(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1イオンビーム照射工程における前記被処理物に対するイオンビームの照射角度と、前記第2イオンビーム照射工程における前記被処理物に対するイオンビームの照射角度とが同じである請求項1又は2記載の半導体製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る半導体製造方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
液晶表示装置や有機EL表示装置等のディスプレイ画像装置としては、アクティブマトリクス方式と呼ばれるものがあり、画素のスイッチングとしてはTFTが用いられている。一方、駆動回路としては、IC等を外付けしてモジュール化されたものがあるが、これよりも小型化を図るべく、画素が形成されるガラス基板の周辺にTFTを用いて駆動回路を形成することがある。
このようにTFTを用いて駆動回路を形成する場合、TFTを非晶質シリコンで形成すると電子の移動度が不足する等の理由で十分な特性が得られないことがあることから、非晶質シリコンに替えて、低温多結晶シリコン(Low-temperature Poly Silicon:LTPS)を用いてTFTを形成する場合があり、こうした駆動回路としてはトランジスタの駆動能力が高いCMOS構造が採用されることがある。
【0018】
本実施形態の半導体製造方法は、
図1に示すように、イオンビーム照射装置100を用いて例えばディスプレイに使われるCMOS等の半導体を製造する方法である。
【0019】
まずイオンビーム照射装置100について簡単に説明すると、イオンビーム照射装置100は、イオン源10から引き出されたイオンビームを、質量分離器20と分離スリット30を通過させて所望のイオン種(ドーパントイオン)を選別した後、プラテンと称されるホルダ40に保持されている被処理物Xに注入するものである。なお、イオンビーム照射装置100としては、図示していないが、イオンビームを整形するためのレンズやイオンビームの進行方向を補正するステアリングコイルなどを備えていても良い。
【0020】
次に、半導体製造方法について説明する。
本実施形態の半導体製造方法は、被処理物XにNMOS及びPMOSを形成してCMOSを製造する方法であり、上述したイオンビーム照射装置100により第1ドーパントイオン及び第2ドーパントイオンをそれぞれの注入領域に注入して、NMOS及びPMOSそれぞれのチャネルやソース・ドレインを形成する。
本実施形態の半導体製造方法では、チャネルを形成する過程でも、ソース・ドレインを形成する過程でも、被処理物Xにレジスト層を形成するレジスト形成工程、第1ドーパントイオンを注入する第1イオンビーム照射工程、及び第2ドーパントイオンを注入する第2イオンビーム照射工程が行われる。
【0021】
以下では、第1ドーパントイオンをP型ドーパントイオンたるB
+、第2ドーパントイオンをN型ドーパントイオンたるP
+として説明する。
また、B
+の注入領域を第1注入領域と呼び、P
+の注入領域を第2注入領域と呼ぶ。
【0022】
[チャネルの形成]
(A)レジスト形成工程
まず、被処理物Xについて説明すると、本実施形態の被処理物Xは、
図2に示すように、ガラス板や石英板などの基板X1にアモルファスシリコン(a−Si)を堆積させ、そのa−Siにエキシマレーザ等を照射して多結晶化させることでP−Si膜を形成したものである。
そして、この被処理物X上にチャネル形成用第1レジスト層R1(以下、第1レジスト層R1という)及びチャネル形成用第2レジスト層R2(以下、第2レジスト層R2という)を形成する。なお、a−Si膜の多結晶化は、後述する第1イオンビーム照射工程や第2イオンビーム照射工程を経て剥離液等で第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2を除去したあとに行っても良い。
【0023】
第1レジスト層R1は、チャネル形成用第1注入領域S1(以下、第1注入領域S1という)にP
+(第2ドーパントイオン)を含むイオンビームが照射されることを防ぐものであり、第2レジスト層R2は、チャネル形成用第2注入領域S2(以下、第2注入領域S2という)にB
+(第1ドーパントイオン)を含むイオンビームが照射されることを防ぐものである。
【0024】
より具体的に説明すると、第1注入領域S1及び第2注入領域S2は、被処理物X上の互いに異なる位置に設定されており、ここでは被処理物X上に設定された所定方向(以下、
図2の記載に合わせて左右方向という)に沿った一方側(左側)に例えば矩形状の第1注入領域S1が設定されるとともに、他方側(右側)に第1注入領域S1とは間を介して例えば矩形状の第2注入領域S2が設定されている。ここでは、第1注入領域S1がNMOS側に設定されており、第2注入領域S2がPMOS側に設定されている。なお、第1注入領域S1や第2注入領域S2は、矩形状に限らず適宜変更して構わないし、被処理物X上における第1注入領域S1や第2注入領域S2の位置も例えば上下方向にするなど種々変更して構わない。
【0025】
そして、第1レジスト層R1は、第1注入領域S1の一辺に沿って形成されており、第2レジスト層R2は、第2注入領域S2における第1レジスト層R1と対向する側の一辺に形成されている。
より詳細には、第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2は、上述した所定方向、すなわち左右方向に沿って延びるとともに、左右方向と直交する方向(以下、
図2の記載に合わせて上下方向という)に対向している。ここでは、上下方向における下側に第1レジスト層R1が形成され、上側に第2レジスト層R2が形成されている。なお、第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2は、必ずしも平行である必要はない。
また、被処理物Xの正面視において第1レジスト層R1の一部(右側)と第2レジスト層R2の一部(左側)とが重なり合っている。
なお、第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2の配置は、
図2では説明の便宜上、被処理物Xの縁に沿って図示したが、これに限らず被処理物X上の種々の位置に変更して構わない。
【0026】
第1レジスト層R1や第2レジスト層R2を形成する手順は、背景技術において述べたように、まず被処理物Xを洗浄し、その被処理物Xに液状レジストやドライフィルムレジスト等のレジスト材料を塗布し、塗布したレジスト材料中の残留溶剤の蒸発や、レジスト材料及び被処理物Xの密着性の強化などを目的として熱処理する。
続いて、塗布したレジスト材料に対してフォトマスクを介して光を当てて感光させ、再び熱処理する。
その後、被処理物Xを現像液に漬けたり現像液をスプレー等で吹き付けるなどして、レジスト材料の軟化している部分を除去し、残留現象液の蒸発やレジストの硬化などを目的として再び熱処理することで、第1レジスト層R1や第2レジスト層R2が形成される。
【0027】
本実施形態の第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2は、共通のフォトマスクによって1回のレジスト形成工程で一度に形成される。つまり、本実施形態で用いられるフォトマスクは、第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2を形成する両方の領域に一度に光を当てることができるように、或いは、第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2を形成する両方の領域を一度にマスクできるように構成されている。
【0028】
第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2の膜厚は、イオンビームの照射を防ぐ非照射領域(第1レジスト層R1にとっては第1注入領域S1、第2レジスト層R2にとっては第2注入領域S2)の上下方向に沿った長さと、被処理物Xに対するイオンビームの注入角度とによって選択される必要がある。なお、第1レジスト層R1や第2レジスト層として膜厚が予め定められたものを用いる場合は、上述した非照射領域に応じてイオンビームの注入角度を調整すれば良い。
なお、説明の便宜上、以降の
図3〜5の正面断面図では、第2レジスト層R2の記載は省略する。
【0029】
(B)第1イオンビーム照射工程
第1イオンビーム照射工程は、
図3に示すように、第1ドーパントイオンたるB
+を第1注入領域S1に注入するための工程であり、ここではNMOSのチャネルを形成するための工程である。
【0030】
具体的には、第2レジスト層R2側から第1レジスト層R1側に向かって被処理物Xの表面に対して斜め方向(請求項でいう第1方向)からB
+を含むイオンビームを照射する。これにより、B
+を含むイオンビームを第1注入領域S1に照射させつつ、このイオンビームが第2注入領域S2に照射されることを第2レジスト層R2によって遮ることができる。
【0031】
ここでは、被処理物Xの表面に対するイオンビームの注入角度αを、このイオンビームが第2レジスト層R2によって遮られて第2注入領域S2に照射されない角度に設定してあるが、後述するようにB
+が注入された領域の周縁部をエッチングして島状化することに鑑みれば、
図3よりも注入角度αを大きくして(例えば45度)、イオンビームが第2注入領域S2の下端部に照射されてしまっても構わない。このように注入角度を大きくしたほうが、イオンを同じ深さに注入しようとして場合に、イオンビームのエネルギーを小さくすることができる。
【0032】
被処理物Xに対して斜め方向からイオンビームを照射するための方法としては、例えばホルダ40であるプラテンの角度を変更したり、イオンビームの輸送経路を変更する方法がある。プラテンの角度を変更する場合は、チルト角やスイベル角を変更する方法や、プラテンに対する被処理物Xの搬送方向を変更する方法などが挙げられる。なお、チルト角及びスイベル角は、回転軸が互いに直交する方向であり、一例としてはイオンビームに対する被処理物Xのあおり方向がチルト角であり、首振り方向がスイベル角である。また、イオンビームの輸送経路を変更する場合は、イオンビームを被処理物Xに導くビームラインの構成自体を変更したり、電場や磁場を調整することでイオンビームの輸送経路を変更する方法などが挙げられる。
【0033】
(C)第2イオンビーム照射工程
第2イオンビーム照射工程は、
図4に示すように、第2ドーパントイオンたるP
+を第2注入領域S2に注入するための工程であり、ここではPMOSのチャネルを形成するための工程である。
【0034】
具体的には、第1レジスト層R1側から第2レジスト層R2側に向かって被処理物Xに対して斜め方向(請求項でいう第2方向)からP
+を含むイオンビームを照射する。これにより、P
+を含むイオンビームを第2注入領域S2に照射させつつ、このイオンビームが第1注入領域S1に照射されることを第1レジスト層R1によって遮ることができる。
【0035】
ここでは、被処理物Xの表面に対するイオンビームの注入角度α’を、このイオンビームが第1レジスト層R1によって遮られて第1注入領域S1に照射されない角度に設定してあり、ここでは上述した第1イオンビーム照射工程と同じ角度に設定しているが、第1イオンビーム照射工程とは異なる角度でも良いし、
図4よりも注入角度α’を大きくして(例えば45度)も構わない。
なお、被処理物Xに対して斜め方向からイオンビームを照射するための方法としては、上述したような種々の方法を選択して構わない。
【0036】
第1イオンビーム照射工程におけるイオンビームの照射方向と、第2イオンビーム照射工程におけるイオンビームの照射方向とは、互いに異なる方向であり、本実施形態では、平面視において互いに平行であって且つ逆向きにしてある。なお、後述するように第1注入領域S1や第2注入領域S2を島状化することに鑑みれば、各イオンビーム照射工程におけるイオンビームの照射方向は必ずしも平面視において平行でなくても良い。
【0037】
[ゲート電極の形成]
上述したB
+及びP
+の注入後、剥離液等で第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2を除去し、例えば被処理物Xをマスクして、
図5に示すように、B
+が注入された領域及びP
+が注入された領域それぞれの周縁部をエッチングすることで、これらの領域を島状化する。
そして、島状化された各領域にゲート絶縁膜Zを介してNMOSのゲート電極G(N)及びPMOSのゲート電極G(P)を形成する。これにより、NMOSのゲート電極G(N)の下方がNMOSのチャネルとなり、PMOSのゲート電極G(P)の下方がPMOSのチャネルとなる。
【0038】
[ソース・ドレインの形成]
次に、NMOSのソース・ドレイン及びPMOSのソース・ドレインを形成する工程について説明する。ここでは、NMOSのドレインにLDD(Lightly Doped Drain:低濃度不純物ドレイン)構造が形成されるCMOSの製造方法について説明するが、本発明に係る半導体製造方法は、LDD構造が形成されたCMOSの製造に限られるものではない。
【0039】
(A)LDD形成工程
まず、
図6に示すように、NMOSのドレインにLDD構造を形成すべく、P
+を含むイオンビームを被処理物Xに対して上方から照射する。これにより、NMOS側及びPMOS側それぞれにおいて、ゲート電極G(N)、G(P)の下部以外の部分にP
+が注入される。この工程でNMOS側に注入されたP
+が後にLDD構造を形成することになる。
【0040】
(B)レジスト形成工程
次に、
図7に示すように、ソース・ドレイン形成用第1レジスト層r1(以下、第1レジスト層r1という)及びソース・ドレイン形成用第2レジスト層r2(以下、第2レジスト層r2という)を形成する。
第1レジスト層r1は、PMOS側のソース・ドレイン形成用第1注入領域s1(以下、第1注入領域s1という)にP
+(第2ドーパントイオン)を含むイオンビームが照射されることを防ぐものであり、第2レジスト層r2は、NMOS側のソース・ドレイン形成用第2注入領域s2(以下、第2注入領域s2という)にB
+(第1ドーパントイオン)を含むイオンビームが照射されることを防ぐものである。
なお、説明の便宜上、以降の
図7〜10の正面断面図では、第1レジスト層r1の記載は省略する。
【0041】
ソース・ドレインの形成において
図7の正面断面図に示すように、第1注入領域s1は、PMOS側の島状化された部分においてチャネルとなる部分よりも外側の領域であり、第2注入領域s2は、正面断面図においてNMOS側の島状化された部分においてチャネルとなる部分よりも外側の領域である。より具体的には、第1注入領域s1は、PMOS側の島状化された部分のうちチャネルとなる部分以外の矩形状の領域であり、第2注入領域s2は、NMOS側の島状化された部分のうちチャネル及びLDDとなる部分以外の矩形状の領域である。
【0042】
そして、チャネルの形成で説明した態様と同様に、第1レジスト層r1は、第1注入領域s1の一辺に沿って形成されており、第2レジスト層r2は、第2注入領域s2における第1レジスト層r1と対向する側の一辺に形成されている。また、第1レジスト層r1及び第2レジスト層r2は、左右方向に沿って延びるとともに上下方向に対向しており、ここでは第1レジスト層r1が上側に形成され、第2レジスト層r2が下側に形成されている。
【0043】
ソース・ドレインの形成においては、第1レジスト層r1の左右方向に沿った長さが、第1注入領域s1における第1レジスト層r1に沿った長さ(左右方向に沿った長さ)よりも長く、第1注入領域s1は第1レジスト層r1の両端よりも内側に位置している。
また、第2レジスト層r2も同様であり、第2レジスト層r2の左右方向に沿った長さが、第2注入領域s2における第2レジスト層r2に沿った長さ(左右方向に沿った長さ)よりも長く、第2注入領域s2は第2レジスト層r2の両端よりも内側に位置している。
【0044】
さらに本実施形態では、NMOSのゲート電極G(N)に沿って第3レジスト層r3を形成している。この第3レジスト層r3は、LDD構造を形成するためのものであり、その幅寸法がNMOSのゲート電極G(N)のゲート長よりも大きく、第2レジスト層r2と一体的に形成されている。これにより、平面視においてNMOSのゲート電極G(N)の全体が第3レジスト層r3によって覆われている。
【0045】
第1レジスト層r1や第2レジスト層r2や第3レジストr3を形成する手順は、上述した通りであり詳細は省略するが、第1レジスト層r1、第2レジスト層r2及び第3レジストr3は、共通のフォトマスクによって1回のレジスト形成工程で一度に形成される。
【0046】
第1レジスト層r1や第2レジスト層r2として必要な膜厚Hは、
図8に示すように、ゲート電極Gのゲート幅GWと、被処理物Xに対するイオンビームの注入角度θから算出され、具体的にはH≧GW×tanθである。なお、ゲート幅wは、ゲート電極Gにおけるチャネル上に位置する部分の長さであり、ソース・ドレイン間と直交する方向、すなわち上下方向の長さである。
例えば、
図8に示すように、ゲート幅Wが20μm、イオンビーム照射角度が45度の場合は、第1レジスト層r1や第2レジスト層r2の膜厚Hとしては、20μm以上が必要になる。
【0047】
また、第3レジスト層r3の幅寸法(線幅)tは、
図8に示すように、ゲート長GL及びLDD長LLの和と等しい必要があり、例えばゲート長3μm、LDD長が片側1μmの場合は、ゲート長と両側LDDを合わせて5μmの第3レジスト層r3の幅寸法tが必要になる。
なお、本実施形態の第1レジスト層r1の膜厚と第2レジスト層r2の膜厚と第3レジスト層r3の膜厚とは一度に形成されるため同じ膜厚であることが望ましい。そのため、第3レジスト層r3の幅寸法をtとして場合に、レジスト層の幅寸法tに対する膜厚Hの比率(アスペクト比)A=H/tは、A≧(GW×tanθ)/tを満たす必要がある。
図8に示すように、例えば線幅5μm、膜厚20μm以上を満たすためには、線幅に対する膜厚の比率Aは4以上が必要になる。ただし、ゲート長やゲート幅、LDD幅が変わればレジスト層として必要なアスペクト比も異なってくる。
【0048】
このように、各レジスト層r1〜r3を一度に同じ膜厚で形成する場合、所望のゲート幅GW(ここでは20μm)と、所望のLDD長LL(ここでは1μm×2)を得るためには、H≧GW×tanθ、且つ、A≧(GW×tanθ)/tであり、つまり、各レジスト層r1〜r3のアスペクト比Aが、(GW×tanθ)/t≦A≦H/GLであれば良い。
【0049】
(C)第1イオンビーム照射工程
第1イオンビーム照射工程は、
図9に示すように、第1ドーパントイオンたるB
+を第1注入領域s1に注入するための工程であり、ここではPMOSのソース・ドレインを形成するための工程である。
【0050】
具体的には、第2レジスト層r2側から第1レジスト層r1側に向かって被処理物Xに対して斜め方向(請求項でいう第1方向であるが、チャネル形成における第1方向とは同一である必要はない)からB
+を含むイオンビームを照射する。これにより、B
+を含むイオンビームを第1注入領域s1に照射させつつ、このイオンビームが第2注入領域s2に照射されることを第2レジスト層r2によって遮ることができる。
【0051】
ここでは、被処理物Xの表面に対するイオンビームの注入角度を、このイオンビームが第2レジスト層r2によって遮られて第2注入領域s2に照射されない角度に設定してあり、具体的には第2レジスト層r2の膜厚をH2、第2注入領域s2の上下方向長さつまりゲート電極Gのゲート幅をW2とすると、θ2=arctan(H2/W2)で表されるθ2以下であれば良く、ここでは45度にしてある。
なお、被処理物Xに対して斜め方向からイオンビームを照射するための方法としては、上述した通り種々の方法を選択して構わない。
【0052】
(D)第2イオンビーム照射工程
第2イオンビーム照射工程は、
図10に示すように、第2ドーパントイオンたるP
+を第2注入領域s2に注入するための工程であり、ここではNMOSのソース・ドレインを形成するための工程である。
【0053】
具体的には、第1レジスト層r1側から第2レジスト層r2側に向かって被処理物Xに対して斜め方向(請求項でいう第2方向であるが、チャネル形成における第2方向とは同一である必要はない)からP
+を含むイオンビームを照射する。これにより、P
+を含むイオンビームを第2注入領域s2に照射させつつ、このイオンビームが第1注入領域s1に照射されることを第1レジスト層r1によって遮ることができる。さらに本実施形態では、第3レジスト層r3が、P
+を含むイオンビームを遮蔽するので、NMOSのドレインにおける第3レジスト層r3の下部に位置する部分にはP
+が注入されず、この部分がLDD構造として形成される。
【0054】
ここでは、被処理物Xの表面に対するイオンビームの注入角度を、このイオンビームが第1レジスト層r1によって遮られて第1注入領域s1に照射されない角度に設定してあり、具体的には第1レジスト層r1の膜厚をH1(本実施形態ではH2と同じ)、第1注入領域s1の上下方向長さ、つまりゲート電極Gのゲート幅をW1とすると、θ1=arctan(H1/W1)で表されるθ1以下であれば良く、ここでは上述したソース・ドレイン工程における第1イオンビーム照射工程と同じ角度、すなわち45度にしてある。なお、ソース・ドレイン工程における第1イオンビーム照射工程と異なる角度であっても構わない。
これにより、第1イオンビーム照射工程におけるイオンビームの照射方向と、第2イオンビーム照射工程におけるイオンビームの照射方向とは、被処理物Xの平面視において平行であって且つ逆向きである。
なお、被処理物Xに対して斜め方向からイオンビームを照射するための方法としては、上述した通り種々の方法を選択して構わない。
【0055】
そして、剥離液等で第1レジスト層r1及び第2レジスト層r2を除去することで、
図11に示すように、LDD構造が形成されたCMOSが製造される。
【0056】
このような半導体製造方法であれば、チャネルを形成する過程において、第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2を形成する1回のレジスト形成工程で、B
+を第1注入領域S1に注入するとともに、P
+を第2注入領域S2に注入することができ、従来の半導体製造方法に比べてレジスト形成工程の回数を削減することができる。
【0057】
また、第1イオンビーム照射工程における被処理物Xに対するイオンビームの照射角度と、第2イオンビーム照射工程における被処理物Xに対するイオンビームの照射角度とを同じにしているので、被処理物Xに対してイオンビームを斜め方向から照射するための作業を複雑化させずに済む。
【0058】
さらに、ソース・ドレインの形成において、第1レジスト層r1の左右方向の長さが第1注入領域s1の左右方向に沿った長さよりも長く、第2レジスト層r2の左右方向の長さが第2注入領域s2の左右方向に沿った長さよりも長いので、イオンビームに拡がりがあったとしても、イオンビームが第1レジスト層r1や第2レジスト層r2の左右方向外側から第1レジスト層r1や第2レジスト層r2の脇を通ってレジスト層の左右方向内側に入り込むことを防ぐことができる。
【0059】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0060】
例えば前記実施形態では、第1ドーパントイオンがB
+であり、第2ドーパントイオンがP
+であったが、第1ドーパントイオン及び第2ドーパントイオンが、互いに異なる種類のN型ドーパントイオンであっても良いし、互いに異なる種類のP型ドーパントイオンであっても良い。
つまり、前記実施形態のようにCMOSを製造する場合のみならず、互いに異なる種類のドーパントイオンを互いに異なる注入領域に注入する場合であれば、本発明に係る半導体製造方法を適用することで、レジスト形成工程を削減することができる。
さらには、第1ドーパントイオン及び第2ドーパントイオンは、同じ種類のイオンであって、互いに異なるドーズ量であっても良い。このような場合も、第1ドーパントイオン及び第2ドーパントイオンを互いに異なる領域に注入する場合には、本発明の半導体製造方法を適用することで、レジスト形成工程を削減することができる。
【0061】
前記実施形態では、チャネルの形成において、第1レジスト層R1及び第2レジスト層R2を形成していたが、
図12(a)に示すように、所定方向(ここでは上下方向)に沿って1つのレジスト層R1を形成して、その所定方向と直交する方向(ここでは左右方向)に沿った一方側から第1ドーパントイオンを含むイオンビームを照射し、他方側から第2ドーパントイオンを含むイオンビームを照射しても良い。
【0062】
また、ソース・ドレインの形成においても、前記実施形態では第1レジスト層r1及び第2レジスト層r2を形成していたが、NMOS及びPMOSの配置によっては、
図12(b)に示すように、NMOS側とPMOS側との間に1つのレジスト層rを形成して、NMOS側からN型ドーパントイオンを含むイオンビームを照射し、PMOS側からP型ドーパントイオンを含むイオンビームを照射しても良い。
【0063】
さらに、前記実施形態では第1イオンビーム照射工程におけるイオンビームの照射方向と、第2イオンビーム照射工程におけるイオンビームの照射方向とが、被処理物Xの平面視において平行であったが、例えばNMOS及びPMOSの配置によっては、必ずしも平行である必要はなく、例えば
図12(c)に示すように、互いに直交する方向であっても良い。
【0064】
また、前記実施形態ではNMOSのドレインにLDD構造を形成していたが、PMOSのドレインにLDD構造を形成しても良いし、前記実施形態におけるLDD形成工程を省略して、LDD構造が形成されていないCMOSを製造しても良い。
【0065】
さらに、チャネルの形成やソース・ドレインの形成において、前記実施形態ではB
+を注入した後にP
+を注入していたが、P
+を注入した後にB
+を注入しても良い。
【0066】
加えて、前記実施形態の被処理物Xは、ガラス板や石英板にa−Si膜を形成したものであったが、被処理物Xとしては、例えばガラス基板上にポリイミド等の膜を形成したものであっても良い。これにより、ガラス基板からポリイミド等の膜を剥がすことで、フレキシブル性を有する膜上にCMOS等を製造することができる。
【0067】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。