(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
骨質が正常な複数の物体を被写体とした複数のCT撮影のデータから得られた、場所に応じた皮質骨厚を示す正常例群データと、評価対象である物体を被写体としたCT撮影のデータの濃度値とに基づいて、前記評価対象である物体を被写体としたCT撮影のデータに対して皮質骨と海綿骨との境界を設定し、前記境界に基づいて少なくとも一つのROI(Region of Interest)を設定する設定手段と、
前記評価対象である物体を被写体としたCT撮影のデータの前記ROI毎に、前記ROI内の濃度値に基づく評価用指標を生成し、前記評価用指標を用いて骨質を評価する評価手段と、
を備えることを特徴とする骨質評価装置。
前記評価対象である物体を被写体とした下顎骨下縁皮質骨がFOV(Field of view)に含まれるCT撮影の撮影データを再構成して得られる再構成ボリュームデータから下顎骨下縁に沿った方向と交差する複数枚のMPR(Multi Planar Reconstruction)像を評価断面候補列として生成する生成手段と、
前記評価断面候補列から1枚または複数枚の評価断面を選択する選択手段と、
を備え、
前記設定手段が前記評価断面に対して前記ROIを設定することを特徴とする請求項1に記載の骨質評価装置。
前記評価対象である物体を被写体としたCT撮影のデータから得られる、場所に応じた皮質骨厚が、前記正常例群データから定まる下限値以上且つ前記正常例群データから定まる上限値以下になるように、前記設定手段が前記境界を設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の骨質評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0021】
<1.骨質評価装置の構成>
図1Aは、本発明の一実施形態に係る骨質評価装置1の構成を示す図である。
【0022】
骨質評価装置1は、ROM12やHDD17に格納されているプログラムに従って骨質評価装置1全体を制御するCPU11と、固定的なプログラムやデータを記録するROM12と、作業メモリを提供するRAM13と、外部との通信を行うための通信インターフェース部14と、画像データを一時的に記憶するVRAM15と、VRAM15に記憶された画像データに基づいて画像を表示する表示部16と、詳細は後述するHDD17と、キーボード、ポインティングデバイス等の操作部18とを備えている。
【0023】
骨質評価装置1の通信インターフェース部14と外部との通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよく、有線と無線を組み合わせた通信であってもよい。骨質評価装置1としては、例えば、パーソナルコンピュータを挙げることができる。
【0024】
HDD17は、画像再構成処理プログラム、骨質評価プログラム、評価結果表示プログラム等の各種プログラム、及び、歯科用X線撮影装置によるCT撮影の撮影データ、上記画像再構成処理プログラムによって生成された再構成ボリュームデータ、正常例群データ、上記骨質評価プログラムによって生成された評価結果データ、各種プログラムを実行する際に用いられる各種パラメータの設定値等の各種データを記憶する。
【0025】
なお、正常例群データは、骨質が正常な複数の物体を被写体とした複数のCT撮影のデータから得られた、場所に応じた皮質骨厚を示すデータである。骨質が正常な複数の物体としては、例えば骨質が正常な複数の生体、骨質が正常な生体を模した複数種類のファントム等を挙げることができる。
【0026】
また、骨質評価装置1は、通信インターフェース部14を用いて外部から再構成ボリュームデータを取得し、その取得した再構成ボリュームデータをHDD17に記憶してもよい。外部から取得した再構成ボリュームデータをHDD17に記憶する構成とした場合、本実施形態とは異なりHDD17が画像再構成処理プログラム及びCT撮影時の撮影データを記憶しない構成にすることが可能である。
【0027】
画像再構成処理プログラムは、歯科用X線撮影装置によるCT撮影の撮影データを再構成して再構成ボリュームデータを生成するためのプログラムである。骨質評価プログラムは、骨質を評価するためのプログラムである。骨質の評価内容としては、例えば骨粗鬆症の病態の判定等を挙げることができる。評価結果表示プログラムは、骨質の評価結果を表示部16の表示画面に表示させる画像に対応する画像データを生成し、その作成した画像データに対応する画像を表示部16の表示画面に表示させるためのプログラムである。
【0028】
HDD17に記憶されている各プログラムは、骨質評価装置1にプリインストールされていてもよく、光ディスク等の記憶媒体に格納された形態で流通されて骨質評価装置1にインストールされてもよく、ネットワークを介して流通されて骨質評価装置1にインストールされてもよい。HDD17に記憶されている各プログラム及び各データの一部を、HDD17ではなくROM12に記憶するようにしてもよい。
【0029】
<2.骨質評価プログラムの機能>
図1Bは、HDD17に記憶されている骨質評価プログラムの機能ブロック図である。
【0030】
HDD17に記憶されている骨質評価プログラムは、CPU11で実行されることで骨質評価装置1のハードウェアを、評価断面候補列を生成する生成部171、評価断面を選択する選択部172、ROIを設定する設定部173、骨質を評価する評価部174、及び評価結果データを出力する出力部175として機能させる。
【0031】
生成部171は、評価対象である物体(例えば生体)を被写体とした下顎骨下縁皮質骨がFOVに含まれるCT撮影の撮影データを再構成して得られる再構成ボリュームデータから下顎骨下縁に沿った方向と交差する複数枚のMPR像を評価断面候補列として生成する。
【0032】
選択部172は、評価断面候補列から1枚または複数枚の評価断面を選択する。
【0033】
設定部173は、正常例群データと、評価対象である物体を被写体としたCT撮影のデータの濃度値とに基づいて、前記評価対象である物体を被写体としたCT撮影のデータに対して皮質骨と海綿骨との境界を設定する。さらに、設定部173は、設定した境界に基づいて少なくとも一つのROIを設定する。
【0034】
評価部174は、評価対象である物体を被写体としたCT撮影のデータのROI毎に、ROI内の濃度値に基づく評価用指標を生成する。さらに、評価部174は、生成した評価用指標を用いて骨質を評価する。
【0035】
出力部175は、評価部174の評価結果を出力する。
【0036】
<3.骨質評価装置の動作>
図2は、骨質評価装置1の動作を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートの動作主体は骨質評価装置1であるが、
図1Bに示した機能ブロックが実質的に動作主体になっている場合には
図1Bに示した機能ブロックを用いて説明を行う。
【0037】
骨質評価装置1はまず画像再構成処理プログラム、骨質評価プログラム、及び評価結果表示プログラムを起動させる。後述するステップS1は画像再構成処理プログラムが実行する処理であり、後述するステップS2〜S6は骨質評価プログラムが実行する処理であり、後述するステップS7は評価結果表示プログラムが実行する処理である。なお、本実施形態では画像再構成処理プログラム、骨質評価プログラム、及び評価結果表示プログラムを最初に起動させているが、骨質評価プログラム、及び評価結果表示プログラムはステップS1の段階ではまだ不要であるため、ステップS1よりも後の段階でそれぞれ必要となる前までに起動させてもよい。
【0038】
骨質評価装置1は、通信インターフェース部14を介して、下顎骨下縁皮質骨がFOVに含まれるCT撮影の撮影データを取得する。それから、骨質評価装置1は、その取得したCT撮影の撮影データを従来の一般的な再構成アルゴリズムによって再構成して再構成ボリュームデータを生成する(ステップS1)。
【0039】
なお、外部から取得した再構成ボリュームデータをHDD17に記憶する構成とした場合に、本実施形態とは異なりHDD17が画像再構成処理プログラム及びCT撮影時の撮影データを記憶しない構成にするのであれば、ステップS1の代わりに、骨質評価装置1が、通信インターフェース部14を介して、再構成ボリュームデータを取得するステップを実行すればよい。
【0040】
また、外部から取得した再構成ボリュームデータをHDD17に記憶する構成とした場合に、本実施形態と同様にHDD17が画像再構成処理プログラム及びCT撮影時の撮影データを記憶する構成にするのであれば、ステップS1の代わりに、骨質評価装置1が、通信インターフェース部14を介して、CT撮影の撮影データ又は再構成ボリュームデータを取得し、取得したデータがCT撮影の撮影データであれば再構成を行うステップを実行すればよい。
【0041】
再構成ボリュームデータは、
図3に示すようなボクセルVCの集合体である。ボクセルVCの2つの面はX軸に垂直であり、ボクセルVCの他の2つの面はY軸に垂直であり、ボクセルVCの残り2つの面はZ軸に垂直である。X軸が被写体である人の左右方向に沿い、Y軸が被写体である人の前後方向に沿い、Z軸が被写体である人の上下方向(体軸)に沿うようにCT撮影がなされている。したがって、
図3に示す再構成ボリュームデータから得られるMPR像の一つである最前層のコロナル像の各ピクセル値は、
図3に示す再構成ボリュームデータの最前層の各ボクセル値と同一の値になる。また、
図3に示す再構成ボリュームデータから得られるMPR像の一つである最右層のサジタル像の各ピクセル値は、
図3に示す再構成ボリュームデータの最右層の各ボクセル値と同一の値になる。また、
図3に示す再構成ボリュームデータから得られるMPR像の一つである最上層のアキシャル像の各ピクセル値は、
図3に示す再構成ボリュームデータの最上層の各ボクセル値と同一の値になる。ここで、MPR像とは、CT撮影の撮影データを再構成して得られる再構成ボリュームデータを任意の断面で切り出して得られる像のことをいう。MPR像の種類としては、上述したコロナル像、サジタル像、及びアキシャル像以外に、
図3に図示しているX軸、Y軸、及びZ軸のいずれにも垂直でないオブリーク像がある。
【0042】
ステップS1又はステップS1の代わり実行されるステップに続くステップS2において、生成部171は3つの下顎軸を算出する。具体的には、まず生成部171は、下顎下端断面であるアキシャル像から順にオトガイ孔を探索する。以下の説明で用いる各アキシャル像は人体の下側から上側に向かって見た像であるため、アキシャル像の左側が人体の右側に対応し、アキシャル像の右側が人体の左側に対応している。なお、各アキシャル像を人体の上側から下側に向かって見た像とし、アキシャル像の左側を人体の左側に対応させ、アキシャル像の右側を人体の右側に対応させてもよい。
【0043】
生成部171は、二値化されたアキシャル像において、高さH1の左端位置から右側に向かって皮質骨を探索し(
図4中の矢印A1参照)、皮質骨に行き当たった点(
図4中の点D1)からに下顎骨辺縁に沿ってオトガイ孔を探索する(
図4中の矢印A2参照)。高さH2の位置に達してもオトガイ孔が見つからなければ、1つ上の二値化されたアキシャル像に移って上記の処理を繰り返す。生成部171は、オトガイ孔が見つかれば、オトガイ孔が見つかった位置(オトガイ孔の下縁位置)を基準点とする。なお、二値化されたアキシャル像において、下顎骨の外側のみ縮小処理を施してもよい。これにより、オトガイ孔の探索精度向上が期待できる。
【0044】
次に、生成部171は、オトガイ孔が見つかったアキシャル像から所定数(例えば3つ)だけ下のアキシャル像において、上記基準点を真下に移動させた点(
図5中の点D2)での下顎骨辺縁の接線方向(
図5中の矢印A3の方向)を求める。下顎骨辺縁の接線方向は点D2を中央に含む下顎骨辺縁を示す所定数のピクセルの並びを最小二乗法で直線近似することによって求めることができる。
【0045】
さらに、生成部171は、アキシャル像に対して垂直であって且つ矢印A3に平行で矢印A3より所定距離Δ1だけ舌側に位置する断面C1を求め、断面C1を中心とする所定厚の断層を対象とした
図6に示すMIP(Maximum Intensity Projection)像を生成する。なお、断面C1は、アキシャル像に対して垂直であって且つ矢印A3に平行で頬側皮質骨と舌側皮質骨との中点(矢印A3に垂直で点D2を通る直線上での中点)を通る断面としてもよい。
【0046】
生成部171は、
図6に示すMIP像において、上記基準点を含むアキシャル像と後述する断面C2との交線上で上記基準点を所定距離Δ1だけ舌側に移動させた点を下顎骨辺縁まで真下に移動させた点(
図6中の点D3)での下顎骨辺縁の接線方向(
図6中の矢印A4の方向)を求める。下顎骨辺縁の接線方向は点D3を中央に含む下顎骨辺縁を示す所定数のピクセルの並びを直線近似することによって求めることができる。
【0047】
また、生成部171は、アキシャル像に対して垂直であって且つ矢印A3に垂直で点D2を通る断面C2を求め、断面C2を中心とする所定厚の断層を対象とした
図7に示すMIP像を生成する。
【0048】
生成部171は、
図7に示すMIP像において、
図7の水平方向に沿って皮質骨の辺縁の頬側及び舌側それぞれの各座標点の平均点を求め、その平均点を
図7の垂直方向に沿って
図7の上側から下側に向かって順にプロットしていき、平均点群を最小二乗法で直線近似した直線の方向(
図7に示す矢印A5の方向)を求める。
【0049】
上述した矢印A3〜A5が3つの下顎軸それぞれの方向になる。
【0050】
ステップS2に続くステップS3において、生成部171は評価断面候補列を生成する。具体的には、まず生成部171は、上述したX軸、Y軸、及びZ軸の座標系を3つの下顎軸の座標系に変換するための回転行列を算出する。回転行列はロドリゲスの公式によって求まる。すなわち、任意の軸nのまわりに角度θだけ回転させる回転行列Rは以下の通りである。なお、n=[n
1,n
2,n
3]は大きさ1の回転軸ベクトルである。座標系の変換は、1軸毎に回転行列を用いて3回回転させてもよく、1軸毎の回転行列を3つ掛け合わせて得られる1つの回転行列を用いて纏めて回転させてもよい。
【数1】
【0051】
そして、生成部171は、上記の回転行列を用いて、下顎骨下縁に沿った方向と略直交する複数枚のMPR像を評価断面候補列として生成する。なお、評価断面候補列を構成する複数枚のMPR像それぞれについて輪郭抽出処理を行い、輪郭抽出処理後の評価断面候補列をステップS4以降において用いてもよい。
【0052】
ステップS3に続くステップS4において、選択部172は評価断面候補列から評価断面を選択する。具体的には、選択部172はオトガイ孔開口長が最大となる断面を評価断面として選択する。選択部172は、評価断面候補列を構成する複数枚のMPR像それぞれについて次の手順によってオトガイ孔開口長を求める。
【0053】
まず、選択部172は、下顎骨の下縁位置(
図8中の点D4)を探索する。それから、選択部172は、点D4から頬側下顎骨辺縁に沿ってオトガイ孔の下端(
図8中の点D5)を求める。オトガイ孔の下端(
図8中の点D5)は、例えば、下顎辺縁を下縁から頬側に沿って追跡をしていった際に、現在の点より
図8の水平方向に舌側へ移動する事象、又は、現在の点より
図8の下側方向(
図8の下方向成分を含む方向)への移動する事象が2回連続で観測された時、オトガイ孔の下端であると認識すればよい。次に、選択部172は、下顎骨の下縁位置(
図8中の点D4)からMPR像上での上方向に高さH3だけ移動した位置における頬側下顎骨辺縁(
図8中の点D6)を探索する。それから、選択部172は、点D6から頬側下顎骨辺縁に沿ってオトガイ孔の上端(
図8中の点D7)を求める。オトガイ孔の上端(
図8中の点D7)は、例えば、頬側辺縁上の点のうち、点D5との距離が最小となる点とすればよい。最後に、選択部172は、点D5と点D7との距離をオトガイ孔開口長とする。
【0054】
なお、本実施形態では、選択部172は、オトガイ孔開口長が最大となる断面を評価基準断面として選択し、例えば、評価基準断面の前後10枚ずつと評価基準断面の合計21枚を評価断面としている。なお、本実施形態では、評価基準断面の前後10枚ずつを評価断面に含めたが、10枚以外の枚数であってもよく、評価基準断面の前後で異なる枚数であってもよく、評価基準断面の前後0枚として評価基準断面1枚のみを評価断面としてもよい。
【0055】
ステップS4に続くステップS5において、設定部173は評価断面に対してROIを設定する。具体的には、まず設定部173は、
図9に示すように、評価断面において、オトガイ孔より下側に位置する下顎骨辺縁のピクセルそれぞれでの接線L1を求め、接点を通り接線L1に垂直であって海綿骨に向かう方向の法線ベクトルV1を算出する。下顎骨辺縁の接線方向は接点を中央に含む下顎骨辺縁を示す所定数のピクセルの並びを最小二乗法で直線近似することによって求めることができる。各法線ベクトルV1は法線ベクトルV1と評価断面上のy軸とのなす角度αによって特定することができる。角度αの正負は
図10に示すように定義する。
【0056】
次に、設定部173は、評価断面において、オトガイ孔より下側に位置する下顎骨辺縁のピクセルそれぞれから法線ベクトルV1に沿ったピクセル値のプロファイルを取得する。
図11は、オトガイ孔より下側に位置する下顎骨辺縁の或る1つのピクセルから法線ベクトルV1に沿ったピクセル値のプロファイルを示す図である。設定部173は、オトガイ孔より下側に位置する下顎骨辺縁のピクセルそれぞれについて半値幅width
0.5及び20%値幅width
0.2を算出する。
【0057】
本実施形態で用いる正常例群データは、
図12に示すように、骨質が正常な10名の成人女性を被写体とした複数のCT撮影のデータから得られた、角度αを5°刻みで変化させたときそれぞれでの半値幅width
0.5の平均値W(α)、平均値W(α)から標準偏差std(α)を引いた値、及び平均値W(α)に標準偏差std(α)の2倍を加えた値である。
【0058】
設定部173は、評価断面から得られるオトガイ孔より下側に位置する下顎骨辺縁のピクセルそれぞれについて半値幅width
0.5及び20%値幅width
0.2と正常例群データとを用いて、オトガイ孔より下側に位置する下顎骨辺縁のピクセルそれぞれに対応する評価断面における皮質骨と海綿骨との境界候補点を求める。具体的には、以下の手法によって皮質骨と海綿骨との境界候補点を求める。皮質骨と海綿骨との境界候補点の一部を評価断面上に図示すると、
図13のようになる。
【0059】
最初に設定部173は、皮質骨厚Width(tl)の初期値を、下顎骨辺縁のピクセルtlに対応するwidth
0.5とする。以下、終了するまで下記の(A)〜(C)の場合分けに応じた処理を実行する。
【0060】
(A)Width(tl)<W(α)−std(α)である場合、さらに(A−1)〜(A−3)の場合分けを行う。
【0061】
(A−1)|width
0.5−mean|<|width
0.2−mean|である場合、Width(tl)=width
0.5とし、終了する。
【0062】
(A−2)width
0.2<W(α)−2*std(α)且つ下顎骨の下縁位置からy軸に沿った下顎骨辺縁のピクセルtlまでの距離(下顎骨の下縁位置―ピクセルtl間のy座標の差)が下顎骨の下縁位置からy軸に沿ったオトガイ孔下縁までの距離(下顎骨の下縁位置―オトガイ孔下縁間のy座標の差)の60%以下である場合、Width(tl)=W(α)−2*std(α)とし、終了する。
【0063】
(A−3)上記以外の場合すなわち(A−1)及び(A−2)以外の場合、Width(tl)=width
0.2とする。
【0064】
(B)Width(tl)<W(α)+2*std(α)である場合、さらに(B−1)〜(B−2)の場合分けを行う。
【0065】
(B−1)Width(tl)=width
0.2である場合、Width(tl)=width
0.5とし、終了する。
【0066】
(B−2)上記以外の場合すなわち(B−1)以外の場合、Width(tl)=W(α)+2*std(α)とし、終了する。
【0067】
(C)W(α)−std(α)≦Width(tl)≦W(α)+2*std(α)である場合、さらに(C−1)〜(C−2)の場合分けを行う。
【0068】
(C−1)Width(tl)<0.8*mean且つWidth(tl)=width
0.5である場合、(A−1)〜(A−3)のいずれかを行う。
【0069】
(C−2)上記以外の場合すなわち(C−1)以外の場合、終了する。
【0070】
上記処理により、皮質骨厚Width(tl)をW(α)−std(α)以上且つW(α)+2*std(α)以下の範囲に収めることができる。なお、上述した皮質骨と海綿骨との境界候補点を求める処理において、mean=(Width(tl−2)+Width(tl−3))/2である。また、上述した皮質骨と海綿骨との境界候補点を求める処理において、Width(tl)が上限値に達した場合には上記処理を打ち切る。また、法線ベクトルV1の方向が第1角度(例えば110度)を超えたことをトリガーとして、法線ベクトルV1の方向が第2角度(例えば40度)を下回ってから第3角度(例えば65度)に達するまでは神経孔と認識して上記処理をスキップする。
【0071】
次に、設定部173は、皮質骨と海綿骨との境界候補点から異常点を除去する。皮質骨と海綿骨との境界候補点と最短距離となる下顎骨辺縁のピクセルtlとの距離が所定値(例えば0.8mm)未満であれば、異常点とみなして皮質骨と海綿骨との境界候補点から除外する。例えば、
図14に示す点D7が異常点となる。また、
図15に示す楕円領域R1内の皮質骨と海綿骨との境界候補点D8も異常点とみなして皮質骨と海綿骨との境界候補点から除外する。
【0072】
次に、設定部173は、l=−0.5,−1,−2,−3,−6,6,3,2,1,0.5の各傾きを有し楕円領域R1の中心を通る各直線(
図16参照)によって、隣接する2本の直線によって囲まれた複数の分割領域を設定し、各分割領域内に存在する皮質骨と海綿骨との境界候補点の群を直線近似した近似直線を分割領域ごとに求める。そして、設定部173は、近似直線との距離が所定値(例えば1mm)より離れている候補点(皮質骨と海綿骨との境界候補点)について、近似直線との距離が補正前の80%になるように近似直線に近づける補正を行う。この補正により、皮質骨と海綿骨との境界候補点の並びが滑らかになる。なお、本実施形態とは異なり、当該補正を実施しないようにしてもよい。
【0073】
次に、設定部173は、皮質骨と海綿骨との境界候補点のうち最下点を探索する。そして、設定部173は、途中神経孔により法線ベクトルV1の方向が異常となる候補点(皮質骨と海綿骨との境界候補点)を除外しながら、|Width(tl)−mean|<fを満たす候補点(皮質骨と海綿骨との境界候補点)の中から最小距離の点を順に連結していく。ここで、f=f
0+(dist(tl)−1)*0.3/0.5であり、f
0=0.2(la(tl_w)<40の場合)、f
0=0.3(40≦la(tl_w)≦60の場合)、f
0=3(60<la(tl_w)の場合)である。なお、dist(tl)は対象の候補点と直前の候補点との距離であり、la(tl_w)は直前の候補点における法線ベクトルV1の方向を示す角度である。設定部173は、上記の連結をオトガイ孔に最も近い候補点から開始するとともに、最下点の候補点からも開始する(
図17及び
図18参照)。
【0074】
次に、設定部173は、神経孔と認識した下顎骨辺縁のピクセルtlの周辺(3次元範囲)においてCT値が所定値(例えば1000)未満のピクセルをROIから除外する。
【0075】
設定部173は、下顎骨辺縁のピクセルtlと候補点(皮質骨と海綿骨との境界候補点)とで囲まれた領域に対して縮小処理を行う。この領域は、オトガイ孔より一定距離下に限定するとなお良い。さらに、設定部173は、
図19に示すように、上記縮小処理によって得られた領域R2を、
図15に示す楕円領域R1の中心O1を通り且つ下顎軸(y軸)に平行な直線と、中心O1を通り且つy軸に対して±30°傾いている直線とで4分割して、4つのROI領域A〜Dを設定する。なお、本実施形態とは異なり、設定部173が、下顎骨辺縁のピクセルtlと候補点とで囲まれ、かつ、全ての下顎骨辺縁のピクセルtlと全ての候補点を含む領域に対して縮小処理を行ってもよい。また、本実施形態では、領域R2を4つに分割したが、分割数は4以外の自然数であってもよい。分割数が1である場合には分割せず、領域R2そのものが1つのROI領域となる。
【0076】
ステップS5に続くステップS6において、評価部174は、評価断面のROI毎の面積、ROI内の平均CT値、ROI内のCT値の分散、ROI内のCT値の変化率(分散/平均CT値)等を求め、それらに基づいて骨質を評価する。例えば、評価部174は、ROI内のCT値の変化率を左顎の4つのROI領域A〜Dと右顎の4つのROI領域A〜Dの合計8つのROI領域それぞれで算出し、その中の最大値が閾値より大きければ「骨質異常」と評価する。また、例えば、評価部174は、ROI内のCT値の変化率を左顎の4つのROI領域A〜Dと右顎の4つのROI領域A〜Dの合計8つのROI領域それぞれで算出し、各算出値をROI毎に設定した閾値と比較して閾値よりも大きい算出値が一つでもあれば「骨質異常」と評価する。なお、本実施形態とは異なり、左顎のROI領域又は右顎のROI領域のいずれか一方のみの評価指標を用いて骨質を評価してもよい。
【0077】
ステップS6に続くステップS7において、出力部175は、評価部174の評価結果を出力する。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々変形が可能である。以下、幾つかの変形例について説明する。
【0079】
本発明において用いられる再構成ボリュームデータは、歯科用CT撮影装置によるCT撮影の撮影データを再構成して得られる再構成ボリュームデータに限定されない。本発明において用いられる再構成ボリュームデータは、CT撮影の撮影データを再構成して得られ尚且つFOV(Field ofview)に下顎骨下縁皮質骨が含まれている再構成ボリュームデータであれば良い。従って、被写体を構成する各物質のうちいずれか同一の物質に注目したときどのボクセルでも略同一の濃度値が得られ、場所による濃度値の変動が小さいCT撮影の撮影データを再構成して得られる再構成ボリュームデータであっても構わない。
【0080】
また上述した実施形態とは異なり、3次元ハフ変換を用いて上述したX軸、Y軸、及びZ軸の座標系を上述した3つの下顎軸の座標系に変換するようにしてもよい。
【0081】
また上述した実施形態では、評価断面について、オトガイ孔より下側に位置する下顎骨辺縁のピクセルそれぞれについて半値幅width
0.5及び20%値幅width
0.2が算出されたが、半値幅の代わりに48%幅、49%幅、51%幅、52%幅等を算出してもよく、20%幅の代わりに18%幅、19%幅、21%幅、22%幅等を算出してもよい。また、上述した実施形態では、正常例群データに半値幅の平均値が含まれていたが、半値幅の平均値の代わりに、48%幅の平均値、49%幅の平均値、51%幅の平均値、52%幅の平均値等を正常例群データに含めてもよい。
【0082】
また上述した実施形態とは異なり、MPR像を経由せずに、下顎骨下縁皮質骨に収まる再構成ボリュームデータの3次元ROIを設定してもよい。
【0083】
画像表示処理プログラム、骨質評価プログラム、及び評価結果表示プログラムはそれぞれ独立したプログラムであっても良く、少なくとも二つのプログラムが統合されていても良い。プログラムの統合例としては、骨質評価プログラムを画像表示処理プログラムに含める形態(画像表示処理プログラムの機能を拡張する形態)、評価結果表示プログラムを画像表示処理プログラムに含める形態(画像表示処理プログラムの機能を拡張する形態)、評価結果表示プログラムを骨質評価プログラムに含める形態(骨質評価プログラムの機能を拡張する形態)等を挙げることができる。