【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、請求項1の特徴を使用している前述の種類のミリングボウルによって、且つ請求項
15の特徴を使用しているこの種類のミリングボウルの製造方法によって、本発明に従って達成される。
【0017】
本発明の重要なコアの概念は、注型材料からなる一部材のミリングボウルの製造から離れて、より小さい複数の構成要素を有するミリングボウルを考案することを選択したことであって、これによってミリングボウルの構造内部に中空構造が選択的に製造される。これらの中空構造は、接着性の、特に非収縮性の注型化合物を使って製造されることができて、所期の動作現場の近くで堅固なミリングボウルユニットを製造する。
【0018】
本発明によれば、この重要なコアの概念は、垂直ミルのグラインドベッドを形成又は受けるために下方のリング形で且つ別個のベースフランジと上方のリング形で且つ別個のヘッドフランジというアイデアを利用する垂直ミルのためのミリングボウルによって、実現される。この場合、リング形のミリングボウルの回転軸の周囲のエリアは、中空であるように製造される。ヘッドフランジ及びベースフランジは、中心部材によって一緒に堅固に接続される。
【0019】
ヘッドフランジとベースフランジとの間に設けられる中心部材は二重壁設計であって、間隔を空けて離れ
、且つ、ヘッドフランジ及びベースフランジとは別個に製造される2つのケーシングシェルを有している。
【0020】
中心部材のケーシングシェルと2つのフランジとの間にこのようにして形成された空洞は、硬化可能な、特に非収縮性の注型化合物によって充填されて、注型化合物の硬化プロセスに引き続いて、2つのフランジは中心部材とともに回転する堅固なミリングボウルを形成する。
【0021】
方法に関して、垂直断面において適切な円錐台形状の中空構造を有する本発明にしたがったリング形ミリングボウルの製造は、複数の部材として又は一つの部材として別個に製造されたミリングボウルのヘッドフランジ及びベースフランジを用いて行われる。以下で言及される輸送の問題を考慮して、より大きな直径を有するヘッドフランジは、この場合には、好ましくは複数の部材であるように設計及び製造され、寸法及び重量に関して典型的には直径がより小さいベースフランジは、一つの別個の部材として製造される。
【0022】
この方法によれば、2つのケーシングシェルを特徴的に有する中心部材は、ヘッドフランジ及びベースフランジとは別個に製造される。
【0023】
この中心部材はベースフランジとヘッドフランジとの間の接続のために設けられ、組み立ての間に上方のヘッドフランジを疑似的に支える。中心部材をヘッドフランジに接続してヘッドフランジを中心部材に固着する前に、補強アンカーが、ケーシングシェルの対向面に取り付けられる。
【0024】
その後に、ヘッドフランジ、中心部材のケーシングシェル、及びベースフランジを含む構成要素がお互いに堅固に接続され、それによって具体的に、ケーシングシェルの間にリング形の空洞を形成する。
【0025】
硬化性の注型化合物がそれから、ヘッドフランジの開口を介して、ケーシングシェルの間に形成された空洞に導入される。収縮しないでわずかに膨張する材料特性を有するこの注型化合物は、それから硬化する。空洞及びこれによって注型化合物の体積のわずかな膨張能力は、ヘッドフランジ、ケーシングシェル、及びベースフランジを含む構成要素に注型化合物が高濃度で供給されることを可能にし、注型化合物の硬化後に、堅く且つ回転する堅固なミリングボウルがユニットとして存在する。
【0026】
この文脈において、「高濃度で供給される」とは、注型化合物が非常に密に且つエアポケット無しに導入されて硬化され、これによって、関連するミリング及び回転力がケーシングシェルを介してだけではなく硬化された注型材料も本質的に介してベースフランジに伝達されるために、空洞を取り囲むケーシングシェルとフランジ表面との強い接続を達成することを意味すると理解される。
【発明の効果】
【0027】
本発明に従ったミリングボウル及び対応する製造方法の重要な効果は、特に、より小さく、より軽量で、且つ別個に製造された個別の注型された部材に対するより経済的な製造コストである。なぜなら、それらの部材は、完全に注型されたミリングボウルの様な大きな部材を専門とする会社に依存しなければならない代わりに、より多数の工場で製造されることができるからである。さらに、以前に一部材のミリングボウルのために使われたものの様な特殊な輸送操作がもはや必要とされないので、輸送コストが顕著に減らされることができる。
【0028】
加えて、必須のケーシングシェルの製造は、製造及び対応する垂直ミルの設置の現場の近くで行われるように契約されることができる。同様に、ミリングボウルの最終組み立て及び適切な注型化合物による充填は、対応する垂直ミルの設置現場から非常に近い範囲で、又はまさにその現場で、行われることができる。
【0029】
有益なことに、ミリングボウルの中心部材のケーシングシェルは、硬化された注型化合物に埋め込まれた補強アンカーを特徴的に有する。
【0030】
注型化合物の導入に先立って、補強アンカーがこの目的のために、例えば溶接によって、空洞に面しているケーシングシェルの内部表面に取り付けられることができ、ならびに、拡張アンカーの形態で設けられる。
【0031】
中心部材の堅さをさらに向上するために、補強アンカーの端は、両方のケーシングシェルの内部表面に溶接されるか、又は他の手段によって取り付けられることができる。
【0032】
これらの補強アンカーの方向及び配置は、ミリングボウルの半径方向だけではなく、ケーシングシェルに沿った可変の高さにおいてであってもよく、それによって、交差するか又はスポーク状の配置が他の補強アンカーに対して提供されることができる。
【0033】
したがって、補強アンカーは、ケーシングシェルによって形成される空洞内部において異なる方向で配置されて、それらの端は好ましくは、両方のケーシングシェルに固着される。
【0034】
関連する力及びトルクの伝達をさらに向上するために、補強アンカーは、動作中のミリングボウルの回転方向とは逆に向けられる。
【0035】
補強アンカーをこのような方法で導入することによって、空洞内で注型されるリング形コアの強度が向上され、ケーシングシェルとリング形コアとの間の結合が生成される。
【0036】
利用可能な補強アンカーの例は、例えばDIN529に従ったアンカーボルト、ならびにコンクリート材料で使用されるもののような補強鋼でできた自由形状補強アンカーである。それらの位置、サイズ、及び数に応じて、補強アンカーは様々な形状、特にU形、S形、又はL形で設けられることができる。補強アンカーとケーシングシェルとの間の接続は、ねじ留めならびに溶接接続であることができる。
【0037】
その効果のために、ヘッドフランジは、ベースフランジより大きな外径を特徴的に有する。なぜなら、これがグラインドベッドの幅、及びそれゆえに動作時の垂直ミルの最終的なスループット能力の両方を決定するからである。
【0038】
さらに、より小さな直径のベースフランジが、前記フランジを介してベアリングに作用する力を受け止め、ならびに付加的に回転ドライブを介してミリングボウルに作用する力を伝達できるようにするために、十分であることが示されている。
【0039】
その結果として、その好適な形態では、ミリングボウルは2つのケーシングシェルを特徴的に有し、これらは、その垂直断面において、ベースフランジの方向に一緒に角度が付いているほぼ楔形の構造を形成する様に配置され、この配置によって、ミリングボウルはほぼ、円錐台の形状の外側リング構造を有する中空ボディを形成する。
【0040】
前述した好適な構造の代替として、2つのケーシングシェルはまた、お互いからほぼ一定の半径方向の距離をおいて配置されることができて、この場合、垂直方向に存在するリング形の壁がまた、ミリングボウルの中心部材によって形成される。より大きな半径方向のサイズを有するヘッドフランジが、この場合にも同様に設けられることができる。
【0041】
コスト及び輸送に関する顕著な効果は、少なくともヘッドフランジを複数の部材として製造することによって、達成されることができる。
【0042】
したがって、ヘッドフランジは複数のセグメントからなることができて、これらは最初に、それらの意図された使用の場所で及び方法で、他の構成要素と一緒に完全なミリングボウルに組み立てられる。
【0043】
ヘッドフランジの外径のサイズを考慮に入れると、このフランジは、有益なことには2つ、3つ、4つ、又はその他の数のセグメントとして製造されることができる。
【0044】
ベースフランジは、より小さな外径を有し、特殊な輸送手段が必要にならない限りは、好ましくは一つの部材として製造されることができる。具体的には、この場合には、ミリングボウルに作用する力のベースフランジのベアリングへの伝達、及びミリングボウルに対する駆動トルクの印加の両方のための設計を単純化するという効果を有する。
【0045】
製造の単純化という観点では、2つのケーシングシェルは好ましくはまた、複数の部材であるように製造されることもできる。そうすることで、これらの構成要素及びセグメントの輸送を単純化し、また前記部材を製造現場の近傍で製造することが可能になる。
【0046】
硬化性注型化合物に関して、非収縮性特性を有していて可能な限り非圧縮性である塊体(mass)が選ばれて、これによってこの塊体は特に、コンクリート、樹脂、又はプラスチックであることができ、後者は特に、高性能ポリマ又はポリアミドに基づくものである。
【0047】
硬化性注型化合物は好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、又は金属繊維の様な繊維と混合されて補強される。これは硬化性注型化合物の機械的特性を特に改善し、特に、硬化された注型化合物におけるクラックの進展を最大限に防ぐことができる。注型化合物それ自身は、液体、半液体、又はペースト状の形態で導入されることができて、それから圧縮されて脱気される。注型化合物の導入は一つ又は複数の作業ステップにて行われることができて、その結果として、様々な層がケーシングシェルの間の空洞に作られて、これらの層の特性はお互いから異なることができる。
【0048】
適切な注型化合物は、およそ以下の特性を有し得る。30N/mm
2の範囲の最小圧縮強度。約5N/mm
2の最小引張強度。約5〜15×10
-6/Kの熱膨張係数。約1%の最大膨張度。注型化合物に対する最小の収縮度が考慮に入れられる限りは、これは<0.5%であるべきである。少なくとも200℃までの耐熱性もまた、与えられるべきである。
【0049】
ヘッドフランジ及びベースフランジは、好ましくは注型された部材として製造されるか、又は鉄からできていて、その場合、後者は金属スラブであってもよい。
【0050】
フランジに対する降伏強さ、又はむしろ0.2%の耐力(プルーフ強度)は、>200N/mm
2であるべきであり、>3%の破壊前伸長が達成されるべきである。
【0051】
2つのフランジに堅く接続されたケーシングシェルが鉄鋼から製造されることが有益である。溶接に適している金属シートもまた、使用されることができる。
【0052】
>200N/mm
2の0.2%の耐力(プルーフ強度)及び>15%の破壊前伸長が、ケーシングシェルの材料に対して与えられるべきである。
【0053】
ヘッドフランジは、ケーシングシェルの間のリング形の空洞への注型化合物の導入を可能にするために、注型開口及び脱気開口を特徴的に有する。多数の注型開口がこの目的のために設けられて、リング形のヘッドフランジの周方向の長さに沿って分布される。僅かにより小さい脱気開口は、これらの注型開口から半径方向に外側のある距離のところに、これらに対して距離を有してオフセットしている。このアプローチは、一方では注型化合物が本質的に含有物無しに導入されることを可能にし、他方ではケーシングシェルの間の空洞がよく脱気されることを可能にする。
【0054】
しかし、もしそうすることが必要であれば、注型化合物はまた、適切な振動機によってさらに圧縮及び脱気されることもできる。したがって、注型開口はまた、振動機の使用のためにも設計される。
【0055】
ミリングボウルの開発のプロセスにおいて、注型化合物が、ミリングボウルの全体質量の約40%〜60%を占めることができることが示されている。それによる関連した効果は、製造されている鉄鋼及び注型された部材の重量の顕著な削減である。
【0056】
個別の部材がより軽量であることは、これらの部材の取り扱い及び輸送を単純化することを可能にするので、コストの掛かる重量輸送及び特殊輸送は、もはや必要ではない。一つの部材のミリングボウルに基づいて、輸送される全体重量が、このようにして約40%まで低減されることができる。結果として、個別の部材の組み立ては、所期の動作現場で最初に行われることができて、この場合には、硬化される注型化合物がまた、最初にこの場所で、ケーシングシェルの間のリング形の空洞に導入される。
【0057】
したがって、前記の方法で組み立てられたミリングボウルを使用する本発明にしたがったこの概念は、注型材料から製造される一部材のミリングボウルと比較して、顕著なコスト節約を導く。
【0058】
それによって明らかになる付加的な効果は、本発明に基づいて、より大きなサイズのミリングボウルでさえも、比較的に経済的な方法で実現されることができる点である。
【0059】
本発明によれば、垂直断面において適切な円錐台形状の中空構造を備えるリング形のミリングボウルを製造する方法は、ミリングボウルのヘッドフランジ及びベースフランジが最初に複数の部材として別個に製造され、あるいは、ベースフランジの場合には一つの部材として製造される。2つのケーシングシェルを特徴的に有してヘッドフランジとベースフランジとを接続する中心部材は、同様に別個に製造される。
【0060】
補強アンカーが、ケーシングシェルの間に形成される空洞において、ケーシングシェルの対向している表面に、様々な向きで取り付けられる。
【0061】
ヘッドフランジ、中心部材のケーシングシェル、及びベースフランジを含む構成要素はそれから、お互いに堅固に接続され、引き続いて比較的冷たい硬化性注型化合物が、ヘッドフランジの開口を介して、ケーシングシェルの間に形成された空洞に導入される。注型化合物は、その容積が非収縮特性を有しており、硬化されるか又は自己硬化して、硬化プロセスに続いて、ミリングボウルが堅く回転する堅固なユニットとして存在する。
【0062】
このようにして、仕上げられたミリングボウルが、前記の個別の部材及び構成要素を備える非分割性ユニットとして出現する。加えて、特にケーシングシェルの間の、またヘッドフランジとベースフランジとの間のフォームフィット及びプレスフィット接続が、補強アンカーの導入によって改良されることができて、この補強アンカーは、硬化された注型化合物に埋め込まれる。
【0063】
ハニカム構造もまた、補強アンカーの代わりに又はそれとの組み合わせで、使用されることができる。
【0064】
これより、本発明に従ったミリングボウルの概念は、ミリングボウルの全体重量が一部材のミリングボウルの全体重量に等しいか又はより大きくなることを可能にし、以前は注型によって造られた一部材のミリングボウルによって達成されていたミリングボウルの所望の「アンビル効果」が、注型材料の使用にもかかわらず、本発明に従ったハイブリッドミリングボウルを使用しても達成されることができる。
【0065】
したがって、グラインドベッド及びミリングボウルに垂直に作用する力の吸収及びクッションを意味すると理解されるべき「アンビル効果」がまた、本発明に従ったハイブリッドミリングボウルを使用しても達成されることができる。