(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量に対する前記一般式(I)で表されるリン含有化合物の含有量の比が、0.02以上1以下であることを特徴とする特徴とする請求項1乃4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0025】
(リチウムイオン二次電池)
図1に示すように、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池100は、互いに対向する板状の負極20及び板状の正極10と、負極20と正極10との間に隣接して配置される板状のセパレータ18と、を備える積層体30と、リチウムイオンを含む非水電解液と、これらを密閉した状態で収容するケース50と、負極20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケースの外部に突出される負極リード60と、正極10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケースの外部に突出される正極リード62とを備える。
【0026】
負極20は、負極集電体22と、負極集電体22上に形成された負極活物質層24と、
を有する。また、正極10は、正極集電体12と、正極集電体12上に形成された正極活物質層14と、を有する。
【0027】
(負極)
本実施形態の負極20に形成される負極活物質層24は、負極活物質、バインダー、導電助剤を含有している。
【0028】
この負極活物質層24は、負極活物質、バインダー、導電助剤及び溶媒を含む塗料を負極集電体22上に塗布し、負極集電体22上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
【0029】
(負極活物質)
上記の負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等)、MCF(メソカーボンファイバ)等の炭素材やアルミニウム、シリコン、スズ等のリチウムと化合物を形成することのできる金属とその酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)などが用いられる。
【0030】
黒鉛に代表される層状の炭素材を用いる場合には、層間距離d002が0.335〜0.338nmであり、かつ、炭素材の結晶子の大きさL
C002が30〜120nmであるものが、良好な負極容量及びサイクル特性を示すことから好ましい。このような条件を満たす炭素材としては、人造黒鉛、MCF等が挙げられる。なお、前記層間距離d002及び結晶子の大きさL
C002は、X線回折法により求めることができる。
【0031】
また、負極活物質としてシリコン(Si)を含有する場合が好ましく、シリコン単体またはシリコン含有化合物であることが好ましい。シリコン含有化合物としては、シリコン酸化物が好ましく、その酸化物は、一酸化シリコン(SiO)、二酸化シリコン(SiO
2)などを用いることができる。また、これら材料を単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
負極活物質としてシリコン(Si)を含有することにより、高容量な負極を得ることができる。
【0033】
さらに負極活物質は黒鉛等の炭素材とシリコンを混合させてもよい。シリコンがリチウムを吸蔵した場合に発生する体積膨張を炭素材が緩和し、シリコン含有化合物単独よりも優れたサイクル特性を得ることができる。
【0034】
(バインダー)
バインダーは、活物質同士を結合すると共に、負極活物質と集電体22とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであれば特に限定されない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアクリル酸樹脂等を用いることができる。
【0035】
負極活物質層24中のバインダーの含有量は特に限定されないが、活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
【0036】
(導電助剤)
導電助剤としては負極活物質層24の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、アセチレンブラック、ケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック等の公知の導電助剤を使用することができる。
【0037】
負極活物質層24中の導電助剤の含有量も特に限定されないが、添加する場合には通常、負極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましい。
【0038】
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材で厚みの薄いものであることが好ましく、厚みが8〜30μmの金属箔であることが好ましい。負極集電体22は、リチウムと合金化しない材料から形成されていることが好ましく、特に銅箔が好ましく利用できる。
【0039】
銅箔としては電解銅箔であっても圧延銅箔であっても良いが、電解銅箔が好ましく利用できる。ここで電解銅箔とは、例えば、銅イオンが溶解された電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られる銅箔のことであり、また、圧延銅箔は鋳造した銅塊を所望の厚さに圧延することによって製造される銅箔である。
【0040】
また上述した通り、負極活物質層24を負極集電体22上に塗布、形成するにあたり使用される塗料の溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
【0041】
塗布方法としては、特に制限はなく、一般的に、電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
【0042】
負極集電体22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は特に限定されず、塗料が塗布された負極集電体22を、例えば80℃〜150℃で乾燥させればよい。
【0043】
そして、このようにして負極活物質層24が形成された負極20を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、100〜3000kgf/cmとすることができる。
【0044】
(非水電解液)
非水電解液は、電解質と、非水溶媒として4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、下記一般式(I)で表されるリン含有化合物を含有する。
【化2】
(ただし、式(I)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6は、ハロゲン基または、炭素数が2から4のアルコキシ基のいずれかを示し、前記ハロゲン基と前記アルコキシ基はいずれも3つずつ有する。)
【0045】
充放電サイクルに伴い、非水電解液中の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが分解することで水素ガスが発生し電池膨れが発生するのに対し、上述の非水電解液はリン含有化合物に含まれる求核性の高いハロゲン基が発生したH
+と置換されることによって、水素ガスの発生を抑制することで、電池膨れの抑制が実現できるものと推察する。
【0046】
また、充放電サイクルに伴い4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが分解することによって、リチウムイオン二次電池の負極と非水電解液との界面における被膜形成に寄与し、非水溶媒の分解など副作用を抑制することで、優れた充放電サイクル特性を実現できるものと推察する。
【0047】
非水電解液における前記一般式(I)のリン含有化合物は、前記一般式(I)中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6のうち、R
1、R
3、R
5がハロゲン基であることが好ましい。
【0048】
前記R
1、R
3、R
5がハロゲン基であることによって、対称性の高い分子構造を持つため、非水電解液中でのリン含有化合物の分解反応を抑制し、優れた充放電サイクル特性を実現できるものと推察する。
【0049】
非水電解液における前記一般式(I)のリン含有化合物は、前記一般式(I)中のR
1、R
3、R
5のハロゲン基はフッ素であることが好ましい。
【0050】
前記R
1、R
3、R
5がフッ素であることによって、カーボネート変性物と置換脱離したフッ素がフッ化リチウムとなり負極表面に堆積し、非水電解液に対して安定な被膜として機能し、非水電解液中の鎖状カーボネートと環状カーボネートが分解を抑制し、優れた充放電サイクル特性を実現できるものと推察する。
【0051】
前記非水溶媒中に含有される4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンは、非水溶媒中における体積のうち、3体積%以上60体積%以下であることが好ましく、8体積%以上30体積%以下であることがより好ましい。
【0052】
非水溶媒中における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が下限値を下回る場合、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの分解による被膜生成が十分に進行しないおそれがあり、その場合十分な充放電サイクル特性を得ることはできない可能性がある。
【0053】
また、非水溶媒中における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が上限値を上回る場合、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの分解によるガス発生量が増え、前記一般式(I)のリン含有化合物を添加しても電池膨れを十分に抑制することができない可能性もある。
【0054】
非水電解液に含まれる非水溶媒は、さらに環状カーボネートと、鎖状カーボネートと、を含有してもよい。
【0055】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができ、中でもエチレンカーボネートを含むことが好ましい。エチレンカーボネートをプロピレンカーボネートやブチレンカーボネートと混合して使用してもよい。
【0056】
また、鎖状カーボネートとして、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが挙げられ、この中から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ジエチルカーボネートを含むことがより好ましい。その他、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどを混合して使用してもよい。
【0057】
非水溶媒中の環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は体積にして1:9〜1:1にすることが好ましい。
【0058】
(電解質)
電解質としては、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiCF
3SO
3、LiCF
3CF
2SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3CF
2SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiN(CF
3CF
2CO)
2、Li
2B
12F
xZ
12−x(ZはH、Cl、Brから選ばれ、xは4以上12以下である)等が挙げられ、2種以上を混合して用いてもよい。特に、導電性の観点から、LiPF
6を含むことが好ましい。
【0059】
LiPF
6を非水溶媒に溶解する際は、非水電解液中の電解質の濃度を、0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましい。電解質の濃度が0.5mol/L以上であると、非水電解液の導電性を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすい。また、電解質の濃度が2.0mol/L以内に抑えることで、非水電解液の粘度上昇を抑え、リチウムイオンの移動度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすくなる。
【0060】
LiPF
6をその他の電解質と混合する場合にも、非水電解液中のリチウムイオン濃度が0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましく、LiPF
6からのリチウムイオン濃度がその50mol%以上含まれることがさらに好ましい。
【0061】
(正極)
本実施形態の正極10は、正極集電体12の片面または両面に、正極活物質を含む正極活物質層14が形成された構造を有している。正極活物質層14は、負極と同様に、正極活物質、バインダー、導電助剤及び溶媒を含む塗料を正極集電体12上に塗布し、正極集電体12上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
【0062】
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な酸化物、硫化物又が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上が用いられる。具体的には、リチウムを含有しない金属硫化物及び金属酸化物、並びに、リチウムを含有するリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0063】
具体的な例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
xCo
yMn
zO
2(x+y+z=1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5)、オリビン型LiMPO
4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、V、VOを示す)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0064】
(正極集電体)
正極集電体12は、リチウムイオン二次電池用の集電体に使用されている各種公知の金属箔を用いることができる。具体的には、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0065】
その他の正極活物質材料以外の各構成要素(導電助剤、バインダー)は、負極20で使用されるものと同様の物質を使用することができる。
【0066】
(セパレータ)
セパレータ18は絶縁性の多孔体から形成されていれば、材料、製法等は特に限定されず、リチウムイオン二次電池に用いられている公知のセパレータを使用することができる。例えば、絶縁性の多孔体としては、公知のポリオレフィン樹脂、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体または共重合体が挙げられる。これらの単独重合体または共重合体は、1種を単独で使用することができるが、2種以上のものを混合して用いてもよい。また、単層であっても複層であってもよい。
【0067】
ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。
【0068】
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
【0069】
作製した正極10及び負極20に対して、リード62、60をそれぞれ電気的に接続する。その正極10と負極20との間にセパレータ18を配置し、積層体30が完成する。更にその積層体30を上述した非水電解液と共にケース50内に収納すれば、リチウムイオン二次電池100が完成する。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池は
図1に示した形状のものに限定されず、コイン形状に打ち抜いた電極とセパレータとを積層したコインタイプや、電極シートとセパレータとをスパイラル状に巻回したシリンダータイプ等であってもよい。
【0071】
作製したリチウムイオン二次電池について、以下の方法によって、評価した。
【0072】
(充放電サイクル特性および電池膨れの測定)
二次電池充放電試験装置を用いて、電圧範囲を2.5Vから4.2Vまでとし、電流密度をシリコン(Si)を含有する粒子の可逆容量を1200mAh/gとし、炭素材の可逆容量を330mAh/gとして1C容量を求め、0.5Cでの電流値で充電、1.0Cでの電流値で放電を行い、充放電サイクル特性の評価を行った。この充放電サイクル特性の評価を放電容量維持率(%)として表し、放電容量維持率(%)は、1サイクル目の放電容量を初期放電容量とし、初期放電容量に対する所定サイクル数における放電容量の割合であり以下の式で表される。
【数1】
この容量維持率が高いほど、充放電サイクル特性が良好であることを意味する。
なお、以下に示す実施例の所定サイクル数は500サイクルとした。電池膨れは、まず10サイクルの充放電サイクル特性の評価を行ったのち、恒温槽から取り出し電池の初期厚みの評価を行い、490サイクルの充放電サイクル特性の評価を行ったのちに該電池が初期厚みに対し5%未満の膨れである場合には表中に◎を、5%以上8%未満の膨れである場合〇を、8%を超える場合は×を記した。
【実施例】
【0073】
以下、実施例
、比較例及び参考例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
【0074】
以下に示す手順により実施例1−1〜1−30、
実施例2−1〜2−18、
実施例3−1〜3−18、
参考例4〜1〜4−18、
実施例5〜1〜5−18、比較例1−1〜1−4、
比較例2−1〜2−2、
比較例3−1〜3−2、
参考例4−
19〜4−20、
比較例5−1〜5−2のリチウムイオン二次電池を作製した。また各リチウムイオン二次電池の評価を表1〜5に示す。
【0075】
なお、リン含有化合物の具体的分子構造を表中の構造の欄に示した。具体的な式(A)〜(G)に対応する構造は以下に示す通りである。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0076】
[実施例1−1]
(負極の作製)
負極活物質として、SiとSiOをSi/SiO=1/2(重量比)で混合し、遊星ボールミルを用いて粉砕混合を行ったものを使用した。遊星ボールミルのメディアとして直径3mmのアルミナビーズを用い、回転数は500rpmとし、粉砕混合時間は60minとした。
負極活物質として前記SiとSiOの混合物を80質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリアミドイミドを15質量部とを混合して負極合剤とした。続いて、負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の負極合剤塗料とした。この塗料を、厚さ10μmの電解銅箔の一面に、負極活物質の塗布量が3.4mg/cm
2となるように塗布し、100℃で乾燥することで負極活物質層を形成した。その後、線圧2000kgf/cmでローラープレスにより加圧成形し、真空中、270〜350℃で1〜3時間熱処理し、厚みが67μmの負極を作製した。
【0077】
(正極の作製)
正極活物質としてLiNi
0.85Co
0.10Al
0.05O
2を90質量部と、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを5質量部とを混合して正極合剤とした。続いて、正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させてペースト状の正極合剤塗料とした。この塗料を、厚さ20μmのアルミニウム箔の一面に、正極活物質の塗布量が20.4mg/cm
2となるように塗布し、100℃で乾燥することで正極活物質層を形成した。その後、ローラープレスにより加圧成形し厚みが132μmの正極を作製した。
【0078】
(非水電解液の調製)
表1に示すリン含有化合物(構造(A))と、エチレンカーボネート、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、ジエチルカーボネートを体積比0.5:8:22:69.5で混合した溶液中に、LiPF
6を1.0mol/Lの割合で溶解させ非水電解液を得た。
(評価用リチウムイオン二次電池の作製)
上記で作製した負極と正極を、それらの間にポリエチレン多孔膜からなるセパレータを挟んでアルミラミネートパックに入れ、このアルミラミネートパックに、上記で作製した電解液を注入した後、真空シールし、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0079】
[実施例1−2〜1−30]
非水溶媒中のリン含有化合物と4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを表1に示すように変えた以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−2〜1−30のリチウムイオン二次電池を作製した。なお、非水溶媒中におけるエチレンカーボネートと4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの体積比の和は30体積%とし、ジメチルカーボネートとリン含有化合物の体積比の和が70体積%となるよう適宜調整を行った。4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの体積比が30体積%を超える場合は、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとリン含有化合物とジメチルカーボネートの体積比の和が100体積%となるよう適宜調整を行った。また表中、−は、リン含有化合物が含有されていないことを示し、FECは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを示す。
【0080】
[比較例1−1〜1−4]
非水溶媒中の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、実施例1−1と同様にして比較例1−1〜1−4のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0081】
[実施例2−1]
(負極の作製)
負極活物質として実施例1-1で用いたSiとSiOの混合物に、更に人造黒鉛を混合し、負極合剤として前記SiとSiOの混合物を58質量部及び人造黒鉛を22質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリアミドイミドを15質量部とし、負極活物質の塗布量が4.3mg/cm
2となるように塗布したこと以外は実施例1−1と同様にして実施例2−1の負極を作製した。得られた負極を用いて、実施例1−1と同様にして実施例2−1のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0082】
[実施例2−2〜2−18]
非水溶媒中の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、実施例2−1と同様にして実施例2−2〜2−18のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0083】
[比較例2−1および2−2]
非非水溶媒中の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、実施例2−1と同様にして比較例2−1および2−2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0084】
[実施例3−1]
(負極の作製)
負極活物質として前記SiとSiOの混合物と人造黒鉛の混合し、負極合剤として前記SiとSiOの混合物を16質量部及び人造黒鉛を64質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリアミドイミドを15質量部とし、負極活物質の塗布量が8.7mg/cm
2となるように塗布したこと以外は実施例1−1と同様にして実施例3−1の負極を作製した。得られた負極を用いて、実施例1−1と同様にして実施例3−1のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0085】
[実施例3−2〜3−18]
非水溶媒中の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、実施例3−1と同様にして実施例3−2〜3−18のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0086】
[比較例3−1および3−2]
非非水溶媒中の4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、実施例3−1と同様にして比較例3−1および3−2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0087】
[
参考例4−1]
(負極の作製)
負極合剤として人造黒鉛を85質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを2質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を13質量部とし、負極活物質の塗布量が14.7mg/cm2となるように塗布したこと以外は実施例1−1と同様にして
参考例4−1の負極を作製した。得られた負極を用いて、実施例1−1と同様にして
参考例4−1のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0088】
[
参考例4−2〜4−
18]
非水溶媒中の第一および第二のリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、
参考例4−1と同様にして
参考例4−2〜4−18のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0089】
[
参考例4−
19〜4−
20]
非水溶媒中の第一および第二のリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、実施例4−
1と同様にして
参考例4−
19および4−
20のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0090】
[実施例5−1]
(負極の作製)
負極活物質として実施例1−1で用いたSiを遊星ボールミルを用いて粉砕したものを使用した。遊星ボールミルのメディアとして直径3mmのアルミナビーズを用い、回転数は500rpmとし、粉砕混合時間は60minとした。負極合剤として前記Siの粉砕物を負極活物質として80質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリアミドイミドを15質量部とし、負極活物質の塗布量が1.5mg/cm
2となるように塗布したこと以外は実施例1−1と同様にして実施例5−1の負極を作製した。得られた負極を用いて、実施例1−1と同様にして実施例5−1のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0091】
[実施例5−2〜5−
18]
非水溶媒中の第一および第二のリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、実施例5−1と同様にして実施例5−2〜5−
18のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0092】
[比較例5−1および5−2]
非水溶媒中の第一および第二のリン含有化合物を表1に示すように変えた以外は、実施例5−1と同様にして比較例5−1および5−2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
表1の実施例1−1から1−15の結果から、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと前述の一般式(I)で表されるリン含有化合物を含む電解液を用いることで、 充放電サイクルの向上と電池膨れの抑制されたリチウムイオン二次電池が得られた。これは、リン含有化合物に含まれる求核性の高いハロゲン基が発生したH
+と置換されることによって、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの分解に伴う水素ガスの発生を抑制することで、電池膨れの抑制が実現できるものと推察され、また、充放電サイクルに伴い4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが分解することによって、リチウムイオン二次電池の負極と非水電解液との界面における被膜形成に寄与し、他の非水溶媒の分解など副作用を抑制することで、優れた充放電サイクル特性を実現できるものと推察される。
【0099】
表1の実施例1−16から1−19は、非水電解液中における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が8体積%を下回ったため、十分にサイクル特性が向上しなかったと推察される。また、実施例1−26は、非水電解液中における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が下限を下回ったため、十分にサイクル特性が向上しなかったと推察される。
【0100】
表1の実施例1−20から1−25は、サイクル試験後に5%〜8%の電池膨れが確認された。これは、非水電解液中における4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が30体積%を上回ったためガス発生が十分に抑制できず、前述の一般式(I)のリン含有化合物を添加しても電池膨れを十分に抑制することができなかったためと推察される。
【0101】
表1の実施例1−27から1−29は、前述の一般式(I)のリン含有化合物のR
3のハロゲン基がフッ素でないためリン含有化合物自体の分解反応が起こったことや、フッ化リチウムの生成が十分でなかったため、充放電サイクル特性が十分に向上しなかったのではないかと推察される。
【0102】
表1の実施例1−30は、前述の一般式(I)のリン含有化合物の分子構造の対称性が低く、リン含有化合物自体の分解反応が起こったため、充放電サイクル特性が十分に向上しなかったのではないかと推察される。
【0103】
比較例1−1から1−4は、非水電解液中に4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと前述の一般式(I)で表されるリン含有化合物の両方が含有されていなかったため、充放電サイクル特性の向上と電池膨れの抑制を両立できなかったと推察される。
【0104】
表2、表3、表4、表5については、表1で示した傾向と同じく、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと前述の一般式(I)で表されるリン含有化合物を含む電解液を用いることで、充放電サイクルの向上と電池膨れの抑制されたリチウムイオン二次電池が得られた。