(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記車両のカーブ路走行時において、前記カーブ路の進入当初においては前記前方情報に基づいて前記減速判定を実施し、その後、前記旋回状態情報に基づいて前記減速判定を実施する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記第1取得部は、前記前方情報として、前記車両が走行する進路前方に沿って存在する道路区画部の検知情報から求められる道路曲率情報と、車両前方を走行する先行車の走行軌跡から求められる軌跡曲率情報とを取得し、
前記自信度取得部は、前記道路曲率情報により前記減速判定が行われる場合に、前記軌跡曲率情報により前記減速判定が行われる場合に比べて前記自信度を小さくする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記第1取得部は、前記前方情報として、前記車両が走行する進路前方に沿って存在する道路区画部の検知情報から求められる道路曲率情報と、車両前方を走行する先行車の走行軌跡から求められる軌跡曲率情報と、車両前方に存在するカーブ路を示すカーブ路表示情報とのうち少なくとも2つを取得するものであり、
前記自信度取得部は、前記道路曲率情報、前記軌跡曲率情報及び前記カーブ路表示情報の少なくとも2つについて、前記軌跡曲率情報、前記道路曲率情報、前記カーブ路表示情報の順に、その後者ほど前記減速判定が行われる際の前記自信度を小さくする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の車両制御装置。
前記減速度設定部は、前記自信度が所定値以下の場合、前記目標減速度として運転者が前記車両のアクセルをオフした場合に相当する減速量を設定する、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、車両制御装置及び車両制御方法の実施形態を、運転支援システムの一部を構成する電子制御装置(運転支援ECU)を例に説明する。運転支援システムは、車両に組み込まれ、車両の制動量や車速等を制御することで運転を支援する。なお、以下の実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示す運転支援システム100は、自車両CSの走行状態や周囲の情報を取得する各種センサと、車両の制動力を変化させるブレーキユニット40と、車速Vを変化させる駆動ユニット50と、操舵量を変化させる操舵ユニット60と、各ユニット40,50,60を制御する運転支援ECU20と、を主に備えている。
【0012】
各種センサは、車両前方を撮像するカメラセンサ31と、車両前方の物体を検出するレーダセンサ32と、自車両CSの車速Vを検出する車速センサ33と、ナビゲーション装置34と、自車両CSに加わる加速度を検出する加速度センサ35と、を備えている。
【0013】
カメラセンサ31は自車両CSの前方を撮像し、撮像画像に含まれる特定の情報を検出する。カメラセンサ31は、例えばCCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、近赤外線センサ等の単眼カメラ又はステレオカメラを含む装置であり、自車両CSのフロントガラスの上端付近で且つ車幅方向の中央付近に取付けられている。カメラセンサ31は、道路上に形成された区画白線、道路標識、及び道路上の文字を自車両周囲の情報として検出することができる。
【0014】
レーダセンサ32は、指向性のあるミリ波等を送信波とし、この送信波に応じて自車両CSの前方の物体から反射される反射波を受信する。レーダセンサ32は、送信波を車両横方向に走査することで先行車両CFの位置や、自車両CSと先行車両CFとの現在の車間距離を検出することができる。また、レーダセンサ32は、送信波を車両周囲に走査することで、ガードレールGLの位置や、側壁SWの位置を検出することができる。以下では、車間と記載するときは、自車両CSと先行車両CFとの間の車間を意味するものとする。
【0015】
車速センサ33は、自車両CSの車輪の回転速度に応じた信号を出力する。車速センサ33は、例えば、車輪に取り付けられたパルス発生器から出力される単位時間当たりのパルス数に基づいて当該車輪の回転速度を検出し、運転支援ECU20へ出力する。
【0016】
ナビゲーション装置34は、例えば、GPS受信機により受信されたGPS信号等を用いて車両の現在位置を算出し、該算出した現在位置から目的地までの経路の探索や、経路案内等を実施する。また、ナビゲーション装置34は、不図示のサーバから送信される道路情報や、地図データベースを用いて、自車両CSが走行する道路上の信号機の位置や、道路標識の位置を取得することができる。また、ナビゲーション装置34は、道路の曲率ρや、車線数等の情報を取得することができる。
【0017】
加速度センサ35は、自車両CSの旋回挙動量として、自車両CSの前後に生じる加速度である縦加速度や、自車両CSの横方向に生じる加速度である横加速度Gを検出する。なお、加速度センサ35による検出結果に応じた横加速度Gの値を実測値MVとも記載する。
【0018】
運転支援ECU20は、各種センサからの出力に基づいて、自車両CSの走行を支援する。この実施形態では、運転支援ECU20は、自車両CSを設定速度で走行させ、又、自車両CSの前方に先行車両CFが存在する場合、この先行車両CFとの車間距離を一定に保つアダプティブクルーズコントロール(ACC Adaptive Cruise Control)を実施する。運転支援ECU20は、先行車両CFが存在する場合、自車両CSと先行車両CFとの相対速度や相対位置を検出し、検出結果に応じて車間距離が一定に保たれるよう自車両CSを制御する。
【0019】
運転支援ECU20は、CPU、ROM、RAMを中心に構成された周知のマイクロコンピュータとして構成されている。CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することで、第1取得部21、第2取得部22、判定部25、自信度取得部26、減速度設定部27、追従走行制御部28として機能する。
【0020】
第1取得部21は、各種センサからの出力に基づいて、自車両CSが走行する走路における走路前方での情報を示す前方情報を取得する。この実施形態では、第1取得部21は、前方道路に沿って存在する道路区画部の検知情報から求められる道路曲率情報RCIを取得する道路情報取得部23と、自車両CSの前方を走行する先行車両CFの走行軌跡から求められる軌跡曲率情報TCIを取得する軌跡情報取得部24と、を備えている。
【0021】
図2では、道路情報取得部23は、自車両CSの進路前方において自車両CSの前部から所定距離Dの位置での曲率ρを道路曲率情報RCIとして取得する。道路曲率情報RCIは、カメラセンサ31の検出結果に応じた道路上の区画白線WLの位置、レーダセンサ32の検出結果に応じた道路上の側壁SWの位置、又はレーダセンサ32の検出結果に応じたガードレールGLの位置に応じて取得される。道路情報取得部23は、各種センサからの出力に応じて曲率ρを所定周期で取得する。なお、この実施形態では、所定距離Dは固定値としているが、車速Vに応じてその距離を変更するものであってもよい。
【0022】
軌跡情報取得部24は、レーダセンサ32からの出力により先行車両CFを認識し、この先行車両CFの走行軌跡に応じた曲率ρである軌跡曲率情報TCIを取得する。軌跡情報取得部24は、例えば、レーダセンサ32の検出結果により得られた先行車両CFの位置に基づいて移動軌跡を取得する。そして、軌跡情報取得部24は取得した移動軌跡をもとに自車両CSが将来走行する追従経路を推定し、推定した追従経路の曲率ρを算出する。
【0023】
第2取得部22は、自車両CSの旋回動作により生じる加速度センサ35の実測値MVを取得する。この実施形態では、旋回情報の一例として、自車両CSに生じる横加速度Gの実測値MVを用いている。
【0024】
判定部25は、第1取得部21又は第2取得部22が取得した情報に応じて、自車両CSを減速させるか否かの判定を行う。この実施形態では、判定部25は、前方情報に基づいて算出された横加速度Gの推定値SV、又は加速度センサ35からの実測値MVを用いて自車両CSを減速させるか否かの判定を行う。
【0025】
例えば、推定値SVは、第1取得部21により取得された情報RCI,TCIにより示される曲率ρと、車速センサ33の出力に応じて取得される現在の車速Vと、を下記式(1)に代入することで算出される。
推定値SV=(V)^2×ρ … (1)
ただし、^はべき乗を示している。
【0026】
自信度取得部26は、判定部25による自車両CSを減速させると判定した場合の判定結果の自信度Fconを取得する。自信度Fconは、判定部25の判定精度を評価する情報である。この実施形態では、自信度取得部26は、判定部25が減速を実施するか否かの判定に用いた情報に基づいて、自信度Fconを取得する。以下では、判定部25が自車両CSを減速させる場合の判定を、減速判定とも記載する。
【0027】
図3では、各種センサ(カメラセンサ31、レーダセンサ32、加速度センサ35)の検出結果を用いた判定方法と、自信度Fconとの関係を示している。道路曲率情報RCIを用いた減速実施の有無の判定は、自信度Fconが低に設定される。また、軌跡曲率情報TCIを用いた減速実施の有無の判定は、自信度Fconが中に設定される。そして、旋回状態情報(実測値MV)を用いた減速実施の有無の判定は自信度Fconが高に設定される。
【0028】
カメラセンサ31やレーダセンサ32の検出結果は、車両周囲の明るさの影響や対象に応じて精度にばらつきが生じ易いが、自車両CSが走路を走行する前に取得できるというメリットがある。一方、自車両CSの横加速度G(状態量)の実測値MVは、カメラセンサ31やレーダセンサ32の検出結果と比べて精度が高くなるが、自車両CSが走路を実際に走行しなければならず適用場面が制限されるというデメリットがある。
【0029】
減速度設定部27は、自信度Fconに基づいて自車両CSを減速させるための目標減速度TDVを設定する。
図4では、自信度Fconは、低、中、高の3段階で設定されており、各目標減速度TDVは各自信度Fconに応じてその減速量が異なる。減速度設定部27は、自信度Fconが低の場合、目標減速度TDVをアクセルオフ相当の減速度に設定する。また、自信度Fconが中の場合、目標減速度TDVを低の場合と比べて高い制動力に設定する。そして、自信度Fconが高の場合、目標減速度TDVを自信度Fconが中の場合と比べて高い制動力に設定する。
【0030】
ここで、アクセルオフ相当の減速度とは、運転者がアクセルペダルの踏み込みを解除した場合に、エンジン51への燃料をカットすることによってエンジン51の回転負荷により生じる制動力である。なお、駆動ユニット50がモータを動力とする場合、例えば、アクセルオフ相当の減速量を、モータの回生動作により生じる回転負荷に相当する制動力としてもよい。
【0031】
追従走行制御部28は、自車両CSを設定車速で走行させるACCを実施する。また、追従走行制御部28は、自車両CSの進路前方に先行車両CFが存在する場合、先行車両CFの相対速度や相対位置を用いて、先行車両CFとの間の車間を一定に保つよう自車両CSを制御する。このACCでは、各ユニット40,50,60を制御することで、自車両CSの車速Vと車間とを制御する。
【0032】
また、追従走行制御部28は、目標減速度TDVに応じて現在の車速Vを減速させる減速制御を実施する。この減速制御では、道路の形状や、先行車両CFの軌跡に応じて車速Vを減速させることで、自車両CSに生じる横加速度Gを軽減することができる。
【0033】
ブレーキユニット40は、自車両CSの車速Vを減速させるブレーキ機構41と、このブレーキ機構41を制御するブレーキECU42と、を備えている。ブレーキ機構41は、例えば、マスターシリンダと、車輪に制動力を与えるホイルシリンダと、マスターシリンダからホイルシリンダへの圧力(油圧)の分配を調整するABSアクチュエータとを備えている。ABSアクチュエータは、ブレーキECU42に接続されており、このブレーキECU42からの制御によりマスターシリンダからホイルシリンダへの油圧を調整することで、車輪に対する制動力を調整する。
【0034】
駆動ユニット50は、自車両CSの車速Vや加速度Vaを制御する。駆動ユニット50は、内燃機関として機能するエンジン51と、このエンジン51の駆動を制御するエンジンECU52と、を備えている。エンジンECU52には、不図示のアクセルペダルユニットが接続されている。運転者がこのアクセルペダルユニットを操作することで、エンジンECU52は、エンジン51への流入空気量や燃料の噴射の有無を制御し、車速Vを変化させる。
【0035】
駆動ユニット50は、エンジン51に代えて、駆動用モータを備えるものであってもよい。この場合、エンジンECU52は、アクセルペダルユニットの操作に基づいて、駆動用モータの回転数を変化させることで車速Vを制御する。これ以外にも、駆動ユニット50はエンジンと駆動用モータとを併設するものであってもよい。
【0036】
操舵ユニット60は、自車両CSの操舵量を制御する。操舵ユニット60は、自車両CSの操舵量を変化させる操舵装置61と、この操舵装置61を制御する操舵ECU62と、を備えている。操舵装置61は、例えば、電動式の操舵装置(EPS:Electric Power Steering)であり、モータの回転により、ハンドルに接続されたステアリングシャフトに操舵トルクを加え、自車両CSの操舵量を設定する。
【0037】
次に、運転支援ECU20により実施されるACCを、
図5を用いて説明する。
図5に示す処理は、運転者が操作部を操作してACCの実施を選択した場合に運転支援ECU20により所定周期で実施される処理である。また、先行車両がおらず、ドライバが設定した車速で走行しているものとする。
【0038】
ステップS11では、自車両周囲の走行環境を示す走行環境情報を取得する。この実施形態では、ステップS11により、前方情報RCI,TCIが取得される。ステップS12では、自車両CSの状態量を取得する。運転支援ECU20は、状態量として現在の車速V、現在の車間距離を取得する。
【0039】
ステップS13では、自車両CSの進行方向前方における道路曲率情報RCIを取得する。例えば、運転支援ECU20は、ステップS11で取得した区画白線の位置に基づいた曲率ρを取得する。ステップS12が第1取得工程として機能する。
【0040】
ステップS14では、横加速度Gの実測値MVを取得する。ステップS14が第2取得工程として機能する。
【0041】
ステップS21では、実測値MVを用いて減速実施の有無を判定する。運転支援ECU20は、実測値MVを閾値Th1と比較することで、減速の実施の有無を判定する。実測値MVが閾値Th1以下であり減速が不要であれば(ステップS21:YES)、ステップS22に進む。
【0042】
ステップS22では、ステップS13で取得した道路曲率情報RCIを用いて減速実施の有無を判定する。例えば、運転支援ECU20は、ステップS13で取得した道路曲率情報RCIに応じた曲率ρとステップS12で取得した現在の車速Vとを上記式(1)に代入することで横加速度Gの推定値SVを算出する。そして、運転支援ECU20は、推定値SVを閾値Th2と比較することで、車速Vの減速が必要であるか否かを判定する。推定値SVが閾値Th2を超える場合、減速が必要であると判定し、推定値SVが閾値Th2以下であれば減速が不要であると判定する。
【0043】
減速の実施が必要でなければ(ステップS22:YES)、ステップS40では、ドライバが設定した車速を維持するよう自車両CSを走行する。
【0044】
減速判定を行った場合(ステップS22:NO)、ステップS23では、自信度Fconを低に設定する。この場合、ステップS13において、道路曲率情報RCIを用いて減速実施の有無を判定しているため、自信度Fconは低となる。
【0045】
ステップS25では、自信度Fconに応じて目標減速度TDVを設定する。自信度Fconが低の場合、運転支援ECU20は、
図4に示したように、アクセルオフ相当の制動力を目標減速度TDVとして設定する。ステップS40では、設定された目標減速度TDVに応じて車速Vを減速させた状態でのACCが実施される。ステップS25が減速度設定工程として機能する。
【0046】
一方、ステップS21において実測値MVが閾値Th1以上であり減速判定をする場合(ステップS21:NO)、ステップS24では、自信度Fconを高に設定する。この場合、減速の実施の有無の判定は、横加速度Gの実測値MVに基づいて行われているため、自信度Fconを高い値に設定する。上述したステップS21及びステップS22が判定工程として機能する。また、上述したステップS23及びステップS24が自信度取得工程として機能する。
【0047】
ステップS25では、自信度Fconが高い場合の目標減速度TDVを設定する。また、ステップS40では、設定された目標減速度TDVを用いてACCを実施する。この場合、目標減速度TDVは高い制動力に設定されているため、自車両CSの減速量は大きくなる。
【0048】
次に、自車両CSの減速制御を、
図6を用いて説明する。
図6では、自車両CSがカーブ路を走行する場合を例に示している。また、
図6では、運転支援ECU20は、時刻t1までに進路前方の走路形状(曲率ρ)を取得しているものとする。
【0049】
図6(a)に示すように、時刻t1で自車両CSがカーブ路の手前を走行する場合、道路の曲率ρが低く、運転支援ECU20は、道路曲率情報RCIを用いて減速判定を行う。道路曲率情報RCIを用いた減速判定により、自信度Fconは低に設定される(
図6(b))。そのため、目標減速度TDVは、アクセルオフ相当の弱い制動量に設定される(
図6(c))。また、目標減速度TDVの設定により車速Vが減速され(
図6(d))、横加速度Gが変化する(
図6(e))。なお、
図6(e)では、カーブ路の曲率ρの増加により、時刻t1からの減速制御の実施後も自車両CSに生じる横加速度Gが増加している。
【0050】
図6(a)に示すように、自車両CSがカーブ路を走行中の時刻t2で、カーブ路の曲率ρが増加し、横加速度Gの実測値MVを用いた減速判定が行われる。この場合、実測値MVを用いた判定は、道路曲率情報RCIを用いた減速判定と比べて高い自信度Fconとなるため、目標減速度TDVが時刻t1で実施された目標減速度TDVと比べて大きくなる(
図6(c))。例えば、
図6(e)では、目標減速度TDVは横加速度Gを目標値まで減速させ、自車両CSに生じる横加速度Gを低減させる。
【0051】
以上説明したように、この第1実施形態では、運転支援ECU20は、自車両CSの進路前方での前方情報と、自車両CSの旋回動作により生じる旋回状態情報とのいずれかに基づいて自車両CSを減速させる減速判定が行われ、減速判定に用いた情報の種別に応じて減速判定の自信度Fconが取得される。そして、その自信度Fconに基づいて自車両CSの減速制御が実施される。そのため、不要な減速により運転者に違和感を覚えさせることを減少させることができる。
【0052】
運転支援ECU20は、前方情報により減速判定が行われる場合に、実測値MV(旋回状態情報)により減速判定が行われる場合に比べて自信度Fconを小さくする。そのため、不要な減速により運転者に違和感を覚えさせることを減少させることができる。
【0053】
運転支援ECU20は、自信度Fconが小さい場合に、大きい場合に比べて目標減速度TDVを小さい減速度とする。自信度Fconが低い場合、自車両CSの減速が不要である可能性が高くなる。そこで、上記構成では、自信度Fconが低い場合には目標減速度TDVを自信度Fconが高い場合と比べて小さい減速度とすることで、減速が不要であった場合に運転者が違和感を覚え難いようにすることができる。
【0054】
運転支援ECU20は、自車両CSのカーブ路走行時において、カーブ路の進入当初においては前方情報に基づいて減速判定を実施し、その後、旋回状態情報に基づいて減速判定を実施する。カメラセンサ31やレーダセンサ32により検出される前方情報は、精度にばらつきが生じ易いが、自車両CSが走路を走行する前に推定を行うことができるというメリットがある。一方、実測値MVである旋回状態情報は、検出結果に基づく走路形状の推定と比べて推定精度が高くなるが、自車両CSが走路を実際に走行しなければならず適用場面が制限されるというデメリットがある。上記構成では、減速判定で用いる情報の精度と適用できる場面との間でトレードオフのバランスを適正化することができる。
【0055】
(第2実施形態)
この第2実施形態では、運転支援ECU20は、前方情報を用いた複数回の減速実施の有無の判定を実施する。
【0056】
図7に示す処理は、第2実施形態において、運転者が操作部を操作してACCの実施を選択した際に、運転支援ECU20により所定周期で実施される処理である。また、ACCの実施により、運転支援ECU20は、先行車両CFを認識しているものとする。なお、
図7ではステップS11〜S14、S21、S40は
図5で説明したのと同じ処理であり、その説明を省略する。
【0057】
図7のステップS21において、実測値MVが閾値Th1未満であれば(ステップS21:YES)、ステップS31では、軌跡曲率情報TCIを用いた減速判定を行う。すなわち、ステップS31では、先行車両CFの実際の挙動に応じて道路の曲率ρを判定している。この実施形態では、軌跡曲率情報TCIは、ステップS13により取得されている。
【0058】
運転支援ECU20は、ステップS13で取得された曲率ρに応じた情報と、車速Vとを上記式(1)に代入することで横加速度Gの推定値SVを取得し、この推定値SVを閾値Th2と比較することで減速実施が必要であるか否かを判定する。
【0059】
減速が必要でなければ(ステップS31:YES)、ステップS32に進み、道路曲率情報RCIを用いた判定を行う。推定値SVが閾値Th2以下であり減速が必要なければ(ステップS32:YES)、ステップS40に進む。一方、推定値SVが閾値Th2を超えており減速が必要であれば(ステップS32:NO)、ステップS33では、自信度Fconを低に設定する。
【0060】
一方、ステップS31において減速判定を行った場合(ステップS31:NO)、ステップS34では自信度Fconを設定する。この場合、軌跡曲率情報TCIを用いた減速実施の有無の判定であり、自信度Fconを中に設定する。
【0061】
ステップS36では、設定された自信度Fconに応じて目標減速度TDVを設定する。自信度Fconが中に設定されている場合、目標減速度TDVは、アクセルオフ相当の減速量より大きく、かつ、自信度Fconが高い場合の目標減速度TDVよりも小さい値に設定される。
【0062】
一方、ステップS21において、実測値MVが閾値Th1を超えており減速判定をする場合(ステップS21:NO)、ステップS35では、自信度Fconを高に設定する。この場合、実測値MVに基づいて減速判定がされたため、自信度Fconを高い値に設定する。ステップS36では、高い自信度Fconに対応する目標減速度TDVを設定する。また、ステップS40では、設定された目標減速度TDVを用いて、ACCを実施する。
【0063】
次に、
図7に示す処理による自車両CSの減速制御を、
図8を用いて説明する。
図8(a)では、自車両CSが不図示の先行車両CFを認識しつつ、カーブ路を走行する場合を例に示している。なお、運転支援ECU20は、時刻t12において、先行車両CFの走行軌跡に応じた曲率ρが取得可能となったものとする。また、時刻t11までに進路前方の走路形状(曲率ρ)を取得しているものとする。
【0064】
自車両CSがカーブ路の手前を走行する時刻t11では、道路の曲率ρが低く、道路曲率情報RCIを用いた減速判定が実施される(
図8(a))。自信度Fconは低に設定されることで(
図8(b))、目標減速度TDVがアクセルオフ相当の弱い減速量に設定される(
図8(c))。
【0065】
カーブ路の曲率ρが増加することで減速判定に伴う減速によっても、なお、自車両CSに生じる横加速度Gが増加している(
図8(e))。また、カーブ路を走行中の時刻t12では、先行車両CFの走行軌跡に応じた曲率ρである軌跡曲率情報TCIが取得可能となり、この軌跡曲率情報TCIを用いた減速判定が行われる(
図8(a))。この判定により自信度Fconは中に設定され(
図8(b))、時刻t12での目標減速度TDVが時刻t11で実施された目標減速度TDVと比べて大きくなる(
図8(c))。そのため、自車両CSの減速量が増加し、自車両CSに生じる横加速度Gが低減する。
【0066】
そして、カーブ路の曲率ρの増加が継続することで、時刻t13では、実測値MVを用いた減速判定が実施される(
図8(c))。自信度Fconは高に設定され(
図8(b))、目標減速度TDV(t13)が時刻t12で実施された目標減速度TDVと比べて大きくなる(
図8(c))。
【0067】
図8(e)では、時刻t12での判定に伴う減速を実施しない場合の自車両CSに生じる横加速度Gを点線で示している。実測値MVを用いた判定を行う前に、減速を複数回実施することで、時刻t13での判定の実施に伴う減速制御により、横加速度Gが目標値まで減少する時間を短くし、実測値MVを用いた減速判定時におけるオーバーシュートを予防することができる。
【0068】
以上説明したように、第2実施形態では、運転支援ECU20は、2つ以上の前方情報を取得し、2つ以上の前方情報のうちどの情報に基づいて自車両CSを減速させるための減速判定を行ったかに応じて自信度Fconを設定する。上記構成により、前方情報を複数使用することで、自車両CSの減速を適正に制御することができる。
【0069】
運転支援ECU20は、前方情報として、前方道路に沿って存在する道路区画部の検知情報から求められる道路曲率情報RCIと、先行車両CFの走行軌跡から求められる軌跡曲率情報TCIとを取得する。また、運転支援ECU20は、道路曲率情報RCIにより減速判定が行われる場合に、軌跡曲率情報TCIにより減速判定が行われる場合に比べて自信度を小さくする。上記構成により、先行車両CFの実際の挙動に応じた減速判定での減速量を、道路区画部の検知情報に応じた減速判定での減速量よりも大きくすることができ、減速制御をより適正に実施することができる。
【0070】
運転支援ECU20は、旋回状態情報として自車両CSに生じる横加速度Gを取得し、横加速度Gが所定値以上となった場合に、実測値MVに基づいて設定した自信度Fconに基づいて目標減速度TDVを設定する。上記構成により、前方情報に基づく減速制御により横加速度Gの単位時間当たりの増加量が減少した後、横加速度Gの実測値MVを用いた減速判定が行われるため、横加速度Gが目標値を超える場合でもオーバーシュート量を抑制することができる。その結果、自車両CSに大きな横加速度Gが生じず運転者が違和感を覚える機会を軽減することができる。
【0071】
(第3実施形態)
この第3実施形態では、運転支援ECU20は、前方情報として、道路曲率情報RCIと、軌跡曲率情報TCIと、車両前方に存在するカーブ路を示すカーブ路表示情報CCIとのうち少なくとも2つを用いて減速判定を行う。
【0072】
図9は、第3実施形態に係る自車両CSの状態変化を説明する図である。この第3実施形態では、時刻t21より前では、自車両CSが先行車両CFとの車間を一定に保つため、車速Vを設定車速よりも低くして走行している。そして、時刻t21の直前で、自車両CSがカーブ路の手前を走行している最中に、自車両CSが先行車両CFを認識しなくなり、追従状態が解除されたものとする。
【0073】
自車両CSがカーブ路手間を走行する時刻t21において、運転支援ECU20は前方情報を取得する。
図9(a)では、時刻t21において、カーブ路を示すカーブ路表示情報CCIにより減速実施の有無を判定している。この実施形態では、カメラセンサ31の検出結果によるカーブ路表示情報を用いた減速実施の有無の判定は、自信度Fconが極めて低い値となっている(
図9(b))。
【0074】
自信度Fconが極めて低値である場合、自車両CSのマイナス側の減速量(加速度)が制御される。この場合、
図5のステップS40において、運転支援ECU20は、ステップS23又はステップS24で設定された自信度Fconに応じて、加速度の変化幅を設定する。この実施形態では、自信度Fconが極めて低い値となることで減速量が0に維持され、自車両CSは設定車速まで加速することができなくなる。
【0075】
その後、自車両CSがカーブ路を走行する時刻t22では、自信度Fconが低に設定され、減速量は自信度Fconが極めて低い場合と比べて大きくなる。そして、カーブ路を走行中である時刻t23では、自信度Fconが高に設定されており、減速量は、自信度Fconが中の場合の変化幅と比べて大きくなる。
【0076】
以上説明したようにこの第3実施形態では、運転支援ECU20は、軌跡曲率情報TCI、道路曲率情報RCI、及びカーブ路表示情報CCIの少なくとも2つについて、軌跡曲率情報TCI、道路曲率情報RCI、カーブ路表示情報CCIの順に、その後者ほど減速判定が行われる際の自信度Fconを小さくする。カーブ路表示情報CCIは、進路前方の道路の曲率ρを実際に検知したものでなく、また、軌跡曲率情報TCI及び道路曲率情報RCIと比べてカーブ路の開始位置よりも手前で現れる情報であるため、他の2つの情報と比べて減速の緊急性が低い。そのため、2つ以上の情報を用いて減速判定を行う場合、減速の緊急性が少ないカーブ路表示情報CCIに応じた減速制御に対しては自信度Fconを他の場合と比べて低くすることで、自車両CSの実際の走行に応じた適正な減速制御を実現することができる。
【0077】
また、自車両CSは、先行車追従が解除されることで設定車速まで加速するが、前方がカーブ路である場合、車速Vの増加により横加速度Gが大きくなることで減速判定がなされ、減速が生じる。そのため、車速Vの増加と減速とが続けて生じることで、ドライバが違和感を覚える場合がある。このため、急カーブの可能性がある場合は加速を抑制することで、上記のような自車両の加減速を防止しドライバの違和感を覚える機会を抑制できる。
【0078】
(第4実施形態)
この第4実施形態では、運転支援ECU20は、2つ以上の前方情報を取得し、いくつの前方情報で減速判定を行ったかに応じて自信度Fconを設定する。この第4実施形態では、他の実施形態と異なり、運転支援ECU20は、減速判定に用いる前方情報の種別(道路曲率情報RCI,軌跡曲率情報TCI)によっては自信度Fconを変更せず、減速判定を行った回数に応じて、自信度Fconを変更する。以下、第4実施形態を説明するに際し、
図8を援用して説明を行う。
【0079】
運転支援ECU20は、前方情報により算出される推定値SVが閾値Thより大きい場合、自車両CSを減速させるための減速判定を行う。例えば、現在走行している走路において最初の減速判定であれば、自信度Fconを低に設定する。そのため、
図8に示すように、自信度Fconが低に設定されることで、目標減速度TDVがアクセルOFF相当の減速量に設定される。なお、第4実施形態で推定値SVを判定するために使用する閾値Thは他の実施形態と同じ値を用いてもよいし、異なる値としてもよい。
【0080】
運転支援ECU20は、その後、実測値MVが閾値Th1より小さい期間において、推定値SVに基づく判定が所定周期で実施される。そして、時刻t12において、この推定値SVが閾値Thより大きい場合、自車両CSを減速させるための減速判定が再度実施される。この減速判定が2回目であれば、運転支援ECU20は今回の減速判定に対して自信度Fconを中に設定する。そのため、
図8に示すように、自信度Fconが中に設定されることで、目標減速度TDVがアクセルOFF相当の減速量より大きい値に設定される。
【0081】
その後、時刻t13において、実測値MVが閾値Th1を超える場合、運転支援ECU20は自信度Fconを高に設定する。そのため、
図8に示すように、自信度Fconが高に設定されることで、目標減速度TDVが自信度Fconが中の場合よりも大きい減速量に設定される。無論、この第4実施形態では、前方情報に基づく減速判定がいくつ実施されたかに応じて、自信度Fconを設定するため、2度目の減速判定後によっても、推定値SVが閾値Thを超えている場合に、自信度Fconを高に設定するものであってもよい。
【0082】
減速判定の回数を計算する期間は、運転支援ECU20が最初の減速判定を行ってから予め定められた期間で実施される減速判定を対象としている。なお、減速判定の回数を計算する期間を予め設定している場合でも、実測値MVが閾値Th1を超えることで、自信度Fconが高に設定され、自車両CSに対する強減速が実施される場合、減速判定の回数を計算する期間を初期化するものであってもよい。
【0083】
以上説明したように、この第4実施形態では、運転支援ECU20は、2つ以上の前方情報を取得し、自車両CSを減速させるための減速判定を、いくつの前方情報で行ったかに応じて自信度Fconを設定する。上記構成により、減速判定を行った前方情報の数に応じて自信度Fconを設定することで、自車両CSの減速を適正に制御することができる。
【0084】
(その他の実施形態)
自信度Fconの値を3段階以上の離散値や、連続値としてもよい。
図10では、自信度Fconを連続値とする場合、自信度Fconが増加するに従い、目標減速度TDVが増加するようその値が設定されている。例えば、運転支援ECU20は
図10に示す関係性を規定するマップを記憶しておき、
図5のステップS25において、自信度Fconに応じた目標減速度TDVを設定する。また、自信度Fconを連続値とする場合、その値の設定方法として、例えば、カメラセンサ31、レーダセンサ32、及び加速度センサ35といった各種センサや、ナビゲーション装置34といった種別に加えて、検出される区画白線、側壁、ガードレール、標識等の対象によっても値を異ならせる。
【0085】
自信度Fconを設定する旋回挙動量として横加速度Gを用いたことは一例に過ぎない。これ以外にも、操舵ユニット60による操舵量の結果値を旋回状態情報として用いてもよい。この場合、各種センサには、操舵装置61の操舵量を検出する操舵センサを備えており、運転支援ECU20はこの操舵センサからの出力に基づいて操舵角を実測値MVとして取得する。