(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁体(30)は、前記流量絞り部(37)から更に延出し、前記弁座(20)の前記円筒流入部(23)に対して前記流量絞り部(37)よりも大きな傾斜角度の外周面を備えた弁体先端部(38)を有し、
前記弁体(30)の前記流量絞り部(37)は、前記接触閉鎖部(39)の前記閉鎖端(39a) から、前記弁開度が30%以上60%以下となる位置まで配されてなる、
請求項1又は2記載のスチーム用調節弁。
【背景技術】
【0002】
食品、醸造、乳業、化学薬品の製造工程等では、液体、気体、蒸気(スチーム)等の流体を流す複数の配管(ライン)等が用いられるとともに、それらの配管上に配される複数の弁(バルブ)によって、流体の流路、流量、圧力等の調整が行われる。例えば流体としてスチームを用いる場合には、一般的に、ボイラー等で高圧のスチームを発生させ、そのスチームの圧力を、蒸気の用途等に応じてライン上に設けた減圧弁で下げてからスチームが使用される。
【0003】
また、食品、医薬品、化粧品などの製造現場では、不純物の混入や細菌の発生を抑えて衛生度を高めるために厳密な管理が行われており、例えばスチームを用いる場合には、純水から発生させるクリーンスチームや、超純水から発生させるピュアスチームが使用される。また、クリーンスチームやピュアスチームを流通させる配管としては、衛生面を重視して、埃や汚れが付着し難く、また埃や汚れが付いても洗浄がし易いように研磨処理されたステンレス製のサニタリー配管が一般的に用いられる。
【0004】
スチームの圧力を下げる減圧弁には、直動式の減圧弁とパイロット式の減圧弁とが知られているが、上述のようなサニタリー配管に取り付けられる減圧弁としては、構造が比較的単純で、分解・洗浄・組み立てが容易な直動式の減圧弁が用いられる。一方、直動式の減圧弁は、調整可能な圧力範囲が狭いこと、調整可能な流量が比較的大きく、小さな流量では制御精度が良くないこと、一次側に流量変動が生じたときに二次側の圧力が変動し易く、安定性に欠けること等の欠点があった。
【0005】
二次側のスチーム圧力を減圧弁よりも安定させるため、サニタリー配管に調節弁(コントロールバルブ)が使用されることもある。調節弁は、弁開度を制御するための制御信号を出力する調節計と、調節計の制御信号に応じて弁体の位置を制御するポジショナーとを有しており、弁座に対する弁体の位置制御を行うことにより弁開度を制御可能に形成されている。また、例えば特開平4−181082号公報(特許文献1)や、国際公開第2014/007047号(特許文献2)には、調節計とポジショナーとを有する流量計機能付きの調節弁が開示されている。なお、特許文献1や特許文献2には、調節弁をサニタリー配管へ使用することについて特に記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サニタリー配管に使用される調節弁は、衛生面からのメンテナンス性を考慮して分解及び組み立てが容易であることや、高温に耐えることができて壊れにくいことが求められるため、調節弁の弁本体部(ボディ)は、例えば
図7に示すような比較的簡単な構造で形成される。
【0008】
図7に示した調節弁70の弁本体部71はL型形態に形成されている。この場合、クリーンスチーム等の流体を弁本体部71に流入させる流入口72が、弁本体部71の下方に延びる垂直管部の下端部に設けられており、流体を弁本体部71から流出させる流出口73が、弁本体部71の水平方向に延びる水平管部の先端部に設けられている。
【0009】
この弁本体部71の内部には、弁座74と、その弁座74に対して昇降可能な弁体75とが設けられている。また、弁体75は、図示しないポジショナーによって弁座74に対する高さ位置が制御され、ポジショナーは、図示しない調節計から入力される設定信号に応じて弁体75の高さ位置を制御する。
【0010】
弁座74には、スチームを流通させるための弁口76が設けられており、この弁口76は、弁座74を上方から見た平面視において円形を呈するように形成される。また、弁座74は、弁体75の昇降方向に対して直交するように配され、弁体受け部となる弁座上面部74aと、弁座上面部74aの内径側端部から面取りされたように湾曲状に延びる開口縁部74bと、開口縁部74bから弁体75の進退方向と平行に下方に延びる円筒流入部74cとを備える。
【0011】
弁体75は、上下方向に往復動可能な作動軸77に取り付けられているとともに、弁体75の基端部にはダイアフラム78が設けられている。このダイアフラム78の大径側の外周端部は、弁本体部71のハウジング部79に密着して組み付けられている。
【0012】
この弁体75の先端部分には、弁体75が閉止位置に保持されているときに、弁座74の弁座上面部74aに接触するドーナツ状の接触平面部75aと、接触平面部75aから接触平面部75aと単一平面を形成するように内側に向けて延びるとともに弁座74には接触しない非接触平面部75bと、非接触平面部75bの内径側端部から下方に円錐状に突出する突出部75cとが設けられている。
【0013】
弁体75に上述のような非接触平面部75bが設けられていることにより、例えば弁本体部71を洗浄するために分解した後、再び組み立てる際に、弁座74の中心軸に対して弁体75の中心軸の位置が僅かにずれたとしても、弁座74と弁体75との間のシール性が確保し易くなり、弁本体部71の組立性(組立容易性)が高められる。
【0014】
上述のような弁本体部71を有する調節弁70では、
図7に示すように、弁体75を、図示しないポジショナーによって弁座74に接触する位置に保持することにより、弁口76を閉鎖して、クリーンスチーム等の流体の流通を止めることができる。また、ポジショナーは、調節計から入力される制御信号に応じて弁体75を昇降させて保持することができるため、例えば
図8に仮想線で示すように弁体75が異なる各高さ位置で保持されることによって、弁座74と弁体75との間に弁体75の高さ位置に応じた隙間が形成される。
【0015】
これにより、調節弁70の一次側から供給されるスチームを、弁座74と弁体75との間に形成される隙間の大きさに応じた流量で二次側に流出させることができるため、当該隙間の大きさを制御することにより、二次側のスチーム圧力を調整することができる。
【0016】
特に上述のような弁本体部71を有する調節弁70では、弁座74に対する弁体75の高さ位置が高くなるほど、弁座74と弁体75との間に形成される隙間が大きくなるため、ポジショナーにより制御される弁体75の高さ位置と、流体が流通する隙間の大きさとは比例関係にある。
【0017】
例えば
図8において、弁体75を昇降させることが可能なストロークが6mmであるとき、弁体75を弁座74から6mm上昇させたときが全開となり、そのときの弁本体部71における弁開度が100%となる。また、弁体75を弁座74から1mm上昇させた位置に保持したときの弁開度は、100%の1/6の大きさである16.7%となる。従って、調節弁70の二次側の圧力を制御する場合には、設定する圧力の大きさに応じて、弁体75の高さ位置が調節計及びポジショナーによって適宜調節される。
【0018】
しかしながら、上述のような弁本体部71を有する調節弁70の場合、弁体75の高さ位置に比例して弁座74と弁体75との間に形成される隙間(開口)が拡大・縮小するため、例えば弁開度が小さい低流量範囲では、弁体75の高さ位置が少し変化するだけでも弁座74と弁体75間の隙間の大きさが比較的大きく変化し、当該隙間を流れる流体(クリーンスチーム等)の流量が大きく変動する。その結果、調節弁70の二次側の圧力制御を低流量範囲で高精度に行うことが難しく、低流量域での制御性が良くないという欠点があった。
【0019】
更にこの場合、調節弁70において制御できる最少のCv値が大きくなって、調節弁70の制御範囲の指標となるレンジアビリティが小さくなり易い。従って、サニタリー配管に配される調節弁においては、弁体のストロークを大きくすることなく、レンジアビリティをより広く確保して調節弁の制御性を高めることが求められている。
【0020】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、弁開度が小さい低流量域において流量制御を高精度に行うことが可能で、且つ、広いレンジアビリティを有することが可能なスチーム用調節弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるスチーム用調節弁は、食品、醸造、乳業、化学薬品の製造工程で用いられる
ピュアスチーム又はクリーンスチームが流通する弁口を備えた弁座、及び、前記弁口に離間・接触することにより前記弁口を開閉する弁体を備えた弁本体部と、前記弁本体部の弁開度の制御信号を出力する調節計と、前記調節計の前記制御信号に応じて前記弁体の位置制御を行うポジショナーとを有するスチーム用調節弁にあって、前記弁本体部は、前記弁本体部の外側に装着される分割バンドの脱着により、分解・組立可能な構造を有し、前記弁体の表面部は、前記弁体の上端部に形成されるダイアフラムの被膜部と一体にフッ素樹脂により形成され、前記弁座は、前記弁体の弁口閉鎖位置にて前記弁体を接触させて支持する弁体支持部と、前記弁体支持部から前記弁体の進退方向に沿って前記
ピュアスチーム又はクリーンスチームの流入側に延びる円筒状の内壁面を有する円筒流入部とを有し、前記弁体支持部は、弁座上面部と、前記弁座上面部から断面視にて湾曲状に延びる開口縁部とを有し、前記弁体は、前記弁体の弁口閉鎖位置にて前記弁座の前記弁体支持部と接触して前記
ピュアスチーム又はクリーンスチームの流通を止める接触閉鎖部と、前記接触閉鎖部における前記円筒流入部側の閉鎖端からテーパ状に延出する流量絞り部とを有し、前記弁体の前記流量絞り部の外周面は、前記弁座の前記円筒流入部の内壁面に対し、前記弁体の前記流量絞り部と前記弁座との間の最短距離を、前記弁体の前記接触閉鎖部が前記弁座の前記弁体支持部から離間した前記弁体の進退方向における離間距離よりも小さくする所定の傾斜角度を有して配されてなることを最も主要な特徴とするものである。
【0022】
このような本発明のスチーム用調節弁において、前記流量絞り部の前記外周面は、前記流量絞り部の断面視にて直線状を呈するように配され、前記円筒流入部の内壁面に対する前記流量絞り部の前記外周面の傾斜角度は、2°以上5°以下に設定されていることが好ましい。
【0023】
また、前記弁体は、前記流量絞り部から更に延出し、前記弁座の前記円筒流入部に対して前記流量絞り部よりも大きな傾斜角度の外周面を備えた弁体先端部を有し、前記弁体の前記流量絞り部は、前記接触閉鎖部の前記閉鎖端から、前記弁開度が30%以上60%以下となる位置まで配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るスチーム用調節弁は、弁座及び弁体を備えた弁本体部と、弁開度の制御信号を出力する調節計と、調節計の制御信号に応じて弁体の位置制御を行うポジショナーとを有する。また、弁本体部の弁座は、弁体の弁口閉鎖位置にて弁体を接触させて支持する弁体支持部と、弁体支持部から弁体の進退方向に沿ってスチームの流入側に延びる円筒状の内壁面を有する円筒流入部とを有する。弁本体部の弁体は、弁体の弁口閉鎖位置にて弁座の弁体支持部と接触してスチームの流通を止める接触閉鎖部と、その接触閉鎖部における円筒流入部側の閉鎖端からテーパ状に延出する流量絞り部とを有する。
【0026】
更に本発明における弁体の流量絞り部の外周面は、弁座の円筒流入部の内壁面に対し、弁体の流量絞り部と弁座との間の最短距離を、弁体の接触閉鎖部が弁座の弁体支持部から離間した弁体の進退方向における離間距離よりも小さくする所定の傾斜角度を形成して配されている。
【0027】
このような構造を有する本発明のスチーム用調節弁であれば、調節弁の弁本体部がサニタリー配管に適した簡単な構造で形成されているにも関わらず、弁体が弁口閉鎖位置から所定の高さ位置まで上昇するときに、弁体の高さ位置に応じて弁座の弁体支持部と弁体の接触閉鎖部との弁体の進退方向における離間距離が比例的に大きくなっても、弁体の流量絞り部と弁座との間の最短距離をその離間距離よりも確実に小さく(狭く)することができる。
【0028】
それにより、流体の流量が小さい低流量範囲では、弁体の高さ位置の変化(言い換えると、弁開度の変化)に対して、弁体と弁座との間のスチームが流通可能な隙間の大きさの変化の割合を小さくできる。従って、例えば位置制御の分解能が高い高価なポジショナーを用いなくても、弁体の流量絞り部と弁座との間の最短距離をより細かく変化させて、スチームの流量制御を行うことができる。
【0029】
このため、本発明の弁本体部を採用することにより、調節計及びポジショナーを高価なものに変更しなくても、スチームの流量制御を従来よりも細かく高精度に行うことが可能となり、調節弁の制御性を、特に低流量範囲における制御性を効果的に高めることができる。
【0030】
特に、上述のように低流量範囲において弁体の流量絞り部と弁座との最短距離をより細かく変化させて制御できることにより、調節弁において制御できる最少のCv値を、従来の調節弁よりも大幅に小さくすることが可能となる。それにより、弁体のストロークを大きくしなくても、調節弁のレンジアビリティを、従来よりも広く確保することができる。
【0031】
このような本発明のスチーム用調節弁において、流量絞り部の外周面は、流量絞り部の断面視にて直線状を呈するように配されており、且つ、円筒流入部の内壁面に対する流量絞り部の外周面の傾斜角度は、2°以上5°以下に設定されていることが好ましい。これにより、弁体の流量絞り部と弁座との間の最短距離を、弁座の弁体支持部と弁体の接触閉鎖部との弁体の進退方向における離間距離よりも確実に小さくして、調節弁の低流量範囲における制御性を安定して高めることができる。
【0032】
また、本発明の弁体は、流量絞り部から更に延出し、弁座の円筒流入部に対して流量絞り部よりも大きな傾斜角度の外周面を備えた弁体先端部を有するとともに、弁体の流量絞り部は、接触閉鎖部の前記閉鎖端から、弁開度が30%以上60%以下となる位置まで配されている。これにより、弁開度が少なくとも30%以上となる範囲まで、弁体の流量絞り部と弁座との間の最短距離を細かく変化させることができるため、スチームの流量制御を高精度に行うことができる。
【0033】
更に、弁開度が60%よりも大きくなる範囲では、上述の弁体先端部が設けられているため、弁体の高さ位置の変化に対して、弁体と弁座との間のスチームが流通可能な隙間の大きさの変化の割合を大きくすることができる。それにより、調節弁において制御できる最大のCv値を容易に大きくできるため、広いレンジアビリティを安定して確保することができる。
【0034】
本発明のスチーム用調節弁において、弁本体部は分解・組立可能な簡単な構造を有するとともに、弁体の表面部がフッ素樹脂により形成されている。これにより、調節弁の弁本体部を分解して洗浄することができるため、サニタリー配管に好適に使用できる。更に、弁体の表面部がフッ素樹脂により形成されていることにより、弁本体部を分解した後に組み立てる際に、弁座に対して弁体を容易に滑らせながら所定の位置に安定して取り付けて弁本体部の組み立てを行うことができる。それにより、弁本体部の組立容易性を向上できるとともに、弁体や弁座が互いに擦れて傷つけ合うことも防止できる。
【0035】
また本発明の調節弁には、スチームの二次側における圧力、温度、流量の少なくとも1つを測定するセンサー部が配されており、調節計は、そのセンサー部から入力される入力信号と、予め設定される設定値とを比較して弁開度の制御を行うことができる。このように二次側における圧力等を測定して調節計にフィードバックすることにより、二次側の圧力等を所望の大きさに安定して自動的に制御できるとともに、二次側の圧力等の変化に対しても安定して対応することができる。
【0036】
上述のような本発明のスチーム用調節弁は、弁本体部にピュアスチーム又はクリーンスチームを流通させるピュアスチーム用又はクリーンスチーム用の調節弁として特に好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば、本発明において、調節計及びポジショナーの具体的な構成は特に限定されるものではなく、現在一般的に使用されている様々なタイプのものを用いることが可能である。
【0039】
ここで、
図1は、本実施形態に係るスチーム用調節弁の構成を示す概略構成図であり、
図2は、スチーム用調節弁の弁本体部を模式的に拡大して示す部分断面図である。
本実施形態のスチーム用調節弁1は、流体としてピュアスチーム又はクリーンスチームを流通させるサニタリー配管に配されるピュアスチーム用又はクリーンスチーム用調節弁1として形成され、調節弁1の下流となる二次側配管7の圧力を所定の一定の大きさに制御するために設けられる。
【0040】
本実施形態の調節弁1は、
図1に示すように、弁座20及び弁体30を備える弁本体部(ボディ)10と、設定される弁本体部10の弁開度に応じて弁開度の制御信号を出力する調節計2と、調節計2から入力される制御信号に応じて弁体30の位置を制御するためにエアー圧力を出力するポジショナー3と、ポジショナー3から供給されるエアー圧力に応じて弁座20に対して弁体30を昇降させる駆動部4と、弁体30の上下動に応じて基点を中心に回動することにより実際の弁開度を検出してポジショナー3にフィードバックするフィードバックレバー5とを有する。
【0041】
弁本体部10は、一次側配管6が接続されるスチーム流入口11と、二次側配管7が接続されるスチーム流出口12と、スチーム流入口11から流入したスチームをスチーム流出口12に流通させる弁口13とを有する。弁口13は、弁座20の略中央部に設けられており、この弁口13は、弁体30が挿入される上方側から見ると円形状を呈するように形成される。弁口13は、弁座20に対して弁体30が昇降して離間・接触することにより開閉される。
【0042】
調節計2は、例えばPLC等の図示しない制御部と電気的に接続されており、制御部において所望の弁開度や二次側のスチーム圧力等の情報が設定されると、その設定情報に基づく信号が制御部から調節計2に入力される。また、調節計2は、二次側のスチーム圧力を測定する圧力センサー部8に接続されており、測定された二次側のスチーム圧力の大きさが圧力センサー部8から調節計2に入力される。
【0043】
調節計2は、制御部から入力される設定値(目標値)と、圧力センサー部8から入力される実測値(出力値)とを比較して、実測値が設定値に近付くようにPID制御による弁開度のフィードバック制御を行い、その制御信号をポジショナー3に向けて出力する。この場合、調節計2は、弁開度の制御信号として、4mA〜20mAの電気信号を出力する。なお、本発明では、圧力センサー部8の他に又は圧力センサー部8に代えて、二次側のスチーム温度を測定する温度センサー部や、二次側のスチーム流量を測定する流量センサー部などを設けて、それらの測定結果を調節計2にフィードバックすることも可能である。
【0044】
本実施形態のポジショナー3は、電空ポジショナー(電気空気式バルブポジショナー)3として形成されており、調節計2から入力される電気信号を空気圧信号に変換して駆動部4に出力することにより、弁座20に対する弁体30の位置制御を行う。
【0045】
より具体的に説明すると、電空ポジショナー3は、図示しないエアコンプレッサーから、図示しないフィルターレギュレータを介して所定の空気圧力(圧縮空気)3aが供給され、また、調節計2から入力される電気信号(4mA〜20mA)に対して空気圧力を比例出力する。電空ポジショナー3から出力される空気圧力は、合成樹脂管3bを介して駆動部4のシリンダー部4aに供給される。
【0046】
駆動部4は、電空ポジショナー3から空気圧力が供給されるシリンダー部4aと、シリンダー部4aのピストン下部に配され、上方への付勢力を作用させるスプリング4bと、弁体30に接続されるとともに上下方向に往復動可能な作動軸4cとを有する。この駆動部4では、シリンダー部4aに供給される空気圧力とスプリング4bの付勢力との作用により作動軸4cを上下方向に移動させて、弁体30を昇降させる。
【0047】
すなわち、駆動部4は、電空ポジショナー3からシリンダー部4aに供給される空気圧力が増大することにより、作動軸4cを介して弁体30を下降させることができ、一方、シリンダー部4a内の空気圧力が減少することにより、作動軸4cを介して弁体30を上昇させることができる。従って、駆動部4は、電空ポジショナー3から供給される空気圧力の大きさに対応して弁体30を昇降させ、それによって、弁本体部10の弁開度を変化させることができる。
【0048】
フィードバックレバー5は、作動軸4cの上下動に応じて基点を中心に回動することにより作動軸4cの変位量を検出し、その変位量に基づいて弁本体部10の実際の弁開度が電空ポジショナー3にフィードバックされる。電空ポジショナー3は、フィードバックされる実際の弁開度と、設定される弁開度とが異なるときは、駆動部4に供給する空気圧力を補正して、実際の弁開度を設定の大きさに合わせることができる。
【0049】
次に、本実施形態の主要な特徴となる弁本体部10について、
図2〜
図6を参照しながら、更に詳細に説明する。
本実施形態の弁本体部10はL型形態に形成されており、弁座20及び弁体30を内部に備えるハウジング部14と、ハウジング部14から下方に垂設される垂直管部15と、ハウジング部14から水平方向に延びる水平管部16とを有する。また、垂直管部15の下端部には、スチームを弁本体部10に流入させるスチーム流入口11が設けられ、水平管部16の先端部には、スチームを弁本体部10から流出させるスチーム流出口12が設けられている。
【0050】
本実施形態の弁本体部10において、弁座20は、ステンレスで形成されている。この弁座20は、
図3に示すように、弁体30の昇降方向に対して直交する上面を備えた弁座上面部(弁体受け部)21と、弁座上面部21の内径側端部から面取りされたように断面視にて湾曲状に延びる開口縁部(弁座曲がり部)22と、開口縁部22からスチーム流入口11に向けて下方に延びる円筒流入部23とを有する。この場合、円筒流入部23の内壁面は、弁体30の進退方向と平行に配されて円筒状に形成される。
【0051】
また、弁座20の弁座上面部21と開口縁部22とが、弁体30が弁口13を閉鎖する弁口閉鎖位置に保持されている状態において弁体30が接触して弁体30を支持する弁体支持部25となる。一方、弁座20の開口縁部22から垂設される円筒流入部23は、弁体30が弁口閉鎖位置に保持されている状態において弁体30が離れている弁体非接触部となる。
【0052】
なお、本実施形態の弁座20において、弁座上面部21は、弁体30の昇降方向(進退方向)に対して直交する平坦な上面を備えているが、弁座上面部21の上面は、弁体30の昇降方向に対して直交して配されている必要はなく、例えば弁体30の昇降方向に直交する方向に対して少し傾斜する方向(略直交する方向)に沿って配されていても良い。
【0053】
また、本実施形態では、弁座上面部21と円筒流入部23との間に、断面視にて表面が湾曲状を呈する開口縁部22が設けられているが、本発明において、開口縁部22が呈する湾曲状表面の曲率などは特に限定されるものではない。更に、例えば開口縁部22は、滑らかなら湾曲状の表面を呈するのではなく、弁座上面部21と円筒流入部23との間に1つ又は複数の屈曲部が形成されるように設けられていても良い。また、弁座20の円筒流入部23は、当該円筒流入部23の内壁面が、弁体30の進退方向に沿うように略平行に配されていれば、弁体30の進退方向に対して僅かに傾斜するようにして形成されていても良い。
【0054】
弁体30(コンタード部とも言う)は、上述した駆動部4の作動軸4cの下端部に取り付けられており、電空ポジショナー3によって弁座20に対する高さ位置が制御される。本実施形態において、弁体30の上下方向におけるストロークは6mmに設定されている。この場合、弁体30が弁座20に接触する最も下端位置に保持されているときの弁開度を0%とし、弁体30が弁座20に接触している状態から6mm上昇した位置に保持されているときの弁開度を100%とする。
【0055】
本実施形態の弁体30は、作動軸4cに取着されるステンレス製の本体部31と、本体部31を包み込むように本体部31の周囲に形成されるフッ素樹脂製の表面部32とを有する。この弁体30の上端部には、弁本体部10のハウジング部14に密着して組み付けられてシール性を確保する略円錐台状のダイアフラム33が一体的に形成されている。このダイアフラム33は、ゴム製のバックアップゴム部33aと、バックアップゴム部33aの一面を被覆するとともに弁体30の表面部32と一体形成される薄肉状の皮膜部33bとを有する。
【0056】
この場合、弁体30の表面部32とダイアフラム33の皮膜部33bとを形成するフッ素樹脂としては、例えば、4フッ化エチレン樹脂(商品名:テフロンPTFE、フルオン等)、四フッ化エチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体樹脂(商品名:テフロンPFA)、四フッ化エチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルと六フッ化プロピレンの三元共重合体樹脂(商品名:テフロンEPE)、四フッ化エチレンと六フッ化プロピレンの共重合体樹脂(商品名:テフロンFEP)、四フッ化エチレンとエチレンとの共重合体樹脂(商品名:テフロンETFE、テフゼル)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(商品名:テフロンPVDF、カイナー)、トリフルオロモノクロロエチレンとエチレンの共重合体(商品名:テフロンECTFE)、モノフルオロエチレン樹脂(商品名:テフロンPVF)等を採用することが可能である。
【0057】
また、バックアップゴム部33aの材質としては、シリコンゴム(VMQ)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、イソプレンゴム、クロロスルフォン化ゴム、スチレンブタジエンゴム、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)等の合成ゴムを採用することが可能である。
【0058】
また、本実施形態の弁体30は、弁口閉鎖位置で保持されている状態で弁座20の弁座上面部21に接触する弁体接触面部35と、弁体接触面部35の内側から延びて弁座20の開口縁部22の断面形状に対応する断面形状を有する弁体曲がり部36と、弁体曲がり部36から下方に向けてテーパ状(円錐台状)に延出する流量絞り部37と、流量絞り部37の下端から屈曲部を介して略円錐形状に突出する弁体先端部38とを有する。
【0059】
本実施形態において、弁体30の弁体接触面部35と弁体曲がり部36とは、
図4に示すように、弁体30が弁口閉鎖位置で保持されている状態において弁座20に接触して弁口13を閉鎖する接触閉鎖部39を形成する。また、弁体30の流量絞り部37は、断面視において、流量絞り部37の外周面が、弁座20の円筒流入部23の内周面に対して、弁体30における接触閉鎖部39の円筒流入部23側の閉鎖端39aから、円筒流入部23との間の隙間を漸増させるように斜めに直線的に傾斜する傾斜角度αを有して形成されている。
【0060】
この場合、流量絞り部37の外周面が円筒流入部23の内周面に対して直線状に傾斜する傾斜角度αは、2°以上5°以下に設定されている。この傾斜角度αが2°以上であることにより、弁体30を弁口閉鎖位置から少し(例えば0.05mm程度)上昇させたときに、弁体30と弁座20との間にスチームを円滑に流通させることが可能な隙間を安定して形成できる。また、弁座20に対する弁体30の高さ位置に対応して、弁体30の流量絞り部37と弁座20との間に形成される隙間の大きさを適切に変化させることができるため、スチームの流量制御を高精度に安定して行うことが可能となる。
【0061】
また、上記の傾斜角度αが5°以下であることにより、例えば弁体30の上昇距離(言い換えると、弁体30の接触閉鎖部39が弁座20の弁体支持部25から離間した弁体30の進退方向における離間距離)に対して、弁体30の流量絞り部37と弁座20との間の最短距離を確実に小さくし、弁体30と弁座20との間を流れるスチームの流量を効果的に絞ることができる。特に本実施形態において、円筒流入部23の内周面に対する流量絞り部37の外周面の傾斜角度αは、2°に設定されることが好ましい。
【0062】
更に、弁体30の流量絞り部37は、弁体30における接触閉鎖部39の円筒流入部23側の閉鎖端39aから、弁開度が30%以上60%以下、好ましくは40%以上55%以下となる位置まで配されている。特に本実施形態の場合、弁体30の流量絞り部37は、上記の閉鎖端39aから弁開度が50%となる位置まで配されている。
【0063】
これにより、弁開度が50%となる範囲まで、弁体30の流量絞り部37と弁座20との間の最短距離を、ポジショナー3によって制御される弁体30の高さ位置に応じて細かく変化させて、後述するようにスチームの流量制御を高精度に行うことができる。更に、弁開度が50%よりも大きくなる範囲では、弁体30の高さ位置の変化に対するスチームの流量変化の割合を大きくできるため、調節弁1で制御可能な最大のCv値を容易に大きくすることができる。
【0064】
一方、弁体30の弁体先端部38は、円筒流入部23の内周面に対して50°以上90°未満の傾斜角度で直線状に傾斜する外周面を有しており、本実施形態では、円筒流入部23の内周面に対する弁体先端部38の外周面の傾斜角度は60°に設定されている。これにより、弁体30を上昇させて、弁体30の流量絞り部37を弁座20の円筒流入部23から抜出させることにより、弁体30の高さ位置の変化に対するスチームの流量変化の割合を安定して大きくすることができる。
【0065】
更に、本実施形態における弁本体部10は、弁本体部10の外側に装着している金属製の分割バンド17を外すことにより弁本体部10を分解して、弁座20と、ダイアフラム33が一体形成されている弁体30とを取り外して分離でき、また、再度組み立て分割バンド17で固定することにより元の状態に戻すことが可能な単純な構造を有する。これにより、弁本体部10の洗浄を容易に行うことができるため、本実施形態の調節弁1を、メンテナンス性が求められるサニタリー配管に好適に用いることができる。また、弁本体部10が単純な構造で形成されていることにより、弁本体部10が高温でも壊れ難くなるとともに、調節弁1の低コスト化が図れる。
【0066】
特にこの場合、弁体30の表面部32が上述したようなフッ素樹脂で形成されていることにより、弁本体部10を分解した後に組み立てる際に、弁座20に対して弁体30を容易に滑らせながら所定の位置に安定して取り付けて、弁本体部10の組み立てを行うことができる。それにより、弁本体部10の組立容易性を向上できるとともに、弁体30と弁座20が互いに擦れて傷つけ合うことも防止できる。
【0067】
上述のような弁本体部10を有する本実施形態の調節弁1では、ポジショナー3が調節計2から入力される制御信号に応じて所定の空気圧力を出力することにより、上述のように弁体30の位置制御が行われる。この場合、
図2〜
図4に示すように、弁体30をポジショナー3によって弁座20に接触する弁口閉鎖位置に保持することにより、弁口13を閉鎖して、クリーンスチーム等の流通を止めることができる。
【0068】
また、ポジショナー3から出力する空気圧力を変化させることにより、弁体30を、弁口閉鎖位置から上昇させて、設定される所要の高さ位置で保持することができる。このとき、本実施形態の弁本体部10では、弁体30に流量絞り部37が設けられているため、以下に詳しく説明するように、弁体30が弁口閉鎖位置から所定の高さ位置(本実施形態の場合、弁開度が50%となる高さ位置)に上昇するまで、弁体30と弁座20との間を通るスチームの流量を絞って、弁体30の高さ位置の変化に対する流量変化の割合を小さくすることができる。
【0069】
例えば従来の調節弁70の場合、
図7及び
図8を参照しながら説明したように、弁体75を昇降させることが可能なストロークが本実施形態と同じ6mmであるとき、弁体75を弁座74から6mm上昇させた位置で保持したときの弁開度が100%(全開)となる。また、弁体75を弁座74から1mm上昇させた位置で保持すると、弁体75の進退方向における弁体75と弁座74との間の離間距離は1mmとなるとともに、弁開度が100%の1/6の大きさである16.7%となる。
【0070】
これに対して、本実施形態の場合、
図2〜
図4に示すように、弁体30を弁口閉鎖位置で保持したときの弁開度は0%であり、弁体30の弁体接触面部35と弁体曲がり部36とが、弁座20の弁座上面部21と開口縁部22とに接触して(密接して)、スチームが弁体30と弁座20との間を流通することを阻止している。また
図5に示したように、弁体30を弁座20から6mm上昇させた位置で保持したときの弁開度は100%(全開)となる。
【0071】
更に、
図4及び
図5に、弁体30を弁座20に接触させたときの弁体30の位置を実線又は基準仮想線L0で示すとともに、弁体30を弁座20から1mm毎の異なる高さ位置で保持したときの弁体30の位置を、高さ位置が低い方から順番に第1仮想線L1〜第5仮想線L5で示す。
図4及び
図5に示したように、弁体30を、例えば弁座20から1mm上昇させた位置で保持した場合(
図4及び
図5の第1仮想線L1)、弁体30の弁体接触面部35は弁座20の弁座上面部21から上昇するため、弁体30の進退方向における両者間の離間距離は従来と同様に1mmとなる。一方、弁体30の流量絞り部37は弁座20から大きく離れておらず、弁体30の流量絞り部37と弁座20との間の最短距離(最小の隙間の大きさ)を、弁体30の上昇距離(1mm)よりも極めて小さくすることができる。
【0072】
例えば、流量絞り部37の外周面が円筒流入部23の内周面に対して傾斜する傾斜角度αが2°に設定されている場合、弁体30を弁座20から1mm上昇させた位置で保持したときに、弁体30の流量絞り部37と弁座20との間の最短距離(両者間に形成される最小の隙間の大きさ)D1を0.06mmと小さくすることができる。更に、弁体30を弁座20から2mm上昇させた位置で保持したときには(
図4及び
図5の第2仮想線L2)、弁体30の流量絞り部37と弁座20との間の最短距離D2を0.35mmにすることができる。
【0073】
このように本実施形態では、弁体30に流量絞り部37が所定の範囲に設けられていることにより、弁開度が50%となるまでは、弁体30の高さ位置の変化(弁開度の変化)に対する弁体30と弁座20間の最短距離の変化の割合(言い換えると、スチーム流量の変化の割合)を小さくすることがきる。特にこの場合、弁開度が30%以下となる低流量範囲では、弁体30の高さ位置の変化(弁開度の変化)に対して、弁体30と弁座20間の最短距離の変化の割合(スチーム流量の変化の割合)を非常に小さくすることができる。
【0074】
これにより、調節弁1の弁本体部10が簡単な構造を保持しつつ、例えばポジショナー3の位置制御の分解能があまり高くない場合でも、弁開度が50%以下(特に30%以下)の範囲において、弁体30の流量絞り部37と弁座20との間の最短距離をより細かく変化させて制御することができる。その結果、調節弁1における低流量域でのスチーム流量の制御を従来よりも細かく高精度に行うことが可能となり、二次側のスチーム圧力の制御性を効果的に向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態の調節弁1と、
図7及び
図8に示した従来の調節弁70とについて、弁開度とCv値との関係を表す流量特性を比較するグラフを
図6に示す。この
図6において、実線が本実施形態の調節弁1の流量特性を表しており、二点鎖線が従来の調節弁70の流量特性を表している。
【0076】
図6に示したように、本実施形態の調節弁1では、弁開度が50%以下の範囲において、弁体30と弁座20間を流れるスチームの流量を小さくすることができるため、本実施形態における流量特性は、従来の調節弁70の流量特性よりも下方側に移動し、調節弁1によって制御可能な最少Cv値の大きさを従来の調節弁よりも小さくすることができる。実際に、従来の調節弁70で得られる最少Cv値は1.5であるのに対して、本実施形態の調節弁1で得られる最少Cv値は0.4となり、従来よりも半分以下の大きさにすることができる。
【0077】
一方、本実施形態の調節弁1では弁体30の流量絞り部37が所定の範囲に設けられていることにより、弁開度が60%を超える高い流量範囲においては、弁開度の変化に対する流量の変化の割合を大きくすることができ、それによって、調節弁1によって制御可能な最大Cv値の大きさを従来の調節弁70と略同等の大きさにすることができる。実際に、従来の調節弁70で得られる最大Cv値は15.0であるのに対して、本実施形態の調節弁1で得られる最大Cv値は14.6となる。
【0078】
その結果、最大Cv値を最少Cv値で除して得られる調節弁1のレンジアビリティは、36.5(=14.6/0.4)となるため、従来の調節弁70におけるレンジアビリティが10(15.0/1.5)であることに比べると、本実施形態の調節弁1ではレンジアビリティを従来よりも大幅に拡大することができる。