(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
操業実施例以外は、または特に記載のない限り、本明細書および特許請求の範囲に使用される成分量、反応条件などを指す数字または式はすべて、すべての場合、「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。したがって、そうではないことが示されていない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明において得ることが望まれている所望の特性に応じて変化できる近似値である。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、少なくとも各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字を考慮すること、及び通常の四捨五入を適用することによって解釈されなければならない。
【0023】
本発明の広範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、具体的な実施例に記載された数値は可能な限り正確に報告する。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定値における標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。
【0024】
また、本明細書に記載のあらゆる数値範囲は、その範囲に含まれる部分範囲をすべて含むことを意図しているものと理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、最小値1および最大値10を含むその間の部分範囲をすべて含むことを意図している。すなわち、1以上の最小値、および10以下の最大値を有する。開示されている数値範囲は連続的であるため、これらは、最小値と最大値の間のすべての値を含む。明示されていない限り、本出願において指定された様々な数値範囲は近似値である。
【0025】
本明細書において表されるすべての組成範囲は、実際には合計で100パーセント(体積パーセントまたは重量パーセント)に限られ、これを超えない。が、複数の成分が組成物中に存在できる場合、各成分の最大量の合計が100パーセントを超えることがあるが、実際に使用される成分の量が100パーセントの最大値になることは当業者なら容易に理解できる。
【0026】
記号
式、図面および本明細書において、以下の記号は、次の意味を有する。
τ(タウ):反応器内の流体の滞留時間またはホールドアップ時間
θ
95:反応器内における混合時間またはバルク混合時間
t:時間
N:攪拌機速度。
Re:羽根車のレイノルズ数。
【0027】
連続攪拌槽型反応器(CSTR)は、幅広い用途、例えば、場合によっては調味料(condiments)から重合(アルファ−オレフィンの重合など)において使用できる。製品が均等であるために、特にオレフィン重合においては、タンク内の局所流体齢が十分に均一であることが重要である。
【0028】
CSTRの構成では、通常、いくつかの入口および出口が基本設計に組み込まれる。しかし、通常は、設置された反応器では限られた数の入口のみ(1または2)が実際に使用される。所定の攪拌機システムに対して、異なる入口を使用することによって、反応器内容物の相対的な均質性が受ける影響を、好ましくは反応器の設置前に評価することが望ましい。反応器が設計または設置中である場合、可能性のある入口位置のうちのどれが反応器の均質性の向上に有用であるかを判断することが可能である。
【0029】
所与の反応器における入口の構成の代替においては、反応器内容物の相対的な均質性に対する異なる攪拌機の影響を理解することが望ましい。
【0030】
重合のような化学反応系においては、反応器内に淀みのゾーン(「デッドゾーン」)がないか知ることが重要である。また、触媒の速度論と効率的な混合との相対的な相互作用を推定できることも望ましい。混合が不十分なゾーンは、高活性触媒系には望ましくない。これは、最終的な生成物に不均質性を持ち込む虞がある。より遅い反応速度の触媒を選択することによって、生成物の不均質性を低減できることがある。
【0031】
上記で述べたように、Danckwertsは、局所流体齢の理論を発表した。理論は比較的理解しやすいように見えるが、反応器に理論を応用すると問題が生じる。
【0032】
1つの方法は、攪拌機設計およびいくつかの代替の入口ポートを含む、問題の反応器の透明なスケールモデルを製作することである。フルオレセインナトリウムなど、既知の波長の入射光下で蛍光発光する均一濃度のトレーサー色素を含む試験流体で反応器を満たす。流体は通常、所望の羽根車のレイノルズ数を与えるよう選ばれたグリセロール(gylcerol)水溶液である。攪拌機を稼働させながら、未染色の試験流体を反応器内に流し始め、濃度に階段状の変化を生じさせる。色素が反応器から洗い流される間および混合中、その波長が、異なる波長で色素を蛍光発光させるレーザーが、光の面として反応器に入る。これを
図1に概略的に示す。実験中、入射レーザー光を遮断する着色フィルターを使用して、デジタルカメラで色素の画像を取り込む。
【0033】
実験の始め(t=0)において、反応器内の濃度は既知であるが、通常1に正規化される。実験の終わり(すなわち、t=6τ)において、反応器内の濃度は0である。実験において、任意の画素の正規化された濃度は、次の線形内挿式により求めることができる。
C(x,t)=[I(x,t)−I(x,t=∞)]/[I(x,t=0)−I(x,t=∞)]
式中、Cは正規化された濃度、xは画素の位置、およびIはカメラにより測定される光の強度である。
【0034】
この正規化の操作により、レーザー面の強度、カメラの画素および光学系のばらつきが補正される。色素によるレーザーの減衰の影響を補正するために、さらに補正が必要になることもある。その結果は、各フレーム内に正規化された色素濃度を示す一連の画像である。次に、これらの画像を時間で積分して、反応器内の流体の局所齢の分布を計算することができる(この計算を
図5および
図6に示す)。出口齢に対して正規化された局所流体齢は、0.5〜1.3、好ましくは0.8〜1.0になることができる。
【0035】
データから、変動係数(CoV)を計算することもできる。これは、反応器内の局所流体齢の標準偏差を反応器内の局所流体齢の平均で除した値である。
【0036】
ある実施形態では、出口齢に対して正規化された反応器内容物の局所齢は0.5〜1.3であり、ある実施形態では、出口齢に対して正規化された反応器内容物の局所齢は0.6〜1.2であり、他の実施形態では、出口齢に対して正規化された反応器内容物の局所齢は0.8〜1.0である。この正規化された齢の比が1に近いほど、反応器はよりよく混合されている。さらに、変動係数(CoV)は、正規化された反応器内のホールドアップ時間の標準偏差を、正規化された反応器内の流体の平均齢の平均で割った値(無名数)であるが、通常は小さくすべきであり、ある実施形態においては0.01〜0.10、他の実施形態においては0.01〜0.06にすべきである。
【0037】
他の実施形態によれば、以下のステップを有する連続攪拌槽型反応器(CSTR)の好ましい入口位置を決定する方法が提供される。
1)攪拌機設計およびいくつかの代替の入口ポートを含み、好ましくは少なくとも1つの平坦な外面を有する、問題の反応器と同等(規模の拡大縮小可能)の透明なモデルを製作するステップ。
2)既知の波長の入射光下で蛍光発光する均一濃度のトレーサー色素を含み、所望のレイノルズ数を与えるよう選ばれた粘度を有する試験流体により反応器を満たすステップ。
3)反応器内のトレーサー色素の濃度に階段状の変化を生じさせるために、一定のレイノルズ数を与えるために攪拌機を一定の速度で稼働させながら、選択された入口ポートを使用して、反応器容積の6倍の、色素を含まない試験流体を反応器に流入および流通させるステップ。
4)色素が反応器から流出される間および混合中に、(反応器の平坦な表面を通じて、)反応器内容物をレーザー光の面に当てるステップ。レーザー光の波長は、色素をレーザーの波長とは異なる波長で色素を蛍光発光させる。
5)羽根がすべての画像において同期されるように、羽根車の回転速度と同期された速度で入射レーザー光を除くフィルターを通して、反応器からの蛍光のデジタル画像を撮影するステップ。
6)各画像の各画素内の正規化された色素濃度を計算するステップ。
7)すべての画像にわたって各画素内の正規化された濃度を時間で積分して、各画素の平均局所流体齢を計算するステップ。
8)局所齢および変動係数の標準偏差および平均を計算して、結果を格納するステップ。
9)反応器への異なる入口について、ステップ1〜8を反復して繰り返すステップ。
10)格納されたデータを比較して、
i)0.5〜1.3の正規化された色素濃度(反応器内容物の正規化された齢)、
ii)0.01〜0.1の変動係数、および
iii)反応器内容物の平均齢における最小標準偏差
のうちの1つ、好ましくは2以上を与える入口を決定するステップ。
11)ステップ8から、最適な値を与える入力ポートを選択するステップ。
【0038】
他の実施形態によれば、以下のステップを有する連続攪拌槽型反応器(CSTR)の好ましい攪拌機を決定する方法が提供される。
1)攪拌機設計およびいくつかの代替の入口ポートを含み、好ましくは少なくとも1つの平坦な外面を有する、問題の反応器と同等(規模の拡大縮小可能)の透明なモデルを製作するステップ。
2)既知の波長の入射光下で蛍光発光する均一濃度のトレーサー色素を含み、所望のレイノルズ数を与えるよう選ばれた粘度を有する試験流体により反応器を満たすステップ。
3)反応器内のトレーサー色素の濃度に階段状の変化を生じさせるために、一定のレイノルズ数を与えるために攪拌機を一定の速度で稼働させながら、選択された入口ポートを使用して、反応器容積の6倍の、色素を含まない試験流体を反応器に流入および流通させるステップ。
4)色素が反応器から流出される間および混合中に、(反応器の平坦な表面を通じて、)反応器内容物をレーザー光の面に当てるステップ。レーザー光の波長は、色素をレーザーの波長とは異なる波長で蛍光発光させる。
5)羽根がすべての画像において同期されるように、羽根車の回転速度と同期された速度で入射レーザー光を除くフィルターを通して、反応器からの蛍光のデジタル画像を撮影するステップ。
6)各画像の各画素内の正規化された色素濃度を計算するステップ。
7)すべての画像にわたって各画素内の正規化された濃度を時間で積分して、各画素の平均局所流体齢を計算するステップ。
8)局所齢および変動係数の標準偏差および平均を計算して、結果を格納するステップ。
9)反応器の異なる攪拌機について、ステップ1〜8を反復して繰り返すステップ。
10)格納されたデータを比較して、
i)0.5〜1.3の正規化された色素濃度(反応器内容物の正規化された齢)、
ii)0.01〜0.1の変動係数、および
iii)反応器内容物の平均齢における最小標準偏差
のうちの1つ、好ましくは2つ以上を与える攪拌機を決定するステップ。
11)ステップ8から、最適な値を与える攪拌機を選択するステップ。
【0039】
好ましい入口ポートおよび攪拌機を決定すると、上記を繰り返して、好ましい反応器への流量および好ましい攪拌機速度を決定することができる。
【0040】
他の実施形態によれば、以下のステップを有する連続攪拌槽型反応器(CSTR)の好ましい攪拌機速度を決定する方法が提供される。
1)攪拌機設計およびいくつかの代替の入口ポートを含み、好ましくは少なくとも1つの平坦な外面を有する、問題の反応器と同等(規模の拡大縮小可能)の透明なモデルを製作するステップ。
2)既知の波長の入射光下で蛍光発光する均一濃度のトレーサー色素を含み、所望のレイノルズ数を与えるよう選ばれた粘度を有する試験流体により反応器を満たすステップ。
3)反応器内のトレーサー色素の濃度に階段状の変化を生じさせるために、選択された供給ポート、および一定のレイノルズ数を与えるために一定の速度で稼働する攪拌機を使用して、反応器容積の6倍の、色素を含まない試験流体を一定の流量で反応器に流入および流通させるステップ。
4)色素が反応器から流出される間および混合中、(反応器の平坦な表面を通じて、)反応器内容物をレーザー光の面に当てるステップ。レーザー光の波長は、色素をレーザーの波長とは異なる波長で蛍光発光させる。
5)羽根がすべての画像において同期されるように、羽根車の回転速度と同期された速度で入射レーザー光を除くフィルターを通して、反応器からの蛍光のデジタル画像を撮影するステップ。
6)各画像の各画素内の正規化された色素濃度を計算するステップ。
7)すべての画像にわたって各画素内の正規化された濃度を時間で積分して、各画素の平均局所流体齢を計算するステップ。
8)局所齢および変動係数の標準偏差および平均を計算して、結果を格納するステップ。
9)異なる攪拌機速度について、ステップ1〜8を反復して繰り返すステップ。
10)格納されたデータを比較して、
i)0.5〜1.3の正規化された色素濃度(反応器内容物の正規化された齢)、
ii)0.01〜0.1の変動係数、および
iii)反応器内容物の平均齢における最小標準偏差
のうちの1つ、好ましくは2つ以上を与える入口を決定するステップ。
11)ステップ8から、最適な値を与える攪拌機速度を選択するステップ。
【0041】
他の実施形態によれば、以下のステップを有する連続攪拌槽型反応器(CSTR)への好ましい供給流量を決定する方法が提供される。
1)攪拌機設計およびいくつかの代替の入口ポートを含み、好ましくは少なくとも1つの平坦な外面を有する、問題の反応器と同等(規模の拡大縮小可能)の透明なモデルを製作するステップ。
2)既知の波長の入射光下で蛍光発光する均一濃度のトレーサー色素を含み、所望のレイノルズ数を与えるよう選ばれた粘度を有する試験流体により反応器を満たすステップ。
3)反応器内のトレーサー色素の濃度に階段状の変化を生じさせるために、選択された供給ポート、および一定のレイノルズ数を与えるために一定の速度で稼働する攪拌機を使用して、反応器容積の6倍の、色素を含まない試験流体を一定の流量で反応器に流入および流通させるステップ。
4)色素が反応器から流出される間および混合中に、(反応器の平坦な表面を通じて、)反応器内容物をレーザー光の面に当てるステップ。レーザー光の波長は、色素をレーザーの波長とは異なる波長で蛍光発光させる。
5)羽根がすべての画像において同期されるように、羽根車の回転速度と同期された速度で入射レーザー光を除くフィルターを通して、反応器からの蛍光のデジタル画像を撮影するステップ。
6)各画像の各画素内の正規化された色素濃度を計算するステップ。
7)すべての画像にわたって各画素内の正規化された濃度を時間で積分して、各画素の平均局所流体齢を計算するステップ。
8)局所齢および変動係数の標準偏差および平均を計算して、結果を格納するステップ。
9)反応器への異なる供給流量について、ステップ1〜8を反復して繰り返すステップ。
10)格納されたデータを比較して、
i)0.5〜1.3の正規化された色素濃度(反応器内容物の正規化された齢)、
ii)0.01〜0.1の変動係数、および
iii)反応器内容物の平均齢における最小標準偏差
のうちの1つ、好ましくは2以上を与える供給流量を決定するステップ。
11)ステップ8から、最適な値を与える反応器供給量を選択するステップ。
【0042】
次に、生成物の品質および均質性を向上させるために、上記の値および比を反応器の運転に適用する。
【0043】
上記のプロセスは、いくつかの化学反応、特に、ポリスチレンおよび高衝撃性ポリスチレン(「HIPS」)のバルク重合または溶液重合、ならびに、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンのような1つまたは複数のC
2−8アルファ−オレフィンの重合に適用できる。
【0044】
一般に、溶媒が1つまたは複数のC
5−12飽和炭化水素からなる群から選択された(通常はC
3−8炭化水素である)溶液中でオレフィンの重合を行うことができる。これらの飽和炭化水素は、C
1−4アルキル基で置換されても、置換されなくてもよい。例えば、ペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよび水素化ナフサである。市販の適した溶媒の一例は、「Isopar E」(C
8−12脂肪族溶媒、Exxon Chemical Co.)である。
【0045】
反応は、並列または直列の1つまたは複数の反応器で行われてもよい。本発明による計算は、プロセスに使用される各反応器に適用されるであろう。
【0046】
通常、溶液重合プロセスは、130℃〜300℃、ある実施形態では120℃〜250℃、ある実施形態では180℃〜220℃の温度で、5〜40MPa、ある実施形態では14〜22MPaの圧力で実施される。
【0047】
反応器システム内の圧力は、単一相の溶液として重合溶液を維持し、反応器システムから熱交換器システムを通って脱揮発システムまでポリマー溶液を送液するのに必要な上流圧力を与えるように十分高くすべきである。
【0048】
溶液重合プロセスは、1つまたは複数の攪拌槽型反応器を含む攪拌「反応器システム」または等価物(すなわち、ループ型反応器)(CSTR)、あるいは混合ループおよび攪拌槽型反応器システムで実施できる。CSTR反応器は円筒形または球形でもよい。攪拌機は、オーガー式攪拌機、アンカー型攪拌機、ラジアル羽根タービン、傾斜羽根タービン、水中翼羽根車、あるいは1つまたは複数のこれらの要素を含むハイブリッド羽根車からなる群から選択できる。反応器は、直列運転または並列運転できる。二重直列反応器システムにおいて、第1の重合反応器は、好ましくはさらに低温で運転される。各反応器内の滞留時間は、反応器の設計および容量ならびに統合運転プロセスに依存する。一般に、反応器は、反応物の完全な混合を実現する条件下で運転されるべきである。さらに、最終的なポリマーの20〜60重量%が第1の反応器で重合され、残部が第2の反応器で重合されることが好ましい。
【0049】
CSTRがほぼ均質に運転されることが非常に望ましく、これは、反応器内の局所齢が出口齢とほぼ等しいか、または局所齢の変動係数(CoV)が非常に小さい(例えば、ある実施形態においては0.01〜0.10、別の実施形態においては0.01〜0.06)ことから確認できる。
【0050】
上記の無名数の値を使用して、(同じ生成物を生成する)異なる反応器を同じ位置または異なる位置で比較(ランク付け)することができる。これにより、パイロットプラントから商業プラントへなど、異なる反応器に使用されるプロセス手順をよりよく実施できる。さらに、本技術を利用して、様々な攪拌機による混合を比較できる。
【0051】
アルファ・オレフィンの溶液重合において、いくつかの触媒が単独で、または組み合わせられて使用できる。触媒は、シングルサイト触媒、チーグラー・ナッタ触媒およびクロム触媒からなる群から選択できる。溶液重合プロセスにおいては、触媒は担持されていない。触媒は、反応器につながる(すなわち、オンラインの)(1つまたは複数の)ライン内で、その位置で(in situ)生成されてもよいし、またはオフラインで事前に生成されてもよい。オフラインの触媒は、反応のための溶媒、または反応を阻害しない溶媒に可溶であるか、分散可能である必要がある。
【0052】
クロム触媒
使用されるクロム化合物は、任意の適切なクロム塩あるいは無機または有機クロム化合物にすることができる。例えば、クロモセン(すなわち、ビス(シクロペンタジエニル)クロム)、シリルクロマートおよび酸化クロムを使用してもよい。好ましくは、クロム化合物は、酸化クロムまたはシリルクロマート化合物である。
【0053】
酸化クロムは、CrO
3、または酸化条件下でCrO
3に変換できる任意の化合物でもよい。酸化条件下でCrO
3に変換できる化合物の例は、米国特許第2825721号、米国特許第3023203号、米国特許第3622251号および米国特許第4011382号に開示されており、アセチルアセトンクロム、塩化第二クロム、硝酸第二クロム、酢酸第二クロム、硫酸第二クロム、クロム酸アンモニウム、二クロム酸アンモニウムおよびクロム酸の他の可溶な塩を含むが、これらに限定されない。
【0054】
シリルクロマート(すなわち、シリルクロム)触媒は、式I:
【化1】
(式中、Rは、1〜14個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。)の少なくとも1つの基を有する。
【0055】
本発明の好ましい態様において、シリルクロマート触媒は、式II:
【化2】
(式中、R’は、1〜14個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。)を有するビス−トリヒドロカルビルシリルクロマートである。R’は無関係に、アルキル基、アルカリル基、アラルキル基またはアリール基など、任意のタイプのヒドロカルビル基にすることができる。いくつかの非限定的な例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、イソペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ヘンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ベンジル、フェネチル、p−メチルベンジル、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、エチルフェニル、メチルナフチル、ジメチルナフチルなどが含まれる。決して網羅的でも、完全なものでもないが、このプロセスにおいて使用できる好ましいシリルクロマートの例示は、ビス−トリメチルシリルクロマート、ビス−トリエチルシリルクロマート、ビス−トリブチルシリルクロマート、ビス−トリイソペンチルシリルクロマート、ビス−トリ−2−エチルヘキシルシリルクロマート、ビス−トリデシルシリルクロマート、ビス−トリ(テトラデシル)シリルクロマート、ビス−トリベンジルシリルクロマート、ビス−トリフェネチルシリルクロマート、ビス−トリフェニルシリルクロマート、ビス−トリトリルシリルクロマート、ビス−トリキシリルシリルクロマート、ビス−トリナフチルシリルクロマート、ビス−トリエチルフェニルシリルクロマート、ビス−トリメチルナフチルシリルクロマート、ポリジフェニルシリルクロマート、ポリジエチルシリルクロマートなどのような化合物である。ビス−トリヒドロカルビルシリルクロマート触媒の例は、米国特許第3704287号および米国特許第4100105号にも開示されている。
【0056】
チーグラー・ナッタ触媒
通常、チーグラー・ナッタ触媒は、電子供与体の存在下で、マグネシウム化合物(任意選択でハロゲン化マグネシウムを沈殿させるハロゲン化物供与体の存在下)、チタン化合物およびアルミニウム化合物を含む。アルミニウム化合物は、いくつかの段階で加えられてもよい。
【0057】
通常、本発明による有用なチーグラー・ナッタ触媒は、以下を含む。
式R
1bAl(OR
1)
aX
3−(a+b)(式中、aは0〜3の整数であり、bは0〜3の整数であり、およびa+bの和は0〜3であり、R
1は、同じか、または異なるC
1−10アルキル基であり、およびXは塩素原子である。)のアルミニウム化合物、
遷移金属、
好ましくは、式Ti((O)
cR
2)
dX
e(式中、R
2は、C
1−4アルキル基、C
6−10芳香族基およびこれらの混合物からなる群から選択され、Xは、塩素原子および臭素原子からなる群から選択され、cは0または1であり、dは0または最大4の整数であり、およびeは0または最大4の整数であり、およびd+eの和は、Ti原子の原子価である。)のチタン化合物;
式(R
5)
fMgX
2−f(式中、各R
5は無関係にC
1−8アルキル基であり、およびfは0、1または2である。)のマグネシウム化合物;
CCl
4、またはC
3−6二級または三級ハロゲン化アルキルからなる群から選択されるハロゲン化アルキル、および
任意選択で電子供与体を含み、2:1〜15:1の全AlとTi(例えば、第1および/または第2のアルミニウム添加(添加が2回行われる場合)Al
1およびAl
2のモル比1:1〜8:1の第2のアルミニウム(Al
2)添加からのAlとTiのモル比;
0.5:1〜20:1、好ましくは1:1〜12:1のMg:Tiのモル比;
1:1〜6:1、好ましくは1.5:1〜5:1のCCl
4またはハロゲン化アルキルからの活性ハロゲン化物(これは、Al化合物およびTi化合物からのハロゲン化物を除く。)とMgのモル比、および
0:1〜18:1、好ましくは1:1〜15:1の電子供与体とTiのモル比。
【0058】
通常、触媒成分は、C
1−4アルキル基で置換されても、置換されなくてもよい不活性なC
5−10炭化水素などの有機媒体中で反応させる。溶媒には、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、水素化ナフサおよびIsopar(登録商標)E(Exxon Chemical Companyから入手できる溶媒)ならびにこれらの混合物が含まれる。
【0059】
通常、本発明による触媒または触媒前駆体の生成において有用なアルミニウム化合物は、式R
1bAl(OR
1)
aX
3−(a+b)(式中、aは0〜3の整数であり、bは0〜3の整数であり、およびa+bの和は0〜3であり、R
1は、同じか、または異なるC
1−10アルキル基であり、およびXは塩素原子である。)を有する。適したアルミニウム化合物には、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAL)、イソプレニルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム(TiBAL)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、トリ−n−ヘキシルアルミニウム(TnHAl)、トリ−n−オクチルアルミニウム(TnOAl)、ジエチルアルミニウムエトキシドおよびこれらの混合物が含まれる。ハロゲン化物を含むアルミニウム化合物は、アルミニウムセスキハライドでもよい。好ましくは、アルミニウム化合物において、aは0であり、bは3であり、およびR
1はC
1−8アルキル基である。
【0060】
マグネシウム化合物は、式(R
5)
fMgX
2−f(式中、各R
5は、C
1−8アルキル基からなる群から無関係に選択され、およびfは0、1または2である。)の化合物でもよい。市販のマグネシウム化合物には、塩化マグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジブチルマグネシウムおよびブチルエチルマグネシウムが含まれる。マグネシウム化合物が有機溶媒に可溶である場合、マグネシウム化合物をハロゲン化剤または反応性の有機ハロゲン化物と一緒に使用して、ハロゲン化マグネシウム(すなわち、MgX
2(式中、Xはハロゲン、好ましくは塩素または臭素、最も好ましくは塩素である。)を生成することができて、これは溶液から沈殿する(場合によっては、Ti化合物の基質を生成する)。ハロゲン化剤には、CCl
4、または式R
6Cl(式中、R
6は、二級および三級C
3−6アルキル基からなる群から選択される。)の二級または三級ハロゲン化物が含まれる。適した塩化物には、sec−ブチルクロリド、t−ブチルクロリドおよびsec−プロピルクロリドが含まれる。反応性のハロゲン化物は、活性Cl:Mgモル比が、1.5:1〜5:1、好ましくは1.75:1〜4:1、最も好ましくは1.9:1〜3.5:1のような量で触媒に加えられる。
【0061】
触媒中のチタン化合物は、式Ti((O)
cR
2)
dX
e(式中、R
2は、C
1−4アルキル基、C
6−10芳香族基およびこれらの混合物からなる群から選択され、Xは、塩素原子および臭素原子からなる群から選択され、cは0または1であり、dは0または最大4の整数であり、およびeは0または最大4の整数であり、およびd+eの和は、Ti原子の原子価である。)を有してもよい。cが1である場合、式はTi(OR
2)
dX
e(式中、R
2は、C
1−4アルキル基およびC
6−10芳香族基からなる群から選択され、Xは、塩素原子および臭素原子からなる群から選択され、好ましくは塩素原子であり、dは0または最大4の整数であり、およびeは0または最大4の整数であり、およびd+eの和は、Ti原子の原子価である。)になる。チタン化合物は、TiCl
3、TiCl
4、Ti(OC
4H
9)
4、Ti(OC
3H
7)
4およびTi(OC
4H
9)Cl
3ならびにこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。最も好ましくは、チタン化合物は、Ti(OC
4H
9)
4およびTiCl
4ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0062】
上記で述べたように、電子供与体は、本発明にしたがって使用される触媒または触媒前駆体において使用されてもよく、実際、使用されるのが好ましい。電子供与体は、直鎖状または環状のC
3−18脂肪族または芳香族エーテル、ケトン、エステル、アルデヒド、アミド、ニトリル、アミン、ホスフィンまたはシロキサンからなる群から選択されてもよい。好ましくは、電子供与体は、ジエチルエーテル、トリエチルアミン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチルおよびシクロヘキサノンならびにこれらの混合物からなる群から選択される。電子供与体は、0:1〜18:1のチタンに対するモル比で、好ましくは3:1〜15:1、最も好ましくは3:1〜12:1のTiに対するモル比で使用されてもよい。
【0063】
触媒または触媒前駆体において、Mg:Tiのモル比は、0.5:1〜20:1、好ましくは1:1〜12:1、最も好ましくは1:1〜10:1でもよい。第2のアルミニウム添加が適用される場合、触媒において、チタンに対する第2のアルミニウム(Al
2)のモル比は、1:1〜8:1、好ましくは1.5:1〜7:1、最も好ましくは2:1〜6:1でもよい。一般に、0から約60重量%以下、好ましくは10〜50重量%のアルミニウム(触媒中の化合物)を使用して、担体(例えば、Al
1)を処理してもよい。Mgに対する(ハロゲン化アルキルまたはCCl
4からの)活性ハロゲン化物のモル比は、1.5:1〜5:1、好ましくは1.75:1〜4:1、最も好ましくは1.9:1〜3.5:1でもよい。電子供与体が存在する場合、Tiに対する電子供与体のモル比は、1:1〜15:1、最も好ましくは3:1〜12:1でもよい。
【0064】
チーグラー・ナッタ触媒は、式Al(R
7)
3−gX
g(式中、R
7はC
1−6アルキル基であり、Xは塩素原子であり、およびgは0または1である。)の1つまたは複数の共触媒およびこれらの混合物で活性化されてもよい。共触媒は、トリC
1−6アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムクロリド(例えば、ジC
1−6アルキルアルミニウムクロリド)およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。これには、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、イソプレニルアルミニウム、n−ヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリドおよびこれらの混合物が含まれるが、これらには限定されない。好ましい共触媒はトリエチルアルミニウムである。
【0065】
ポリマー生成率に基づいて、10〜130、好ましくは10〜80、より好ましくは15〜70、最も好ましくは20〜60ppmのアルミニウム(Al ppm)を与えるように、共触媒が反応器に供給されてもよい。
【0066】
シングルサイト触媒
本発明は、かさ高い配位子シングルサイト触媒である触媒を使用してもよい。
【0067】
かさ高い配位子シングルサイト触媒は、式:
(L)
n−M−(Y)
p
(式中、Mは、Ti、ZrおよびHfからなる群から選択され;Lは、シクロペンタジエニル型配位子、および合計で5個以上の原子(通常、その少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%が数の上で炭素原子である。)を含み、かつホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄およびケイ素からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子をさらに含むかさ高いヘテロ原子配位子からなる群から無関係に選択されるモノアニオン性配位子であり、かさ高いヘテロ原子配位子は、Mにシグマ結合またはパイ結合され、Yは、活性化可能な配位子からなる群から無関係に選択され;nは1〜3でもよく;およびpは1〜3でもよく、ただし、n+pの和はMの原子価状態と等しいものとし、さらに、2つのL配位子は、例えば、シリル基またはC
1−4アルキル基あるいはこれらの混合物により架橋されてもよいものとする)を有してもよい。
【0068】
用語「シクロペンタジエニル」は、環内に非局在化した結合を有し、通常は活性触媒部位と結合した、一般にはη
5結合を介して4族金属(M)と結合した五員炭素環を指す。シクロペンタジエニル配位子は非置換でもよく、あるいは、ヒドロカルビル置換基が、非置換、またはハロゲン原子およびC
1−4アルキル基からなる群から無関係に選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されたC
1−10ヒドロカルビル基;ハロゲン原子;C
1−8アルコキシ基;C
6−10アリール基またはアリールオキシ基;非置換、または最大2つのC
1−8アルキル基で置換されたアミド基;非置換、または最大2つのC
1−8アルキル基で置換されたホスフィド基;式−Si−(R)
3(式中、各Rは、水素、C
1−8アルキル基またはアルコキシ基およびC
6−10アリール基またはアリールオキシ基からなる群から無関係に選択される。)のシリル基;および式Ge−(R)
3(式中、Rは上で定義した通りである。)のゲルマニル基からなる群から無関係に選択される1つまたは複数の置換基で最大で完全に置換されてもよい。
【0069】
通常、シクロペンタジエニル型配位子は、基が非置換であるか、あるいは、フッ素原子、塩素原子;C
1−4アルキル基;および非置換、または1個もしくは複数個のフッ素原子で置換されたフェニル基もしくはベンジル基からなる群から無関係に選択される1つまたは複数の置換基で最大で完全に置換されたシクロペンタジエニル基、インデニル基およびフルオレニル基からなる群から選択される。
【0070】
上述の式において、L配位子のいずれもかさ高いヘテロ原子配位子でない場合は、触媒は、モノシクロペンタジエニル(Cp)触媒、架橋または非架橋ビスCp触媒あるいは架橋束縛構造型触媒またはトリスCp触媒にすることもできる。
【0071】
触媒が、1つまたは複数のかさ高いヘテロ原子配位子を含む場合、触媒は式:
【化3】
(式中、Mは、Ti、HfおよびZrからなる群から選択される遷移金属であり;Cは、(以下で説明する)ホスフィンイミン配位子および(以下で説明する)ケチミド配位子からなる群から好ましくは無関係に選択されるかさ高いヘテロ原子配位子であり;Lは、シクロペンタジエニル型配位子からなる群から無関係に選択されるモノアニオン性配位子であり;Yは、活性化可能な配位子からなる群から無関係に選択され;mは1または2であり;nは0または1であり;およびpは整数であり、およびm+n+pの和はMの原子価状態と等しく、ただし、mが2のとき、Cは同じか、または異なるかさ高いヘテロ原子配位子でもよいものとする。)を有するであろう。
【0072】
例えば、触媒は、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムのビス(ホスフィンイミン)、ビス(ケチミド)または混合ホスフィンイミンケチミドジクロリド錯体でもよい。代わりに、触媒は、1つのホスフィンイミン配位子または1つのケチミド配位子、1つの「L」配位子(これは、最も好ましくはシクロペンタジエニル型配位子である。)および2つの「Y」配位子(これらは好ましくはいずれも塩化物である)を含むこともできる。
【0073】
好ましい金属(M)は、4族から(特にチタン、ハフニウムまたはジルコニウム)であり、チタンが最も好ましい。1つの実施形態では、触媒は、最も高い酸化状態にある4族金属錯体である。
【0074】
触媒は、金属に結合した1つまたは2つのホスフィンイミン配位子(PI)を含んでもよい。ホスフィンイミン配位子は、式:
【化4】
(式中、各R
21は、水素原子;ハロゲン原子;C
1−20、好ましくは、非置換、またはハロゲン原子でさらに置換されたC
1−10ヒドロカルビル基;C
1−8アルコキシ基;C
6−10アリール基またはアリールオキシ基;アミド基からなる群から無関係に選択される。);
式:
−Si−(R
22)
3
(式中、各R
22は、水素、C
1−8アルキル基またはアルコキシ基、およびC
6−10アリール基またはアリールオキシ基からなる群から無関係に選択される。)のシリル基;および、
式:
−Ge−(R
22)
3
(式中、R
22は上で定義した通りである。)のゲルマニル基により定義される。
【0075】
好ましいホスフィンイミンは、各R
21がヒドロカルビル基であり、好ましくは、t−ブチル基などのC
1−6ヒドロカルビル基であるホスフィンイミンである。
【0076】
適したホスフィンイミン触媒は、(上述の)1つのホスフィンイミン配位子、およびシクロペンタジエニル型配位子またはヘテロ原子配位子のいずれかである1つの配位子Lを含む4族有機金属錯体である。
【0077】
本明細書において用いられるとき、用語「ケチミド配位子」は、
(a)金属−窒素原子結合を介して遷移金属に結合し
(b)窒素原子上に単一の置換基を有し(ここで、この単一の置換基は、N原子に二重結合した炭素原子である。) (c)炭素原子に結合した、(以下で説明する)2つの置換基サブ1およびサブ2を有する配位子を指す。
【0078】
条件a、bおよびcを以下に示す:
【化5】
【0079】
置換基「Sub1」および「Sub2」は同じでも、異なっていてもよい。例示的な置換基には、1〜20個、好ましくは3〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル、(以下で説明する)シリル基、(以下で説明する)アミド基および(以下で説明する)ホスフィド基が含まれる。費用および利便性の理由で、これらの置換基はいずれも、ヒドロカルビル、特に単純なアルキル基であることが好ましく、最も好ましくは三級ブチル基である。
【0080】
適したケチミド触媒は、(上述の)1つのケチミド配位子、およびシクロペンタジエニル型配位子またはヘテロ原子配位子のいずれかである1つの配位子Lを含む4族有機金属錯体である。
【0081】
かさ高いヘテロ原子配位子という用語は、ホスフィンイミンまたはケチミド配位子に限定されず、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄またはケイ素からなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む配位子を含む。ヘテロ原子配位子は、金属にシグマ結合またはパイ結合されてもよい。例示的なヘテロ原子配位子には、すべて以下で説明するケイ素含有ヘテロ原子配位子、アミド配位子、アルコキシ配位子、ホウ素複素環配位子およびホスホール配位子が含まれる。
【0082】
ケイ素含有ヘテロ原子配位子は、式:
−(Y)SiR
xR
yR
z
(式中、−は、遷移金属との結合を表し、Yは硫黄または酸素である。)により定義される。
【0083】
Si原子の結合性軌道を満たすために、Si原子上の置換基、すなわち、R
x、R
yおよびR
zが必要である。任意の特定の置換基R
x、R
yまたはR
zの使用は、本発明の成功に特に重要ではない。単に、このような物質は市販の物質から容易に合成されることから、R
x、R
yおよびR
zのそれぞれがC
1−2ヒドロカルビル基(すなわち、メチルまたはエチル)であることが好ましい。
【0084】
用語「アミド」は、その従来の広い意味を伝えることを意図する。したがって、これらの配位子は、(a)金属−窒素結合;および(b)窒素原子上の2つの置換基(これらは通常、単純なアルキル基またはシリル基である。)の存在により特徴付けられる。
【0085】
用語「アルコキシ」および「アリールオキシ」は、その従来の意味を伝えることを意図する。したがって、これらの配位子は、(a)金属−酸素結合;および(b)酸素原子に結合したヒドロカルビル基の存在により特徴づけられる。ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖または環状のC
1−10アルキル基、あるいは基が、非置換、または1つもしくは複数のC
1−4アルキル基(例えば、2,6ジ三級ブチルフェノキシ)でさらに置換されたC
6−13芳香族基でもよい。
【0086】
ホウ素複素環配位子は、閉環した配位子内のホウ素原子の存在により特徴付けられる。この定義には、環内に窒素原子も含んでもよい複素環配位子が含まれる。これらの配位子は、オレフィン重合の当業者に周知であり、文献に十分に記述されている(例えば、米国特許第5637659号;第5554775号;およびそれらに引用された参考文献を参照されたい)。
【0087】
用語「ホスホール」も、その従来の意味を伝えることを意図する。「ホスホール」は、閉じた環内に4個の炭素原子および1個のリン原子を有する環状のジエニル構造である。最も単純なホスホールは、C
4PH
4である(これは、環内の1個の炭素がリンで置換されたシクロペンタジエンに似ている)。ホスホール配位子は、例えば、C
1−20ヒドロカルビル基(これは、任意選択でハロゲン置換基を含んでもよい。);ホスフィド基;アミド基;またはシリル基またはアルコキシ基で置換されてもよい。ホスホール配位子も同様に、オレフィン重合の当業者に周知であり、米国特許第5434116号(曽根、東ソー)にそのように記述されている。
【0088】
用語「活性化可能な配位子」(すなわち、上述の式中の「Y」)または「脱離配位子」は、アルミノキサン(「活性化剤」とも呼ばれる。)によって活性化されて、オレフィン重合を容易にすることができる配位子を指す。例示的な活性化可能な配位子は、水素原子;ハロゲン原子、好ましくは塩素原子またはフッ素原子;C
1−10ヒドロカルビル基、好ましくはC
1−4アルキル基;C
1−10アルコキシ基、好ましくはC
1−4アルコキシ基;およびC
5−10アリールオキシド基からなる群から無関係に選択され;前記ヒドロカルビル基、アルコキシ基およびアリールオキシド基のそれぞれは、非置換でもよく、あるいは、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子またはフッ素原子;C
1−8アルキル基、好ましくはC
1−4アルキル基;C
1−8アルコキシ基、好ましくはC
1−4アルコキシ基;C
6−10アリール基またはアリールオキシ基;非置換、または最大2つのC
1−8、好ましくはC
1−4アルキル基で置換されたアミド基;および非置換、または最大2つのC
1−8、好ましくはC
1−4アルキル基で置換されたホスフィド基からなる群から選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されてもよい。
【0089】
活性化可能な配位子(Y)の数は、金属の原子価および活性化可能な配位子の原子価に依存する。好ましい触媒金属は、その最も高い酸化状態(すなわち、4
+)にある4族金属であり、好ましい活性化可能な配位子は、ハロゲン化物−特に塩化物またはC
1−4アルキル基、特にメチル基など、モノアニオン性である。
【0090】
本発明の1つの実施形態において、遷移金属錯体は、式:[(Cp)
nM[N=P(R
21)]
mY
p(式中、Mは遷移(4族)金属であり;Cpは、環内に非局在化した結合を有し、共有η
5結合を介して金属原子と結合した五員炭素環を含むC
5−13配位子であり、この配位子は、非置換であるか、または、ハロゲン原子、好ましくは塩素またはフッ素;C
1−4アルキル基;および非置換、あるいは1個または複数個のハロゲン原子、好ましくはフッ素で置換されたベンジル基およびフェニル基からなる群から選択される1つまたは複数の置換基で最大で完全に四置換され;R
21は、直鎖または分岐鎖のC
1−6アルキル基、非置換であるか、または最大3つのC
1−4アルキル基で置換されてもよいC
6−10アリール基およびアリールオキシ基、および式−Si−(R)
3(式中、Rは、C
1−4アルキル基またはフェニル基である。)のシリル基からなる群から選択される置換基であり;Yは、脱離配位子からなる群から選択され;nは1または2であり;mは1または2であり;および遷移金属の原子価−(n+m)=pを有してもよい。
【0091】
シングルサイト型触媒については、活性化剤は、式R
122AlO(R
12AlO)
qAlR
122(式中、各R
12は、C
1−20ヒドロカルビル基からなる群から無関係に選択され、qは3〜50である。)の複雑なアルミニウム化合物でもよい。
【0092】
アルミニウム化合物において好ましくは、R
12はメチル基であり、qは10〜40である。
【0093】
本発明による触媒系は、5:1〜1000:1、好ましくは10:1〜500:1、最も好ましくは30:1〜300:1、最も望ましくは50:1〜120:1の遷移金属に対するアルミノキサンからのアルミニウムのモル比を有してもよい。
【0094】
触媒に関する語句「およびこれらの混合物」は、触媒が、1つまたは複数のクロム触媒の混合物、1つまたは複数のチーグラー・ナッタ触媒の混合物、1つまたは複数のかさ高い配位子シングルサイト触媒の混合物、1つまたは複数のクロム触媒と1つまたは複数のチーグラー・ナッタ触媒との混合物、1つまたは複数のチーグラー・ナッタ触媒と1つまたは複数のかさ高い配位子シングルサイト触媒との混合物、および1つまたは複数のクロム触媒と1つまたは複数のかさ高い配位子シングルサイト触媒との混合物でもよいことを意味する。
【0095】
攪拌機を含む問題の反応器の、規模を拡大縮小できる透明なモデルの製作は、いくつかの方法で行われてもよい。通常、「反応器」は、ポリカーボネートまたはアクリルポリマーなど、透明で澄んだ硬いプラスチックからモデルが製作される。このようなモデルは、例えば実験室内に存在してもよく、プラントまたはパイロットプラントの反応器の運転に関する実験目的で利用されてきた。例えば、プラントまたはパイロットプラントにモデル反応器の規模を拡大縮小するための無次元数は既に得られている。次に、実験においてプラントの運転を反映する条件下で反応器を使用することができる。
【0096】
モデルは、適切に規模を拡大縮小された反応器の設計図から製作されてもよい。次に、モデルは、プラスチックから機械加工することもできて、場合によっては、モデルは、反応器の設計に基づいて3D印刷することもできる。攪拌機は透明である必要はない。レイノルズ数および流量など、流体力学の点からモデルの規模を拡大縮小できることが重要である。これには、モデルの運転中に使用する適切な流体を選択することが含まれてもよい。
【0097】
モデルの運転には、その運転において、反応器およびモデルのばらつきをモデル化できるよう、攪拌機およびポンプの可変速駆動の使用が望ましいことがある。
【実施例】
【0098】
ここで本発明を以下の非限定的な例により説明する。
【0099】
装置は以下からなる。
1.4インチの円筒形の内側および正方形の外側を有する透明なアクリル反応器本体。正方形の外側は、屈折による画像の歪みを最小限に抑える。反応器の高さは内径の2.14倍であり、反応器には、中心線上に底の入口、側壁に別の入口、上部ヘッドに出口がある。
2.この通常よりも高いタンクのために設計されたMaxBlend羽根車。(MaxBlend羽根車は通常、アスペクト比1〜1.5でタンク内に設置される)。
3.水中、74%グリセロールの試験流体。その粘度は約0.03Pa・sになる。この流体の半分を0.25mg/Lフルオレセインナトリウムで染色した。
4.現在の試験流体に合わせて較正済みのすべての必要な流体貯槽およびポンプ。
5.488nmの光を発光する連続波アルゴンイオンレーザー。
6.Schott Optical Glass Long Pass Filter OG515を備えたCCDカメラ。
7.カメラのシャッターを羽根車の位置に同期させる能力を備えたデータ取得システム。
【0100】
染色した流体で反応器を満たし、レーザー視野平面を活性化した後に試験を実施する。攪拌機速度を所望の値(実験1では60rpm)に設定し、実験室の光が入らないように、実験は暗箱内で行う。代わりに、実験室の明かりを消して試験を実施してもよい。一連の最初の画像を取り込み、それらの平均が最初の校正画像として使用される。
【0101】
データ収集システムをもう1回起動し、所定の数のフレーム(この場合、4フレーム)の後、未染色の流体を送るポンプを所望の流量(この場合、225mL/min)で起動する。色素がタンクから完全に流出されるまで、1回転当たり1回、画像を取り込む。実験1を終えた後、本発明者らは、反応器容積の6倍の流体(1回の実験につき、6×1.625L=9.75Lの流体)を必要とする本発明者らの手順を標準化した。流量が非常に低い実験は、羽根車が2回以上回転する毎に画像を取り込み、取り込まれる全データを最小限に抑えることから、有利となることがある。
【0102】
実験が完了したら、別の組の画像を収集して、最終的な較正画像を作成する。羽根車、ポンプおよびレーザーのスイッチを切り、装置は洗浄する準備が整う。
【0103】
最初の正規化ステップおよびその後の補正により画像を処理する。正規化ステップは線形内挿であり、ここで、最初の較正画像の各画素が、正規化された濃度1を表すと見なし、最終的な較正画像の各画素が、正規化された濃度0を表すと見なす。その後の補正は、各フレーム内に存在する色素がレーザー面をわずかに減衰させ、したがって、実験の間、レーザーの強度が真に一定ではないことを説明する。この補正は、各レーザー光線に沿って吸収を積分することにより、厳密に計算することができて、あるいは積分において、平均濃度を用いて、はるかに簡単な補正を行うこともできる(さらなる詳細および厳密な積分の形については、J.P.Crimaldi,Experiments in Fluids 44,851−863(2008)を参照されたい)。
【0104】
最後に、各画素の位置における正規化された強度を実験の間にわたって積分し、局所齢を得ることができる。この計算は、ポンプのスイッチを入れた時間に始め、画像を合計することにより、数値的に行われる。この結果は、羽根車の回転数を単位とする、反応器のある平面における局所流体齢の分布である。測定または予想された出口付近の流体の齢に対してデータを正規化してもよく、カラーマッピングした画像または局所齢のヒストグラムとして示してもよい。平均、標準偏差および変動係数(CoV)などの統計量が計算されてもよい。