【文献】
Foot & Elbow Softening Cream,ID 3859991,Mintel GNPD[online],2016年3月,[検索日2019.12.13],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
顔料が酸化チタン、黄酸化鉄、赤酸化鉄、黒酸化鉄、タルク、パール顔料、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム及び微粒子酸化ジルコニウムから選ばれる6種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の油中水型乳化組成物。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションに代表されるベースメイクアップ化粧料は、シミやくすみ等の肌のトラブルを隠蔽し、自然な肌感のある仕上がりになるものが好まれるようになってきている。このような自然な仕上がりを達成するためには、肌の実際の色調を反映させて、配合する顔料を決定する必要がある。このため、酸化チタンやタルク、酸化鉄等の着色顔料(赤色顔料、黄色顔料、黒色顔料)、雲母チタン等のパール顔料等の複数の顔料を配合した複雑な組成となっている。これらの顔料の粒子径は、色として認識するために可視光線の散乱に最も有効な粒子径に調整される必要がある。例えば、非特許文献1にルチル型酸化チタンを白色顔料として使用するために、粒子径を可視光線の散乱に最も有効な0.2〜0.4μmに調整することが必要であると記載されている。尚、可視光線の散乱に最も有効な粒子径に調整された顔料を、後述する紫外線の散乱に最も有効な粒子径に調整された顔料である微粒子顔料と区別するために、本明細書では便宜上通常サイズの顔料と呼ぶ場合がある。
【0003】
一般的に、化粧料に紫外線防御機能を持たせるためには、紫外線吸収剤、あるいは微粒子化した顔料を紫外線散乱剤として配合する方法がとられる。有機系の紫外線吸収剤の化粧料への配合は汎用された技術であるが、肌荒れなどの皮膚トラブルの原因となる恐れがあり、皮膚への安全性を重視する場合には避けられる傾向にある。一方、微粒子化した顔料の配合は、それ自体の皮膚刺激性が低いことから、皮膚への安全性をより高めた化粧料の処方において主流となりつつある。微粒子化した顔料の代表的なものに、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛がある。微粒子酸化チタンはUVB波をカットするために、微粒子酸化亜鉛はUVA波をカットするために汎用されている。
【0004】
非特許文献1には、酸化チタンの粒子径を光の波長より極端に小さいRayleigh散乱の領域にまで微粒子化すると、粒子径の6乗に比例して光散乱が低下していくため、可視光線の透過が起こり、紫外線カット能を有し、かつ透明な塗膜が得られることが記載されている。また、この文献では、紫外線カット能を有する酸化チタンの粒子径は数nm〜数十nmであると記載されている。さらにまた、微粒子化した酸化チタンなどの無機酸化物のナノ粒子は数十m
2/g〜数百m
2/gと比表面積が大きいために、表面エネルギーを下げようと粒子の凝集が起こりやすいことが記載されている。
【0005】
このように微粒子化した顔料は凝集が起こりやすいので、微粒子化した顔料の分散安定性を確保するためには工夫が必要となる。例えば、特許文献1には、超微粒子化した酸化チタンや酸化亜鉛を安定的に分散した紫外線遮蔽性超微粒子分散体の技術が開示されている。
【0006】
様々な通常サイズの顔料を配合したベースメイクアップ化粧料に、さらに、紫外線防御効果を期待して平均粒径が50nm以下の微粒子化した顔料を配合した組成物においては、組成物中に様々な粒子径の顔料が混在した、より粉体の凝集が生じやすい状態となるため、安定性の確保は一層難しいものとなる。微粒子化した顔料は、紫外線散乱効果が高く皮膚刺激性も低いので重要な成分であるが、肌色に調整されたベースメイクアップ化粧料中で凝集すると肉眼でも白い点やスジとして認識できるようになり、化粧料を容器から吐出した時に不快であるばかりか、凝集の程度が進むと塗布した肌上でも白スジが生じて品質上大きな問題となる。
【0007】
このような中、微粒子化した顔料の、乳化組成物中での分散安定性を向上させるために様々な技術が提案されている。例えば、特許文献2では、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛を内油相に含有させ、外水相にはその他の粉体を含有させ、製造過程において乳化直前にアシル乳酸及び/又はその塩を内油相に添加することを特徴とする水中油型乳化化粧料の製造方法の技術が開示されている。しかし、この技術は水中油型乳化化粧料の技術であり、乳化型の異なる油中水型乳化化粧料への応用は困難である。
【0008】
特許文献3には、油中水型乳化化粧料、特にファンデーションなどのメークアップ化粧料や日焼け止め化粧料において、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン、グルタミン酸ナトリウム、有機変性粘土鉱物、ジイソステアリン酸ジグリセリルを配合することで、特徴的な肌の摩擦挙動を示し、使用感及び乳化安定性に優れるW/O乳化化粧料が得られることが記載されている。また、グルタミン酸ナトリウム、あるいは有機変性粘土鉱物及びジイソステアリン酸ジグリセリルを配合することにより、使用感及び乳化安定性を損なわずに、粉体の分散安定性や組成物の粘度安定性を向上させることができることが記載されている。特許文献3では、ファンデーションや日焼け止め化粧料に配合される粉体の凝集によって発生する色じま(黄色スジや赤色ムラ)の発生を抑制できることが記載されているが十分ではない。
【0009】
また、特許文献4では、特定のポリオキシアルキレンメチルグルコシドと粉体と液状油と多価アルコールと水とを特定量組み合わせた無機粉体の凝集抑制を課題とした液状の油中水型乳化メークアップ化粧料の技術が提案されているが、この技術を用いても白スジの発生を抑えるには十分ではない。
【0010】
一方、ベースメイクアップ化粧料に日焼け防止効果も付与する場合は、化粧崩れしにくいと言われる油中水型の乳化型で設計される。しかし、油中水型乳化組成物は水中油型乳化組成物では生じない「離油」現象が発生することがある。「離油」とは、高温下や長期間保存した場合に、油相に含まれる油が排出されて組成物の表面や空隙にたまる現象である。この離油は、水が排出される、いわゆる乳化不良によって生じる分離とは異なる現象であり、油相を構成する構造や組成の不安定性による。離油は、不良品として認識されやすく設計品質上問題となる。離油を解決するための先行技術としては、例えば特許文献5、特許文献6がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願は、顔料を15〜30質量%含む油中水型乳化組成物において、(A)有機変性粘土鉱物、(B)(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、(C)ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステル、(D)界面活性剤、(E)油剤を含む油中水型乳化組成物に係る発明である。
以下に本発明の構成成分について説明する。
本発明の油中水型乳化組成物は、顔料を15〜30質量%含有する。顔料の種類は、通常化粧料に使用されるものであれば特に制限されない。有色顔料やパール顔料は、肌色を補正する効果やシミ等を隠蔽する効果があるので、油中水型乳化組成物をヒトの皮膚の色調に調整するために配合する。例えば、白色顔料である酸化チタンやタルク、黄色顔料である黄酸化鉄、黒色顔料である黒酸化鉄、赤色顔料であるベンガラなどの酸化鉄、雲母、酸化鉄被覆雲母及び酸化鉄被覆雲母チタンなどのパール顔料、グンジョウ、酸化クロム、カオリン、窒化ホウ素等を例示できる。例えば酸化チタンであれば、肌に塗布した時に白色として認識させるためにはMieの散乱理論に基づき平均粒径を0.15〜0.4μmに調整する。顔料は、シリコーン処理やフッ素処理等を施した表面処理粉体を用いてもよい。また、あらかじめシリコーン油などに分散処理した市販されている分散体を用いてもよい。
【0017】
本発明の構成をとると、顔料の分散安定性が極めて高いので、分散安定化が難しいとされる微粒子化した顔料を高配合することができる。微粒子化した顔料としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化ジルコニウム等が例示できる。紫外線防御剤として効果を発揮するためには、Mieの散乱理論に基づき平均粒子径が50nm以下とする。特に、平均粒子径が50nm以下である微粒子酸化チタンと微粒子酸化亜鉛を併用すると、UVB波とUVA波を防御できるので好ましい。また、シリコーンで表面処理(被覆処理)しているものを用いることが好ましい。これらの微粒子化した顔料は、市販されている単体の中から所望する紫外線防御効果に応じて適宜決定される。また、揮発性シリコーン基材中に、安定に低次粒子化されたペースト状の市販品を用いても良い。このような市販品としては大日本化成(株)製のコスメサーブWP−40TK、コスメサーブWP−TTN(V)を例示できる。
コスメサーブWP−40TKは微粒子酸化チタン30質量%、シクロペンタシロキサン50質量%、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン10質量%、その他10質量%を占める成分(水酸化アルミ、シリカおよび(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー)から成る。
コスメサーブWP−TTN(V)は微粒子酸化チタン23質量%、シクロペンタシロキサン66質量%、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2が2質量%、その他8質量%を占める成分(水酸化アルミ、ステアリン酸および(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー)から成る。
微粒子化した顔料の種類と配合量は、所望する紫外線防御効果に応じて適宜決定される。微粒子顔料の配合量は、純分として好ましくは4〜20質量%、より好ましくは4〜16質量%配合するとよい。4質量%未満だと十分な紫外線防御効果が得られない。微粒子顔料の配合量は、本発明の顔料の配合量で示した15〜30質量%に含まれる。
【0018】
組成物をヒトの皮膚の色調とするために選択される顔料の種類と好ましい配合量を以下に例示する。
ア)白色顔料:酸化チタン(平均粒子径150〜400nm) 5〜10質量%
イ)黄色顔料:黄酸化鉄 1〜2質量%
ウ)赤色顔料:赤酸化鉄(ベンガラ) 0.1〜0.5質量%
エ)黒色顔料:黒酸化鉄 0.05〜0.5質量%
尚、使用感などの調整のため、タルクを配合する場合は、酸化チタンの配合量の一部をタルクに置き換えるとよい。
また、UVB波とUVA波を防御するために、前記顔料と併用して配合する微粒子酸化チタンと微粒子酸化亜鉛の好ましい配合量を以下に例示する。
(微粒子顔料)
オ)微粒子酸化チタン(平均粒子径1〜50nm) 4〜16質量%
カ)微粒子酸化亜鉛(平均粒子径1〜50nm) 1〜5質量%
尚、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化ジルコニウムを配合する場合は、微粒子酸化チタンの配合量の一部を置き換えるとよい。
本発明の構成をとると、ア〜カの顔料を白スジが発生することなく、安定に配合できる。
【0019】
(A)有機変性粘土鉱物
本発明には、有機変性粘土鉱物を必須成分として配合する。膨潤性層状ケイ酸塩であるスメクタイトは、陽イオン性粘土鉱物であり、その陽イオンを第四級アンモニウム塩等の有機カチオンで置換したものは、有機変性粘土鉱物と呼ばれる。スメクタイトに含まれる鉱物として、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、スチブンサイト、バーミキュライト、ボルコンスコイト、ソコナイト、マガダイト、ケニアライト等が挙げられる。有機カチオンとしては、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ジメチルジパルミチルアンモニウムクロライド、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。有機変性粘土鉱物としては、ジステアルジモニウムヘクトライト、ステアラルコニウムヘクトライト、ステアラルコニウムベントナイト等が挙げられる。本発明に用いる有機変性粘土鉱物は、ジステアルジモニウムヘクトライトが特に好ましい。
【0020】
本発明に用いる有機変性粘土鉱物の配合量は0.1〜5質量%が好ましい。0.1質量%未満では、効果が不十分な場合があり、5質量%を超えて配合すると、べたついた使用感になる恐れがある。
【0021】
(B)(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル
本発明に使用する(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルは、ベヘン酸、エイコサン二酸とグリセリンからなるオリゴマーエステルであり、白色〜淡黄色のロウ状固体の油性増粘剤である。(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルの配合量は1〜5質量%が好ましい。
【0022】
(C)ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステル
本発明に使用する、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルは、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルは、多価アルコールをアルカリ存在下、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)に、塩化チオニル等のハロゲン化剤を反応させて調製した、酸クロライドを反応させることにより得ることができる。
多価アルコ−ルとしては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、(ポリ)グリセリン、(ポリ)プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどが好ましく例示でき、ポリエチレングリコールが特に好ましい。この場合のポリエチレングリコールのサイズは、平均分子量で400〜6000が好ましい。一方、疎水基となるポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)は、そのサイズが平均分子量1000〜3000であることが好ましい。
ポリエチレングリコールのジ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルは、INCI名がジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30と収載されているものが好ましく、市販品としては、ユニケマ社製のアラセルP−135、クローダジャパン(株)社製のシスロールDPHS等が挙げられる。ジポリヒドロキシステアリン酸PEG−30を配合する場合は、0.1〜3質量%が好ましく、特に好ましくは0.5〜1質量%である。0.1質量%に満たないと、本発明の効果が十分に発揮されない恐れがある。3質量%を超えると、べたついた使用感になる恐れがある。
【0023】
(D)界面活性剤
本発明の乳化型は油中水型である。乳化に用いる界面活性剤は、乳化型が油中水型となるものであればいずれでもよいが、前述した(C)のポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステル(界面活性剤)とは別に配合する。本発明に使用する界面活性剤としては、使用感が良いことからシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤を好ましく例示できる。
シリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに−C
3H
6−O−(C
2H
4O)
nHで表されるポリエーテル基が上記のポリジメチルシロキサン骨格のSiに側鎖として複数結合している。すなわち、−C
2H
4−(Si(CH
3)
2O)n−Si(CH
3)
3で表されるシリコーン基が側鎖としてポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合した化合物である。このようなシリコーン分岐型ポリエーテル変性シリコーンは市販品を用いることができる。例えば信越化学工業(株)製のPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6028)が挙げられる。
シリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに炭素数2以上のアルキル基が側鎖としてポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合したものである。側鎖として、−C
3H
6−O−(C
2H
4O)
nHで表されるポリエーテル基が上記と同様にポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合している。このようなシリコーン分岐型アルキル共変性ポリエーテル変性シリコーンとしては市販品を用いることができる。例えば信越化学工業(株)製のラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6038)が挙げられる。
シリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンは、ポリジメチルシロキサンを骨格として、これに−C
3H
6−O−(CH
2CH(OH)CH
2O)
nHで表されるポリエーテル基が上記のポリジメチルシロキサン骨格のSiに複数結合したものである。このようなシリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンとしては市販品を用いることができる。例えば信越化学工業(株)製のポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF−6104)が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンとしては、信越化学工業(株)製のPEG−9ジメチコン(商品名:KF−6019)が挙げられる。
また、高重合、低HLBのポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)共重合体をシクロペンタシロキサンに溶解させたシリコーン系界面活性剤も好ましく例示できる。例えば、東レ・ダウコーニング(株)製のシリコーンBY22−008Mが挙げられる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルも好ましく例示できる。例えば、イソステアリン酸とジグリセリンのトリエステルであるトリイソステアリン酸ポリグリセリル−2(商品名:EMALEX TISG−2)などが挙げられる。
本発明に用いる界面活性剤は、それぞれを単独で配合しても良いし、2種又は3種を混合しても良い。また配合量は、適宜設定することができる。
【0024】
(E)油剤
本発明に使用する油剤としては、エステル油、植物油のような油脂類、炭化水素類、シリコ−ン油などが例示できる。常温で液状であることが好ましい。
エステル油としては、例えば、エチルヘキサン酸セチル、ジイソノナン酸1,3−ブチレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸1,3−ブチレングリコール、ジイソノナン酸ジプロピレングリコール、ジ2−エチルヘキサン酸ジプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、パルミチン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソステアリル等が挙げられる。油脂類としては、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、等の液体油脂等が挙げられる。炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。シリコ−ン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、シクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサンが挙げられる。本発明の構成をとることで離油を生じないので、(D)油剤を多く配合することができる。その結果、粉体が多い処方であっても、しっとりとした使用感が得られる。本発明において、(D)油剤は、20〜50質量%、より好ましくは30〜50質量%であることが好ましい。
【0025】
本発明の油中水型乳化組成物の粘度は、東機産業(株)製のTV25型粘度計(25℃、4号ローター、12rpm、30秒)で測定した時に10,000〜100,000mPa・sである。
【0026】
本発明の油中水型乳化組成物には、任意成分として本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に通常用いられている成分、例えば、有機粉体、水溶性高分子、多価アルコール等の保湿剤、塩類、pH調整剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、薬効成分、香料等を配合することができる。また、アスコルビン酸誘導体、セラミド、植物抽出液等の美容成分を配合することができる。
【0027】
有機粉体としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のポリマービーズやポリシリコーン1クロスポリマーなどのシリコーン樹脂粉体、ポリウレタン粉体等を配合することができる。
【0028】
水溶性高分子としては、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等を例示できる。
【0029】
多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、1,2−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等を例示できる。
【0030】
塩類としては、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム等を例示できる。
【0031】
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム等を例示できる。
【0032】
防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン等を例示できる。
【0033】
金属イオン封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を例示できる。
【0034】
薬効成分としては、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB6類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD6、コレカルシフェロール等のビタミンD類、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を例示できる。
【0035】
本発明の油中水型乳化組成物は、その特性から、化粧下地やベースメイクアップファンデーションなどのベースメイクアップ化粧料、色のついた日焼け止め化粧料として用いることが最適である。また皮膚外用剤として医薬部外品や医薬品として使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例、比較例を用いた試験例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。
1.試験品の調製
下記表1(実施例1〜6)、表2(比較例1〜11)の組成の油中水型乳組成物(ベースメイクアップ化粧料)を以下の調製方法により調製した。
なお比較例1は(A)有機変性粘土鉱物を配合しない処方である。比較例2、3は、(B)ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを配合しない処方であり、比較例2はベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルに代えて油性増粘剤であるパルミチン酸デキストリンを配合した処方である。比較例4〜11は(C)ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを配合しない処方であるが、比較例4はもともと処方されていた界面活性剤(PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)を増量させた処方であり、比較例6は粉体分散性が良いと言われている油剤(ポリヒドロキシステアリン酸)をさらに配合した処方である。また、比較例7〜10は(C)ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルの配合に代えて、界面活性剤であるジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、セスキイソステアリン酸ソルビタンを配合した処方である。比較例11は、もともと処方されていた界面活性剤(トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2)を増量させた処方である。
また、表中の顔料1と顔料2は、顔料の粒子径により分けて表記した。粒子径が50nm以下の微粒子顔料を顔料2とし、それよりも大きい通常サイズの顔料を顔料1とした。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
1.調製方法
油性成分と粉体を室温で混合し、ホモミキサー(3000rpm)で5分間混合した。混合物に水溶性成分を投入しながら、ホモミキサー(3000rpm)で混合し、1〜2分間乳化し、さらに5分間ホールドして調製を終了した。
【0040】
2.評価
表1、2の油中水型乳化組成物を、蓋付ガラス瓶(6K瓶)に充填し、5℃、25℃、40℃、50℃の恒温槽に保管し、調製翌日、1ヶ月後に開封し、充填表面の離油の発生の有無を目視観察した。またガラス瓶の側面を観察し、顔料の凝集による白スジの発生の有無を確認した。
さらに調製翌日、1ヶ月経過後の粘度を測定した。粘度は、東機産業(株)製のTV25型粘度計を使用し、4号ローター、12rpm、30秒の条件で25±2℃に保たれた環境にて粘度測定を行った。表中の粘度の単位はmPa・sである。
安定性(1.離油、2.白スジ)について、下記評価基準により外観を目視評価した。
(目視評価基準)
1.離油
○:離油がない
△:離油が極わずかにある
×:離油がはっきりしている
2.白スジ
○:白スジがない
△:白スジが極わずかにある
×:白スジがはっきりしている
【0041】
3.結果
結果を下記の表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
1.実施例1〜6の組成物(A+B+C+D+E)
実施例の組成物は、製造翌日、及び5℃、25℃、40℃、50℃の恒温槽に1ヶ月間保管後のいずれの条件においても外観観察で安定性(白スジ、離油の出現)に異常は認められなかった。
【0044】
2.比較例1の組成物(B+C+D+E)
比較例1の組成物は、A有機変性粘土鉱物を配合しない処方である。5℃、25℃、40℃、50℃の恒温槽に1ヶ月間保管後のいずれの条件においても外観観察で安定性(白スジ、離油の出現)に異常が認められた。離油と白スジは2週間経過後から観察されていた。
【0045】
3.比較例2の組成物(A+C+D+E)
比較例2の組成物は、B(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルに代えて油性増粘剤であるパルミチン酸デキストリンを配合した処方である。製造翌日には50℃保管で白スジが観察され、その後25℃、40℃でもわずかに白スジが観察された。比較例2は離油の発生はなかったが、白スジが発生するため、所望する組成物ではなかった。
【0046】
4.比較例3の組成物(A+C+D+E)
比較例3の組成物は、粘度が著しく低く、測定限界以下であり、シャパシャパの液状であった。離油、白スジ共に発生した。
【0047】
5.比較例4〜6の組成物(A+B+D+E)
比較例4の組成物はポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを配合せず、本試験で乳化のために一律に配合していた界面活性剤の一つであるPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンを1質量%から2質量%に増量させて、白スジの発生が抑えられるか試験したものである。1ヶ月後の各温度帯において、白スジが発生した。比較例4の組成物に離油の発生はなかったが、白スジが発生するため、所望する組成物ではなかった。
比較例5の組成物はポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを含まない組成であるが、50℃で離油が発生し、すべての温度帯で白スジが観察された。白スジは調製翌日(25℃)からわずかに認められた。
比較例6の組成物は、ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルを配合せず、粉体の分散が良いと言われている油剤(ポリヒドロキシステアリン酸)を1質量%配合して、白スジの発生が抑えられるか試験したものである。しかし、5℃、40℃、50℃保管1ヶ月後には、白スジが発生し、25℃1ヶ月保管後のものにもわずかに白スジが認められた。白スジは調製翌日(25℃)からわずかに認められた。比較例6の組成物に離油の発生はなかったが、白スジが発生するため、所望する組成物ではなかった。
【0048】
6.比較例7〜11の組成物(A+B+D+E)
比較例7〜10は(C)ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルの配合に代えて、界面活性剤であるジイソステアリン酸ポリグリセリル−3、セスキイソステアリン酸ソルビタンを配合した処方である。比較例11は、本試験で乳化のために一律に配合していた界面活性剤の1つであるトリイソステアリン酸ポリグリセリル−2を1質量%から2質量%に増量させた処方である。
比較例7の組成物は、5℃、25℃、40℃、50℃保管1ヶ月後には、白スジが発生し、50℃で1ヶ月保管後のものには離油が認められた。25℃の白スジは調製翌日からわずかに認められ、1ヶ月後にははっきりと白スジが認められた。
比較例8の組成物は、5℃、25℃、40℃、50℃保管1ヶ月後には、白スジが発生した。25℃の白スジは調製翌日からわずかに認められた。離油は発生しなかった。白スジが発生するため、所望する組成物ではなかった。
比較例9の組成物は、5℃、25℃、40℃、50℃保管1ヶ月後には、白スジが発生し、50℃に1ヶ月保管後のものには離油が認められた。25℃の白スジは調製翌日からわずかに認められた。
比較例10の組成物は、5℃、25℃、40℃、50℃保管1ヶ月後には、白スジが発生した。25℃の白スジは調製翌日からわずかに認められた。離油は発生しなかった。白スジが発生するため、所望する組成物ではなかった。
比較例11の組成物は、5℃、25℃、40℃、50℃保管1ヶ月後には、白スジが発生した。25℃の白スジは調製翌日からはっきりと確認された。離油は発生しなかった。
比較例4〜11の結果から、(C)ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステルの配合が白スジの発生を抑えるのに必須であることが分かった。
【0049】
次に、さらに顔料の配合量を増やした実施例7、実施例8を同様の方法で調製し、粘度と安定性を測定し評価した。組成と結果を表4に示す。
【表4】
【0050】
(結果)
実施例7の油中水型乳化組成物は、顔料の配合量が実施例1〜6及び8よりも高く、27質量%である。さらに実施例7及び8の微粒子顔料の配合量に着目すると、実施例7は16質量%(微粒子酸化チタン純分で14質量%、微粒子酸化亜鉛2質量%)、実施例8は14質量%(微粒子酸化チタン純分で12質量%、微粒子酸化亜鉛2質量%)である。実施例1〜6が7.5質量%(微粒子酸化チタン純分で5.5質量%、微粒子酸化亜鉛2質量%)であるから微粒子顔料を約倍量以上配合した組成である。このような顔料の凝集が特に生じやすい組成であっても、実施例7、8は各温度帯(5℃、25℃、40℃、50℃)で1ヶ月間保管後に離油、白スジは全く発生しなかった。尚、調製翌日の粘度は、実施例7が43860mPa・s、実施例8が77700mPa・sであった。
【0051】
以上、比較例1〜11の保存試験の評価結果、及び実施例1〜8の評価結果から、顔料を高濃度で含有する油中水型乳化組成物において、(A)有機変性粘土鉱物と(B)(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル及び(C)ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)エステル、(D)界面活性剤、(E)油剤の構成をとる油中水型乳化組成物は、離油発生を防止し、白スジの発生を抑制できることが明らかとなった。
【0052】
本発明の構成をとる油中水型乳化組成物は、保存中に離油が生じず、さらに様々な粒子径の顔料が混在する組成において微粒子化した顔料の凝集に起因する白スジ、色ムラも発生せず、極めて安定性の高い化粧料とすることができた。本発明の構成をとることで50℃の苛酷条件下に保存しても、離油が発生せず、白スジや色ムラも発生しないので、肌色に調整した化粧料に、さらに紫外線防御効果を期待して微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの微粒子粉体を安心して高配合することができる。このため、本発明はベースメイクアップ化粧料や肌色に調整された日焼け止め化粧料の製品開発技術として非常に有用である。