【実施例】
【0026】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
なお、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による数平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲−80〜450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を実施した。
【0027】
調整例1〜6に従い、本発明の紫外線遮蔽軟包装用ラミネートインキ組成物の製造方法によるベースインキA〜Fを調製した。
ベースインキA〜Fの配合比率は次の通りである。
ベースインキEについては、ハイドロゲンジメチコン処理してない酸化亜鉛を使用した。
ベースインキGについては、分散剤を削除した。
ポリウレタン樹脂 33.0部
水酸基を有する塩酢ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 3.0部
各種酸化亜鉛 60.0部
分散剤 4.0部
合 計 100.0部
【0028】
〔調整例1:ベースインキAの作製〕
日立化成(株)製ポリウレタン樹脂TA24−542D(Tg:−28℃、Mw:39,000)を33部、日信化学工業(株)製 塩酢ビニル酢酸ビニル共重合樹脂ソルバインAを3部、堺化学工業(株)製FINEX−50S−LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の4重量%含む)を60部、ルーブリゾール社製ε−カプロラクトン系高分子分散剤ソルスパース24000を4部混合した後、これを2本鋼鉄ロール練肉機に次の条件下で120分間連続練肉した後、25℃に冷却するまで放置し、固化したベースインキを練肉機から回収し、チップ状に小片化させたベースインキAを作製した。鋼鉄ロール径1m、ロール重量3トン、ロールのニップ間:2mm、回転数200rpm、ロール温度:80℃
【0029】
〔調整例2:ベースインキBの作製〕
ベースインキAの日立化成(株)製ポリウレタン樹脂TA24−542D代わりに、三洋化成(株)製ポリウレタン樹脂IB−501(Tg:−26℃、Mw:25,000)を同量33部添加する他は、全て同じ配合、同じ手順にてベースインキBを作製した。
【0030】
〔調整例3:ベースインキCの作製〕
ベースインキAの堺化学工業(株)製FINEX−50S−LP2の代わりに、同社製
FINEX−50−LPT(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の7重量%含む)を同量60部添加する他は、全て同じ配合、同じ手順にてベースインキCを作製した。
【0031】
〔調整例4:ベースインキDの作製〕
ベースインキAの堺化学工業(株)製FINEX−50S−LP2の代わりに、同社製
FINEX−50W−LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の4重量%と、高密度シリカ層をコーティングした酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の21重量%含む)を同量60部添加する他は、全て同じ配合、同じ手順にてベースインキDを作製した。
【0032】
〔調整例5:ベースインキEの作製〕
ベースインキAの堺化学工業(株)製FINEX−50S−LP2の代わりに、同社製
FINEX−H50(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層をコーティング、ハイドロゲンジメチコン処理共にされていない酸化亜鉛)を同量60部添加する他は、全て同じ配合、同じ手順にてベースインキEを作製した。
【0033】
〔調整例6:ベースインキFの作製〕
ベースインキAからの塩酢ビニル酢酸ビニル共重合樹脂ソルバインA 3部を削除し、日立化成(株)製ポリウレタン樹脂TA24−542Dを33部、堺化学工業(株)製FINEX−50S−LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の4質量%含む)を60部、ルーブリゾール社製ε−カプロラクトン系高分子分散剤ソルスパース24000を4部混合した他は、全て同じ手順にてベースインキFを作製した。
【0034】
〔調整例7:ベースインキGの作製〕
ベースインキAからルーブリゾール社製ε−カプロラクトン系高分子分散剤ソルスパース24000の4部を削除した他は、全て同じ手順にてベースインキGを作製した。
【0035】
上記、ベースインキA〜Fで使用する酸化亜鉛を列記すると次の通りである。
表1には、各酸化亜鉛の構成を質量比率(%)で示す。平均粒子径は全て20nmである。
・ベースインキA、B
:a)FINEX−50S−LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の4質量%含む)
・べースインキC
:b)FINEX−50−LPT(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の7質量%含む)
・ベースインキD
:c)FINEX−50W−LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の4質量%と、高密度シリカ層をコーティングした酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理した酸化亜鉛を酸化亜鉛全量の21質量%含む)
・ベースインキE
:d)FINEX−H50(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層をコーティング、ハイドロゲンジメチコン処理共にされていない酸化亜鉛)
【0036】
【表1】
【0037】
調整例8〜14に従い、従来からの分散方法であるビーズミルによるベースインキH〜Nについて、ジルコニアビーズミルを用いて調製した。尚、ジルコニアビーズミルによる練肉では必ず溶剤分の添加が必要である事から、ベースインキを希釈して最終的に紫外線遮蔽軟包装用ラミネートインキとする際に使用する溶剤である、ノルマルプロピルアセテート及びイソプロピルアルコールを各々4部ずつ、練肉に最小限の必要な量を添加し練肉調製した。
【0038】
〔調整例8:ベースインキHの作製〕
ベースインキAと同様の構成に、更にノルマルプロピルアセテート4部、イソプロピルアルコール4部を混合した後、直径5mmのジルコニアビーズを200g入れ、ペイントコンディショナーにて60分間練肉し、ベースインキHを作製した。
【0039】
〔調整例9〜14:ベースインキI〜Nの作製〕
ベースインキB〜Gの配合各々に対して、ベースインキHと同様にノルマルプロピルアセテート4部、イソプロピルアルコール4部を混合した後、ベースインキHと同様に直径5mmのジルコニアビーズを200g入れ、ペイントコンディショナーにて60分間練肉し、ベースインキI〜Nを作製した。
【0040】
高煎断性練肉(2本ロール)によるベースインキA〜Gの配合を表2に、ジルコニアビーズミ練肉によるベースH〜Nの配合を表3に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
[実施例1]
ベースインキAを33.3部、ウレタン樹脂IB−915(三洋化成(株)社製)を7部、ロジンニスR624−501(江南化成(株)社製)を1部、添加剤スーパークロン341Eトルエン(塩素化ポリプロピレン系、日本製紙(株)社製)を1.6部、酢酸エチル7部、ノルマルプロピルアセテート14部、イソプロピルアルコール14部、消泡剤SN−353を0.1部加え練肉し、紫外線遮蔽軟包装用ラミネートインキを作製した。
仕上がったラミネートインキ全量中の酸化亜鉛は20質量%を含有する。
得られたラミネートインキの粘度をメチルエチルケトン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶液(重量比40:40:20)で希釈し、ザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により
2軸延伸ポリプロピレンOPPフィルム(東洋紡社製 P2161、厚み20μm)とPETフィルム(東洋紡社製 E5100、 厚み12μ)のフィルム2種にベタ刷り印刷して45℃で乾燥し、印刷物を得た。
【0044】
[実施例2〜5、及び比較例1〜9]
実施例2〜5についてベースインキA〜D、及びG、比較例1、2についてベースインE、Fを用いて、実施例1と同様の配合にてラミネートインキを作成し、同じ作製手順にて印刷物を作製した。尚、ジルコニアビーズミ練肉による比較例3〜9については、最終的に作製した紫外線遮蔽軟包装用ラミネートインキ全量中の酸化亜鉛の量を実施例1と同様20質量%とすべく、例えば比較例3については、ベースインキHを36.6部、ウレタン樹脂IB−915(三洋化成(株)社製)を7部、ロジンニスR624−501(江南化成(株)社製)を1部、添加剤スーパークロン341Eトルエン(塩素化ポリプロピレン系、日本製紙(株)社製)を1.6部、酢酸エチル7部とした他、溶剤総量を合せるべくノルマルプロピルアセテート10部、イソプロピルアルコール10部、消泡剤SN−353を0.1部加えジルコニアビーズミにて練肉し、紫外線遮蔽軟包装用ラミネートインキを作製した。得られたラミネートインキの粘度を実施例1と同様にメチルエチルケトン、酢酸エチル及びイソプロピルアルコールの混合溶液(質量比40:40:20)で希釈し、ザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機により実施例1と同様にフィルム2種に印刷して45℃で乾燥し、印刷物を得た。比較例3と同様の要領にて、比較例4〜9についてラミネートインキを作製し同様の手順にて印刷物を得た。
【0045】
得られた印刷物について、ポリプロピレンOPPフィルム、及びPETフィルム各々への密着性、スクラッチ性、透明度、紫外線透過率について評価した。また、最終的に仕上がった紫外線遮蔽軟包装用ラミネートインキの酸化亜鉛の粒度分布について、粒度分布測定装置によるレーザー解析により調査した。その結果を表4、5に示す。尚、評価は下記の試験方法にて行った。
【0046】
1)密着性
紫外線遮蔽軟包装用ラミネートインキをベタ刷りしたポリプロピレンOPPフィルム、及びPETフィルム各々を100℃にて10秒間オーブン加熱した後、常温(25℃)で1日放置後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、これを急速に剥がしたときのレジスト印刷皮膜の外観の状態を目視判定した。なお判定基準は次の5段階とした。
5:印刷皮膜が全く剥がれなかった。
4:印刷皮膜の70%以上〜90%がフィルムに残った。
3:印刷皮膜の50%以上〜70%未満がフィルムに残った。
2:印刷皮膜の30%以上〜50%未満がフィルムに残った。
1:印刷皮膜の30%以下がフィルムに残った。
【0047】
2)耐スクラッチ性
爪によりOPPフィルム、及びPETフィルム各々の印刷皮膜を擦った際の外観の状態を目視判定した。なお判定基準は次の5段階とした。
5:10回以上擦っても皮膜が剥がれない
4:10回の擦れでわずかに皮膜が剥がれる
3:4〜5回の擦れで皮膜が剥がれる
2:2〜3回の擦れで皮膜が剥がれる
1:1回の擦れで皮膜が容易に剥がれる
【0048】
3)透明度(ヘイズ)
日本電色社製(NDH5000)濁度計を用い、OPPフィルム及びPETフィルム各々の印刷部の透明度を計測した。数値が小さい程、透明度が高い。尚、印刷していない因みに、2軸延伸ポリプロピレンOPPフィルム(東洋紡社製、厚み20μm)の透明度は2.8であった。また、PETフィルム(東洋紡社製 厚み12μ)の透明度は2.6であった。
【0049】
4)紫外線透過率(%)
日本分光社製UV/VIS SPECTROMETER(V−570DS)を用い、OPP及びPETフィルム印刷部の紫外線透過率を測定した。 紫外線透過率は360nmのところの透過率(%)を表記し、数値が小さい程、紫外線を遮断しており、数値が大きい程、紫外線が透過している。
【0050】
5)粒度分布
日機装(株)社製マイクロトラック(Microtrac)粒度分布測定装置MT3300EXIIによるレーザー解析により、最終的に仕上がった紫外線遮蔽軟包装用ラミネートインキの酸化亜鉛の粒度分布について調査した所、下記1,2の区分に分布状況が大別された。
1:酸化亜鉛全量の95質量%が0.5nm以上1.15nm未満に分布し、
分布の極大値を0.95〜1.05nmの範囲に有する。
2:酸化亜鉛全量の95質量%が1.15nm以上14nm未満に分布する。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
実施例の製造方法では、密着性・耐スクラッチ性、紫外線に対しては高い遮断性を保持しつつ、可視光に対してはより高い透明性を再現できる。