特許第6674752号(P6674752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674752
(24)【登録日】2020年3月11日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】草刈作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/10 20060101AFI20200323BHJP
   A01D 34/43 20060101ALI20200323BHJP
   A01B 73/06 20060101ALI20200323BHJP
   A01B 63/32 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   A01B63/10 B
   A01D34/43
   A01B73/06
   A01B63/32
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-158140(P2015-158140)
(22)【出願日】2015年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-35029(P2017-35029A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】保土澤 定廣
(72)【発明者】
【氏名】天間 修一
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−000053(JP,A)
【文献】 特開2010−041924(JP,A)
【文献】 特開2012−044884(JP,A)
【文献】 特開2012−000019(JP,A)
【文献】 実開平02−142107(JP,U)
【文献】 特開平03−147701(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0024224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 59/00 − 63/12
A01B 73/00 − 73/06
A01D 34/42 − 34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ後部に連結され、水平回動自在に左右に一対平行に設けて平行リンクを構成した回動アームによって草刈作業部をトラクタ後部から進行方向と直交する側方へ水平移動可能であるとともに、前記草刈作業部は、前記回動アームの後方端側に設けられるとともに、前記草刈作業部を保持する草刈作業部保持ブラケットが前記回動アームの後方端側に連結されていて、進行方向と平行且つ水平に設けた草刈作業部回動軸を中心に草刈作業部をトラクタ進行方向と直交する面の上下に回動可能な草刈作業機において、
前記草刈作業部がトラクタの後方に位置する非作業位置のときに、草刈作業部のトラクタ進行方向と直交する面の上下方向への回動と非作業位置から側方への水平移動を阻止するためのストッパ手段が設けられていて、ストッパ手段は、草刈作業部をトラクタ後方に位置する非オフセット状態で且つ略水平状態にすることにより作動し、
ストッパ手段は、草刈作業部を水平移動させる前記左右の回動アームの対向する側に突設した相互の突設部に設けたそれぞれの孔を重合させると共に該孔に固定ピンを差し込むことで前記草刈作業部の非作業位置から側方への移動を阻止し、左右いずれかの回動アームに設けた係合片が草刈作業部側の係合部に係合することで草刈作業部の上下への回動を阻止する構成であることを特徴とした草刈作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに装着されて草刈り作業を行う農業用機械の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の草刈装置の従来技術として特開2013−53号公報(特許文献1)、特開2012−44884号公報(特許文献2)が開示されている。
【0003】
特許文献1には、「草刈作業部がトラクタの後方に位置した時に、草刈作業部のトラクタ進行方向と直交する方向の上下方向への回動を阻止するための規制手段が設けられていて、規制手段は、草刈作業部がトラクタ後方の被オフセット状態で略水平状態にすることにより作動する」草刈作業機の開示がされている。また、特許文献2には、「平行リンクを構成する2つのアームには、それぞれ他のアームに向けて突出する突出部を互いの位置をずらして設け、前記オフセット移動の一方の位置では、前記突出部同士が当接してストッパとなり、前記オフセット移動の他方の位置では、少なくとも一方のアームの前記突出部が他方のアームに当接してストッパとなることを特徴とするオフセット作業機」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−53号公報
【特許文献1】特開2012−44884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラクタから側方にオフセットさせて作業が可能な草刈り作業機の場合、トラクタが走行していない側方部分の刈取りが可能であり、草刈作業部を走行方向と直交する方向の上下に回動可能とすることにより、トラクタ走行部に対し側方の上下方向に傾斜した部分の刈取り作業が可能となる。そして、草刈作業部がトラクタ後方に位置する時は、草刈作業部が回動する必要がなく、トラクタ車軸に対し平行な状態の水平状態での作業となる。また、非作業状態での移動時には、草刈作業部はトラクタ後方に水平状態で位置した状態が重心バランスが最も良好な状態となる。しかし、草刈作業部は走行方向と直交する方向の上下に回動可能にシリンダにより保持されているため、シリンダの内部リーク等により走行中に草刈作業部が下方に回動して、最悪の場合不用意に地面を引きずる等の事故に至ることがある。また、トラクタへの着脱の際に、草刈作業部側にスタンドを設けた場合、草刈作業部側と装着部側が平行ではない場合に、装着側が水平とならないために着脱が困難となる問題がある。また、草刈作業部を側方にオフセットさせるためにシリンダを使用している場合も同様に、シリンダの内部リーク等により移動走行中に草刈作業部が側方にオフセットしての衝突などの事故が起きる虞がある。
【0006】
このため本発明の目的は、草刈作業部がトラクタ後方の収納位置の時、容易な操作により草刈作業部が回動又は移動しないように低コストで構成された草刈作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、トラクタ後部に連結され、水平回動自在に左右に一対平行に設けて平行リンクを構成した回動アームによって草刈作業部をトラクタ後部から進行方向と直交する側方へ水平移動可能であるとともに、前記草刈作業部は、前記回動アームの後方端側に設けられるとともに、前記草刈作業部を保持する草刈作業部保持ブラケットが前記回動アームの後方端側に連結されていて、進行方向と平行且つ水平に設けた草刈作業部回動軸を中心に草刈作業部をトラクタ進行方向と直交する面の上下に回動可能な草刈作業機において、前記草刈作業部がトラクタの後方に位置する非作業位置のときに、草刈作業部のトラクタ進行方向と直交する面の上下方向への回動と非作業位置から側方への水平移動を阻止するためのストッパ手段が設けられていて、ストッパ手段は、草刈作業部をトラクタ後方に位置する非オフセット状態で且つ略水平状態にすることにより作動し、ストッパ手段は、草刈作業部を水平移動させる前記左右の回動アームの対向する側に突設した相互の突設部に設けたそれぞれの孔を重合させると共に該孔に固定ピンを差し込むことで前記草刈作業部の非作業位置から側方への移動を阻止し、左右いずれかの回動アームに設けた係合片が草刈作業部側の係合部に係合することで草刈作業部の上下への回動を阻止する構成であることを特徴とする草刈作業機である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、草刈作業部の上下方向への回動と側方への水平移動を阻止するためのストッパ手段が設けられているため、シリンダのリーク等により草刈作業部が不用意に移動しないため安全な作業が行える草刈作業機を提供できる。また、トラクタとの着脱の際に、ストッパ手段により装着部が常に水平となっているため、着脱が良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の草刈作業機の作業状態の側面図である。
図2】本発明の草刈作業機の草刈作業部をトラクタ後方に位置させた状態の平面図である。
図3】本発明の草刈作業機の草刈作業部をトラクタ側方にオフセットさせた状態の平面図である。
図4】草刈作業部をトラクタ後方に位置させ、ストッパ手段が作動した状態の一部断面した平面図である。
図5】側方への水平移動を阻止するためのストッパ手段の要部後面図である。
図6】草刈作業部の前面図である。
図7】草刈作業部の上下方向への回動が阻止されていない状態のストッパ手段の要部平面図である。
図8】草刈作業部の上下方向への回動を阻止するためのストッパ手段が作動している状態の要部平面図である。
図9】草刈作業部を下方に傾斜させた状態の要部後面図である。
図10】動力伝達部を説明するための平面図である。
図11】草刈作業機をトラクタに装着する状態を示した側面図である。
図12】本発明のストッパ手段の別実施例を示した草刈作業機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
本例に示す草刈作業機は、トラクタ1の後方に設けた3点リンクヒッチ機構に装着され、トラクタ1からの動力により草刈作業部5を駆動して使用されるものである。また、草刈作業部5は、トラクタ1に対して左右に移動可能に設けられていて、トラクタ1の側方に位置させての作業も可能であり、トラクタ1のタイヤで刈取り前の草を踏まずに前進刈取り作業が可能である。
【0014】
本例の草刈作業機は、前方部にトラクタ1に装着するための装着部2を設け、その後方に草刈作業部5が設けられていて、装着部2と草刈作業部5はオフセット機構部6を介して連結されている。オフセット機構部6は平面視平行リンクで構成されている。平行リンク前方端が装着部2側に、後方端側が草刈作業部5側に回動自在にそれぞれ連結されていて、草刈作業部5が左右に移動しても進行方向に対して直交姿勢が変化しないように構成されている。
【0015】
前記装着部2には、オートヒッチ装置が設けられていて、トラクタ1後方に設けられた昇降装置である3点リンク機構にヒッチ枠20を取り付け、3点リンク機構によりヒッチ枠20を上昇させて草刈作業機を吊り上げると、自動的に草刈作業機が連結されて装着される装置である。トラクタ1の後方に設けた左右一対のロワーリンク11とその中央上方に設けたトップリンク10とからなる3点リンクヒッチ機構に、これらを定型化するヒッチ枠20(クイックヒッチ又はオートヒッチ等と称される)を取り付け、草刈り作業機の前方に設けた中央上方部のトップピン210にヒッチ枠20上方のトップフック207を係合させるとともに3点リンクヒッチ機構を上昇させると、草刈作業機側の前方下方左右に設けたロワーピン205がヒッチ枠20側に引き寄せられ、ヒッチ枠20のロワープレート206のU字溝に係合するとともに、U溝部に設けたフック208により抜け止めが行われ、トラクタ1と草刈り作業機が連結される。
【0016】
草刈作業部5は、草刈作業部5の片側側方上方部に設けた動力の入力部であるベベルギヤケース3が設けられていて、図10に示すように、このベベルギヤケース3から前方に向け突設させた第2入力軸30と装着部2に設けた第1入力軸212が軸方向に伸縮可能なユニバーサルジョイント65で連結されていて、さらに、第1入力軸212前方側がトラクタPTO軸13とユニバーサルジョイント12により連結され、動力がトラクタ1から取出され草刈作業部5は駆動される。第2入力軸30と装着部2に設けた第1入力軸212が軸方向に伸縮可能なユニバーサルジョイント65で連結されていることで、装着部2と草刈作業部5との間に設けた平行リンクで構成したオフセット機構部6の回動時の芯間の変位量を吸収する。
【0017】
ベベルギヤケース3は、草刈作業部5の最側端の刈取り刃51より外側に突設されて設けられていて、ベベルギヤケース3は、第2入力軸30に入力された動力を内部のベベルギヤ31により第2入力軸30と直行する方向に変換及び変速する。変換された動力はベベルギヤケース3の片側側方から水平方向の出力軸32により草刈作業部5の側方端側に伝達される。側方端部側の出力軸32先端には出力プーリ33が固着されていて、さらに、その下方に前記草刈作業部5の回転軸50の端部に固着された入力プーリ57が設けられていて、これらのプーリに掛け渡された伝動ベルトにより第2入力軸30に入力された動力は、草刈作業部5の回転軸50に伝達され回転駆動する。前記プーリ及び伝動ベルト部はベルトカバー4により覆われてガードされている。
【0018】
草刈作業部5は、トラクタ進行方向と直交する水平方向の回転軸50に放射状に複数の刈取り刃51を揺動自在に設けた刈取りロータ56を有し、これを回転軸50の上方を刈取りした草が通過するように前方から後方に掬い上げるように回転させ、雑草等を刈取りするとともに破砕する。刈取り刃51回転軌跡外周上方部は、刈取り部カバー52で覆われていて、切断された雑草等の飛散を防止するとともに刈取られた雑草等の一部を回転軸50の周りに持ち回らせてさらに細かく破砕するように設けられている。回転軸50の両端部はベアリング550を介して刈取り部カバー52の左右側部のカバーであるサイドプレート55に保持されている。
【0019】
刈取り部カバー52の前方端部は、刈取りロータ56より前方に突設していて、刈取り部カバー52前方から連続して突設する水平面とその前方端から下方の垂直方向に折り曲げられて、逆L字状部を形成している。逆L字状下方端部には、フラップ520が草刈作業部5の幅方向に多数垂れ下げられていて、刈取りロータ56で跳ね飛ばされた異物等が外に飛び出さないように設けられている。
【0020】
草刈作業部5後方下部にはゲージローラ7が設けられていて、作業時には地表面に接地して草刈作業部5の後方側の地上高さを保持する。ゲージローラ7は刈取りロータ56の略幅の長さの円筒状に設けてあり、草刈作業部5の左右の側板55から後方に延設した取付け板70に左右端部が軸受72を介して回転自在に保持されている。側板55への取付け板70の取付け孔が複数設けてあり、取り付け孔位置を選択して取り付けることで草刈作業部5の高さを調整する。
【0021】
草刈作業部5を左右に移動させるオフセット機構部6は、前端側を装着部2に水平回動自在に連結されて後方側へ延びる回動アーム60と、一端を装着部側に他端を回動アーム60側にそれぞれ水平回動自在に連結してその伸縮動作により回動アーム60を水平方向に回動させるオフセット用電動シリンダ63と、回動アーム60の回動端側で草刈作業部5を保持する草刈作業部保持ブラケット64を有し、回動アーム60は左右に一対平行に設けられ前方端が装着部2側に、後方端側が草刈作業部5側の草刈作業部保持ブラケット64にそれぞれ垂直方向に設けた前方回動軸61および後方回動軸62により連結されて平行リンクを構成していて、草刈作業部5が図2に示すトラクタ1後方位置から図3に示すトラクタ1の側方側双方への左右移動が行われても進行方向に対して刈取り作業部の直交姿勢が変化しないように構成されている。平行リンクを使用したオフセット機構で構成されているため、構造がシンプルで製造コストを兼価に抑えることが可能である。
【0022】
草刈作業部保持ブラケット64は、回動アーム60の回動端側に垂直方向の後方回動軸62により平行リンク機構を成して水平回動自在に保持されていると共に、進行方向と平行に水平に設けた草刈作業部回動軸53により草刈作業部5を進行方向と直行する面において上下方向回動自在に保持している。草刈作業部5側と草刈作業部保持ブラケット64側にそれぞれ両端部を回動自在に草刈作業部回動用電動シリンダ54が連結されていて、草刈作業部回動用電動シリンダ54を伸縮動作させることにより、草刈作業部5を草刈作業部回動軸53を中心に上下に回動させる回動機構部が構成されている。草刈作業部5を上下に回動させることにより、トラクタ1の走行面に対し側方の上下に傾斜した傾斜面の雑草等を刈取ることが可能となる。
【0023】
オフセット機構部6前端側の装着部2との連結は、装着部2のマストフレーム202の左右一方側の下方部に連結ブラケット203を介して連結されていて、連結ブラケット203の後方側に前記回動アーム60を垂直方向に設けた前方回動軸61により保持するとともに、連結ブラケット203の前方側一端を進行方向と直交する水平方向の上下回動軸によりマストフレーム202に前後回動自在に連結している。この前後回動角は一定範囲に規制されているが、これにより装着部2に対し草刈作業部5が前後に一定範囲で揺動可能となり、作業圃場の凹凸に対し作業時追従できるように構成されている。
【0024】
図3乃至図8において、本例の草刈作業部5の回動と側方への水平移動を阻止するためのストッパ手段について説明する。図4図8は草刈作業部5がトラクタ後方に位置した状態で、上下回動ストッパプレート80が保持ブラケット側回動リンクアーム58のU字状の切欠き部580に嵌合している状態を示していて、図3図7は草刈作業部5がオフセットした状態で、上下回動ストッパプレート80が保持ブラケット側回動リンクアーム58から離間している状態を示している。
【0025】
草刈作業部5の上下方向の回動は、草刈作業部保持ブラケット64に設けた進行方向と平行の水平軸である草刈作業部回動軸53を回動中心として回動される。回動は草刈作業部5と草刈作業部保持ブラケット64とに架け渡された草刈作業部回動用電動シリンダ54の伸縮により上下に回動される。
【0026】
草刈作業部回動用電動シリンダ54は、一端を草刈作業部5の刈取り部カバー52上面に固設させた取付けブラケットに進行方向と平行な回動軸により回動自在に取付けられ、他端は、二つの回動リンクアームに連結されていて、回動リンクアームは一端を草刈作業部保持ブラケット64に進行方向と平行な回動軸により回動自在に取付けられた保持ブラケット側回動リンクアーム58と、一端を草刈作業部5の刈取り部カバー52上面に固設させた取付けブラケットに進行方向と平行な回動軸により回動自在に取付けられた作業部側回動リンクアーム59で、それぞれの他端部と同一軸により回動自在に連結されている。図6に示すように、草刈作業部5の正面視において保持ブラケット側回動リンクアーム58と作業部側回動リンクアーム59は、草刈作業部回動用電動シリンダ54との連結部を頂点とした三角形状に配置され、底辺部近傍に前記草刈作業部回動軸53が配置されたリンク構成となっていて、草刈作業部回動用電動シリンダ54を伸ばすと草刈作業部5が下方に回動し、縮めると上方に回動する。
【0027】
本例においては、草刈作業部回動用電動シリンダ54の前方側は、シリンダカバー540で覆われていて、保持ブラケット側回動リンクアーム58と作業部側回動リンクアーム59及び草刈作業部回動用電動シリンダ54との連結部が、シリンダカバー540に草刈作業部回動用電動シリンダ54の伸縮方向に設けた長孔から前方部側に露出していて、トラクタ運転席から草刈作業部回動用電動シリンダ54の長さ、即ちこれに対応する草刈作業部5の回動角度が長孔上方部に設けた目盛541により確認できる構造となっている。
【0028】
草刈作業部5の上下方向への回動を阻止するためのストッパ手段は、保持ブラケット側回動リンクアーム58の草刈作業部回動軸53側である下方端縁に、草刈作業部5が水平位置の時、草刈作業部5の回動端側に向けて開放するU字状の切欠き部580が設けられていて、該切欠き部580に前記回動アーム60に設けた上下回動ストッパプレート80が嵌合されて草刈作業部5の上下回動を阻止するように設けられている。
【0029】
上下回動ストッパプレート80は、草刈作業部5がトラクタ後方位置になると草刈作業部5に接近する側の一方の回動アーム60の側方に突設して設けられていて、本例においては平板の帯状材を回動アーム60の上面からU字状の切欠き部580に向けへの字状に延設して、端部は回動アーム60の上面と平行に水平面となっていて、該端部が草刈作業部5が水平のとき保持ブラケット側回動リンクアーム58のU字状の切欠き部580に嵌合される。平板の帯状材の下方部には板状補強部材が断面T字状に固設されている。
【0030】
草刈作業部5が水平でトラクタ1後方位置の非作業位置になると、上下回動ストッパプレート80がU字状の切欠き部580に嵌合されて保持ブラケット側回動リンクアーム58の回動を固定する。草刈作業部5がトラクタ1後方位置からオフセット方向に移動すると、上下回動ストッパプレート80が保持ブラケット側回動リンクアーム58のU字状の切欠き部580との嵌合が外れて、草刈作業部5の上下方向の回動が可能となる。尚、回動アーム60に設けた上下回動ストッパプレート80と草刈作業部5側との嵌合は、保持ブラケット側回動リンクアーム58のU字状の切欠き部580に限定されるものではなく、草刈作業部5側に設けられて嵌合され回動が阻止されるものであれば良い。また、回動阻止方向が下降方向のみでもよい。
【0031】
図4図5において、草刈作業部5の側方への水平移動を阻止するためのストッパ手段について説明する。図4は草刈作業部5がトラクタ後方に位置した状態で、上下回動ストッパプレート80が保持ブラケット側回動リンクアーム58のU字状の切欠き部580に嵌合して草刈作業部5の上下回動が阻止された状態である。そして、回動アーム60,60のそれぞれ対向する面側には、図5に示すように、相互の回動アームに向かって突設した水平方向の左係合プレート811と右係合プレート812が固着されていて、それぞれのプレートには、草刈作業部5の上下回動が阻止された位置状態で上下方向の孔が重合するように設けられている。この孔に固定ピン810を差し込むことによって、回動アーム60,60の水平方向の回動が阻止された状態となる。
【0032】
すなわち、草刈作業部5が水平でトラクタ1後方位置の非作業位置のときに、固定ピン810を左係合プレート811と右係合プレート812の孔に差し込むことにより、草刈作業部5の回動と側方への水平移動が阻止された状態となる。この状態では、草刈作業部回動用電動シリンダ54やオフセット用電動シリンダ63の内部リーク等により不用意に走行中に草刈作業部が下方に回動することや側方に移動することを防止できる。
【0033】
図9は草刈作業部5をオフセットさせ傾斜させた状態の本例の草刈作業機の要部後面図で、ユニバーサルジョイント65部分は省略したものである。図9のように草刈作業部5をオフセットさせることにより、トラクタが水平の状態で傾斜した側方の部分の草刈作業が可能となる。本図は下方に傾斜した場合を示したが、上方に傾斜した場合でも同様に作業が行える。草刈作業部5をオフセットさせた状態では、上下回動ストッパプレート80の係合が解除され、回動アーム60の左係合プレート811と右係合プレート812の係合用固定ピン810が外された状態となる。
【0034】
図12は、別実施例のストッパ手段8´を示したものである。草刈作業部5が水平でトラクタ1後方位置の非作業位置のときに、ストッパ手段8´は、一方の回動アーム60から水平に突設させた板状の回動アーム係合プレート813と草刈作業部5から前方水平に突設させた板状の草刈作業部係合プレート814の重合部に上下方向の貫通孔を設けて、固定ピン810´を差し込んで固定している。回動アーム係合プレート813は上下に二股上に設けてあり、草刈作業部係合プレート814はその二股状の間に入り込むように位置している。この構成によって、草刈作業部5の下方への回動と側方への移動が阻止された状態となる。固定ピン810´を引き抜いて回動アーム係合プレート813と草刈作業部係合プレート814の重合が解除される位置まで草刈作業部5を側方に移動させると草刈作業が行える状態に上下回動と水平移動が行える。
【0035】
次にこの発明の草刈り作業機の作動について説明する。草刈り作業機の前方部に設けた装着部2によりトラクタ1に装着し、装着部2の第1入力軸212とトラクタPTO軸13をユニバーサルジョイント12で連結し、トラクタ1からの動力により回転駆動させる。このとき、オートヒッチ装置による連結の場合、図11に示すように、トラクタ1の左右一対のロワーリンク11とその中央上方に設けたトップリンク10とからなる3点リンクヒッチ機構に、これらを定型化するヒッチ枠20を取り付け、草刈り作業機の前方に設けた中央上方部のトップピン210にヒッチ枠20上方のトップフック207を係合させるとともに3点リンクヒッチ機構を上昇させると、草刈作業機側の前方下方左右に設けたロワーピン205がヒッチ枠20側に引き寄せられ、ヒッチ枠20のロワープレート206のU字溝に係合するとともに、U溝部に設けたフック208により抜け止めが行われ、トラクタ1と草刈り作業機が連結される。本例の場合、連結されるとユニバーサルジョイント12も同時に連結される構成である。この装着のときに、内部リーク等によって草刈作業部回動用電動シリンダ54が伸縮すると、草刈作業部5がスタンド9によって保持されているため、マストフレーム202が左右に傾いた状態になって装着できない虞があるが、本発明のストッパ手段8によって回動が阻止されているため容易に装着ができる。草刈作業機が装着され、作業圃場に移動後に回動アーム60部の固定ピン810を外すと作業が行える状態となる。
【0036】
入力された動力は、ユニバーサルジョイント12から装着部2の第1入力軸212とユニバーサルジョイント65を介してベベルギヤケース3の第2入力軸30へ伝達される。ベベルギヤケース3の内部のベベルギヤ31により第2入力軸30の動力は出力軸32により動力を草刈作業部5の側方端側に伝達する。出力軸32先端には出力プーリ33が固着されていて、その下方に前記草刈作業部5の回転軸50の端部に固着された入力プーリ57が設けられていて、これらのプーリに掛け渡された伝動ベルトにより動力は草刈作業部5の回転軸50に伝達され回転駆動する。回転軸50には放射状に複数の刈取り刃51が揺動自在に設けられていて、これを切断された雑草等が回転軸50の上方を通過して前方から後方に掬い上げるように回転させ、トラクタの進行により雑草等を刈取りするとともに破砕させる。刈取り刃51回転軌跡外周上方部は、刈取り部カバー52で覆われていて、切断された雑草等の飛散を防止するとともに刈取られた雑草等の一部を刈取り刃51の掬い面の作用により回転軸50周りに持ち回らせてさらに細かく破砕させる。
【0037】
草刈作業部5は、装着部2に対してオフセット機構部6のオフセット用電動シリンダ63を伸縮させることにより左右に移動させてトラクタ1からのオフセット位置を調整して作業を行う。トラクタ1のタイヤ側方から草刈作業部5を外側にオフセットさせ、トラクタ1を刈取り後の圃場部面を走行させるとともに、草刈作業部5を未刈取り部に位置させて作業を行うことで、タイヤが未作業部の雑草等を踏み倒すことによる刈残し発生を防止できる。
【0038】
トラクタ1のタイヤ側方から草刈作業部5を外側にオフセットさせ、さらに、刈取り部回動用電動シリンダ54を伸縮させて草刈作業部5を進行方向と直交する方向の上下に回動させることにより、トラクタ1の走行面に対して上下に傾斜している側方部の法面の草刈り作業が可能となる。草刈作業部5の移動及び回動操作は、運転席近傍に設けたコントロールボックスにより操作する。
【0039】
草刈作業が終了したら、草刈作業部5を水平にしてトラクタ1後方に移動させ、このときに、草刈作業部5の上下方向への回動を阻止するためのストッパ手段である上下回動ストッパプレート80を保持ブラケット側回動リンクアーム58のU字状の切欠き部580に嵌合させ、回動アーム60部の係合プレートに固定ピン810を差し込むことにより、草刈作業部5をトラクタ1の車軸と平行の水平状態とすることができる。また、移動走行の場合、上下回動ストッパプレート80と固定ピン810によって草刈作業部5が保持されるため、刈取り部回動用電動シリンダ54やオフセット用電動シリンダ63の内部リーク等により走行中に草刈作業部5が下方に回動することや側方に不用意にスライドすることもなく安全である。さらに、クイックヒッチによるトラクタとの着脱の際に、草刈作業部5側にスタンド9を設けた場合、ストッパ手段8が作動していることにより、装着部2側が常に水平となりクイックヒッチによる着脱が良好に行える。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、走行機であるトラクタの後方に装着されて草刈作業をするための農業用機械に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 トラクタ
10 トップリンク
11 ロワーリンク
12 ユニバーサルジョイント
13 トラクタPTO軸
2 装着部
20 ヒッチ枠
200 ロワーリンクピン
201 トップリンクピン
202 マストフレーム
203 連結ブラケット
205 ロワーピン
206 ロワープレート
207 トップフック
208 フック
210 トップピン
212 第1入力軸
3 ベベルギヤケース
30 第2入力軸
31 ベベルギヤ
32 出力軸
4 ベルトカバー
5 草刈作業部
50 回転軸
51 刈取り刃
52 刈取り部カバー
53 草刈作業部回動軸
54 草刈作業部回動用電動シリンダ
540 シリンダカバー
541 目盛
55 サイドプレート
550 ベアリング
56 刈取りロータ
57 入力プーリ
58 保持ブラケット側回動リンクアーム
580 切欠き部
59 作業部側回動リンクアーム
6 オフセット機構部
60 回動アーム
61 前方回動軸
62 後方回動軸
63 オフセット用電動シリンダ
64 草刈作業部保持ブラケット
65 ユニバーサルジョイント
7 ゲージローラ
70 取付け板
8 ストッパ手段
80 上下回動ストッパプレート
81 水平移動ストッパ
810 固定ピン
811 左係合プレート
812 右係合プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12