(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6675128
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】漁網用高圧水洗浄装置及び漁網の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20200323BHJP
A01K 75/00 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
B08B3/02 C
A01K75/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-186674(P2018-186674)
(22)【出願日】2018年10月1日
【審査請求日】2018年10月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518349606
【氏名又は名称】池田 潤司
(74)【代理人】
【識別番号】100082234
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145078
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 潤司
【審査官】
高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】
特公平05−049251(JP,B2)
【文献】
特開2007−330117(JP,A)
【文献】
特開2012−213351(JP,A)
【文献】
特開2001−246332(JP,A)
【文献】
実公昭54−020398(JP,Y2)
【文献】
特開2000−083464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00−13/00
A01G 33/00−33/02
A01K 61/00−61/65
A01K 61/80−63/10
A01K 69/00−73/053
A01K 73/12−77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒鋼を格子状に組んだ網支持体上に漁網受け体を交換可能に係着して構成した漁網洗浄部を有する洗浄作業台と、該洗浄作業台の横方向一側に互いに離間して設けた一対のガイド棒からなる網ガイド体と、該洗浄作業台の下方に配置した排水性を有する異物収容体と、前記漁網洗浄部に向けて上方から高圧洗浄水を噴射する洗浄ノズルとから構成し、前記洗浄作業台の一側から他側に向けて被洗浄網を前記網ガイド体で案内しながら前記漁網洗浄部上を移動させる間に、該被洗浄網に前記洗浄ノズルから高圧洗浄水を噴射するようにしてなる漁網用高圧水洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄作業台は、前記漁網洗浄部を前側より後側が高い傾斜面に支持していることを特徴とする請求項1記載の漁網用高圧水洗浄装置。
【請求項3】
前記漁網受け体は、前記網支持体に長めの結束バンドを用いて締着し、該結束バンドの余丁部は前記漁網洗浄部の下方に突出させてある請求項1記載の漁網用高圧水洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄作業台には、前記洗浄ノズルを回動、かつ俯仰動可能に支持するノズル支持体を設けてあることを特徴とする請求項1記載の漁網用高圧水洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄作業台の他側位置に、前記被洗浄網を一側から他側に移動させる網移動機構を配置してあることを特徴とする請求項1記載の漁網用高圧水洗浄装置。
【請求項6】
洗浄作業台を構成し、棒鋼を格子状に組んだ網支持体上に漁網受け体を交換可能に係着してなる漁網洗浄部上を、該洗浄作業台の横方向一側に互いに離間して設けた一対のガイド棒からなる網ガイド体で案内しながら被洗浄網を一側から他側に向けて移動させ、上方から高圧洗浄水を噴射して該被洗浄網に付着している異物を除去し、除去した異物は前記洗浄作業台の下に配置した排水性を有する異物収容体内に収容するようにしてなる漁網の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁網に付着した海藻、木片等の異物を効率良く除去し、速やかに再使用できるようにするための漁網用高圧水洗浄装置及び漁網の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漁網、特に魚の通り道に張巡らして設置する刺し網には、潮流に乗って海藻、その他の異物(以下、海藻等という。)が付着し、魚を捉える網目が塞がれて漁獲量の低下を招き、刺し網が潮流の影響を受け易くなって安定性が悪くなるという問題がある。また、漁船で漁網を巻き上げる際に、漁網に海藻が絡んでくる事態も起きている。
このため、漁を終えた刺し網から海藻等を除去する作業が必要であり、従来は手作業で除去していた。しかし、海藻等は網に絡まった状態で付着していることや、刺し網の長さは約1,200mあることから、除去作業には非常に手間が掛り、多くの作業時間と人員を要していた。そして、この刺し網の洗浄作業を日に4〜5枚行うことは、極めて大きな負担になっている。
そこで、刺し網をビニールシートに包んで海藻を発酵させることで除去の手作業を省く方法も行われているが、効率的ではないし、その日のうちに除去できないので複数枚の網が必要になるという欠点がある。
【0003】
そこで、漁網から海藻等を除去する作業の機械化が研究され、網洗浄装置が提案されている。この網洗浄装置は、洗浄すべき網が通過する1または2以上の通路と、該通路に設けられた切欠き部から網に圧水を噴射する1または2以上の高圧ノズルとからなり、前記通路が入口から出口にかけて漸次高くなる勾配を形成した構成からなるものである(特許文献1)。
【0004】
また、コンベア搬送手段1の搬送路上方に枠体2を設置し、その枠体2に中空回転軸3を回転可能に垂下軸承し、その回転軸3の下端外周に噴射ノズル4を放射状に配向して接続すると共に、各ノズル4の先端は斜め下向きに屈曲させ、中空回転軸3上部に高圧水送水パイプ5を漏洩防止手段11を介して嵌合締着した漁網洗浄装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−220005号公報
【特許文献2】実開昭60−24383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の網洗浄装置は、のりの付着している網を通路7、7の間に配置した複数のリングからなる環状部材6に摺動させながら挿通するが、のりが付着している網は正常な網の数倍の太さになっているから環状部材6を挿通するのに大きな力を必要とするし、時間も要するという欠点がある。
更に大きな問題は、環状部材6を通る網は付着しているのりも含めて束ねた状態になっているから、切欠き部8が設けてあるとしてもその部分で網が展開する訳ではなく、高圧水を噴射しても絡みついているのりを効率的に、確実に除去することはできないことである。また、不定形な形ののりは水圧で飛ばされて周囲に付着するから、除去作業後の装置の手入れが面倒であるという欠点がある。
【0007】
また、特許文献2の漁網洗浄装置は、コンベア搬送手段1のベルト6上に乗せて移送する網体16に噴射ノズル4から高圧水を噴射することで海草、泥等を除去するものであるが、除去されて落下する海草、泥等はUターンして下側を移動しているベルトに付着してしまうという欠点がある。ベルト6が金網状、パンチングボードであるとしても海草、泥等が付着して網体16の目を塞ぐことは避けられないという欠点もある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の諸欠点に鑑みなされたもので、高圧洗浄水が水圧で網を広げるので網に付着している海藻等を確実に、また効率的に除去できるので、洗浄作業を従来よりも少ない人員で、かつ短時間で行うことが可能であるから、網を速やかに再使用できるし、除去した海藻等は略水切りした状態で回収するので作業性に優れており、しかも構成が簡潔なので手入れ等の面倒も無い漁網用高圧水洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上述した課題を解決するための構成した請求項1に係る本発明は、
棒鋼を格子状に組んだ網支持体上に漁網受け体を交換可能に係着して構成した漁網洗浄部を有する洗浄作業台と、該洗浄作業台の横方向一側に互いに離間して設けた一対のガイド棒からなる網ガイド体と、該洗浄作業台の下方に配置した排水性を有する異物収容体と、前記漁網洗浄部に向けて上方から高圧洗浄水を噴射する洗浄ノズルとから構成し、前記洗浄作業台の一側から他側に向けて被洗浄網を前記網ガイド体で案内しながら前記漁網洗浄部上を移動させる間に、該被洗浄網に前記洗浄ノズルから高圧洗浄水を噴射するようにしたものからなる。
(2)そして、前記洗浄作業台は、前記漁網洗浄部を前側より後側が高い傾斜面に支持するとよい。
(3)また、前記漁網受け体は、前記網支持体に長めの結束バンドを用いて締着し、該結束バンドの余丁部は前記漁網洗浄部の下方に突出させるとよい。
(4)更に、前記洗浄作業台には、前記洗浄ノズルを回動、かつ俯仰動可能に支持するノズル支持体を設けるとよい。
(5)また、前記洗浄作業台の他側位置に、前記被洗浄網を一側から他側に移動させる網移動機構を配置するとよい。
(6)そして、洗浄作業台を構成し、
棒鋼を格子状に組んだ網支持体上に漁網受け体を交換可能に係着してなる漁網洗浄部上を、該洗浄作業台の横方向一側に互いに離間して設けた一対のガイド棒からなる網ガイド体で案内しながら被洗浄網を一側から他側に向けて移動させ、上方から高圧洗浄水を噴射して該被洗浄網に付着している異物を除去し、除去した異物は前記洗浄作業台の下に配置した排水性を有する異物収容体内に収容するようにするとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)被洗浄網は漁網洗浄部上で高圧洗浄水が噴射されることにより、水圧でより広がった状態になるから被洗浄網に付着している海藻等を確実に、効率良く除去することができる。
(2)被洗浄網に付着している海藻等を除去する作業は、目視しながら噴射ノズルから高圧洗浄水をピンポイントで噴射するから確実に除去することができる。
(3)漁網洗浄部は前側より後側が高い傾斜面に設定したから、水圧で被洗浄網が上端側に寄って束状になるのを防止でき、洗浄作業の効率を上げることができる。
(4)漁網洗浄部は、網支持体に漁網受け体を交換可能に係着して構成したから、水圧や摩耗で損傷した漁網受け体を交換することができる。
(5)漁網受け体を網支持体に締結する結束バンドには長さのあるものを用いて余丁部を漁網洗浄部の下方に突出させることにより、結束バンドに漁網が引っ掛かるのを防止し、また海藻等が水圧で周囲に飛散するのを防止して異物収容体に収容することができる。
(6)洗浄作業台の他側位置に、被洗浄網を一側から他側に移動させる網移動機構を配置することで、作業効率の向上と作業者の負担を軽減することができる。
(7)漁網から海藻等を除去する作業は当日中に終わらせることができるから、予備の漁網を用意しておく必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る漁網用高圧水洗浄装置を一部を破断にして示す全体構成図である。
【
図3】漁網用高圧水洗浄装置の使用状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。図において、1は洗浄作業台、2は該洗浄作業台1を構成する鉄骨製の台本体で、該台本体2は横長方形の枠部2Aと、該枠部2Aの前側両端に設けた左右一対の前脚2B、2Bと、該前脚2Bより長い左右一対の後脚2C、2Cとから構成してあり、洗浄作業台1は前側より後側が高い後上がりに傾斜している。
【0013】
3は前記枠部2A内に設けた全面が後上がりの傾斜面になった多孔材で構成した漁網洗浄部を示す。該網洗浄部3は棒鋼を目の粗いあや織りに組んで強度性を持たせた網支持体4と、該網支持体4の上に張設した金網からなる漁網受け体5とから構成してあり、該漁網受け体5は例えば多数本の結束バンド6で網支持体4に締着してある。この結束バンド6による締結で、漁網受け体5が水圧で網支持体4に繰り返し擦られて摩耗し、変形し、或いは断線する等の損傷を防止するが、また損傷を受けた漁網受け体5の交換を可能にしている。
また、結束バンド6には余丁部6Aになる長さのあるものを用い、該余丁部6Aは漁網洗浄部3の下方に突出させることにより、被洗浄網Nが引っ掛るのを防止し、また海藻等が水圧で周囲に飛散するのを防止して後述する異物収容体10に確実に回収できるようにしてある。
【0014】
7は前記台本体2の枠部2A右端側に立設した網ガイド体を示す。該網ガイド体7は枠部2Aに溶接手段により固着して立設した一対の金属製丸棒からなるガイド棒7A、7Aで構成してあり、離間するガイド棒7A、7Aの間で被洗浄網Nを横移動させることで漁網洗浄部3の略中央に案内するものである。
【0015】
8、8は台本体2の前縁に左右に離間して立設した一対のノズル支持体を示す。該各ノズル支持体8は台本体2に溶接手段により固着した有底の支持筒8Aと、該支持筒8Aに挿脱可能に挿設し、長さが調節可能な支柱8Bと、該支柱8Bの上端に矢示イ、ロ方向に回動可能に嵌着した支持キャップ8Cと、該支持キャップ8Cに矢示ハ、ニ方向に俯仰動可能に軸着したノズル支持板8Dとから構成してある。
そして、ノズル支持体8は、ノズル支持板8Dに噴射ノズル9を漁網洗浄部3に向けた下向きの状態で挿嵌することにより支持するもので、噴射ノズル9は矢示イ、ロ方向の横方向に回動可能、かつ矢示ハ、ニ方向の上下方向に俯仰動可能になっている。
【0016】
9は被洗浄網Nから海藻等の異物を除去するための洗浄ノズルを示す。該洗浄ノズル9は図示しない高圧ポンプに耐圧ホース9Aで接続してあり、16〜18kg/hの高圧洗浄水を被洗浄網Nに噴射するものである。そして、噴射ノズル9は作業者が手で支えて使用することも可能であるが、高圧ポンプから圧送される水の振動等で洗浄ノズル9も振動し作業者に負担が掛ることから、前記各ノズル支持体8を用いることで洗浄作業を楽に行うことができる。
【0017】
10、10は洗浄作業台1の下に横並びに配置した2個の異物収容体を示す。該各異物収容体10は上方が開放した箱からなり、底面10A及び各側面10Bには多数の排水穴10C、10C、・・・が形成してあり、被洗浄網Nから除去した海藻片、異物のみを収容し、洗浄水は流出するようになっている。
【0018】
本実施の形態に係る漁網用高圧水洗浄装置は上述の構成からなるもので、次にその作用について説明する。海に設置してある刺し網には潮流に乗って海藻等が付着し、また海から引き揚げる際にも海藻等が刺し網に付着することから、次の漁のために陸上では被洗浄網Nから海藻等を除去する洗浄作業を行う。
【0019】
魚を回収した後のランダムに重なった状態にある被洗浄網Nは、その一端側を作業員が引いて網ガイド体7のガイド棒7A、7Aの間を通し、漁網洗浄部3の略中央に一側から他側にかけて乗せ、噴射ノズル9から約16〜18kg/hの高圧洗浄水を被洗浄網Nに向けて噴射する。高圧洗浄水を受けた被洗浄網Nは水圧で広がった状態になり、付着している海藻等も水圧を受けるために被洗浄網Nから吹飛ばされるように除去される。そして、被洗浄網Nを洗浄作業台1の他側から引き寄せながら順次洗浄作業を行う。
【0020】
本実施の形態では、2個の噴射ノズル9、9を用いて一次洗浄、二次洗浄を行っており、またピンポイントで海藻等を狙って高圧洗浄水を噴射することで、海藻等を確実に除去することができる。
被洗浄網Nから除去された海藻等は、漁網洗浄部3から下方に配置してある異物収容体10内に落下して収容される。異物収容体10は排水性があるので洗浄水は流失し、海藻等のみが残って重量もさほど重くならないことから後の廃棄処分作業を楽に行うことができる。
【0021】
また、ノズル支持体8は伸縮可能に構成してあり、作業者の身長に応じて噴射ノズル9の高さ調整ができるから作業効率を向上することができる。更に、ノズル支持体8は洗浄作業台1に対して着脱自在であり、噴射ノズル9はノズル支持体8に着脱自在であるから、洗浄作業の内容によってはノズル支持体8を使用しないことも可能である。
【0022】
なお、漁網洗浄部3は棒鋼を格子状に組んだ網支持体4と金網からなる漁網受け体5とから構成したが、漁網受け体に例えばパンチングメタルを用いてもよいものである。この場合には、隣接する一対の孔にかけて結束バンド6を通して余丁部6Aを下方に突出すればよい。
【0023】
なお、本実施の形態では被洗浄網Nの移動は、作業員が漁網洗浄部3上を漁網をたぐり寄せる作業によって行っていたが、手動或いは電動の網巻き取り機等を用いて被洗浄網Nを移動させてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 洗浄作業台
3 漁網洗浄部
4 網支持体
5 漁網受け体
6 結束バンド
7 網ガイド体
8 ノズル支持体
9 洗浄ノズル
10 異物収容体
N 被洗浄網
【要約】
【課題】高圧洗浄水が水圧で網を広げるので網に付着している海藻等を確実に、また効率的に除去する作業を少ない人員で、短時間で行うことができる。除去した海藻等は略水切りした状態で回収するので作業性に優れており、しかも構成が簡潔なので手入れ等の面倒も無い網用高圧水洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄作業台1に後上がりに傾斜させて設けた漁網洗浄部3は、格子状の網支持体4に漁網受け体5を被せて結束バンド6で締結して構成してある。洗浄作業台1の横方向一側には、被洗浄網を漁網洗浄部3上に案内するガイド体7が立設してある。洗浄作業台1の前縁には噴射ノズル9を支持するノズル支持体8が立設してある。洗浄作業台1の下には排水性を有する異物収容体10が配置してある。
【選択図】
図1