(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コア、包囲層、中間層及びカバーを具備したマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが単層からなり、上記包囲層が樹脂材料からなると共に、上記コア、包囲層、中間層及びカバーの表面硬度が、
コア表面硬度>包囲層表面硬度<中間層表面硬度<カバー表面硬度
の関係を満たし、コアの表面硬度と包囲層の表面硬度がショアD硬度で、
−20≦(包囲層表面硬度−コア表面硬度)≦−10
の関係を満たし、包囲層の表面硬度と中間層の表面硬度がショアD硬度で、
23≦(中間層表面硬度−包囲層表面硬度)≦24
の関係を満たし、中間層の表面硬度とカバーの表面硬度がショアD硬度で、
9≦(カバー表面硬度−中間層表面硬度)≦10
の関係を満たし、コアの周囲に包囲層及び中間層が被覆された球体(中間層被覆球体)の初速(m/s)とボールの初速(m/s)が、
−0.3≦(ボール初速−中間層被覆球体初速)≦−0.2
の関係を満たし、コアの周囲に包囲層が被覆された球体(包囲層被覆球体)の初速(m/s)と中間層被覆球体の初速(m/s)が、
0.1≦(中間層被覆球体初速−包囲層被覆球体初速)≦0.2
の関係を満たし、コアの初速(m/s)とボールの初速(m/s)が、
−0.6≦(ボール初速−コア初速)≦−0.5
の関係を満たし、且つ、ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をA、中間層被覆球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をBとするとき、
0.88≦A/B≦0.93
の関係を満たすことを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、内側からソリッドコア、包囲層、中間層及びカバーを有するものである。
図1に本発明のゴルフボールの構造を示した。
図1に示したゴルフボールGは、コア1と、該コア1を被覆する包囲層2と、該包囲層2を被覆する中間層3と、該中間層3を被覆するカバー4とを有している。また、上記カバー4の表面には、通常、空力特性の向上のためにディンプルDが多数形成される。以下、上記の各層について詳述する。
【0012】
なお、本発明において、「中ヘッドスピード」はドライバー(W#1)打撃時において概ね36〜44m/s程度のヘッドスピードを意味し、「低ヘッドスピード」は概ね25〜35m/s程度のヘッドスピードを意味する。
【0013】
本発明において、ソリッドコアは公知のゴム組成物を用いて形成することができ、特に制限されるものではないが、好適なものとして以下に示す配合のゴム組成物を例示することができる。
【0014】
上記コアを形成する材料としては、ゴム材を主材として用いることができる。例えば、基材ゴムに、共架橋剤、有機過酸化物、不活性充填剤、硫黄、老化防止剤、有機硫黄化合物等を含有するゴム組成物を用いて形成することができる。
【0015】
上記ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエンを使用したものが好ましい。このポリブタジエンとしては、そのポリマー鎖中に、シス−1,4−結合を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上有するものを好適に使用することができる。分子中の結合に占めるシス−1,4−結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。また、上記ポリブタジエンに含まれる1,2−ビニル結合の含有量は、そのポリマー鎖中に好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。1,2−ビニル結合の含有量が多すぎると、反発性が低下する場合がある。
【0016】
上記ポリブタジエンとしては、良好な反発性を有するゴム組成物の加硫成形物を得る観点から、希土類元素系触媒又はVIII族金属化合物触媒で合成されたものを配合することが好ましく、中でも特に希土類元素系触媒で合成されたものであることが好ましい。
【0017】
このような希土類元素系触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ランタン系列希土類元素化合物と、有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じルイス塩基とを組み合わせてなる触媒を挙げることができる。
【0018】
上記ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の金属ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等を挙げることができる。
【0019】
本発明においては、特に、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム化合物を用いたネオジム系触媒を使用することが、シス−1,4−結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましく、これらの希土類元素系触媒の具体例は、特開平11−35633号公報、特開平11−164912号公報、特開2002−293996号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
【0020】
ランタン系列希土類元素化合物系触媒を用いて合成されたポリブタジエンは、ゴム成分中に10質量%以上、特に20質量%以上、更には40質量%以上含有することが反発性を向上させるためには好ましい。
【0021】
なお、上記のゴム組成物には、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0022】
共架橋剤としては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。
【0023】
不飽和カルボン酸として具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0024】
不飽和カルボン酸の金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0025】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上とすることができ、配合量の上限は好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、最も好ましくは30質量部以下とすることができる。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0026】
上記有機過酸化物としては市販品を用いることができ、例えば、パークミルD(日油社製)、パーヘキサ3M(日油社製)、パーヘキサC40(日油社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いることが好ましい。
【0027】
上記有機過酸化物は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、最も好ましくは0.7質量部以上とすることができ、配合量の上限は好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な打感、耐久性及び反発性を得ることができない場合がある。
【0028】
不活性充填剤としては、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
不活性充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上とすることができ、配合量の上限は好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な重量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0030】
更に、必要に応じて老化防止剤を配合することができ、例えば、市販品としてはノクラックNS−6、同NS−30、同200(大内新興化学工業社製)、ヨシノックス425(吉富製薬社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
該老化防止剤の配合量は0超とすることができ、好ましくは基材ゴム100質量部に対して0.05質量部以上、特に0.1質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは基材ゴム100質量部に対して3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0032】
また、本発明では、必要に応じて、コアの反発性向上を目的として、上記ゴム組成物に有機硫黄化合物を配合することができる。有機硫黄化合物を配合する場合、その配合量は、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、配合量の上限は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下とすることができる。有機硫黄化合物の配合量が少なすぎると、コアの反発性向上効果が十分に得られない場合があり、逆に、その配合量が多すぎると、コアの硬度が軟らかくなりすぎて、フィーリングが悪くなり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0033】
上記の各成分を含有するゴム組成物は、通常の混練機、例えばバンバリーミキサーやロール等を用いて混練することにより調製される。また、該ゴム組成物を用いてコアを成形する場合、所定のコア成形用金型を用いて圧縮成形又は射出成形等により成形すればよい。得られた成形体については、ゴム組成物に配合された有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度条件で加熱硬化し、所定の硬度分布を有するコアとする。この場合、加硫条件は特に限定されるものではないが、通常、約130〜170℃、特に150〜160℃で10〜40分、特に12〜20分の条件とされる。
【0034】
上記コアの直径は、特に制限されるものでないが、30〜40mmに設定することができる。この場合、好ましい下限値は32mm以上であり、より好ましくは34mm以上、更に好ましくは35mm以上である。また、好ましい上限値は39mm以下とすることができ、より好ましくは38mm以下、更に好ましくは36mm以下とすることができる。
【0035】
上記コアの中心硬度は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で好ましくは50以上、より好ましくは52以上、更に好ましくは54以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で好ましくは63以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは58以下とすることができる。また、上記の中心硬度をショアD硬度で表すと、好ましくは30以上、より好ましくは32以上、更に好ましくは33以上となる。また、その上限は、好ましくは40以下、より好ましくは38以下、更に好ましくは36以下となる。コアの中心硬度が低すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。また、コアの中心硬度が高すぎると、スピン量が増えすぎて飛ばなくなることがある。
【0036】
上記コアの表面硬度は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で好ましくは63以上、より好ましくは68以上、更に好ましくは70以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で好ましくは83以下、より好ましくは78以下、更に好ましくは75以下とすることができる。また、上記の表面硬度をショアD硬度で表すと、好ましくは40以上、より好ましくは44以上、更に好ましくは45以上となる。また、その上限は、好ましくは55以下、より好ましくは51以下、更に好ましくは49以下となる。コアの表面硬度が低すぎると、スピン量が増えすぎたり、反発性が低くなって飛ばなくなることがある。また、コアの表面硬度が高すぎると、打感が硬くなりすぎたり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0037】
上記の中心硬度とは、コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心において測定される硬度を意味し、表面硬度は上記コアの表面(球面)において測定される硬度を意味する。
【0038】
また、コアの中心と表面の中間の位置における断面硬度は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で好ましくは55以上、より好ましくは58以上、更に好ましくは61以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で好ましくは70以下、より好ましくは67以下、更に好ましくは65以下とすることができる。また、上記の断面硬度をショアD硬度で表すと、好ましくは34以上、より好ましくは36以上、更に好ましくは38以上となる。また、その上限は、好ましくは45以下、より好ましくは43以下、更に好ましくは41以下となる。上記断面硬度が適正な範囲から逸脱した場合、スピン量が増えて飛ばなくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0039】
コアの中心と表面の硬度差は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で好ましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは20以下とすることができる。また、上記の表面硬度をショアD硬度で表すと、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは11以上となる。また、その上限は、好ましくは23以下、より好ましくは19以下、更に好ましくは15以下となる。上記硬度差が小さすぎると、W#1打撃時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。一方、上記硬度差が大きすぎると、実打初速が低くなり飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0040】
上記コアのたわみ量、即ち、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量は、特に制限されるものではないが、3.0〜8.0mmの範囲内とすることができる。この場合、好ましい下限値は3.5mm以上であり、より好ましくは4.2mm以上とすることができる。また、好ましい上限値は6.5mm以下であり、より好ましくは5.5mm以下とすることができる。上記範囲よりも硬すぎる(たわみ量が小さすぎる)と、スピン量が増えすぎて飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。逆に、上記範囲よりも軟らかすぎる(たわみ量が大きい)と、反発性が低くなりすぎて飛ばなくなったり、打感が軟らかくなりすぎたり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0041】
また、上記コアの比重は、特に制限されるものではないが、1.02〜1.40の範囲内とすることができる。この場合、好ましい下限値は1.10以上であり、より好ましくは1.15以上である。また、その好ましい上限値は1.30以下とすることができ、より好ましくは1.20以下とすることができる。
【0042】
本発明では、上記材料を用いてソリッドコアを形成することによって、反発性の向上を図ることができるため、安定した弾道を得ることができるゴルフボールを提供することができる。
【0043】
なお、上記コアの構造については1層に限られず、2層以上の多層構造としてもよい。コアを多層構造とすることにより、ドライバー打撃時のスピン量を低減させることができ、更なる飛距離増大を図ることができる。また、打撃時のスピン特性及びフィーリング特性を更に改良することもできる。この場合、上記コアは、少なくとも内層コア(内芯球)及び外層コアを具備するものとなる。
【0044】
次に、上記コアの周囲に形成される包囲層について詳述する。
上記包囲層を形成する材料としては、公知の樹脂を用いることができ特に制限されるものではないが、アイオノマー樹脂や、ウレタン系、アミド系、エステル系、オレフィン系、スチレン系等の熱可塑性エラストマーよりなる群から選択される1種又は2種以上を使用することができる。本発明では、所望の硬度範囲において高い反発性が得られることから、特に熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーを好適に使用できる。
【0045】
包囲層の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で通常15以上、好ましくは20以上、より好ましくは25以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、ショアD硬度で通常40以下、好ましくは35以下、より好ましくは30以下とすることができる。ここで、材料硬度とは、測定対象の材料を所定の厚さのシート状に成形した試験片を使用し、ASTM D2240に準じてタイプDデュロメータを用いて測定される硬度である(以下、同様)。
【0046】
また、上記コアの周囲に包囲層が被覆された球体(包囲層被覆球体)の表面硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で通常21以上、好ましくは26以上、より好ましくは31以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、通常46以下、好ましくは41以下、より好ましくは36以下とすることができる。
【0047】
上記の材料硬度及び表面硬度が低すぎると、フルショット時のスピン量が増えすぎて飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。また、上記の材料硬度及び表面硬度が高すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、フルショット時のスピン量が多くなって特に低ヘッドスピードで飛距離が出なくなることがある。また、打感が悪くなることもある。
【0048】
包囲層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.1mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは2.1mm以下、より好ましくは1.6mm以下、更に好ましくは1.4mm以下とすることができる。包囲層の厚さが薄すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、打感が悪くなることがある。また、包囲層の厚さが厚すぎると、フルショット時のスピン量が増えて飛距離が出なくなることがある。
【0049】
上記包囲層被覆球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量は、特に制限されるものではないが、2.5〜7.6mmの範囲内とすることができる。この場合、好ましい下限値は3.0mm以上であり、より好ましくは3.8mm以上とすることができる。また、好ましい上限値は5.7mm以下であり、より好ましくは4.7mm以下とすることができる。上記範囲よりも硬すぎる(たわみ量が小さすぎる)と、フルショット時のスピン量が増えすぎて飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。逆に、上記範囲よりも軟らかすぎる(たわみ量が大きい)と、打感が軟らかくなりすぎたり繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0050】
次に、上記包囲層の周囲に形成される中間層について詳述する。
上記中間層を形成する材料としては、公知の樹脂を用いることができ特に制限されるものではないが、好ましい材料の例としては、下記(A)〜(D)成分、
(a−1)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(a−2)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを
質量比で100:0〜0:100になるように配合した(A)ベース樹脂と、
(B)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0〜50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(C)分子量が228〜1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5〜80質量部と、
(D)上記(A)成分及び(C)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1〜17質量部
とを必須成分として配合してなる樹脂組成物を例示することができる。
【0051】
上記(A)〜(D)成分については、例えば、特開2010−253268号公報に記載される中間層の樹脂材料(A)〜(D)成分を好適に採用することができる。
【0052】
中間層の形成方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、予め作製した包囲層被覆球体を金型内に配置し、上記で調製した材料を射出成形する方法等を採用できる。
【0053】
中間層材料の材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で通常40以上、好ましくは45以上、より好ましくは47以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、ショアD硬度で通常60以下、好ましくは55以下、より好ましくは53以下とすることができる。
【0054】
また、上記コアの周囲に包囲層及び中間層が被覆された球体(中間層被覆球体)の表面硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で通常46以上、好ましくは51以上、より好ましくは53以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、ショアD硬度で通常66以下、好ましくは61以下、より好ましくは59以下とすることができる。
【0055】
上記の材料硬度及び表面硬度が低すぎると、フルショット時のスピン量が増えすぎて飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。また、上記の材料硬度及び表面硬度が高すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、フルショット時のスピン量が多くなって飛距離が出なくなったり、打感が悪くなることがある。
【0056】
中間層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.1mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは2.1mm以下、より好ましくは1.6mm以下、更に好ましくは1.4mm以下とすることができる。中間層の厚さが薄すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、打感が悪くなることがある。また、中間層の厚さが厚すぎると、フルショット時のスピン量が増えて飛距離が出なくなることがある。
【0057】
上記中間層被覆球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量は、特に制限されるものではないが、2.3〜7.4mmの範囲内とすることができる。この場合、好ましい下限値は2.8mm以上であり、より好ましくは3.5mm以上とすることができる。また、好ましい上限値は5.6mm以下であり、より好ましくは4.6mm以下とすることができる。上記範囲よりも硬すぎる(たわみ量が小さすぎる)と、フルショット時のスピン量が増えすぎて飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。逆に、上記範囲よりも軟らかすぎる(たわみ量が大きい)と、打感が軟らかくなりすぎたり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0058】
なお、上述した中間層の構造については1層に限られず、必要に応じて上記の範囲内において同種又は異種の中間層を2層以上形成してもよい。中間層を複数層形成することにより、ドライバー打撃時のスピン量を増減させることができ、更なる飛距離増大を図ることができる。また、打撃時のスピン特性及びフィーリング特性を更に改良することもできる。
【0059】
次に、本発明のゴルフボールのカバーを形成する材料について詳述する。本発明において、カバーはアイオノマー樹脂を主材料とすることが好適であり、更には、特定の粒状無機充填剤を補強剤として配合することが好適である。これらの材料について、以下に詳述する。
【0060】
上記アイオノマー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。該アイオノマー樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、三井・デュポンポリケミカル社製のH1706、H1605、H1557、H1601、AM7329、AM7317及びAM7318等を挙げることができる。
【0061】
上記粒状無機充填剤は、補強剤として配合される成分であり、特に制限されるものではないが、酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等を適宜使用することができる。
【0062】
上記粒状無機充填剤の平均粒子径は、特に制限されるものではないが、0.01〜100μmとすることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmとすることができる。上記粒状無機充填剤の平均粒子径が小さすぎても、大きすぎても、材料調製時における分散性が悪化する場合がある。なお、上記の平均粒子径は、適当な分散剤とともに水溶液に分散させ、粒度分布測定装置により測定される粒子径を意味する。
【0063】
上記粒状無機充填剤の配合量は、特に制限されるものではないが、カバー形成用材料の樹脂成分100質量部に対して好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、40質量部以下、好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下とする。上記粒状無機充填剤の配合量が少なすぎると、十分な補強効果を得ることができない場合がある。また、上記粒状無機充填剤の配合量が多すぎると、分散性や反発性にも悪影響を及ぼすことがある。
【0064】
上記粒状無機充填剤の比重は、特に制限されるものではないが、好ましくは4.8以下とすることができる。また、その下限も特に制限されるものではないが、好ましくは3.0以上とすることができる。粒状無機充填剤の比重が大きすぎると、カバー形成用材料が非常に重くなってしまい、ボール全体の重量が規定を超えてしまうことがある。
【0065】
更に、このカバー形成用材料には、必要に応じて、種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0066】
カバー形成用材料の比重は、特に制限されるものではないが、0.97以上とすることが好ましく、より好ましくは1.00〜1.50、更に好ましくは1.03〜1.20とする。カバー形成用材料の比重が小さすぎると、補強効果が足りずに繰り返し打撃による耐久性が悪くなることがある。また、カバー形成用材料の比重が大きすぎると、反発性が低下して飛距離が出なくなることがある。
【0067】
上記カバーを成形する方法としては、例えば、射出成形機に上述の材料を供給し、上記で形成した中間層の周囲に溶融した材料を射出することによりカバーを成形することができる。この場合、成形温度は樹脂の種類や配合比率等によって異なるが、通常150〜250℃の範囲とすることができる。
【0068】
カバーの材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で50より高くすることが好ましく、より好ましくは55以上、更に好ましくは58以上とすることができる。一方、カバーの材料硬度の上限も、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で65以下とすることが好ましく、より好ましくは62以下とすることができる。カバーの材料硬度が低すぎると、スピンが掛かりすぎたり反発性が不足して飛距離が落ちてしまったり、耐擦過傷性が悪くなることがある。また、カバーの材料硬度が高すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、ショートゲーム及びパターの打感が悪くなったりすることがある。
【0069】
カバーの厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは1.0mm以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.5mm以下、更に好ましくは1.4mm以下とすることができる。カバーの厚さが薄すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。また、カバーの厚さが厚すぎると、W#1打撃時のスピン量が多くなりすぎて飛距離が出なくなったり、ショートゲーム及びパターの打感が硬くなりすぎることがある。
【0070】
なお、上記カバーの構造については1層に限られず、必要に応じて同種又は異種の材料にて2層以上形成してもよい。この場合には、少なくとも1層を上記樹脂配合物で形成したカバーとすればよく、また硬度や厚さはカバー全体が上記範囲となるように調整することが推奨される。
【0071】
本発明のゴルフボールは、上述したコア、包囲層、中間層及びカバーの硬度、厚さ、初速及び比重が後述する関係を満たすものである。以下、上記各層の硬度、厚さ、初速及び比重の関係について詳述する。
【0072】
本発明では、上記コア、包囲層、中間層及びカバーの表面硬度が、
コア表面硬度>包囲層表面硬度<中間層表面硬度<カバー表面硬度
の関係を満たすことが必要である。各層の表面硬度が上記の関係を満たさない場合、中及び低ヘッドスピードの両者で良好な飛びと、ソフトな打感と飛び感を併せ持つ打感が得られなくなることがある。
【0073】
また、本発明では、中間層の表面硬度とカバーの表面硬度は、ショアD硬度で、
5≦(カバー表面硬度−中間層表面硬度)≦15
の関係を満たすことが必要である。この場合、上記の値の好ましい下限値は7以上であり、より好ましくは9以上である。また、上記の値の好ましい上限値は13以下であり、より好ましくは11以下である。上記の値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなりすぎて飛距離が出なくなったり、ソフトな打感が得られなくなることがある。また、上記の値が大きすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなりすぎて飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0074】
包囲層の表面硬度と中間層の表面硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で、
10≦(中間層表面硬度−包囲層表面硬度)≦50
の関係を満たすことが好ましい。この場合、上記の値のより好ましい下限値は15以上であり、更に好ましくは20以上である。また、上記の値のより好ましい上限値は40以下であり、更に好ましくは30以下である。上記の値が小さすぎると、ソフトな打感と飛び感を併せ持つ打感が得られなくなることがある。また、上記の値が大きすぎると、飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0075】
コアの表面硬度と包囲層の表面硬度はショアD硬度で、
−40≦(包囲層表面硬度−コア表面硬度)≦−5
の関係を満たすことが必要である。この場合、上記の値のより好ましい下限値は−30以上であり、更に好ましくは−20以上である。また、上記の値のより好ましい上限値は−8以下であり、更に好ましくは−10以下である。上記の値が小さすぎると、ソフトな打感と飛び感を併せ持つ打感が得られなくなったり、低ヘッドスピードで打撃された時の飛びが出なくなることがある。また、上記の値が大きすぎると、フルショット時にスピン量が多くなりすぎて飛距離が出なくなることがある。
【0076】
コアの周囲に包囲層及び中間層が被覆された球体(中間層被覆球体)の初速(m/s)とボールの初速(m/s)は、
−1.0≦(ボール初速−中間層被覆球体初速)≦0
の関係を満たすことが必要である。この場合、上記の値の好ましい下限値は−0.8m/s以上であり、より好ましくは−0.4m/s以上である。また、上記の値の好ましい上限値は−0.1m/s以下であり、より好ましくは−0.2m/s以下である。上記の値が小さすぎると、カバーが軟らかくなることによりフルショットした時のスピン量が増えて飛距離が出なくなったり、飛び感が出なくなることがある。また、上記の値が大きすぎると、フルショット時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなったり、カバーが硬くなることにより繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0077】
コアの周囲に包囲層が被覆された球体(包囲層被覆球体)の初速(m/s)と中間層被覆球体の初速(m/s)は、
−0.2≦(中間層被覆球体初速−包囲層被覆球体初速)
の関係を満たすことが必要である。この場合、上記の値の好ましい下限値は−0.1m/s以上であり、より好ましくは0m/s以上である。上記の値が小さすぎると、フルショット時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。
【0078】
コアの初速(m/s)とボールの初速(m/s)は、特に制限されるものではないが、
−1.0≦(ボール初速−コア初速)≦0
の関係を満たすことが好ましい。この場合、上記の値のより好ましい下限値は−0.8m/s以上であり、更に好ましくは−0.6m/s以上である。また、上記の値のより好ましい上限値は−0.1m/s以下であり、更に好ましくは−0.2m/s以下である。上記の値が小さすぎると、ボール全体での反発性が低くなったり、フルショットした時のスピン量が増えすぎて飛距離が出なくなることがある。また、上記の値が大きすぎると、カバーが硬くなり繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0079】
包囲層被覆球体の初速(m/s)とボールの初速(m/s)は、特に制限されるものではないが、
−0.4≦(ボール初速−包囲層被覆球体初速)≦0.4
の関係を満たすことが好ましい。この場合、上記の値の好ましい下限値は−0.3m/s以上であり、より好ましくは−0.2m/s以上である。また、上記の値の好ましい上限値は0.2m/s以下であり、より好ましくは0m/s以下である。上記の値が小さすぎると、フルショット時のスピンが増えすぎて飛ばなくなることがある。また、上記の値が大きすぎると、打感が硬くなりすぎたり、繰り返し打撃した時の耐久性が悪くなることがある。
【0080】
コアの初速(m/s)と包囲層被覆球体の初速(m/s)は、特に制限されるものではないが、
−1≦(包囲層被覆球体初速−コア初速)≦0
の関係を満たすことが好ましい。この場合、上記の値のより好ましい下限値は−0.8m/s以上であり、更に好ましくは−0.6m/s以上である。また、上記の値のより好ましい上限値は−0.1m/s以下であり、更に好ましくは−0.3m/s以下である。上記の値が小さすぎると、ボールとしての反発性が低くなりすぎたり、フルショットした時のスピン量が多くなりすぎて飛距離が出なくなることがある。また、上記の値が大きすぎると、ソフトな打感と飛び感の両立ができなくなることがある。
【0081】
なお、上記の初速は、USGAのドラム回転式の初速度計と同方式の初速測定器を用いてゴルフボールの初速ルールに規定された測定方式にて測定した初速度を意味する。
【0082】
中間層の比重とカバーの比重は、特に制限されるものではないが、
カバー比重≧中間層比重
の関係を満たすことが好ましい。この場合、
カバー比重>中間層比重
の関係を満たすことがより好ましく、更には
0.05≦(カバー比重−中間層比重)
の関係を満たすことが推奨される。中間層の比重とカバーの比重の関係が、上記の関係から逸脱した場合、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、反発性が低くなり飛距離が出なくなることがある。
【0083】
なお、コア、包囲層の比重は、特に制限されるものではないが、いずれも好ましくは1.00以上、より好ましくは1.02以上、更に好ましくは1.04以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは1.40以下、より好ましくは1.30以下、更に好ましくは1.20以下とすることができる。コア、包囲層及びカバーの比重が上記の範囲から逸脱すると、期待される飛びと打感と繰り返し打撃による割れ耐久性の両立ができなくなることがある。
【0084】
なお、中間層の比重は、特に制限されるものではないが、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.92以上、更に好ましくは0.95以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下、更に好ましくは1.0以下とすることができる。中間層の比重が上記の範囲から逸脱すると、反発が低くなって飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0085】
包囲層の厚さ、中間層の厚さ及びカバーの厚さは、特に制限されるものではないが、
包囲層厚さ≦カバー厚さ、及び
中間層厚さ≦カバー厚さ
の関係を満たすことが好ましい。包囲層の厚さ、中間層の厚さ及びカバーの厚さが上記の関係を満たさない場合、フルショット時のスピンが増えすぎて飛距離が出なくなることがある。
【0086】
更に、本発明では、ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をA、中間層被覆球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をBとするとき、
0.86≦A/B≦0.98
を満たすことが必要である。この場合、上記の値の好ましい下限値は0.87以上であり、より好ましくは0.88以上である。また、上記の値のより好ましい上限値は0.95以下であり、更に好ましくは0.93以下である。この値が小さすぎると、打感が硬くなり過ぎたり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、この値が大きすぎると、打感が軟らかくなり過ぎたり、飛距離が出なくなることがある。
【0087】
また、上記コアのたわみ量(mm)と上記ボールのたわみ量(mm)は、特に制限されるものではないが、
0.2≦(コアたわみ量−ボールたわみ量)≦1.2
の関係を満たすことが好ましい。この場合、上記の値のより好ましい下限値は0.4mm以上であり、更に好ましくは0.6mm以上である。また、上記の値のより好ましい上限値は1.0mm以下であり、更に好ましくは0.8mm以下である。上記の値が小さすぎると、反発が出なくなったり、スピンが増えて飛距離が出なくなることがある。逆に、この値が大き過ぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなったり、W#1打撃時の打感が軟らかくなり過ぎることがある。
【0088】
また、上記コアのたわみ量(mm)と上記包囲層被覆球体のたわみ量(mm)は、特に制限されるものではないが、
−0.6≦(コアたわみ量−包囲層被覆球体たわみ量)≦0.5
の関係を満たすことが好ましい。この場合、上記の値のより好ましい下限値は−0.4mm以上であり、更に好ましくは−0.2mm以上である。また、上記の値のより好ましい上限値は0.4mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以下である。上記の値が小さすぎると、打感においてソフト感と飛び感の両立ができなくなることがある。また、上記の値が大きすぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、打感においてソフト感と飛び感の両立ができなくなることがある。
【0089】
本発明のゴルフボールにおいては、更に空力特性を改善して飛距離を向上させるために、通常のゴルフボールと同様にカバーの表面に多数のディンプルを形成することが好ましい。上記ディンプルの種類の数及び総数等を適正化することにより、上述したボール構造との相乗効果で弾道がより安定し、飛距離性能に優れたゴルフボールを得ることができる。
【0090】
ディンプルの個数は、特に制限されるものではないが、好ましくは280個以上、より好ましくは300個以上、更に好ましくは320個以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは360個以下、より好ましくは350個以下、更に好ましくは340個以下とすることができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり飛距離が伸びなくなることがある。また、ディンプルの個数が多くなると、弾道が高くなり飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0091】
ディンプルの形状については、円形に限られず、各種多角形、デュードロップ形、楕円形等から1種又は2種以上を組み合わせて適宜使用することができる。
【0092】
上記ディンプルの直径は、特に制限されるものではないが、例えば、円形ディンプルを使用する場合には、2.5〜6.5mm程度とすることが好ましい。また、同様に、上記ディンプルの深さについても、特に制限されるものではないが、0.08〜0.30mmの範囲とすることが好ましい。
【0093】
上記ディンプルの個数や形状等が、上記の条件から逸脱すると、良好な飛距離が得られない弾道となり、飛距離が出ないことがある。
【0094】
なお、本発明では、ゴルフボールのデザイン性や耐久性を向上させるために、該カバー上に下地処理、スタンプ、塗装等の種々の処理を行うことも任意である。
【0095】
本発明のゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上に形成することができる。その重量は、通常45.0g以上、好ましくは45.2g以上とすることができる。また、その上限は45.93g以下とすることが好適である。
【実施例】
【0096】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0097】
〔実施例1〜4、比較例1〜8〕
コアの形成
表1に示したゴム組成物を調製した後、155℃,15分間の加硫条件により加硫成形することによりソリッドコアを作製した。
【0098】
【表1】
【0099】
なお、表1に記載した各成分の詳細は以下の通りである。
ポリブタジエンA:JSR社製、商品名「BR01」
ポリブタジエンB:JSR社製、商品名「BR51」
ポリイソプレンゴム:JSR社製、商品名「IR2200」
過酸化物(1):ジクミルパーオキサイド、日油社製、商品名「パークミルD」
過酸化物(2):1,1ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカの混合物、日油社製、商品名「パーヘキサC−40」
老化防止剤:2,2−メチレンビス(4−メチル−6−ブチルフェノール)、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックNS−6」
硫酸バリウム:ヒ性硫酸バリウム、ハクスイテック社製、商品名「バリコ#300」
【0100】
包囲層、中間層及びカバーの形成
上記で得たコアの周囲に、表2に示した配合の包囲層材料を用いて射出成形法により包囲層を形成し、包囲層被覆球体を得た。次に、上記で得た包囲層被覆球体の周囲に、表2に示した配合の中間層材料を用いて射出成形法により中間層を形成し、中間層被覆球体を得た。更に、上記で得た中間層被覆球体の周囲に、表2に示した配合のカバー材料を用いて射出成形法によりカバーを形成し、コアの周囲に包囲層、中間層及びカバーを備えたゴルフボールを作製した。この際、カバー表面には
図2に示したディンプルを形成した。このディンプルの詳細については表3に示した。なお、比較例2,3は、中間層がないスリーピースソリッドゴルフボールであり、比較例4は、包囲層及び中間層のないツーピースソリッドゴルフボールである。
【0101】
【表2】
【0102】
なお、表2に記載した材料の詳細は下記の通りである。
ハイトレル:熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー、東レ・デュポン社製
AN4319:三井・デュポンポリケミカル社製、ニュクレル
HPF1000:デュポン(DuPont)社製、約75〜76質量%のエチレン、約8.5質量%のアクリル酸、及び約15.5〜16.5質量%のn−ブチルアクリレートからなるターポリマーであり、全て(100%)の酸基がマグネシウムイオンにより中和されている。
ハイミラン:アイオノマー樹脂、三井・デュポンポリケミカル社製
サーリン:アイオノマー樹脂、デュポン社製
AM7329、AM7327、AM7317、AM7318:アイオノマー樹脂、三井・デュポンポリケミカル社製
ポリエチレンワックス:三洋化成社製、商品名「サンワックス161P」
沈降性硫酸バリウム:堺化学工業社製、商品名「沈降性硫酸バリウム グレード#300」
ステアリン酸マグネシウム:堺化学工業社製
【0103】
【表3】
【0104】
ディンプルの定義
直径:ディンプルの縁に囲まれた平面の直径
深さ:ディンプルの縁に囲まれた平面からのディンプルの最大深さ
V
0 :ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、且つこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値
SR:ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の表面積に占める比率
VR:ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の体積に占める比率
【0105】
上記で得られたゴルフボールについて、以下の項目について測定及び評価を行った。結果を表4〜6に示す。
【0106】
コア、包囲層被覆球体、中間層被覆球体の外径
23.9±1℃の温度で、任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個のコア、包囲層被覆球体、中間層被覆球体の測定値とし、測定個数5個のコア、包囲層被覆球体、中間層被覆球体の平均値を求めた。
【0107】
ボールの外径
23.9±1℃の温度で、任意のディンプルのない部分を5箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数5個のボールの平均値を求めた。
【0108】
コア、包囲層被覆球体、中間層被覆球体、ボールのたわみ量
コア、包囲層被覆球体、中間層被覆球体又はボールを硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときまでのたわみ量をそれぞれ計測した。なお、上記のたわみ量はいずれも23.9℃に温度調整した後の測定値である。
【0109】
コアの中心硬度(ショアD硬度及びJIS−C硬度)
コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心の硬度を計測した。ショアD硬度はASTM D2240−95規格に準拠したタイプDデュロメータによって計測し、JIS−C硬度は、JIS K 6301−1975に規定するスプリング式硬度計(JIS−C形)により計測した。
【0110】
コアの表面硬度(ショアD硬度及びJIS−C硬度)
球状のコアの表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測した。ショアD硬度はASTM D2240−95規格に準拠したタイプDデュロメータによって計測し、JIS−C硬度は、JIS K 6301−1975に規定するスプリング式硬度計(JIS−C形)により計測した。
【0111】
包囲層被覆球体、中間層被覆球体、ボール(カバー)の表面硬度(ショアD硬度)
包囲層被覆球体、中間層被覆球体又はボール(カバー)の表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測した。なお、ボール(カバー)の表面硬度は、ボール表面においてディンプルが形成されていない陸部における測定値である。ショアD硬度はASTM D2240−95規格に準拠したタイプDデュロメータによって計測した。
【0112】
包囲層、中間層及びカバーの材料硬度(ショアD硬度)
包囲層、中間層及びカバーの樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、2週間以上放置した。その後、ショアD硬度はASTM D2240−95規格に準拠して計測した。
【0113】
初速
R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。コア、包囲層被覆球体、中間層被覆球体及びボールを23.9±1℃環境下で3時間以上温度調整した後、室温23.9±2℃の部屋でテストした。250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマス)を用いて打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にてボールを打撃し、1ダースのボールを各々4回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を測定し、初速(m/s)を算出した。約15分間でこのサイクルを行なった。
【0114】
飛び性能
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)をつけてヘッドスピード(HS)40m/s及び30m/sにて打撃した時の飛距離を測定し、下記基準により評価した。クラブはブリヂストン社製「TourStage PHYZドライバー(2011年モデル)」(ロフト11.5°)を使用した。
HS40m/s
○:トータル飛距離199m以上
×:トータル飛距離198m以下
HS35m/s
○:トータル飛距離136m以上
×:トータル飛距離135m以下
【0115】
打感
ドライバー(W#1)のヘッドスピードが30〜40m/sのアマチュアゴルファーによる官能評価を行い、下記基準により評価した。
○:ソフト感と飛び感を持つ良い打感
×:ソフト感もしくは飛び感のどちらかが足りない
【0116】
繰り返し打撃耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ゴルフボールの耐久性を評価した。この試験機は、ゴルフボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させる機能を有する。金属板への入射速度は43m/sとした。各ボールについて、初期10回の平均初速対比で、初速が97%以下になった時の回数を耐久性低下と判断した。
表6には、実施例2の回数を100とした場合の各々の指数を算出し、その指数について下記基準にて評価した。測定個数3個のゴルフボールの平均値を評価対象値とした。
○:耐久指数95以上
△:耐久指数90以上95未満
×:耐久指数90未満
【0117】
【表4】
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
比較例1は、包囲層表面硬度−コア表面硬度の値がショアD硬度で−5より大きく、且つ、ボールのたわみ量/中間層被覆球体のたわみ量の値が0.86を下回るものであり、その結果、低ヘッドスピードでの打撃時における飛びが劣る。
比較例2は、中間層のないスリーピースゴルフボールであり、その結果、中ヘッドスピード及び低ヘッドスピードでの打撃時において飛距離が劣る。
比較例3も、中間層のないスリーピースゴルフボールであり、その結果、打感が実施例に比較して劣る。
比較例4は、中間層及び包囲層のないツーピースゴルフボールであり、その結果、低ヘッドスピードでの打撃時における飛び、打感、繰り返し打撃耐久性が劣る。
比較例5は、ボール表面硬度が中間層表面硬度よりも軟らかいフォーピースゴルフボールであり、その結果、スピンが多くなり飛距離が劣る。
比較例6は、カバーのショアD硬度−中間層のショアD硬度の値が15より大きく、且つ、ボールのたわみ量/中間層被覆球体のたわみ量の値が0.86を下回るものであり、その結果、繰り返し打撃耐久性が劣る。
比較例7は、中間層被覆球体の初速−包囲層被覆球体の初速の値が−0.2m/sより低く、且つ、ボールのたわみ量/中間層被覆球体のたわみ量の値が0.86を下回るものであり、その結果、低スピンレベルが足りず、飛距離が劣る。
比較例8は、ボール初速−中間層被覆球体の初速が−1.0m/sより低く、且つ、ボールのたわみ量/中間層被覆球体のたわみ量の値が0.98を上回るものであり、その結果、低スピンレベルが足りず、反発性が低くなり、飛距離が劣る。