(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
トゥレット症候群(Tourette syndrome)とは、顔をしかめたり、頭頸部、四肢などを大きく動かしたり、奇声を発したりする「チック」と呼ばれる症状を伴う神経精神疾患の一つである。その病名は、この疾患を研究したフランス人医師Georges Gilles de la Tourette(1857-1904)の名に由来する。
【0003】
トゥレット症候群の症状は、「チック」と呼ばれる、不随意的、突発的、反復的な運動又は発声である。「チック」には、運動チックと音声チックがあり、それぞれはさらに単純チックと複雑チックに分類される。単純チックは身体の一部の筋を明らかに無目的に動かすものである。複雑チックは、身体の多くの部位の筋肉を動かす複雑な運動で、あたかも目的があるかのように見えるものである。音声チックはトゥレット症候群に特徴的な症候であり、咳払いや鼻ならしのようなものから、言葉にはならない叫び声やうなり声など
を含む単純音声チックと、社会的に受容し難い卑猥、粗野な語を不随意的に発する「汚言」、他人が発した語などを不随意的に繰り返す「反響言語」などの複雑音声チックが見られる。
【0004】
トゥレット症候群の発症の平均年齢は7歳前後とされ、ほとんどが14歳までに発症する。トゥレット症候群の患者の男女比は、5:1と男性が圧倒的に多いとされる。トゥレット症候群の初期症状は、瞬目や頭を動かすなどの運動チックであることが多い。音声チックの症状が現れる時期は、運動チックの症状が現れる時期よりも遅く、平均11歳前後であるといわれる。複雑音声チックである「汚言」の症状が現れるのは平均13〜14歳である。
トゥレット症候群の経過は、寛解と憎悪を繰り返すのが特徴であるが、10代前半において症状がピークとなり、成人になると軽減することが多い。成人になってもチックの症状が残存する場合には、ストレスなどの環境要因によって、さらに憎悪することもある。
【0005】
トゥレット症候群の原因解明は未だ研究途上であるが、ドパミン遮断薬が有効であることから、大脳基底核におけるドパミン系の過活動又はドパミン受容体の過敏性が考えられてきた。それ以外に、セロトニン系、ノルアドレナリン系などの関与も指摘されているが、これまでのところ、ドパミン系を主体とする大脳基底核−辺縁系−皮質になんらかの問題が存在することにより、運動系の制御不全が生じているとする説が有力である。
トゥレット症候群の発症患者の多くに家族発症が見られ、一卵性双生児の場合に同時に発症する確率が高いこと等から、トゥレット症候群には遺伝的要因が関与しているとされている。一方、家族性・遺伝性のものではないトゥレット症候群の孤発例も多く、精神ストレスなどによって症状が悪化することが知られており、環境要因も関与していると考えられる。
【0006】
トゥレット症候群の患者は、奇異な運動や発声、そして「汚言」等により誤解を受けることが多く、知能や人格に障害がないにもかかわらず学業や就労などの社会生活に著しい障害をきたす場合がある。このような精神的なストレスから、トゥレット症候群の患者は症状がさらに憎悪することがある。また、トゥレット症候群の患者の多くは、合併症として、注意欠陥多動性障害、強迫性障害等を発症することが多い。
【0007】
トゥレット症候群の治療としては、一定の治療法はなく、家族ガイダンスや環境要因の調整を行うことから始まり、症状が重い場合には薬物療法も行われる。
薬物療法としては、ドパミン遮断薬が現在までのところ最も有効性が高く、ハロペリドール(halperidol)、レボドパ(L-dopa)、ピモジド(pimozide)、リスペリドン(Risperidone)等が用いられている。他に、ノルエピネフリンリセプター作動薬であるクロニジン(Clonidine)が有効であるという報告もある。
しかしながら、これらの薬物療法は、トゥレット症候群に対して有効であるものの、副作用が強く、十分な量を投与することができないものであった。特に、10歳未満の患者に対してドパミン遮断剤を投与することは、前頭葉の発達に影響を及ぼすことから、できるだけ使用を避ける必要があるものであった。
【0008】
ところで、生体リズムの調整作用を有するホルモンであるメラトニンと、トゥレット症候群との関連性については推測がされているのみであった。トゥレット症候群と症状が類似する遅発性ジスキネジアが、メラトニン分泌に関連性があるとする研究結果から、メラトニン分泌の混乱がトゥレット症候群の病理生態学とも関連性があるかもしれないと推測する報告がある(非特許文献1)。
また、メラトニン受容体作動薬は、睡眠障害治療剤や、時差ボケ治療剤等として用いることは知られていたが、トゥレット症候群の治療剤として用いることは知られていなかった(特許文献1及び2)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.本発明のトゥレット症候群又はその合併症の治療剤又は予防剤
本発明は、メラトニン受容体作動薬又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする、トゥレット症候群の治療剤若しくは予防剤又はトゥレット症候群の合併症の治療剤若しくは予防剤を提供する。
本発明において「トゥレット症候群」とは、「トゥレット症/トゥレット障害」、「Tourette Syndrome (TS)」、「Gilles de la Tourette Syndrome (GTS)」とも呼ばれ、運動チックと音声チックが1年以上にわたり続く疾患をいう。トゥレット症候群の診断は、例えば、世界保健機関(WHO)が作成した国際疾病分類第10版(International Classification of Diseases 10th revision 、ICD-10)や、米国精神医学会が作成したDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disease, Fifth Edition、精神障害の分類と診断の手引き第5版)に従って行うことができる。
本発明の治療剤及び予防剤は、トゥレット症候群であると診断された患者のみならず、トゥレット症候群の可能性のある患者や、トゥレット症候群を発症する恐れのある患者に対しても、治療剤又は予防剤として投与することができる。
【0018】
また、本発明において「トゥレット症候群の合併症」とは、トゥレット症候群に併発する疾患又はトゥレット症候群によって2次的に引き起こされる疾患をいい、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder:ADHD)、強迫性障害(obsessive compulsive disorder:OCD)、不安・抑うつ、衝動性、自閉症、自傷行為等を含む。
注意欠陥多動性障害とは、集中困難、過活動、不注意等の症状を特徴とする神経発達症又は行動障害の一種であり、一般的に遺伝的要因が関与しているとされる疾患である。注意欠陥多動性障害は、トゥレット症候群と併発することが多いことが知られている。
強迫性障害とは、手や体を何度も洗うなど、心配ごとが要因となって不合理な行為や思考を反復してしまう精神疾患の一つである。強迫性障害は、一般的に心理的要因が大きく関わっているとされているが、トゥレット症候群と併発することが多いことが知られている。
トゥレット症候群を治療又は予防することによって、これらの合併症も治療又は予防することができることから、本発明の治療剤又は予防剤は、これらの合併症の治療剤又は予防剤として使用することができる。
【0019】
本発明の治療剤又は予防剤が含有する「メラトニン受容体作動薬」としては、メラトニン受容体の作動薬(アゴニスト)として機能し、メラトニン受容体を介した作用を引き起こすものであれば、どのような化合物であってもよく、例えば、公知のメラトニン受容体作動薬を使用することができる。また、体内での代謝によりメラトニン受容体作動薬に変化するプロドラッグであってもよい。
メラトニン受容体作動薬としては、特に、脳に存在するメラトニン受容1型(MT1)及び/又はメラトニン受容体2型(MT2)に対する選択性を有する作動薬が好ましく、主に内蔵に存在するメラトニン受容体3型(MT3)に対しては選択性が低いものが好ましい。
【0020】
2.一般式(1)で示されるメラトニン受容体作動薬
メラトニン受動体作動薬としては、次の一般式(1)
【0021】
【化3】
[式中、R
1は置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいアミノ基又は置換基を有していてもよい複素環基であり、
R
2は水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、
R
3は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基又は置換基を有していてもよい複素環基であり、
【0022】
【化4】
(式中、A環は置換基を有していてもよい5ないし7員の酸素原子を含む複素環であり、B環は置換基を有していてもよいベンゼン環であり、R
4は水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R
4’は置換基を有していてもよい炭化水素基である。)であり、
mは1ないし4の整数である。]
で表される化合物を用いることが好ましい。
【0023】
一般式(1)で表される化合物は、武田薬品工業株式会社によって開発された化合物であり、平成9年3月7日に特許出願されている(特願平9−52175)。この特許出願については、平成11年2月12日に特許登録されており(特許第2884153号、特許文献1)、また、この出願を基礎とした分割出願がされて(特願平10−268110)、分割出願については平成21年8月14日に特許登録されている(特許第4358917号、特許文献2)。
親出願に係る特許(特許文献1)は、S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル)プロピオンアミド(以下、「ラメルテオン」という。)を権利対象とする特許であり、子出願に係る特許(特許文献2)は、一般式(1)で表される化合物のうち、ラメルテオン以外の化合物を権利対象とする特許である。
【0024】
一般式(1)で表される化合物については、特許文献1及び2において、メラトニン受容体の作動薬となることが実験的に示されており、また、睡眠覚醒リズム障害、時差ボケ治療剤等として使用できることが記載されている。
また、一般式(1)に示される化合物の合成方法及び合成例についても、特許文献1及び2に記載されている。
【0025】
一般式(1)で表される化合物のうち、ラメルテオンについては、武田薬品工業株式会社により、日本と米国で薬事承認を得て睡眠導入剤(商品名は「ロゼレム(Rozerem)」登録商標))として販売されている。
ラメルテオンは、脳の機能を抑制する従来の睡眠導入剤とは異なり、体内時計を調節することで自然な眠りを導入するもので、副作用が少なく、薬の効果が少なくなってしまう「耐性」の問題や、依存や乱用の問題が生じない薬と考えられている。
このように、メラトニン受容体作動薬は、副作用の少ない医薬品となることが知られており、メラトニン受容体作動薬を有効成分として含有する本発明の治療剤及び予防剤も、従来のトゥレット症候群の治療剤と比較して、副作用が大幅に少ない医薬品になると考えられる。
尚、ラメルテオンは、メラトニン受容1型(MT1)及びメラトニン受容体2型(MT2)に対する選択性が高い作動薬である。
【0026】
一般式(1)のR
1〜R
4,R
4’における、「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、脂肪族炭化水素基、単環式飽和炭化水素基又は芳香族炭化水素基とすることができ、炭素数1ないし16個のものが好ましい。具体例としては、これらに限定されるわけではないが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基及びアリール基が挙げられる。
ここで、「アルキル基」としては、低級アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC
1−6アルキル基とすることができる。「アルケニル基」としては、低級アルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基及びイソブテニル基等のC
2−6アルケニル基とすることができる。「アルキニル基」としては、低級アルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、プロパルギル基、1−プロピニル基等のC
2−6アルキニル基等とすることができる。「シクロアルキル基」としては、低級シクロアルキル基が好ましく、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等のC
3−6シクロアルキル基とすることができる。「アリール基」としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ビフェニル基及び2−アンスリル基等のC
6−14アリール基が好ましく、例えばフェニル基とすることができる。
【0027】
一般式(1)のR
1〜R
4,R
4’における、「炭化水素基」が有していてもよい「置換基」としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン化されていてもよい低級アルキル基(例えば、メチル基、クロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、2−ブロモエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、プロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、ヘキシル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基等のハロゲン化されていてもよいC
1−6アルキル基)、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等のC
1−6アルコキシ基)、アミノ基、モノ−低級アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基等のモノ−C
1−6アルキルアミノ基)、ジ−低級アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのジ−C
1−6アルキルアミノ基)、カルボキシル基、低級アルキルカルボニル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基等のC
1−6アルキル−カルボニル基)、低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC
1−6アルコキシ−カルボニル基)、カルバモイル基、モノ−低級アルキルカルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等のモノ−C
1−6アルキル−カルバモイル基)、ジ−低級アルキルカルバモイル基(例えば、ジメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基等のジ−C
1−6アルキル−カルバモイル基)、アリールカルバモイル基(例えば、ファニルカルバモイル基、ナフチルカルバモイル等のC
6−10アリール−カルバモイル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル等のC
6−10アリール基)、アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等のC
6−10アリールオキシ基)、ハロゲン化されていてもよい低級アルキルカルボニルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、トリフルオロアセチルアミノ基等のハロゲン化されていてもよいC
1−6アルキル−カルボニルアミノ基)、オキソ基等が用いられる。
「置換基を有していてもよい炭化水素基」の「炭化水素基」は、前記の置換基を、炭化水素基の置換可能な位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合は各置換基が同一又は異なっていてもよい。
【0028】
一般式(1)のR
1及びR
3における、「置換基を有していてもよい複素環基」の「複素環基」としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、炭素原子以外に窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれた1種又は2種を1ないし4個(好ましくは1ないし3個)ヘテロ原子として含む5ないし14員(好ましくは5ないし10員)の(単環式ないし3環式、好ましくは単環式または2環式)複素環基とすることができる。具体例としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、2−又は3−チエニル基、2−又は3−フリル基、1−、2−又は3−ピロリル基、1−、2−又は3−ピロリジニル基、2−、4−又は5−オキサゾリル基、3−、4−又は5−イソオキサゾリル基、2−、4−又は5−チアゾリル基、3−、4−又は5−イソチアゾリル基、3−、4−又は5−ピラゾリル基、2−、3−又は4−ピラゾリジニル基、2−、4−又は5−イミダゾリル基、1,2,3−トリアゾリル基、1,2,4−トリアゾリル基、1H−又は2H−テトラゾリル基等の炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれたヘテロ原子を1ないし4個含む5員環基とすることができる。また、例えば、2−、3−又は4−ピリジル基、N−オキシド−2−、3−又は4−ピリジル基、2−、4−又は5−ピリミジニル基、N−オキシド−2−、4−又は5−ピリミジニル基、チオモルホリニル基、モルホリニル基、ピペリジノ基、2−、3−又は4−ピペリジル基、チオピラニル基、1,4−オキサジニル基、1,4−チアジニル基、1,3−チアジニル基、ピペラジニル基、トリアジニル基、3−又は4−ピリダジニル基、ピラジニル基、N−オキシド−3−又は4−ピリダジニル基等の炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれたヘテロ原子を1ないし4個含む6員環基とすることができる。また、例えば、インドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、インドリジニル基、キノリジニル基、1,8−ナフチリジニル基、ジベンゾフラニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、クロマニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基等の炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれたヘテロ原子を1ないし4個含む2環性または3環性縮合環基(好ましくは、上述の5ないし6員環が炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含んでいてもよい5ないし6員環基1ないし2個と縮合して形成される基)を用いることができる。中でも、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし3個含む5ないし7員(好ましくは5または6員)の複素環基が好ましい。
【0029】
一般式(1)のR
1及びR
3における、「複素環基」が有していてもよい「置換基」としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのC
1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC
3−6シクロアルキル基)、低級アルキニル基(例えば、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基等のC
2−6アルキニル基)、低級アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基などのC
2−6アルケニル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、フェネチル等のC
7−11アラルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基などのC
6−10アリール基等、好ましくはフェニル基)、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ等のC
1−6アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等のC
6−10アリールオキシ基)、低級アルカノイル基(例えば、ホルミル基や、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等のC
1−6アルキル−カルボニル基)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、ナフトイル基等のC
6−10アリール−カルボニル基)、低級アルカノイルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基や、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等のC
1−6アルキル−カルボニルオキシ基)、アリールカルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等のC
6−10アリール−カルボニルオキシ基)、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル等のC
1−6アルコキシ−カルボニル基)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基等のC
7−11アラルキルオキシカルボニル基)、カルバモイル基、モノ−、ジ−又はトリ−ハロゲノ−低級アルキル基(例えば、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等のモノ−、ジ−またはトリ−ハロゲノ−C
1−4アルキル基)、オキソ基、アミジノ基、イミノ基、アミノ基、モノ−低級アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基等のモノ−C
1−4アルキルアミノ基)、ジ−低級アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等のジ−C
1−4アルキルアミノ基)、炭素原子と1個の窒素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれたヘテロ原子を1ないし3個含んでいてもよい3ないし6員の環状アミノ基(例えば、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリジニル基、ピペリジル基、モルホリニル基、ジヒドロピリジル基、ピリジル基、N−メチルピペラジニル基、N−エチルピペラジニル基等の3ないし6員の環状アミノ基)、アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等のC
1−3アルキレンジオキシ基)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基、スルファモイル基、モノアルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N−プロピルスルファモイル、N−イソプロピルスルファモイル、N−ブチルスルファモイル等のモノ−C
1−6アルキルスルファモイル基)、ジアルキルスルファモイル基(例えば、N,N−ジメチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基等のジ−C
1−6アルキルスルファモイル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基等のC
1−6アルキルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のC
6−10アリールチオ基)、低級アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基等のC
1−6アルキルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基等のC
6−10アリールスルフィニル基)、低級アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基等のC
1−6アルキルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等のC
6−10アリールスルホニル基)などが用いられる。
「置換基を有していてもよい複素環基」の「複素環基」は、前記の置換基を、複素環基の置換可能な位置に1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよく、置換基数が2個以上の場合は、各置換基は同一又は異なっていてもよい。
【0030】
一般式(1)のR
1における、「置換基を有していてもよいアミノ基」としては、例えば、置換基を有さないアミノ基や、前記の「置換基を有していてもよい炭化水素基」を1又は2個有するアミノ基とすることができる。この「アミノ基」が有していてもよい「置換基」の好ましいものとしては、例えば、置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC
6−10アリール基が挙げられる。
【0031】
一般式(1)におけるA環は、「置換基を有していてもよい5ないし7員の酸素原子を含む複素環」である。ここで、「5ないし7員の酸素原子を含む複素環」としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、炭素原子及び酸素原子以外に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれた1種又は2種を1ないし3個(好ましくは1又は2個)含んでいてもよい5ないし7員(好ましくは5又は6員)の複素環等とすることができる。
【0032】
一般式(1)の「置換基を有していてもよい5ないし7員の酸素原子を含む複素環」の「置換基」としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、置換基を有していてもよい低級アルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよい低級アルキニル基、置換基を有していてもよい低級アルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等のC
1−6アルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等のC
6−10アリールオキシ基)、低級アルカノイル基(例えば、ホルミル基や、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等のC
1−6アルキル−カルボニル基)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、ナフトイル基等のC
6−10アリール−カルボニル基)、低級アルカノイルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基や、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等のC
1−6アルキル−カルボニルオキシ基)、アリールカルボニルオキシ基(例えば、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等のC
6−10アリール−カルボニルオキシ基)、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等のC
1−6アルコキシ−カルボニル基)、アラルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基等のC
7−11アラルキルオキシ−カルボニル基)、カルバモイル基、モノ−、ジ−又はトリ−ハロゲノ−低級アルキル基(例えば、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等のモノ−、ジ−又はトリ−ハロゲノ−C
1−4アルキル基)、オキソ基、アミジノ基、イミノ基、アミノ基、モノ−低級アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基等のモノ−C
1−4アルキルアミノ基)、ジ−低級アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等のジ−C
1−4アルキルアミノ基)、炭素原子と1個の窒素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれたヘテロ原子を1ないし3個含んでいてもよい3ないし6員の環状アミノ基(例えば、アジリジニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリジニル基、ピペリジル基、モルホリニル基、ジヒドロピリジル基、ピリジル基、N−メチルピペラジニル基、N−エチルピペラジニル基等の3ないし6員の環状アミノ基)、アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等のC
1−3アルキレンジオキシ基)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、スルホ基、スルフィノ基、ホスホノ基、スルファモイル基、モノアルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−イソプロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基等のモノ−C
1−6アルキルスルファモイル基)、ジアルキルスルファモイル基(例えば、N,N−ジメチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基等のジ−C
1−6アルキルスルファモイル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ基等のC
1−6アルキルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等のC
6−10アリールチオ基)、低級アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基等のC
1−6アルキルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基等のC
6−10アリールスルフィニル基)、低級アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基等のC
1−6アルキルスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等のC
6−10アリールスルホニル基)等が用いられる。
ここで、「低級アルキル基」、「低級アルケニル基」、「低級アルキニル基」、「低級シクロアルキル基」、「アリール基」は、例えば、前記「炭化水素基」が有していてもよい「置換基」と同じものを1ないし5個、好ましくは1ないし3個有していてもよい。
【0033】
一般式(1)におけるB環は、「置換基を有していてもよいベンゼン環」であるが、例えば、これらに限定されるわけではないが、置換基を有さないベンゼン環や、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいアミノ基、アミド基(例えば、ホルムアミド、アセトアミドなどのC
1−3アシルアミノ基)、置換基を有していてもよい低級アルコキシ基、低級アルキレンジオキシ基(例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等のC
1−3アルキレンジオキシ基)等から選ばれる1ないし2個の置換基を置換可能な位置に有するベンゼン環とすることができる。
ここで、「置換基を有していてもよい炭化水素基」及び「置換基を有していてもよいアミノ基」としては、例えば、前記したものと同様のものを用いることができる。また、「置換基を有していてもよい低級アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ及びtert−ブトキシ等のC
1−6アルコキシ基に、置換基として、例えば、前記「炭化水素基」が有していてもよい「置換基」等を0ないし3個有するものが挙げられる。これらの「置換基を有していてもよい炭化水素基」、「置換基を有していてもよいアミノ基」及び「置換基を有していてもよい低級アルコキシ基」が有する置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
【0034】
一般式(1)で表される化合物の好ましい例としては、
R
1が、i)ハロゲンまたはC
1−6アルコキシ基でそれぞれ1〜4個置換されていてもよいC
1−6アルキル基、ii)C
3−6シクロアルキル基、iii)C
2−6アルケニル基、iv)C
1−6アルコキシ基、ニトロ基、ハロゲノC
1−6アルキル−カルボニルアミノ基またはハロゲン原子でそれぞれ1〜4個置換されていてもよいC
6−10アリール基、v)モノ−またはジ−C
1−6アルキルアミノ基、vi)1〜3個のC
1−6アルコキシ基で置換されていてもよいC
6−10アリールアミノ基またはvii)C
7−11アラルキルオキシ−カルボニル基で1〜2個置換されていてもよい6員含窒素複素環基であり、
R
2が水素原子または低級(C
1−6)アルキル基であり、
R
3が、(i)水素原子、(ii)低級(C
1−6)アルキル基または(iii)C
6−14アリール基であり、
R
4が、水素原子またはオキソ基で置換されていてもよい低級(C
1−6)アルキル基であり、
A環が、次の式で表され、
【0035】
【化5】
[式中、Eは、(i)CH
2CH
2、(ii)CH=CH、(iii)CH
2O、(iv)OCH
2、(v)CH
2S(O)q'(q'は0ないし2の整数)、(vi)S(O)q'CH
2(q'は前記と同意義)、(vii)CH
2NH、(viii)NHCH
2、(ix)N=N、(x)CH=N、(xi)N=CHまたは(xii)CONHを示し、
n'は、0ないし2の整数を示し、
R
5は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいC
1−6アルキル基、置換基を有していてもよいC
1−6アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、又はオキソ基である1個又は2個の置換基を示す。(「置換基を有していてもよい」の「置換基」は、例えば、前記「炭化水素基」が有していてもよい「置換基」を示す。)]
B環が、次の式で表され、
【0036】
【化6】
[式中、R
6aは、水素原子、ハロゲン原子又は低級(C
1−6)アルキル基を示す。]
mが、1又は2である化合物である。
【0037】
一般式(1)で表される化合物のより好ましい例としては、
R
1がエチル基であり、R
2及びR
3が水素原子であり、
【0038】
【化7】
であり、
R
4が水素原子であり、A環が酸素原子を1つ含む5員の複素環であり、B環がベンゼン環であり、mが2である、下記の構造式で表される化合物である。
【0039】
【化8】
この化合物の名称が「ラメルテオン」であり、IUPAC命名法による物質名は「S)−N−[2−(1,6,7,8−テトラヒドロ−2H−インデノ[5,4−b]フラン−8−イル)エチル)プロピオンアミド」である。
【0040】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、特許第2884153号公報(特許文献1)又は特許第4358917号公報(特許文献2)に記載された方法により合成することができる。
例えば、一般式(1)で表される化合物の1つの合成スキームを以下の反応式に示す。
【0044】
3.その他のメラトニン受容体作動薬
本発明の治療剤又は予防剤が含有する「メラトニン受容体作動薬」としては、一般式(1)で表される化合物以外のものとして、これらに限定されるわけではないが、例えば、次の1)〜10)の化合物を用いることができる。
【0045】
1) メラトニン
メラトニン(N−アセチル−5−メトキシトリプタミン)は、次の構造式で表される天然の化合物である。メラトニンは動物、植物、微生物中に存在するが、動物ではホルモンの一種として、脳の松果腺から分泌される。
【0046】
【化12】
メラトニンは、メラトニン受容体の本来のリガンドであり、体内に投与した場合にメラトニン受容体作動薬となる。
本発明で用いる「メラトニン受容体作動薬」として、メラトニンを用いた場合には、副作用のより少ない治療剤又は予防剤とすることができる。しかしながら、メラトニンは体内の酵素により代謝されやすく半減期が20〜30分と短い。したがって、長時間効果を持続させる医薬品とするためには、メラトニン以外のメラトニン受容体作動薬を用いることが好ましい。
【0047】
2) メラトニン誘導体
メラトニン誘導体は、メラトニンに官能基を導入し又は原子を置換するなどして、メラトニンの機能を本質的に変更しないように改変された化合物をいい、これらに限定されるわけではないが、例えば、2−ヨードメラトニン、6−クロロメラトニン、6−メトキシメラトニン、2,4,6,7−テトラブロモメラトニン、6−クロロ−5−メトキシ−α―メチルメラトニン、6−ヒドロキシメラトニン、8−ヒドロキシメラトニン等を用いることができる。
【0048】
3) アゴメラチン
アゴメラチン(N−[2−(7−メトキシ−1−ナフチル)エチル]アセトアミド)は、次の構造式で表される化合物である。
【0049】
【化13】
アゴメラチンは、メラトニン受容1型(MT1)及びメラトニン受容体2型(MT2)の作動薬(アゴニスト)であり、セロトニン受容体5−HT
2B及び5−HT
2Cの作動薬にもなる化合物である。アゴメラチンは、抗うつ剤として、Servier Laboratories社からValdoxan(登録商標)の商品名で販売されている。
【0050】
4) タシメルテオン
タシメルテオン(トランス−N−[[2−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−4−イル)シクロプロパン−1−イル]メチル]プロパンアミド)は、次の構造式で表される化合物である。
【0051】
【化14】
タシメルテオンは、メラトニン受容1型(MT1)及びメラトニン受容体2型(MT2)の作動薬である。タシメルテオンは、全盲患者の睡眠障害の治療剤として承認され、Vanda Pharmaceuticals社からHetlioz(登録商標)の商品名で販売されている。
【0052】
5) N−[(2R)−2−(6−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−3−イル)プロピル]アセトアミド
N−[(2R)−2−(6−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−3−イル)プロピル]アセトアミド(TIK301、LY156735)は、次の構造式で表される化合物である。
【0053】
【化15】
N−[(2R)−2−(6−クロロ−5−メトキシ−1H−インドール−3−イル)プロピル]アセトアミド(TIK301、LY156735)は、メラトニン受容1型(MT1)及びメラトニン受容体2型(MT2)の作動薬であり、Eli Lilly社によって概日リズム障害の治療剤等として開発が進められている化合物である。
【0054】
6) N−[2−[2,3,7,8−テトラヒドロ−1H−フロ(2,3−g)インドール−1−イル]エチル]アセトアミド
N−[2−[2,3,7,8−テトラヒドロ−1H−フロ(2,3−g)インドール−1−イル]エチル]アセトアミド(GR196429)は、次の構造式で表される化合物である。
【0055】
【化16】
N−[2−[2,3,7,8−テトラヒドロ−1H−フロ(2,3−g)インドール−1−イル]エチル]アセトアミド(GR196429)は、メラトニン受容1型(MT1)及びメラトニン受容体2型(MT2)の作動薬である。
【0056】
7) 2−アセトアミド−8−メトキシテトラリン
2−アセトアミド−8−メトキシテトラリン(AH−001)は、次の構造式で表される化合物である。
【0057】
【化17】
2−アセトアミド−8−メトキシテトラリン(AH−001)は、メラトニン受容体作動薬であり、米国特許第5,151,446号にその合成方法が記載されている。
【0058】
8) 8−メトキシ−2−プロピオンアミド−テトラリン
8−メトキシ−2−プロピオンアミド−テトラリン(AH−002)は、次の構造式で表される化合物である。
【0059】
【化18】
8−メトキシ−2−プロピオンアミド−テトラリン(AH−002)は、メラトニン受容体作動薬であり、米国特許第5,151,446号にその合成方法が記載されている。
【0060】
9) 8−メトキシ−2−クロロアセトアミドテトラリン
8−メトキシ−2−クロロアセトアミドテトラリン(AH−017)は、次の構造式で表される化合物である。
【0061】
【化19】
8−メトキシ−2−クロロアセトアミドテトラリン(AH−017)は、メラトニン受容体作動薬であり、米国特許第5,151,446号にその合成方法が記載されている。
【0062】
10) N−[2−[(4−メトキシフェニル)−フェニルアミノ]エチル]アセトアミド
N−[2−[(4−メトキシフェニル)−フェニルアミノ]エチル]アセトアミド(UCM765)は、次の構造式で表される化合物である。
【0063】
【化20】
N−[2−[(4−メトキシフェニル)−フェニルアミノ]エチル]アセトアミド(UCM765)は、メラトニン受容体2型(MT2)の作動薬である。
【0064】
4.製剤
本発明で用いる「メラトニン受容体作動薬」は、塩とならないフリーの形態又は塩の形態として、本発明の治療剤及び予防剤に含有させることができる。
ここで、塩の形態とする場合には、例えば、薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等とすることができる。
【0065】
また、本発明の治療剤及び予防剤は、メラトニン受容体作動薬又はその塩を薬学的に許容される担体と混合して、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、液剤、注射剤、坐剤、貼付剤等として製剤化することができる。
ここで、薬学的に許容できる担体としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶解補助剤、等張化剤、溶解補助剤等を用いることができる。
【0066】
5.用法、用量等
本発明の治療剤及び予防剤は、トゥレット症候群であると診断された患者、トゥレット症候群の可能性のある患者、又はトゥレット症候群を発症する恐れのある者に投与することができる。
投与は、経口的に行うことも、静脈中に投与することもできる。投与量は、年齢や疾患の程度によって異なるが、成人に対し経口剤として投与する場合、0.01〜300mg程度である。投与は、1日に1ないし数回に分けて投与することができるが、就寝前に行うことが好ましい場合もある。また、本発明の治療剤・予防剤は、他の精神疾患の治療剤と併用することもできる。
【0067】
本発明の治療剤及び予防剤の効果は、例えば、Yale Global Tic Severity Scale(YGTSS)等に従って、チックの程度を点数化して計測することにより、チック症状軽減の経過を観察して効果を確認することができる。
【0068】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0069】
(症例1)
30歳男性のトゥレット症候群の患者に対し、ラメルテオン8mgを就眠前に経口投与したところ、1週間以内に音声チック、四肢のチックが減少した。Yale Global Tic Severity Scale(YGTSS)でチックの程度を計測したところ、ラメルテオンの投与前はスコアが66であったものが、投与後には34へと大幅に軽減した。患者は、外出の機会が多くなり、趣味のバンド活動も再開できるようになった。
【0070】
(症例2)
23歳男性のトゥレット症候群の患者に対し、ラメルテオン8mgを就眠前に経口投与したところ、1週間以内に音声チック、四肢のチックが減少した。この患者は、診察待合室にいることが大きな声(音声チック)でわかるくらいであったのが、ラメルテオンの投与を開始したところ、音声チックが目立たなくなり、四肢の不随意運動も減少した。この患者は、建築関係の職業に従事していたもののチックが仕事に支障をきたしていたが、ラメルテオンの投与をしたことにより、無職の期間が短くなった。