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特許6674900車両を遠隔停止させるための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6674900
(24)【登録日】2020年3月11日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】車両を遠隔停止させるための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/04 20130101AFI20200323BHJP
【FI】
   B60R25/04
【請求項の数】34
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-556977(P2016-556977)
(86)(22)【出願日】2015年3月9日
(65)【公表番号】特表2017-510189(P2017-510189A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】GB2015050675
(87)【国際公開番号】WO2015136252
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】1404209.7
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】505406615
【氏名又は名称】イー2ブイ テクノロジーズ(ユーケー)リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】ガリー スチムソン
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート ガイ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ヒックス
【審査官】 寺谷 大亮
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0173120(US,A1)
【文献】 米国特許第05907290(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0093180(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0024827(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02626662(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0223641(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00−25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを備える車両を遠隔停止するための車両停止装置であって、
最大出力が1MWを超える高周波信号を生成するように構成された、マグネトロンである高周波エネルギ源と、
エフェクト信号パッケージを適用することで前記高周波信号を変調するモジュレータを備え、前記エフェクト信号パッケージが複数の個別の異なるエフェクト信号よりなり、各エフェクト信号がパルス列を備え、前記エフェクト信号パッケージが車両に非固有であり、更に、
前記エフェクト信号パッケージによる変調信号を遠隔車両に送信し、当該車両のエンジン管理システムに作用させて該エンジンを停止させるためのアンテナを備えており、
前記エフェクト信号パッケージによる変調信号が、高周波エネルギの単発バーストとして送信される、自動車停止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記エフェクト信号パッケージが一連のエフェクト信号を備え、各エフェクト信号の各パルス列が、それぞれ異なるパルス幅、異なるパルス反復周波数及び異なるパルスグループの少なくとも1つを有する、装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置であって、前記アンテナが、垂直方向に電界分極する変調信号を生成する、装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の装置であって、前記アンテナが、水平方向に電界分極する変調信号を生成する、装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置であって、前記高周波信号の最大出力が1MW〜5MWの範囲内にある、装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の装置であって、前記高周波エネルギ源の周波数が1〜2GHz又は2〜4GHZのいずれかである、装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載の装置であって、作動時における実際の周波数が3MHz以下の帯域幅を有する、装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の装置であって、前記エフェクト信号のパルス列が、100ナノ秒〜10ナノ秒の範囲内のパルス幅、50Hz〜2kHzの範囲内のパルス反復周波数、又は1つのグループが1〜20個のパルスで構成されるパルスグループの少なくとも1つを有する、装置。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の装置であって、前記エフェクト信号パッケージが、最大で数十個のエフェクト信号を備える、装置。
【請求項10】
請求項に記載の装置であって、前記エフェクト信号パッケージが、最大で5個のエフェクト信号を備える、装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置であって、前記モジュレータに対して制御信号を送信すると共に、オペレータインターフェースからの信号を受信する制御ユニットを備える、装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置であって、前記エフェクト信号パッケージに関する情報を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶させるべき、アップデートされたエフェクト信号パッケージ情報またはアップデートされたエフェクト信号情報を受信するインプットとを備える、装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置であって、1セットのエフェクト信号パッケージと、該セットから得られる複数のエフェクト信号パッケージとから、使用のための1つのエフェクト信号パッケージを選択するセレクタとを備える、装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置であって、前記エネルギ源の周波数を既定の周波数帯域内から使用者が選択可能である、装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置であって、前記エフェクト信号が、前記エフェクト信号パッケージにおける既定配列、ランダム配列及び疑似ランダム配列のいずれか1つを有する、装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置であって、前記エフェクト信号パッケージにおいて、各エフェクト信号が一反復する、装置。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置であって、前記エフェクト信号パッケージ内で、少なくとも1つのエフェクト信号が繰り返される、装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、前記エフェクト信号が、同一配列、異なる既定配列、ランダム配列及び疑似ランダム配列のいずれか1つの配列にて繰り返される、装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の装置であって、前記エフェクト信号パッケージによる変調信号が、高周波エネルギ源の単発バーストにより変調され、該変調が繰り返し可能である、装置。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の装置であって、車両への備え付け又は持ち込みが可能である、装置。
【請求項21】
エンジンを備える車両を遠隔停止させるための方法であって、
マグネトロンである高周波エネルギ源から、最大出力が1MWを超える高周波信号を生成するステップと、
各々がパルス列を備える複数の個別の異なるエフェクト信号で構成された、車両に非固有のエフェクト信号パッケージを適用して前記高周信号を変調するステップと、
エフェクト信号パッケージによる変調信号を遠隔車両に送信し、当該車両のエンジン管理システムに作用させて該エンジンを停止させるステップと、
を備えており、
前記エフェクト信号パッケージによる変調信号を、高周波エネルギの単発バーストとして送信する、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記エフェクト信号パッケージが、一連のエフェクト信号を備え、各エフェクト信号の各パルス列が、それぞれ異なるパルス幅、及び/又は異なるパルス反復周波数、及び/又は異なるパルスグループを有する、方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の方法であって、前記アンテナを、垂直方向に電界分極する変調信号を生成するよう構成する、方法。
【請求項24】
請求項2123のいずれか一項に記載の方法であって、前記高周波信号の最大出力を、1MWから5MWの範囲内とする、方法。
【請求項25】
請求項2124のいずれか一項に記載の方法であって、前記高周波エネルギ源の周波数を、1〜2GHz又は2〜4GHZのいずれかとする、方法。
【請求項26】
請求項2125のいずれか一項に記載の方法であって、前記エフェクト信号パッケージに関する情報を記憶する記憶手段を使用し、アップデートされたエフェクト信号パッケージ情報又はアップデートされたエフェクト信号情報を受信し、そのアップデートされたエフェクト信号パッケージ又はアップデートされたエフェクト信号を前記記憶手段に記憶する、方法。
【請求項27】
請求項2126のいずれか一項に記載の方法であって、1セットのエフェクト信号パッケージと、該セットから得られる複数のエフェクト信号パッケージから、使用のための1つのエフェクト信号パッケージを選択するセレクタを使用する、方法。
【請求項28】
請求項2127のいずれか一項に記載の方法であって、前記エネルギ源の周波数を既定した周波数帯域内から使用者により選択可能とする、方法。
【請求項29】
請求項2128のいずれか一項に記載の方法であって、前記エフェクト信号が、前記エフェクト信号パッケージにおける既定配列、ランダム配列及び疑似ランダム配列のいずれか1つを有する、方法。
【請求項30】
請求項2129のいずれか一項に記載の方法であって、前記エフェクト信号パッケージにおいて、各エフェクト信号を一反復させる、方法。
【請求項31】
請求項2129のいずれか一項に記載の方法であって、前記エフェクト信号パッケージ内で、少なくとも1つのエフェクト信号を繰り返す、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、前記エフェクト信号を、同一配列、異なる既定の配列、ランダム配列及び疑似ランダム配列のいずれか1つの配列にて繰り返す、方法。
【請求項33】
請求項2132のいずれか一項に記載の方法であって、前記エフェクト信号パッケージによる変調信号を、高周波エネルギ源の単発バーストで送信し、この変調を繰り返す、方法。
【請求項34】
請求項2133のいずれか一項に記載の方法であって、請求項1〜20のいずれか一項に記載の装置を車両に持ち込むことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を遠隔停止させるための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
法執行目的及び安全確保の、車両を停止可能とすることへの需要がある。これは、致命的な事故に到りかねない方法でしか達成することができず、望ましい結果をもたらすものではなく、第三者や警察官に危害を与え、巻き添え事故を生じさせかねない。
【0003】
致命的な事故を生じさせずに車両を停止させる方法の1つとして、ターゲット車両のタイヤを損傷させるための機械的手段を配置することが挙げられるが、これは搭乗者に危害を与えかねない上に配置も困難である。
【0004】
車両を停止させる別の方法として、高出力広帯域マイクロ波又はVHF源を使用して、ターゲット車両に電磁パルスを送信することが挙げられるが、信号が広帯域であるために指向性が低く、車両への損傷、搭乗者及び第三者に危害を与えかねない。また、例えば、ペースメーカーを装着している人は、特に被害を受けやすい。
【発明の概要】
【0005】
第1態様において、本発明は、エンジンを備える車両を遠隔停止するための車両停止装置であって、高周波信号を生成するための高周波エネルギ源と、エフェクト信号パッケージを適用することで高周波信号を変調するモジュレータとを備え、エフェクト信号パッケージが複数の個別のエフェクト信号よりなり、各エフェクト信号がパルス列を備え、エフェクト信号パッケージが車両に非固有であり、更に、遠隔車両のエンジンを停止させるためにエフェクト信号パッケージによる変調信号を遠隔車両に送信し、当該車両のエンジン管理システムに作用させて該エンジンを停止させるためのアンテナを備える自動車停止装置を提供する。
【0006】
近年の車両エンジンは、センサやコンピュータシステムなどの電子部品により制御されている。エフェクト信号パッケージによる変調信号は、ガソリンの供給機能及び/又は供給のタイミングなどエンジン管理システムの作動を中断させることで、エンジンを停止させ、あるいは、エンジンの作動力を低下させる。エフェクト信号パッケージは、複数の個別エフェクト信号よりなり、ターゲット車両毎に異なる効果を発揮する多様なエフェクト信号を送信するため、特定の車種や車両モデルに限定されない。従って、エフェクト信号パッケージは、多様な車種のエンジンシステムに対応可能であり、ターゲットとする車種又は車両モデルに関する情報を予め取得することなしにターゲット車両を停止させることができる。車両停止装置、特定のパルス波形を選択するオペレータ、又は車両の属性に対応する他の放射特性を要しないことから、迅速な起動が可能となる。本発明において、車両の誤認は問題とならない。距離、速度、環境又はその他の要因によりターゲット車両を特定できない場合においても車両停止装置を用いることができる。
【0007】
本発明に係る装置は、警察官や保安官などのオペレータが疑義のある車両を一時停止及び/又は停止させるために用いることができる。また、チェックポイント制御、高価な資産の防護、及び船舶の行為に対する海事沿岸警備のために用いることができる。
【0008】
エフェクト信号パッケージは、多数のエフェクト信号を備えることができるが、5個以上でその機能を発揮することが可能となり、最大で数十個のエフェクト信号を備えることができる。ターゲット対象へ作用する時間は、いくつかの条件と相関する。典型的な例として、より多数のエフェクト信号を用いることで、それらの長時間に亘る使用が可能となる。
【0009】
本発明の一実施形態において、エフェクト信号パッケージは、一連のエフェクト信号を備え、各エフェクト信号の各パルス列が、それぞれ異なるパルス幅、及び/又は異なるパルス反復周波数、及び/又は異なるパルスグループを有する。エフェクト信号は、エフェクト信号パッケージにおける既定配列、ランダム配列又は疑似ランダム配列であってもよい。別の一実施形態では、エフェクト信号パッケージにおいて、各エフェクト信号が一反復する構成としてもよい。
【0010】
一実施形態において、パルス幅を100ナノ秒〜10マイクロ秒の範囲内とすることができるが、この範囲外のパルス幅を用いてもよい。別の一実施形態においては、パルス幅を0.5マイクロ秒〜2マイクロ秒の範囲内とすることもできる。
【0011】
一実施形態において、パルス反復周波数(PRF)は、数十Hz〜数kHzとすることでき、例えば、50Hz〜2kHzの範囲内とすることができる。別の一実施形態においては、他の周波数範囲としてもよい。
【0012】
一実施形態において、少なくとも1つのエフェクト信号は、1〜20パルスのグループに振り分けられたパルスを備える。それぞれのグループに20パルスが振り分けられた場合、それぞれが0.5マイクロ秒のパルス幅を有する20パルスは、10マイクロ秒の総合持続時間を有する。他の実施形態においては、20パルスを超えるパルスを使用してもよい。パルスグループの周波数は、例えば、50kHz〜1MHzの範囲内であってもよい。
【0013】
一実施形態において、エフェクト信号パッケージ内で、少なくとも1つのエフェクト信号が繰り返される構成としてもよい。エフェクト信号は、同一配列、異なる既定配列、ランダム配列、又は疑似ランダム配列の配列にて繰り返される構成としてもよい。
【0014】
一実施形態において、エフェクト信号パッケージの変調信号は、高周波エネルギ源の単発バーストにより変調される。一実施形態において、この変調は繰り返し可能である。
【0015】
一実施形態において、アンテナは、垂直方向に電界分極する変調信号を生成する。これは、このような構成が特に効果的であることが判明したからである。ただし、別の実施形態において、垂直方向又は環状方向に分極する構成とすることもできる。
【0016】
一実施形態において、高周波数信号の最大出力が、1MWを超える構成とすることができる。別の実施形態においては、高周波エネルギ源の最大出力が、10MWを超える構成とすることができる。一実施形態において、高周波数信号の最大出力が、1MW〜5MWの範囲内にある構成とすることができる。これにより搭乗者又は第三者に危害を与え、車両に重大な損傷を与えることなくターゲット車両を停止させることができる。
【0017】
一実施形態において、高周波エネルギ源の周波数が、1〜2GHz又は2〜4GHZのいずれかである構成とすることができる。作動時における実際の周波数が、典型的には3MHz以下の狭いバンド幅を有する構成とすることができる。非常に狭く、かつ制御された単発の周波システムを用いることで、無線周波数より生じる「ノイズ」をほぼ完全に除去することができ、他のシステムからの干渉を最小限にすることができる。
【0018】
一実施形態において、高周波エネルギ源がマグネトロンである構成とすることもできる。別の実施形態においては、高周波エネルギ源は、クライストロン、マイクロ波放射の固体状の放射源、又は他のデバイスであってもよい。
【0019】
本発明に係る装置は、モジュレータに制御信号を送信することができ、オペレータインターフェースからの信号を受信する制御ユニットを備えてもよい。別の一実施形態においては、必ずしもオペレータインターフェースを要さない。例えば、料金所やチェックポイントなど自動化された機器と車両停止装置が協働する場合には、オペレータインターフェースは不要である。
【0020】
車両停止装置は、エフェクト信号パッケージに関する情報を記憶する記憶手段と、その記憶手段に記憶させるべき、アップデートされたエフェクト信号パッケージ情報及びアップデートされたエフェクト信号情報を受信するインプットを備える構成としてもよい。アップデートされたエフェクト信号を受信するインプットは、例えば、ダウンロード又は携帯する記憶媒体として持ち運ぶことができるような構成とすることもできる。このため、個別のエフェクト信号及び/又はアップデートされた信号パッケージが改善し、新たに規定された場合、それらを記憶手段に追加することもできる。これにより、将来も継続的に装置を使用し、車両エンジン管理システムの変化及び改良に伴い装置をアップデートすることが可能となる。
【0021】
車両停止装置は、1セットのエフェクト信号パッケージを備えてもよい。セレクタは、そのセットから得られる複数のエフェクト信号パッケージの内1つのエフェクト信号パッケージを選択する。この操作は、自動的又はオペレータにより行うことができる。
【0022】
一実施形態において、エネルギ源の周波数を、既定の周波数帯域内から使用者が選択することができる。これは、特定の領域内で使用する装置を構成する場合に有用である。例えば、局所的範囲内における管理システムの要件及び相互利用する際の問題を最小限とすることを考慮する場合に有用である。
【0023】
一実施形態において、装置は、車両への備え付けてもよいし、持ち込むことも可能である。本発明を用いることで、コンパクトな構成を達成することができる。例えば、マグネトロン及びアンテナが、その効果を保ちながら、比較的低いパワーレベルの出力パルスを生成するよう厳密に規定することも可能である。これにより個別の構成要素を他の構成よりも嵩張らない構成とすることができる。
【0024】
第2態様において、本発明は、エンジンを備える車両を遠隔停止させるための方法であって、高周波エネルギ源から高周波信号を生成するステップと、各々がパルス列を備える複数の個別エフェクト信号で構成された、車両に非固有のエフェクト信号パッケージを適用して高周波信号を変換するステップと、エフェクト信号パッケージによる変調信号を遠隔車両に送信し、当該車両のエンジン管理システムに作用させて該エンジンを停止させるステップと、を備える方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の特定の実施形態を実施例のみによって、添付の図面を参照しながら以下に述べる。
図1図1は、本発明に係る車両停止装置の概略図である。
図2図2(a)〜(d)は、図1に示す車両停止装置にて用いるエフェクト信号パッケージが有する異なるエフェクト信号の概略図である。
図3図3は、本発明に係る別の車両停止装置の概略図であり、図1と同一の部品には同一の参照番号が付されている。
図4図4は、図1又は図3に示す装置の作動時における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示すように、車両停止装置は、高電圧電源13から直流入力を受信し、それをパルス列出力へと変換するモジュレータ1を備える。モジュレータ出力をマグネトロン4に適用する。マグネトロン4は、本発明を作動させる際に必須となる磁場を提供するために磁石5を備える。当該装置において、マグネトロンの動作周波数は3GHzであり、その帯域幅は狭い。マグネトロンの出力パワーは、5MWである。マグネトロン4は、適用された電気入力をRF出力パルスへと変換し、続いて、そのパルスをアンテナへと送信する。アンテナ6は、ターゲット車両に向けて送信可能な細い光線を生成する。アンテナ6が垂直方向に電界分極する変調信号を生成するよう構成する。
【0027】
モジュレータ1は、エフェクト信号パッケージを構成する一連のエフェクト信号を生成する。本実施形態において、各エフェクト信号は、他のエフェクト信号とは異なるパルス幅、パルス反復周波数及びパルスグループの組み合わせを有する。本実施形態において、エフェクト信号パッケージは、5個のエフェクト信号を備えるが、他の実施形態においては、異なる数のエフェクト信号を備えることもできる。
【0028】
一連のエフェクト信号は直列的に結合させることができる。例えば、エフェクト信号パッケージは、複数の段階にあるエフェクト信号を備えていてもよい。マグネトロン出力にてエフェクト信号パッケージを変調し、RFエネルギの単発バーストにて単一のエフェクト信号パッケージを送信する。他の実施形態においては、RFエネルギの単発バーストにて多様な段階にあるエフェクト信号パッケージを変調する。
【0029】
エフェクト信号は、エフェクト信号パッケージを構成するよう他の方法によって、結合させてもよい。例えば、各エフェクト信号を、それぞれ異なるパルス幅を有する単一パルスで構成し、マグネトロン出力を変調するエフェクト信号パッケージを提供することができる。別のエフェクト信号パッケージにおいては、各エフェクト信号を、他のエフェクト信号とは異なるパルス幅及びパルス反復周波数の組み合わせを有する一連のパルスにより構成する。一連のエフェクト信号は直列的に結合させることができ、エフェクト信号パッケージが同一段階のエフェクト信号のみを有する場合に、一度だけ繰り返すことができる。別のエフェクト信号パッケージにおいては、複数段階のエフェクト信号を備えることもできる。
【0030】
図2(a)〜2(d)は、異なるエフェクト信号を示す。図2(a)において、エフェクト信号は、1マイクロ秒のパルス幅及び500HzのPRFを有する一連のパルスを備える。図2(b)において、エフェクト信号は、1〜5マイクロ秒の範囲内の可変パルス幅及び500HzのPRFを有する一連のパルスを備える。図2(c)において、エフェクト信号は、1マイクロ秒のパルス幅及び400kHzのバースト周波数を有する一連のパルスを備える。この場合、各バーストのグループは3個のパルスを備え、反復周波数は300Hzである。図2(d)において、エフェクト信号は、1〜5マイクロ秒の可変パルス幅及び80〜400kHzの可変グループバースト周波数を有する一連のパルスを備える。この場合、各バーストのグループは3個のパルスを備え、反復周波数は50〜300Hzである。
【0031】
モジュレータ1は、制御ユニット2からインプットを受信する。制御ユニット2は、予めプログラム可能なシステムであるパルス発生器7から適切な波形のパルスを受信することができる。制御ユニット2は、作動命令と作動中のシステムとの間のインターフェースを提供する。モジュレータ1は、バックグラウンド及びシステム性能を監視する。
【0032】
オペレータインターフェース8は、遠隔制御ユニットインターフェース9及びコンピュータインターフェース10を備える。遠隔制御ユニットインターフェース9は、スイッチとランプを備える単純な電気機械的インターフェースである。コンピュータインターフェース10は、オペレータが使用するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を備える。本実施形態におけるインターフェースは、所望の状況に応じて、遠隔操作することができ、あるいは現地にいるオペレータにより直接制御することができる。
【0033】
他の実施形態においては、オペレータインターフェース8が不要であり、又は省略できることもある。例えば、制御ユニット2と直接インターフェース可能な自動認証システムにより車両停止装置を自動制御する場合には、オペレータインターフェース8を除外してもよい。
【0034】
車両停止装置は、原動機動力を受信する無停電電源(UPS)11を備える。UPSは、装置を備え付けた車両のオルタネータから主電力を供給する。UPSにより主電力を、車両停止装置に必要な三相交流へと変換することができる。三相交流を電源又は発電機から取得できる場合には、UPSによる変換をバイパスすることができる。本発明に係る車両停止装置において、UPSは、必ずしも必須の構成要素ではなく、他の実施形態においても不要である場合がある。
【0035】
一連の回路遮断器及びヒューズを用いる過電流システムからシステムを保護するスイッチ及び回路保護素子ユニット12に対して、UPS11の出力を適用する。安全回路をスイッチ及び回路保護素子ユニット12に配線する。三相交流を、高電圧電源13に適用する。高電圧電源13は、三相交流を安定した高電圧の直流に変換し、それをモジュレータ1及び制御ユニット2に適用する。三相交流を制御ユニット2及び冷却ユニット14に直接供給することもできる。冷却ユニット14は、高電圧電源13、モジュレータ1及びマグネトロン4のシステム内で生じる熱損失を制御する。
【0036】
図1に示す車両停止装置において、マグネトロン4の動作周波数は、スペクトル使用に関する現地の法規に適合するよう既定の周波数帯域内で変動させることができる。これは、オペレータにより行うこともできるし、現地展開前に設定することもできる。
【0037】
他の車両停止装置において、パルス幅を100ナノ秒〜10マイクロ秒の範囲内とすることができる。一実施形態においては、0.5ナノ秒〜2マイクロ秒の範囲内のパルス幅を適用した。パルス反復周波数(PRF)は、数十Hz〜数kHzとすることでき、例えば、50Hz〜2kHzの範囲内とすることができる。
【0038】
他の実施形態において、いくつかのエフェクト信号は、1〜20パルスのグループに振り分けられたパルスを備えていてもよい。各グループにそれぞれが0.5マイクロ秒のパルス幅を有する20パルスが振り分けられた場合、各グループは、10マイクロ秒の総合持続時間を有する。他の実施形態においては、20パルスを超えるパルスを使用してもよい。
【0039】
図3は、図1に示す車両停止装置と同様の構成を有する別の車両停止装置を示す。この場合、マグネトロン4は、1.5GHzにて作動する。
【0040】
図3のシステムにおいては、システムパルス生成機7をエフェクト信号パッケージに関する情報を記憶する記憶手段15に接続することができ、その記憶手段に記憶させるべき、アップデートされたエフェクト信号パッケージ情報又はアップデートされたエフェクト信号情報を受信するインプット16を備えることができる。アップデートが必要な場合、システムパルス生成機7は、記憶手段15の情報にアクセスする。別の構成においては、アップデート情報を、直接システムパルス生成機7に適用することもできる。
【0041】
車両停止装置は、セレクタ18を備える。セレクタ18は、記憶手段16から得られる複数のエフェクト信号パッケージの内1つのエフェクト信号パッケージを選択する。ある構成においては、オペレータインターフェース8によりセレクタ18を制御する構成とすることもできる。各エフェクト信号は、車両に非固有であるが、2つ以上のエフェクト信号を有することは、いくつかの状況下にて有用となろう。
【0042】
図4においては、図1又は図3にて図示した車両停止装置19を車両20に取り付けている。停止させるべきターゲット車両21が接近すると、オペレータは、オペレータインターフェース8を用いて装置を起動させ、ターゲット車両に向けてエフェクト信号パッケージの変調出力パルスを送信する。エフェクト信号の変調を送信することで、ターゲット車両のエンジン管理システムに作用させ、エンジンの働きを低下させ、その後車両を停止させる。このため、車両を安全に停止させることができる。オペレータは、車両停止装置19を引き続き操作することができるため、ターゲット車両の運転手が再度エンジンを始動させることを防止することができる。
【0043】
本発明に係る車両停止装置を用いた検証試験を行った。この試験は、14社の異なるメーカーで製造された23車種の車両をサンプルとして用いた。その結果、本発明に係る装置は、約80%の潜在成功率でターゲット車両のエンジン管理システムに遠隔介入し停車させることができ、ターゲット車両を停止させるために致命的な事故を引き起こしかねない従来の方法への実施可能な代替手段となり得ることが分かった。当該装置は、狭帯域のマイクロ波を用いるため、ターゲット車両のみに作用させることが可能であり、他の車両、無関係な第3者又は警察官が被りかねない二次的な被害を最小限に抑えることができる。
【0044】
車両停止装置を適用し得る他の例として、資産を保護するための車両停止装置が挙げられる。例えば、車両にチェックポイントを通過させることもできる。警告にも関わらず、車両が停止しない場合、停止装置を起動させることができる。他の使用例として、資産を携行又は護送する際に用いることが挙げられる。疑義のある車両が車列に接近してきた場合、車両停止装置を起動させることで、接近する車と保護対象との間に安全な距離を保つことが可能となる。
【0045】
特に他の船舶や沿岸の安全を脅かしかねない、船外機として大きなエンジンを備えるスピードボートなどの船舶を遠隔停止させるために当該車両停止装置を用いることができる。
【0046】
本発明に係る車両停止装置は、一連の高周波パルスを生成する電磁システムである。遠隔地からターゲット車両に向けて一連の高周波パルスを車両の電気制御システムに送信することで、エンジン管理に支障を生させ、最終的には、車両を停止させることができる。当該装置は、良好な成功率、高い安全性及び雑誌大の大きさを有する。装置の大きさは、潜在的には構成によって異なり、一定の大きさに限定されない。
【0047】
多様な構成要素の機能を添付の図面に示す。図中、機能ブロックを「ユニット」と称し、これらはハードウェアを用いる。ハードウェアには、適切なソフトウェアと連動してソフトウェアを実行することができるハードウェアが含まれる。ユニット及び他の構成要素は、以下に限定されないが、デジタル信号処理(DSP)ハードウェア、ネットワーク処理、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、ソフトウェアを記憶するリード・オンリー・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリーズ(RAM)及び不揮発性記憶手段を適切に備えることができる。通常の、及び/又は慣用的な他のハードウェアを備えることもできる。
【0048】
本発明は、発明の趣旨又は主たる特性の範囲から逸脱することなく、他の特定の構成とすることができる。上述の実施形態は、例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。本発明の技術的範囲は、上述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲に基づいて定められる。特許請求の範囲内での変更、特許請求範囲と均等な範囲は、特許請求の範囲内に包含されるものと理解されたい。
図1
図2
図3
図4