(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674669
(24)【登録日】2020年3月11日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 67/00 20060101AFI20200323BHJP
A01D 41/02 20060101ALI20200323BHJP
A01D 57/22 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
A01D67/00 C
A01D67/00 A
A01D67/00 G
A01D41/02 D
A01D57/22 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-121651(P2018-121651)
(22)【出願日】2018年6月27日
(65)【公開番号】特開2020-63(P2020-63A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五島 一実
(72)【発明者】
【氏名】岩本 浩
(72)【発明者】
【氏名】奥村 和哉
(72)【発明者】
【氏名】仙波 篤志
(72)【発明者】
【氏名】木下 正己
(72)【発明者】
【氏名】河原田 崇
【審査官】
竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−073085(JP,A)
【文献】
特開2009−011263(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第2001−0006745(KR,A)
【文献】
特開2007−117019(JP,A)
【文献】
特開2008−295405(JP,A)
【文献】
特開2010−263853(JP,A)
【文献】
特開2004−016167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 67/00 − 69/12
A01D 41/02
A01D 57/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方右側部に操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記刈取装置(3)の右側部を覆うカバー(16)を設け、
平面視で、前記操縦部(5)の前部に備えたフロントカバー(22)を左右方向に3分割した左部に位置する左側部位(22A)に、上下方向の全長に亘って前側と左側が開放された凹部(23)を形成し、
該凹部(23)を前方に向けて膨らむ円弧形状に形成し、
前記刈取装置(3)と共に昇降する前記カバー(16)の上側後部を、前記凹部(23)に侵入させたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記フロントカバー(22)の上部に、前記刈取装置(3)を昇降させる操作レバー(33)を設けたフロントパネル(32)を配置し、該フロントパネル(32)の左側後方の部位に、前記走行装置(2)を増減速操作する変速レバー(36)を設けたサイドパネル(37)を配置し、
前記凹部(23)の上端部をサイドパネル(37)の前側に臨ませた請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
機体正面視において、前記凹部(23)の左右方向の幅を、前記凹部(23)の下端部から上端部に至るに従い狭くなるように形成し、
前記刈取装置(3)が非作業位置に上昇した状態で、前記カバー(16)の下部に形成された右側方への膨出部(16A)が、前記凹部(23)に入り込む構成とした請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記操縦部(5)に備えた搭乗用のフロア(38)の左側前部に、前記凹部(23)と同一形状の切欠部を形成した請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降可能な刈取装置と作業者が搭乗する操縦部を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいて、操縦部のフロントパンネルにおける刈取装置側の下部に、刈取装置の昇降操作時に刈取装置の後部が入込んで干渉を防止する凹部を形成する技術が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、刈取装置を下降した作業位置から非作業位置に上昇させる場合には、刈取装置における操縦部側に装着したカバーが操縦部のフロントパンネルに干渉するために、刈取装置の上昇位置を高く設定することができない。これを解消するために刈取装置をフロントパネルから前方へ離して配置した場合、機体長が大きくなる問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、刈取装置に装着されたカバーと操縦部のフロントパネルの干渉を防止して、刈取装置の非作業位置を高く設定できるコンパクトなコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、機体フレーム(1)の下側に走行装置(2)を設け、該機体フレーム(1)の前側に刈取装置(3)を設け、該刈取装置(3)の後方右側部に操縦部(5)を設けたコンバインにおいて、
前記刈取装置(3)の右側部を覆うカバー(16)を設け、
平面視で、前記操縦部(5)の前部に備えたフロントカバー(22)
を左右方向に3分割した左部に位置する左側部位(22A)に、上下方向
の全長に亘って前側と左側が開放された凹部(23)を形成し、
該凹部(23)を前方に向けて膨らむ円弧形状に形成し、前記刈取装置(3)と共に昇降する前記カバー(16)の
上側後部を、前記凹部(23)に侵入させたことを特徴とするコンバインである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記フロントカバー(22)の上部に、前記刈取装置(3)を昇降させる操作レバー(33)を設けたフロントパネル(32)を配置し、該フロントパネル(32)の左側後方の部位に、前記走行装置(2)を増減速操作する変速レバー(36)を設けたサイドパネル(37)を配置し、前記凹部(23)の上端部をサイドパネル(37)の前側に臨ませた請求項1記載のコンバインである。
【0008】
請求項3記載の発明は、機体正面視において、前記凹部(23)の左右方向の幅を、前記凹部(23)の下端部から上端部に至るに従い狭くなるように形成し、前記刈取装置(3)が非作業位置に上昇した状態で、前記カバー(16)の下部に形成された右側方への膨出部(16A)が、前記凹部(23)に入り込む構成とした請求項1又は2記載のコンバインである。
【0009】
【0010】
請求項
4記載の発明は、前記操縦部(5)に備えた搭乗用のフロア(38)の左側前部に、前記凹部(23)と同一形状の切欠部を形成した請求項1〜
3のいずれか1項に記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、刈取装置3を作業位置から非作業位置にスムーズに上昇させることができ、また、刈取装置3の非作業位置を高い位置に設定することができる。また、刈取装置3をフロントパネル32側に接近させて配置できるため、コンバインの機体長をコンパクト化することができる。
フロントカバー22の左側部位22Aの剛性が高まり変形を抑制することができ、また、操縦部5における作業者の脚回りの空間を大きく形成することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、刈取装置3の非作業位置をより高い位置に設定することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、刈取装置3を作業位置から非作業位置によりスムーズに上昇させることができる。
【0014】
【0015】
請求項
4記載の発明によれば、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、凹部23の下部からフロア38が前方に突出するのを防止し、膨出部16Aの上端部とフロア38の干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図6】作業位置ある刈取装置と操作部の平面図である。
【
図7】作業位置から非作業位置に上昇した刈取装置と操作部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜3に示すように、コンバインは、機体フレーム1の下側に土壌面を走行する左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場の穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側部に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側部に操縦者が搭乗する操縦部5が設けられている。
【0018】
操縦部5の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ(図示省略)によって外部に排出される。
【0019】
刈取装置3は、圃場に立毛する穀稈を左右方向に分草する分草体11と、分草された穀稈を引起す引起装置12と、引起された穀稈の株元を切断する切断装置13と、株元が切断された穀稈を脱穀装置4に搬送する搬送装置14を備えている。
【0020】
引起装置12の左側には左カバー15が設けられ、引起装置12の右側には右カバー(請求項における「カバー」)16が設けられている。これにより、作業者が引起装置12の駆動部に接触することを防止して安全性を高めることができる。
【0021】
刈取装置3は、エンジンEの出力回転を引起装置12や刈刃装置13等に伝動する伝動軸が内装された伝動筒17に連結された油圧シリンダ18を駆動することによって上下方向に昇降させることができる。なお、刈取装置3が作業状態にある位置を作業位置といい、刈取装置3が非作業状態にある位置を非作業位置という。
【0022】
図4,5に示すように、操縦部5は、照明用のライト21が設けられたフロントカバー22と、フロントカバー22の後方にエンジンEの出力回転数等が表示されるモニタ31が設けられたフロントパネル32と、フロントカバー22の後方左側に走行装置2の走行速度を変速する変速レバー36が設けられたサイドパネル37を備えている。
【0023】
フロントカバー22の左側部位22Aの前面は、フロントカバー22の中間部位22Bの前面と右側部位22Cの前面よりも後側に位置し、フロントカバー22の左側部位22Aの上面は、フロントカバー22の中間部位22Bの上面と右側部位22Cの上面よりも下側に位置して、フロントカバー22の左側部位22Aの上下方向の全長に亘って前側と左側が開放された凹部23が形成されている。これにより、
図6,7に示すように、刈取装置3を下降の作業位置から非作業位置に上昇させた場合に、引起装置12の右側に設けられた右カバー16の上側下端部が、凹部23に侵入してフロントカバー22の左側部位22Aに干渉することなく左側部位22Aの上方をスムーズに移動することができる。また、刈取装置3をフロントパネル32に接近させて配置できるので、機体長が短いコンパクトなコンバインを構成することができる。なお、フロントカバー22の左側部位22Aとは、フロントカバー22を左右方向に3分割した場合における左部に位置する部位をいい、中間部位22Bとは、フロントカバー22を左右方向に3分割した場合における中間に位置する部位をいい、右側部位22Cとは、フロントカバー22を左右方向に3分割した場合における右部に位置する部位をいう。
【0024】
凹部23の底面、すなわち、フロントカバー22の左側部位22Aの前面は、左側部位22Aの前側下端部からサイドパネル42の前側に位置する左側部位22Aの後側上端部まで前方に向けて膨らむ円弧形状に形成され、フロントカバー22の左側部位22Aの前面の左右方向の幅は、左側部位22Aの前側下端部から左側部位22Aの後側上端部に近づくにつれて狭く形成されている。これにより、
図6,7に示すように、刈取装置3を下降の作業位置から非作業位置に上昇させた場合に、引起装置12の右側に設けられた右カバー16の右方向に膨出して形成された膨出部16Aの下側下端部がフロントカバー22の左側部位22Aに干渉することなく左側部位22Aの上方をスムーズに移動することができる。また、フロントカバー22の左側部位22Aの下側に位置する作業者が昇降するフロア38における左側前部は、フロントカバー22の左側部位22Aと同一形状に切欠かれて形成されている。これにより、左側部位22Aの下端部からフロア38が前方に突出するのを防止し、引起装置12の膨出部16Aの下側下端部がフロア38に干渉することなく膨出部16Aの上方をスムーズに移動することができる。
【0025】
図4,5に示すように、フロントパネル32におけるモニタ31の右側の部位には、刈取装置3の昇降操作等を行う操作レバー33が設けられ、モニタ31の後側の部位には、エンジンEを始動するキースイッチ34等が設けられている。これにより、モニタ31の視認性に優れ、キースイッチ34を容易に操作することができる。フロントパネル32の後部の両側部には、左右方向に延在するハンドル35の両側部に形成された脚部を支持する挿入孔が形成されている。
【0026】
次に、操縦部5のフロア38における左側上方に設けられた駐車ブレーキペダル40について説明する。なお、駐車ブレーキペダル40は、走行装置2のトランスミッションTに内装されたブレーキを操作する部品である。
【0027】
図8〜10に示すように、駐車ブレーキペダル40は、上側に位置する上下方向に延在するアーム41と、アーム41の下部に設けられた左右方向と前後方向に所定の幅を有するペダル42から形成されている。
【0028】
アーム41の上部は、左右方向に延在する回転軸43に固定されている。回転軸43は、軸心方向視で、操縦部5の前側に上下方向に延在する左縦フレーム60と右縦フレーム61の前方に設けられている。これにより、操縦部5に操縦者が乗り降りする場合に障害になることを防止することができる。
【0029】
駐車ブレーキペダル40が踏込まれていない状態において、アーム41は、回転軸43の軸心方向視において、逆へ字形状、すなわち、回転軸43から緩やかに後方下側に向けて延在した後、左縦フレーム60の前方で湾曲して緩やかに後方上側に向けて延在して形成されている。これにより、駐車ブレーキペダル40が操縦部5のフロア38や仕切プレート46に干渉するのを防止することができる。
【0030】
仕切フレート46の下部には、アーム41を挿通する開口部が形成された保護プレート47が設けられている。これにより、作業者の足先が、仕切フレート46と駐車ブレーキペダル40の間に挟まれるのを防止することができる。また、駐車ブレーキペダル40が踏込まれた状態において、保護プレート47の下部は、アーム41の上部よりも下側に設けられている。これにより、作業者の足先が、保護プレート47と駐車ブレーキペダル40の間に挟まれるのを防止することができる。なお、駐車ブレーキペダル40のペダル42の踏込みを容易にするために、保護プレート47の後面を、仕切フレート46の後面よりも若干前側に設けるのが好ましい。
【0031】
回転軸43の左部を左縦フレーム60におけるフロントパネル32の下部とフロア38の間の部位の上下方向の中心よりもフロア38側に偏移した位置に固定して、回転軸43の右部を右縦フレームに21おけるフロントパネル32の下部とフロア38の間の部位の上下方向の中心よりもフロア38側に偏移した位置に固定して方が好ましい。これにより、操縦者が、操縦姿勢を変更することなく駐車ブレーキペダル40を容易に踏み込むことができる。
【0032】
回転軸43の左部は、左ステー44を介して左縦フレーム60に回転自在に支持され、回転軸43の右部は、右ステー45を介して右縦フレーム61に回転自在に支持されている。なお、左ステー44は、左縦フレーム60の左面にボルト等の締結手段によって固定されている。
【0033】
回転軸43の右部には、回転軸43を手動で回動させる駐車ブレーキレバー50が設けられている。駐車ブレーキレバー50の下部は、左右方向に延在する回転軸51の右部に固定されている。回転軸51は、左右方向に延在する支持部52に回転自在に内嵌され、回転軸51の左部は、連結プレート53を介して回転軸43の右部に連結されている。また、支持部52の中間部は、右縦フレーム61に固定されている。これにより、操縦者が圃場からに駐車ブレーキレバー50を操作してトランスミッションTに内装されたブレーキを作動させることができる。
【0034】
連結プレート53は、回転軸43に上部が固定された上プレートと、回転軸51に下部が固定された下プレートと、上プレートと下プレートを連結する中間プレートから形成されている。なお、上プレートの下部と中間プレートの後部は、回転自在に固定され、中間プレートの前部と下プレートの上部は、回転自在に固定されている。これにより、駐車ブレーキレバー50を、回転軸51の軸心方向視で、回転軸51を中心として時計方向に回転させると、回転軸43が、回転軸43の軸心方向視で、反時計方向に回転して、トランスミッションTに内装されたブレーキを作動させることができる。一方、駐車ブレーキレバー50を、回転軸51の軸心方向視で、回転軸51を中心として反時計方向に回転させると、回転軸43が、回転軸43の軸心方向視で、時計方向に回転して、トランスミッションTに内装されたブレーキの作動を解除させることができる。
【0035】
操作レバー33とトランスミッションTのブレーキを作動させる油圧バルブ(図示省略)は、操作ワイヤによって接続されている。操作ワイヤは、仕切プレート46の前方に配策された後に、フロア38に形成された貫通孔を挿通され、その後、サイドパネル37の下方に配策されて油圧バルブに至っている。
【符号の説明】
【0036】
1 機体フレーム
2 走行装置
3 刈取装置
5 操縦部
16 右カバー(カバー)
16A 膨出部
22 フロントカバー
22A 左側部位
23 凹部
32 フロントパネル
33 操作レバー
36 変速レバー
37 サイドパネル
38 フロア