(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
核酸アンプリコンを生成する方法であって、第一及び第二のDNA鋳型をそれぞれ増幅するために少なくとも2つの増幅反応を含み、以下の工程を含むことを特徴とする、前記方法:
a)第一のDNA鋳型をヌクレオチド、DNAポリメラーゼ及びプライマーと接触させ、ここで前記プライマーがその5’-末端でリン酸化されている工程;
b)第一の増幅反応で当該第一のDNA鋳型を増幅し、そのようにして5’-リン酸化末端を有する二本鎖増幅生成物を生じる工程;
c)工程b)の増幅DNA生成物及び/又は当該増幅DNA生成物を含む反応混合物を、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素と分解を可能にする条件下で接触させる工程;及び
d)第二のDNA鋳型との少なくとも1つの他の増幅反応を実施し、そのようにして核酸アンプリコンを生成する工程。
工程a)で当該第一のDNA鋳型が第一の次世代シーケンシング(NGS)ライブラリーであり、工程b)で当該第一の増幅反応が次世代シーケンシング(NGS)ライブラリー増幅反応であり、さらに工程d)で当該第二のDNA鋳型が第二のNGSライブラリーであり、少なくとも1つの他の増幅反応が第二のNGSライブラリー増幅反応であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
工程a)で当該第一のDNA鋳型が第一のDNAライブラリーであり、工程b)で当該第一の増幅反応がクローン増幅反応であり、さらに工程d)で当該第二のDNA鋳型が第二のDNAライブラリーであり、少なくとも1つの他の増幅反応が第二のクローン増幅反応であることを特徴とする、請求項1又は4に記載の方法。
工程b)で当該第一の増幅反応が第一のDNA鋳型の第一の多重又はロングレンジポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、そのようにして注目する増幅標的領域を生成し、さらに工程d)で少なくとも1つの他の増幅反応が第二のDNA鋳型の第二の多重PCR増幅反応であることを特徴とする、請求項1又は6に記載の方法。
5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素がラムダエキソヌクレアーゼであることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
種々の鋳型の少なくとも第一及び第二の増幅反応を含む方法において、第一の増幅反応の増幅生成物による第二の増幅反応の夾雑を防止するための、(i)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素;及び(ii)1つ又は複数のプライマー対であって、前記プライマー対のいずれのプライマーも5’リン酸化されている前記プライマー対との組み合わせの使用。
5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素がラムダエキソヌクレアーゼであることを特徴とする、請求項9から11のいずれかに記載の使用。
【背景技術】
【0003】
ここ30年の間に、増幅技術(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)又は鎖置換増幅(SDA)試験)は、たとえ必須ではないとしても研究及び臨床利用において重要なツールとなった。したがって、PCRは、特異的な核酸種を増幅するためにもっとも通例的に用いられる方法である。増幅された核酸配列は、当該増幅反応で直接的に又は後続する下流での利用(例えばシーケンシング又は電気泳動)で効果的に検出され定量され分析されうる。その高い特異性、効率性、及び感受性のゆえに、増幅系技術は、基礎生物学研究、生物医学研究、応用検査及び分子診断で広く利用されている。
例えば、多くの大規模並列シーケンシング(すなわち“次世代シーケンシング”、NGS)プラットフォームは、空間的に分離されクローン増幅されるDNA鋳型又はフローセル中の単一DNA分子を介して大規模並列シーケンシングの技術体系を共有する(ただし構成及びシーケンシング化学の操作では相違するが)。シーケンシング鋳型を調製するために、まず初めに核酸フラグメントがプラットフォーム特異的シーケンシングアダプターに連結されて、シーケンシングライブラリーが作製される。一般的には前記工程の後にPCR工程が続き、次の工程で用いることができる十分な量のライブラリー分子が得られる。さらに、第二の工程では、DNAシーケンシング鋳型が当該シーケンシングライブラリー分子のin vitroクローン増幅によって生成され、数千から数十万の同一コピーが同じシーケンシングライブラリー分子から生じる。
【0004】
その高い感受性のゆえに、増幅技術は偽の又は不正確な結果をもたらす夾雑を生じやすい。なぜならば、同じ標的配列の反復増幅は実験室環境では増幅生成物の蓄積をもたらすからである(実験室環境では、以前に分析された生物由来プラスミドクローンもまた多数存在しうる)。PCR系核酸分析によってもたらされる主要なリスクの1つは持越し夾雑であり、この場合には以前のPCRラウンドに由来する残留生成物によるPCR反応の夾雑が偽の又は不正確な陽性結果を生じうる。
さらにまた、例えばNGSの場合、DNA増幅を要求する装置は、シーケンシングエラーを導入することがあるということは公知の事実である(PCRは増幅された鋳型でエラーを導入する能力を有するからである)。特にAT豊富及びGC豊富の標的配列はしばしば増幅偏向を示し、そのような偏向はそれら配列のゲノムアラインメント及びアッセンブリーで過小評価をもたらす。
したがって、偏向した増幅反応を回避するために、以前に生成されたアンプリコンによる反応管のアンプリコン持越し夾雑を防止するか、及び/又は以前に生成されたアンプリコンを“不活化”又は破壊して以降の増幅反応のために不適格な標的にする必要がある。
PCR中のエラーの発生を最小限にするためのいくつかの試みが実施され、増幅反応前後における種々の技術が開発された。
DNA及びRNA増幅時の持越し夾雑を防ぐ1つの方法は、セットアップ及び増幅のために別々の実験室をもつこと、ピペット操作の工程数を最小限にすること、及び増幅後の試験管の開放の防止である。しかしながら、実際的な障害はさておき、この方法は持越し夾雑回避の保証を提供しない。
【0005】
持越し夾雑を防止する別の方法はdUTP/UNG手法である。この方法では、PCR増幅中にdTTPは部分的又は完全にdUTPに置き換えられ(それによってデオキシウラシル(dU)含有アンプリコンを生成する)、後に続くPCR混合物は続いてウラシル-N-グリコシラーゼ(UNG)(ウラシル残基を認識及び除去する酵素)で前処理される。以前のPCRに由来するdU含有夾雑物が新たな後続のPCRに存在する場合、それは、UNG消化及び後続のPCRの最初の変性工程の高温の組み合わせによって切断されるであろう。処理の後、そのような夾雑物はPCR鋳型として供されることはできない。なぜならば、新たに添加されるDNA鋳型はいずれもウリジンの代わりにチミジンを含み、したがってこの手順の影響を受けない。
しかしながら、dUTR/UNG手法は、プルーフリーディングポリメラーゼによるハイフィデリティーPCRでは持越し夾雑の防止に用いることはできない。ハイフィデリティーPCRはシーケンシングの正確性を担保するためにしばしば用いられ、これらプルーフリーディングポリメラーゼの活性は通常、反応混合物中のdUTPの存在によって阻害される。さらにまた、プルーフリーディングポリメラーゼはひとたびDNA鋳型でウラシル塩基に出会うと動けなくなりポリマー形成はウラシル塩基を超えて継続できない。
別の手段は固有の合成キメラプライマーを用いてプライマーを加水分解する手法であり、前記プライマーはPCR生成物の切断後に当該生成物から除去でき、したがってプライマー結合部位を欠く切端アンプルコンを生じる。したがってこのアンプリコンは後続の増幅反応では標的として認識されないであろう。しかしながらこの手法もまた夾雑の機会を提供し、結局、プライマー加水分解プロトコルはその有効性が大きく変動する。
したがって、ここ数十年にわたって確立された改善及び方法にもかかわらず、効果的に持越し夾雑を回避すること、したがって偽の不正確な結果又は偽陽性結果のリスクを最小限にすることがなお希求されている。
この背景に対して、増幅プロセスを一般的に改善する、特に増幅生成物の持越し夾雑のリスクを最小限にする新規な方法を提供することが本発明の目的である。
本発明はこれらの要求及び他の要求を充足させる。
【発明の概要】
【0006】
本発明にしたがえば、本目的は、第一及び第二のDNA鋳型をそれぞれ増幅する少なくとも2つの増幅反応を含み、以下の工程を含むことを特徴とする、核酸アンプリコンを生成する方法によって解決される:a)第一のDNA鋳型をヌクレオチド、DNAポリメラーゼ及びプライマーと接触させる工程(ここでプライマーの少なくとも1つはその5’-末端でリン酸化されている);b)第一の増幅反応で第一のDNA鋳型を増幅し、そのようにして当該鎖の各々で5’-リン酸化末端を有する二本鎖増幅生成物を生じる工程;c)工程b)の増幅DNA生成物を5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に分解する酵素と分解を可能にする条件下でしばらく接触させる工程、及びd)第二のDNA鋳型との少なくとも1つの他の増幅反応を実施し、そのようにして核酸アンプリコンを生成する工程。
したがって、本発明の方法は、少なくとも2つの増幅反応(すなわち、第一及び第二のDNA鋳型をそれぞれ増幅するために第一及び少なくとも第二の増幅反応を実施する工程)を含み、ここで、5’リン酸化プライマーが第一の増幅反応工程で用いられ、さらに5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に分解する酵素が第一の増幅反応に続く増幅反応の前に適用されて、種々のサンプルの以前のいずれかの増幅反応(5’リン酸化プライマーが用いられる)に由来する潜在的な夾雑PCR生成物が除去される。
本目的はさらに、(i)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に分解する酵素、及び(ii1)1つ又は複数のプライマー対(各プライマーは5’-リン酸化されている)又は(ii2)ポリヌクレオチドキナーゼのどちらか、及び場合によってアデノシン三リン酸(ATP)の組み合わせのキット、並びに、種々の鋳型の少なくとも第一及び第二の増幅反応を含む方法で、第一の増幅反応の増幅生成物による第二の増幅反応の夾雑を防止するための前記組み合わせの使用によって解決される。
【0007】
5’リン酸化プライマー及び5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に分解する酵素を用いる新規に記載の方法により、及び本発明に従った使用により、種々のサンプルとの2つ以上の増幅反応が実施される増幅反応で、以前の増幅ラウンドに由来する増幅生成物による夾雑及び/又は持越し夾雑はしたがって効率的に防ぐことができる。
プライマー/オリゴヌクレオチドプライマーの5’リン酸化は当業界で公知であり、例えば酵素T4ポリヌクレオチドキナーゼ(種々の企業(例えばNew England Biolabs(Ipswich, MA, USA)、Thermoscientific(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA; USA)、Epicentre(Madison, WI, USA)、Sigma Aldrich(St. Louis, MO, USA)及び多くの他の企業)から市場で入手できる)を用いることによって、又はオリゴヌクレオチド合成時の化学反応によって容易に実施できる。
本発明では、二本鎖核酸の5’リン酸化末端に対し特異的に5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示す酵素の固有の特性が、本来のDNA鋳型に影響を与えることなく持越しPCR生成物を特異的に消化するために用いられる。特許請求及び開示されるように、これにはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして5’リン酸化オリゴヌクレオチドの使用を必要とする。5’リン酸化プライマーで生成されるPCR生成物は、1つのリン酸化プライマーが用いられる場合には一本鎖に5’リン酸基を有する二本鎖DNA生成物を表し、2つのリン酸化プライマーが用いられる場合には両方の鎖に5’リン酸基を有する二本鎖DNA生成物を表す。その後で5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示す酵素を用いることによって、そのようなPCR生成物は、この酵素を介する消化によって特異的かつ効果的に除かれ、有利には後続のPCR反応で鋳型として働かないであろう。
【0008】
本発明に関する実験では、5’リン酸化プライマーの使用はPCR効率に影響を与えないこと、及び5’リン酸化プライマーで生成された二本鎖PCR生成物の、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5’リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による特異的な消化は当該PCR反応混合物で直接的に機能しうることを示すことができた。
したがって、新規に提示した方法及び使用を用いれば、第一の増幅反応の持越しPCR生成物による後続又は下流のPCRの夾雑を効率的に防止することができ、後続の増幅反応の増幅生成物は、以前のいずれの増幅ラウンド/反応に由来する潜在的な夾雑増幅生成物を含まないか又は実質的に含まない。
現時点でかつ一般的に理解されているように、核酸の関係で“増幅する”又は“増幅”という用語は、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドの部分の多数のコピーの生成、典型的には少量のポリヌクレオチド(例えばただ1つのポリヌクレオチド)から出発する生成を指し、ここで増幅生成物又は“アンプリコン”は一般的に検出可能である。したがって、ポリメラーゼ連鎖反応は1つのタイプの増幅反応であり、この場合には所望の標的配列にフランキングする一対のプライマーが用いられる。コンベンショナルPCRでは、プライマーは、標的DNA(鋳型)、耐熱性DNAポリメラーゼ及びデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を含む溶液と混合される。続いてこの反応混合物を、当該DNA鋳型の2本の相補鎖を分離させるために十分な温度に加熱し、続いて当該プライマーが注目する遺伝子又は配列にフランキングする配列と特異的にアニーリングすることを可能にするために十分な温度に冷却する。
【0009】
したがって、ここで用いられている“増幅反応”という表現はDNA断片を増幅する反応を指すことを意図する。PCR反応の事例では、前記は、DNA融解及び当該DNAの酵素的複製のために反応混合物を加熱及び冷却する反復サイクルから成る。PCR増幅反応の重要成分は、プライマー(すなわち、DNAの標的領域と相補的な配列を含む短いDNAフラグメント)、及びDNAポリメラーゼ(選択的で繰り返される増幅を可能にする)である。PCR増幅が進行するとき、生成されたDNA自体が複製の鋳型として用いられ、当該DNA鋳型が指数関数的に増幅される連鎖反応が始動する。
したがって、本発明の特徴によれば、本発明の使用及び方法で第一及び第二の増幅反応はポリメラーゼ連鎖反応である。
したがって第一の増幅反応は、あるPCR反応混合物の冷却及び加熱の数サイクルを含むPCR反応の第一のラウンドから成り、さらに第二の増幅反応はもう1つの増幅反応、例えばあるPCR反応混合物の冷却及び加熱の数サイクルを含むPCR反応の第二のラウンドから成る。
典型的には、1PCR“サイクル”は、一続きの20から40の反復温度変化から成り、各サイクルは通例では2から通常は3つの別個の温度工程から成る。サイクル運転は、しばしば高温(>90℃)のただ1回の温度工程が先行し、最終生成物伸長又は短時間保管のために最後に1回休止が続く。各サイクルで用いられる温度及び適用される時間は様々なパラメーターに左右され、前記パラメーターには、DNA合成に用いられる酵素、反応中の二価イオン及びdNTPの濃度、並びにプライマーの融解温度(Tm)が含まれる。
【0010】
本明細書で用いられる“プライマー”という用語は、ある核酸鎖に相補的なプライマー伸長生成物の合成が誘導される条件下に(例えばヌクレオチド及びDNAの存在下でかつ適切な温度及びpHに)置かれたとき、合成の開始点として働くことができるオリゴヌクレオチドを指す。
ここで定義及び特許請求されるように、本発明で用いられるプライマー対では、プライマーの両方又は全てが5’-リン酸化されうるか又はリン酸化されてあり、したがってそれらの対応する5’末端にリン酸基を含む。
5’-リン酸化プライマーを用いることによって、5’-リン酸化末端を有するPCR増幅生成物が生成される。したがって、その後で、そのようなPCR生成物は、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び5’リン酸化末端に対する特異性を示す酵素によって二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖が特異的に分解されて特異的かつ効果的に除かれる。
総合すれば、5’-リン酸化プライマー対及びその後の5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5’リン酸化末端に対する特異性を示す酵素の適用により、夾雑持越し増幅生成物/PCR生成物を、本来の二本鎖鋳型に影響を与えることなく特異的に消化することができる。
【0011】
本明細書で用いられる“核酸”又は“核酸分子”という用語は、任意の核酸含有分子(DNA又はRNAを含むがただしこれらに限定されない)を指す。前記用語は、DNA及びRNAの公知の塩基アナローグのいずれかを含む配列を包含する。前記塩基アナローグには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシル-メチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルビキシメチル-アミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュード-ウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチル-グアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチル-シトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシ-アミノ-メチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエオシン、5'-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、シュードウラシル、2-チオシトシン及び2,6-ジアミノプリン。
本明細書で用いられる核酸は例えばゲノムDNA又はcDNAでありうる。
【0012】
本明細書で用いられる“核酸塩基”という用語は、当業界で用いられる以下を含む他の用語と同義である:“ヌクレオチド”、“デオキシヌクレオチド”、“ヌクレオチド残基”、“デオキシヌクレオチド残基”、“ヌクレオチド三リン酸(NTP)”、又は“デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)”。本明細書で用いられる核酸塩基には、本明細書に記載の天然及び修飾残基が含まれる。
“オリゴヌクレオチド”は、少なくとも2つの核酸モノマー単位(例えばヌクレオチド)、典型的には3つを超えるモノマー単位、より典型的には10を超えるモノマー単位を含む核酸を指す。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、一般的には多様な因子(オリゴヌクレオチドの最終的な機能又は使用を含む)に左右される。ここでは、“プライマー”、又は“オリゴヌクレオチド”、又は“オリゴヌクレオチドプライマー”という表現は、上記に定義したプライマーとして機能するオリゴヌクレオチドを指すために用いられる。
本明細書で用いられる“相補的な”又は“相補性”という用語は、塩基対形成ルールによる関係を有するポリヌクレオチド(すなわちヌクレオチドの配列)を指して用いられる。例えば、配列“5’-A-G-T-3’”は、配列“3’-T-C-A-5’”と相補的である。相補性は“部分的”であることができ、この場合は、当該核酸の塩基のいくつかだけが塩基対形成ルールにしたがってマッチする。或いは、核酸間には“完全な”若しくは“全体的”相補性が存在しうる。核酸間の相補性の程度は、核酸間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に重大な影響を有する。これは、特に増幅反応の他に核酸間の結合に依存する検出方法で重要である。
【0013】
DNA鋳型又は増幅DNA生成物を“接触させる”という表現を用いて、DNA鋳型/増幅DNA生成物を、増幅反応に必須の試薬/5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に分解する酵素に添加するか、或いは前記と一緒にすることを意味し、結果として、この表現はまた、DNA鋳型/増幅DNA生成物が反応混合物に収容されているか又は含まれている反応を含むことが理解されよう。
本発明にしたがえば、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素を、直ちに及び例えば第一の増幅ラウンドが生じた同じ反応容器で用いることができる。
反応容器はPCR反応ミックスを含むチューブでありうる。
したがって、本発明によれば、第一の“PCRラウンド”(すなわち第一の増幅反応)で、5’-リン酸化プライマー、耐熱性DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド(dNTP)、及び増幅されるべき第一の鋳型が最終的に適切な緩衝剤中で用いられる。
任意のDNAポリメラーゼ、例えば任意の適切な耐熱性DNAポリメラーゼを用いることができ、前記は上昇温度で実質的に安定であり、熱サイクルプロセスで標的ポリヌクレオチド増幅を効率的に触媒する。本状況では、当該耐熱性DNAポリメラーゼは、二本鎖核酸の変性を達成するために必要な時間当該上昇温度に付されたとき、不活化に対して実質的に耐性である。特に及び好ましくは、耐熱性DNAポリメラーゼは、Taqポリメラーゼ、KlenTaq、TopTaqポリメラーゼ、Tfi、Pfu、KOD、サーミネーター(Therminator)から成る群から選択される。好ましい実施態様にしたがえば、ポリメラーゼはハイフィデリティーポリメラーゼであり、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有する。
【0014】
第一の鋳型の第一の増幅ラウンドの終了後に、生じたPCR生成物が、例えばエーロゾル伝播又は不適切な取り扱いのために、試薬、チューブ、機器を汚染させている可能性がある。したがって、これらの装置又は道具を使用する前に、さらに異なるサンプルの増幅反応の第二のラウンドの前に、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による消化を、第二の増幅ラウンドの前に同じPCR反応容器で実施する。
5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は反応混合物に存在していてもいなくてもよく、後者の場合には、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示す酵素は、異なるサンプル/鋳型の第二の増幅ラウンドのための反応混合物を容器に添加する前に当該容器に添加される。
本発明にしたがえば、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による消化又は分解(両表現はここでは同義的に用いられる)は、しばらくの間及び5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示す酵素に適切な条件下で実施され、5’リン酸化プライマーが用いられる種々のサンプルの以前の増幅反応のいずれかに由来する潜在的な夾雑PCR生成物を除去する。約1分から約120分、好ましくは5から20分、より好ましくは約10分の時間が十分でありうる。
5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素の用いられるべき量は、全体の反応アッセイに左右され、したがって変動しうる。適切な量は約0.01U/μLから約100U/μL、好ましくは約0.1から1U/μLである。
5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による消化後、第二のPCRラウンド/第二の増幅反応は、例えば5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素を最初の加熱/変性工程(例えば当該酵素を不活化する温度、例えば60℃から約98℃の温度、好ましくは約95℃で)により不活化することによって開始させることができる。したがって、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は第二の増幅反応に干渉しない。このようにして生じたPCR生成物は、第一のラウンドに由来するPCR生成物による持越し夾雑を含まない。本発明のある特徴では、変性工程はまた、後続の増幅のDNAポリメラーゼのための再活性化工程である。
【0015】
したがって、本発明の方法の好ましい実施態様では、前記方法は以下の連続工程を含む:
− 第一の増幅反応で、5’-リン酸化プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応によって第一のDNA鋳型を増幅する工程;
− 第二の増幅反応で、同じ反応容器において第二のDNA鋳型を第二の反応混合物中で増幅する工程であって、第二の増幅反応の開始前に、第二の反応混合物を5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素とともにしばらくの間、当該酵素に第一の増幅ラウンド由来の5’-リン酸化PCR生成物を除去させるために十分な条件下でインキュベートし、そのようにして第一のDNA鋳型由来の夾雑PCR生成物を含まない、例えばシーケンシング鋳型でありうるDNA核酸アンプリコンを生成する、前記工程。
上記ですでに述べたように、この方法を用いれば、増幅生成物の持越し夾雑は効果的に回避される。なぜならば、異なるサンプルの以前の増幅反応(5’-リン酸化プライマーが用いられる)のいずれかに由来する潜在的な夾雑PCR生成物が除去されるからである。
別の実施態様にしたがえば、本発明の方法はライブラリー増幅工程を含む方法である。
したがって好ましい実施態様では、本発明の方法では、工程a)で第一のDNA鋳型は第一の次世代シーケンシング(NSG)ライブラリーであり、工程b)で第一の増幅反応は次世代シーケンシング(NGS)ライブラリー増幅反応であり、さらに工程d)で第二のDNA鋳型は第二のNGSライブラリーで、少なくとも1つの他の増幅反応は第二のNGSライブラリー増幅反応である。したがって、この実施態様では、工程c)の第二のNGS増幅反応の開始前に、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素は、第一のNGSライブラリー増幅に由来する5’-リン酸化増幅DNA生成物を分解する。
【0016】
換言すれば、好ましい実施態様では、本発明の方法は以下の連続工程を含む:
− 第一の次世代シーケンシング(NGS)ライブラリー増幅反応で、少なくとも1つの5’-リン酸化プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応によって第一のNGSライブラリーを増幅する工程;及び
− 第二のNGSライブラリー増幅反応で、第二のNGSライブラリーを第二の反応混合物中で増幅する工程であって、第二のNGS増幅反応の開始前に、増幅NGSライブラリー(又は第二の増幅反応混合物)を5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素とともにしばらくの間、当該酵素に第一のDNAライブラリー増幅由来の5’-リン酸化PCR生成物を除去させるために十分な条件下でインキュベートする、前記工程。
このようにして作製された増幅シーケンシングライブラリーは、異なるライブラリー鋳型の以前のライブラリー増幅のいずれかに由来する潜在的な夾雑PCR生成物を含まない。
したがって、この実施態様にしたがえば、5’-リン酸化プライマーは第一のライブラリー増幅反応で適用され、さらに5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は、第一のNGSライブラリー増幅反応の完了後及び別のNGSライブラリー増幅反応の前に適用される。
【0017】
したがって、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は、第一のPCRラウンドの後で、すなわち5’-リン酸化プライマー、上記に記載のDNAポリメラーゼ、dNTP、及び適切な反応緩衝剤を用いてNGSライブラリー鋳型が増幅される、NGSライブラリー増幅反応の後で添加される。第一の増幅反応/第一のPCRラウンドが終了すると直ちに及び別の増幅の前に、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による消化が同じ反応容器で実施され、第一の増幅反応/PCRラウンドのPCR生成物から生じる持越し夾雑が防止される。
しばらくの間、いろいろの量の5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素で消化/分解した後で、増幅プロトコルを開始することができ、したがって、第一の最初の変性工程により、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は不活化される。生成された増幅生成物は夾雑物を含まず、夾雑物に代わって正しい鋳型のシーケンシングが担保される。
この新規な方法を用いれば、第一のNGSライブラリーの増幅生成物の持越し夾雑は、別のNGSライブラリー増幅反応を実施するときに効果的に回避される。NGSシーケンシングライブラリーの調製はシーケンシングエラーを防止するために重要な工程であるので、本発明の方法は、夾雑を含むシーケンシングライブラリーの作製を防止する効果的なツールを提供する。
【0018】
別の実施態様にしたがえば、本方法は、クローン増幅工程を含む次世代シーケンシング(NGS)鋳型の生成に用いられる。
したがって、本発明の方法のこの実施態様では、工程a)で第一のDNA鋳型は第一のDNAライブラリーであり、工程b)で第一の増幅反応はクローン増幅反応であり、さらに工程d)で第二のDNA鋳型は第二のDNAライブラリーで、少なくとも1つの他の増幅反応は第二のクローン増幅反応である。したがって、この実施態様では、工程c)の第二のクローン増幅反応の開始前に、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素は、第一のクローン増幅に由来する5’-リン酸化増幅DNA生成物を分解する。
したがって、この実施態様にしたがえば、本方法は以下の連続工程を含む:
− 第一の増幅反応で、1つの反応容器において、5’-リン酸化プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応によって第一のDNAライブラリーをクローン増幅する工程;
− 第二の増幅反応で、第二のDNAライブラリーをクローン増幅する、したがってDNAシーケンシング鋳型を生成する工程であって、第二のクローン増幅の開始前に、第二の反応混合物を5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素とともにしばらくの間、当該酵素に第一のクローン増幅ラウンド由来の5’-リン酸化PCR生成物を除去させるために十分な条件下でインキュベートする、前記工程。
このようにして生成されたDNAシーケンシング鋳型は、異なるライブラリーサンプルの以前のクローン増幅のいずれかに由来する潜在的な夾雑PCR生成物を含まない。
したがって、本発明の方法はまた、次世代シーケンシングプロセスのクローン増幅工程で用いることができる。
【0019】
市場で入手できるNGSプラットフォームを用いるDNAシーケンシングは、一般的に言えば以下の工程で実施される:第一に、DNAフラグメントがプラットフォーム特異的シーケンシングアダプターに連結されて、シーケンシングライブラリーが作製される。十分量のライブラリー分子を得るために、PCRがしばしばシーケンシングアダプターの連結の後に続く。第二に、DNAシーケンシング鋳型がシーケンシングライブラリー分子のクローン増幅によって生成され、数千から数十万の同一のコピーが同じシーケンシングライブラリー分子から生じる。通例的に用いられるクローン増幅方法には以下が含まれる:架橋増幅(例えばIllumina HiSeq及びmiSeqプラットフォーム)、エマルジョンPCR(例えばQIAGEN GeneReader、Roche 454、Ion Torrent PGM及びProtonプラットフォーム)、及びワイルドファイヤー(Wildfire, LIFE Technologies Solid)。第三に、空間的に分断されている増幅DNA鋳型は、物理的な分離工程を必要としないで、大規模並列的態様で同時にシーケンシングされる。クローン増幅シーケンシング鋳型は合成によってシーケンシングされ(例えばIllumina又はQiagenプラットフォーム)、一方、DNA配列は、連鎖中止化学反応ではなく相補鎖にヌクレオチドを添加することによって決定されるか、又は連結によるシーケンシングによって決定される(例えばLIFE Technologies Solidプラットフォーム)。ほとんどのNGSプラットフォームでこれらの工程が続くが、各NGSプラットフォームは異なる手法を利用する。
したがって、核酸増幅反応は次世代シーケンシングワークフローにおいていくつかの決定的な工程で用いられる。
例えば、PCRを用いて、シーケンシングしようとする標的ゲノム領域を特異的に増幅することができる。
加えて、シーケンシングしようとするDNAフラグメントにユニバーサルアダプターを添加することによってNGSシーケンシングライブラリーを構築した後で、後続のシーケンシング反応のために十分量の材料を得るために当該ライブラリーのPCR増幅がしばしば要求される。
【0020】
さらにまた、クローン増幅(例えばエマルジョンPCR又は架橋増幅による)は、通常のNGSプラットフォーム(主要な供給業者(例えばIllumina、LIFE Technologies、Roche、又は最近のQIAGEN GeneReader))で効果的に検出できるクローン又は同一核酸配列を有するクラスターを生成するために重要な工程である。
エマルジョンPCRの方法では、DNAシーケンシングライブラリーが、まず初めにプラットフォーム特異的アダプターとDNAフラグメントとの連結により作製され、その後に最適なPCR工程が続き、ライブラリー分子が増幅される。このシーケンシングライブラリーは油:水エマルジョン中でPCR増幅に付され、ここで、水滴の大部分は、PCRプライマーと結合したビーズと一緒に0又は1つのライブラリー分子を含む。エマルジョンPCR及びPCR生成物変性に続いて、ビーズは水-油エマルジョン小滴中に区画化され、1つのビーズを捕捉する小滴の各々が、ただ1つのDNA鋳型の増幅コピーを生産するPCRマイクロリアクターである。このようにして生成された一本鎖DNAフラグメント(シーケンシング鋳型)はビーズ表面に付着し、プラットフォーム特異的プライマーとハイブリダイズし、シーケンシングされうる。
架橋増幅を用いれば、フォワード及びリバースプライマーはフローセルの表面に高密度で付着し、前記フローセルはその表面でフラグメントの架橋増幅を可能にする。フローセルはポリメラーゼによる伸長のための試薬に暴露され、連結されたフラグメントの自由な末端がスライド表面の相補的なオリゴヌクレオチドと“架橋する”とき、プライミングが生じる。繰り返される変性及び伸長は、フローセル表面の全体にわたって数百万の別々の場所でDNAフラグメントの局在化増幅をもたらす。この固相増幅は、1億から2億の空間的に分離された鋳型クラスターを生じ、前記クラスターは自由な末端を提供し、続いて当該末端にユニバーサルシーケンシングプライマーがハイブリダイズしてシーケンシング反応が開始する。
【0021】
本明細書で提示した方法及び使用を用いれば、NGSプロセスにおけるシーケンシングエラーを効率的に回避することができる。
上記に記載の実施態様にしたがえば、クローン増幅(例えばエマルジョンPCR)の第一のラウンドは、5’-リン酸化プライマー、上記に記載の耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTP、緩衝剤、及び鋳型(すなわちNGSプライマー)を用いて実施される。
本発明の方法を用いれば、(エマルジョン)PCRの第一のラウンドの完了後、第一の増幅ラウンドのPCR生成物による持越し夾雑の発生を防止することができる(前記夾雑は、試薬、チューブ、PCR生成物を用いる機器の汚染のため、特にエーロゾル伝播又は不適切な取扱いによる)。
しばらくの間、いろいろの量の5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素で消化/分解した後で、増幅プロトコルの第二のラウンドを開始することができ、したがって、第一の最初の変性工程により、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は、エマルジョンPCR(上記参照)が実施される場合は、すなわち95℃で、又は架橋PCR(上記参照)が実施される場合は、約65℃で不活化される。生成された増幅生成物は、所望しないサンプルに由来する夾雑物を含まず、夾雑物に代わって正しい鋳型のシーケンシングが担保される。
したがって、第二のクローン増幅ラウンドの前に(例えばエマルジョンPCR、架橋増幅(上記参照))、持越し夾雑を防止するために、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による消化が、第二の増幅ラウンドのための容器と同じ反応容器で直接実施され、時間及び余分な操作工程が節約される。時間及び量は上記の説明にしたがって選択できる。
5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素と、しばらくの間及び夾雑物の一切又は大半を消化するために十分な条件下でインキュベートした後で、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示す酵素を、後続の第二のクローン増幅反応の最初の加熱工程によって熱不活化することができる。前記不活化は、架橋増幅では65℃で、エマルジョンPCRでは95℃で実施される。
第二のラウンド後に、増幅生成物は夾雑物を含まずに回収することができ、これが、夾雑物をシーケンシングする危険を冒すことなく正しい鋳型のシーケンシングを実施できる理由である。
【0022】
さらに別の実施態様にしたがえば、本発明の方法は、多重PCR又はロングレンジPCR工程を含む、NGS標的濃縮のための方法に適用される。
したがって、本発明の方法のある実施態様では、工程b)で第一の増幅反応は、第一のDNA鋳型の第一の多重又はロングレンジポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、したがって注目の増幅標的領域を生じ、さらに工程d)で少なくとも1つの他の増幅反応は、第二のDNA鋳型の第二の多重又はロングレンジPCR増幅反応であり、ここで、第二の多重PCR増幅の開始前に、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素は、多重又はロングレンジPCR増幅の第一のラウンドに由来する5’-リン酸化PCR生成物を分解する。
したがって、本方法のこの実施態様では、前記は以下の連続工程を含む:
− 第一の標的濃縮反応で、1つの反応容器において5’-リン酸化プライマーを用いる多重又はロングレンジポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって第一のDNA鋳型を増幅し、そのようにしてシーケンシングすることができる注目する増幅標的領域を生成する工程;及び
− 第二の多重PCR増幅反応で、第二のDNA鋳型を標的濃縮し、そのようにしてシーケンシングすることができる注目する増幅標的領域を生成する工程であって、ここで、第二の多重又はロングレンジPCR増幅の開始前に、第二の反応混合物を、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に消化する酵素とともにしばらくの間、当該酵素に標的濃縮増幅の第一のラウンドに由来する5’-リン酸化PCR生成物を除去させるために十分な条件下でインキュベートする、前記工程。
このようにして、シーケンシングすることができ、さらに異なるサンプルの以前のシーケンシング標的濃縮増幅反応のいずれかに由来する潜在的な夾雑PCR生成物を含まない、注目する増幅標的領域が生成される。
好ましくは、この方法では、第一及び第二のDNA鋳型は異なるゲノムDNAサンプルである。
【0023】
上記ですでに述べたように、本発明はまた、(i)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に分解する酵素、及び(ii)1つ又は複数のプライマー対(プライマーの少なくとも1つは5’リン酸化される)の組み合わせを、異なる鋳型の少なくとも第一及び第二の増幅反応を含む方法で、第一の増幅反応の増幅生成物による第二の増幅反応の夾雑を防止するために使用することに関する。
本発明の方法について上記で述べたように、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素並びに5’リン酸化プライマー対の組み合わせを用いれば、第一の増幅ラウンドに続く増幅反応の増幅生成物持越し夾雑を効果的に防止することが可能である。
好ましい実施態様にしたがえば、本発明の方法について上記で概略したように、本発明は、以下の少なくとも1つから選択される方法に適用される:DNAシーケンシングライブラリーを作製する方法、クローン増幅工程を含む次世代シーケンシング(NGS)鋳型を生成する方法、多重PCR又はロングレンジPCR工程を含む次世代シーケンシング標的濃縮のための方法、又は前記の1つ以上の組み合わせ。
したがって、本発明にしたがえば、本使用は、第一の鋳型を増幅する第一の増幅反応、及び第二の鋳型を増幅する少なくとも第二の増幅反応を含む方法で適用され、ここで、5’リン酸化プライマーは増幅反応で用いられ、当該酵素は、5’リン酸化プライマーが用いられた異なるサンプルの以前の増幅反応に由来する潜在的な夾雑PCR生成物を除去するために、以前の増幅反応に続く増幅反応の前に適用される。
ある実施態様にしたがえば、本使用は、ライブラリー増幅反応工程を含むDNAシーケンシングライブラリーを作製する方法で適用される。
【0024】
好ましい実施態様では、5’リン酸化プライマーがライブラリー増幅反応で適用され、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5’-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素はライブラリー増幅反応の前に適用されて、異なるサンプルの以前のライブラリー増幅反応のいずれかに由来する潜在的な夾雑PCR生成物が除去される。
本発明の別の好ましい実施態様にしたがえば、上記に記載の本発明の使用で、5’リン酸化プライマーは第一の増幅反応で適用され、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は、第一の増幅反応の完了後及び別のシーケンシングライブラリー増幅反応の前に、第二の増幅反応と同じ増幅反応容器で適用される。
したがって、当該酵素は、第一のPCRラウンドの後で、すなわち5’-リン酸化プライマー、上記に記載のDNAポリメラーゼ、dNTP、及び適切な反応緩衝剤を用いてNGSライブラリー鋳型が増幅される、NGSライブラリー増幅反応の後で添加される。異なるライブラリーサンプルを用いる第二のNGSライブラリー増幅の前に、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による消化を同じ反応容器で実施し、増幅された第一のNGSライブラリーサンプルのPCR生成物から生じる持越し夾雑を防止する。
別の好ましい実施態様にしたがえば、当該使用は、クローン増幅工程を含む次世代シーケンシング(NGS)鋳型を生成する方法で適用される。
ある特徴にしたがえば、この使用で5’-リン酸化プライマーはクローン増幅反応で適用され、さらに当該酵素はクローン増幅反応の前に適用されて、異なるライブラリーサンプルの以前のクローン増幅反応のいずれかに由来する潜在的な夾雑PCR生成物が除去される。
【0025】
ライブラリー増幅での使用と同様に、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は、この実施態様では、第一のPCRラウンドの後で、すなわち5’-リン酸化プライマー、上記に記載のDNAポリメラーゼ、dNTP、及び適切な反応緩衝剤を用いてNGSライブラリーがクローン増幅される、クローン増幅反応の後で添加される。異なるNGSライブラリーサンプルを用いる第二のクローン増幅の前に、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による消化を同じ反応容器で実施し、増幅された第一のNGSライブラリーサンプルのPCR生成物から生じる持越し夾雑を防止する。
この実施態様にしたがえば、クローン増幅(例えばエマルジョンPCR(上記参照))の第一のラウンドは、5’-リン酸化プライマー、上記に記載の耐熱性ポリメラーゼ、dNTP、緩衝剤及び鋳型(すなわちNGSライブラリー)を用いて実施される。(エマルジョン)PCRの第一ラウンドの完了後、第一増幅ラウンドのPCR生成物による持越し夾雑のリスクは、本発明の使用によって防ぐことができる。
消化(好ましくは、しばらくの間、上記記載の5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素のいろいろな量を用いる)の後で、増幅プロトコルの第二のラウンドを開始させることができ、ここで、第一の最初の変性工程を用いて、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は、エマルジョンPCR(上記参照)が実施される場合はすなわち95℃で、又は架橋PCR(上記参照)が実施される場合は約65℃で不活化される。生成された増幅生成物は、所望しないサンプルに由来する夾雑物を含まず、夾雑物に代わって正しい鋳型のシーケンシングが担保される。
【0026】
したがって、第二のクローン増幅ラウンド(例えばエマルジョンPCR、架橋PCR(上記参照))の前に、持越し夾雑防止のために、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素による消化が、第二の増幅ラウンドのための増幅反応容器と同じ容器で直に実施され、時間及び余分な操作工程が節約される。時間及び量は上記の説明にしたがって選択できる。
5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素と、しばらくの間及び夾雑物の一切又は大半を消化するために十分な条件下でインキュベートした後で、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素を、後続の第二のクローン増幅反応の最初の加熱工程によって熱不活化することができる。前記不活化は、例えば架橋増幅では65℃で、エマルジョンPCRでは95℃で実施される。
第二のラウンド後に、増幅生成物は夾雑物を含まずに回収することができ、これが、夾雑物をシーケンシングする危険を冒すことなく正しい鋳型のシーケンシングを実施できる理由である。
さらに別の実施態様にしたがえば、本発明の方法は、多重PCR又はロングレンジPCR工程を含む、NGS標的濃縮のための方法で利用され、ここで、5’-リン酸化プライマーが多重PCRで適用され、さらに当該酵素は多重PCR増幅反応の前に適用されて、異なるサンプルの以前のシーケンシング標的濃縮増幅反応のいずれかに由来する潜在的な夾雑PCR生成物が除去される、多重PCRを含む方法で適用される場合が好ましい。
【0027】
本発明はまた、DNAシーケンシング鋳型又はライブラリーの生成で使用する、及び/又は多重PCR系シーケンシング標的濃縮で使用するキットに関し、前記キットは、少なくとも、(i)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に分解する酵素、及び(ii1)1つ又は複数の5’-リン酸化プライマー若しくはプライマー対又は(ii2)ポリヌクレオチドキナーゼのどちらか、並びに場合によってアデノシン三リン酸(ATP)並びに1つ又は複数の非リン酸化プライマー若しくはプライマー対を含む。
したがって、本発明のキットのある実施態様にしたがえば、前記キットは、少なくとも(i)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5’リン酸化末端に対する特異性を示す酵素、及び(ii)1つ以上の5’-リン酸化プライマー又はプライマー対を含む。
別の実施態様にしたがえば、本発明のキットは、少なくとも(i)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素、並びに(ii)ヌクレオチドキナーゼ、及び場合によってアデノシン三リン酸(ATP)、及び/又は1つ以上/複数の非リン酸化プライマー又はプライマー対を含む。
別の特徴にしたがえば、本発明の上記記載のキットはまた以下の少なくとも1つを含むことができる:iii)DNAポリメラーゼ、及びiv)場合によって本発明の方法の指示マニュアル、又は前記の組み合わせ。
【0028】
当該プライマーの実際の性質はその用途に左右され、所望のPCRの実施に関心がある当業者は容易に選択することができる。特別なプライマー設計は必要ではない。上記にすでに概略したように、キットには5’リン酸化末端を有するプライマーが存在するか、又はキットは、5’リン酸化を欠くプライマー(キットに含まれる場合も含まれない場合もある)の5’リン酸化のためにポリヌクレオチドキナーゼ(例えばT4ポリヌクレオチドキナーゼ)と一緒に提供できる。この実施態様では、キットはまたアデノシン三リン酸(ATP)を含むことができる。
本発明のキットで用いられるDNAポリメラーゼは、好ましくはハイフィデリティーDNAポリメラーゼ、好ましくは上記に記載したものである。
本発明のキットを用いれば、NGSの調製、NGSワークフローライブラリーでシーケンシング鋳型を生成するクローン増幅手順、及びNGSワークフローで注目の濃縮標的領域を生成する多重PCR手順が高度に改善され、したがって正しい鋳型の信頼できるシーケンシングが実施できることによって、優れたツールが提供される。
本発明のキットはまたさらに、例えば適切な緩衝剤(例えば用いられる酵素に適切な緩衝剤)、又は本発明にしたがって実施される反応及び方法に適切な1つ以上の他の成分を含むことができることは理解されよう。
この新規な使用及び方法及びキットは、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するプルーフリーディングポリメラーゼが用いられるハイフィデリティーPCRに特に適合する。
さらにまた、この新規な使用及び方法及びキットは、多重PCR生成物が同じ反応で生成される多重PCRに特に適合する。
【0029】
さらにまた、dUTP含有dNTPミックスの代わりに通常のdNTPミックスを用いてPCRの性能を担保することができる。これは、多重PCR、ハイフィデリティーPCR、及びファストPCRのために特に有用である。なぜならば、dUTP含有dNTPミックスは、ファストPCR、ハイフィデリティーPCR及び多重PCRではdATP、dCTP、dGTP及びdTTPのみを含むdNTPミックスのように効果的に機能しないからである。
さらにまた、この新規な使用及び新規な方法は、NGS関連生成物で容易に受け入れられうる。すなわち、NGSライブラリー増幅の場合、ユニバーサルPCRプライマーが用いられ、それらは5’-リン酸化オリゴヌクレオチドとして合成できる。シーケンシング鋳型が多重若しくはロングレンジPCR、多重PCR、エマルジョンPCR又はデジタルPCRによって濃縮される標的照準シーケンシングの場合、前設計PCRプライマーは5’-リン酸化オリゴヌクレオチドとして直接提供できる。
本発明のある特徴にしたがえば、本発明の方法、使用及びキットでは、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に消化する酵素はラムダエキソヌクレアーゼである。
ラムダエキソヌクレアーゼは、二本鎖DNAで5’リン酸化鎖を選択的に消化する処理能力の高い5’->3’エキソデオキシリボヌクレアーゼであり、さらに前記は、一本鎖DNA及び非リン酸化DNAでは顕著に低い活性を示す。この酵素は、腸内細菌ファージラムダ(Entrez配列ID:119702)に起源を発するが、それとは別に例えば以下から市場で入手できる(New England Biolabs(Ipswich, MA, USA)、Thermoscientific(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA; USA)、Epicentre(Madison, WI, USA)、Sigma Aldrich(St. Louis, MO, USA)及び他の多くの業者)。
【0030】
特段の規定がなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は、本発明が属する分野の業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
更なる利点は実施態様の記載及び添付の図面のとおりである。
上述の特色及び下記でこれから説明する特色は、それぞれ明記された組み合わせで用いることができるだけでなく、他の組み合わせでも又はそのままでも本発明の範囲から外れることなく用いることができることは言うまでもない。
本出願は、特に下記の項(本開示の部分を構成する)に明記する特徴を開示する。
(1)第一及び第二のDNA鋳型をそれぞれ増幅する少なくとも2つの増幅反応を含む、核酸アンプリコンを生成する方法であり、ここで前記方法は以下の工程を含む:a)第一のDNA鋳型を、ヌクレオチド、DNAポリメラーゼ及びプライマーと接触させる工程(ここで当該プライマーの少なくとも1つはその5’-末端でリン酸化される);b)第一の増幅反応で当該第一のDNA鋳型を増幅し、それによって5’-リン酸化末端を有する二本鎖増幅生成物を生成する工程;c)工程b)の増幅DNA生成物及び/又は増幅DNA生成物を含む反応混合物を、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’リン酸化鎖を特異的に分解する酵素としばらく当該分解を可能にする条件下で接触させる工程;及びd)少なくとも1つの他の増幅反応を第二のDNA鋳型を用いて実施し、それによって核酸アンプリコンを生成する工程。
(2)当該方法が、DNAライブラリー増幅工程を含むDNAシーケンシングライブラリーを作製するための方法である、項(1)に記載の方法。
【0031】
(3)工程a)で当該第一のDNA鋳型が第一の次世代シーケンシング(NGS)ライブラリーであり、工程b)で当該第一の増幅反応が次世代シーケンシング(NGS)ライブラリー増幅反応であり、さらに工程d)で当該第二のDNA鋳型が第二のNGSライブラリーであり、少なくとも1つの他の増幅反応が第二のNGSライブラリー増幅反応である、項(1)又は(2)のいずれかに記載の方法。
(4)当該方法が、クローン増幅工程を含む次世代シーケンシング(NGS)鋳型を生成する方法である、項(1)に記載の方法。
(5)工程a)で当該第一のDNA鋳型が第一のDNAライブラリーであり、工程b)で当該第一の増幅反応がクローン増幅反応であり、さらに工程d)で当該第二のDNA鋳型が第二のDNAライブラリーであり、少なくとも1つの他の増幅反応が第二のクローン増幅反応である、項(1)又は(4)に記載の方法。
(6)多重PCR工程又はロングレンジPCR工程を含むNGS標的濃縮のための方法に適用される、項(1)に記載の方法。
(7)工程b)で当該第一の増幅反応が第一のDNA鋳型の第一の多重又はロングレンジポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、そのようにして注目する増幅標的領域を生成し、さらに工程d)で少なくとも1つの他の増幅反応が第二のDNA鋳型の第二の多重PCR増幅反応である、項(1)又は(6)に記載の方法。
(8)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素がラムダエキソヌクレアーゼである、項(1)から(7)のいずれかに記載の方法。
【0032】
(9)種々の鋳型の少なくとも第一及び第二の増幅反応を含む方法における、第一の増幅反応の増幅生成物による第二の増幅反応の夾雑を防止する、(i)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素;及び(ii)1つ又は複数のプライマー対(当該プライマーの少なくとも1つは5’リン酸化される)の組み合わせの使用。
(10)当該方法が下記の少なくとも1つから選択される項(9)に記載の使用:DNAシーケンシングライブラリーを作製する方法、クローン増幅工程を含む次世代シーケンシング(NGS)鋳型を生成する方法、多重PCR工程若しくはロングレンジPCR工程を含む次世代シーケンシング標的濃縮のための方法、又は前記の1つ以上の組み合わせ。
(11)項(1)から(7)のいずれかに記載の方法に適用される、項(9)に記載の使用。
(12)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素がラムダエキソヌクレアーゼである、項(9)から(11)のいずれかに記載の使用。
(13)DNAシーケンシング鋳型の生成で使用するため、DNAシーケンシングライブラリーを作製するため、及び/又は多重PCR系シーケンシング標的濃縮で使用するためのキットであって、少なくとも、(i)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素、及び、(ii1)1つ又は複数の5’-リン酸化プライマー若しくはプライマー対又は(ii2)ポリヌクレオチドキナーゼのどちらか、並びに場合によってアデノシン三リン酸(ATP)並びに場合によって1つ又は複数の非リン酸化プライマー若しくはプライマー対を含む前記キット。
(14)さらに以下の少なくとも1つを含む、項(13)に記載のキット:(iii)DNAポリメラーゼ、及び(iv)指示マニュアル。
(15)5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示しさらに二本鎖核酸の5’-リン酸化鎖を特異的に分解する酵素がラムダエキソヌクレアーゼである、項(13)又は(14)に記載のキット。
本発明のいくつかの実施態様を図面で例示し、さらに下記記載でより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施例
本発明を用いて、PCR持越し夾雑を防止することができる高度に効率的なツールが提供される。本発明にしたがえば、二本鎖DNAの5’-リン酸化鎖を選択的に消化又は分解する5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示す酵素が用いられる。本発明にしたがえば、当該酵素のこの特性を用いて、本来のDNA鋳型に影響を及ぼさずに持越しPCR生成物が特異的に消化される。
【実施例1】
【0035】
Taqポリメラーゼを用いるPCR実験を実施した。PCRの第一のラウンドをABI 7500リアルタイムPCRサイクラー(LIFE Technologies)で、QuantiFast SYBR Green PCRマスターミックス(Qiagen)、鋳型として4ngのヒトgDNA、及びTNFアルファ遺伝子に特異的なプライマー対(プライマー配列:配列番号:1(GGTTTCGAAGTGGTGGTCTTG)、配列番号:2(CCTGCCCCAATCCCTTTATT)、PCR反応における最終濃度は各々1μM)を用いて実施した。TNFアルファプライマーは非リン酸化であるか(
図1参照;‘プライマー:no Pi’)、又は5’でリン酸化される(
図1参照;‘プライマー:5’-Pi’)。PCRサイクル運転は、QuantiFast SYBR Green PCRハンドブック(Qiagen)の標準的プロトコルにしたがって実施した(すなわち、最初の変性及びHotStar Taq Plusポリメラーゼの再活性化のために95℃、5分;95℃、10秒及び60℃、30秒の40サイクル)。
これらの実験の結果は
図1及び下記の表1に示されている(表1はqPCRの平均Ct値の要約である(Ct=閾サイクル(すなわち蛍光が閾値を超えるサイクル数である))。
【0036】
表1:5’-リン酸化プライマー又は非リン酸化プライマーによる実施例1のqPCRのCt値
TNFアルファ遺伝子は、非リン酸化であれ、5’-リン酸化プライマー対であれ類似のCtで検出された。プライマーの5’-リン酸化はPCR効率に影響を及ぼさないように思われる。
【実施例2】
【0037】
次に、持越し夾雑の状況を模倣するために、まず初めにPCR生成物をRNaseフリー水で1:100に希釈した。希釈したPCR生成物の1μLを消化しないか(
図2参照、‘Exo:無し’)、又は5’->3’エキソヌクレアーゼ活性を示す典型的酵素(すなわちラムダエキソヌクレアーゼ、前記は高度な処理能力を有する5’->3’エキソヌクレアーゼである)で消化した(
図2参照、‘Exo:有り’)。1μLのラムダエキソヌクレアーゼ(10U/μL(New England Biolabs))を添加し、ラムダエキソヌクレアーゼ反応緩衝剤(New England Biolabs;1x最終濃度)を含む20μLの反応物中で37℃、60分インキュベートした。1:100に希釈したラムダエキソヌクレアーゼ消化反応物のそれぞれ2μLを鋳型としてqPCRの第二のラウンドで、QuantiFast SYBR Green PCRマスターミックス(Qiagen;1x最終濃度)、及び非リン酸化TNFアルファプライマー(配列番号:1(GGTTTCGAAGTGGTGGTCTTG)、配列番号:2(CCTGCCCCAATCCCTTTATT)、各々1μM)とともに用いた。qPCRは、ABI 7500リアルタイムPCRサイクラー(LIFE Technologies)で二組ずつの複製で実施した。増幅図は
図2及び下記の表2(平均Ct値の要約)に示されている。
【0038】
表2:5’-リン酸化プライマー又は非リン酸化プライマーによる実施例2のqPCRのCt値
図2及び表2から理解されるように、非リン酸化PCR生成物がまず初めにラムダエキソヌクレアーゼ消化、続いてqPCRに付される場合には、非消化及びラムダエキソヌクレアーゼ消化PCR生成物の間には約1Ctの相違しか存在しない。
しかしながら、5’-リン酸化PCR生成物を鋳型として用いる場合、非消化或いはラムダエキソヌクレアーゼ消化PCR生成物の間には約5Ctの相違が存在した。したがって、5’-リン酸化PCR生成物は、ラムダエキソヌクレアーゼ処理後に約32倍減少し(=2
5、1Ctの相違はDNAの1/2の減少に一致する)、夾雑PCR生成物は実質的に消化されたことを示している。したがって、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は、5’-リン酸化プライマーを用いて生成されたPCR生成物を効果的かつ特異的に除去できることを示すことができた。
【実施例3】
【0039】
次にこの方法及び使用を、ファミリーBプルーフリーディングポリメラーゼを用いるハイフィデリティーPCRと組み合わせて試験した。PCRの第一のラウンドは以下を用いて実施した:鋳型として10ngのヒトゲノムDNA、各々1μMのIL1R2遺伝子特異的5’-リン酸化(
図3参照、‘プライマー:5’-Pi’)又は非リン酸化プライマー(
図3参照、‘プライマー:no-Pi’)(プライマー配列:配列番号:3(CGGGTAGGCGCTCTCTATGT)、配列番号:4(AAGACTGACAATCCCGTGTAAGG))、2.5UのHotStarハイフィデリティーポリメラーゼ(Qiagen)、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するファミリーBポリメラーゼ、及びHotStarハイフィデリティーPCR緩衝剤(Qiagen;1x最終濃度)。
PCRサイクル運転プロトコルは以下のとおりであった:最初の変性のために95℃で5分;95℃15秒、60℃11分、72℃1分の35サイクル;及び72℃10分の最後の伸長工程。
5’-リン酸化プライマーにより生成されたPCR生成物をラムダエキソヌクレアーゼが特異的に消化したか否か、及びこの消化がPCR反応ミックスで直接的に機能することができたか否かを試験するために、ラムダエキソヌクレアーゼの存在下(ラムダエキソヌクレアーゼとの反応のために1U/反応)又は非存在下で、25μLの反応ミックスを各々1μMのIL1R2遺伝子特異的非リン酸化プライマー(配列番号:3(CGGGTAGGCGCTCTCTATGT)、配列番号:4(AAGACTGACAATCCCGTGTAAGG))、QuantiTect SYBR Green PCRマスタ―ミックスと一緒にした。
ハイフィデリティーPCRの第一ラウンドのPCR生成物をRNaseフリー水で1:100,000に希釈し、希釈PCR生成物の2μLを鋳型としてSYBR Green PCR反応ミックスに四組ずつの複製で添加した。この反応ミックスをRotorgene QリアルタイムPCRサイクラー(Qiagen)で以下の温度サイクリングプロトコルに付した:ラムダエキソヌクレアーゼ消化のために37℃で10分;最初の変性、QuantiTect SYBR Green PCRマスターミックス中のHotStar Taqの再活性化とともにラムダエキソヌクレアーゼの不活化のために95℃で15分;94℃15秒、60℃30秒及び72℃30秒の45サイクル。
したがって、
図3Aはラムダエキソヌクレアーゼを用いないqPCR反応の増幅曲線を示し、
図3Bはラムダエキソヌクレアーゼを用いたqPCR反応の増幅曲線を示し、下記表3は
図3のqPCR実験の平均Ct値の要約である。
【0040】
表3:5’-リン酸化プライマー又は非リン酸化プライマーによる実施例3のqPCRのCt値
図3A及び3B並びに表3から理解できるように、ラムダエキソヌクレアーゼの非存在下では、非修飾プライマー及び5’-リン酸化プライマーにより生成されたハイフィデリティーPCR生成物は、qPCRの第二のラウンドで類似のCt値で検出された(リン酸化プライマーによるPCRでCt9,25、非リン酸化プライマーによるPCRでCt8,92)。
ラムダエキソヌクレアーゼの存在下では、非リン酸化プライマーにより生成されたハイフィデリティーPCR生成物は、ラムダエキソヌクレアーゼの非存在下の反応におけるCt値と類似するCt値(Ct8,90)で検出された。しかしながら、5’-リン酸化プライマーにより生成されたPCR生成物が、ラムダエキソヌクレアーゼ消化が先行したqPCRで鋳型として用いられた場合、顕著なCtシフトが観察された(ラムダエキソヌクレアーゼ消化が行われない反応と比較して、約4Ct相違するCt13.48)で、これは5’-リン酸化PCR生成物の約16倍の減少と一致する(1Ctの相違はDNAの50%減少と一致する)。
結論すれば、5’->3’エキソヌクレアーゼ活性及び二本鎖核酸の5-リン酸化末端に対する特異性を示す酵素は、5’-リン酸化プライマーにより生成されたPCR生成物を効果的に消化できることを示すことができた。5’-リン酸化プライマー及び当該酵素の組み合わせは、したがってPCR持越し夾雑、特にハイフィデリティーPCR(ファミリーBポリメラーゼの使用が、持越し夾雑防止のための通常のdUTP/UNG方法に適合しない)による夾雑を防止するために用いられる。
したがって、本発明は、異なるサンプルのいくつかの増幅ラウンドを含む一般的な増幅プロセスだけでなく、NGSワークフロー、例えばPCRによる標的濃縮、多重PCR、ロングレンジPCR及びデジタルPCR(ハイフィデリティーポリメラーゼの使用が強く所望される);NGSシーケンシングライブラリーの増幅;シーケンシング鋳型の調製のためのクローン増幅、例えばエマルジョンPCR及び架橋PCRでもまた、多様な増幅工程で利用することができる。さらにまた、本発明を用いて、PyroMarkの装置でピロシーケンシング用のシーケンシング鋳型の調製を、Sangerシーケンシング用のシーケンシング鋳型の調製と同様に実施することができる。