【実施例】
【0024】
比較テスト
図4は、データ点が△で表された
図3に示された本発明の実施の形態を、データ点が●で表された
図2の装置と比較した、毎分のミリリットルで表された流量の関数としての平方メートルおよびケルビン毎のワットで表された、測定された全体の熱伝達係数のグラフである。
図3に示された構造により生じた二次流動により、テストした全ての流量で約50から100W/m
2Kの熱伝達の優位性が生じるのがこのグラフから分かる。テストした装置の両方とも、寸法と容量がほぼ同じであり、各場合における反応体通路の総内容積は5.6±0.1ミリリットルであった。それゆえ、熱交換性能は典型的に、流量と共に減少し、F1およびF2での反応体通路の分岐により、局部的な流量が2回、効果的に半分になるにもかかわらず、本発明の装置の優れた性能が明らかに確立されている。流量が少なくても改善された熱交換性能は、既にマイクロ流体装置である
図2の比較の装置に対してさえ、本発明の装置により、プロセス強化が行われたことを示している。
【0025】
図5は、
図3に関して先に記載した本発明の実施の形態を、
図2に関して記載した装置と比較した、毎分ミリリットルの流量の関数としての、マイクロミキサ装置におけるテスト反応の混合性能パーセントを示したグラフである。テスト方法は、Villermaux J., et al. “Use of Parallel Competing Reactions to Characterize Micro Mixing Efficiency,” AlChE Symp. Ser. 88 (1991) 6, p. 286のものに似ている。概してここに記載されたテストのために、プロセスで、室温で、酸塩化物の溶液およびKI(ヨウ化カリウム)と混合された酢酸カリウムの溶液を調製した。次いで、これらの流体または反応体の両方を、シリンジポンプまたは蠕動ポンプにより、テストすべきマイクロミキサすなわちマイクロリアクタ中に連続的に注入した。結果として得られたテスト反応は、異なる速度の2つの競合する反応である、UVを吸収する最終生成物を生成する「高速」反応、および超高速混合条件下で優勢であり、透明な溶液を形成する「超高速」反応を含む。それゆえ、混合性能はUV透過率と相関関係にあり、理論的に完全なすなわち100%の高速混合により、得られた生成物において100%のUV透過率が生じる。
【0026】
それに応じて、
図5のグラフは、全ての反応体の流量の関数としての結果として生じた透過率のパーセントを示している。トレース50は、
図3に対応する本発明の実施の形態の混合性能に対応する一方で、トレース52は、
図2に対応する比較の装置の性能に対応する。図に示されるように、本発明の実施の形態の混合性能は、特に大きい流量で、優れている。これは、テストした
図3の本発明の実施の形態が、
図2の対照の装置よりも小さい圧力降下を生じるにもかかわらずそうである。このことは重ねて、
図2の装置に対する増大してプロセス強化の達成を示している。
【0027】
圧力降下の結果が
図6に示されており、トレース54は、本発明の装置のより低い圧力降下を示し、トレース56は、比較の装置のより高い圧力降下を示している(13センチポアズのブドウ糖溶液を用いた)。
【0028】
図7および8は、不混和液の分散体または混合物を維持する上での本発明による装置の比較優位を劇的に示している。
図7は、各液体について毎分10ミリリットルの流量で、等しい比率での着色水と非着色ヘプタンを供給することによって、先の
図3の実施の形態による装置のデジタル写真の一部を示している。この図に示されるように、水とヘプタンの混合物は、本発明による装置のこの実例内でチャンバからチャンバへと移動するときに、十分に分散されたままである。本発明による装置は、液中気の分散体を分散および/または維持する上での効率も示している。
【0029】
図8は、各々毎分10ミリリットルで着色水とヘプタンによりテストした、先の
図2による比較の装置のデジタル写真の一部を示している。図から分かるように、2つの不混和液相が、比較装置の通路内で合体している。
【0030】
本発明による装置は、概して、幅広い流量に亘り、不混和液の分散体または混合物を生成し、維持することができる。微細な分散体を生成するために、より多い流量を用いてもよい。
図9は、毎分54ミリリットルの水流と毎分51ミリリットルのヘプタンによる、先の
図3の実施の形態による装置のデジタル写真の一部を示している。この写真の明るい色の細粒が、小さく、比較的均一な、十分に分散したヘプタンの液滴である。
いくつかの追加の実施の形態
図10A〜10Gは、特に、連続チャンバ34の他の採り得る形態を示す、本発明のいくつかの代わりの実施の形態による反応体通路の部分を画成する多数の代わりの壁構造の断面平面図である。先の実施の形態に示されたチャンバは、
図10Fのものに概して対応し、ここで、支柱58が、潜在的に、
図10Aの実施の形態におけるような大きな開放区域または「自由区域」を有するチャンバ34に対して、チャンバ34の圧力抵抗を増加させるように働くであろう。他方で、支柱58のない実施の形態は、支柱58の上流に小さな死空間(流体流パターンにおける遅く動く地点)を有する傾向が少ないであろう。
図10Gの実施の形態は、分割・
方向転換壁44の下流側に三角形の受け構造60を含むことによって、死空間の全ての虞を実質的に避け、したがって、死空間の区域に収集して、反応体通路を詰まらせることのある、固体懸濁物などの固体または沈殿反応を取り扱うのに特に推奨される。
【0031】
図10Bの実施の形態において、分割・
方向転換壁44が、4つの区画に分かれており、それゆえ、反応体通路を分割・
方向転換壁44の周りで2つの主要な副通路に分割し、壁44の区画の間に3つの二次的副通路に分割している。補助的副通路の小さなサイズは、微細なエマルションを保持するのに役立ち得る。
【0032】
図10Cの実施の形態において、分割・
方向転換壁44は非対称であり、特に強烈な副流を提供するように、連続チャンバ34における交互の側でずれている。支柱58も、交互の様式でチャンバ34の中心からずれており、壁44により形成された2つの副通路の大きい方に位置することによって、支柱58は追加の流動分割器として働く。
図10Dおよび10Eの実施の形態は、それぞれ、
図10Fおよび10Bのものに対応し、その差は、先に論じた実施の形態の徐々に狭くなる出口40が、チャンバ34に流入する流れを微細に分割し、それによって、エマルションまたは他の不混和混合物を形成し、維持するのを補助するように位置した小さい補助的流動分割器64が詰め込まれたより広い出口62により置き換えられていることである。
【0033】
図10Dおよび10Eの実施の形態は、それぞれ、
図10Fおよび10Bのものに対応し、その差は、先に論じた実施の形態の徐々に狭くなる出口40が、チャンバ34に流入する流れを微細に分割し、それによって、エマルションまたは他の不混和混合物を形成し、維持するのを補助するように位置した小さい補助的流動分割器64が詰め込まれたより広い出口62により置き換えられていることである。
【0034】
図11は、本発明のさらに別の実施の形態による反応体通路の部分を画成する鉛直壁構造の断面平面図である。この実施の形態は、本発明の装置に利用された連続チャンバ34の構造が、この場合、自続性振動ミキサチャンバ66などの、他のタイプの混合装置と組み合わせて使用してもよいことを示している。
【0035】
図12は、本発明のチャンバ34のさらに別の実施の形態を示しており、ここで、分割・
方向転換壁44は、先に論じた実施の形態のいくつかにおけるよりも、チャンバ34への上流の入口からさらに間隔がおかれている。
追加の比較テスト
図13は、単一の装置の一部として配列された、
図9に示されたものにおおよそ対応する本発明の様々な代わりの実施の形態による多数のテスト反応通路の断面平面図である。上述した混合テストを、図に示されたテスト反応通路70〜82の各々に行った。その結果が、
図2の装置の比較テストと共に、以下の表Iに示されている。
【0036】
【表1】
【0037】
表から分かるように、
図13に示された本発明の様々な実施の形態の全ては、異なる内容積を考慮に入れたとしても、毎分250ミリリットル以上の流量で、
図2に示されたタイプの装置よりも、小さい圧力降下(Δp)で、より良好な混合性能を示す。これらの実施の形態のいくつか、特に、テスト通路70、76および82は、毎分100ミリリットルで、
図2の装置と混合性能において実質的に同一であり、全ての多い流量で、優れている。この結果は、テスト通路70および76を含む、それ自体「混合区域」を持たない実施の形態で、特別な混合区画を有するマイクロ流体装置と同程度、またはそれより良好に働いたという点で、さらに重要である。それゆえ、本発明のチャンバを、狭く蛇行した通または他の形態のミキサ装置を必要とせずに、同様にミキサとして効果的に使用されることが明らかである。
【0038】
本発明の装置の固体取扱能力を理解するためのテストを実施した。以下の反応:FeCl
3(H
2O)
6+3NaOH→Fe(OH)
3+6H
2O+3NaClを用いて、酸化鉄の沈殿物を形成して、0.7バールの圧力の到達するまで経過した時間を記録した。多数のチャンバを含むが、予混または他の混合区画を含まない、本発明による装置を、先の
図2による装置との比較においてテストした。以下の表IIにその結果が示されている。
【0039】
【表2】
【0040】
さらに、一時的な閉塞物を取り除くためにたった一度だけ約11バールまで推進圧力を上昇させることにより、本発明の装置は、テストしたどの他の装置の持続期間も十分に超えて、目詰まりしないままであり、実際に、70分間のテストの期間を超えて継続した。その結果が、秒で表された時間の関数として、バールで表された圧力が示されている、
図14のグラフに示されている。図から分かるように、蓄積した沈殿物を取り除くために約11バールまで圧力が急上昇したにもかかわらず、本発明による装置は、テストの期間に亘り決して目詰まりせず、自己洗浄の傾向さえ示した。
【0041】
本発明のタイプの装置を、様々な流量の組合せで水と窒素を一緒に流すことによって、気/液反応の適性についてもテストした。気泡が、一旦形成されたら安定したままであるのが観察された。気/液分散体の界面の比表面積は、目視法により評価され、毎分50ミリリットル(■)、75ミリリットル(◆)および100ミリリットル(●)の水流量に関して、x軸の気体注入量の関数として
図15にグラフで表されている。毎分100ミリリットルでは、この比表面積は少なくとも12000m
2/m
3を超え、低いガス流量では、14000m
2/m
3を超えた値も得られる。ここに引用された比表面積は、実際に、実際の値の分率を表し(直径が50μm未満の気泡は計数できなかった)、この分率は、実際の合計の30%と60%の間であると考えられる。これらの値は、気液反応に用いられる他のプロセスに比べて勝るとも劣らない:14800m
2/m
3でのMicro Bubble Columnおよび27000m
2/m
3でのFalling Film MicroReactorにより、撹拌タンクは典型的に220未満、気泡塔は600未満、衝突するジェットは2000未満である(Jahnisch et al. “Direct fluorination of toluene using elemental fluorine in gas/liquid microreactors” Journal of Fluorine Chemistry, 105 (2000), p. 117を参照のこと)。
【0042】
本発明による装置の実施の形態を、その圧力限界についてもテストした。
図3の装置の結果および
図2の装置の比較結果が、以下の表に要約されている。
【0043】
【表3】
【0044】
本発明によるマイクロ流体装置は、ガラス、ガラスセラミック、およびセラミックの内の1種類以上から製造されることが好ましい。水平壁を形成するガラス板の間に、成形され固結されたフリットを配置して、そのガラス板からそのような装置を調製するプロセスが、例えば、米国特許第7007709号、「Microfluidic Device and Manufacture Thereof」に開示されているが、製造はこの方法に制限されない。
【0045】
本発明の装置は、所望であれば、図示された層に加えて他の層を備えてもよい。
【0046】
ここに用いた「反応体」は、マイクロ流体装置内に使用することが望ましい潜在的に任意の物質の省略表現である。それゆえ、「反応体」および「反応体通路」は、不活性材料およびそれに用いられる通路を称してもよい。