(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る食品包装用容器について図面を参酌しつつ説明する。
図1〜
図10に示す食品包装用容器は、種々の食品(食材)を収容することができるものであって、食品を上下に分離した状態で収容して販売する用途に適しており、同種の食品を上下に分離して収容してもよいが、異なる種類の食品を上下に分離して収容することが好ましい。また、開封することなく閉蓋状態のまま電子レンジで加熱調理する用途に適している。
【0012】
食品包装用容器は、合成樹脂シートからなる上面開口の容器本体1と中皿3と蓋5とを備えている。これらの容器本体1と中皿3と蓋5は、何れも真空成形や圧空成形等の各種の熱成形(シート成形)によって形成されている。容器本体1には第一の食品を収容することができ、中皿3には第一の食品とは異なる種類の第二の食品を収容することができる。即ち、容器本体1に蓋5を装着することによって容器本体1と蓋5とで収容空間が区画形成されるが、その収容空間は中皿3によって上下二つの領域に区分され、中皿3よりも上側の上部収容空間6と中皿3よりも下側の下部収容空間7に分けられる。従って、下部収容空間7(下段)と上部収容空間6(上段)にそれぞれ第一の食品と第二の食品を分離した状態で収容できる。
【0013】
例えば、麺類の場合には、下部収容空間7にはダシやスープを入れ、上部収容空間6には麺や具を入れておくことができる。ダシやスープはゼラチンで固めておいてもよく、電子レンジによる加熱によって溶けて液状となるようにしてもよい。また、鍋物にも適しており、下部収容空間7にダシを入れ、上部収容空間6には具材を入れておくことができる。このように食材は種々のものであってよいが、特に、密封性が高い容器であることから水分や液体を含む食品、特に水分や液体の多い食品を収容するのに適している。
【0014】
食品包装用容器の平面視における形状は任意であって、丸形の他、多角形や楕円形、小判形、長円形等であってもよい。また、多角形の場合において、各辺部は、直線状であってもよいし、外側に弧状に膨出する構成であってよい。各角部は円弧状であってよく、即ち角丸形状であってよい。以下、容器本体1、中皿3、蓋5の順に、具体的な構成の一例について説明する。
【0015】
<容器本体1>
容器本体1は、底面部10と周壁部11とフランジ部12とを備えている。
図1のように容器本体1は平面視円形の丼型のものである。底面部10は平面視円形であって、その下面には種々の形状の脚部が突設されていてよい。
【0016】
周壁部11は全体として筒状であって、底面部10の周縁から上方に向けて全体として拡開しつつ立ち上がっている。詳細には、周壁部11は、底面部10の周縁から上方に向けて拡開しつつ延びていて周壁部11の大部分を占める周壁主部110と、該周壁主部110の上側に下部段差部111を介して延設された第二逆テーパ嵌合部112と、該第二逆テーパ嵌合部112の上側に上部段差部114を介して延設された第一逆テーパ嵌合部116とを備えている。尚、第二逆テーパ嵌合部112の内面の上側には、即ち、上部段差部114の上面との境界部分には、第二上部面取り部113を備えることが好ましい。また、第一逆テーパ嵌合部116の内面の上側には、周壁部11の内面上端部を構成する第一上部面取り部117を備えることが好ましい。
【0017】
下部段差部111及び上部段差部114は、何れもその下側に対して上側の方が外側となる、即ち、大径となる形状であって、従って、周壁主部110の上端よりも第二逆テーパ嵌合部112の下端の方が大径であり、第二逆テーパ嵌合部112の上端よりも第一逆テーパ嵌合部116の下端の方が大径である。上部段差部114は下部段差部111よりも内外方向の寸法が大きい。また、上部段差部114の上面には水平に延びる水平面部が設けられていることが好ましい。
【0018】
第一逆テーパ嵌合部116と第二逆テーパ嵌合部112は何れも下側に向けて徐々に拡開(拡径)していく逆テーパ状であり、換言すれば、上側に向けて徐々に縮径していく形状であり、いわゆる内嵌合部として構成されている。第一逆テーパ嵌合部116の内面(内周面)と第二逆テーパ嵌合部112の内面(内周面)が何れも嵌合面となる。第二逆テーパ嵌合部112には中皿3が内嵌合し、第一逆テーパ嵌合部116には蓋5が内嵌合する。第一逆テーパ嵌合部116の上下方向の寸法(全高)は、第二逆テーパ嵌合部112のそれよりも大きいことが好ましい。
【0019】
第二上部面取り部113は、上側に向けて徐々に拡開していく形状であって、上側に向けて湾曲する湾曲面となっている。第二逆テーパ嵌合部112の内面の上側に第二上部面取り部113が形成されることにより、中皿3が容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112にスムーズに嵌合できる。同様に、第一上部面取り部117も上側に向けて徐々に拡開していく形状であって、上側に向けて湾曲する湾曲面となっている。容器本体1の開口縁部の内面に第一上部面取り部117が形成されることにより、蓋5が容器本体1の第一逆テーパ嵌合部116にスムーズに嵌合できる。
【0020】
フランジ部12は、周壁部11の上端から外側に向けて延設されている。フランジ部12は平面視円形の環状である。具体的には、フランジ部12は、第一上部面取り部117から外側に向けて連続的に延びており、外側に向けて略水平に延びていてもよいが、好ましくは、上面が上下方向の断面視において上側凸の円弧状、即ち、玉ぶち形状とすることが好ましい。フランジ部12の上面の高さは、全周に亘って一定であることが好ましい。フランジ部12の下面には、上側に向けて凹んだ凹溝120が全周に亘って形成されている。このようにフランジ部12の下面に凹溝120を形成することにより、フランジ部12の上面を容易に上方に円弧状に突出させて玉ぶち形状とすることができる。この凹溝120の所定箇所には他の部分よりも凹入深さが浅くなるように内外方向に延びる補強リブ(図示省略)を形成してもよい。補強リブを形成した箇所の肉厚は他の部分よりも厚くなる。
【0021】
フランジ部12の外縁部には外側に向けて例えば水平又は若干下方に向けて延びる縁取り部121を全周に亘って形成することが好ましい。このようにフランジ部12に縁取り部121を形成した場合にはその縁取り部121の外縁が容器本体1の外縁となって平面視において最も外側に位置する部分となる。縁取り部121は、容器本体1の最外周縁となる部分である。該縁取り部121はフランジ部12の他の部分よりも薄肉とされ、容器本体1を構成する合成樹脂シートとして発泡シートを使用する場合にはその発泡シートを容器本体1の熱成形時に局所的に強く厚さ方向に押圧して圧縮することにより他の部分よりも相対的に薄肉として形成できる。このようにフランジ部12の外縁部に縁取り部121を全周に亘って設けることでフランジ部12を補強することができる。縁取り部121の幅は例えば1mm〜2mm程度と細いものであってよい。また、縁取り部121の上面には、容器本体1を形成する際の熱成形と同時に細かな凹凸加工やエンボス加工を施して凹凸形状を形成してよい。
【0022】
<中皿3>
中皿3は、底面部30と周壁部31とフランジ部32とを備えている。
図1のように中皿3の平面視における形状は容器本体1のそれに対応したものであって、上述のように容器本体1が平面視円形であるので、それに対応して中皿3も平面視円形である。従って、底面部30は平面視円形であり、周壁部31は筒状であってフランジ部32も円形の環状である。中皿3は、容器本体1よりも浅い形状であって、容器本体1に収容される。中皿3はその全体が容器本体1内に入り込んだ状態となるが、中皿3が容器本体1に収容された状態において、中皿3の底面部30は容器本体1の底面部10から上方に浮いた状態となる。底面部30には種々のリブを形成してよく、底面部30から周壁部31にかけて連続するリブを設けるようにしてもよい。
【0023】
中皿3の周壁部31は、容器本体1の周壁部11と同様に、底面部30の周縁から上方に向けて全体として拡開しつつ立ち上がっている。そして、周壁部31の上部に逆テーパ嵌合部313が形成されている。即ち、周壁部11は、底面部30の周縁から上方に向けて拡開しつつ延びる周壁主部310と、該周壁主部310の上側に段差部311を介して延設された逆テーパ嵌合部313とを備えている。
【0024】
周壁主部310の上下方向の寸法(全高)は任意であるが、容器本体1の周壁主部110における上下方向の寸法よりも小さい。周壁部31の段差部311は水平に延びる水平面部を有していることが好ましい。また、段差部311と逆テーパ嵌合部313との境界部分には下部面取り部312を備えていることが好ましい。下部面取り部は、上方に向けて拡開するテーパ形状の傾斜面であることが好ましく、下部面取り部312を設けることにより、中皿3を容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112にスムーズに押し入れることができる。
【0025】
中皿3の逆テーパ嵌合部313は、下側に向かう程、徐々に拡開していく逆テーパ状であって、いわゆる内嵌合部として構成されている。即ち、逆テーパ嵌合部313は、上方に向けて徐々に内側(容器中心側)に向かう傾斜面となっており、逆テーパ嵌合部313の外面(外周面)が嵌合面となる。この中皿3の逆テーパ嵌合部313が容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112に内嵌合する。
【0026】
周壁部31とフランジ部32との境界部分、即ち、逆テーパ嵌合部313とフランジ部32との境界部分には上部面取り部314が形成されることが好ましい。上部面取り部314は、逆テーパ嵌合部313の上側に位置し、周壁部31の上端部を構成する。上部面取り部314は上側に向けて徐々に拡開していく形状であって、上側に向けて拡開するテーパ形状の傾斜面とすることが好ましい。
【0027】
中皿3のフランジ部32は、周壁部31の上端から外側に向けて延設されている。該フランジ部32は、全周に亘って形成されている。フランジ部32の形状は任意であるが、周壁部31の上端から水平に延びていることが好ましい。容器本体1に中皿3を装着した状態において中皿3のフランジ部32は容器本体1の上部段差部114の上に載置した状態となる。従って、中皿3のフランジ部32の幅、即ち、内外方向の寸法であって周壁部31から外側への張り出し量は、容器本体1の上部段差部114の上面の幅以下である。好ましくは、中皿3のフランジ部32の幅は容器本体1の上部段差部114の上面の幅と等しいか若干小さく、中皿3のフランジ部32の外縁の直径は容器本体1の上部段差部114の上面の外縁の直径と等しいか若干小さい。
【0028】
フランジ部32には多数の凹凸を形成することが好ましい。この凹凸は、正面から拡大して見たときに波形状とされ、多数の山頂と谷底の延びる方向が幅方向(内外方向)であることが好ましいが、幅方向に対して所定角度傾斜していてもよい。また、この凹凸は、例えば、平目ローレット目や綾目ローレット目のようなローレット目によって形成されてよく、特には、滑りにくいようにするために綾目ローレット目によって形成してよい。凹凸はフランジ部32の全幅に亘って形成されることが好ましいが、フランジ部32の全幅のうちの外側領域のみに形成してもよい。また、凹凸はフランジ部32の全周に亘って形成されることが好ましいが、部分的に設けられない箇所があってもよい。
【0029】
尚、中皿3のフランジ部32から底面部30までの高さ即ち中皿3の全高は、容器本体1の上部段差部114から底面部10までの高さよりも低い。また、中皿3のフランジ部32には適宜の摘み部を設けてよく、段差部311からフランジ部32にかけて適宜の摘み部を設けてよい。
【0030】
閉蓋状態のままで電子レンジで加熱調理すると食品から蒸気が出て内圧が上昇する。そのため蒸気を外部に排出するための構成を備えている。蒸気を外部に排出するための構成は種々であってよいが、下部収容空間7で発生した蒸気を上部収容空間6に排出するための内部連通部と、上部収容空間6から容器外部に蒸気を排出するための外部連通部を備える。
<内部連通部>
本実施形態では、内部連通部が中皿3に設けられている。具体的には、中皿3の底面部30よりも高い位置に内部連通部が設けられており、より詳細には、
図1や
図8、
図10のように、底面部30から上方に膨出した膨出部33が形成され、該膨出部33の天面部330に連通口331が設けられている。該連通口331は種々の形状であってよいが、本実施形態においては円形の孔とされている。膨出部33の位置も種々であってよく、例えば、膨出部33を底面部30の中央部に膨出形成してもよいが、底面部30に載置する食品の収容効率を高める観点から、底面部30の周縁部(端部)に形成することが好ましい。また、膨出部33は、周壁部31から内側に離間した構成であってもよいが、周壁部31から離間することなくそれと一体化した構成であることが好ましい。膨出部33の天面部330の高さは、底面部30より高ければよいが、周壁部31の高さの半分以上とすることが好ましく、特に、膨出部33の天面部330が段差部311よりも高い位置にあることが好ましい。膨出部33の天面部330がフランジ部32よりも高い位置となっていてもよい。但し、膨出部33の高さは蓋5と干渉しない程度であって、従って、膨出部33の天面部330が蓋5の天面部50に近接あるいは当接する構成であってもよい。膨出部33の側面には各種のリブを形成してよく、底面部30から膨出部33の側面にかけて連続するリブを設けることも好ましい。
【0031】
このように中皿3に膨出部33を設けてその天面部330に連通口331を形成することで、電子レンジによる加熱時に、下部収容空間7で発生した蒸気は連通口331を通って上部収容空間6へとスムーズに移動できる。また、内部連通部を中皿3の逆テーパ嵌合部313や容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112には設けず、また、中皿3の底面部30にも設けていない場合には、下部収容空間7に液体を収容した場合であってもその液体が上部収容空間6に漏れにくい効果に特段優れる。但し、膨出部33以外の箇所に内部連通部を設けるようにしてもよく、中皿3の逆テーパ嵌合部313や容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112に設けたりしてもよい。また、膨出部33に連通口331を設けると共に、中皿3の逆テーパ嵌合部313や容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112にも内部連通部を設けるようにしてもよい。中皿3の逆テーパ嵌合部313や容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112に内部連通部を設ける構成としては、例えば、中皿3の逆テーパ嵌合部313の外面に凹溝を設けたり、容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112の内面に凹溝を設けたりしてよい。何れにしても、内部連通部は中皿3の底面部30よりも高い位置に設けることが好ましい。
【0032】
<蓋5>
蓋5は、天面部50と内側周壁部51と延在部52と外側周壁部53とフランジ部54とを備えている。尚、
図3は蓋5の底面図であるが、天面部50のリブ等の詳細は省略して図示している。蓋5は容器本体1の開口部を閉塞するものであるため、蓋5の平面視における形状は容器本体1のそれに対応したものであり、従って、蓋5も平面視円形であり、蓋5の天面部50や内側周壁部51、延在部52、外側周壁部53、フランジ部54は何れも円形の環状である。天面部50は全領域に亘って平坦であってもよいが、周縁部に突条500や下方に傾斜した傾斜面部501を形成してもよい。天面部50は、延在部52よりも高い位置にあってフランジ部54よりも高い位置にあり、これにより収容可能な容積を拡大することができる。
【0033】
内側周壁部51は、天面部50の周縁から下方に向けて拡開しつつ延びており、該内側周壁部51の下端から外側に向けて延在部52が水平に延びており、該延在部52の外縁から上側に向けて外側周壁部53が延びている。即ち、延在部52は内側周壁部51と外側周壁部53の下端同士を連結している。延在部52と外側周壁部53との境界部分には下部面取り部530を設けることが好ましい。該下部面取り部530は上方に向けて拡開するテーパ形状の傾斜面とすることができる。下部面取り部530を設けることにより、蓋5を容器本体1の第一逆テーパ嵌合部116にスムーズに内嵌合できる。外側周壁部53とフランジ部54との境界部分には上部面取り部532を設けることが好ましい。該上部面取り部532は、上側に湾曲した湾曲面とすることができる。
【0034】
外側周壁部53に逆テーパ嵌合部531が設けられている。逆テーパ嵌合部531は、外側周壁部53の大部分を占めており、下側に向かう程、徐々に拡開していく逆テーパ状であって、いわゆる内嵌合部として構成されている。即ち、逆テーパ嵌合部531は、上方に向けて徐々に内側(容器中心側)に向かう傾斜面となっており、逆テーパ嵌合部531の外面(外周面)が嵌合面となる。閉蓋状態において、蓋5の逆テーパ嵌合部531が容器本体1の第一逆テーパ嵌合部116に内嵌合し、蓋5の延在部52の下面が中皿3のフランジ部32の上面に当接する。
【0035】
蓋5のフランジ部54は、外側周壁部53の上端から外側に向けて延設されている。該フランジ部54は、全周に亘って形成されている。フランジ部54の形状は任意であるが、閉蓋状態において容器本体1のフランジ部12を上方から覆う構成となっており、好ましくは、容器本体1のフランジ部12の上面に当接する構成とされる。具体的には、フランジ部54は、外側周壁部53の上端から外側に向けて水平に延びる水平面部540と、該水平面部540の外縁から斜め下方に延びる下方傾斜部541とを備える。
【0036】
閉蓋状態においては、蓋5のフランジ部54の水平面部540が容器本体1のフランジ部12の上面に当接することが好ましい。上述のように、容器本体1のフランジ部12は上側に湾曲した形状の玉ぶち状とされているので、蓋5のフランジ部54の水平面部540が容器本体1のフランジ部12の上面に当接する場合においても、縦断面視において点あるいは短い長さの線で接触することになる。尚、蓋5のフランジ部54の水平面部540が容器本体1のフランジ部12の上面に当接せずに若干の隙間を介して対峙する構成であってもよい。蓋5のフランジ部54の下方傾斜部541は上側に湾曲した湾曲面とされることが好ましい。閉蓋状態において、蓋5のフランジ部54の下方傾斜部541が容器本体1のフランジ部12を外側且つ斜め上方から覆うことになる。
【0037】
また、下方傾斜部541の外側には水平又は若干下方に延びる縁取り部542を形成することが好ましい。このようにフランジ部54に縁取り部542を形成した場合にはその縁取り部542が蓋5の外縁となって平面視において最も外側に位置する部分となる。この蓋5の縁取り部542には中皿3のフランジ部32と同様に凹凸を形成してよい。尚、蓋5のフランジ部54には適宜の摘み部を設けてよい。
<外部連通部>
蓋5には、上部収容空間6から容器外部に蒸気を排出するための外部連通部が設けられている。
図2〜
図5のように、蓋5の逆テーパ嵌合部531の外面には内側に凹んだ蒸気排出用凹溝55が外部連通部として形成されている。該蒸気排出用凹溝55は逆テーパ嵌合部531の外面の全高に亘って形成されている。より詳細には、蒸気排出用凹溝55は外側周壁部53の全高に亘ってその上端から下端まで連続して形成されており、従って、蒸気排出用凹溝55は逆テーパ嵌合部531のみならず上部面取り部532や下部面取り部530にも延設されている。蒸気排出用凹溝55の形状は、例えば上下方向に沿った直線状に形成でき、所定幅を有する形状とされるが、斜め方向に延びていたりしてもよい。
【0038】
また、蒸気排出用凹溝55は、延在部52の下面に連続して延びており、延在部52の全幅(内外方向の全寸法)に亘って径方向に一直線状に形成されている。従って、蒸気排出用凹溝55は、蓋5を上下方向に切断した縦断面視において全体としてL字状に形成されており、外側周壁部53の外面に形成された上下方向に延びる縦溝部56と、延在部52の下面に形成された内外方向(径方向)に延びる横溝部57とから構成され、縦溝部56と横溝部57は互いに連続している。尚、蒸気排出用凹溝55は蓋5の裏面側に形成されている。従って、蓋5の表面側には、蒸気排出用凹溝55に対応した膨出形状が形成されている。
【0039】
図8〜
図10のように閉蓋状態において蒸気排出用凹溝55と容器本体1の周壁部11や中皿3のフランジ部32との間に蒸気が通る蒸気通路が形成される。即ち、蒸気排出用凹溝55の横溝部57と中皿3のフランジ部32の上面との間に容器内外方向の蒸気通路が形成されると共に、蒸気排出用凹溝55の縦溝部56と容器本体1の第一逆テーパ嵌合部116の内面との間に上下方向の蒸気通路が形成される。
【0040】
蒸気排出用凹溝55の本実施形態における詳細形状について更に説明する。
図9に蒸気排出用凹溝55の縦断面形状を二点鎖線で示している。蓋5の逆テーパ嵌合部531は上方に向けて徐々に内側となる形状である一方、蒸気排出用凹溝55の縦溝部56の溝底面560は、上下の面取り部を除く主要部分において、鉛直上方に延びているか、あるいは、上方に向けて若干外側に傾斜している形状となっている。従って、縦溝部56における溝深さは下側の方が深く上側の方が浅くなっている。これにより型抜きが容易になる。尚、縦溝部56の下端部における面取り部561は下部面取り部530よりも小さい。また、縦溝部56の上端部における面取り部562は、上部面取り部532と同様に上方に湾曲した湾曲面となっているがその曲率半径は上部面取り部532のそれよりも小さく、従って、上部面取り部532よりも相対的に上方且つ内側に位置している。一方、蒸気排出用凹溝55の横溝部57の溝深さは、内外方向に沿って一定となっている。
【0041】
また、
図4に蒸気排出用凹溝55を正面から見た図を示しており、
図5に蒸気排出用凹溝55を底面から見た図を示している。
図5のように蒸気排出用凹溝55の縦溝部56の左右の溝側面563は傾斜面となっており、従って、縦溝部56は溝底面560から溝開口部に向けて徐々に幅広となる形状である。尚、縦溝部56の溝側面563の幅は、
図4のように上方に向けて徐々に狭くなっている。また、
図4のように蒸気排出用凹溝55の横溝部57の左右の溝側面573も同様に傾斜面となっており、従って、横溝部57は溝底面570から溝開口部に向けて徐々に幅広となる形状である。
【0042】
このように、蒸気排出用凹溝55の縦溝部56の溝深さが下側よりも上側の方が浅くなっていると共に、縦溝部56における溝側面563の幅が上方に向けて徐々に狭くなっていることから、上記の上下方向の蒸気通路を横方向に切断した時の該蒸気通路の横断面形状の面積は、下側よりも上側の方が小さくなっていて徐々に絞られている。従って、上下方向の蒸気通路内を下側から上側へと向かう蒸気の圧力は上側に向けて高まっていく。そして、
図10のように、その圧力によって蓋5のフランジ部54は押し上げられて容器本体1のフランジ部12から上側に離間するように傾斜した姿勢となる。
【0043】
尚、本実施形態では、蒸気排出用凹溝55が延在部52の下面の全幅に亘って内外方向に延びるようにして形成されているが、延在部52の下面の内縁まで達していなくてもよく、少なくとも、閉蓋状態において蒸気排出用凹溝55が中皿3のフランジ部32や容器本体1の上部段差部114よりも内側まで延びていて上部収容空間6と連通する程度に内側に延びていればよい。
【0044】
かかる蒸気排出用凹溝55の個数や配置は任意であるが、複数箇所に均等に分散して設けることが好ましく、本実施形態では90度間隔で合計4箇所に形成されているが、例えば、180度対向して二箇所に形成したり、120度間隔で三箇所形成する等、種々のレイアウトであってよい。
【0045】
容器本体1や中皿3、蓋5には、それぞれの部材同士を積み重ねた際のブロッキングを防止するためのブロッキング防止用凸部を周方向に位置をずらせながら配置してよく、本実施形態では、中皿3と蓋5にブロッキング防止用凸部34,58をそれぞれ設けている。
【0046】
容器本体1、中皿3及び蓋5は、何れも合成樹脂シート製であって、いわゆるシート成形により形成されたものであり、電子レンジ用とするため、耐熱性を有するシートから構成される。シート成形としては例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、熱板成形等があり、何れにしても合成樹脂シートを熱成形することにより形成される。従って、容器本体1等において外面と内面は原則として凹凸が逆の形状となる。
【0047】
ここで、合成樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン等、各種の合成樹脂からなるシート、これらのシート素材として無機物を充填したシート、これらをシート素材として発泡させた発泡シート、更には、これらのシートを延伸させた延伸シートなどを使用できる。特に、これらの中でもポリスチレンを発泡させた発泡ポリスチレンシートや、ポリスチレンとして耐熱性に優れた耐熱性のスチレン系樹脂を使用した耐熱性発泡スチレン系樹脂シートが好ましい。このような発泡シートとしては、例えば、スチレン樹脂単独、あるいは、スチレンモノマーと共重合可能なブタジエン、無水マレイン酸、メタクリル酸などのモノマーとスチレンモノマーとの共重合体樹脂単独、または、スチレン樹脂と前記共重合体樹脂やポリフェニレンエーテル系樹脂などの耐熱性樹脂などとの混合物に、ブタンやペンタンなどの物理的発泡剤や、アゾジカルボンアミドなどの化学的発泡剤や、二酸化炭素、窒素、空気などの発泡剤とともに押出機で混練して押出し発泡させてなる発泡シートや、その片面もしくは両面に樹脂フィルムを積層させたものを挙げることができる。
【0048】
この発泡シートの片面、もしくは両面に積層される樹脂フィルムには、例えば、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、耐熱ポリスチレン樹脂などのスチレン系樹脂が用いられてなるフィルムや、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂が用いられてなるフィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂が用いられてなるフィルム、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂などのガスバリア性に優れた樹脂が用いられてなるフィルムを用いることができる。あるいは、これらのフィルム同士を積層させたフィルム(積層フィルム)やこれらの積層フィルムを発泡シートに積層させる樹脂フィルムとして用いることもできる。その中でも、発泡シートに用いられたスチレン系樹脂やスチレン系の共重合体樹脂などが用いられてなるフィルムを用いる場合には、その全体が同じ材質で構成されることとなり、容器のリサイクル性を向上させ得る点において好適である。
【0049】
特に容器本体1は耐熱性を有する発泡シートから構成されることが好ましい。このように容器本体1を耐熱性の発泡シートから構成すると、電子レンジで加熱した後に容器本体1の周壁部11を手で把持しても手に食品の熱が伝わりにくい。尚、透明性に優れたシートを使用することも好ましく、蓋5には特に好ましい。
【0050】
<合体状態>
容器本体1に中皿3が上側から装着され、更に、容器本体1に蓋5が装着される。容器本体1に第一の食品を入れておき、そのうえで中皿3を装着する。中皿3には予め第二の食品を入れておくことが好ましいが、容器本体1に中皿3を装着した後に中皿3に第二の食品を載せるようにしてもよい。そして、最後に容器本体1に蓋5を装着して包装作業が完了する。かかる合体状態では、容器本体1の底面部30と中皿3とによって下部収容空間7が区画形成され、中皿3と蓋5とによって上部収容空間6が区画形成される。下部収容空間7と上部収容空間6は中皿3によって上下に仕切られているので、下部収容空間7と上部収容空間6にそれぞれ異なる種類の食品を分離した状態で収容できる。
【0051】
そして、中皿3が容器本体1に内嵌合する構成であるので、中皿3と容器本体1との間のシール性が良好であり、従って、第一の食品と第二の食品とが分離した状態を維持することができる。また、蓋5も容器本体1に内嵌合する構成であるので、第二の食品が容器外部に漏れ出すことも防止できる。このように容器本体1に中皿3と蓋5が何れも内嵌合する構成であるので、下部収容空間7に収容した第一の食品と上部収容空間6に収容した第二の食品とを容易に且つシール性良く分離状態とすることができ、容器外部への液漏れも防止できる。
【0052】
また中皿3を容器本体1に上側から押し入れるようにして内嵌合させることができるので、中皿3を蓋5の下面に嵌合させて宙釣り状態とする構成に比して作業が容易であって且つ確実な内嵌合状態が得られる。特に、第二逆テーパ嵌合部112の下側に下部段差部111が設けられているので、中皿3を上側から容器本体1に押しでいく際に中皿3を押し込み過ぎるということがなく、確実且つ容易に中皿3を容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112に内嵌合させることができる。しかも、容器本体1と中皿3と蓋5の合体状態において、容器本体1の上部段差部114に中皿3のフランジ部32が当接し、中皿3のフランジ部32に蓋5の延在部52が当接するので、中皿3を容器本体1に内嵌合させる際に、仮に中皿3が傾いた状態になっていたとしても、その後に蓋5を容器本体1に内嵌合させる際に、中皿3のフランジ部32を蓋5の延在部52が下方に押すことになる。従って、中皿3を容器本体1に確実に内嵌合させることができる。また、第一逆テーパ嵌合部116の下側に上部段差部114が設けられているので、蓋5を容器本体1に内嵌合していく際に蓋5を押し込み過ぎるということがなく、確実且つ容易に容器本体1に蓋5を内嵌合させることができる。
【0053】
一方、電子レンジ加熱時の蒸気を、中皿3より下側の下部収容空間7から中皿3より上側の上部収容空間6に排出するための内部連通部と、電子レンジ加熱時の蒸気を上部収容空間6から容器外部に排出するための外部連通部とを備えているので、開封することなく閉蓋状態のまま電子レンジに入れて加熱調理することができる。
図10に電子レンジで加熱した際の概要を示しており、矢印で蒸気の移動を示している。下部収容空間7で発生した蒸気は内部連通部である連通口331から上部収容空間6へと移動する。また、上部収容空間6内の蒸気は、蒸気排出用凹溝55を通って容器外部へと排出される。尚、閉蓋状態において蓋5のフランジ部54が容器本体1のフランジ部12に当接する構成であった場合、蒸気排出用凹溝55を通って上昇してきた蒸気の圧力即ち上部収容空間6の圧力上昇によって、蓋5のフランジ部54が容器本体1のフランジ部12から離れるように僅かに上昇して、蓋5のフランジ部54と容器本体1のフランジ部12との間に隙間が形成され、その隙間から蒸気が容器外部へと排出されることになる。
【0054】
このように電子レンジによる加熱時に発生した蒸気は内部連通部と外部連通部を介して容器外部へと排出されるので、閉蓋状態のままで電子レンジで加熱調理できる。そして、中皿3を備えた構成であるので、中皿3のない構成に比して容器内部の圧力を高めることができ、容器内部の温度を高く維持することができる結果、加熱時間を短縮することができる。また、中皿3と蓋5がそれぞれ容器本体1に内嵌合するシール性の高い容器であるが、内部連通部と外部連通部を備えているので、蒸気や圧力を適度に外部に逃がしながら加熱することができる。一方、中皿3が内嵌合構造であるので、下部収容空間7に蒸気を適度に滞留させることができ、蓋5も内嵌合構造であるので、上部収容空間6にも蒸気を適度に滞留させることができる。このように蒸気を容器内に適度に滞留させることによって容器内の圧力を適度に上昇させることができ、結果として温度を高い状態に維持することができるので、食材の加熱時間を短縮できる。
【0055】
特に、内部連通部として膨出部33の天面部330に連通口331が形成されていて、中皿3の逆テーパ嵌合部313や容器本体1の第二逆テーパ嵌合部112に内部連通部が設けられていない構成とすると、陳列時における下部収容空間7からの液漏れを確実に防止できる。
【0056】
また、外部連通部として蓋5に蒸気排出用凹溝55が形成されていて、蓋5の天面部50には蒸気排出口が形成されていない構成であるので、上部収容空間6の温度をより一層高い状態に維持することができ、食材の加熱時間をより一層短縮することができる。更に、蓋5の天面部50に蒸気排出口を有しない構成であるため、虫等の異物の混入もより一層確実に防止することができ、天面部50の蒸気排出口を閉塞するための別途のラベルも不要になって低コスト化が可能になる。特に、閉蓋状態において蓋5のフランジ部54が容器本体1のフランジ部12に当接している構成とすると、蒸気排出用凹溝55による蒸気通路の上端が蓋5のフランジ部54と容器本体1のフランジ部12によって閉鎖されるため、虫等の異物の混入をより一層確実に防止できる。また、蓋5のフランジ部54に下方傾斜部541が設けられていると、閉蓋状態においてその下方傾斜部541が容器本体1のフランジ部12を外側の斜め上方から覆うことになるので、虫等の異物の混入をより一層確実に防止できる。
【0057】
尚、下記の表1に示すように合計四つのタイプの食品包装用容器を作製し、それぞれに食材を収容して閉蓋状態のまま電子レンジにて加熱調理して比較実験を行った。電子レンジは1500Wに設定し、125秒加熱した。加熱後、蓋を開けて直ちに食材の温度を測定した。タイプA〜Dは何れも蓋5が内嵌合する構成である。外部連通部は二種類準備し、一方は、蓋の天面部にU字状の蒸気排出口を設けて外側周壁部には蒸気排出用凹溝を設けないもので、他方は、上記実施形態と同様に蓋の天面部に蒸気排出口を設けずに外側周壁部に蒸気排出用凹溝を設けたものであって、タイプAとタイプBが前者、タイプCとタイプDが後者を採用している。また、中皿については、タイプAのみが中皿なし、それ以外は中皿ありの構成であって、タイプBとタイプDが上記実施形態と同様の構成に中皿が容器本体に内嵌合する構成であり、タイプCは内嵌合しない構成である。即ち、タイプDが
図1〜
図10に示した上記実施形態と同様の構成である。
【0059】
タイプA〜タイプDと順に温度が高くなっていることがわかる。温度が高いことは即ち加熱時間を短縮することができることを意味し、特に、昼休みで混雑するコンビニエンスストア等において加熱時間を短縮できる効果は大きい。タイプAとタイプBとを比較すると、中皿を使用するタイプBの方が温度が高くなっている。このことから中皿を使用した方が内部の圧力を高めることができ、容器内部の温度を高く維持することができることがわかる。また、タイプBとタイプDとを比較すると、蓋の天面部に蒸気排出口を設けずに外側周壁部に蒸気排出用凹溝を形成したタイプDの方が温度が高くなっている。このことから、蓋の天面部に蒸気排出口を設ける構成よりも、外側周壁部に蒸気排出用凹溝を形成した構成の方が容器内部の温度を高くすることができて加熱時間を短縮できることがわかる。また更に、タイプCとタイプDとを比較すると、中皿が内嵌合するタイプDの方が温度が高くなっている。このことから中皿を容器本体に内嵌合させることにより、容器内部の温度を高くすることができて加熱時間を短縮できることがわかる。
【0060】
尚、上記実施形態では、中皿3が容器本体1に内嵌合する構成であったが、内嵌合しない構成であってもよい。例えば、中皿3のフランジ部32が容器本体1の上部段差部114に単に載置する構成としてもよい。また、中皿3を備えない構成であってよい。
図11に中皿3を備えていない構成の一例における閉蓋状態を示している。中皿3を設けない構成では、閉蓋状態において蓋5の延在部52が容器本体1の段差部114に直接当接する構成とする。
【0061】
また、容器本体1や中皿3、蓋5の構成は種々変更可能である。例えば、蓋5において内側周壁部51と天面部50を省略してもよい。このように内側周壁部51と天面部50を省略すると、収容空間はその分だけ減少するが、その場合、外側周壁部53の内側には延在部52のみが存在することになり、上述のように蓋5が平面視円形である場合には延在部52が円形となって天面部50を兼ねた構成となる。