(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674869
(24)【登録日】2020年3月11日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】ウェーハ搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20200323BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G49/07 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-167475(P2016-167475)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-37475(P2018-37475A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】505099772
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクマニファクチャ&サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】西村 英里子
【審査官】
杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−319890(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/158384(WO,A1)
【文献】
特開2014−116440(JP,A)
【文献】
特開昭64−022042(JP,A)
【文献】
特開2012−116647(JP,A)
【文献】
特開2003−273188(JP,A)
【文献】
特開昭63−053943(JP,A)
【文献】
特開平09−097825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを格納する格納箱からウェーハを取り出し、当該取り出されたウェーハを、ウェーハを指定の位置に搬送するロボットと、当該ロボットの移動方向を規定する走行軸と、前記ロボット及び前記走行軸を空気清浄空間内に収容する箱状体と、前記箱状体の天井に前記箱状体内に清浄な空気を導入するファンフィルタユニットと、当該ファンフィルタユニットを制御する制御装置を備えたウェーハ搬送装置において、
前記箱状体の内部空間であり、前記走行軸の端部より、前記走行の軸の端部に対向する前記箱状体の内壁面側であって、前記ロボットによって搬送されるウェーハの移動軌道より前記箱状体の床面側に、異物吸着部材を配置し、
前記制御装置は、前記ロボットにウェーハが搭載されていない状態で、前記ウェーハの搬送時より送風量を上げることを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記箱状体の内部空間であり、前記走行軸の端部より、前記走行の軸端部に対向する前記箱状体の内壁面側であって、前記ロボットによって搬送されるウェーハの移動軌道より前記箱状体の床面側に、帯電体を設置したことを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記箱状体の内部空間であり、前記走行軸の端部より、前記走行の軸端部に対向する前記箱状体の内壁面側であって、前記ロボットによって搬送されるウェーハの移動軌道より前記箱状体の床面側に、粘着物を設置したことを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項4】
請求項1おいて、
前記ロボットに取り付けられる圧縮空気排出機構を備え、
前記制御装置は、前記ロボットを走行軸方向に移動させながら前記床面に向かって圧縮空気を排出するように、前記圧縮空気排出機構を制御することを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項5】
ウェーハを格納する格納箱からウェーハを取り出し、当該取り出されたウェーハを、ウェーハを指定の位置に搬送するロボットと、当該ロボットの移動方向を規定する走行軸と、前記ロボット及び前記走行軸を空気清浄空間内に収容する箱状体を備えたウェーハ搬送装置において、
前記箱状体の内部空間であり、前記走行軸の端部より、前記走行の軸の端部に対向する前記箱状体の内壁面側であって、前記ロボットによって搬送されるウェーハの移動軌道より前記箱状体の床面側に、異物吸着部材を配置し、
前記ロボットの前記床面に対向する位置に設置されるファンと、前記ロボットに取り付けられ、前記ウェーハの移動軌道と前記ファンとの間の隔壁となる板状体を備えたことを特徴とするウェーハ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェーハを処理装置内へ搬入または搬出するためのロボットを格納するウェーハ搬送装置に係り、特に搬送経路における異物低減が可能なウェーハ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野では、ウェーハへの異物付着抑制の要求がある。一般に、半導体製造、検査、計測、観察等のウェーハ処理装置の試料室は高真空に維持されている。そのため、ウェーハは処理装置に併設された局所クリーン化搬送装置(ミニエンバイロメント装置、以下ミニエン装置という)を介して格納容器から試料室に搬送される。ミニエン装置内は、その内部空間に、ダウンフローを供給し内圧を高めることによって、外部からの異物の侵入を抑制している。特許文献1には、ミニエン装置内を移動するロボットの走行装置を、側壁に設けることによって、ファンフィルタユニットから排気口に至るまでのダウンフローにとっての障害物をなくし、ダウンフローによる清浄化効果を高めたウェーハ搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4909919号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、ミニエン装置の内部空間にはウェーハを搬送するロボットが搭載されている。ロボットは、格納容器からウェーハを取り出し、処理装置へと搬送する。また、処理装置での処理が終わると、ロボットは処理装置からウェーハを取り出し、格納容器に収納する。このウェーハ搬送動作中におけるロボットの動作により、ミニエン装置床面の異物(チリ等)が巻き上がり、ウェーハに異物が付着する可能性がある。
【0005】
以下に、ロボットの動作に起因して巻き上がる可能性のある異物の巻き上がりの抑制を目的とするウェーハ搬送装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための一態様として、ウェーハを格納する格納箱からウェーハを取り出し、当該取り出されたウェーハを、ウェーハを指定の位置に搬送するロボットと、当該ロボットの移動方向を規定する走行軸と、前記ロボット及び前記走行軸を空気清浄空間内に収容する箱状体を備えたウェーハ搬送装置であって、前記箱状体の内部空間であり、前記走行軸の端部より、前記走行の軸の端部に対向する前記箱状体の内壁面側であって、前記ロボットによって搬送されるウェーハの移動軌道より前記箱状体の床面側に、異物吸着部材を配置したウェーハ搬送装置を提案する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、ロボットの動作に起因して巻き上がる可能性のある異物の巻き上がりの抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】局所クリーン化搬送装置(ミニエン装置)の一例を示す図。
【
図2】異物吸着システムを備えたミニエン装置の一例を示す図。
【
図3】異物吸着システムを備えたミニエン装置の一例を示す図。
【
図4】異物吸着システムと異物排出システムを備えたミニエン装置の一例を示す図。
【
図5】異物吸着システムと異物排出システムを備えたミニエン装置の一例を示す図。
【
図6】異物吸着システムと異物排出システムを備えたミニエン装置の一例を示す図。
【
図7】異物吸着システムと異物排出システムを備えたミニエン装置の一例を示す図。
【
図8】異物排出システムの異物排出工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
主に半導体製造のためのプロセス装置や測定、検査装置等にウェーハを導入するためのミニエン装置内は高いクリーン度が要求される。しかしながら、
図1に例示するようなミニエン装置101に内蔵されているロボット102の動作により、ミニエン装置101床面の異物が巻き上がり、ウェーハ103に付着する可能性がある。
【実施例1】
【0010】
本実施例では、ミニエン装置101床面の異物の巻き上がりを抑制するウェーハ搬送装置について説明する。
【0011】
以下に説明する実施例では、ミニエン装置101内の異物の巻き上がりを効果的に抑制できる位置に、異物吸着システムおよび異物排出システムを備えたウェーハ搬送装置について説明する。
【0012】
上述のような構成によれば、装置外へ排出しきれずにミニエン装置101内に残った異物を、巻き上がる前に吸着することができるので、ウェーハ103への異物付着を回避することができる。また,異物をミニエン装置101内から排出することでミニエン装置101内のクリーン度を向上させることができる。
【0013】
以下、異物の巻き上がりを効果的に抑制し得るウェーハ搬送装置を、図面を用いて説明する。
【0014】
図1に例示するミニエン装置101は、収容空間を有する箱状体であって、当該箱状体の上部(天井)にクリーンエアを送風するFFU(ファンフィルタユニット)104を備え、FFU104から空気を導入し、その空気をミニエン装置101下面の排気口106から排出することにより、ダウンフローを形成している。ダウンフローによりミニエン装置101内は陽圧に保たれ、このクリーンな環境下でロボット102によりウェーハ103を搬送している。
【0015】
ウェーハ103は、ウェーハを複数枚格納できるウェーハ格納箱107に格納されており、ミニエン装置101に1台あるいは複数台搭載されたロードポート108に設置される。ロードポート108はミニエン装置101に付随するウェーハ格納箱107の処理機構であり、クリーンな環境下にてウェーハ格納箱107を開閉することでミニエン装置101内のロボット102がウェーハ103を取り出し、指定の位置へウェーハ103を搬送する。
【0016】
ミニエン装置101内はクリーンな環境が維持されているが、
図2に例示するようにロボット102の動作などにより異物203が発生することがある。
図2はウェーハ搬送装置の概要を示す図であり、
図2(A)は上視図(FFU側から見た図)、
図2(B)は側視図である。
【0017】
半導体デバイス上に形成されたパターンは微細化しており、異物203がウェーハ103に付着すると断線やショートなどによる動作不良といった不具合が発生するため、異物203対策が必要となる。
【0018】
ミニエン装置101内のロボット102の動作によって、装置外へ排出しきれなかった床面の異物203が巻き上げられウェーハ103に付着する。上部からはFFU104がクリーンな風を送っているため、ミニエン装置101下部の異物203を除去することでクリーン度を保つことができる。FFU104はコントローラ105によって風量が制御されている。
【0019】
ミニエン装置101内で異物203が溜まりやすい場所は床面の四隅の部分である。ミニエン装置101内には走行軸202があり、この軸に沿ってロボット102は移動を行う。異物203はロボット102の移動によって、ロボット102の走行軸202の両端部側に追いやられ、更に、追いやられた異物203が、走行軸202端部に面する壁面をガイドとして、巻き上げられる。よって、ロボット102の動作による集塵効果が期待でき、且つウェーハ表面に付着する可能性のある高さまで異物が舞い上がる前に異物を捕捉できる位置は、走行軸端部より壁面(走行軸端部に面する壁面)側であって、ウェーハ(の移動軌道)より床面側であると考えられる。更に異物が溜まりやすいのは、床面と壁面との間の角部であると考えられるので、
図2(A)(B)に例示するように、当該部分に帯電物201(静電吸着体)を設置し、ロボット102の動きに伴って発生する風によって、壁面側に追いやられる異物を効果的に吸着する。
【0020】
図3は、
図2の帯電体201に換えて、異物吸着部材として粘着物301を適用した例を示す図である。
図3(A)は上視図(FFU側から見た図)、
図3(B)は側視図である。
【0021】
以上のように、ロボットの移動によって発生する風は、異物を巻き上げる要因となるが、本実施例の帯電体201や粘着物301のような異物吸着部材を、異物が溜まり、且つ巻き上がり前に捕捉できる位置に設置することによって、異物の巻き上がりに基づく、異物のウェーハへの付着を効果的に抑制することができる。
【実施例2】
【0022】
上述のように帯電体201や粘着物301によって、異物203を吸着することで、ミニエン装置101内ではどんどん異物203が溜まっていく。実施例1ではミニエン装置101内における異物203の吸着について説明したが、その排出方法について以下に説明する。
【0023】
図4は、ロボット102を停止した状態(ミニエン装置101内にウェーハ103がない状態)のミニエン装置を示す図であり、
図4(A)は上視図、
図4(B)は側視図である。
図4は、異物吸着部材として帯電体201を設置した例を示している。ここでミニエン装置のコントローラ105からFFU104を制御することで送風量を上げ、帯電物201の電荷を除去(吸着OFF)し、自由に動けるようになった異物203をミニエン装置101外へと吹き飛ばす。コントローラ105によるFFU104の風量制御・ロボット102動作制御は動作回数あるいは動作時間のカウントにより行い、定期的な異物203排出を行う。
【0024】
図8は、ミニエン装置の動作時間と動作回数の少なくとも一方を管理し、規定回数、或いは規定時間に到達したときにロボットの動作を停止させ、メンテナンスモード(クリーニングモード)に自動的に切り換える工程を示すフローチャートである。例えば、ウェーハがないタイミングで
図8に例示するような処理を実行することによって、蓄積された異物を効果的に排除することができる。
【0025】
図4はロボット102が停止したままの状態を示しているが、
図5ではメンテナンスモードに切り替え、ロボット102に使用されている圧縮空気を利用して、異物203を吹き飛ばす例を示している。
図5(A)はミニエン装置の上視図、
図5(B)は側視図である。ミニエン装置101のロボット102はクリーンドライエアを使用しており、その圧縮空気の排出を利用して、
図4と同様に吸着状態から開放された異物203をミニエン装置101外へと吹き飛ばす。ロボット102は走行軸202上を移動し、圧縮空気により床面のクリーニングを行う。
【0026】
図6ではロボット102にファン601を取り付けて、ウェーハ103の搬送中に異物203を排出する例を示している。
図6(A)はミニエン装置の上視図、
図6(B)は側視図である。搬送動作によりロボット102がミニエン装置101の端部へ移動してきたとき、近接する帯電物201の吸着をOFFにし、ロボット102のファン601からの送風で異物203を装置外へ排出する。
【0027】
図7では
図6に例示した手法と同様にロボット102に取り付けたファン601からの送風で異物を装置外へ排出するだけではなく、ロボット102に羽701を取り付けることによって、異物203の巻き上がりを防止する例を示している。
図7(A)はミニエン装置の上視図、
図7(B)は側視図である。本例では、ロボット102に羽701が取り付けられ、更にファン601は、羽701に支持されるように取り付けられている。このように、ウェーハの移動軌道と、ファン601との間に、異物の巻き上がりを阻止する板状体を設けることによって、異物203が上へと巻き上がることなく排出される。羽701は、
図7(b)に例示するように、ファン601より大きく、且つ上下空間を大きく遮断する隔壁となるような板状体とすることが望ましい。
【符号の説明】
【0028】
101…ミニエン装置、102…ロボット、103…ウェーハ、104…FFU、105…コントローラ、201…帯電物、202…走行軸、203…異物、301…粘着物、601…ファン、701…羽