(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭化水素ワックス、モノマー、及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、前記炭化水素ワックスが25℃において液体であり、粘度が300〜4000ミリパスカル秒(mPa・s)の範囲であり、且つ炭化水素ワックスの含有量が活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100重量%に対して0.1〜5重量%であり、前記光重合開始剤の数平均分子量が320〜1500の範囲であり、且つ光重合開始剤の含有量が活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100重量%に対して4〜30重量%である活性エネルギー線硬化型組成物を用いた活性エネルギー線硬化型オフセット印刷インキを用いてポリエチレンラミネート紙に印刷し成形された飲料容器。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、炭化水素ワックス、モノマー、及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、前記炭化水素ワックスが25℃において液体であり、粘度が300〜4000ミリパスカル秒(mPa・s)の範囲であり、且つ炭化水素ワックスの含有量が活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100重量%に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型組成物を提供することで目的とする本発明の効果を奏するものである。
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物で使用する炭化水素ワックスとしては、25℃においてその性情は液体であり、その粘度は300〜4000ミリパスカル秒(mPa・s)の範囲であり、その含有量は活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100重量%に対して0.1〜5重量%である。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物で使用する前記液状の炭化水素ワックスは直鎖状、分岐状、環状等の分子構造を有し、また飽和炭化水素、不飽和炭化水素等の混合物から構成されるが特に限定されるものではなく、前述の性状を満たすものを適宜用いることができるが、主成分の沸点が400℃以上であることが、組成物中のVOC(揮発性有機化合物)量を抑制する点において好ましい。
【0016】
前記液状の炭化水素ワックスは、硬化時にインキ塗膜上面に薄膜を形成し、未反応モノマーや未反応光重合開始剤の成分移行を抑制するものと推察される。一方で、固体ワックスを例に挙げれば、固体ワックスは「点」として塗膜中に点在するため、成分移行を抑制する効果が得られない。
前記液状の炭化水素ワックスについて、粘度が300(mPa・s)を下回ると、硬化性および低マイグレーション性能が低下する傾向にあり、粘度が4000(mPa・s)を超えると、活性エネルギー線硬化型組成物に含まれるモノマーや樹脂との相溶性が低下し、組成物の流動性が低下する傾向にある。また、液状の炭化水素ワックスの添加量について、まったく添加しないと耐スクラッチ性が保持できず、マイグレーションも抑制できない傾向にあり、活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100重量%に対して5重量%を超えると硬化塗膜が軟化し、低マイグレーション性能および硬化性が悪化する傾向にある。
【0017】
また、前記炭化水素ワックスの数平均分子量は1200〜20000の範囲が好ましく、より好ましくは1500〜10000の範囲であり、更に好ましくは1800〜5000の範囲である。数平均分子量が1200を下回ると、硬化性および低マイグレーション性能が低下する傾向にあり、数平均分子量が20000を上回ると、活性エネルギー線硬化型組成物に含まれるモノマーや樹脂との相溶性が低下し、組成物の流動性が低下する傾向にある。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物で使用するモノマーとしては、公知公用のエチレン性二重結合を有するモノマー化合物を用いることができる。メタクリレートモノマーを適宜併用することも可能であるが、本発明においてはより硬化性の優れるアクリレートモノマーを用いることが好ましい。またオフセットインキ組成物においては、単官能モノマーよりも、より反応性の高い2官能以上のアクリレートモノマーを用いることが好ましいが、用途に応じて印刷基材への接着性、硬化皮膜の柔軟性等の必要物性を得る為に、適宜単官能アクリレートモノマーを併用することが可能である。
【0019】
前記単官能アクリレートモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0020】
前記2官能以上のアクリレートモノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチルー1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の2価アルコールのジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールのポリアクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリアクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに2モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリアクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリアクリレート、ビスフェノールA1モルに2モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリアクリレート等が挙げられる。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に更に良好な硬化性および低マイグレーション性能を発現させる目的として、前記アクリレートモノマーのうち、4官能以上のアクリレートモノマーを併用することが可能であり、例としてジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等をあげることができ、これらは単独でも複数組合せて用いてもよい。中でもジペンタエリスリトールペンタアクリレート及び/又はジペンタエリスリトールヘキサアクリレートは組成物の硬化性を大きく向上させる点において好ましく、各々単独もしくは両者の総計が活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100重量%に対して10〜50重量%の範囲で、より好ましくは15〜45重量%の範囲で用いることができる。
【0022】
更に、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物では、必要に応じて各種バインダー樹脂を利用することができる。ここで述べるバインダー樹脂とは、適切な顔料親和性と分散性を有し、印刷インキ等に要求されるレオロジー特性を有する樹脂全般を示しており、例えば非反応性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、ジアリルイソフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース誘導体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体等を挙げることができ、または樹脂分子中に少なくとも1つ以上の重合性基を有するエポキシアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物等を使用することもでき、これらバインダー樹脂化合物は、単独で使用しても、いずれか1種以上を組合せて使用してもよい。
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて印刷インキとした場合、基材に印刷後、活性エネルギー線を照射することで硬化皮膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。これらのなかでも特に、硬化性および利便性の点から紫外線(UV)が好ましい。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いたオフセットインキ組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0025】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物が紫外線硬化型組成物である場合に用いる光重合開始剤は、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシム系化合物、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;
【0026】
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ((4−メチルチオ)フェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアミノアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0027】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、
ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、
アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;その他10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。これらのなかでも特に硬化性に優れる点からアミノアルキルフェノン系化合物が好ましく、また、特に発光ピーク波長が350〜420nmの範囲の紫外線を発生するUV−LED光源を活性エネルギー線源として用いた場合には、アミノアルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、及びアミノベンゾフェノン系化合物を併用することが硬化性に優れる点から好ましい。
【0028】
また、前記した重合開始剤の他に、光増感剤を利用することで硬化性を一層向上させることが可能である。斯かる光増感剤は、例えば、脂肪族アミン等のアミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0029】
前記光重合開始剤のうち、数平均分子量が320〜1500の範囲にある光重合開始剤を用いることが、より良好な低マイグレーション性と硬化性を得る点においてより好ましい。数平均分子量320〜1500の範囲にある光重合開始剤の具体例として、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(数平均分子量:366.5)、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(数平均分子量:380.5)等を、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量418.5)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(数平均分子量348.0)等を、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(数平均分子量:340.4)、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン)(数平均分子量:424.57)、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ〕フェニル}−2−メチルプロパノン(数平均分子量:342.39)等を挙げることができ、これらはどれか1つ以上含まれればよく、複数組み合わせて用いてもよい。中でも、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンの組合せがより好ましい。
【0030】
前記数平均分子量が320〜1500の範囲にある光重合開始剤の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の不揮発成分100重量%に対して4〜30重量%の範囲にあることが好ましい。4重量%未満の使用量では良好な硬化性を得ることが困難であり、30重量%を超える添加量では、開始剤量が過剰となり、保存安定性の低下(開始剤成分の析出)や低マイグレーション性能の低下をもたらすことから好ましくない。
【0031】
前記α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤の他、特許第2514804号に記載される、開始剤分子に重合性基を導入したフェニルケトン系組成物群も硬化性と低マイグレーション性を付与する目的で利用できる。例えば具体的には、この組成物群のうち4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンが「ダロキュアZLI3331」の名称で過去にメルク社(現BASF社)より販売されており、本発明において利用することができる。またα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤を高分子量化し重合性基を導入した組成物(数平均分子量約1100)が「イルガキュアLEX201」の名称でBASF社より販売されており、低マイグレーション性能に優れており同様に本発明において好適に利用することができる。
【0032】
更に硬化性を向上させるための手段として、増感剤として数平均分子量が320〜1500の範囲にある芳香族3級アミン化合物を添加してもよい。具体例として、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(数平均分子量324.47)、2官能アミン誘導体のポリ(エチレングリコール)ビスジメチルアミノベンゾエート(数平均分子量488〜532)、4官能アミン誘導体のポリ(エチレングリコール)ビスジメチルアミノベンゾエート(数平均分子量860)等を挙げることができる。
更に前記光重合開始剤、アミン化合物等に加え、特許WO2013/107588に記載される、ベンゾフェノン系開始剤と3級アミン骨格を導入した光重合性組成物群も低マイグレーション性に優れ、具体的には「IRR792(数平均分子量約780)」、「IRR842(数平均分子量約1000)」の名称でダイセルオルネクス社より販売されており、同様に本発明において好適に利用することができる。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物をオフセット印刷インキとして仕立てる場合、
着色顔料としては公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0034】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物をオフセット印刷インキとして使用する場合、その印刷基材としては特に限定は無く、例えばカタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等の印刷に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。中でも、ポリエチレンラミネート紙(ミルクカートン紙)に代表されるフィルムラミネート基材は飲料容器に広く用いられ、印刷物を重ねる、あるいは巻き取った状態で保管する際にインキ成分が裏移りすることに起因する内容物へのマイグレーションを抑制することが重要であるが、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を利用することで優れた低マイグレーション性能を付与することが可能となる。
【0035】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の利用方法としては、例えば、平版オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の各種印刷インキおよびコーティングニス等が挙げられる。
【0036】
本発明は、特に平版オフセット印刷において好適に利用することができる。オフセット印刷機は多数の印刷機メーカーによって製造販売されており、一例としてハイデルベルグ社、小森コーポレーション社、リョービMHIグラフィックテクノロジー社、マンローランド社、KBA社等を挙げることができ、またシート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても本発明を好適に利用することが可能である。更に具体的には、ハイデルベルグ社製スピードマスターシリーズ、小森コーポレーション社製リスロンシリーズ、リョービMHIグラフィックテクノロジー社製ダイヤモンドシリーズ等のオフセット印刷機を挙げることができる。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いたオフセット印刷インキの印刷後の基材上の膜厚は0.5〜2マイクロメートル程度であり、印刷基材および印刷物に塗布する紫外線硬化型コーティングニスとして使用する場合の最適塗布厚みは、紫外線照射前のウェット状態で1〜8マイクロメートルの範囲にあることが好ましく、2〜6マイクロメートルの範囲にあることがより好ましい。ニスの塗布厚みが1マイクロメートル未満の場合は良好な光沢が得られず、8マイクロメートルを超える場合はニス表面のムラ(泳ぎ)が発生しやすくなり、また紫外線照射ランプより与えられる紫外線エネルギーがニス層で多く消費されることより、下地に紫外線硬化型オフセットインキを使用する場合は、インキ層の硬化不良が発生しやすくなることから好ましくない。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いた紫外線硬化型オフセット印刷インキの製造は、従来の紫外線硬化型オフセットインキと同様に、前記炭化水素ワックス、モノマー、光重合開始剤、増感剤、予め合成した樹脂ワニス、重合禁止剤ベース、その他添加剤等を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉することで製造される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0040】
〔ウレタンアクリレートAの合成〕
撹拌機、ガス導入管、コンデンサー、及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ミリオネートMR−400、日本ポリウレタン工業株式会社製)328.1質量部、ターシャリブチルヒドロキシトルエン3質量部、メトキシハイドロキノン0.12質量部、ジブチル錫ジアセテート1.2質量部を加え、70℃に昇温し、2−ヒドロキシエチルアクリレート271.9質量部を2時間にわたって攪拌下で滴下した。滴下後、70℃で反応させ、イソシアネート基を示す2250cm−1の赤外吸収スペクトルが消失するまで反応を行いウレタンアクリレートAを得た。
【0041】
〔ウレタンアクリレートワニス1の作製〕
前記ウレタンアクリレートA 70重量%とエチレンオキサイド(平均4モル付加)変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(MIRAMER M4004、MIWON社製)30重量%をよく混合、撹拌したウレタンアクリレートワニス1を得た。
【0042】
〔重合禁止剤ベース1の作製〕
和光純薬工業社製Q1301(N‐ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩)5重量%をエチレンオキサイド(平均4モル付加)変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(MIRAMER M4004、MIWON社製)95重量%に溶解させた液状混合物を作製し、重合禁止剤ベース1を得た。
【0043】
〔インキ組成物の製造方法〕
表1の実施例1〜7および、表2の比較例1〜9のインキを三本ロールミルにて練肉させることによって、各種の紫外線硬化型インキ組成物を得た。
尚、ウレタンアクリレートワニス1を33重量%、色材としてはカーボンブラック(ラーベン1060Ultra)14重量%及び補色成分としてフタロシアニンブルー4重量%及びジオキサジンバイオレット2.5重量%(色材合計20.5重量%)、粘度調整剤としてタルク(ハイフィラー#5000PJ)1重量%、重合禁止剤ベース1の1.5重量%を、全ての実施例に共通に添加した。 尚、補色成分であるフタロシアニンブルー及びジオキサジンバイオレットはカーボンブラック自体が呈する黄味を打ち消し、インキの漆黒性を更に高める目的で少量配合している。このようなインキの色相調整は「補色」と呼ばれ、一般に広く知られる手法である。
【0044】
〔印刷物の製造方法〕
この様にして得た紫外線硬化型オフセット墨インキを、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、墨インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、ミルクカートン紙(ポリエチレンラミネート紙、テトラ・レックス、テトラパック社製)の表面に墨濃度1.6〜1.8(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)の範囲に均一に塗布されるように展色し、印刷物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
【0045】
〔UVランプ光源による乾燥方法〕
インキ塗布後の印刷物にUV照射を行い、インキ皮膜を硬化乾燥させた。水冷メタルハライドランプ(出力100W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し、印刷物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を50m/分の速度で通過させた。各条件における紫外線照射量は紫外線積算光量系(ウシオ電機社製UNIMETER UIT−150−A/受光機UVD−C365)を用いて測定した。
【0046】
〔印刷物の評価方法1:硬化性〕
硬化性は、照射直後に爪スクラッチ法による耐スクラッチ性について、印刷物表面の傷付きの程度を目視評価した。
○:爪による傷付きは見られない。
△:爪による傷付きが僅かにみられる。
×:爪による傷付きが見られる。
【0047】
〔印刷物の評価方法2:低マイグレーション性〕
前記印刷物を作製した直後に、紫外線硬化型オフセット墨インキを塗布した印刷面に対してポリ塩化ビニリデン製ラップフィルム(旭化成ケミカルズ社製)を貼り合わせ、25℃、圧力100kg/cm
2の条件にて24時間プレス処理を実施した。これにより墨インキ中の未反応の光重合開始剤およびモノマー等の低分子量成分がラップフィルム層へ移行(マイグレーション)する。プレス処理後、ラップフィルムを印刷物から剥がし、ラップフィルムの吸光度測定を実施することで、ラップフィルムにマイグレーションしたインキ成分を定量した。日本分光製紫外可視分光光度計JASCO V−570を用い、波長200〜500nmの範囲において吸光度測定を実施した。
光重合開始剤はその分子構造により各々異なる紫外線吸収特性を有しており、例として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1は波長320nm近辺に紫外線吸収ピークを有しており、同様に2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンは波長260nm近辺に、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンは波長300nm近辺に、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンは波長240nm近辺に紫外線吸収ピークを有しているため、各波長における吸光度値を記録することで、各開始剤のマイグレーション量の大小を比較することが可能となる。
また波長210nm近辺では様々な光重合開始剤やアクリレートモノマー等の化合物の紫外線吸収ピークが重なり高い吸光度値を示すことから、波長210nmの吸光度値を記録し比較することでも、低マイグレーション性能の優劣を判断することが可能となる。
吸光度の数値が低いほど、インキ成分の移行は少なく、低マイグレーション性能は優れていると判定することができる。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMH
HR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、融点の測定はSII製X−DSC7000を用いて行った。
【0052】
実施例に述べる炭化水素ワックスが25℃において液体であり、且つ粘度が300〜4000ミリパスカル秒(mPa・s)の範囲であり、炭化水素ワックスの含有量が全量の0.1〜5重量%である紫外線硬化型墨インキでは、良好な硬化性が得られ、ラップフィルムに移行した未反応モノマーや未反応開始剤によるマイグレーションが殆どない状態に抑えられた。
【0053】
炭化水素ワックスを無添加の比較例1および7では、耐スクラッチ性がなく、マイグレーションも抑制できなかった。また、比較例2が示す通り、本発明に有用な液状炭化水素ワックスであるVarsaflow EVを適量以上使用しても、耐スクラッチ性は充分でなく、マイグレーションも抑制できなかった。更に比較例3〜6では、25℃において固体のマイクロクリスタリンワックスや、ポリエチレンワックスを使用した紫外線硬化型墨インキでは、耐スクラッチ性は良好もしくは、ほぼ良好であっても、マイグレーションは抑制できなかった。更に比較例8および9では、25℃では液体であるが粘度が300〜4000ミリパスカル秒(mPa・s)の範囲にない炭化水素ワックスを使用した紫外線硬化型墨インキでは、耐スクラッチ性および低マイグレーション性能が実施例に劣る結果となった。