【実施例】
【0031】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
なお、各種測定には、以下の測定機器を用いた。
超伝導核磁気共鳴装置 Varian製 UNITYplus500
質量分析装置 JEOL製 JMS−700
高輝度X線単結晶構造解析装置 RIGAKU製 Varimax Saturn/1200S
紫外可視分光光度計 JASCO製 V−630BIO
分光蛍光光度計 JASCO製 FP−8200
倒立型蛍光顕微鏡 Leica製 DM IRB
共焦点レーザー顕微鏡 Carl Zeiss製 LSM710
【0032】
実施例1
(1)化合物(I)(R=水素原子)の合成
メロファン酸4.2gをテトラヒドロフラン100mLに溶解し、氷浴につけながら減圧下溶媒を留去した。得られた粉末を140℃にて24時間加熱した。減圧下室温に戻した後、レゾルシノール7.3gとメタンスルホン酸66mLを加え、80℃で3日間撹拌した。反応液を室温に戻した後、氷冷した水700mLに撹拌しながら徐々に加えた。析出した固体をろ取し、水で洗浄後、凍結乾燥して濃赤色粉末12.4gを得た。この粉末を少量のメタノールに懸濁させ、撹拌しながら加熱還流した。室温に戻して粉末をろ取した後、得られた粉末を更にメタノールで再結晶し、目的化合物7.2g(収率74%)を橙色粉末として得た。以下合成した化合物(I)(R=水素原子)の分析結果を示す。
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.34 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.63 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 6.82 (d, 2H, J = 8.6 Hz), 6.695 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 6.687 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 6.59 (dd, 2H, J = 2.4, 8.6 Hz), 6.57 (dd, 2H, J = 2.4, 8.6 Hz), 6.43 (d, 2H, J = 8.6 Hz);
13C-NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 167.3, 164.5, 160.0, 159.7, 152.0, 151.9, 149.7, 132.0, 128.8, 128.6, 127.0, 121.2, 112.9, 112.6, 108.6, 102.5, 102.3; FAB-HRMS (m/z) calcd for C
34H
19O
10: 587.0973; found: 587.0981 [M+H]
+
【0033】
(2)蛍光特性
上記(1)で得られた化合物(I)の蛍光特性を評価した。
化合物(I)の2μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0〜pH 12.0までのpH 0.5刻みのデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは1M水酸化ナトリウム水溶液)に315nmの励起光を照射し、発せられた蛍光をデジタルカメラで撮影した。その結果を
図1に示す。
図1から、強酸性領域および中性〜強塩基性領域では蛍光を発せず、弱酸性領域でのみ蛍光を発したことが分かる。
また、化合物(I)の1μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、7.0、7.5、8.0、9.0、10.0およびpH 12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 3.0〜pH 6.5のpH 0.1刻みのデータは50mMフタル酸緩衝液、pH 14のデータは1M水酸化ナトリウム水溶液)について、励起波長488nmおよび蛍光波長528nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を
図2に示す。
図2から、最大蛍光強度はpH 4.2〜4.5で得られたことが分かる。
また、化合物(I)の1μM溶液(溶媒:50mMフタル酸緩衝液)のpH 4.5での励起・蛍光スペクトルを
図3に示す。
図3から、吸収極大は460nmおよび484nmであることが分かる。これらの吸収極大がArレーザーの励起光(458nmおよび488nm)にほぼ一致することから、化合物(I)は、レーザー蛍光顕微鏡を用いた細胞・組織の蛍光観察に最適であると考えられる。
さらに、化合物(I)の1μM溶液(溶媒:50mMフタル酸緩衝液)のpHと蛍光強度とのグラフを
図4に示す。
図4から、pH 4.5〜6.0の間で、pH変化と蛍光強度との間に良好な直線関係が得られたことが分かる。このことから、化合物(I)は、細胞内pHセンサーとして応用可能であると考えられる。
【0034】
実施例2
(1)化合物(I)(R=アセチル)の合成
化合物(I)(R=水素)1.17gと無水酢酸8mLの混合物を100℃で20時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、ジクロロメタン50mLと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mLの混合液に激しく撹拌しながら注いだ。ガスの発生が消失した時点で分液ロートに移し、水層を除去した後、有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル=195/5〜95/5)にて精製した。目的物が含まれるフラクションを回収し、減圧下溶媒を少量まで留去し、酢酸エチルを加えて氷冷した。析出した粉末をろ取し、氷冷した酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥して目的化合物1.14g(収率76%)を白色粉末として得た。以下合成した化合物(I)(R=アセチル)の分析結果を示す。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.48 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 7.32 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 7.31 (d, 2H, J = 2.4 Hz), 7.24 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 6.99 (dd, 2H, J = 2.4, 8.7 Hz), 6.97 (dd, 2H, J = 2.4, 8.7 Hz), 6.79 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 2.29 (s, 6H), 2.28 (s, 6H);
13C-NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ 168.7, 166.8, 164.3, 158.4, 152.4, 152.2, 151.0, 150.8, 149.0, 132.9, 129.0, 128.8, 127.7, 120.7, 118.8, 118.3, 115.0, 114.8, 110.7, 110.3, 82.8, 81.1, 20.9, 20.8; FAB-HRMS (m/z) calcd for C
42H
27O
14: 755.1395; found: 755.1400 [M+H]
+
【0035】
(2)分子構造
上記(1)で得られた化合物(I)(R=アセチル)の分子構造を、単結晶X線構造解析により決定した。化合物(I)(R=アセチル)・CH
3CO
2C
2H
5の結晶学的データ、回折X線強度測定データおよび精密構造解析データを表1〜3に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
また、化合物(I)(R=アセチル)の分子構造を、
図5のORTEP図に示す。
図5から、2つのキサンテン骨格の結合位置がメタ位であることが分かる。
【0040】
(3)細胞染色
上記(1)で得られた化合物(I)(R=アセチル)を用いて細胞染色を行った。
細胞培養用ディッシュ(直径35mm)にHeLa細胞を播種し、89%(v/v)ダルベッコ改変イーグル培地と10%(v/v)ウシ胎児血清と1%(v/v)ペニシリン−ストレプトマイシン−アムホテリシンB混合溶液から構成される細胞培養用培地(以下、細胞培養液)2mL中にて、5%CO
2雰囲気下37℃で3〜4日間培養した。サブコンフレント状態のHeLa細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、5μMの化合物(I)(R=アセチル)を含む2mLの細胞培養液を添加し、5%CO
2雰囲気下37℃で24時間培養した後、倒立型蛍光顕微鏡でブルーフィルターを用いて観察した。
染色した細胞を蛍光顕微鏡で観察した結果を
図6に示す。細胞膜を透過した化合物(I)(R=アセチル)は、細胞質に存在するエステラーゼによって脱アセチル化され、化合物(I)(R=水素原子)に変換される。pHが中性(〜7.4)である細胞質中では蛍光が観察されず、酸性オルガネラであるリソソーム(pH 5前後)中でのみ、強い蛍光が観察された。
また、上記(1)で得られた化合物(I)(R=アセチル)を用いて細胞の多重染色を行った。
ガラスボトムディッシュ(直径35mm)にHeLa細胞を播種し、細胞培養液2mL中にて、5%CO
2雰囲気下37℃で3〜4日間培養した。サブコンフレント状態のHeLa細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、1μMの化合物(I)(R=アセチル)、1μMのHoechst 33342および1μMのAcidifluor Orangeを含む2mLの細胞培養液を添加し、5%CO
2雰囲気下37℃で24時間培養した後、共焦点レーザー顕微鏡を用いてアルゴンレーザー(405nm、488nmおよび543nm)で励起して観察した。
細胞核を青色に染色するHoechst 33342(1μMジメチルスルホキシド溶液)、リソソームをオレンジ色に染色するAcidifluor Orange(1μM水溶液)および化合物(I)(R=アセチル)(1μMジメチルスルホキシド溶液)をHela細胞に添加して、37℃で24時間培養した後、共焦点レーザー蛍光顕微鏡(波長405nm、488nmおよび543nm)で観察した。その結果を
図7に示す。
図7から、化合物(I)(R=アセチル)は、リソソーム中で強い蛍光を発し、細胞の多重染色に応用可能であることが分かる。
また、上記(1)で得られた化合物(I)(R=アセチル)を用いて強酸性条件下での細胞染色を行った。
ガラスボトムディッシュ(直径35mm)にHeLa細胞を播種し、細胞培養液2mL中にて、5%CO
2雰囲気下37℃で3〜4日間培養した。サブコンフレント状態のHeLa細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、25μMの化合物(I)(R=アセチル)および5μMのAcidifluor Orangeを含む2mLの細胞培養液を添加し、5%CO
2雰囲気下37℃で24時間培養した。倒立型蛍光顕微鏡でブルーフィルターおよびグリーンフィルターを用いて画像を取得した後、1mLの0.2M塩酸をガラスボトムディッシュに添加し、直ちにブルーフィルターおよびグリーンフィルターを用いて観察した。
その結果を
図8に示す。
図8から、化合物(I)(R=アセチル)は、強酸の影響でHeLa細胞がディッシュから剥離し始めているものの、細胞中のリソソーム由来の蛍光は維持されており、強酸性条件下でも細胞染色が可能であることが示された。一方、Acidifluor Orangeは、中性付近からpH 3付近まで蛍光強度が増加しpH 3以下で最大蛍光を保つという一般的な酸感受性色素としての性質を示すことから、強酸性条件下では細胞培養液に溶解した色素が発光し細胞が観察できない。
【0041】
実施例3
(1)化合物(I’)(R=水素原子、R
1=アミノ基、R
2=水素原子)の塩酸塩の合成
(A)1,4−ジメチル−7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物(1)の合成:
【0042】
【化7】
【0043】
2,5−ジメチルフラン(12.7g)のジエチルエーテル(13mL)溶液に、攪拌しながら無水マレイン酸(12.9g)を窒素雰囲気下で加えた。無水マレイン酸が完全に溶解した後、反応液をさらに3時間攪拌した。反応液を氷浴で冷却し、析出した沈殿物をろ取し、氷冷したジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥して、目的化合物1を白色〜薄黄色の針状結晶(15.3g、収率66%)として得た。
【0044】
(B)3,6−ジメチルフタル酸無水物(2)の合成:
【0045】
【化8】
【0046】
氷冷した濃硫酸(56.4ml)に、濃硫酸の温度が10℃を超えないように、化合物1(15.3g)を少量ずつ攪拌しながら溶解させた。化合物1を完全に添加し終えた後、反応液をさらに2時間氷冷下で攪拌した。反応液を300gの氷に注ぎ、析出した沈殿物をろ取し、氷冷した水で洗浄し、凍結乾燥して、目的化合物2を薄黄色の粉末(7.7g、収率33%)として得た。
【0047】
(C)3,6−ジメチル−4−ニトロフタル酸無水物(3)の合成:
【0048】
【化9】
【0049】
氷冷した化合物2(7.7g)の濃硫酸(40mL)溶液に、濃硫酸の温度が10℃を超えないように、発煙硝酸(7.4mL)を滴下した。反応液を150gの氷に注ぎ、析出した沈殿物をろ取し、氷冷した水で洗浄し、凍結乾燥して、目的化合物3を薄黄色の粉末(8.6g、収率89%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 8.06 (s, 1H), 2.85 (s, 3H), 2.79 (s, 3H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C
10H
8NO
5: 222.0397; found: 222.0402 [M+H]
+
【0050】
(D)ニトロメロファン酸(4)の合成:
【0051】
【化10】
【0052】
過マンガン酸カリウム(66.9g)の水(250mL)溶液を80℃に加温し、撹拌しながら化合物3を少量ずつ添加し、80℃にて反応を継続した。1日後、過マンガン酸カリウム(11.2g)を添加し、水を全量が400mLとなるまで追加し、80℃にて反応を継続した。1日後、さらに過マンガン酸カリウム(11.2g)を添加し、水を全量が400mLとなるまで追加し、80℃にて反応を継続した。反応開始から3日後、反応液を冷却し、メタノール(20mL)を添加して3時間撹拌した。析出した黒色沈殿をろ去し、ろ液に発泡が止まるまで濃塩酸を添加し、1時間加熱還流した。水を減圧下留去した後、凍結乾燥した。残渣を100mLの酢酸と共に加熱還流し、熱いうちに上清を注意深く分離した。この抽出操作を3回繰り返した。上清を合わせて減圧下溶媒を留去し、真空乾燥した後、残渣を50mLのテトラヒドロフランで2回抽出した。抽出液を合わせて減圧下溶媒を留去し、真空乾燥した。残渣にジクロロメタンを加え、懸濁液を室温で1日撹拌し、沈殿物をろ取し、ジクロロメタンで洗浄し、真空乾燥して、目的化合物4を白色粉末(10.2g、収率48%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.46 (s)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C
10H
4NO
10: 297.9841; found: 297.9839 [M-H]
-
【0053】
(E)化合物6の合成:
【0054】
【化11】
【0055】
メタンスルホン酸(26mL)に化合物4(3.0g)とレゾルシノール(4.4g)を加え、90℃にて2日間撹拌した。反応液を250mLの冷水に注ぎ、生じた沈殿をろ取し、冷水で洗浄し、凍結乾燥して、化合物5の粗生成物をオレンジ色粉末(1.74g)として得た。これを無水酢酸(20mL)と共に1日加熱還流した。反応液の溶媒を減圧下留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて2回精製し(1回目;ジクロロメタン/酢酸エチル=98/2→95/5、2回目;ジクロロメタン/酢酸エチル=98/2→96/4)、目的化合物6を薄黄色の粉末(1.71g、収率21%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.23 (s, 1H), 7.41 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.34 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.31 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 7.02 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 2H), 6.95 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 2.29 (s, 6H), 2.27 (s, 6H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C
42H
26NO
16: 800.1246; found: 800.1242 [M+H]
+
【0056】
(F)化合物5の合成:
【0057】
【化12】
【0058】
化合物6(568mg)のメタノール(14mL)懸濁液に1M水酸化ナトリウム水溶液(14mL)を添加し、50℃にて1日撹拌した。反応液のメタノール分画のみをエバポレーターにて留去し、残りの溶液に5M塩酸を添加した。生じた沈殿物を氷冷してろ取し、氷冷した水で洗浄し、凍結乾燥して、目的化合物5をオレンジ色粉末(440mg、収率98%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.19 (s, 2H), 10.18 (s, 2H), 9.03 (s, 1H), 6.99 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.69 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 6.67 (s, 2H), 6.57 (dd, J = 2.4, 8.8 Hz, 2H), 6.49 (s, 4H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C
34H
18NO
12: 632.0824; found: 632.0814 [M+H]
+
【0059】
(G)化合物7の塩酸塩の合成:
【0060】
【化13】
【0061】
硫化ナトリウム9水和物(2.0g)の水(30mL)溶液に化合物5(950mg)、水硫化ナトリウム(841mg)を順に添加し、全ての試薬が溶解するまで室温にて撹拌し、その後100℃にて1日撹拌した。水硫化ナトリウム(120mg)を追加し、100℃にて更に1日撹拌した。反応液に5M塩酸を添加し、3時間加熱還流した。反応液の溶媒を減圧下留去し、凍結乾燥した。残渣に少量のメタノールを加え撹拌しながら氷冷し、不溶物をろ去し、更に不溶物を冷メタノールで洗浄した。ろ液を合わせ、減圧下溶媒を留去し、真空乾燥し、目的化合物7の塩酸塩を濃赤色粉末(1.0g、定量的)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.46 (s, 1H), 6.86 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.75 (bs, 2H), 6.69 (bs, 2H), 6.62 (bs, 6H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C
34H
20NO
10: 602.1082; found: 602.1092 [M+H]
+
【0062】
(2)蛍光特性
上記(1)で得られた化合物(I’)の蛍光特性を評価した。
化合物(I’)の塩酸塩の5μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5および12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは0.1M水酸化ナトリウム水溶液)について、励起波長484nmおよび蛍光波長534nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を
図9に示す。
図9から、最大蛍光強度はpH 6.5〜7.0で得られたことが分かる。
【0063】
実施例4
(1)化合物(I’)(R=水素原子、R
1=カルボキシル基、R
2=水素原子)の合成
(A)化合物2’の合成:
【0064】
【化14】
【0065】
ベンゼンペンタカルボン酸(894mg)をテトラヒドロフランに懸濁させ、超音波にて粉末を粉砕した後に、減圧下溶媒を留去した。得られた粉末を140℃にて24時間加熱した。減圧下室温に戻した後、レゾルシノール(1.32g)とメタンスルホン酸(10mL)を加え、90℃で2日間撹拌した。反応液を室温に戻した後、氷冷した水(100mL)に撹拌しながら徐々に加えた。析出した固体をろ取し、水で洗浄後、凍結乾燥して濃赤色粉末(1.88g)を得た。これを無水酢酸(14mL)と共に1日加熱還流した。反応液の溶媒を減圧下留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて3回精製し(1回目および2回目;ジクロロメタン/メタノール=95/5→93/7→90/10、3回目;酢酸エチル/メタノール=100/0→95/5→90/10)、目的化合物2’を薄黄色粉末(1.6g、収率67%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.81 (s, 1H), 7.29 (s, 2H), 7.26 (d, J=8.3 Hz, 2H), 7.14 (s, 2H), 6.98 (d, J=8.3 Hz, 2H), 6.81 (d, J=8.3 Hz, 2H), 6.61 (d, J=8.3 Hz, 2H), 2.29 (s, 6H), 2.26 (s, 6H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C
43H
27O
16: 799.1294; found: 799.1302 [M+H]
+
【0066】
(B)化合物1’の合成:
【0067】
【化15】
【0068】
化合物2’(800mg)のメタノール(4mL)懸濁液に5M水酸化ナトリウム水溶液(4mL)を添加し、50℃にて1日撹拌した。反応液のメタノール分画のみをエバポレーターにて留去し、残りの溶液に5M塩酸を添加した。生じた沈殿物を氷冷してろ取し、氷冷した水で洗浄し凍結乾燥した。この粉末を少量のメタノールに懸濁させ、撹拌しながら加熱還流した。室温に戻して粉末をろ取した後、得られた粉末を少量の5M水酸化ナトリウム水溶液に溶解し、5M塩酸を添加した。生じた沈殿物を氷冷してろ取し、氷冷した水で洗浄し凍結乾燥して目的化合物1’を橙色粉末(518mg、収率79%)として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.18 (bs, 4H), 8.66 (s, 1H), 6.62 (bs, 6H), 6.49 (bs, 6H)
FAB-HRMS (m/z): calcd for C
35H
19O
12: 631.0871; found: 631.0891 [M+H]
+
【0069】
(2)蛍光特性
上記(1)で得られた化合物(I’)の蛍光特性を評価した。
化合物(I’)の1μM溶液(溶媒:pH 1のデータは0.1M塩酸、pH 2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0および12.0のデータは25mMリン酸緩衝液、pH 14のデータは0.1M水酸化ナトリウム水溶液)について、励起波長488nmおよび蛍光波長528nmにおける、pH変化に伴う蛍光強度を
図10に示す。
図10から、最大蛍光強度はpH 4.5で得られたことが分かる。