特許第6674768号(P6674768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6674768プレキャスト床版の接合方法及びプレキャスト床版の接合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674768
(24)【登録日】2020年3月11日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】プレキャスト床版の接合方法及びプレキャスト床版の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20200323BHJP
【FI】
   E01D19/12
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-234729(P2015-234729)
(22)【出願日】2015年12月1日
(65)【公開番号】特開2017-101445(P2017-101445A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】一宮 利通
(72)【発明者】
【氏名】藤代 勝
(72)【発明者】
【氏名】樽谷 早智子
(72)【発明者】
【氏名】平 陽兵
(72)【発明者】
【氏名】大野 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公生
(72)【発明者】
【氏名】金治 英貞
(72)【発明者】
【氏名】小坂 崇
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 実公平04−026483(JP,Y2)
【文献】 実公昭57−026896(JP,Y2)
【文献】 特開平08−003935(JP,A)
【文献】 特開2011−074754(JP,A)
【文献】 特開平11−222814(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0222375(US,A1)
【文献】 特開2014−177767(JP,A)
【文献】 特開2005−256430(JP,A)
【文献】 一宮利通 他,UFC床版と鋼桁の接合に関する基礎的研究,プレストレストコンクリート工学会 第24回シンポジウム論文集,2015年10月15日,pp.407-410
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/00−19/16
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において端面に窪んだ凹部を有し、橋軸直角方向に沿って並べて配置される一対のプレキャスト床版の前記端面のそれぞれを橋軸方向に延在する桁の上面に位置するように互いに対向させ、前記桁の前記上面から突出したずれ止め部材の全体が平面視において前記凹部の中に入るようにして、一対の前記プレキャスト床版を前記桁の上面に配置する配置工程と、
前記凹部の中に充填材を充填することにより、一対の前記プレキャスト床版及び前記桁を互いに接合する接合工程と、を備えたプレキャスト床版の接合方法。
【請求項2】
前記配置工程では、一対の前記プレキャスト床版の前記凹部のそれぞれが互いに対向するようにして、一対の前記プレキャスト床版を前記桁の上面に配置する、請求項に記載のプレキャスト床版の接合方法。
【請求項3】
前記接合工程の後に、前記桁及び前記プレキャスト床版により形成される橋梁の連続した一組の前記プレキャスト床版のそれぞれの内部を通り、前記連続した一組の前記プレキャスト床版の前記端面のそれぞれに交差するように配置された緊張材によって、前記連続した一組の前記プレキャスト床版に圧縮力を加えるポストテンション工程を更に備えた、請求項1又は2に記載のプレキャスト床版の接合方法。
【請求項4】
前記ずれ止め部材は、前記接合工程の後に前記桁から取り外すことが可能とされている、請求項1〜のいずれか1項に記載のプレキャスト床版の接合方法。
【請求項5】
一対の前記プレキャスト床版の前記凹部のそれぞれの周囲において、前記プレキャスト床版及び前記桁の少なくともいずれかには、前記接合工程の前に、前記接合工程での前記充填材の漏洩を防止するための漏洩防止部材が配置される、請求項1〜のいずれか1項に記載のプレキャスト床版の接合方法。
【請求項6】
橋軸方向に延在する桁と、
前記桁の上面に橋軸直角方向に沿って並べて配置された一対のプレキャスト床版と、
を備え、
前記桁は、前記上面から突出したずれ止め部材を有し、
一対の前記プレキャスト床版は、平面視において端面に窪んだ凹部を有し、一対のプレキャスト床版の前記端面のそれぞれが前記桁の前記上面に位置するように互いに対向し、前記ずれ止め部材の全体が平面視において前記凹部の中に入るようにして、前記桁の前記上面に配置されている、プレキャスト床版の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト床版の接合方法及びプレキャスト床版の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート(precast concrete)部材として製作されるプレキャスト床版は、鋼橋等の床版として用いられている。例えば、特許文献1には、上面にスタッドジベルが配置された鋼橋の鋼桁にプレキャスト床版を接合する方法が開示されている。特許文献1の方法では、プレキャスト床版のスタッドジベルに対応する位置に、プレキャスト床版の下面から上面へと連通する開口部(貫通孔)が設けられる。開口部の中にスタッドジベルが収容されるように鋼桁の上面にプレキャスト床版が配置された後に、開口部に無収縮モルタルが充填されることにより、プレキャスト床版と鋼桁とが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−311007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鋼橋の幅員が広い場合は、鋼橋の橋軸直角方向を1枚のプレキャスト床版で覆うことが困難な場合がある。そこで、このように鋼橋の幅員が広い場合は、鋼橋の橋軸直角方向において、複数枚のプレキャスト床版同士が互いに接合されつつ配置される。しかし、複数枚のプレキャスト床版同士が接合される場合は、プレキャスト床版同士の接合部にモルタル等が充填される継手を設けなければならないため、接合部の下方に型枠を設置する必要があり、プレキャスト床版の接合作業が複雑になる。
【0005】
そこで本発明は、複数枚のプレキャスト床版同士を接合する際に、プレキャスト床版の接合作業がより簡易となるプレキャスト床版の接合方法及びプレキャスト床版の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、平面視において端面に窪んだ凹部を有する一対のプレキャスト床版の端面のそれぞれを桁の上面に位置するように互いに対向させ、桁の上面から突出したずれ止め部材の少なくとも一部が平面視において凹部の中に入るようにして、一対のプレキャスト床版を桁の上面に配置する配置工程と、凹部の中に充填材を充填することにより、一対のプレキャスト床版及び桁を互いに接合する接合工程とを備えたプレキャスト床版の接合方法である。
【0007】
この構成によれば、配置工程では、平面視において端面に窪んだ凹部を有する一対のプレキャスト床版の端面のそれぞれを桁の上面に位置するように互いに対向させ、接合工程では、凹部の中に充填材を充填することにより一対のプレキャスト床版及び桁を互いに接合する。このため、桁の上面が型枠の替りとなり、接合工程で充填材を充填するための型枠が不要となる。また、配置工程では、桁の上面から突出したずれ止め部材の少なくとも一部が平面視において凹部の中に入るようにするため、接合工程後にプレキャスト床版が端面に平行な方向にずれることを防止することができる。したがって、複数枚のプレキャスト床版同士を接合する際に、プレキャスト床版の接合作業がより簡易となる。
【0008】
この場合、配置工程では、一対のプレキャスト床版の凹部のそれぞれが互いに対向するようにして、一対のプレキャスト床版を桁の上面に配置することが好適である。
【0009】
この構成によれば、配置工程では、一対のプレキャスト床版の凹部のそれぞれが互いに対向するようにするため、接合工程において、一対のプレキャスト床版の凹部のそれぞれに一回の工程で同時に充填材を充填することができ、作業の効率を向上させることができる。
【0010】
また、接合工程の後に、桁及びプレキャスト床版により形成される橋梁の連続した一組のプレキャスト床版のそれぞれの内部を通り連続した一組のプレキャスト床版の端面のそれぞれに交差するように配置された緊張材によって連続した一組のプレキャスト床版圧縮力を加えるポストテンション工程を更に備えることもできる。
【0011】
この構成によれば、接合工程の後に、桁及びプレキャスト床版により形成される橋梁連続した一組のプレキャスト床版のそれぞれの内部を通り連続した一組のプレキャスト床版の端面のそれぞれに交差するように配置された緊張材によって連続した一組のプレキャスト床版圧縮力を加えるポストテンション工程を更に備えるため連続した一組のプレキャスト床版の曲げ変形やひび割れを抑制することができる。
【0012】
また、ずれ止め部材は、接合工程の後に桁から取り外すことが可能とされていることが好適である。
【0013】
この構成によれば、ずれ止め部材は、接合工程の後に桁から取り外すことが可能とされているため、接合工程後にプレキャスト床版を交換することが容易となる。
【0014】
また、一対のプレキャスト床版の凹部のそれぞれの周囲において、プレキャスト床版及び桁の少なくともいずれかには、接合工程の前に、接合工程での充填材の漏洩を防止するための漏洩防止部材が配置されることが好適である。
【0015】
この構成によれば、一対のプレキャスト床版の凹部のそれぞれの周囲において、プレキャスト床版及び桁の少なくともいずれかには、接合工程の前に、接合工程での充填材の漏洩を防止するための漏洩防止部材が配置されるため、凹部からの充填材の漏洩を防止することができる。
【0016】
また、本発明は、桁と、桁の上面に配置された一対のプレキャスト床版とを備え、桁は、上面から突出したずれ止め部材を有し、一対のプレキャスト床版は、平面視において端面に窪んだ凹部を有し、一対のプレキャスト床版の端面のそれぞれが桁の上面に位置するように互いに対向し、ずれ止め部材の少なくとも一部が平面視において凹部の中に入るようにして、桁の上面に配置されているプレキャスト床版の接合構造である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプレキャスト床版の接合方法及びプレキャスト床版の接合構造によれば、複数枚のプレキャスト床版同士を接合する際に、プレキャスト床版の接合作業がより簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るプレキャスト床版の接合方法の配置工程において、鋼桁にプレキャスト床版を配置した状態を示す斜視図である。
図2】(a)は図1のプレキャスト床版の凹部付近を拡大した平面図であり、(b)は(a)のIIb線による断面図である。
図3】(a)は図2(b)の漏洩防止部材にスポンジを適用した例を示す図であり、(b)は図2(b)の漏洩防止部材にアングルを適用した例を示す図である。
図4】(a)は接合工程において図2(a)の凹部に充填材を充填した状態を示す平面図であり、(b)は(a)のIVb線による断面図である。
図5】接合された2枚のプレキャスト床版の内部に配置したPC鋼材にポストテンション方式により引張力を与えた状態を示す平面図である。
図6】プレキャスト床版の凹部の配置の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態では、鋼橋の鋼桁にプレキャスト床版が接合される態様について主に説明する。図1に示すように、実施形態に係るプレキャスト床版の接合方法の配置工程においては、一対のプレキャスト床版10が鋼橋の鋼桁1のフランジ上面2に配置される。複数の鋼桁1それぞれは、橋軸方向Xに延在するH形鋼である。複数の鋼桁1それぞれは、橋軸直角方向Yに所定の間隔を置いて平行に配置されている。
【0020】
鋼橋の橋軸方向Xに沿って、複数枚のプレキャスト床版10が並べて配置される。また、本実施形態では、鋼橋の幅員が広いため、鋼橋の橋軸直角方向Yに沿って、一対のプレキャスト床版10が並べて配置される。鋼橋の橋軸直角方向Yに沿って並べて配置される一対のプレキャスト床版10のそれぞれは、例えば、高速道路の上り車線及び下り車線の床版に適用される。
【0021】
プレキャスト床版10は、プレキャストコンクリート部材として製作される。プレキャスト床版10には、例えば、鋼繊維補強コンクリートであって、高強度コンクリートを適用したプレキャストコンクリート部材を適用することができる。また、プレキャスト床版10の製作時に橋軸直角方向Yとなる方向にプレテンション方式でプレストレスを導入することもできる。
【0022】
1枚のプレキャスト床版10は、3本の鋼桁1のフランジ上面2により支持される。鋼橋の橋軸直角方向Yに沿って並べて配置されるフランジ上面2で対向する一対のプレキャスト床版10において、プレキャスト床版10の端面14のそれぞれが1本の鋼桁1のフランジ上面2に位置するように互いに対向させられつつ、一対のプレキャスト床版10が1本の鋼桁1のフランジ上面2に配置される。なお、端面14の近傍上方に高速道路の中央分離帯が設置される場合には、ずれ止めの効果を高めるために中央分離帯に収まる範囲内でプレキャスト床版10を厚くすることもできる。
【0023】
プレキャスト床版10の端面14の近傍以外の箇所を支持する鋼桁1のフランジ上面2には、フランジ上面2から突出した3本のスタッドジベル(ずれ止め部材)3が橋軸直角方向Yに沿って並ぶように配置されている。3本のスタッドジベル3の複数の組が、フランジ上面2の橋軸方向Xにおいて、所定の間隔を置いて配置される。また、プレキャスト床版10の3本のスタッドジベル3に対応する箇所には、プレキャスト床版10の下面から上面に連通し、3本のスタッドジベル3を収容可能な開口部11が設けられている。開口部11の中に3本のスタッドジベル3が収容されるように鋼桁1のフランジ上面2にプレキャスト床版10が配置される。なお、プレキャスト床版10の端面14とは反対側の端部は、例えば、高速道路の壁高欄が設置される箇所となるため、壁高欄の設置のための鉄筋等を備えていてもよい。
【0024】
プレキャスト床版10の端面14の近傍を支持する鋼桁1のフランジ上面2には、フランジ上面2から突出した2本のスタッドジベル(ずれ止め部材)3が橋軸直角方向Yに沿って並ぶように配置されている。2本のスタッドジベル3の複数の組が、フランジ上面2の橋軸方向Xにおいて、所定の間隔を置いて配置される。鋼橋の橋軸直角方向Yに沿って並べて配置される一対のプレキャスト床版10は、平面視において端面14に窪んだ凹部12を有する。一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれは、後述するように2本のスタッドジベル3に対応する箇所に設けられている。
【0025】
以下、プレキャスト床版10の端面14の近傍の構成について説明する。図2(a)に示すように、平面視において、一対のプレキャスト床版10は端面14に窪んだ凹部12をそれぞれ有する。凹部12は、端面14から略半円形をなすように窪んでいる。凹部12は、鋼桁1のフランジ上面2から突出したスタッドジベル3の全体が平面視において凹部12の中に入る大きさである。凹部12の中に入るとは、端面14において凹部12が無いと仮定した場合に、端面14の内側に入ることを意味する。一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれは互いに対向している。
【0026】
図2(b)に示すように、実施形態に係るプレキャスト床版の接合方法の配置工程においては、不図示の治具を用いて、一対のプレキャスト床版10の下面と鋼桁1のフランジ上面2との間に数十mm程度の隙間13が空くようにして、フランジ上面2に一対のプレキャスト床版10が配置される。
【0027】
スタッドジベル3は、上部にスタッドジベル頭部4を有する。プレキャスト床版10の表面と端面14とに垂直な断面による断面視において、スタッドジベル頭部4は、凹部12の中に入るように配置されている。スタッドジベル3の下部はネジ溝を有し、ナット5により鋼桁1のフランジ上面2を貫通して取付けられている。したがって、スタッドジベル3は、ナット5を取り外すことにより、凹部12に無収縮モルタル等の充填材が充填される接合工程の後に鋼桁1から取り外すことが可能とされている。
【0028】
図2(a)及び図2(b)に示すように、一対のプレキャスト床版10の下面と鋼桁1のフランジ上面2との間の隙間13には、平面視においてフランジ上面2を覆うように、かつ、凹部12の中にも網状筋6が含まれるように網状筋6が配置される。網状筋6は、平面視及びプレキャスト床版10の断面視のいずれにおいても、凹部12の中に含まれる位置に配置されていてもよい。
【0029】
また、図2(b)に示すように、一組のプレキャスト床版10の凹部12の周囲において、一対のプレキャスト床版10の下面と鋼桁1のフランジ上面2との間の隙間13をフランジ上面2の両端の側から覆うように、一対の漏洩防止部材7が配置されている。漏洩防止部材7は、例えば、スポンジ、ゴム等の弾力性を有する材料から構成された部材を適用することができる。漏洩防止部材7は、プレキャスト床版10及び鋼桁1の少なくともいずれかに配置されていればよい。漏洩防止部材7は、プレキャスト床版10が鋼桁1のフランジ上面2配置された後に配置されてもよく、プレキャスト床版10が鋼桁1のフランジ上面2配置される前にプレキャスト床版10及び鋼桁1のいずれかに配置されていてもよい。
【0030】
あるいは、図3(a)に示すように、プレキャスト床版10の下面と鋼桁1のフランジ上面2との間の隙間13よりも少し厚く、シール機能を有するスポンジから構成された漏洩防止部材17を、予めフランジ上面2の両縁部に固定しておき,プレキャスト床版10を載せて漏洩防止部材17を少しつぶして漏洩防止部材17を固定するようにしてもよい。
【0031】
また、フランジ上面2の幅が小さく、スポンジから構成された漏洩防止部材17を載せるとスタッドジベル3から漏洩防止部材17までのクリアランス(かぶり)が小さくなる場合には、図3(b)に示すように、フランジ上面2の両縁部にアングル等を漏洩防止部材27として溶接してもよい。
【0032】
図4(a)及び図4(b)に示すように、実施形態に係るプレキャスト床版の接合方法の配置工程の後に、凹部12、フランジ上面2上で互いに対向する一対のプレキャスト床版の間の遊間、及びプレキャスト床版10の下面と鋼桁1のフランジ上面2との間の隙間13の中に充填材8を充填することにより、スタッドジベル3と凹部12を一体化し、一対のプレキャスト床版10及び鋼桁1を互いに接合する接合工程が行われる。充填材8には、無収縮モルタルや膨張コンクリート等が適用され、凹部12と、プレキャスト床版10の下面と鋼桁1のフランジ上面2との間の隙間13に対して、異なる充填材8を適用することもできる。例えば、凹部12には、膨張コンクリートを、プレキャスト床版10の下面と鋼桁1のフランジ上面2との間の隙間13には無収縮モルタルを充填することもできる。また、接合工程では、図1に示す開口部11の中にも充填材8が充填される。図1に示す開口部11及び凹部12の中に充填材8が充填されることにより、本実施形態のプレキャスト床版の接合構造が形成される。
【0033】
このように本実施形態によれば、複数のプレキャスト床版10を橋軸直角方向Yに接続する場合に、前述の図4(a)及び図4(b)に示すような凹部12及びプレキャスト床版10の下面と鋼桁1のフランジ上面2との間の隙間13に充填材を充填するだけの構造とすることができる。また、プレキャスト床版10の内部に橋軸直角方向Yに沿ってPC鋼材を緊張材として配置し、ポストテンション方式によりプレストレスを導入してもよい。さらには、プレキャスト床版10の橋軸直角方向Yの端部から突出するループ鉄筋同士をラップさせた部分にコンクリートやモルタルを打設し継手部を構築するループ継手構造とすることもできる。
【0034】
例えば、図5に示すように、実施形態に係るプレキャスト床版の接合方法の配置工程の後に、橋軸直角方向Yに沿って連続した一組のプレキャスト床版10のそれぞれの内部を通り、橋軸直角方向Yに沿って連続した一組のプレキャスト床版10の端面14のそれぞれに交差するように配置された緊張材であるPC鋼材15によって、一組のプレキャスト床版10の橋軸直角方向Yの両端それぞれに圧縮力を加える橋軸直角方向ポストテンション工程が行われる。橋軸直角方向ポストテンション工程は、橋軸直角方向Yに沿って橋軸直角方向Yに沿って連続した一組のプレキャスト床版10の内部のシース(ダクト)の中を通るPC鋼材15に対して、ジャッキで図中に矢印で示す引張力を加えた後に定着具16で固定することにより、橋軸直角方向Yに沿って連続した一組のプレキャスト床版10に橋軸直角方向Yに沿った圧縮力を加える。
【0035】
その後、必要に応じて橋軸方向Xに沿った圧縮力をさらに加える橋軸方向ポストテンション工程を加えることもできる。また、複数のプレキャスト床版10を橋軸方向Xに接続する場合にも、上述したポストテンション方式によるプレストレス導入やループ継手構造を採用することができる。
【0036】
本実施形態によれば、配置工程では、平面視において端面14に窪んだ凹部12を有する一対のプレキャスト床版10の端面14のそれぞれを鋼桁1のフランジ上面2に位置するように互いに対向させ、接合工程では、凹部12の中に充填材8を充填することにより一対のプレキャスト床版10及び鋼桁1を互いに接合する。このため、鋼桁1のフランジ上面2が型枠の替りとなり、接合工程で充填材8を充填するための型枠が不要となる。また、配置工程では、鋼桁1のフランジ上面2から突出したスタッドジベル3の少なくとも一部が平面視において凹部12の中に入るようにするため、接合工程後にプレキャスト床版10が端面14に平行な方向(橋軸方向X)にずれることを防止することができる。したがって、複数枚のプレキャスト床版10同士を接合する際に、プレキャスト床版10の接合作業がより簡易となる。特に本実施形態では、鋼桁1のフランジ上面2から突出したスタッドジベル3の全体が平面視において凹部12の中に入るようにするため、接合工程後に、プレキャスト床版10が端面14に平行な方向にずれることを防止する効果が高くなる。
【0037】
また、本実施形態によれば、配置工程では、一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれが互いに対向するようにするため、接合工程において、一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれに一回の工程で同時に充填材8を充填することができ、作業の効率を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、接合工程の後に連続した一組のプレキャスト床版それぞれの内部を通り連続した一組のプレキャスト床版端面それぞれに交差するように配置された緊張材であるPC鋼材よって連続した一組のプレキャスト床版圧縮力を加えるポストテンション工程を更に備えるためプレキャスト床版曲げ変形やひび割れを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、スタッドジベル3は、接合工程の後に鋼桁1から取り外すことが可能とされているため、接合工程後にプレキャスト床版10を交換することが容易となる。
【0040】
また、本実施形態によれば、一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれの周囲において、プレキャスト床版10及び鋼桁1の少なくともいずれかには、接合工程の前に、接合工程での充填材8の漏洩を防止するための漏洩防止部材7が配置されるため、凹部12からの充填材8の漏洩を防止することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、配置工程では、平面視においてフランジ上面2を覆うように、かつ、凹部12の中にも網状筋6が含まれるように網状筋6が配置されるため、接合工程において凹部12に充填される充填材8を割れ等から保護することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態では、一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれは互いに対向していたが、例えば、図6に示すように、一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれが互いに対向しない位置に配置されていてもよい。一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれは、例えば、端面14に沿って千鳥状に配置されていてもよい。また、凹部12の形状は、平面視において半円形をなす形状以外にも、平面視において三角形、四辺形、略円形をなす形状であってもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、鋼桁1のフランジ上面2から突出したスタッドジベル3の全体が平面視において凹部12の中に入っていたが、スタッドジベル3等のずれ止め部材の一部が平面視において凹部12の中に入ればよい。例えば、一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれが互いに対向する位置に配置され、鋼桁1のフランジ上面2から突出した一個のずれ止め部材の一部が、平面視において、互いに対向する一対のプレキャスト床版10の凹部12のそれぞれの中に入るように配置されていてもよい。さらには、上記実施形態では、本発明を鋼橋に適用する場合について説明したが、本発明をコンクリート製の桁を有するコンクリート橋に適用してもよい。また、本実施形態では、フランジ上面2で対向するプレキャスト床版10について説明したが、両端の鋼桁1のフランジ上面2とプレキャスト床版10の接合部においても、同様に鋼桁1のフランジ上面2から突出したスタッドジベル3等のずれ止め部材が配置される。
【符号の説明】
【0044】
1…鋼桁、2…フランジ上面、3…スタッドジベル(ずれ止め部材)、4…スタッドジベル頭部、5…ナット、6…網状筋、7…漏洩防止部材、8…充填材、10…プレキャスト床版、11…開口部、12…凹部、13…隙間、14…端面、15…PC鋼材、16…定着具、17…漏洩防止部材(スポンジ)、27…漏洩防止部材(アングル)、X…橋軸方向、Y…橋軸直角方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6