特許第6674785号(P6674785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000002
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000003
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000004
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000005
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000006
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000007
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000008
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000009
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000010
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000011
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000012
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000013
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000014
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000015
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000016
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000017
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000018
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000019
  • 特許6674785-ケーブルコネクタ 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674785
(24)【登録日】2020年3月11日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】ケーブルコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/56 20060101AFI20200323BHJP
   H01R 13/58 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   H01R13/56
   H01R13/58
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-16593(P2016-16593)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-135087(P2017-135087A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105338
【氏名又は名称】ケル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】高尾 慎太朗
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−335363(JP,A)
【文献】 米国特許第05685067(US,A)
【文献】 特開平10−189124(JP,A)
【文献】 特開2004−071237(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0181579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56−13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の周囲を絶縁被覆により取り囲んで形成されるケーブルの端部に設けられて、相手側コネクタと接続されるケーブルコネクタであって、
単数本のケーブルの端部に設けられる第1コンタクトと、
複数本のケーブルの端部に設けられる第2コンタクトと、
前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトを選択的に収容可能な複数のコンタクト収容部を有したハウジングとを備え、
前記第1コンタクトは、前記単数本のケーブルの芯線に接続される第1コンタクト本体部と、前記単数本のケーブルの絶縁被覆を保持する第1被覆保持部とを有し、
前記第2コンタクトは、当該コンタクトの軸方向と直交する方向に重ね合わされた前記複数本のケーブルの芯線に接続される第2コンタクト本体部と、前記直交方向に重ね合わされた前記複数本のケーブルの絶縁被覆を保持する第2被覆保持部とを有し、
前記コンタクト収容部は、前記軸方向に沿って形成された一端側収容空間と、前記一端側収容空間と前記軸方向に繋がり前記一端側収容空間よりも前記直交方向の幅が大きく形成された他端側収容空間とを有し、
前記第1コンタクトは、前記第1コンタクト本体および前記第1被覆保持部が前記一端側収容空間内に保持され、
前記第2コンタクトは、当該第2コンタクトのうち、前記第2コンタクト本体部が前記一端側収容空間内に保持され、前記第2被覆保持部が前記他端側収容空間内に保持されるように構成したことを特徴とするケーブルコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの端部に設けられるケーブルコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からケーブルコネクタとして、ケーブルの芯線および絶縁被覆を金属製のコンタクトにより圧着することで、ケーブルの端部にコンタクトを固定するとともに、ケーブルとコンタクトとを導通させる構成のコネクタが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このようなケーブルコネクタは、ハウジング内に所定の配列にて複数のコンタクトを収容保持するものとなっているが、近年では、その要求仕様に応じて、同じハウジング内に単数本のケーブルを圧着した第1コンタクトと複数本のケーブルを圧着した第2コンタクトとを混在させる場合がある。すなわち、例えば接続対象の相手側コネクタからの信号を1本のケーブルのみに伝送する場合と、相手側コネクタからの信号を複数本のケーブルに分岐して伝送する場合とがあり、それを一つのケーブルコネクタで両立させるために、上記二種類のコンタクトを混在させるものである。
【0003】
上記ケーブルコネクタの一例を図19に示す。図19(a)に示すように、従来のケーブルコネクタ150は、複数のコンタクト収容空間165を有したハウジング160と、1本のケーブルCの端部に圧着保持された第1コンタクト170と、2本のケーブルCの端部に圧着保持された第2コンタクト180とを備えて構成されている。第1コンタクト170は、1本のケーブルCの芯線C1に圧着された芯線圧着部178と、該ケーブルCの絶縁被覆C2に圧着された被覆圧着部179とを有する。一方、第2コンタクト180は、2本のケーブルCの芯線C1に圧着された芯線圧着部188と、該ケーブルCの絶縁被覆C2に圧着された被覆圧着部189とを有する。図示の例では、説明の便宜上(両コンタクト170,180を比較しやすいように)、第1コンタクト170を下列のコンタクト収容空間165に取り付け、第2コンタクト180を上列のコンタクト収容空間165に取り付けた場合を例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−106428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ケーブルコネクタ150においては、その使用によってケーブルCに煽りが生じると、コンタクト170,180(特にケーブルCとコンタクト170,180との接続部分である被覆圧着部179,189)に垂直方向の力が作用する場合がある。このとき、上列の第2コンタクト180では、図19(b)に示すように、被覆圧着部189とコンタクト収容空間165の内壁との間には、僅かな隙間しかないため、被覆圧着部189に対して垂直方向(図では上方向)の力が作用した場合であっても、被覆圧着部189の変位は一定の範囲内に制限される。一方、下列の第1コンタクト170では、図19(c)に示すように、被覆圧着部179とコンタクト収容空間165の内壁との間に、必然的にケーブル1本分に相当する大きな隙間が形成されてしまうため、被覆圧着部179に対して垂直方向(図では下方向)の力が作用した場合には、被覆圧着部179が過剰に変位して、第1コンタクト170が塑性変形するおそれがある。そのため、従来のケーブルコネクタ150では、その要求仕様に応じてハウジング160を変更することなく、上記二種類のコンタクト170,180を自由に配置することが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ハウジングを変更することなくケーブルの接続本数の異なる二種類のコンタクトを自由な配置で混在させても、コンタクトの過剰な変形を防止することのできるケーブルコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るケーブルコネクタは、芯線の周囲を絶縁被覆により取り囲んで形成されるケーブルの端部に設けられて、相手側コネクタと接続されるケーブルコネクタ(例えば、実施形態におけるレセプタクルコネクタ50)であって、単数本のケーブルの端部に設けられる第1コンタクト(例えば、実施形態における第1レセプタクルコンタクト70)と、複数本のケーブルの端部に設けられる第2コンタクト(例えば、実施形態における第2レセプタクルコンタクト80)と、前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトを選択的に収容可能な複数のコンタクト収容部(例えば、実施形態におけるコンタクト収容空間65)を有したハウジング(例えば、実施形態におけるレセプタクルハウジング60)とを備え、前記第1コンタクトは、前記単数本のケーブルの芯線に接続される第1コンタクト本体部(例えば、実施形態における接続部73、芯線圧着部78)と、前記単数本のケーブルの絶縁被覆を保持する第1被覆保持部(例えば、実施形態における被覆圧着部79)とを有し、前記第2コンタクトは、当該コンタクトの軸方向と直交する方向に重ね合わされた前記複数本のケーブルの芯線に接続される第2コンタクト本体部(例えば、実施形態における接続部83、芯線圧着部88)と、前記直交方向に重ね合わされた前記複数本のケーブルの絶縁被覆を保持する第2被覆保持部(例えば、実施形態における被覆圧着部89)とを有し、前記コンタクト収容部は、前記軸方向に沿って形成された一端側収容空間(例えば、実施形態における前側空間66)と、前記一端側収容空間と前記軸方向に繋がり前記一端側収容空間よりも前記直交方向の幅が大きく形成された他端側収容空間(例えば、実施形態における後側空間67)とを有し、前記第1コンタクトは、前記第1コンタクト本体および前記第1被覆保持部が前記一端側収容空間内に保持され、前記第2コンタクトは、当該第2コンタクトのうち、前記第2コンタクト本体部が前記一端側収容空間内に保持され、前記第2被覆保持部が前記他端側収容空間内に保持されるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るケーブルコネクタによれば、ハウジング内のコンタクト収容部を二種類のコンタクト間で共通としながらも、第1コンタクトと第2コンタクトとの軸方向の長さを互いに異ならしめて、第1コンタクトのうち単数本のケーブルとの接続部分である第1被覆保持部を狭幅の一端側収容空間に位置させるとともに、第2コンタクトのうち複数本のケーブルとの接続部分である第2被覆保持部を広幅の他端側収容空間に位置させて、各コンタクトの被覆保持部とコンタクト収容部の内壁とを僅かなクリアランスで対峙させることで、ケーブルに煽り等の外力が付加されて各コンタクトの被覆保持部に垂直な力が生じた場合でも、コンタクト収容部の内壁との当接により、被覆保持部の変位量を弾性変形可能な範囲内に制限して、各コンタクトの過剰な変形を防止することができ、その結果、ハウジングを変更することなく、単数本用の第1コンタクトと複数本用の第2コンタクトとの二種類のコンタクトを自由な配置で混在させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るレセプタクルコネクタ(ケーブルコネクタ)を備えたコネクタ装置の平面図である。
図2】上記コネクタ装置の側面図である。
図3】上記コネクタ装置を構成するプラグコネクタ(基板コネクタ)の正面図である。
図4】上記プラグコネクタの背面図である。
図5】上記プラグコネクタの側断面図である。
図6】上記レセプタクルコネクタの斜視図である。
図7】上記レセプタクルコネクタの斜視断面図である。
図8】上記レセプタクルコネクタの正面図である。
図9】上記レセプタクルコネクタの背面図である。
図10】上記レセプタクルコネクタの側断面図である。
図11】上記レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングの断面図である。
図12】上記レセプタクルコネクタの第1レセプタクルコンタクトの斜視図である。
図13】(a)は上記第1レセプタクルコンタクトの平面図、(b)は上記第1レセプタクルコンタクトの側面図、(c)は上記第1レセプタクルコンタクトの底面図である。
図14】(a)は上記第1レセプタクルコンタクトの加締め前の状態の側面図、(b)は上記第1レセプタクルコンタクトの加締め前の状態の正面図である。
図15】上記レセプタクルコネクタの第2レセプタクルコンタクトの斜視図である。
図16】(a)は上記第2レセプタクルコンタクトの平面図、(b)は上記第2レセプタクルコンタクトの側面図、(c)は上記第2レセプタクルコンタクトの底面図である。
図17】(a)は上記第2レセプタクルコンタクトの加締め前の状態の側面図、(b)は上記第2レセプタクルコンタクトの加締め前の状態の正面図である。
図18】上記レセプタクルコネクタの作用を説明するための側断面図である。
図19】従来のケーブルコネクタの作用を説明するための側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の一実施形態に係るケーブルコネクタを適用したコネクタ装置1を図1図2に示している。このコネクタ装置1は、基板B上に取り付けられたプラグコネクタ(基板コネクタ)10と、複数のケーブルCの端部に取り付けられたレセプタクルコネクタ(ケーブルコネクタ)50とから構成されており、両コネクタ10,50を基板Bの表面方向に嵌合させることにより、両コネクタ10,50を介して基板BとケーブルCとが電気的に接続されるようになっている。なお、本実施形態では、コネクタ装置1を介して、基板B側からケーブルC側へ各種信号(電源信号、制御信号等)が伝送される仕組みとなっている。以下の説明では、便宜上、前後左右及び上下の方向を図1及び図2に示す状態を基準として定義しており、この図1及び図2に示す矢印の方向を前後、左右、上下と称して説明する。
【0011】
まず、プラグコネクタ10の構成について、図3図5を追加参照して説明する。プラグコネクタ10は、基板B上に取り付けられるプラグハウジング20と、このプラグハウジング20の幅方向(左右方向)に沿って上下二列の整列状態で保持される複数のプラグコンタクト30,40とを備えて構成される。
【0012】
プラグハウジング20は、合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されている。このプラグハウジング20は、プラグコンタクト30,40を保持する基壁21と、基壁21の上下の端部に設けられた水平壁22と、基壁21の左右の端部に設けられた垂直壁23とを有して、全体として矩形箱状に形成されている。このプラグハウジング20には、各壁面に囲まれて後方に開放される嵌合凹部24が画成されている。この嵌合凹部24内には、水平壁22と平行に延びる第1仕切壁25と、この第1仕切壁25と直交して延びる複数の第2仕切壁26とが設けられている。そのため、嵌合凹部24は、第1仕切壁25と第2仕切壁26とで相互に仕切られて、上下の二列に配置された複数(12個)の受容空間27に分割されている。その結果、プラグハウジング20には、レセプタクルコネ
クタ50と対向する側に開放された計12個(上列に6個、下列に6個)の受容空間27が設けられている。また、基壁21には、各受容空間27の中央位置に整合して、プラグコンタクト30,40を圧入するためのコンタクト保持孔21aが前後に貫通されている。また、プラグハウジング20の底面側には、金属製の取付金具28が下方に突設されている。この取付金具28は、基板B上のマウントパターンに半田付けされることで、基板Bに対するプラグコネクタ10の浮き止め効果を発揮する。
【0013】
プラグコンタクト30,40は、金属等の導電性材料の薄平板にプレス加工(打ち抜き加工および曲げ加工など)を施して図5等に示す所定形状に形成されている。本例では、第1プラグコンタクト30は下列のコンタクト保持孔21aに圧入され、第2プラグコンタクト40は上列のコンタクト保持孔21aに圧入される。
【0014】
第1プラグコンタクト30は、その先端側から順に、嵌合凹部24内においてコネクタ10,50の嵌合方向(前後方向)に沿って突出する接触部31と、基壁21のコンタクト保持孔21aに圧入される圧入部32と、この圧入部32から略直角に折曲して下方に延びる曲部33と、プラグハウジング20の下端から突出して基板Bの信号端子に接続されるリード部34とを有し、全体として略L字形に構成されている。なお、第1プラグコンタクト30は、その表面に金(Au)などの薄膜を被覆する所要の表面処理(めっき処理)が施されている。
【0015】
第2プラグコンタクト40は、その先端側から順に、嵌合凹部24内においてコネクタ10,50の嵌合方向(前後方向)に沿って突出する接触部41と、基壁21のコンタクト保持孔21aに圧入される圧入部42と、この圧入部42から略直角に折曲して下方に延びる曲部43と、プラグハウジング20の下端から突出して基板Bの信号端子に接続されるリード部44とを有し、全体として略L字形に構成されている。なお、第2プラグコンタクト40は、その表面に金(Au)などの薄膜を被覆する所要の表面処理(めっき処理)が施されている。
【0016】
続いて、レセプタクルコネクタ50の構成について、図6図17を追加参照して説明する。レセプタクルコネクタ50は、相手側のプラグハウジング20と嵌合可能に形成されたレセプタクルハウジング60と、このレセプタクルハウジング60の幅方向(左右方向)に沿って上下二列の整列状態で保持される複数のレセプタクルコンタクト70,80とを備えて構成される。このレセプタクルコネクタ50は、レセプタクルハウジング60内に第1レセプタクルコンタクト70と第2レセプタクルコンタクト80とを所定の配置にて混在させることで、プラグコネクタ10からの各種信号(電源信号、制御信号等)を第1レセプタクルコンタクト70を介して1本のケーブルCに伝送することと、プラグコネクタ10からの各種信号(電源信号、制御信号等)を第2レセプタクルコンタクト80を介して2本のケーブルCに分岐して伝送することとの両立が図られている。なお、図には、便宜上、最も左側に位置した上下一組のレセプタクルコンタクト70,80のみを図示している。
【0017】
レセプタクルハウジング60は、上記プラグハウジング20と同様に合成樹脂等の電気絶縁性の材料を用いて成形されており、左右方向に延びた横長の基部61と、この基部61から前方に突出して延びてプラグコネクタ10の嵌合凹部24に嵌合される突起状の嵌合凸部62とを備えている。
【0018】
嵌合凸部62は、前後方向に延びて上下の二列に配置された複数(12個)のコンタクト収容突起63と、コンタクト収容突起63と平行に延びる複数(4個)の案内突起64とを有している。コンタクト収容突起63は、上下および左右の側板に囲まれて前後方向に延びる矩形の中空筒状に形成され、プラグコネクタ10の受容空間27に挿入可能に構
成されている。案内突起64の前端部64aは、前方に向けて細くなる先細り形状をなしており、各稜線部にはR面取りが施されている。
【0019】
レセプタクルハウジング60には、各コンタクト収容突起63の配設位置(各コンタクト収容突起63の中心位置)に対応して、その嵌合方向(前後方向)に延びる長孔状のコンタクト収容空間65が貫通形成されている。すなわち、レセプタクルハウジング60には、上列に6個、下列に6個のコンタクト収容空間65が配設されている。各コンタクト収容空間65は、二種類のコンタクト間(第1レセプタクルコンタクト70、第2レセプタクルコンタクト80)で共通であり、各レセプタクルコンタクト70,80を保持可能に構成されている。なお、上列のコンタクト収容空間65と下列のコンタクト収容空間65とは、上下対称形状をなしている。
【0020】
コンタクト収容空間65は、嵌合方向の一方側(前側)に形成されて嵌合凸部62の前端側に開口される前側空間66と、嵌合方向の他方側(後側)に形成されて基部61の後端側に開口される後側空間67とが一体的に繋がって構成されている。コンタクト収容空間65(前側空間66)の前端側には相手側のプラグコンタクト10を受容するためのコンタクト受容口65aが開設され、コンタクト収容空間65(後側空間67)の後端側にはレセプタクルコンタクト70,80を挿し込むためのコンタクト挿込口65bが開設されている。ここで、前側空間66の縦幅(上下方向の幅)は、後側空間67の縦幅(上下方向の幅)よりも小さい幅寸法に設定されている。つまり、後側空間67には、レセプタクルハウジング60の前部と後部との肉厚の差によって形成された段差部67aが画成されており、後側空間67は該段差部67aの分(ケーブル約1本分)だけ前側空間66よりも縦幅が大きく形成されている。具体的には、前側空間66の縦幅は、ケーブル1本分の直径よりも大きく且つケーブル2本分の直径よりも小さく形成される一方で、後側空間67の縦幅は、ケーブル2本分の直径よりも大きく且つケーブル3本分の直径よりも小さく形成されている。
【0021】
また、コンタクト収容突起63の上下の壁部には、コンタクト収容空間65の開口端(コンタクト受容口65a)に向けて片持ち状に延出されて上下方向に弾性変形が可能なアーム部63aが設けられている。このアーム部63aの内面側には、レセプタクルコンタクト70,80と係合して該レセプタクルコンタクト70,80の抜け止めとして作用するラッチ部63bが突設されている。
【0022】
レセプタクルコンタクト70,80は、金属等の導電性材料の薄平板にプレス加工(打ち抜き加工および曲げ加工など)を施して図13図17等に示す所定形状に形成されている。各レセプタクルコンタクト70,80は、ケーブルCと圧着接続するための圧着端子として構成されている。第1レセプタクルコンタクト70は、単数本(1本)のケーブルCの端部に圧着接続され、第2レセプタクルコンタクト80は、複数本(2本)のケーブルCの端部に圧着接続される。ここで、ケーブルCは、複数本の極細電線を寄り合わせて作られた芯線C1が絶縁材料からなる絶縁被覆C2により覆われて構成されており、絶縁被覆C2が部分的に除去されてケーブルCの端部において芯線C1が露出するようになっている。
【0023】
本実施形態では、レセプタクルコンタクト70,80の配置の一例として、第1レセプタクルコンタクト70を下列のコンタクト収容空間65に取り付け、第2レセプタクルコンタクト80を上列のコンタクト収容空間65に取り付けている。なお、各レセプタクルコンタクト70,80は、その要求仕様に応じて、複数のコンタクト収容空間65のうちのいずれかに選択的に取り付けることが可能であり、レセプタクルハウジング60内での配置の自由度が確保されている(レセプタクルハウジング60の形状等によって制約を受けることがない)。
【0024】
第1レセプタクルコンタクト70は、その先端側から順に、左右の側板部71およびこれらを繋ぐ上板部72を有してなる接続部73と、この接続部73の後部に繋がりケーブルCの芯線C1を保持する芯線圧着部78と、この芯線圧着部78の後部に繋がりケーブルCの絶縁被覆C2を保持する被覆圧着部79とを備えて構成される。
【0025】
接続部73には、各側板部71の開放端から内側に折り返されて前方に向けて片持ち状に延出される一対の弾性片部74が設けられている。この弾性片部74は、平面視において「へ」の字形に折曲形成されており、その折曲部分に凸状の接触部75が設けられている。一対の接触部75は、弾性片部74の自由端側において左右に対向配置されており、この弾性片部74の弾性変形に応じて、その対向方向(すなわち近接又は離間する方向)に変位可能である。この一対の接触部75の間隔は、第1プラグコンタクト30の板厚よりも小さく形成されており、弾性片部74の弾性力(復元力)に基づいて該第1プラグコンタクト30の接触部31を弾性的に両側から挟み込んだ状態で接触可能となっている。そのため、第1レセプタクルコンタクト70は、その一対の接触部75により第1プラグコンタクト30と二点で接触が可能である。
【0026】
また、左右の側板部71には、コンタクト収容空間65に対する第1レセプタクルコンタクト70の逆挿し(上下反対姿勢での挿し込み)を防止するための規制片部71aが設けられている。すなわち、第1レセプタクルコンタクト70がコンタクト収容空間65に対して正規の向き(規制片部71aが下向き)である場合に第1レセプタクルコンタクト70の挿入を許容し、第1レセプタクルコンタクト70がコンタクト収容空間65に対して非正規の向き(規制片部71aが上向き)である場合に第1レセプタクルコンタクト70の挿入を規制する(規制片部71aが上壁に干渉する)ようになっている。また、左右の側板部71には、コンタクト収容突起63のラッチ部63bと係合可能な係止部71bが形成されている。第1レセプタクルコンタクト70は、この係止部71bとラッチ部63bとの係合によって、コンタクト収容空間65内での前後方向の位置が規定される。
【0027】
被覆圧着部78は、U字状に起立する一対の圧着片78aを有し、この圧着片78aを加締めることで1本のケーブルCの被覆部C2を圧着可能に形成されている。芯線圧着部79は、U字状に起立する一対の圧着片79aを有し、この圧着片79aを加締めることで1本のケーブルCの芯線C1を圧着可能に形成されている。なお、第1レセプタクルコンタクト70の接続部73、芯線圧着部78および被覆圧着部79の縦幅(上下方向の幅)は、前側空間66の縦幅(上下方向の幅)よりも小さく形成されている。
【0028】
ここで、第1レセプタクルコンタクト70にケーブルC(1本のケーブルC)を接続するには、このケーブルCの絶縁被覆C2に第1レセプタクルコンタクト70の被覆圧着部79を加締め加工(圧着)するとともに、ケーブルCから露出した芯線C1部分に第1レセプタクルコンタクト70の芯線圧着部78を加締め加工(圧着)する。これにより、第1レセプタクルコンタクト70がケーブルCの端部に固定されるとともに、第1レセプタクルコンタクト70とケーブルCとが導通される。
【0029】
この第1レセプタクルコンタクト70は、レセプタクルハウジング60の後端部に開口された下列のコンタクト収容空間65に挿入されて、規制片部71aが上向きとなる収容姿勢でコンタクト収容空間65内に取り付けられる。このとき、第1レセプタクルコンタクト70の係止部71bがコンタクト収容突起63のラッチ部63bと係合して第1レセプタクルコンタクト70の前後方向の移動が規制されるとともに、第1レセプタクルコンタクト70がコンタクト収容空間65の壁面と近接又は当接して第1レセプタクルコンタクト70の上下左右への移動が規制されることで、第1レセプタクルコンタクト70がレセプタクルハウジング60内に抜け止め状態で固定される。
【0030】
このとき、第1レセプタクルコンタクト70は、その全体が前側空間66内に収まるように構成されている。すなわち、第1レセプタクルコンタクト70の全長(軸方向の長さ)は、前側空間66の全長(軸方向の長さ)とほぼ同じ大きさに形成されている。よって、第1レセプタクルコンタクト70の被覆圧着部79は、コンタクト収容空間65のうち、縦方向(上下方向)に狭幅となる前側空間66内に位置し、この被覆圧着部79と前側空間66の壁面とが僅かなクリアランスのもとで上下方向に対峙することになる。
【0031】
第2レセプタクルコンタクト80は、その先端側から順に、左右の側板部81およびこれらを繋ぐ上板部82を有してなる接続部83と、この接続部83の後部に繋がりケーブルCの芯線C1を保持する芯線圧着部88と、この芯線圧着部88の後部に繋がりケーブルCの絶縁被覆C2を保持する被覆圧着部89とを備えて構成される。
【0032】
接続部83には、各側板部81の開放端から内側に折り返されて前方に向けて片持ち状に延出される一対の弾性片部84が設けられている。この弾性片部84は、平面視において「へ」の字形に折曲形成されており、その折曲部分に凸状の接触部85が設けられている。一対の接触部85は、弾性片部84の自由端側において左右に対向配置されており、この弾性片部84の弾性変形に応じて、その対向方向(すなわち近接又は離間する方向)に変位可能である。この一対の接触部85の間隔は、第2プラグコンタクト40の板厚よりも小さく形成されており、弾性片部84の弾性力(復元力)に基づいて該第2プラグコンタクト40の接触部41を弾性的に両側から挟み込んだ状態で接触可能となっている。そのため、第2レセプタクルコンタクト80は、その一対の接触部85により第2プラグコンタクト40と二点で接触が可能である。
【0033】
また、左右の側板部81には、コンタクト収容空間65に対する第2レセプタクルコンタクト80の逆挿し(上下反対姿勢での挿し込み)を防止するための規制片部81aが設けられている。すなわち、第2レセプタクルコンタクト80がコンタクト収容空間65に対して正規の向き(規制片部81aが上向き)である場合に第2レセプタクルコンタクト80の挿入を許容し、第2レセプタクルコンタクト80がコンタクト収容空間65に対して非正規の向き(規制片部81aが下向き)である場合に第2レセプタクルコンタクト80の挿入を規制する(規制片部81aが下壁に干渉する)ようになっている。また、左右の側板部81には、コンタクト収容突起63のラッチ部63bと係合可能な係止部81bが形成されている。第2レセプタクルコンタクト80は、この係止部81bとラッチ部63bとの係合によって、コンタクト収容空間65内での前後方向の位置が規定される。
【0034】
被覆圧着部88は、U字状に起立する一対の圧着片88aを有し、この圧着片88aを加締めることで2本のケーブルCの被覆部C2を圧着可能に形成されている。芯線圧着部89は、U字状に起立する一対の圧着片89aを有し、この圧着片89aを加締めることで2本のケーブルCの芯線C1を圧着可能に形成されている。なお、第2レセプタクルコンタクト80の接続部83および芯線圧着部88縦幅(上下方向の幅)は、前側空間66の縦幅(上下方向の幅)よりも小さく形成され、被覆圧着部79の縦幅(上下方向の幅)は、前側空間66の縦幅(上下方向の幅)よりも大きく且つ後側空間67の縦幅(上下方向の幅)よりも小さく形成されている。
【0035】
ここで、第2レセプタクルコンタクト80に2本のケーブルC(上下に重ね合わされた2本のケーブルC)を接続するには、このケーブルCの絶縁被覆C2に第2レセプタクルコンタクト80の被覆圧着部89を加締め加工(圧着)するとともに、ケーブルCから露出した芯線C1部分に第2レセプタクルコンタクト80の芯線圧着部88を加締め加工(圧着)する。これにより、第2レセプタクルコンタクト80がケーブルCの端部に固定されるとともに、第2レセプタクルコンタクト80とケーブルCとが導通される。
【0036】
この第2レセプタクルコンタクト80は、レセプタクルハウジング60の後端部に開口された上列のコンタクト収容空間65に挿入されて、規制片部81aが上向きとなる収容姿勢でコンタクト収容空間65内に取り付けられる。このとき、第2レセプタクルコンタクト80の係止部81bがコンタクト収容突起63のラッチ部63bと係合して第2レセプタクルコンタクト80の前後方向の移動が規制されるとともに、第2レセプタクルコンタクト80がコンタクト収容空間65の壁面と近接又は当接して第2レセプタクルコンタクト80の上下左右への移動が規制されることで、第2レセプタクルコンタクト80がレセプタクルハウジング60内に抜け止め状態で固定される。
【0037】
このとき、第2レセプタクルコンタクト80のうち接続部83および芯線圧着部88はコンタクト収容空間65の前側空間66内に収まり、第2レセプタクルコンタクト80のうち被覆圧着部89はコンタクト収容空間65の後側空間67内に収まるように構成されている。よって、第2レセプタクルコンタクト80の被覆圧着部89は、コンタクト収容空間65のうち、縦方向(上下方向)に広幅となる後側空間67内に位置し、この被覆圧着部89と後側空間67の壁面とが僅かなクリアランスのもとで上下方向に対峙することになる。
【0038】
かかる構成のレセプタクルコネクタ50において、図18(b)に示すように、下列の1本のケーブルCに煽りが生じて、該ケーブルCと第1レセプタクルコンタクト70との接続部分である被覆圧着部79に対して略垂直な力(下方向の力)が作用した場合、この被覆圧着部79と前側空間66の内壁との間には僅かな隙間しかないため、ケーブルCの煽りに起因して被覆圧着部79が下方向に変位しようとしても、前側空間66の内壁との当接によって、被覆圧着部79の変位量を弾性変形可能な範囲(塑性変形に至る前の範囲)に制限して、第1レセプタクルコンタクト70の過剰な変形を防止することができる。
【0039】
同様に、図18(c)に示すように、上列の2本のケーブルCに煽りが生じて、該ケーブルCと第2レセプタクルコンタクト80との接続部分である被覆圧着部89に対して略垂直な力(上方向の力)が作用した場合、被覆圧着部89と後側空間67の内壁との間には、僅かな隙間しか形成されていないため、ケーブルCの煽りにより被覆圧着部89が下方向に変位しようとした場合でもあっても、後側空間67の内壁との当接によって、被覆圧着部89の変位量を弾性変形可能な範囲(塑性変形に至る前の範囲)に制限して、第2レセプタクルコンタクト80の過剰な変形を防止することができる。
【0040】
以上、本実施形態に係るコネクタ装置1によれば、レセプタクルハウジング60内のコンタクト収容空間65を各レセプタクルコンタクト70,80間で共通としながらも、第1レセプタクルコンタクト70と第2レセプタクルコンタクト80との軸方向の長さを互いに異ならしめて、第1レセプタクルコンタクト70のうち1本のケーブルCとの接続部分である被覆圧着部79を狭幅の前側空間66に位置させるとともに、第2レセプタクルコンタクト80のうち2本のケーブルCとの接続部分である被覆圧着部89を広幅の後側空間67に位置させて、各レセプタクルコンタクト70,80の被覆圧着部79,89とコンタクト収容空間65の内壁とを僅かなクリアランスで対峙させることで、ケーブルCに煽り等の外力が付加されてレセプタクルコンタクト70,80の被覆圧着部79,89に垂直な力が生じた場合でも、コンタクト収容空間65の内壁との当接により、被覆圧着部79,89の変位量を弾性変形可能な範囲内に制限して、各レセプタクルコンタクト70,80の過剰な変形を防止することができ、その結果、ハウジングを変更することなく、単数本用の第1レセプタクルコンタクト70と複数本用の第2レセプタクルコンタクト80との二種類のコンタクトを自由な配置で混在させることが可能となる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない
範囲であれば適宜改良可能である。
【0042】
上述の実施形態では、第1レセプタクルコンタクト70を下列に配置し、第2レセプタクルコンタクト80を上列に配置した構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、各レセプタクルコンタクト70,80を自由な配置で混在させることが可能である。
【0043】
また、上述の実施形態では、レセプタクルコンタクト70,80を上下二列のコンタクト配置とする構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、一列のみ、或いは、三列以上の複数段の配列に対応したコンタクト配置としてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態では、第2レセプタクルコンタクト80を2本のケーブルCの端部に圧着した構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、3本以上の複数本のケーブルCの端部に圧着した構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 コネクタ装置
10 プラグコネクタ(相手側コネクタ)
50 レセプタクルコネクタ(ケーブルコネクタ)
60 レセプタクルハウジング(ハウジング)
65 コンタクト収容空間(コンタクト収容部)
66 前側空間(一端側収容空間)
67 後側空間(他端側収容空間)
70 第1レセプタクルコンタクト(第1コンタクト)
73 接続部(第1コンタクト本体部)
78 芯線圧着部(第1コンタクト本体部)
79 被覆圧着部(第1被覆保持部)
80 第2レセプタクルコンタクト(第2コンタクト)
83 接続部(第2コンタクト本体部)
88 芯線圧着部(第2コンタクト本体部)
89 被覆圧着部(第2被覆圧着部)
C ケーブル
C1 芯線
C2 絶縁被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19