(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記指標値取得ステップは、前記加速度情報に基づいて得られた加速度の標準偏差に所定の正規化処理を施すことによって前記指標値としての標準偏差を求める正規化ステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の混雑度推定方法。
1つの基準範囲およびその周囲の基準範囲に対応付けられる係数群を格納する補正用フィルタを用いて、前記推定人数算出ステップで算出された推定人数を補正する推定人数補正ステップを更に含むことを特徴とする、請求項6に記載の人数推定方法。
混雑度のデータが存在する基準範囲を計算対象基準範囲と定義し、前記計算対象基準範囲である任意の基準範囲を補正対象基準範囲と定義し、前記補正用フィルタに格納されている係数をフィルタ係数と定義し、任意の基準範囲についての補正前の推定人数に当該基準範囲に対応付けられるフィルタ係数を乗じて得られる値を第1乗算値と定義したとき、前記推定人数補正ステップでは、前記補正対象基準範囲についての補正後の推定人数が下記の式で算出されることを特徴とする、請求項8に記載の人数推定方法:
NP2=Sum1/Sum2
ここで、NP2は、前記補正対象基準範囲についての補正後の推定人数を表し、Sum1は、前記補正対象基準範囲およびその周囲の計算対象基準範囲についての第1乗算値の総和を表し、Sum2は、前記補正対象基準範囲およびその周囲の計算対象基準範囲のそれぞれに対応付けられるフィルタ係数の総和を表す。
前記指標値取得ステップは、前記加速度情報に基づいて得られた加速度の標準偏差に所定の正規化処理を施すことによって前記指標値としての標準偏差を求める正規化ステップを含むことを特徴とする、請求項10に記載の混雑度推定プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1の従来手法によれば、或る携帯電話事業者の契約者のみのデータが用いられており、しかも、日本の総人口を参考にした推定が行われるので、狭い領域内における人数を精度良く推定することができない。また、推定精度を高めるためには推定に用いるデータ数を多くする必要があり、そのためには人数の推定を比較的広い領域毎で行わざるを得ない。経路案内アプリにおいて人数の推定が広い領域毎で行われると、現在地から目的地までの所要時間が精度良く推定されない。
【0008】
また、第2の従来手法によれば、監視カメラに映っている領域については、比較的精度良く人数を推定することができる。しかしながら、監視カメラの設置には膨大なコストを要することが懸念される。また、観光地などにおいては、景観保護のために監視カメラの設置が認められないこともある。
【0009】
そこで、本発明は、監視カメラを要することなく安価に精度良く混雑度および人数を推定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、混雑度推定方法であって、
混雑度を推定するための指標値を第1のセンサ情報に基づいて取得する指標値取得ステップと、
前記指標値取得ステップで取得された指標値から直接に混雑度を算出する混雑度算出ステップと
を含
み、
前記第1のセンサ情報は、加速度情報であって、
前記指標値は、混雑度を算出する直近の所定期間に取得した前記加速度情報に基づく加速度の標準偏差であることを特徴とする。
【0012】
第
2の発明は、第
1の発明において、
前記指標値取得ステップは、前記加速度情報に基づいて得られた加速度の標準偏差に所定の正規化処理を施すことによって前記指標値としての標準偏差を求める正規化ステップを含むことを特徴とする。
【0013】
第
3の発明は、第
2の発明において、
前記指標値取得ステップの実行前に所定期間を通じて前記加速度情報に基づく加速度の標準偏差を取得する正規化準備ステップを更に含み、
前記正規化ステップでは、前記正規化準備ステップで取得された標準偏差のうちの最大値が前記指標値として取り得る値の最大値となるように前記正規化処理が行われることを特徴とする。
【0014】
第
4の発明は、第
1から第
3までのいずれかの発明において、
前記混雑度算出ステップでは、前記指標値としての標準偏差が小さいほど混雑度が大きくなるように混雑度が算出されることを特徴とする。
【0015】
第
5の発明は、第1から第
4までのいずれかの発明において、
携帯端末装置の利用者が歩行中であるか否かを第2のセンサ情報に基づいて判別する行動判別ステップを更に含み、
前記行動判別ステップで利用者が歩行中である旨の判別がなされたときにのみ、前記指標値取得ステップによる指標値の取得および前記混雑度算出ステップによる混雑度の算出が行われることを特徴とする。
【0018】
第
6の発明は、人数推定方法であって、
携帯端末装置のセンサ情報に基づいて混雑度を推定する混雑度推定ステップと、
複数の携帯端末装置についての前記混雑度推定ステップで推定された混雑度に基づいて、予め定められた基準範囲毎の平均混雑度を算出する平均混雑度算出ステップと、
前記平均混雑度算出ステップで算出された平均混雑度に基準範囲毎に予め求められている最大収容人数を乗ずることによって基準範囲毎の推定人数を算出する推定人数算出ステップと
を含むことを特徴とする。
【0019】
第
7の発明は、第
6の発明において、
1つの基準範囲およびその周囲の基準範囲に対応付けられる係数群を格納する補正用フィルタを用いて、前記推定人数算出ステップで算出された推定人数を補正する推定人数補正ステップを更に含むことを特徴とする。
【0020】
第
8の発明は、第
7の発明において、
前記補正用フィルタに関し、中心の基準範囲に対応付けられた係数の値は、その周囲の基準範囲に対応付けられた係数の値よりも大きいことを特徴とする。
【0021】
第
9の発明は、第
8の発明において、
混雑度のデータが存在する基準範囲を計算対象基準範囲と定義し、前記計算対象基準範囲である任意の基準範囲を補正対象基準範囲と定義し、前記補正用フィルタに格納されている係数をフィルタ係数と定義し、任意の基準範囲についての補正前の推定人数に当該基準範囲に対応付けられるフィルタ係数を乗じて得られる値を第1乗算値と定義したとき、前記推定人数補正ステップでは、前記補正対象基準範囲についての補正後の推定人数が下記の式で算出されることを特徴とする。
NP2=Sum1/Sum2
ここで、NP2は、前記補正対象基準範囲についての補正後の推定人数を表し、Sum1は、前記補正対象基準範囲およびその周囲の計算対象基準範囲についての第1乗算値の総和を表し、Sum2は、前記補正対象基準範囲およびその周囲の計算対象基準範囲のそれぞれに対応付けられるフィルタ係数の総和を表す。
【0022】
第
10の発明は、混雑度推定プログラムであって、
混雑度を推定するための指標値を第1のセンサ情報に基づいて取得する指標値取得ステップと、
前記指標値取得ステップで取得された指標値から直接に混雑度を算出する混雑度算出ステップと
をコンピュータのCPUがメモリを利用して実行
し、
前記第1のセンサ情報は、加速度情報であって、
前記指標値は、混雑度を算出する直近の所定期間に取得した前記加速度情報に基づく加速度の標準偏差であることを特徴とする。
【0024】
第
11の発明は、第
10の発明において、
前記指標値取得ステップは、前記加速度情報に基づいて得られた加速度の標準偏差に所定の正規化処理を施すことによって前記指標値としての標準偏差を求める正規化ステップを含むことを特徴とする。
【0025】
第
12の発明は、第
11の発明において、
前記指標値取得ステップの実行前に所定期間を通じて前記加速度情報に基づく加速度の標準偏差を取得する正規化準備ステップを更に含み、
前記正規化ステップでは、前記正規化準備ステップで取得された標準偏差のうちの最大値が前記指標値として取り得る値の最大値となるように前記正規化処理が行われることを特徴とする。
【0026】
第
13の発明は、第
10から第
12までのいずれかの発明において、
前記混雑度算出ステップでは、前記指標値としての標準偏差が小さいほど混雑度が大きくなるように混雑度が算出されることを特徴とする。
【0027】
第
14の発明は、第
10から第
13までのいずれかの発明において、
携帯端末装置の利用者が歩行中であるか否かを第2のセンサ情報に基づいて判別する行動判別ステップを更に含み、
前記行動判別ステップで利用者が歩行中である旨の判別がなされたときにのみ、前記指標値取得ステップによる指標値の取得および前記混雑度算出ステップによる混雑度の算出が行われることを特徴とする。
【0028】
第
15の発明は、サーバと複数の携帯端末装置とがネットワークを介して接続される人数推定システムにおいて前記サーバで実行される人数推定プログラムであって、
各携帯端末装置から送信される混雑度のデータを受信するデータ受信ステップと、
前記データ受信ステップで受信された混雑度のデータに基づいて、予め定められた基準範囲毎の平均混雑度を算出する平均混雑度算出ステップと、
前記平均混雑度算出ステップで算出された平均混雑度に基準範囲毎に予め求められている最大収容人数を乗ずることによって基準範囲毎の推定人数を算出する推定人数算出ステップと
をコンピュータのCPUがメモリを利用して実行することを特徴とする。
【0029】
第
16の発明は、サーバと複数の携帯端末装置とがネットワークを介して接続される人数推定システムであって、
各携帯端末装置は、
混雑度を推定するための指標値を第1のセンサ情報に基づいて取得する指標値取得手段と、
前記指標値取得手段によって取得された指標値から直接に混雑度を算出する混雑度算出手段と、
前記混雑度算出手段によって算出された混雑度のデータを前記サーバに送信するデータ送信手段と
を備え、
前記サーバは、
各携帯端末装置のデータ送信手段によって送信される混雑度のデータを受信するデータ受信手段と、
前記データ受信手段によって受信された混雑度のデータに基づいて、予め定められた基準範囲毎の平均混雑度を算出する平均混雑度算出手段と、
前記平均混雑度算出手段によって算出された平均混雑度に基準範囲毎に予め求められている最大収容人数を乗ずることによって基準範囲毎の推定人数を算出する推定人数算出手段と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
上記第1の発明によれば、
加速度情報に基づく
加速度の標準偏差から直接的に混雑度が算出される。すなわち、携帯端末装置などの1人のユーザーのみのデータを用いて複雑な計算を行うことなく混雑度(当該ユーザーが歩行している場所の混雑度)を推定することが可能となる。
また、加速度のばらつきは混雑の程度に応じて変化する傾向にあるので、混雑度の算出に加速度の標準偏差を用いることによって精度良く混雑度が推定される。また、監視カメラ等の機器を設ける必要がないので、安価に混雑度を推定することが可能となる。
【0032】
上記第
2の発明によれば、加速度の標準偏差から混雑度を算出する際に、人による歩き方の違いが考慮される。このため、より精度良く混雑度が推定される。
【0033】
上記第
3の発明によれば、混雑度の推定精度が更に高められる。
【0034】
上記第
4の発明によれば、上記第
1から上記第
3までの発明と同様の効果が得られる。
【0035】
上記第
5の発明によれば、携帯端末装置のユーザーが歩行中であるときのデータのみを用いて混雑度が算出される。従って、写真撮影や買い物などで止まっているユーザーのデータを除いて混雑度が算出される。これにより、混雑度の推定精度が高められる。
【0038】
上記第
6の発明によれば、携帯端末装置毎に混雑度の推定が行われた後、複数の携帯端末装置でそれぞれ推定された混雑度の情報を用いて基準範囲毎(例えばメッシュ毎)の平均混雑度が算出される。携帯端末装置毎の混雑度は1人のユーザーのデータが存在すれば求められるので、平均混雑度についても基準範囲に1人のユーザーのデータが存在すれば求めることができる。従って、従来よりも小さな範囲毎に混雑度を推定することができる。また、基準範囲毎に平均混雑度に最大収容人数を乗ずることによって人数の推定が行われる。このように、単に混雑度を推定するだけでなく人数の推定までもが行われる。また、混雑度や人数を推定するために、監視カメラ等の機器を設ける必要はない。以上より、安価に、従来よりも詳細な混雑情報をユーザーに提供することが可能となる。
【0039】
上記第
7の発明によれば、補正用フィルタ内の係数を適宜に設定することによって、人数の推定精度を高めることが可能となる。
【0040】
上記第
8の発明によれば、隣接基準範囲間での推定人数の不自然な差異を小さくする平滑化処理が行われる。その結果、人数の推定精度が高められる。
【0041】
上記第
9の発明によれば、混雑度のデータが存在しない基準範囲が計算対象から除かられるので、人の流れに沿った(道路に沿った)平滑化処理が行われる。
【0042】
上記第
10の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
上記第
11の発明によれば、上記第
2の発明と同様の効果が得られる。
上記第
12の発明によれば、上記第
3の発明と同様の効果が得られる。
上記第
13の発明によれば、上記第
4の発明と同様の効果が得られる。
上記第
14の発明によれば、上記第
5の発明と同様の効果が得られる。
上記第
15の発明によれば、上記第
6の発明と同様の効果が得られる。
上記第
16の発明によれば、上記第
6の発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。なお、以下においては、「アプリケーションソフトウェア」のことを「アプリ」と略記している。
【0045】
<1.全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る経路案内システムを実現する機器構成を示すブロック図である。この経路案内システムは、サーバ20と複数の携帯端末装置10とによって実現される。サーバ20と携帯端末装置10とは、インターネットなどの通信回線を介して接続される。本実施形態においては、この経路案内システムを実現するために、経路案内アプリが携帯端末装置10にインストールされる。経路案内アプリは、ユーザーが観光や買い物などで或る目的地に移動する際にユーザーに現在地から目的地までの経路を提示するためのソフトウェアである。ユーザーは、所定の操作により経路案内アプリを起動することができる。このような経路案内アプリを携帯端末装置10にインストールしておくことにより、ユーザーは、例えば土地勘のない観光地を訪れた場合でも、この経路案内アプリを使用することによって目的地に容易にたどり着くことが可能となる。なお、経路案内アプリ内に避難誘導用の経路案内に特化した機能を持たせるようにしても良い。これにより、ユーザーは、土地勘のない場所で地震などの災害に遭遇しても、避難所に容易にたどり着くことが可能となる。
【0046】
ところで、後述するように、この経路案内システムでは混雑度および人数(所定範囲内の人数)の推定が行われる。すなわち、この経路案内システムによって人数推定システムが実現されている。
【0047】
<2.ハードウェア構成>
図2は、携帯端末装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。携帯端末装置10は、CPU11,フラッシュROM12,RAM13,通信制御部14,映像撮影部(カメラ)15,入力操作部16,表示部17,GPSセンサ18a,加速度センサ18b,および地磁気センサ18cを有している。CPU11は、この携帯端末装置10の全体を制御するために各種演算処理等を行う。フラッシュROM12は、書き込み可能な不揮発性のメモリであって、携帯端末装置10の電源がオフされても保持されるべき各種プログラム・各種データを格納する。RAM13は、書き込み可能な揮発性のメモリであって、実行中のプログラムやデータ等を一時的に格納する。通信制御部14は、外部へのデータ送信の制御や外部からのデータ受信の制御を行う。映像撮影部(カメラ)15は、ユーザーによる操作に基づいて、現在位置から見える風景の撮影を行う。入力操作部16は、例えばタッチパネルであって、ユーザーによる入力操作を受け付ける。表示部17は、CPU11からの指令に基づいて、画像の表示を行う。GPSセンサ18aは、GPS衛星から受信する電波に基づいて、ユーザーの現在位置を特定するための位置情報(緯度・経度の情報)を取得する。加速度センサ18bは、この携帯端末装置10の動きに基づいて、加速度を測定する。地磁気センサ18cは、この携帯端末装置10の向いている方位(例えば表示部17の向いている方位)を示す方位情報を取得する。
【0048】
携帯端末装置10内において、経路案内アプリを実現する経路案内プログラムは、フラッシュROM12に格納される。なお、この経路案内プログラムには、混雑度を推定するための混雑度推定プログラムが含まれている。ユーザーによって経路案内アプリの起動が指示されると、フラッシュROM12に格納されている経路案内プログラムがRAM13に読み出され、そのRAM13に読み出された経路案内プログラムをCPU11が実行することにより、経路案内アプリの機能がユーザーに提供される。なお、経路案内プログラムは、典型的にはインターネットなどの通信回線を介して所定のサーバ(不図示)から携帯端末装置10にダウンロードされ、当該携帯端末装置10内のフラッシュROM12にインストールされる。
【0049】
図3は、サーバ20のハードウェア構成を示すブロック図である。サーバ20は、CPU21,ROM22,RAM23,補助記憶装置24,通信制御部25,入力操作部26,および表示部27を有している。CPU21は、このサーバ20の全体を制御するために各種演算処理等を行う。ROM22は、読み出し専用のメモリであって、例えばサーバ20の起動時にCPU21に実行させる初期プログラムなどを格納する。RAM23は、書き込み可能な揮発性のメモリであって、実行中のプログラムやデータ等を一時的に格納する。補助記憶装置24は、磁気ディスク装置などであって、サーバ20の電源がオフされても保持されるべき各種プログラム・各種データを格納する。通信制御部25は、外部へのデータ送信の制御や外部からのデータ受信の制御を行う。入力操作部26は、例えばキーボードやマウスであって、オペレータによる入力操作を受け付ける。表示部27は、CPU21からの指令に基づいて、画像の表示を行う。
【0050】
サーバ20には、メッシュ毎の人数を推定する人数推定プログラムがインストールされる。なお、メッシュとは、地理領域を一定の大きさ・形状の範囲で区分した領域のことである。本実施形態では、例えば20m四方の領域が1つのメッシュとされる。サーバ20内において、人数推定プログラムは、ROM22または補助記憶装置24に格納される。サーバ20が起動すると、ROM22または補助記憶装置24に格納されている人数推定プログラムがRAM23に読み出され、そのRAM23に読み出された人数推定プログラムをCPU21が実行する。これにより、後述するように、携帯端末装置10から送られるデータを用いてメッシュ毎の人数の推定が行われる。
【0051】
<3.機能構成>
図4は、経路案内システムの詳細な機能構成を示すブロック図である。上述したように、この経路案内システムは、携帯端末装置10とサーバ20とによって実現される。携帯端末装置10は、GPS情報取得手段100,加速度測定手段110,方位検出手段120,行動判別手段130,混雑度推定手段140,データ送信手段150,データ受信手段160,基礎情報記憶手段170,経路探索手段180,および表示手段190を有している。混雑度推定手段140には、標準偏差算出手段142と混雑度算出手段144とが含まれている。サーバ20は、データ受信手段200,データ記憶手段210,平均混雑度算出手段220,人数算出手段230,人数平滑化手段240,およびデータ送信手段250を有している。
【0052】
<3.1 携帯端末装置の構成要素の動作>
携帯端末装置10の各構成要素の動作について説明する。GPS情報取得手段100は、GPS衛星から受信する電波に基づいてユーザーの現在位置を特定するための位置情報(緯度・経度の情報)を取得し、それをGPS情報Gdaとして出力する。加速度測定手段110は、ユーザーの動作に起因する携帯端末装置10の動きに基づいて加速度を測定し、例えば測定時刻の情報と測定値である加速度の情報とからなる加速度データを出力する。なお、便宜上、本明細書では、測定値としての加速度そのものと上述した加速度データとに同じ参照符号SAを付している。混雑度と混雑度データ,平均混雑度と平均混雑度データ,ベース人数とベース人数データ,および推定人数と推定人数データについても同様である。加速度測定手段110による加速度SAの測定は、例えば70ミリ秒毎に行われる。方位検出手段120は、この携帯端末装置10の向いている方位を検出し、検出結果を方位情報BIとして出力する。
【0053】
なお、GPS情報取得手段100はハードウェアとしてのGPSセンサ18aによって実現され、加速度測定手段110はハードウェアとしての加速度センサ18bによって実現され、方位検出手段120はハードウェアとしての地磁気センサ18cによって実現される(
図2参照)。また、加速度測定手段110により得られる加速度の情報によって第1のセンサ情報が実現され、方位検出手段120により得られる方位情報BIによって第2のセンサ情報が実現されている。
【0054】
行動判別手段130は、方位情報BIに基づいて、ユーザーが歩行中であるか否かの判別を行い、その判別結果Kを出力する。なお、この判別についての詳しい説明は後述する。混雑度推定手段140は、GPS情報Gdaと加速度SAと行動判別手段130による判別結果Kとに基づいてユーザーが歩行している位置の混雑度Cを推定し、緯度・経度の情報と混雑度の情報とからなる混雑度データCを出力する。より詳しくは、混雑度推定手段140に含まれる標準偏差算出手段142は、ユーザーが歩行中である旨を判別結果Kが示しているときに、加速度データSAに基づいて例えば直近の10秒間分の加速度SAの標準偏差SDを求める。本実施形態においては、この標準偏差算出手段142によって指標値取得手段が実現されている。また、混雑度推定手段140に含まれる混雑度算出手段144は、標準偏差SDに基づいて混雑度Cを算出し(標準偏差SDを混雑度Cに変換し)、例えば
図5に示すようなレコードフォーマットを有する混雑度データCを出力する。なお、標準偏差SDの求め方および混雑度Cの求め方についての詳しい説明は後述する。
【0055】
データ送信手段150は、混雑度データCをサーバ20に送信する。データ送信手段150による混雑度データCの送信は、例えば1分毎に行われる。データ受信手段160は、経路探索(経路探索手段180によるユーザーの現在位置から目的地までの経路の探索)に有用なデータである有意情報Mdaをサーバ20から受信する。基礎情報記憶手段170には、経路探索の際に必要となる基礎情報Bdaが格納されている。この基礎情報記憶手段170は、ハードウェアとしてのフラッシュROM12またはRAM13(
図2参照)によって実現される。基礎情報Bdaには、地図や道路情報などが含まれている。道路情報は、例えば、各道路の位置の情報(始点および終点の情報),始点から終点までの距離の情報,道路幅の情報などによって構成されている。なお、適宜のタイミングでデータ送信手段150がGPS情報Gdaをサーバ20に送信するようにして、基礎情報記憶手段170に格納すべき基礎情報Bdaがサーバ20から携帯端末装置10にダウンロードされるようにしても良い。
【0056】
経路探索手段180は、ユーザーによる目的地の入力を受け付け、GPS情報Gdaと有意情報Mdaと基礎情報Bdaとに基づいて目的地までの経路を探索する。経路探索手段180による経路の探索結果Reは、表示手段190(
図2の表示部17)に表示される。経路探索が実行されると、例えば、
図6に示すような画面が表示部17に表示される。
図6に示す例では、表示部17内の領域は、地図を表示するための領域(地図表示領域)17aと映像撮影部15(
図2参照)による撮影で得られる映像(風景映像)を表示するための領域(映像表示領域)17bとに分割されている。そして、地図表示領域17aでは、目的地までの経路が符号31で示す太線で表され、映像表示領域17bでは、目的地までの経路が符号32で示す矢印状のエアタグ(拡張現実画像)で表されている。
【0057】
<3.2 サーバの構成要素の動作>
次に、サーバ20の各構成要素の動作について説明する。データ受信手段200は、携帯端末装置10から送られる混雑度データCを受信する。その混雑度データCは、データ記憶手段210に格納される。なお、データ受信手段200が受信する混雑度データCには様々な位置(緯度、経度)のデータが含まれており、それらのデータはメッシュ毎のデータに分類されてデータ記憶手段210に格納される。データ記憶手段210には、混雑度データCに加えて後述するベース人数データBNが格納されている。なお、混雑度データCおよびベース人数データBN以外のデータ(例えば基礎情報Bda)がデータ記憶手段210に格納されていても良い。
【0058】
平均混雑度算出手段220は、データ記憶手段210に格納されている混雑度データCに基づいて、メッシュ毎の平均混雑度CAVを算出する。これにより、例えば
図7に示すようなレコードフォーマットを有する平均混雑度データCAVが出力される。人数算出手段230は、データ記憶手段210に格納されているベース人数データBNと平均混雑度算出手段220によって算出された平均混雑度CAVとに基づいて、メッシュ毎の推定人数(各メッシュ内の道路上に現在いると推測される人の数)NP1を算出する。人数平滑化手段240は、隣接メッシュ間での推定人数の不自然な差異を小さくするよう、人数算出手段230によって算出された推定人数NP1に対して平滑化処理を施す。これにより、例えば
図8に示すようなレコードフォーマットを有する推定人数データNP2が人数平滑化手段240から出力される。なお、推定人数の求め方および平滑化処理についての詳しい説明は後述する。
【0059】
データ送信手段250は、経路探索に必要な有意情報Mdaを携帯端末装置10に送信する。携帯端末装置10に送信される有意情報Mdaには、平均混雑度データCAVおよび推定人数データNP2が含まれている。
【0060】
<4.処理フロー>
本実施形態に係る経路案内システムでは、道路の混雑の状態を分析する処理(以下、「混雑分析処理」という。)が行われる。
図9は、その混雑分析処理の概略手順を示すフローチャートである。まず、各携帯端末装置10において、当該各携帯端末装置10で得られるデータだけを用いて、ユーザーが現在いる位置の混雑度の推定が行われる(ステップS10)。各携帯端末装置10での混雑度の推定の結果として得られる混雑度データCはサーバ20に送信される。そして、サーバ20において、各携帯端末装置10から送られてきた混雑度データCに基づいて、平均混雑度(メッシュ毎の混雑度)の推定が行われる(ステップS20a)。その後、さらにサーバ20において、メッシュ毎の人数の推定が行われる(ステップS20b)。以下、携帯端末装置10で行われる処理(ステップS10の処理)およびサーバ20で行われる処理(ステップS20a,S20bの処理)のそれぞれについて詳しく説明する。
【0061】
<4.1 携帯端末装置で行われる処理>
図10は、携帯端末装置10で行われる処理(混雑度推定処理)の手順を示すフローチャートである。携帯端末装置10で経路案内アプリが起動されると、まず、後述するステップS130の処理で正規化を行う際に必要となるデータを取得するキャリブレーション処理が行われる(ステップS110)。このキャリブレーション処理についての詳しい説明は後述する。
【0062】
キャリブレーション処理の終了後、行動判別手段130によって、携帯端末装置10のユーザーが歩行中であるか否かの判別が行われる(ステップS120)。本実施形態では、この判別は、方位検出手段120によって検出された方位情報BIに基づいて行われる。一般に、人が歩行中である時には、身体の向きはほぼ一定であると考えられる。それに対して、写真撮影や買い物などで人が止まっている時には、身体の向きの変化が大きいと考えられる。そこで、本実施形態では、方位情報BIから得られる方位角の単位秒あたりの差分が求められ、当該差分が所定の閾値以下であれば「ユーザーは歩行中である」旨の判定が行われ、当該差分が所定の閾値よりも大きければ「ユーザーは歩行中ではない」旨の判定が行われる。ステップS120での判別の結果、ユーザーが歩行中であれば処理はステップS130に進み、ユーザーが歩行中でなければ処理はステップS150に進む。
【0063】
ステップS130では、標準偏差算出手段142によって、直近の10秒間分の加速度SAの標準偏差SDが算出される。ここで、混雑度の推定に加速度の標準偏差を用いる理由について
図11を参照しつつ説明する。
図11は、人が歩いているときの加速度の変化の例を示す図である。人が混雑している場所を歩いている時には、歩幅が小さくなり全体の動きが小さくなるので、
図11で符号33で示す部分のように加速度のばらつきは小さくなる。これに対して、人が空いている場所を歩いている時には、歩幅が大きくなり全体の動きが大きくなるので、
図11で符号34で示す部分のように加速度のばらつきは大きくなる。このように、混雑の程度に応じて加速度のばらつきが変化する。そこで、加速度のばらつきの指標となる(加速度の)標準偏差を用いて混雑度の推定が行われる。
【0064】
図12は、人が歩いているときの加速度の標準偏差の変化の一例を示す図である。
図12で符号35で示す時間帯には、加速度の標準偏差は比較的大きな値となっている。この時間帯には、人は比較的空いている場所を歩いていると考えられる。これに対して、
図12で符号36で示す時間帯には、加速度の標準偏差は比較的小さな値となっている。この時間帯には、人は比較的混雑している場所を歩いていると考えられる。
【0065】
ところで、人には個性があるので、歩き方には人による違いがある。このため、或る2人のユーザーのデータに関して仮に加速度の標準偏差が同じであったとしても、必ずしも混雑の程度が同じ程度であるとは限らない。特に、空いている場所を歩いているときに、人による歩行の特徴が現れると考えられる。従って、人によって加速度の標準偏差の最大値は異なると考えられる。なお、身動きできないほど混雑している時には、ほとんどの人において加速度の標準偏差はほぼ0になると考えられる。そこで、本実施形態においては、人による歩き方の違いを吸収するために、携帯端末装置10毎に、加速度の標準偏差の最大値が1.0となるように正規化が行われる。この正規化のためにキャリブレーション処理(ステップS110)が行われる。
【0066】
キャリブレーション処理では、この経路案内アプリの起動後の所定期間(例えば10分間)、例えば10秒毎に加速度の標準偏差が取得される。そして、上記所定期間に取得された標準偏差のうちの最大値が正規化後の1.0に対応する値とされる。例えば、キャリブレーション処理の結果、加速度の標準偏差の最大値が0.7であったと仮定する。この場合、ステップS130では、
図13に示すように、0.0から0.7までの範囲の値が0.0から1.0までの範囲の値となるよう正規化が行われる。
【0067】
以上のようにして加速度SAの標準偏差SDが算出された後、混雑度算出手段144によって、標準偏差SDに基づいて混雑度Cが算出される(ステップS140)。本実施形態においては、混雑度Cは0から1までの値で表される。混雑度Cの値が1に近づくほど混雑の程度が大きくなる。ところで、上述したように、加速度SAの標準偏差SDは、人が混雑している場所を歩いている時には小さくなり、人が空いている場所を歩いている時には大きくなる。従って、ステップS140では、
図14に示すように、加速度SAの標準偏差SDが1に近づくほど混雑度Cが0に近づき、かつ、加速度SAの標準偏差SDが0に近づくほど混雑度Cが1に近づくように、混雑度Cが算出される。より具体的には、混雑度Cは次式(1)で算出される。
混雑度=1−標準偏差 ・・・(1)
【0068】
ところで、上述したように、ステップS130では、直近の10秒間分の加速度SAの標準偏差SDが算出される。すなわち、混雑度Cを算出する1回の処理は、10秒間分のデータを用いて行われる。但し、混雑度Cの算出は10秒毎に行われるのではなく5秒毎に行われる。すなわち、
図15に示すように、1回目の混雑度Cの算出に用いられる後半5秒間分のデータと2回目の混雑度Cの算出に用いられる前半5秒間分のデータとは重複し、2回目の混雑度Cの算出に用いられる後半5秒間分のデータと3回目の混雑度Cの算出に用いられる前半5秒間分のデータとは重複している。このようにして、よりリアルタイム性のある混雑度Cが求められる。
【0069】
混雑度Cの算出後、所定時間(例えば1分)が経過したか否かの判定が行われる(ステップS150)。その結果、所定時間が経過していれば処理はステップS160に進み、所定時間が経過していなければ処理はステップS120に戻る。
【0070】
ステップS160では、所定時間中に蓄積された混雑度データCが携帯端末装置10からサーバ20に送信される。但し、混雑度データCが全く蓄積されていなければ、サーバ20への混雑度データCの送信は行われない。サーバ20への混雑度データCの送信後、処理はステップS120に戻る。その後、この経路案内アプリが終了されるまで、ステップS120〜ステップS160の処理が繰り返される。
【0071】
なお、本実施形態においては、ステップS110によって正規化準備ステップが実現され、ステップS120によって行動判別ステップが実現され、ステップS130によって指標値取得ステップが実現され、ステップS140によって混雑度算出ステップが実現されている。
【0072】
<4.2 サーバで行われる処理>
図16は、サーバ20で行われる処理(人数推定処理)の手順を示すフローチャートである。サーバ20では、まず、各携帯端末装置10から送られてくる混雑度データCを蓄積する処理(ステップ210およびステップS220)が行われる。より詳しくは、各携帯端末装置10から送られてくる混雑度データCを受信し(ステップS210)、その受信した混雑度データCを対応するメッシュに割り当てる(ステップS220)。ステップS210およびステップS220の処理は、この人数推定処理の前回の実行から所定期間(例えば15分)が経過するまで、携帯端末装置10から混雑度データCが送られてくる都度、行われる。
【0073】
ここで、メッシュへの混雑度データCの割り当て(分類)について説明する。携帯端末装置10から送られてくる混雑度データCの1つのレコードは、緯度・経度の情報と混雑度の情報とからなる(
図5参照)。また、サーバ20には、各メッシュを定義したデータとして、例えば
図17に示すようなレコードフォーマットを有するメッシュ定義データが予め保持されている。
図17に示すように、メッシュ定義データには、各メッシュについての左下の緯度・経度の情報および右下の緯度・経度の情報が含まれている。以上より、メッシュ定義データを参照することにより、模式的には
図18に示すように、混雑度データCの各レコードをそれに対応するメッシュに割り当てることができる。なお、緯度・経度の情報からメッシュ番号を求める変換式を用意しておき、当該変換式に基づいて混雑度データCの各レコードをそれに対応するメッシュに割り当てるようにしても良い。
【0074】
この人数推定処理の前回の実行から所定期間(例えば15分)経過後、平均混雑度算出手段220によって、蓄積された混雑度データCに基づきメッシュ毎の平均混雑度CAVが算出される(ステップS230)。例えば、或るメッシュに関して、「混雑度=0.1」,「混雑度=0.15」,および「混雑度=0.35」という3つの混雑度データCが蓄積されていれば、当該メッシュについての平均混雑度CAVは0.2となる。このようにして、模式的には
図19に示すように、メッシュ毎の平均混雑度CAVのデータが得られる。なお、混雑度Cのデータが全く存在しないメッシュについては、平均混雑度CAVの算出は行われない。
図19において空白のメッシュが、平均混雑度CAVの算出が行われなかったメッシュである。
【0075】
平均混雑度CAVの算出後、人数算出手段230によって、メッシュ毎の推定人数NP1の算出が行われる(ステップS240)。この推定人数NP1の算出には、ベース人数BNが用いられる。ベース人数BNとは、各メッシュ内の道路に一時点にどれだけ多くの人が存在し得るのかを示す最大収容人数の情報である。ベース人数BNは、例えば、各メッシュにおける道路の占有面積に基づいて求められる。なお、本実施形態においては、予めベース人数データBNが用意されているものと仮定する。ベース人数データBNは、例えば
図20に示すようなレコードフォーマットを有しており、予めデータ記憶手段210に格納されている。ステップS240において、推定人数NP1は、メッシュ毎に、ステップS230で算出された平均混雑度CAVにベース人数BNを乗ずることによって算出される。すなわち、各メッシュについて、推定人数NP1は次式(2)で算出される。
推定人数=平均混雑度×ベース人数 ・・・(2)
例えば、メッシュ毎の平均混雑度CAVが
図19に示すように求められいて、かつ、メッシュ毎のベース人数BNが
図21に示すように求められている場合、
図22に示すようにメッシュ毎の推定人数NP1が算出される。
【0076】
メッシュ毎の推定人数NP1の算出後、人数平滑化手段240によって平滑化処理が行われる(ステップS250)。この平滑化処理について、以下に説明する。ステップS240での推定人数NP1の算出には例えば15分程度の過去のデータも用いられるため、各携帯端末装置10から混雑度データCを取得してから推定人数NP1が算出されるまでの間に多数のユーザーがメッシュをまたがって移動する。このため、推定人数NP1に関して隣接メッシュ間で不自然な差異が生じることがある。例えば、或る一定の幅の1つの道路に着目したときに混雑の状態はメッシュをまたがる毎に徐々に変化するものと考えられるが、ステップS240で得られた推定人数NP1によれば、隣接する或る2つのメッシュ間で推定人数NP1が大きく変化することがある。そこで、本実施形態では、隣接メッシュ間での推定人数の不自然な差異を小さくするよう、ステップS240で得られた推定人数NP1に対して補正が施される。
【0077】
或るメッシュについての補正後の推定人数NP2は、当該メッシュについての補正前の推定人数NP1と当該メッシュの周囲のメッシュについての補正前の推定人数NP1とに基づいて求められる。その際、
図23に示すような補正用フィルタ41が用いられる。補正用フィルタ41には、1個のメッシュとその周囲の8個のメッシュとに対応付けられる係数(以下、「フィルタ係数」という。)が格納されている。また、推定人数NP2の算出には、混雑度データCが存在するメッシュのデータのみが用いられる。混雑度データCの存在しないメッシュを計算対象から除くことによって、人の流れに沿った(道路に沿った)平滑化処理が行われる。
【0078】
ここで、混雑度データCが存在するメッシュを計算対象メッシュと定義し、計算対象メッシュである任意のメッシュを補正対象メッシュと定義し、任意のメッシュについての補正前の推定人数NP1に当該メッシュに対応付けられるフィルタ係数を乗じて得られる値を第1乗算値と定義したとき、ステップS250では、補正対象メッシュについての補正後の推定人数NP2が次式(3)で算出される。
NP2=Sum1/Sum2 ・・・(3)
上式(3)において、Sum1は、補正対象メッシュおよびその周囲の計算対象メッシュについての第1乗算値の総和を表し、Sum2は、補正対象メッシュおよびその周囲の計算対象メッシュのそれぞれに対応付けられるフィルタ係数の総和を表す。
【0079】
例えば、ステップS240によって、
図24に示すような、メッシュ毎の推定人数NP1の算出結果が得られていると仮定する。なお、
図24において推定人数NP1の算出結果が得られているメッシュは、混雑度データCが存在するメッシュである。この例では、例えば
図25に示すように道路が存在している。
図24で符号52で示すメッシュについての推定人数NP1を補正する際には、
図24で符号52で示すメッシュが補正用フィルタ41の中心のメッシュ(
図23で符号51で示すメッシュ)に対応付けられる。そして、この例の場合、補正後の推定人数NP2は次式(4)によって算出される。
NP2=(8×1+10×2+18×1+14×1)/5 ・・・(4)
【0080】
同様にして
図24の太枠内のメッシュについての推定人数NP2を算出すると、
図26に示すような、メッシュ毎の推定人数NP2の算出結果が得られる。
図24〜
図26より、道路に沿った推定人数の変化が補正によって滑らかになっていることが把握される。以上のようにして、全ての計算対象メッシュについての推定人数NP2が算出されることにより、1回の人数推定処理(ステップS210からステップS250までの処理)が終了する。
【0081】
なお、本実施形態においては、ステップS230によって平均混雑度算出ステップが実現され、ステップS240によって推定人数算出ステップが実現され、ステップS250によって推定人数補正ステップが実現されている。また、
図9のステップS20aは
図16のステップS210〜S230に相当し、
図9のステップS20bは
図16のステップS240〜S250に相当する。
【0082】
<5.効果>
本実施形態によれば、各携帯端末装置10において、加速度測定手段110(加速度センサ18b)によって得られた加速度SAの標準偏差SDが算出され、当該標準偏差SDに簡単な変換が施されることによって混雑度Cが求められる。このように1人のユーザーのデータを用いて複雑な計算を行うことなく混雑度C(当該ユーザーが歩行している場所の混雑度C)を求めることが可能となる。また、サーバ20では、複数の携帯端末装置10から送られてくる混雑度データCを用いて、メッシュ毎の平均混雑度CAVが算出される。上述したように1人のユーザーのデータが存在すれば混雑度Cは求められるので、従来よりも小さな範囲毎に混雑度を推定することができる。すなわち、従来よりも詳細な混雑情報をユーザーに提供することが可能となる。また、各携帯端末装置10で得られた混雑度データCは比較的短い期間毎にサーバ20で集約されるので、リアルタイム性のある混雑情報をユーザーに提供することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態によれば、サーバ20では、メッシュ毎に平均混雑度CAVにベース人数(最大収容人数)を乗ずることによって人数の推定が行われる。このように、単に混雑度を推定するだけでなく人数の推定までもが行われる。各メッシュの平均混雑度CAVは当該各メッシュについて1人のユーザーのデータが存在すれば求められるので、人数についても従来よりも小さな範囲毎に推定することが可能となる。例えば
図27に示すような道路データが存在するエリアについて、
図28に示すように、従来は比較的広い範囲毎(例えば500m四方毎)にしか人数の情報をユーザーに提供することができなかったのに対し、本実施形態によれば狭い範囲毎(例えば20m四方毎)に人数の情報をユーザーに提供することが可能となる。
【0084】
さらに、本実施形態によれば、人数の推定の際には、隣接メッシュ間での推定人数の不自然な差異を小さくする平滑化処理が行われる。この平滑化処理では、混雑度のデータが存在しないメッシュが計算対象から除かれる。これにより、人の流れに沿った(道路に沿った)平滑化処理が行われ、人数の推定精度が高められる。
【0085】
さらにまた、本実施形態によれば、行動判別手段130によって「ユーザーは歩行中である」と判定されたときのデータのみを用いて混雑度Cが算出される。このように、写真撮影や買い物などで止まっているユーザーのデータを除いて混雑度Cの算出が行われるので、混雑度Cの推定精度が高められる。
【0086】
以上のように、本実施形態によれば、監視カメラを要することなく安価に精度良く混雑度および人数を推定することが可能となる。
【0087】
<6.変形例>
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0088】
<6.1 行動判別に関する変形例>
上記実施形態においては、ユーザーが歩行中であるか否かの判別(
図10のステップS120)は方位情報BIに基づいて行われていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、上記判別がジャイロセンサによって得られる角速度に基づいて行われるようにしても良い。この場合、上記実施形態と同様、得られるデータの単位秒あたりの差分が所定の閾値以下であれば「ユーザーは歩行中である」旨の判定が行われ、当該差分が所定の閾値よりも大きければ「ユーザーは歩行中ではない」旨の判定が行われるようにすれば良い。
【0089】
また、近年、携帯端末装置によっては、ユーザーの行動を検知する機能(例えば、アップルインコーポレイテッド社の製品であるiphone(登録商標)に搭載されたモーションアクティビティ機能)が提供されている。この機能を用いれば、「ユーザーは止まっている」、「ユーザーは歩行中である」、「ユーザーは自転車で移動中である」、「ユーザーは自動車で移動中である」などの情報を得ることができる。従って、この機能を用いて上記判別が行われるようにしても良い。
【0090】
<6.2 混雑度を推定するための指標値に関する変形例>
上記実施形態においては、加速度測定手段110によって得られた加速度SAからその標準偏差SDが算出され、標準偏差SDを用いて混雑度Cの推定が行われていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。すなわち、混雑度Cを推定するための指標値は標準偏差SDには限定されない。以下、混雑度Cを推定するための指標値に関する様々な変形例について説明する。
【0091】
<6.2.1 閾値を超えた回数>
上述したように、人が空いている場所を歩いている時には、歩幅が大きくなり全体の動きが大きくなるので、
図11で符号34で示す部分のように加速度のばらつきは大きくなる。ここで、適当な閾値を設けると、所定期間中に加速度SA(加速度測定手段110により得られる測定値)が閾値を超える回数は歩行動作の大きさに依存する。換言すれば、所定期間中に加速度SAが閾値を超えた回数は混雑度Cに依存する。そこで、所定期間中に加速度SAが閾値を超えた回数を、混雑度Cを推定するための指標値として用いることもできる。この場合、所定期間中に加速度SAが閾値を超えた回数が少ないほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。なお、複数の閾値を設けておき、所定期間中に加速度SAが各閾値を超えた回数に基づいて混雑度Cを求めるようにしても良い。
【0092】
<6.2.2 絶対値の平均値>
人が空いている場所を歩いている時には加速度のばらつきが大きくなる(
図11で符号34で示す部分を参照)。加速度の値には正負があり、
図11より、加速度のばらつきが大きくなると加速度の絶対値も大きくなることが把握される。そこで、加速度SAの絶対値の平均値を混雑度Cを推定するための指標値として用いることもできる。この場合、加速度SAの絶対値の平均値が小さいほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。
【0093】
<6.2.3 最大値または最小値>
人が混雑している場所を歩いている時には
図11で符号33で示す部分のように加速度のばらつきは小さくなり、人が空いている場所を歩いている時には
図11で符号34で示す部分のように加速度のばらつきは大きくなる。
図11より、加速度のばらつきが小さいときには加速度の最大値が小さく、加速度のばらつきが大きいときには加速度の最大値が大きいことが把握される。そこで、加速度SAの最大値を混雑度Cを推定するための指標値として用いることもできる。この場合、加速度SAの最大値が小さいほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。同様に、加速度SAの最小値を混雑度Cを推定するための指標値として用いることもできる。この場合、加速度SAの最小値が大きいほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。
【0094】
<6.2.4 波形のピーク値の時間間隔>
加速度測定手段110により得られる加速度SA(測定値)をグラフ上に表すと、加速度SAの変化は
図29に示すような波形で表される。
図29に示すように、この波形には、随時、ピーク値が現れる。ピーク値が現れる時間の間隔(T11〜T13の時間の長さ)は、歩行動作の大きさや歩行動作の規則性に依存する。また、歩行動作の大きさや歩行動作の規則性は、道路の混雑の状態に依存する。従って、ピーク値が現れる時間の間隔は、道路の混雑の状態に依存する。以上より、加速度SAの波形のピーク値の時間間隔を混雑度Cを推定するための指標値として用いることもできる。この場合、例えば、ピーク値の時間間隔が小さいほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。また、
図30に示すようにピーク値の時間間隔(T31〜T36の時間の長さ)が不規則であれば、道路が混雑していると考えられる。従って、ピーク値の時間間隔の不規則性が大きいほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。
【0095】
<6.2.5 波形がゼロ軸と交差する時間間隔>
加速度には正負があるので、加速度SAの波形は、
図29に示したように、随時、ゼロ軸(加速度SAの値を0とする時間方向の軸)と交差する(ここでは、加速度SAの値が正から負に変化する時間間隔に着目する)。上述した波形のピーク値の時間間隔と同様、加速度SAの波形がゼロ軸と交差する時間間隔は、道路の混雑の状態に依存する。以上より、加速度SAの波形がゼロ軸と交差する時間間隔を混雑度Cを推定するための指標値として用いることもできる。この場合、例えば、加速度SAの波形がゼロ軸と交差する時間間隔が小さいほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。また、加速度SAの波形がゼロ軸と交差する時間間隔の不規則性が大きいほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。
【0096】
<6.2.6 速度>
一般に、加速度を積分すると速度を求めることができる。人が混雑している場所を歩いている時には歩行速度は低くなり、人が空いている場所を歩いている時には歩行速度は高くなる。そこで、加速度SAを積分することによって算出される速度を混雑度Cを推定するための指標値として用いることもできる。この場合、速度が小さいほど、混雑度算出手段144によって算出される混雑度Cの値は高くされる。
【0097】
<6.3 混雑度の推定に用いるセンサに関する変形例>
上記実施形態においては、加速度センサ18b(加速度測定手段110)によって得られた加速度SAに基づいて混雑度Cが算出されていた。しかしながら、本発明はこれに限定されない。すなわち、混雑度の推定に用いるセンサは加速度センサ18bには限定されない。以下、混雑度の推定に用いるセンサに関する様々な変形例について説明する。
【0098】
<6.3.1 ジャイロセンサ>
ジャイロセンサは、角速度を検出するセンサである。ところで、人が混雑している場所を歩いている時と人が空いている場所を歩いている時とでは身体の回転状態や身体の捻り方の状態が異なると考えられる。従って、角速度の情報から人の歩行動作の大きさを把握することが可能である。また、歩行動作の大きさは、道路の混雑の状態に依存する。以上より、角速度の情報に基づいて混雑度の推定が行われるようにしても良い。すなわち、混雑度推定用のセンサとしてジャイロセンサを用いることもできる。
【0099】
混雑度推定用のセンサとしてジャイロセンサを用いた場合、混雑度を推定するための指標値として、角速度の標準偏差,所定期間中に角速度が閾値を超えた回数,角速度の絶対値の平均値,角速度の最大値,角速度の最小値,角速度の波形のピーク値の時間間隔,および角速度の波形がゼロ軸と交差する時間間隔を採用することができる。
【0100】
<6.3.2 地磁気センサ>
地磁気センサ18c(
図2参照)は、この携帯端末装置10の向いている方位を示す方位情報BIを取得する。ところで、人が混雑している場所を歩いている時と人が空いている場所を歩いている時とでは水平面についての身体の回転状態が異なると考えられる。従って、方位情報BIの変化から人の歩行動作の大きさを把握することが可能である。また、歩行動作の大きさは、道路の混雑の状態に依存する。以上より、方位情報BIに基づいて混雑度の推定が行われるようにしても良い。すなわち、混雑度推定用のセンサとして地磁気センサ18cを用いることもできる。
【0101】
混雑度推定用のセンサとして地磁気センサ18cを用いた場合、混雑度を推定するための指標値として、方位情報BI(出力値)の標準偏差および方位情報BI(出力値)の波形のピーク値の時間間隔を採用することができる。
【0102】
<6.3.3 高度センサ>
高度センサは、高度を検出するセンサである。ところで、人が混雑している場所を歩いている時と人が空いている場所を歩いている時とでは身体の上下動の状態が異なると考えられる。従って、高度の情報から人の歩行動作の大きさを把握することが可能である。また、歩行動作の大きさは、道路の混雑の状態に依存する。以上より、高度の情報に基づいて混雑度の推定が行われるようにしても良い。すなわち、混雑度推定用のセンサとして高度センサを用いることもできる。混雑度推定用のセンサとして高度センサを用いた場合、混雑度を推定するための指標値として、高度の標準偏差および高度の波形のピーク値の時間間隔を採用することができる。
【0103】
<6.3.4 歩数センサ>
歩数センサ(歩数計)は、人の歩数を計測するセンサである。ところで、歩幅の情報を予め入力しておくことにより、一定時間における人の移動距離を当該一定時間における歩数から推定することができる。また、一定時間における移動距離の推定が可能であることから、速度を推定することもできる。また、速度(人の歩行速度)は、道路の混雑の状態に依存する。以上より、歩数の情報に基づいて混雑度の推定が行われるようにしても良い。すなわち、混雑度推定用のセンサとして歩数センサを用いることもできる。混雑度推定用のセンサとして歩数センサを用いた場合、混雑度を推定するための指標値として、速度を採用することができる。
【0104】
<6.3.5 GPSセンサ>
GPSセンサ18aは、現在位置を特定するための位置情報(緯度・経度の情報)を取得する(
図2参照)。ところで、所定期間を通じての位置情報の変化から当該所定期間中における人の移動距離を推定することができる。また、所定期間における移動距離の推定が可能であることから、速度を推定することもできる。また、速度(人の歩行速度)は、道路の混雑の状態に依存する。以上より、位置情報(緯度・経度の情報)に基づいて混雑度の推定が行われるようにしても良い。すなわち、混雑度推定用のセンサとしてGPSセンサ18aを用いることもできる。混雑度推定用のセンサとしてGPSセンサ18aを用いた場合、混雑度を推定するための指標値として、速度を採用することができる。
【0105】
なお、混雑度推定用のセンサとしてGPSセンサ18aを用いた場合、混雑度を推定するための指標値として、所定期間中において位置情報の値が変化する頻度(更新頻度)あるいは位置情報の値が変化する時間間隔を採用することもできる。これについて以下に説明する。GPSセンサ18aによって得られる1つの位置情報は、或る大きさの領域に対応付けられるデータである。そして、位置情報の値は、そのような領域をまたがることによって変化する。従って、或る一定の所定期間に着目すると、移動速度に応じて当該所定期間中における位置情報の値の更新頻度が変化する。また、移動速度は道路の混雑の状態に依存する。以上より、混雑度を推定するための指標値として、所定期間中における位置情報の値の更新頻度を採用することができる。また、止まっている時には位置情報の値は変化しない。従って、混雑度が大きいほど位置情報の値が変化する時間間隔が長くなる。以上より、混雑度を推定するための指標値として、位置情報の値が変化する時間間隔を採用することができる。
【0106】
<7.その他>
上記実施形態では経路案内システムを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。上記経路案内システムと同様のシステムによって混雑度および人数を推定し、推定結果を様々な用途に利用することもできる。例えば、イベント(花火大会,コンサート,各種スポーツ競技など)の際の警備員の配置のリアルタイムな変更に混雑度および推定人数の情報を用いることができる。
【0107】
また、上記実施形態においては、サーバ20と携帯端末装置10とによって経路案内システムが実現されていたが、本発明はこれに限定されない。携帯端末装置10に代えて、例えばヘッドマウントディスプレイ(頭部装着型表示装置)のようないわゆるウェアラブル端末を用いるようにしても良い。