締結用ボルト挿通孔141、121、131に連通していることにより、締結用ボルト150およびタイプレート120に生じがちな電蝕と称する、直流の電化区間で回帰電流が、レール底部R1などから大地へ漏れてレールRと大地が接触している部分でレールRに生じる損傷を抑制することができるなど、その効果は甚大である。