(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674867
(24)【登録日】2020年3月11日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/467 20060101AFI20200323BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20200323BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20200323BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20200323BHJP
【FI】
H01L23/46 C
H05K7/20 D
H05K7/20 F
H05K1/02 F
H05K1/02 Q
H02M7/48 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-165294(P2016-165294)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-32803(P2018-32803A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】濱埜 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正
(72)【発明者】
【氏名】広田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】高田 直樹
【審査官】
川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−046314(JP,A)
【文献】
特開2009−246063(JP,A)
【文献】
特開2015−084609(JP,A)
【文献】
特開2011−097824(JP,A)
【文献】
特開2015−079773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/34−23/36
H01L 23/373−23/427
H01L 23/44
H01L 23/467−23/473
H02M 7/48
H05K 1/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体と、
前記半導体を冷却する冷却フィンと、
前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、
前記主回路基板に形成され、電流を流す配線パターンと、
前記配線パターンから分岐して形成され、前記配線パターンの熱を拡散するためのパターンと、
前記パターンに接触して固定され、空気より熱伝導率が高く絶縁を確保できる第1の部材と、
前記第1の部材に接触して固定され、空気より熱伝導率が高い第2の部材と、を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第2の部材は前記冷却フィンと接触していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置であって、
前記電力変換装置の使用状態において、底面の開口部から吸入された空気が上面の開口部から排出される場合、前記第2の部材は前記冷却フィンの下部と接触していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第2の部材は前記冷却フィンを収納する本体ケースと接触していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記電力変換装置が設置され、底面の開口部から吸入された空気が上面の開口部から排出される場合、前記第2の部材は前記本体ケースの下部と接触していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の電力変換装置であって、
前記第2の部材は金属であることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置において、小型化、低価格化に加え、近年は高機能化、多重定格化も進められてきている。高機能にするためにはそれだけ精度の高い部品すなわち価格の高い部品を実装しなくてはならず、また部品点数も多くなることが大半である。また、多重定格に対応するためには標準定格よりも大きな電流を流す必要がある。
【0003】
また、半導体装置を冷却する技術として、例えば特許文献1がある。特許文献1には、「LSIチップの表面の金バンプがパッケージ基板の表面に電気的に接続されており、パッケージ基板の裏面のハンダバンプが実装基板に電気的に接続されている半導体装置であって、放熱体が、LSIチップの裏面に熱伝導媒体を介して接触されており、放熱体の一部が、実装基板に固定されている」ことが開示されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−121660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体の冷却に関しては、例えば特許文献1に記載のように、高効率な冷却方法が多数存在するが、特許文献1は半導体の発熱にのみ着目した冷却構造である。しかし、近年の電力変換装置は、半導体の発熱だけでなく、電力変換装置内部の基板、特に基板の配線パターンの発熱が無視できなくなってきている。そのため、半導体の冷却だけでは基板の温度仕様を満足できない場合があり、電力変換装置内部の基板を冷却することが必要である。
【0006】
基板の配線パターンの発熱を抑制して大電流を流すために、幅広い配線パターンを形成することが考えられる。しかし、電力変換装置の小型化が進むにつれて内部の基板関係も小型化され、従来機種のように幅広い配線パターンは作りづらくなってきている。そのため、基板の温度仕様を満たすという観点で、電流を流す配線パターンの断面積を考えると、電力変換装置が多重定格仕様である場合、標準定格の電流では若干の余裕があるものの、最大定格の電流となると標準定格と同じ配線パターンでは余裕がない。そのため、配線パターンのジュール発熱により基板の温度仕様を満たせなくなる場合がある。価格に余裕があれば耐熱温度が高い高Tg基板を用いることにより温度仕様を従来から上げ、温度仕様を満たせる場合があるが、それでは低価格化に反することになる。
【0007】
基板を冷却するための別の方法として、基板の配線パターンにスルーホールを設け、銅またはアルミなどの金属からなる棒状などの物体で電流を流す方法もある。しかしながら、棒状の物体が基板上の宙を舞うため、小型化に反することになる。
【0008】
このような事情を鑑みて、本発明の目的は、小型化、低価格化を確保しながら、電力変換装置の主回路基板の冷却性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
半導体と、前記半導体を冷却する冷却フィンと、前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、前記主回路基板に形成され電流を流す配線パターンと、前記配線パターンに接触して固定され空気より熱伝導率が高く絶縁を確保できる第1の部材と、前記第1の部材に接触して固定され空気より熱伝導率が高い第2の部材と、を備えることを特徴とする電力変換装置である。
【0011】
また、半導体と、前記半導体を冷却する冷却フィンと、前記半導体を駆動する回路を有する主回路基板と、前記主回路基板に形成され電流を流す配線パターンと、前記配線パターンから分岐して形成され前記配線パターンの熱を拡散するためのパターンと、前記パターンに接触して固定され空気より熱伝導率が高く絶縁を確保できる第1の部材と、前記第1の部材に接触して固定され空気より熱伝導率が高い第2の部材と、を備えることを特徴とする電力変換装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力変換装置の小型化、低価格化を確保しながら主回路基板の冷却性能を向上させることができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】電力変換装置を底面右側より見た鳥瞰図である。
【
図2】電力変換装置を上面左側より見た鳥瞰図である。
【
図3】実施例1の電力変換装置の断面内部図である。
【
図5】実施例1における主回路基板、半導体、熱伝導率が高い部材、熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材を組立てた物を裏から見た図である。
【
図6】実施例1、実施例2における主回路基板、半導体、熱伝導率が高い部材、冷却フィン、熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材を組立てた物を右側面から見た図である。
【
図7】実施例2における主回路基板、半導体、熱伝導率が高い部材、熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材を組立てた物を裏から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、
図2は、電力変換装置の外観概略図を示す。
図1は、電力変換装置を底面右側より見た鳥瞰図である。また、
図2は、電力変換装置を上面左側より見た鳥瞰図である。電力変換装置の使用状態では、表面カバー2を正面手前に配置し、冷却フィン8を後ろ側(壁側)に配置し、本体カバー4の開口部4bがある面を下側に配置して用いる。本明細書における底面、上面、右側、左側等は、電力変換装置の使用状態を正面から見た場合を基準としている。
【0016】
初めに、従来の電力変換装置について説明する。
図8は従来の電力変換装置の内部図である。
図9は従来の電力変換装置を分解した図である。なお、
図1、
図2に示した外観概略図については、従来でも本実施例でも同じである。
【0017】
まず、
図9において、電力変換装置は、表面カバー2、本体ケース3、本体カバー4、冷却ファン7、冷却フィン8、半導体9、主回路基板10を有する。半導体9は、入力された交流電力を直流電力に変換し、変換された直流電力を交流電力に変換する。主回路基板10は、半導体9を駆動する回路を有する。主回路基板10及び半導体9は、本体カバー4に周囲を覆われる。
【0018】
また、本体カバー4内部の半導体9が接続される冷却フィン8は、本体ケース3に取付けられ、周囲を覆われる。半導体9で発生した熱は冷却フィン8に伝わり、冷却フィン8は本体ケース3背面に取り付けられた冷却ファン7によって強制空冷される。
【0019】
ここで、主回路基板10の冷却について述べる。
図8において、空間11は、半導体9によって形成され、冷却フィン8の表面と主回路基板10の裏面の隙間である。また、空間12は、主回路基板10の表面と本体カバー4の間に形成される。本体カバー4の底面の複数の開口部4bより吸入された空気が、空間11と空間12に分岐し、最終的に本体カバー4の上面開口部6を抜けて排気される自然対流によって、主回路基板10の表面と裏面が冷却される。
【実施例1】
【0020】
本実施例では、既に述べた従来の電力変換装置の基本的構成についての説明は省略し、相違点について述べる。
【0021】
図3は、本実施例の電力変換装置の断面内部図の例である。
図4は、本実施例の電力変換装置を分解したときの図である。
図4において従来の電力変換装置の分解したときの
図9と比較すると、空気より熱伝導率が高い部材15と、部材15の表面に空気より熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材13が追加されている。部材15は、例えばアルミや銅などの金属である。部材13は、例えば、放熱シート、熱伝導シートである。
【0022】
また、
図3において熱伝導率が高い物質15と、熱伝導率が高い物質15の表面に熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材13によって、主回路基板10と冷却フィン8の空間11が一部塞がれ、主回路基板10と冷却フィン8の熱伝導のやり取りが可能となっている。ここで、
図3に示したように空間11が完全に塞がれたのではない。
【0023】
図5は、本実施例における主回路基板10、半導体9、熱伝導率の高い物質15、熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材13を組立てた物を裏から見た図である。なお、部材13は、熱伝導率が高い物質15に隠れて見えていない。
図6は
図5を左方向から見た図である。
【0024】
実施例1について、
図5、
図6を用いて説明する。
図5では、主回路基板10の裏面の大電流を流す配線パターン14に、熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材13を接触させ、その絶縁が確保できる部材13に、熱伝導率が高い物質15を接触させ、その熱伝導率が高い部材15を冷却フィン8に接触固定させる。ここで、実施例1では冷却フィン8に接触固定させているが、本体ケース3であっても構わない。冷却フィンと本体ケースのうち温度が低い方に、部材15を接触させることにより、冷却性能を向上させることができる。
【0025】
また、電力変換装置の使用状態において、底面の開口部4bより吸入された空気が上面開口部6から排出されるため、冷却フィンや本体ケースは、上部よりも下部の温度が低い。そこで、本実施例では、冷却フィンや本体ケースの下部と部材15を接触固定させることにより、配線パターンの冷却性能を向上させることができる。
【0026】
従来は、大電流を流す配線パターン14も自然空冷で冷却していたが、自然空冷のような微細な風速ではあまり冷却効率は高くなく、場合によっては空気によって断熱に近い状態になっている。そのため、本実施例では、熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材13と熱伝導率が高い部材15を介して、配線パターン14と、冷却フィン8又は本体ケース3を接触させる。これにより、従来の自然空冷よりも冷却性能がよい構造を実現することができる。
【実施例2】
【0027】
本実施例では、上述した電力変換装置の基本的構成についての説明は省略し、実施例1との相違点について述べる。
【0028】
実施例1では、大電流を流す目的だけの配線パターン14に熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材13を接触させ、部材13に熱伝導率が高い部材15を接触させて熱を伝導させる。そして、部材15を冷却フィン8又は本体ケース3に接触させ放熱している。しかし、その冷却フィン8又は本体ケース3が配線パターン14と同等程度の温度であった場合、配線パターン14と冷却フィン8又は本体ケース3を接触させても配線パターン14の冷却効果はない。
【0029】
そこで、本実施例では
図7に示したように、配線パターン14から分岐するパターン16を設ける。パターン16は、配線パターンから枝分かれした熱を拡散するためのものである。つまり、パターン16は、放熱に用いるパターンであって電流を流すためではない。
【0030】
仮に、配線パターン14しか形成されていない場合に、配線パターン14に対向する冷却フィン8又は本体ケース3の部分が高温領域17であったとすると、配線パターン14から冷却フィン8又は本体ケース3に熱は逃げない。そこで、パターン16を用いて冷却フィン8又は本体ケース3の比較的冷えた領域18に熱を拡散移送する。その領域18では、冷却フィン8又は本体ケース3は配線パターン14やパターン16よりも温度が低いので、パターン16を部材13と部材15を介して冷却フィン8又は本体ケース3に接触させることにより、配線パターン14、パターン16の熱が冷却フィン8又は本体ケース3に伝えられる。よって、実施例1より、基板の冷却に効果的である。
【0031】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
2・・・表面カバー
3・・・本体ケース
4・・・本体カバー
6・・・本体カバーの上面開口部
7・・・冷却ファン
8・・・冷却フィン
9・・・半導体
10・・・主回路基板
11・・・冷却フィンの表面と主回路基板の裏面の間に作られた空間
12・・・主回路基板の表面と本体カバーの間に作られた空間
13・・・熱伝導率が高く尚且つ絶縁が確保できる部材
14・・・主回路基板の裏面の大電流を流す配線パターン
15・・・熱伝導率が高い部材
16・・・熱を拡散するためのパターン
17・・・冷却フィンまたは本体ケースの高温領域
18・・・冷却フィンまたは本体ケースの低温領域