(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係るワーク突き当て装置を、実施例である突き当て装置5により説明する。
図1は、突き当て装置5と、突き当て装置5を併設した曲げ加工機51と、を説明するための側面図である。各図において、上下前後の方向は、便宜的に
図1に矢印で規定する。従って、左右方向は
図1の紙面直交方向であり、左方が紙面表方、右方が紙面裏方である。
【0012】
曲げ加工機51は、下降式のプレスブレーキである。 曲げ加工機51は、下部テーブル1と、下部テーブル1の左右端にそれぞれ連結された左側板(不図示)及び右側板2と、左側板及び右側板2の上部に設けられ、油圧等を駆動源とした駆動部KDにより下部テーブル1に対して離接するよう昇降する上部テーブル3と、を備えている。
【0013】
下部テーブル1は、上面にダイホルダ1aを有する。
ダイホルダ1aには、ワークWに対しパンチP(後述)と協働で曲げ加工を行うダイDが着脱自在に取り付けられている。
【0014】
上部テーブル3は、下面にパンチホルダ3aを有する。
パンチホルダ3aには、ワークWに対しダイDと協働で曲げ加工を行うパンチPが着脱自在に取り付けられている。
【0015】
曲げ加工機51は、下部テーブル1のダイDの後方側に配置され、左右方向に離隔して配置された例えば二つの突き当て装置5,5を備えている。
作業者Sは、板状のワークWに対して曲げ加工を行う場合に、ワークWの前縁部分を把持し、後部側を下部テーブル1と上部テーブル3との間に進入させる。そして、曲げ加工の位置決めとしてワークWの後端部を突き当て装置5に突き当てる。
【0016】
突き当て装置5には、ワークが突き当てられたことを検出する突き当てセンサ装置6における検出部6aが備えられている。
突き当てセンサ装置6は、検出部6aと検出本体部6bとを有する。検出本体部6bは、この例では、別の場所(NC装置7)に備えられている。
突き当て装置5と検出本体部6bとを含み、突き当てシステムSYが構成される。突き当てセンサ装置6の詳細は後述する。
【0017】
曲げ加工機51の動作は、制御部SG及び記憶部MRなどを有するNC装置7により制御される。制御部SGは、中央処理装置(CPU)(図示せず)及び突き当て判定部SGaを有する。
NC装置7には、既述のように、突き当てセンサ装置6の検出本体部6bが配置されている。
検出本体部6bと検出部6aとの間は、接続線6cによって電気的に接続されている。
【0018】
NC装置7には、外部から加工プログラムPGを含む加工情報JHが供給される。制御部SGは、加工情報JH及び検出本体部6bの出力信号(例えば電圧)に基づいて、駆動部KDの動作を制御する。
例えば、検出本体部6bは、突き当てセンサ装置6の検出部6aにワークWが突き当てられると、突き当てられていないときの出力信号(例えば電圧)の値と異なる値を出力する。制御部SGの突き当て判定部SGaは、この値の違いに基づいてワークWの突き当て有無を判定する。
【0019】
制御部SGは、検出本体部6bからの出力信号に基づき、ワークWが検出部6aに突き当てられ曲げ加工可能な位置に配置されたと判断したら、駆動部KDの動作により上部テーブル3を下降させて、パンチPとダイDとの協働によりワークWに曲げ加工を行う。
【0020】
次に、突き当てセンサ装置6の詳細について、
図2〜
図4を参照して説明する。
図2は、突き当て装置5の一部分であるワークWが突き当てられる部分の斜視図である。上下前後左右の各方向は、
図1と対応づけられている。すなわち、
図1に示されるように、ワークWは、作業者Sにより前方側から後方に向け検出部6aに対し押しつけられる(突き当てられる)。
【0021】
図2に示されるように、突き当て装置5は、ワークWが突き当てられる突き当て部TBとして、前後方向に離隔した位置にある四つの突き当て部TB1〜TB4を備えている。
具体的には、前方先端側から順に、先端段差突き当て部TB1、標準突き当て部TB2、受け台突き当て部TB3、ストッパ突き当て部TB4である。
以下、便宜的に、これらを単に突き当て部TB1〜TB4とも称する。
【0022】
突き当て部TB1,TB2は、金属で形成されたベース部5a1を共有している。
突き当て部TB3,TB4は、それぞれ金属で形成されたベース部5a3,5a4を有している。
突き当て部TB1〜TB4は、それぞれ突き当てセンサ装置6の検出部6a1〜6a4と絶縁スペーサ6d1〜6d4とを有している。
【0023】
突き当て部TB2において、検出部6a2は、絶縁スペーサ6d2を介してベース部5a1に取り付けられている。
突き当て部TB1において、検出部6a1は、絶縁スペーサ6d1及び絶縁スペーサ6d2を介してベース部5a1に取り付けられている。
突き当て部TB3において、検出部6a3は、絶縁スペーサ6d3を介してベース部5a3に取り付けられている。
突き当て部TB4において、検出部6a4は、絶縁スペーサ6d4を介してベース部5a4に取り付けられている。
すなわち、検出部6a1〜6a4は、それぞれ絶縁スペーサ6d1〜6d4を介してベース部5a1,5a3,5a4のいずれかに対し取り付けられている。
【0024】
突き当て部TB1〜TB4は、上下方向において、突き当て部TB1が最下に位置し、突き当て部TB4に向けこの順番で後方かつ上方に階段状に位置する。
従って、作業者は、ワークWを水平姿勢で突き当て装置5に突き当てたとき、突き当て部TB1〜TB4の検出部6a1〜6a4のいずれかに、他の突き当て部に干渉することなく当接させることができる。
曲げ加工の作業において、突き当て部TB1〜TB4は、ワークWにおける突き当てるべき縁部の形状や、曲げ位置などに応じて、適宜選択される。
【0025】
検出部6a1〜6a4は、導電性を有する材料で、平面状の突き当て面6a1a〜6a4aを有して短冊状又は角棒状に形成されている。材料例は、金属であり、詳細例はステンレスである。
検出部6a1〜6a4は、それぞれの突き当て面6a1a〜6a4aが、常態で、上下左右方向(鉛直方向)に延在して前方を向く姿勢となるようベース部5a1,5a3,5a4のいずれかに取り付けられている。
絶縁スペーサ6d1〜6d4は、電気絶縁性を有する材料で短冊状又は角棒状に形成されている。材料例は、セラミックスであり、詳細例は酸化アルミニウムである。
【0026】
次に、突き当て部TB1〜TB4の詳細について、
図3も参照して説明する。
図3は、
図2における突き当て部TB1〜TB4を、NC装置7の一部も含めて模式的に示した図である。また、絶縁スペーサ6d1〜6d4は、電気絶縁性を有する部材であることを視覚的にも把握できるように、網掛けを付してある。
【0027】
図2及び
図3において、絶縁スペーサ6d2は、ベース部5a1に対し接着により取り付けられる。
検出部6a2及び絶縁スペーサ6d1は、絶縁スペーサ6d2に対し接着により取り付けられる。
検出部6a1は、絶縁スペーサ6d1に対し接着により取り付けられる。
接着に用いる接着剤は、検出部6a1,6a2のベース部5a1に対する絶縁性をより確実にするため、非導電性であることが望ましい。
【0028】
一方、ベース部5a3には、一対の雌ねじ部mj3が形成されている。
絶縁スペーサ6d3には、雌ねじ部mj3に対応した位置に貫通孔6d3aが形成されている。
検出部6a3には、貫通孔6d3aに対応した位置に、雄ねじJ3の軸部を通過し頭部を通過不能な段付き孔6a3bが形成されている。
【0029】
これにより、検出部6a3及び絶縁スペーサ6d3は、雄ねじJ3の軸部を段付き孔6a3b及び貫通孔6d3aを通し雌ねじ部mj3に螺合して締め付けることで、ベース部5a3に対して取り付けられる。
【0030】
同様に、ベース部5a4には、一対の雌ねじ部mj4が形成されている。
絶縁スペーサ6d4には、雌ねじ部mj4に対応した位置に貫通孔6d4aが形成されている。
検出部6a4には、貫通孔6d4aに対応した位置に、雄ねじJ4の軸部を通過し頭部を通過不能な段付き孔6a4bが形成されている。
【0031】
これにより、検出部6a3及び絶縁スペーサ6d3は、雄ねじJ3の軸部を段付き孔6a3b及び貫通孔6d3aを通し雌ねじ部mj3に螺合して締め付けることで、ベース部5a3に対して取り付けられる。
【0032】
段付き孔6a3b,6a4bの段深さは、それぞれ雄ねじJ3,J4の頭部が、突き当て面6a3a,6a4aから突出しないように設定されている。
【0033】
ねじ締結に用いられる雄ねじJ3,J4は、電気絶縁性を有する。例えば、樹脂ねじとされる。
これにより、検出部6a1〜6a4は、ベース部5a1,5a3,5a4に対し、電気的に完全に絶縁された状態となっている。
【0034】
検出部6a1〜6a4は、接続線6cであるリード線6c1〜6c4によって、それぞれ独立に検出本体部6bと電気的に接続されている。
詳しくは、検出本体部6bは、入力端子6b1〜6b4を有し、それぞれに、一方端に検出部6a1〜6a4が接続されたリード線6c1〜6c4の他方端が接続されている。リード線6c1〜6c4と検出部6a1〜6a4との接続方法及び接続態様は限定されるものではなく、周知の方法を利用できる。
リード線6c1〜6c4は、導線とその導線を被覆する絶縁性の被覆部とを有する。
【0035】
リード線6c1と検出部6a1とでセンサ部SB1が構成される。
同様に、リード線6c2〜6c4それぞれと検出部6a2〜6a4とで、それぞれセンサ部SB2〜SB4が構成される。
【0036】
次に、検出本体部6bの動作などの詳細を、ブロック図である
図4も参照して説明する。
【0037】
検出本体部6bは、出力端子6Sとして出力端子6S1〜6S4を有する。
図3及び
図4に示された出力端子6Sは、四つの独立した信号が出力される。
【0038】
検出本体部6bは、電源PWから電力が供給されて動作する。
検出本体部6bは、変換処理部60を有する。
変換処理部60は、静電容量検出部60aと、電圧設定部60bと、電圧出力部60cと、を有する。
【0039】
静電容量検出部60aは、入力端子6b1〜6b4を介して接続されたセンサ部SB1〜SB4の静電容量C1〜C4をそれぞれ検出する。
静電容量検出部60aは、静電容量C1〜C4の検出を、連続的又は断続的に行う。
【0040】
電圧設定部60bは、静電容量検出部60aが検出した静電容量C1〜C4のそれぞれの値に応じた電圧Vt1〜Vt4を設定する。以下、電圧Vt1〜Vt4を評価電圧Vt1〜Vt4と称する。
【0041】
具体的には、まず、検出本体部6bの起動時に静電容量検出部60aが検出した静電容量を基準静電容量C1k〜C4kとし、この基準静電容量C1k〜C4kに対応した基準電圧Vt1k〜Vt4kを、0(ゼロ)Vとして設定する。
基準電圧Vt1k〜Vt4kは、記憶部MRに記憶させる。
【0042】
電圧設定部60bは、静電容量検出部60aが検出した静電容量C1〜C4の変化を監視し、変化が生じた場合の変化量ΔC1〜ΔC4に応じ、評価電圧Vt1〜Vt4を線形変化させる。
例えば、基準静電容量C1kに対し、静電容量C1の変化量ΔC1が+20%となったら、評価電圧Vt1を基準電圧Vt1kに対して120%の値とする。
この変化量ΔC1〜ΔC4の評価電圧Vt1〜Vt4への変換方法は、線形に限定されるものではなく、増減方向が対応していれば任意である。
【0043】
電圧出力部60cは、電圧設定部60bが設定した評価電圧Vt1〜Vt4を、それぞれ出力端子6S1〜6S4に出力する。
【0044】
センサ部SB1〜SB4は、それぞれリード線6c1〜6c4と検出部6a1〜6a4とを含んで構成されている。
例えば、センサ部SB1は、リード線6c1及び検出部6a1を含む。
【0045】
センサ部SB1に対し、物体が接近又は当接することで、センサ部SB1の静電容量C1は増加方向に変化する。
リード線6c1は被覆されているので、金属表面が露出している検出部6a1が、物体の接近又は当接に対して最も感度が高く、静電容量C1が大きく増加する。この静電容量C1の増加は、静電容量検出部60aで検出される。
【0046】
電圧設定部60bは、既述のように、静電容量検出部60aが検出した静電容量C1の増加に応じて評価電圧Vt1を増加させる。
センサ部SB1の静電容量C1の変化量は、物体が検出部6a1に接近した場合と比べて当接した場合の方がはるかに大きい。
従って、電圧設定部60bで設定され電圧出力部60cから出力される評価電圧Vt1は、検出部6a1に物体が接近した場合よりも、当接した場合の方がはるかに大きくなる。
【0047】
この状況下で、制御部SGは、突き当て判定部SGaにおいて、次の手順で突き当て有無を判定する。
ここでは、センサ部SB1についての判定手順を
図5を参照して説明する。
【0048】
突き当て判定部SGaは、記憶部MRに記憶された基準電圧Vt1kを参照し、参照した基準電圧Vt1kと評価電圧Vt1とを比較し(Step1)、差分S1を求める(Step2)。
【0049】
次に、差分S1が、予め測定して記憶部MRに記憶されたセンサ部SB1についての所定の差分St1を越えているか否かを判定する(Step3)。
【0050】
越えていると判定した場合(Yes)、突き当て判定部SGaは、検出部6a1に物体(ワークW)が当接した(突き当てられた)と判定する(Step4)。以下、この判定を突き当て判定と称する。
【0051】
差分S1が所定の差分St1を越えていない場合(以下の場合)(No)、突き当て判定部SGaは、突き当てられていないと判定する(Step5)。
【0052】
同様にして、突き当て判定部SGaは、センサ部SB2〜SB4のそれぞれについて、基準電圧Vt2k〜Vt4kと評価電圧Vt2〜Vt4とを比較して差分S2〜S4を求める。
比較の結果、差分S2〜S4が、記憶部MRに記憶された各センサ部SB2〜SB4それぞれについての所定の差分St2〜St4を越えていれば、検出部6a2〜6a4に、物体(ワークW)が当接した(突き当てられた)と判定する(突き当て判定)。
差分S2〜S4がそれぞれ所定の差分St1〜St4以下であれば、突き当てられていないと判定する。
【0053】
曲げ加工において、ワークWは、一つの付き当て装置5については検出部6a1〜6a4のいずれか一つにのみ突き当てられる。複数の検出部6aで突き当て検出がなされたら、誤った突き当てがされている可能性が高いので、制御部SGは、警告を出力する。この判定手順例は
図6に示される。
【0054】
すなわち、制御部SGは、突き当て判定部SGaが、検出部6a1〜6a4の内のいずれかについて最初の(1回目の)突き当て判定をしたら(StepA1)、その後、突き当て判定の有無を監視する(StepA2)。
【0055】
(StepA2)で突き当て判定有となった場合、異常と判定し(StepA3)、警告を出力する(StepA4)。
【0056】
(StepA2)で突き当て判定無しの場合、所定時間T1が経過したか否かを判定する(StepA5)。
【0057】
未経過(No)の場合、(StepA2)へ戻る。
経過した(Yes)場合、ワークWが正常に突き当てられたと判定し、曲げ加工を許可する(StepA6)。
所定の時間T1は、作業者側で任意に設定する。例えば、2秒とする。
【0058】
以上詳述した突き当て装置5において、検出部6a1は、突き当て面6a1aのどの位置にワークWが当接しても、静電容量C1の増分は同じである。
これは、他の検出部6a2〜6a4についても同じである。
これにより、突き当て判定部SGaによる検出部6a1〜6a4へのワークWの当接(突き当て)有無の判定に影響はなく、安定して突き当て有無の判定が可能である。
【0059】
また、突き当て装置5は、突き当てを検出するセンサ部SB1〜SB4に可動部がないので、長期間の使用でも、動作不良による検出不良は生じない。
また、ワークの加工に伴い生じた金属粉が仮に検出部6a1〜6a4に付着しても、拭き取り等の簡単なクリーニングで除去が可能であり、また、起動時の静電容量を基準値として変化増分を検出するので、検出の判定に影響はない。
【0060】
このように、曲げ加工において突き当て装置5を用いれば、ワークの突き当て検出動作不良が生じることなく曲げ加工を良好に実行できる。
【0061】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形してよい。
【0062】
検出本体部6bをNC装置7に備えるものを説明したが、検出本体部6bの設置場所は限定されない。突き当て装置5に備えてもよい。
接続線6cは、短い方が、ノイズ静電容量Cに対するノイズの影響を減らせるので突き当て装置5に配置することは好ましい。
【0063】
検出本体部6bに中央処理装置(CPU)を配置し、
図5及び
図6を用いて説明した制御部SGの突き当て判定部SGaによる判定動作を、検出本体部6bで実行させてもよい。
すなわち、突き当て判定部SGaは、検出本体部6bに備えられていてもよい。
検出本体部6bは、静電容量C1〜C4に対応した電圧値を出力するものに限定されない。静電容量C1〜C4それぞれに対応した電流値を出力するものであってもよい。
【0064】
突き当て判定を行う突き当て判定部SGaも含めて突き当てシステムSYとしてもよい。
【0065】
突き当て面6a1a〜6a4aの形状は、実施例のような矩形に限定されない。
すなわち、検出部6a1〜6a4の形状は自由であり、それぞれが有する突き当て面6a1a,6a4aの形状も、平面であれば自由に設定してよい。
突き当て部TB1〜TB4の数、及び配置も、実施例に限定されるものではなく、自由に設定してよい。